エンジン、シリンダヘッド、シリンダブロック及びシリンダヘッドガスケット
【課題】分割タイプのシリンダブロックを用いたエンジンにおいて、ライナ本体の下端面のシリンダブロック本体の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制する。
【解決手段】エンジンのシリンダブロックは、シリンダボア25を有するライナ本体22の上端外側にアッパデッキ部23を設けてなるシリンダライナ21と、ライナ本体22を取り囲む外側壁15を有するとともにライナ本体22の下端面22Aが密着される底部16を有するシリンダブロック本体14とに分割されている。このシリンダブロックへのシリンダヘッド13の取付けに際しては、アッパデッキ部23に通されたヘッドボルト29によりシリンダヘッド13が外側壁15に締結される。上記エンジンにおいて、シリンダヘッド13及びアッパデッキ部23間であり、かつヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所にシム35を設ける。
【解決手段】エンジンのシリンダブロックは、シリンダボア25を有するライナ本体22の上端外側にアッパデッキ部23を設けてなるシリンダライナ21と、ライナ本体22を取り囲む外側壁15を有するとともにライナ本体22の下端面22Aが密着される底部16を有するシリンダブロック本体14とに分割されている。このシリンダブロックへのシリンダヘッド13の取付けに際しては、アッパデッキ部23に通されたヘッドボルト29によりシリンダヘッド13が外側壁15に締結される。上記エンジンにおいて、シリンダヘッド13及びアッパデッキ部23間であり、かつヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所にシム35を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割型のシリンダブロックが用いられたエンジンに関するものである。また、本発明は、上記エンジンを構成するシリンダヘッド、シリンダブロック及びシリンダヘッドガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのシリンダブロックとして、シリンダボア壁と、そのシリンダボア壁を囲む外側壁と、それらのシリンダボア壁及び外側壁の上端部間をつなぐアッパデッキ部とを備え、全体を鋳造等により一体形成したものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。また、上記シリンダボア壁をシリンダライナによって構成したものも知られている。これらのシリンダブロックを用いたエンジンでは、シリンダヘッドがヘッドボルトにより外側壁の複数箇所に締結される。
【0003】
これに代え、近年では、シリンダブロックの一形態として、図12(A)に示すように、シリンダライナ71とシリンダブロック本体75とに分割されたタイプが考えられている。シリンダライナ71は、シリンダボア72を有する円筒状のライナ本体73と、ライナ本体73の上端外側に設けられたアッパデッキ部74とを備える。シリンダブロック本体75は、ライナ本体73を取り囲む外側壁76と、ライナ本体73の下端面73Aが密着される底部77とを備える。そして、ライナ本体73、アッパデッキ部74、外側壁76及び底部77によって囲まれた空間がウォータジャケット78となる。この分割タイプのシリンダブロック79は、ウォータジャケット78の設計自由度の向上や鋳型構造の簡略化等を通じて、エンジンにおける冷却性能の向上、小型化等を実現しようとするものである。
【0004】
上記分割タイプのシリンダブロック79を用いたエンジン81では、その組付けに際し、外側壁76によって囲まれる空間にライナ本体73が配置される。ライナ本体73の下端面73Aと、シリンダブロック本体75の底部77との間にシール材82が介在された状態で、アッパデッキ部74が外側壁76上に載置される。さらに、アッパデッキ部74上にシリンダヘッドガスケット83を介してシリンダヘッド84が配置される。そして、アッパデッキ部74を通して外側壁76に螺入されるヘッドボルト85により、シリンダライナ71がシリンダブロック本体75に締結されてシリンダブロック79が構成されるとともに、シリンダヘッド84がシリンダヘッドガスケット83を介してそのシリンダブロック79に締結される。
【特許文献1】特許第3089929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ヘッドボルト85を外側壁76に締付けた場合、その締付けに伴いヘッドボルト85からシリンダヘッド84及びシリンダヘッドガスケット83を通じてシリンダライナ71に加わる力は均一ではない。この力は、図12(B)に示すようにヘッドボルト85の近傍では大きく、ヘッドボルト85から離れるに従い小さくなる。このことは、ヘッドボルト85から比較的離れた箇所に位置するライナ本体73に加わる力が小さいことを意味する。なお、図12(B)の横軸は、図12(A)におけるシリンダライナ71の上端面についてヘッドボルト85を基準とした場合の位置を示し、縦軸はヘッドボルト85を締付けた場合にシリンダライナ71の上端面に加わる力を示している。
【0006】
その結果、上記分割タイプのシリンダブロック79では、ライナ本体73の下端面73Aの底部77に対する面圧が低下する。場合によっては、図12(A)において二点鎖線で誇張して示すように、ライナ本体73の下端面73Aが底部77から浮き上がり、その結果、シール性の低下を招くおそれがある。
【0007】
一方、全体が一体に形成されたタイプのシリンダブロックでも、上記と同様、ヘッドボルトの締付けに伴いシリンダボア壁に加わる力は小さい。しかし、このタイプでは、シリンダボア壁の下端がシリンダブロックの底部に連結されていることから、分割タイプのシリンダブロックのような不具合は起こらない。
【0008】
なお、上記特許文献1には、一体型のシリンダブロックに装着されるシリンダヘッドガスケットが記載されているが、これは、シリンダボア壁の変形を抑制することを目的として、同ガスケットにおけるシール部の位置を工夫したにすぎず、分割タイプのシリンダブロックに特有の上記現象について対策したものではない。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、分割タイプのシリンダブロックを用いたエンジンにおいて、ライナ本体の下端面のシリンダブロック本体の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
<共通の構成について>
請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明にかかるエンジンは、共通の構成として、シリンダブロックとその上側に配置されるシリンダヘッドとを備え、前記シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されており、さらに、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダヘッドが前記外側壁に締結されるものである。
【0011】
また、請求項4〜6のいずれか1つに記載の発明にかかるシリンダヘッドは、共通の構成として、シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されたエンジンに適用され、前記シリンダブロックの上側に配置された状態で、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記外側壁に締結されるものである。
【0012】
また、請求項7〜9のいずれか1つに記載の発明にかかるシリンダブロックは、共通の構成として、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより、前記シリンダライナ上のシリンダヘッドが前記外側壁に締結されるものである。
【0013】
さらに、請求項10〜12のいずれか1つに記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットは、共通の構成として、シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、前記シリンダブロックの上側に配置されたシリンダヘッドが、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダブロックの前記外側壁に締結されるエンジンに適用され、前記シリンダヘッドと前記シリンダライナとの間に介在されるものである。
【0014】
<各請求項に記載の発明について>
(請求項1、及びそれに関連する請求項4,7,10に記載の各発明について)
請求項1に記載の発明にかかるエンジンでは、上述した請求項1〜3に記載の発明にかかるエンジンの共通構成に加え、前記シリンダヘッド及び前記アッパデッキ部間であり、かつ前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所にシムが設けられているとする。
【0015】
上記請求項1に記載の発明によれば、シリンダヘッドのシリンダブロックへの締結に際し、外側壁によって囲まれた空間にシリンダライナのライナ本体が配置される。ライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着された状態で、アッパデッキ部が外側壁上に載置される。さらに、そのシリンダライナの上側にシムを介してシリンダヘッドが配置される。シムは、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に位置する。そして、ヘッドボルトがシリンダヘッド及びアッパデッキ部に挿通され、外側壁に螺入される。このヘッドボルトが締付けられる前には、シリンダヘッドはシムにより支持されてシリンダライナから浮いた状態となる。
【0016】
ヘッドボルトが外側壁に螺入されてゆくと、そのヘッドボルトの締付けに伴う力がシリンダヘッドに伝達される。この伝達により、シリンダヘッドにおけるヘッドボルトの近傍部分が下方へ撓んでアッパデッキ部に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドのそのほかの箇所、特に、シムよりもシリンダボア側の箇所は下方へ撓む。その結果、シリンダヘッドはシムを介し、アッパデッキ部においてヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側の箇所に間接的に接触するとともに、ライナ本体の上端面に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドの下面においてシリンダライナとの接触に関わる箇所の面積は、シムが設けられずにシリンダヘッドがシリンダライナの上端面全面に直接又は間接的に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルトの締付けによる力がシリンダライナに伝達される。従って、シリンダライナのうちライナ本体に伝達される力は、シムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。このように請求項1に記載の発明によれば、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制することができる。
【0017】
ここで、上記請求項1に記載の発明におけるシムとしては、例えば、請求項4に記載の発明によるように、シリンダヘッドに設けられた突部により構成されるものであってもよいし、請求項7に記載の発明によるように、シリンダブロックに設けられた突部により構成されるものであってもよい。また、上記シムは、請求項10に記載の発明によるように、シリンダヘッドガスケットに設けられたものであってもよい。
【0018】
すなわち、請求項4に記載の発明にかかるシリンダヘッドでは、上述した請求項4〜6に記載の発明にかかるシリンダヘッドの共通構成に加え、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、下方へ突出する突部が設けられているとする。
【0019】
上記請求項4に記載の発明にかかるシリンダヘッドを用い、これをヘッドボルトによってシリンダブロックに締結すると、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた突部が、上記請求項1に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0020】
また、請求項7に記載の発明にかかるシリンダブロックでは、上述した請求項7〜9に記載の発明にかかるシリンダブロックの共通構成に加え、前記アッパデッキ部について、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、上方へ突出する突部が設けられているとする。
【0021】
上記請求項7に記載の発明にかかるシリンダブロックを用い、これにヘッドボルトによってシリンダヘッドを締結すると、アッパデッキ部について、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた突部が、上記請求項1に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0022】
さらに、請求項10に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットでは、上述した請求項10〜12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットの共通構成に加え、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所にシムが設けられているとする。
【0023】
上記請求項10に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットをシリンダヘッド及びシリンダブロック間に介在させ、ヘッドボルトによってシリンダヘッドをシリンダブロックに締結すると、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられたシムが、上記請求項1に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0024】
このように、シリンダヘッド及びシリンダブロックの各突部、及びシリンダヘッドガスケットのシムが、それぞれ請求項1に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮することから、ヘッドボルトが締付けられたときにライナ本体に伝達される力は、突部やシムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、突部やシムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。その結果、請求項1に記載の発明と同様、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧低下を抑制することができる。
【0025】
(請求項2、及びそれに関連する請求項5,8,11に記載の各発明について)
請求項2に記載の発明にかかるエンジンでは、上述した請求項1〜3に記載の発明にかかるエンジンの共通構成に加え、前記シリンダヘッド及び前記シリンダライナ間であり、かつ前記シリンダボアの近傍にシムが設けられているとする。
【0026】
上記請求項2に記載の発明によれば、シリンダヘッドのシリンダブロックへの締結に際し、外側壁によって囲まれた空間にシリンダライナのライナ本体が配置される。ライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着された状態で、アッパデッキ部が外側壁上に載置される。さらに、そのシリンダライナの上側にシムを介してシリンダヘッドが配置される。シムは、シリンダヘッド及びシリンダライナ間におけるシリンダボアの近傍に位置する。そして、ヘッドボルトがシリンダヘッド及びアッパデッキ部に挿通され、外側壁に螺入される。このヘッドボルトが締付けられる前には、シリンダヘッドはシムにより支持されて、シリンダライナから浮いた状態となる。
【0027】
ヘッドボルトが外側壁に螺入されてゆくと、そのヘッドボルトの締付けに伴う力がシリンダヘッドに伝達される。この伝達により、シリンダヘッドにおけるヘッドボルトの近傍部分が下方へ撓んでアッパデッキ部に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドのそのほかの箇所、特に、シムよりもヘッドボルト側の箇所は下方へ撓む。その結果、シリンダヘッドはシムを介してライナ本体に間接的に接触するとともに、アッパデッキ部においてヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドの下面においてシリンダライナの上端面との接触に関わる箇所の面積は、シムが設けられずにシリンダヘッドがシリンダライナの上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルトの締付けによる力がシリンダライナに伝達される。従って、シリンダライナのうちライナ本体に伝達される力は、シムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。このように請求項2に記載の発明によれば、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制することができる。
【0028】
ここで、上記請求項2に記載の発明におけるシムとしては、例えば、請求項5に記載の発明によるように、シリンダヘッドに設けられた突部により構成されるものであってもよいし、請求項8に記載の発明によるように、シリンダブロックに設けられた突部により構成されるものであってもよい。また、上記シムは、請求項11に記載の発明によるように、シリンダヘッドガスケットに設けられたものであってもよい。
【0029】
すなわち、請求項5に記載の発明にかかるシリンダヘッドでは、上述した請求項4〜6に記載の発明にかかるシリンダヘッドの共通構成に加え、前記ライナ本体の略上方となる箇所に、下方へ突出する突部が設けられているとする。
【0030】
ここに、ライナ本体の略上方とは、必ずしもライナ本体の真上である必要はなく、ヘッドボルトの締結によりライナ本体に加わる力が、シムを設けない場合よりも大きくなる範囲であれば、ライナ本体の真上からずれていてもよいことを意味する。アッパデッキ部のライナ本体との境界部分の上方も、この略上方に含まれるものとする。請求項6,11,12における「ライナ本体の略上方」についても同様とする。
【0031】
上記請求項5に記載の発明にかかるシリンダヘッドを用い、これをヘッドボルトによってシリンダブロックに締結すると、ライナ本体の略上方となる箇所に設けられた突部が、上記請求項2に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0032】
また、請求項8に記載の発明にかかるシリンダブロックでは、上述した請求項7〜9に記載の発明にかかるシリンダブロックの共通構成に加え、前記シリンダライナの上端面の前記シリンダボアの近傍に、上方へ突出する突部が設けられているとする。
【0033】
上記請求項8に記載の発明にかかるシリンダブロックを用い、これにヘッドボルトによってシリンダヘッドを締結すると、シリンダライナの上端面のシリンダボアの近傍に設けられた突部が、上記請求項2に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0034】
さらに、請求項11に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットでは、請求項10〜12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットの共通構成に加え、前記ライナ本体の略上方となる箇所にシムが設けられているとする。
【0035】
上記請求項11に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットをシリンダヘッド及びシリンダブロック間に介在させ、ヘッドボルトによってシリンダヘッドをシリンダブロックに締結すると、ライナ本体の略上方となる箇所に設けられたシムが、上記請求項2に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0036】
このように、シリンダヘッド及びシリンダブロックの各突部、及びシリンダヘッドガスケットのシムが、それぞれ請求項2に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮することから、ヘッドボルトが締付けられたときにライナ本体に伝達される力は、突部やシムを設けていない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、突部やシムを設けていない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。その結果、請求項2に記載の発明と同様、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧低下を抑制することができる。
【0037】
(請求項3、及びそれに関連する請求項6,9,12に記載の各発明について)
請求項3に記載の発明にかかるエンジンでは、上述した請求項1〜3に記載の発明にかかるエンジンの共通構成に加え、前記シリンダヘッド及び前記アッパデッキ部間であり、かつ前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に第1シムが設けられ、前記シリンダヘッド及び前記シリンダライナ間であり、かつ前記シリンダボアの近傍に第2シムが設けられているとする。
【0038】
上記請求項3に記載の発明によれば、シリンダヘッドのシリンダブロックへの締結に際し、外側壁によって囲まれた空間にシリンダライナのライナ本体が配置される。ライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着された状態で、アッパデッキ部が外側壁上に載置される。さらに、そのシリンダライナの上側に2種類のシム(第1シム及び第2シム)を介してシリンダヘッドが配置される。一方のシム(第1シム)は、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に位置し、他方のシム(第2シム)はシリンダボアの近傍に位置する。そして、ヘッドボルトがシリンダヘッド及びアッパデッキ部に挿通され、外側壁に螺入される。このヘッドボルトが締付けられる前には、シリンダヘッドは両シムにより支持されて、シリンダライナから浮いた状態となる。
【0039】
ヘッドボルトが外側壁に螺入されてゆくと、そのヘッドボルトの締付けに伴う力がシリンダヘッドに伝達される。この伝達により、シリンダヘッドにおける第1シム及び第2シム間の部分が下方へ撓み、ヘッドボルトの近傍部分でアッパデッキ部に直接又は間接的に接触する。このようにして、シリンダヘッドは第1シムを介し、アッパデッキ部においてヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に間接的に接触するとともに、第2シムを介してライナ本体の上端面に間接的に接触し、ヘッドボルトの近傍部分においてアッパデッキ部に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドの下面においてシリンダライナの上端面との接触に関わる箇所の面積は、シムが設けられずにシリンダヘッドがシリンダライナの上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルトの締付けによる力がシリンダライナに伝達される。従って、シリンダライナのうちライナ本体に伝達される力は、シムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。このように請求項3に記載の発明によれば、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制することができる。
【0040】
ここで、上記請求項3に記載の発明における第1シム及び第2シムとしては、例えば、請求項6に記載の発明によるように、シリンダヘッドに設けられた第1突部及び第2突部により構成されるものであってもよいし、請求項9に記載の発明によるように、シリンダブロックに設けられた第1突部及び第2突部により構成されるものであってもよい。また、上記第1シム及び第2シムは、請求項12に記載の発明によるように、シリンダヘッドガスケットに設けられたものであってもよい。
【0041】
すなわち、請求項6に記載の発明にかかるシリンダヘッドでは、上述した請求項4〜6に記載の発明にかかるシリンダヘッドの共通構成に加え、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、下方へ突出する第1突部が設けられ、前記ライナ本体の略上方となる箇所に、下方へ突出する第2突部が設けられているとする。
【0042】
上記請求項6に記載の発明にかかるシリンダヘッドを用い、これをヘッドボルトによってシリンダブロックに締結すると、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた第1突部が、上記請求項3に記載の発明における第1シムと同様の機能を発揮する。また、ライナ本体の略上方となる箇所に設けられた第2突部が、上記請求項3に記載の発明における第2シムと同様の機能を発揮する。
【0043】
また、請求項9に記載の発明にかかるシリンダブロックでは、上述した請求項7〜9に記載の発明にかかるシリンダブロックの共通構成に加え、前記アッパデッキ部について、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、上方へ突出する第1突部が設けられ、前記シリンダライナの上端面の前記シリンダボアの近傍に、上方へ突出する第2突部が設けられているとする。
【0044】
上記請求項9に記載の発明にかかるシリンダブロックを用い、このシリンダブロックに対し、ヘッドボルトによってシリンダヘッドを締結すると、アッパデッキ部について、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた第1突部が、上記請求項3に記載の発明における第1シムと同様の機能を発揮する。また、シリンダライナの上端面のシリンダボアの近傍に設けられた第2突部が、上記請求項3に記載の発明における第2シムと同様の機能を発揮する。
【0045】
さらに、請求項12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットでは、請求項10〜12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットの共通構成に加え、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に第1シムが設けられ、前記ライナ本体の略上方となる箇所に第2シムが設けられているとする。
【0046】
上記請求項12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットを、シリンダヘッド及びシリンダブロック間に介在させ、ヘッドボルトによってシリンダヘッドをシリンダブロックに締結すると、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた第1シムが、上記請求項3に記載の発明における第1シムと同様の機能を発揮する。また、ライナ本体の略上方となる箇所に設けられた第2シムが、上記請求項3に記載の発明における第2シムと同様の機能を発揮する。
【0047】
このように、シリンダヘッド及びシリンダブロックの各突部(第1突部、第2突部)、及びシリンダヘッドガスケットのシム(第1シム、第2シム)が、それぞれ請求項3に記載の発明における第1シム及び第2シムと同様の機能を発揮する。このことから、ヘッドボルトが締付けられたときにライナ本体に伝達される力は、突部やシムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、突部やシムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。その結果、請求項3に記載の発明と同様、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
図1は車両に搭載されるエンジン11の一部を示している。このエンジン11は、ピストンの往復直線運動をクランク機構によって回転運動に変換して、出力軸であるクランクシャフトを回転させるタイプのエンジン(レシプロエンジン)である。
【0049】
図1〜図3に示すように、エンジン11は、シリンダブロック12と、その上側に配置されて複数本のヘッドボルト29によりシリンダブロック12に締結されるシリンダヘッド13とを備えている。
【0050】
シリンダブロック12は、シリンダブロック本体14及びシリンダライナ21に分割されている。シリンダブロック本体14は、上面が開口された四角枠状の外側壁15と、その外側壁15の下側に位置する底部16及びスカート部17とを備え、全体がアルミニウム合金、マグネシウム合金等の比重の比較的小さな金属材料によって一体に形成されている。
【0051】
外側壁15の複数箇所には、上記ヘッドボルト29の螺入可能なボルト穴27が設けられている。各ボルト穴27は、外側壁15の上面において開口して下方へ延びている。ここでは、ボルト穴27は、外側壁15の四隅に設けられるとともに、その四隅のボルト穴27から外側壁15の側面に沿って所定の距離ずつ隔てた箇所に設けられている。スカート部17の下端部には、クランクシャフト18を回転可能に支持するためのジャーナル部19が設けられている。
【0052】
シリンダライナ21は、気筒毎のライナ本体22と、全てのライナ本体22に共通のアッパデッキ部23とを備え、全体が鋳鉄等の耐摩耗性に優れた金属材料によって一体に形成されている。
【0053】
各ライナ本体22は、上下両端が開放された円筒状をなしており、上記外側壁15によって囲まれた空間に配置されている。各ライナ本体22の下端面22Aは、シール材24を介してシリンダブロック本体14の底部16に密着している。各ライナ本体22の内部空間はシリンダボア25を構成しており、ここにピストン(図示略)が往復動可能に収容される。また、各シリンダボア25においてピストンよりも上側の空間は、燃料及び空気の混合気を燃焼するための燃焼室(図示略)となる。
【0054】
アッパデッキ部23は略平板状をなし、全てのライナ本体22の上端外側に一体に設けられており、外側壁15上に配置されている。アッパデッキ部23について、上記外側壁15のボルト穴27に対応する箇所には、ヘッドボルト29の挿通可能な貫通孔28が設けられている。
【0055】
上記シリンダヘッド13はこのアッパデッキ部23上に配置されている。そして、シリンダヘッド13及びアッパデッキ部23の貫通孔28にそれぞれ挿通されたヘッドボルト29が、外側壁15の対応するボルト穴27に螺入されることにより、アッパデッキ部23及びシリンダヘッド13がシリンダブロック本体14に締結されている。
【0056】
上記の構成を有するエンジン11においては、ライナ本体22、アッパデッキ部23、外側壁15及び底部16によって囲まれた空間が、ウォータジャケット26として機能する。ウォータジャケット26は、シリンダブロック本体14、シリンダライナ21等を冷却するための冷却水の通路である。
【0057】
ところで、上記混合気の燃焼に伴い生じた燃焼ガスの熱及び燃焼圧力はシリンダブロック12及びシリンダヘッド13に伝達される。また、これらの熱及び燃焼圧力はシリンダブロック12及びシリンダヘッド13間の隙間にも作用する。燃焼ガスがこの隙間を通じて外部へ漏れ出るのを抑制するために、シリンダライナ21及びシリンダヘッド13間にシリンダヘッドガスケット31が介在される。
【0058】
図3及び図4に示すように、シリンダヘッドガスケット31の大部分は基板32によって構成されている。基板32において、上記シリンダボア25に対応する箇所には、同シリンダボア25の開口部分と略同一の形状及び大きさを有する円形の孔33があけられている。また、基板32において、上記ボルト穴27及び貫通孔28に対応する箇所には、上記ヘッドボルト29の挿通可能なボルト孔34があけられている。基板32の下面には、図示しないシール部が設けられている。また、基板32の下面であって、各ボルト孔34(ヘッドボルト29)を挟んで孔33(シリンダボア25)の反対側となる箇所にはシム35が設けられている。各シム35は強度が高く、耐熱性に優れた材料、例えばステンレス鋼等によって板状に形成されており、10〜200μmの厚みを有している。また、ここでは、各シム35は、ボルト孔34に沿って略円弧状に形成されている。なお、隣合うシム35,35同士は互いに離間している。
【0059】
上記シリンダヘッドガスケット31を用いて、シリンダヘッド13をシリンダブロック12に組み付ける際には、図3に示すように、全てのライナ本体22を、外側壁15によって囲まれた空間に配置する。ライナ本体22の下端面22Aとシリンダブロック本体14の底部16との間にシール材24を介在させた状態で、アッパデッキ部23を外側壁15上に配置する。アッパデッキ部23の上にシリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13を順に配置する。この状態では、シリンダヘッドガスケット31の下面に設けられたシム35が、ヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側(図4ではヘッドボルト29の左側)となる箇所においてアッパデッキ部23に接触する。
【0060】
続いて、ヘッドボルト29を、シリンダヘッド13、シリンダヘッドガスケット31のボルト孔34、アッパデッキ部23の貫通孔28、外側壁15のボルト穴27に挿入する。この段階、すなわちヘッドボルト29を締付ける前には、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31の基板32はシム35によって支持されて、シリンダライナ21から浮いた状態となる。
【0061】
ヘッドボルト29をボルト穴27に螺入させてゆくと、図5(A)に示すように、そのヘッドボルト29の締付けに伴う力がシリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31に伝達される。この伝達により、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31におけるヘッドボルト29の近傍部分が下方へ撓んでアッパデッキ部23に接触する。シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31のそのほかの箇所、特に、シム35よりもシリンダボア25側の箇所は下方へ撓む。その結果、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31はシム35を介し、アッパデッキ部23においてヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に間接的に接触するとともに、ライナ本体22の上端面に直接接触する。シリンダヘッドガスケット31の下面においてシリンダライナ21との接触に関わる箇所の面積は、シム35が設けられない状態でシリンダヘッドガスケット31がシリンダライナ21の上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルト29の締付けによる力がシリンダライナ21に伝達される。
【0062】
従って、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31を通じてライナ本体22に伝達される力は、図5(B)において実線で示すように、シム35を設けない場合に同ライナ本体22に伝達される力(同図の二点鎖線参照)よりも大きくなる。なお、図5(B)は前述した図12(B)に対応する特性図であり、横軸は、シリンダライナ21の上端面についてヘッドボルト29を基準とした場合の位置を示し、縦軸はヘッドボルト29を締付けた場合にシリンダライナ21の上端面に加わる力を示している。横軸において、基準位置(ヘッドボルト29)よりも右側はシリンダボア25側を示し、左側は反シリンダボア25側を示している。後述する図7(B)及び図9(B)についても同様である。
【0063】
上記力によりライナ本体22が押し下げられ、シム35を設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体22の下端面22Aがシリンダブロック本体14の底部16に密着する。
【0064】
そして、ヘッドボルト29の締付けを完了すると、アッパデッキ部23が外側壁15と、シリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13との間に挟まれて締結される。この締結により、ライナ本体22がシリンダブロック本体14に圧接されてシリンダブロック12が構成されるとともに、このシリンダブロック12上にシリンダヘッドガスケット31を介してシリンダヘッド13が固定される。また、ライナ本体22、アッパデッキ部23、外側壁15及び底部16によって、ウォータジャケット26となる空間が形成される。
【0065】
このようにして組立てられたエンジン11の運転時には燃焼室で空気及び燃料の混合気が燃焼される。この燃焼に伴い発生した燃焼ガスの熱が、シリンダブロック12、シリンダヘッド13、シリンダヘッドガスケット31等に伝わる。この燃焼ガスは、シリンダヘッドガスケット31によってシールされ、シリンダブロック12及びシリンダヘッド13間の隙間から外部へ漏れ出ることが抑制される。
【0066】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)シリンダヘッドガスケット31の下面において、ボルト孔34(ヘッドボルト29)を挟んで孔33(シリンダボア25)の反対側となる箇所にシム35を設けている。このため、ヘッドボルト29の締付けに際しライナ本体22に伝達される力を、シムを設けない場合よりも大きくすることができる。その結果、ライナ本体22の下端面22Aの底部16に対する面圧がヘッドボルト29の締付けに伴い低下するのを抑制し、もって下端面22A及び底部16間のシール性の低下を解消することができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
第2実施形態は、シリンダヘッドガスケット31の下面であって孔33の周りに円環状のシム41が設けられている。このシム41が設けられる箇所は、ライナ本体22の上方となる箇所である。ここでは、シム41はライナ本体22の厚みよりも狭い幅を有している。シム41は、上記第1実施形態でのシム35と同様、強度が高く、耐熱性に優れた材料であるステンレス鋼によって薄板状に形成されている。なお、第1実施形態で設けられたシム35は、第2実施形態では割愛されている。上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の部材、箇所等には同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
上記シリンダヘッドガスケット31を用いてシリンダブロック12にシリンダヘッド13を組み付ける際には、全てのライナ本体22を、外側壁15によって囲まれた空間に配置する。ライナ本体22の下端面22Aとシリンダブロック本体14の底部16との間にシール材24を介在させた状態で、アッパデッキ部23を外側壁15上に配置する。アッパデッキ部23の上にシリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13を順に配置する。この状態では、シリンダヘッドガスケット31の下面に設けられたシム41が、シリンダライナ21におけるライナ本体22の上端面に接触する。
【0069】
続いて、ヘッドボルト29を、シリンダヘッド13、ボルト孔34、貫通孔28、ボルト穴27に挿入する。この段階、すなわちヘッドボルト29を締付ける前には、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31の基板32はシム41によって支持され、シリンダライナ21から浮いた状態となる。
【0070】
ヘッドボルト29をボルト穴27に螺入させてゆくと、図7(A)に示すように、そのヘッドボルト29の締付けに伴う力がシリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31に伝達される。この伝達により、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31におけるヘッドボルト29の近傍部分が下方へ撓み、シリンダライナ21のアッパデッキ部23に接触する。シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31のそのほかの箇所、特に、シム41よりもヘッドボルト29側の箇所は下方へ撓む。その結果、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31はシム41を介してライナ本体22に間接的に接触するとともに、アッパデッキ部23においてヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に直接接触する。シリンダヘッドガスケット31の下面においてシリンダライナ21の上端面との接触に関わる箇所の面積は、シムが設けられない状態でシリンダヘッドガスケット31がシリンダライナ21の上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルト29の締付けによる力がシリンダライナ21に伝達される。
【0071】
従って、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31を通じてライナ本体22に伝達される力は、図7(B)において実線で示すように、シムを設けない場合に同ライナ本体22に伝達される力(同図の二点鎖線参照)よりも大きくなる。この力によりライナ本体22が押し下げられ、シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体22の下端面22Aがシリンダブロック本体14の底部16に密着する。
【0072】
そして、全てのヘッドボルト29の締付けを完了すると、アッパデッキ部23が外側壁15と、シリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13との間に挟まれて締結される。この締結により、ライナ本体22がシリンダブロック本体14に圧接されてシリンダブロック12が構成されるとともに、このシリンダブロック12上にシリンダヘッドガスケット31を介してシリンダヘッド13が固定される。
【0073】
以上詳述した第2実施形態によれば、次の効果が得られる。
(2)シリンダヘッドガスケット31の下面において、ライナ本体22の略上方となる箇所(孔33の周囲)にシム41を設けている。このため、ヘッドボルト29の締付けに際しライナ本体22に伝達される力を、シムを設けない場合よりも大きくすることができる。その結果、上記(1)と同様、ライナ本体22の下端面22Aの底部16に対する面圧がヘッドボルト29の締付けに伴い低下するのを抑制し、もって下端面22A及び底部16間のシール性の低下を解消することができる。
【0074】
(3)シム41をシリンダボア25を囲む円環状としているため、シリンダボア25の周りにおけるシリンダヘッドガスケット31の面圧を略均一にし、このシム41を設けたことにより燃焼ガスのシール性が低下するのを抑制することができる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
第3実施形態は、シリンダヘッドガスケット31の下面に2種類のシム(第1シム51、第2シム52)が設けられている。一方のシム(第1シム51)は第1実施形態のシム35と同様、各ボルト孔34(ヘッドボルト29)を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に設けられている。他方のシム(第2シム52)は第2実施形態のシム41と同様、円環状をなし、孔33の周り、すなわちライナ本体22の上方となる箇所に設けられている。第1シム51及び第2シム52は、上記シム35,41と同様、強度が高く、耐熱性に優れた材料であるステンレス鋼によって薄板状に形成されている。上記以外の構成は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。そのため、両実施形態と同様の部材、箇所等には同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
上記シリンダヘッドガスケット31を用いてシリンダブロック12にシリンダヘッド13を組み付ける際には、全てのライナ本体22を、外側壁15によって囲まれた空間に配置する。ライナ本体22の下端面22Aとシリンダブロック本体14の底部16との間にシール材24を介在させた状態で、アッパデッキ部23を外側壁15上に配置する。アッパデッキ部23の上にシリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13を順に配置する。この状態では、シリンダヘッドガスケット31の下面に設けられた第1シム51が、ヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側(図9ではヘッドボルト29の左側)となる箇所においてアッパデッキ部23に接触し、第2シム52がライナ本体22の上端面に接触する。
【0077】
続いて、ヘッドボルト29を、シリンダヘッド13、ボルト孔34、貫通孔28及びボルト穴27に挿入する。この段階、すなわちヘッドボルト29を締付ける前には、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31の基板32は第1シム51及び第2シム52によって支持されて、シリンダライナ21から浮いた状態となる。
【0078】
ヘッドボルト29をボルト穴27に螺入させてゆくと、その締付けに伴う力がシリンダヘッド13に伝達される。この伝達により、図9(A)に示すように、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31における第1シム51及び第2シム52間の部分が下方へ撓み、ヘッドボルト29の近傍部分でアッパデッキ部23に接触する。このようにして、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31は第1シム51を介し、アッパデッキ部23においてヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に間接的に接触するとともに、第2シム52を介してライナ本体22の上端面に間接的に接触する。また、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31は、ヘッドボルト29の近傍部分においてアッパデッキ部23に直接接触する。シリンダヘッドガスケット31の下面においてシリンダライナ21の上端面との接触に関わる箇所の面積は、シム35が設けられずにシリンダヘッドガスケット31がシリンダライナ21の上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルト29の締付けによる力がシリンダライナ21に伝達される。
【0079】
従って、図9(B)において実線で示すように、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31を通じてライナ本体22に伝達される力は、両シムを設けない場合に同ライナ本体22に伝達される力(同図の二点鎖線参照)よりも大きくなる。この力によりライナ本体22が押し下げられ、両シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体22の下端面22Aがシリンダブロック本体14の底部16に密着する。
【0080】
そして、全てのヘッドボルト29の締付けを完了すると、アッパデッキ部23が外側壁15と、シリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13との間に挟まれて締結される。この締結により、ライナ本体22がシリンダブロック本体14に圧接されてシリンダブロック12が構成されるとともに、このシリンダブロック12上にシリンダヘッドガスケット31を介してシリンダヘッド13が固定される。
【0081】
以上詳述した第3実施形態によれば、上述した(3)に加え次の効果が得られる。
(4)シリンダヘッドガスケット31の下面において、ヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に第1シム51を設け、ライナ本体22の略上方となる箇所に第2シム52を設けている。このため、ヘッドボルト29の締付けに際しライナ本体22に伝達される力を、こうしたシムを一切設けない場合よりも大きくすることができる。その結果、上記(1)と同様、ライナ本体22の下端面22Aの底部16に対する面圧がヘッドボルト29の締付けに伴い低下するのを抑制し、もって下端面22A及び底部16間のシール性の低下を解消することができる。
【0082】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・第1実施形態において、隣合うシム35,35同士を連結してもよい。また、第3実施形態において、隣合う第1シム51,51同士を連結してもよい。このようにしても、第1及び第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
・第1実施形態におけるシム35、及び第3実施形態における第1シム51を、シリンダヘッドガスケット31の基板32の上面又は上下両面に設けてもよい。第2実施形態におけるシム41、及び第3実施形態における第2シム52についても同様に、シリンダヘッドガスケット31の基板32の上面又は上下両面に設けてもよい。
【0084】
・第1実施形態におけるシム35、及び第3実施形態における第1シム51の各位置は、基板32において、各ボルト孔34(ヘッドボルト29)を挟んで孔33(シリンダボア25)の反対側となる箇所であればよい。従って、この条件が満たされる範囲で、第1実施形態や第3実施形態よりもボルト孔34(ヘッドボルト29)から離れた箇所にシム35や第1シム51を配置してもよい。
【0085】
・第2実施形態におけるシム41、及び第3実施形態における第2シム52の位置は、基板32において、孔33の周囲(ライナ本体22の略上方となる箇所)であればよい。ここでのライナ本体22の略上方とは、先述したように、ヘッドボルト29の締結によりライナ本体22が受ける力が、シムを設けない場合よりも大きくなる範囲であれば、ライナ本体22の真上からずれていてもよいことを意味する。従って、この条件を満たす範囲内でシム41及び第2シム52の位置を変更してもよい。例えば、ライナ本体22とアッパデッキ部23との境界部分にシム41及び第2シム52を配置してもよい。
【0086】
・第1実施形態におけるシム35は、シリンダヘッド13及びアッパデッキ部23間であり、かつヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所(以下、第1箇所という)に位置するものであればよい。
【0087】
従って、このシムを、シリンダヘッドガスケット31とは異なる部材(部品)に設けてもよい。例えば、図10(A)に示すように、シリンダヘッド13の下面において上記第1箇所に対応する箇所に、下方へ突出する突部61を設けてもよい。また、図11(A)に示すように、シリンダライナ21のアッパデッキ部23において上記第1箇所に対応する箇所に、上方へ突出する突部65を設けてもよい。これらのシリンダヘッド13やシリンダライナ21をエンジン11の構成部品として用いれば、突部61,65がそれぞれ上記シム35と同様の機能を発揮するため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0088】
さらに、上記第1箇所のシムは上記シリンダヘッドガスケット31の一部、シリンダヘッド13の一部、及びシリンダライナ21の一部ではなく、単独の部材(部品)として用いられてもよい。
【0089】
・第2実施形態におけるシム41は、シリンダヘッド13及びアッパデッキ部23間であり、かつシリンダボア25の近傍となる箇所(以下、第2箇所という)に位置するものであればよい。
【0090】
従って、このシム41を、シリンダヘッドガスケット31とは異なる部材(部品)に設けてもよい。例えば、図10(B)に示すように、シリンダヘッド13の下面において上記第2箇所に対応する箇所に、下方へ突出する突部62を設けてもよい。また、図11(B)に示すように、シリンダライナ21の上端面において上記第2箇所に対応する箇所に、上方へ突出する突部66を設けてもよい。これらのシリンダヘッド13やシリンダライナ21をエンジン11の構成部品として用いれば、突部62,66がそれぞれ上記シム41と同様の機能を発揮するため、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0091】
さらに、上記第2箇所のシムはシリンダヘッドガスケット31の一部、シリンダヘッド13の一部、及びシリンダライナ21の一部ではなく、単独の部材(部品)として用いられてもよい。
【0092】
・第3実施形態における第1シム51はシリンダヘッド13及びアッパデッキ部23間であり、かつヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所(第1箇所)に位置するものであればよい。また、第2シム52は、シリンダヘッド13及びシリンダライナ21間であり、かつシリンダボア25の近傍となる箇所(第2箇所)に位置するものであればよい。
【0093】
従って、これらの第1及び第2シム51,52を、シリンダヘッドガスケット31とは異なる部材(部品)に設けてもよい。例えば、図10(C)に示すように、シリンダヘッド13の下面において上記第1箇所に対応する箇所に、下方へ突出する第1突部63を設け、上記第2箇所に対応する箇所に、下方へ突出する第2突部64を設けてもよい。また、図11(C)に示すように、アッパデッキ部23において上記第1箇所に対応する箇所に、上方へ突出する第1突部67を設け、シリンダライナ21の上端面において上記第2箇所に対応する箇所に、上方へ突出する第2突部68を設けてもよい。これらのシリンダヘッド13やシリンダライナ21をエンジン11の構成部品として用いれば、第1突部63,67がそれぞれ上記第1シム51と同様の機能を発揮し、第2突部64,68がそれぞれ上記第2シム52と同様の機能を発揮するため、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0094】
さらに、上記第1箇所の第1シム、及び上記第2箇所の第2シムは、シリンダヘッドガスケット31の一部、シリンダヘッド13の一部、及びシリンダライナ21の一部ではなく、単独の部材(部品)として用いられてもよい。
【0095】
・シリンダライナ21は、ライナ本体22とアッパデッキ部23とが別部材によって構成され、かつそのアッパデッキ部23が各ライナ本体22の上端外側に固定されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態におけるエンジンの部分破断斜視図。
【図2】シリンダブロック本体、シリンダライナ及びシリンダヘッドガスケットの斜視図。
【図3】エンジンにおけるシリンダヘッドのシリンダブロックに対する締結前の状態を示す部分断面図。
【図4】シリンダヘッドガスケットの底面図。
【図5】(A)はシリンダヘッドのシリンダブロックとの締結部分について、ヘッドボルトを締付けた後の状態を示す部分断面図であり、(B)はボルト締結によりシリンダライナに加わる力の分布を示す特性図。
【図6】本発明を具体化した第2実施形態におけるシリンダヘッドガスケットの底面図。
【図7】(A)はシリンダヘッドのシリンダブロックとの締結部分について、ヘッドボルトを締付けた後の状態を示す部分断面図であり、(B)はボルト締結によりシリンダライナに加わる力の分布を示す特性図。
【図8】本発明を具体化した第3実施形態におけるシリンダヘッドガスケットの底面図。
【図9】(A)はシリンダヘッドのシリンダブロックとの締結部分について、ヘッドボルトを締付けた後の状態を示す部分断面図であり、(B)はボルト締結によりシリンダライナに加わる力の分布を示す特性図。
【図10】(A)〜(C)は、シムとして機能する突部をシリンダヘッドの下面に設けた別の実施形態を示す部分断面図。
【図11】(A)〜(C)は、シムとして機能する突部をシリンダライナの上端面に設けた別の実施形態を示す部分断面図。
【図12】(A)は背景技術におけるシリンダヘッドのシリンダブロックとの締結部分を示す部分断面図であり、(B)はボルト締結によりシリンダライナに加わる力の分布を示す特性図。
【符号の説明】
【0097】
11…エンジン、12…シリンダブロック、13…シリンダヘッド、14…シリンダブロック本体、15…外側壁、16…底部、21…シリンダライナ、22…ライナ本体、22A…下端面、23…アッパデッキ部、25…シリンダボア、29…ヘッドボルト、31…シリンダヘッドガスケット、35,41…シム、51…第1シム、52…第2シム、61,62,65,66…突部、63,67…第1突部、64,68…第2突部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割型のシリンダブロックが用いられたエンジンに関するものである。また、本発明は、上記エンジンを構成するシリンダヘッド、シリンダブロック及びシリンダヘッドガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのシリンダブロックとして、シリンダボア壁と、そのシリンダボア壁を囲む外側壁と、それらのシリンダボア壁及び外側壁の上端部間をつなぐアッパデッキ部とを備え、全体を鋳造等により一体形成したものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。また、上記シリンダボア壁をシリンダライナによって構成したものも知られている。これらのシリンダブロックを用いたエンジンでは、シリンダヘッドがヘッドボルトにより外側壁の複数箇所に締結される。
【0003】
これに代え、近年では、シリンダブロックの一形態として、図12(A)に示すように、シリンダライナ71とシリンダブロック本体75とに分割されたタイプが考えられている。シリンダライナ71は、シリンダボア72を有する円筒状のライナ本体73と、ライナ本体73の上端外側に設けられたアッパデッキ部74とを備える。シリンダブロック本体75は、ライナ本体73を取り囲む外側壁76と、ライナ本体73の下端面73Aが密着される底部77とを備える。そして、ライナ本体73、アッパデッキ部74、外側壁76及び底部77によって囲まれた空間がウォータジャケット78となる。この分割タイプのシリンダブロック79は、ウォータジャケット78の設計自由度の向上や鋳型構造の簡略化等を通じて、エンジンにおける冷却性能の向上、小型化等を実現しようとするものである。
【0004】
上記分割タイプのシリンダブロック79を用いたエンジン81では、その組付けに際し、外側壁76によって囲まれる空間にライナ本体73が配置される。ライナ本体73の下端面73Aと、シリンダブロック本体75の底部77との間にシール材82が介在された状態で、アッパデッキ部74が外側壁76上に載置される。さらに、アッパデッキ部74上にシリンダヘッドガスケット83を介してシリンダヘッド84が配置される。そして、アッパデッキ部74を通して外側壁76に螺入されるヘッドボルト85により、シリンダライナ71がシリンダブロック本体75に締結されてシリンダブロック79が構成されるとともに、シリンダヘッド84がシリンダヘッドガスケット83を介してそのシリンダブロック79に締結される。
【特許文献1】特許第3089929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ヘッドボルト85を外側壁76に締付けた場合、その締付けに伴いヘッドボルト85からシリンダヘッド84及びシリンダヘッドガスケット83を通じてシリンダライナ71に加わる力は均一ではない。この力は、図12(B)に示すようにヘッドボルト85の近傍では大きく、ヘッドボルト85から離れるに従い小さくなる。このことは、ヘッドボルト85から比較的離れた箇所に位置するライナ本体73に加わる力が小さいことを意味する。なお、図12(B)の横軸は、図12(A)におけるシリンダライナ71の上端面についてヘッドボルト85を基準とした場合の位置を示し、縦軸はヘッドボルト85を締付けた場合にシリンダライナ71の上端面に加わる力を示している。
【0006】
その結果、上記分割タイプのシリンダブロック79では、ライナ本体73の下端面73Aの底部77に対する面圧が低下する。場合によっては、図12(A)において二点鎖線で誇張して示すように、ライナ本体73の下端面73Aが底部77から浮き上がり、その結果、シール性の低下を招くおそれがある。
【0007】
一方、全体が一体に形成されたタイプのシリンダブロックでも、上記と同様、ヘッドボルトの締付けに伴いシリンダボア壁に加わる力は小さい。しかし、このタイプでは、シリンダボア壁の下端がシリンダブロックの底部に連結されていることから、分割タイプのシリンダブロックのような不具合は起こらない。
【0008】
なお、上記特許文献1には、一体型のシリンダブロックに装着されるシリンダヘッドガスケットが記載されているが、これは、シリンダボア壁の変形を抑制することを目的として、同ガスケットにおけるシール部の位置を工夫したにすぎず、分割タイプのシリンダブロックに特有の上記現象について対策したものではない。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、分割タイプのシリンダブロックを用いたエンジンにおいて、ライナ本体の下端面のシリンダブロック本体の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
<共通の構成について>
請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明にかかるエンジンは、共通の構成として、シリンダブロックとその上側に配置されるシリンダヘッドとを備え、前記シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されており、さらに、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダヘッドが前記外側壁に締結されるものである。
【0011】
また、請求項4〜6のいずれか1つに記載の発明にかかるシリンダヘッドは、共通の構成として、シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されたエンジンに適用され、前記シリンダブロックの上側に配置された状態で、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記外側壁に締結されるものである。
【0012】
また、請求項7〜9のいずれか1つに記載の発明にかかるシリンダブロックは、共通の構成として、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより、前記シリンダライナ上のシリンダヘッドが前記外側壁に締結されるものである。
【0013】
さらに、請求項10〜12のいずれか1つに記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットは、共通の構成として、シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、前記シリンダブロックの上側に配置されたシリンダヘッドが、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダブロックの前記外側壁に締結されるエンジンに適用され、前記シリンダヘッドと前記シリンダライナとの間に介在されるものである。
【0014】
<各請求項に記載の発明について>
(請求項1、及びそれに関連する請求項4,7,10に記載の各発明について)
請求項1に記載の発明にかかるエンジンでは、上述した請求項1〜3に記載の発明にかかるエンジンの共通構成に加え、前記シリンダヘッド及び前記アッパデッキ部間であり、かつ前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所にシムが設けられているとする。
【0015】
上記請求項1に記載の発明によれば、シリンダヘッドのシリンダブロックへの締結に際し、外側壁によって囲まれた空間にシリンダライナのライナ本体が配置される。ライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着された状態で、アッパデッキ部が外側壁上に載置される。さらに、そのシリンダライナの上側にシムを介してシリンダヘッドが配置される。シムは、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に位置する。そして、ヘッドボルトがシリンダヘッド及びアッパデッキ部に挿通され、外側壁に螺入される。このヘッドボルトが締付けられる前には、シリンダヘッドはシムにより支持されてシリンダライナから浮いた状態となる。
【0016】
ヘッドボルトが外側壁に螺入されてゆくと、そのヘッドボルトの締付けに伴う力がシリンダヘッドに伝達される。この伝達により、シリンダヘッドにおけるヘッドボルトの近傍部分が下方へ撓んでアッパデッキ部に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドのそのほかの箇所、特に、シムよりもシリンダボア側の箇所は下方へ撓む。その結果、シリンダヘッドはシムを介し、アッパデッキ部においてヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側の箇所に間接的に接触するとともに、ライナ本体の上端面に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドの下面においてシリンダライナとの接触に関わる箇所の面積は、シムが設けられずにシリンダヘッドがシリンダライナの上端面全面に直接又は間接的に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルトの締付けによる力がシリンダライナに伝達される。従って、シリンダライナのうちライナ本体に伝達される力は、シムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。このように請求項1に記載の発明によれば、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制することができる。
【0017】
ここで、上記請求項1に記載の発明におけるシムとしては、例えば、請求項4に記載の発明によるように、シリンダヘッドに設けられた突部により構成されるものであってもよいし、請求項7に記載の発明によるように、シリンダブロックに設けられた突部により構成されるものであってもよい。また、上記シムは、請求項10に記載の発明によるように、シリンダヘッドガスケットに設けられたものであってもよい。
【0018】
すなわち、請求項4に記載の発明にかかるシリンダヘッドでは、上述した請求項4〜6に記載の発明にかかるシリンダヘッドの共通構成に加え、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、下方へ突出する突部が設けられているとする。
【0019】
上記請求項4に記載の発明にかかるシリンダヘッドを用い、これをヘッドボルトによってシリンダブロックに締結すると、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた突部が、上記請求項1に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0020】
また、請求項7に記載の発明にかかるシリンダブロックでは、上述した請求項7〜9に記載の発明にかかるシリンダブロックの共通構成に加え、前記アッパデッキ部について、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、上方へ突出する突部が設けられているとする。
【0021】
上記請求項7に記載の発明にかかるシリンダブロックを用い、これにヘッドボルトによってシリンダヘッドを締結すると、アッパデッキ部について、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた突部が、上記請求項1に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0022】
さらに、請求項10に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットでは、上述した請求項10〜12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットの共通構成に加え、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所にシムが設けられているとする。
【0023】
上記請求項10に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットをシリンダヘッド及びシリンダブロック間に介在させ、ヘッドボルトによってシリンダヘッドをシリンダブロックに締結すると、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられたシムが、上記請求項1に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0024】
このように、シリンダヘッド及びシリンダブロックの各突部、及びシリンダヘッドガスケットのシムが、それぞれ請求項1に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮することから、ヘッドボルトが締付けられたときにライナ本体に伝達される力は、突部やシムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、突部やシムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。その結果、請求項1に記載の発明と同様、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧低下を抑制することができる。
【0025】
(請求項2、及びそれに関連する請求項5,8,11に記載の各発明について)
請求項2に記載の発明にかかるエンジンでは、上述した請求項1〜3に記載の発明にかかるエンジンの共通構成に加え、前記シリンダヘッド及び前記シリンダライナ間であり、かつ前記シリンダボアの近傍にシムが設けられているとする。
【0026】
上記請求項2に記載の発明によれば、シリンダヘッドのシリンダブロックへの締結に際し、外側壁によって囲まれた空間にシリンダライナのライナ本体が配置される。ライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着された状態で、アッパデッキ部が外側壁上に載置される。さらに、そのシリンダライナの上側にシムを介してシリンダヘッドが配置される。シムは、シリンダヘッド及びシリンダライナ間におけるシリンダボアの近傍に位置する。そして、ヘッドボルトがシリンダヘッド及びアッパデッキ部に挿通され、外側壁に螺入される。このヘッドボルトが締付けられる前には、シリンダヘッドはシムにより支持されて、シリンダライナから浮いた状態となる。
【0027】
ヘッドボルトが外側壁に螺入されてゆくと、そのヘッドボルトの締付けに伴う力がシリンダヘッドに伝達される。この伝達により、シリンダヘッドにおけるヘッドボルトの近傍部分が下方へ撓んでアッパデッキ部に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドのそのほかの箇所、特に、シムよりもヘッドボルト側の箇所は下方へ撓む。その結果、シリンダヘッドはシムを介してライナ本体に間接的に接触するとともに、アッパデッキ部においてヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドの下面においてシリンダライナの上端面との接触に関わる箇所の面積は、シムが設けられずにシリンダヘッドがシリンダライナの上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルトの締付けによる力がシリンダライナに伝達される。従って、シリンダライナのうちライナ本体に伝達される力は、シムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。このように請求項2に記載の発明によれば、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制することができる。
【0028】
ここで、上記請求項2に記載の発明におけるシムとしては、例えば、請求項5に記載の発明によるように、シリンダヘッドに設けられた突部により構成されるものであってもよいし、請求項8に記載の発明によるように、シリンダブロックに設けられた突部により構成されるものであってもよい。また、上記シムは、請求項11に記載の発明によるように、シリンダヘッドガスケットに設けられたものであってもよい。
【0029】
すなわち、請求項5に記載の発明にかかるシリンダヘッドでは、上述した請求項4〜6に記載の発明にかかるシリンダヘッドの共通構成に加え、前記ライナ本体の略上方となる箇所に、下方へ突出する突部が設けられているとする。
【0030】
ここに、ライナ本体の略上方とは、必ずしもライナ本体の真上である必要はなく、ヘッドボルトの締結によりライナ本体に加わる力が、シムを設けない場合よりも大きくなる範囲であれば、ライナ本体の真上からずれていてもよいことを意味する。アッパデッキ部のライナ本体との境界部分の上方も、この略上方に含まれるものとする。請求項6,11,12における「ライナ本体の略上方」についても同様とする。
【0031】
上記請求項5に記載の発明にかかるシリンダヘッドを用い、これをヘッドボルトによってシリンダブロックに締結すると、ライナ本体の略上方となる箇所に設けられた突部が、上記請求項2に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0032】
また、請求項8に記載の発明にかかるシリンダブロックでは、上述した請求項7〜9に記載の発明にかかるシリンダブロックの共通構成に加え、前記シリンダライナの上端面の前記シリンダボアの近傍に、上方へ突出する突部が設けられているとする。
【0033】
上記請求項8に記載の発明にかかるシリンダブロックを用い、これにヘッドボルトによってシリンダヘッドを締結すると、シリンダライナの上端面のシリンダボアの近傍に設けられた突部が、上記請求項2に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0034】
さらに、請求項11に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットでは、請求項10〜12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットの共通構成に加え、前記ライナ本体の略上方となる箇所にシムが設けられているとする。
【0035】
上記請求項11に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットをシリンダヘッド及びシリンダブロック間に介在させ、ヘッドボルトによってシリンダヘッドをシリンダブロックに締結すると、ライナ本体の略上方となる箇所に設けられたシムが、上記請求項2に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮する。
【0036】
このように、シリンダヘッド及びシリンダブロックの各突部、及びシリンダヘッドガスケットのシムが、それぞれ請求項2に記載の発明におけるシムと同様の機能を発揮することから、ヘッドボルトが締付けられたときにライナ本体に伝達される力は、突部やシムを設けていない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、突部やシムを設けていない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。その結果、請求項2に記載の発明と同様、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧低下を抑制することができる。
【0037】
(請求項3、及びそれに関連する請求項6,9,12に記載の各発明について)
請求項3に記載の発明にかかるエンジンでは、上述した請求項1〜3に記載の発明にかかるエンジンの共通構成に加え、前記シリンダヘッド及び前記アッパデッキ部間であり、かつ前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に第1シムが設けられ、前記シリンダヘッド及び前記シリンダライナ間であり、かつ前記シリンダボアの近傍に第2シムが設けられているとする。
【0038】
上記請求項3に記載の発明によれば、シリンダヘッドのシリンダブロックへの締結に際し、外側壁によって囲まれた空間にシリンダライナのライナ本体が配置される。ライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着された状態で、アッパデッキ部が外側壁上に載置される。さらに、そのシリンダライナの上側に2種類のシム(第1シム及び第2シム)を介してシリンダヘッドが配置される。一方のシム(第1シム)は、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に位置し、他方のシム(第2シム)はシリンダボアの近傍に位置する。そして、ヘッドボルトがシリンダヘッド及びアッパデッキ部に挿通され、外側壁に螺入される。このヘッドボルトが締付けられる前には、シリンダヘッドは両シムにより支持されて、シリンダライナから浮いた状態となる。
【0039】
ヘッドボルトが外側壁に螺入されてゆくと、そのヘッドボルトの締付けに伴う力がシリンダヘッドに伝達される。この伝達により、シリンダヘッドにおける第1シム及び第2シム間の部分が下方へ撓み、ヘッドボルトの近傍部分でアッパデッキ部に直接又は間接的に接触する。このようにして、シリンダヘッドは第1シムを介し、アッパデッキ部においてヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に間接的に接触するとともに、第2シムを介してライナ本体の上端面に間接的に接触し、ヘッドボルトの近傍部分においてアッパデッキ部に直接又は間接的に接触する。シリンダヘッドの下面においてシリンダライナの上端面との接触に関わる箇所の面積は、シムが設けられずにシリンダヘッドがシリンダライナの上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルトの締付けによる力がシリンダライナに伝達される。従って、シリンダライナのうちライナ本体に伝達される力は、シムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。このように請求項3に記載の発明によれば、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧がヘッドボルトの締付けに伴い低下するのを抑制することができる。
【0040】
ここで、上記請求項3に記載の発明における第1シム及び第2シムとしては、例えば、請求項6に記載の発明によるように、シリンダヘッドに設けられた第1突部及び第2突部により構成されるものであってもよいし、請求項9に記載の発明によるように、シリンダブロックに設けられた第1突部及び第2突部により構成されるものであってもよい。また、上記第1シム及び第2シムは、請求項12に記載の発明によるように、シリンダヘッドガスケットに設けられたものであってもよい。
【0041】
すなわち、請求項6に記載の発明にかかるシリンダヘッドでは、上述した請求項4〜6に記載の発明にかかるシリンダヘッドの共通構成に加え、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、下方へ突出する第1突部が設けられ、前記ライナ本体の略上方となる箇所に、下方へ突出する第2突部が設けられているとする。
【0042】
上記請求項6に記載の発明にかかるシリンダヘッドを用い、これをヘッドボルトによってシリンダブロックに締結すると、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた第1突部が、上記請求項3に記載の発明における第1シムと同様の機能を発揮する。また、ライナ本体の略上方となる箇所に設けられた第2突部が、上記請求項3に記載の発明における第2シムと同様の機能を発揮する。
【0043】
また、請求項9に記載の発明にかかるシリンダブロックでは、上述した請求項7〜9に記載の発明にかかるシリンダブロックの共通構成に加え、前記アッパデッキ部について、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、上方へ突出する第1突部が設けられ、前記シリンダライナの上端面の前記シリンダボアの近傍に、上方へ突出する第2突部が設けられているとする。
【0044】
上記請求項9に記載の発明にかかるシリンダブロックを用い、このシリンダブロックに対し、ヘッドボルトによってシリンダヘッドを締結すると、アッパデッキ部について、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた第1突部が、上記請求項3に記載の発明における第1シムと同様の機能を発揮する。また、シリンダライナの上端面のシリンダボアの近傍に設けられた第2突部が、上記請求項3に記載の発明における第2シムと同様の機能を発揮する。
【0045】
さらに、請求項12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットでは、請求項10〜12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットの共通構成に加え、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に第1シムが設けられ、前記ライナ本体の略上方となる箇所に第2シムが設けられているとする。
【0046】
上記請求項12に記載の発明にかかるシリンダヘッドガスケットを、シリンダヘッド及びシリンダブロック間に介在させ、ヘッドボルトによってシリンダヘッドをシリンダブロックに締結すると、ヘッドボルトを挟んでシリンダボアの反対側となる箇所に設けられた第1シムが、上記請求項3に記載の発明における第1シムと同様の機能を発揮する。また、ライナ本体の略上方となる箇所に設けられた第2シムが、上記請求項3に記載の発明における第2シムと同様の機能を発揮する。
【0047】
このように、シリンダヘッド及びシリンダブロックの各突部(第1突部、第2突部)、及びシリンダヘッドガスケットのシム(第1シム、第2シム)が、それぞれ請求項3に記載の発明における第1シム及び第2シムと同様の機能を発揮する。このことから、ヘッドボルトが締付けられたときにライナ本体に伝達される力は、突部やシムを設けない場合に同ライナ本体に伝達される力よりも大きくなる。この力によりライナ本体が押し下げられ、突部やシムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体の下端面がシリンダブロック本体の底部に密着する。その結果、請求項3に記載の発明と同様、ライナ本体の下端面の底部に対する面圧低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
図1は車両に搭載されるエンジン11の一部を示している。このエンジン11は、ピストンの往復直線運動をクランク機構によって回転運動に変換して、出力軸であるクランクシャフトを回転させるタイプのエンジン(レシプロエンジン)である。
【0049】
図1〜図3に示すように、エンジン11は、シリンダブロック12と、その上側に配置されて複数本のヘッドボルト29によりシリンダブロック12に締結されるシリンダヘッド13とを備えている。
【0050】
シリンダブロック12は、シリンダブロック本体14及びシリンダライナ21に分割されている。シリンダブロック本体14は、上面が開口された四角枠状の外側壁15と、その外側壁15の下側に位置する底部16及びスカート部17とを備え、全体がアルミニウム合金、マグネシウム合金等の比重の比較的小さな金属材料によって一体に形成されている。
【0051】
外側壁15の複数箇所には、上記ヘッドボルト29の螺入可能なボルト穴27が設けられている。各ボルト穴27は、外側壁15の上面において開口して下方へ延びている。ここでは、ボルト穴27は、外側壁15の四隅に設けられるとともに、その四隅のボルト穴27から外側壁15の側面に沿って所定の距離ずつ隔てた箇所に設けられている。スカート部17の下端部には、クランクシャフト18を回転可能に支持するためのジャーナル部19が設けられている。
【0052】
シリンダライナ21は、気筒毎のライナ本体22と、全てのライナ本体22に共通のアッパデッキ部23とを備え、全体が鋳鉄等の耐摩耗性に優れた金属材料によって一体に形成されている。
【0053】
各ライナ本体22は、上下両端が開放された円筒状をなしており、上記外側壁15によって囲まれた空間に配置されている。各ライナ本体22の下端面22Aは、シール材24を介してシリンダブロック本体14の底部16に密着している。各ライナ本体22の内部空間はシリンダボア25を構成しており、ここにピストン(図示略)が往復動可能に収容される。また、各シリンダボア25においてピストンよりも上側の空間は、燃料及び空気の混合気を燃焼するための燃焼室(図示略)となる。
【0054】
アッパデッキ部23は略平板状をなし、全てのライナ本体22の上端外側に一体に設けられており、外側壁15上に配置されている。アッパデッキ部23について、上記外側壁15のボルト穴27に対応する箇所には、ヘッドボルト29の挿通可能な貫通孔28が設けられている。
【0055】
上記シリンダヘッド13はこのアッパデッキ部23上に配置されている。そして、シリンダヘッド13及びアッパデッキ部23の貫通孔28にそれぞれ挿通されたヘッドボルト29が、外側壁15の対応するボルト穴27に螺入されることにより、アッパデッキ部23及びシリンダヘッド13がシリンダブロック本体14に締結されている。
【0056】
上記の構成を有するエンジン11においては、ライナ本体22、アッパデッキ部23、外側壁15及び底部16によって囲まれた空間が、ウォータジャケット26として機能する。ウォータジャケット26は、シリンダブロック本体14、シリンダライナ21等を冷却するための冷却水の通路である。
【0057】
ところで、上記混合気の燃焼に伴い生じた燃焼ガスの熱及び燃焼圧力はシリンダブロック12及びシリンダヘッド13に伝達される。また、これらの熱及び燃焼圧力はシリンダブロック12及びシリンダヘッド13間の隙間にも作用する。燃焼ガスがこの隙間を通じて外部へ漏れ出るのを抑制するために、シリンダライナ21及びシリンダヘッド13間にシリンダヘッドガスケット31が介在される。
【0058】
図3及び図4に示すように、シリンダヘッドガスケット31の大部分は基板32によって構成されている。基板32において、上記シリンダボア25に対応する箇所には、同シリンダボア25の開口部分と略同一の形状及び大きさを有する円形の孔33があけられている。また、基板32において、上記ボルト穴27及び貫通孔28に対応する箇所には、上記ヘッドボルト29の挿通可能なボルト孔34があけられている。基板32の下面には、図示しないシール部が設けられている。また、基板32の下面であって、各ボルト孔34(ヘッドボルト29)を挟んで孔33(シリンダボア25)の反対側となる箇所にはシム35が設けられている。各シム35は強度が高く、耐熱性に優れた材料、例えばステンレス鋼等によって板状に形成されており、10〜200μmの厚みを有している。また、ここでは、各シム35は、ボルト孔34に沿って略円弧状に形成されている。なお、隣合うシム35,35同士は互いに離間している。
【0059】
上記シリンダヘッドガスケット31を用いて、シリンダヘッド13をシリンダブロック12に組み付ける際には、図3に示すように、全てのライナ本体22を、外側壁15によって囲まれた空間に配置する。ライナ本体22の下端面22Aとシリンダブロック本体14の底部16との間にシール材24を介在させた状態で、アッパデッキ部23を外側壁15上に配置する。アッパデッキ部23の上にシリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13を順に配置する。この状態では、シリンダヘッドガスケット31の下面に設けられたシム35が、ヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側(図4ではヘッドボルト29の左側)となる箇所においてアッパデッキ部23に接触する。
【0060】
続いて、ヘッドボルト29を、シリンダヘッド13、シリンダヘッドガスケット31のボルト孔34、アッパデッキ部23の貫通孔28、外側壁15のボルト穴27に挿入する。この段階、すなわちヘッドボルト29を締付ける前には、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31の基板32はシム35によって支持されて、シリンダライナ21から浮いた状態となる。
【0061】
ヘッドボルト29をボルト穴27に螺入させてゆくと、図5(A)に示すように、そのヘッドボルト29の締付けに伴う力がシリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31に伝達される。この伝達により、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31におけるヘッドボルト29の近傍部分が下方へ撓んでアッパデッキ部23に接触する。シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31のそのほかの箇所、特に、シム35よりもシリンダボア25側の箇所は下方へ撓む。その結果、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31はシム35を介し、アッパデッキ部23においてヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に間接的に接触するとともに、ライナ本体22の上端面に直接接触する。シリンダヘッドガスケット31の下面においてシリンダライナ21との接触に関わる箇所の面積は、シム35が設けられない状態でシリンダヘッドガスケット31がシリンダライナ21の上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルト29の締付けによる力がシリンダライナ21に伝達される。
【0062】
従って、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31を通じてライナ本体22に伝達される力は、図5(B)において実線で示すように、シム35を設けない場合に同ライナ本体22に伝達される力(同図の二点鎖線参照)よりも大きくなる。なお、図5(B)は前述した図12(B)に対応する特性図であり、横軸は、シリンダライナ21の上端面についてヘッドボルト29を基準とした場合の位置を示し、縦軸はヘッドボルト29を締付けた場合にシリンダライナ21の上端面に加わる力を示している。横軸において、基準位置(ヘッドボルト29)よりも右側はシリンダボア25側を示し、左側は反シリンダボア25側を示している。後述する図7(B)及び図9(B)についても同様である。
【0063】
上記力によりライナ本体22が押し下げられ、シム35を設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体22の下端面22Aがシリンダブロック本体14の底部16に密着する。
【0064】
そして、ヘッドボルト29の締付けを完了すると、アッパデッキ部23が外側壁15と、シリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13との間に挟まれて締結される。この締結により、ライナ本体22がシリンダブロック本体14に圧接されてシリンダブロック12が構成されるとともに、このシリンダブロック12上にシリンダヘッドガスケット31を介してシリンダヘッド13が固定される。また、ライナ本体22、アッパデッキ部23、外側壁15及び底部16によって、ウォータジャケット26となる空間が形成される。
【0065】
このようにして組立てられたエンジン11の運転時には燃焼室で空気及び燃料の混合気が燃焼される。この燃焼に伴い発生した燃焼ガスの熱が、シリンダブロック12、シリンダヘッド13、シリンダヘッドガスケット31等に伝わる。この燃焼ガスは、シリンダヘッドガスケット31によってシールされ、シリンダブロック12及びシリンダヘッド13間の隙間から外部へ漏れ出ることが抑制される。
【0066】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)シリンダヘッドガスケット31の下面において、ボルト孔34(ヘッドボルト29)を挟んで孔33(シリンダボア25)の反対側となる箇所にシム35を設けている。このため、ヘッドボルト29の締付けに際しライナ本体22に伝達される力を、シムを設けない場合よりも大きくすることができる。その結果、ライナ本体22の下端面22Aの底部16に対する面圧がヘッドボルト29の締付けに伴い低下するのを抑制し、もって下端面22A及び底部16間のシール性の低下を解消することができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
第2実施形態は、シリンダヘッドガスケット31の下面であって孔33の周りに円環状のシム41が設けられている。このシム41が設けられる箇所は、ライナ本体22の上方となる箇所である。ここでは、シム41はライナ本体22の厚みよりも狭い幅を有している。シム41は、上記第1実施形態でのシム35と同様、強度が高く、耐熱性に優れた材料であるステンレス鋼によって薄板状に形成されている。なお、第1実施形態で設けられたシム35は、第2実施形態では割愛されている。上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の部材、箇所等には同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
上記シリンダヘッドガスケット31を用いてシリンダブロック12にシリンダヘッド13を組み付ける際には、全てのライナ本体22を、外側壁15によって囲まれた空間に配置する。ライナ本体22の下端面22Aとシリンダブロック本体14の底部16との間にシール材24を介在させた状態で、アッパデッキ部23を外側壁15上に配置する。アッパデッキ部23の上にシリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13を順に配置する。この状態では、シリンダヘッドガスケット31の下面に設けられたシム41が、シリンダライナ21におけるライナ本体22の上端面に接触する。
【0069】
続いて、ヘッドボルト29を、シリンダヘッド13、ボルト孔34、貫通孔28、ボルト穴27に挿入する。この段階、すなわちヘッドボルト29を締付ける前には、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31の基板32はシム41によって支持され、シリンダライナ21から浮いた状態となる。
【0070】
ヘッドボルト29をボルト穴27に螺入させてゆくと、図7(A)に示すように、そのヘッドボルト29の締付けに伴う力がシリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31に伝達される。この伝達により、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31におけるヘッドボルト29の近傍部分が下方へ撓み、シリンダライナ21のアッパデッキ部23に接触する。シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31のそのほかの箇所、特に、シム41よりもヘッドボルト29側の箇所は下方へ撓む。その結果、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31はシム41を介してライナ本体22に間接的に接触するとともに、アッパデッキ部23においてヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に直接接触する。シリンダヘッドガスケット31の下面においてシリンダライナ21の上端面との接触に関わる箇所の面積は、シムが設けられない状態でシリンダヘッドガスケット31がシリンダライナ21の上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルト29の締付けによる力がシリンダライナ21に伝達される。
【0071】
従って、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31を通じてライナ本体22に伝達される力は、図7(B)において実線で示すように、シムを設けない場合に同ライナ本体22に伝達される力(同図の二点鎖線参照)よりも大きくなる。この力によりライナ本体22が押し下げられ、シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体22の下端面22Aがシリンダブロック本体14の底部16に密着する。
【0072】
そして、全てのヘッドボルト29の締付けを完了すると、アッパデッキ部23が外側壁15と、シリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13との間に挟まれて締結される。この締結により、ライナ本体22がシリンダブロック本体14に圧接されてシリンダブロック12が構成されるとともに、このシリンダブロック12上にシリンダヘッドガスケット31を介してシリンダヘッド13が固定される。
【0073】
以上詳述した第2実施形態によれば、次の効果が得られる。
(2)シリンダヘッドガスケット31の下面において、ライナ本体22の略上方となる箇所(孔33の周囲)にシム41を設けている。このため、ヘッドボルト29の締付けに際しライナ本体22に伝達される力を、シムを設けない場合よりも大きくすることができる。その結果、上記(1)と同様、ライナ本体22の下端面22Aの底部16に対する面圧がヘッドボルト29の締付けに伴い低下するのを抑制し、もって下端面22A及び底部16間のシール性の低下を解消することができる。
【0074】
(3)シム41をシリンダボア25を囲む円環状としているため、シリンダボア25の周りにおけるシリンダヘッドガスケット31の面圧を略均一にし、このシム41を設けたことにより燃焼ガスのシール性が低下するのを抑制することができる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
第3実施形態は、シリンダヘッドガスケット31の下面に2種類のシム(第1シム51、第2シム52)が設けられている。一方のシム(第1シム51)は第1実施形態のシム35と同様、各ボルト孔34(ヘッドボルト29)を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に設けられている。他方のシム(第2シム52)は第2実施形態のシム41と同様、円環状をなし、孔33の周り、すなわちライナ本体22の上方となる箇所に設けられている。第1シム51及び第2シム52は、上記シム35,41と同様、強度が高く、耐熱性に優れた材料であるステンレス鋼によって薄板状に形成されている。上記以外の構成は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。そのため、両実施形態と同様の部材、箇所等には同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
上記シリンダヘッドガスケット31を用いてシリンダブロック12にシリンダヘッド13を組み付ける際には、全てのライナ本体22を、外側壁15によって囲まれた空間に配置する。ライナ本体22の下端面22Aとシリンダブロック本体14の底部16との間にシール材24を介在させた状態で、アッパデッキ部23を外側壁15上に配置する。アッパデッキ部23の上にシリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13を順に配置する。この状態では、シリンダヘッドガスケット31の下面に設けられた第1シム51が、ヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側(図9ではヘッドボルト29の左側)となる箇所においてアッパデッキ部23に接触し、第2シム52がライナ本体22の上端面に接触する。
【0077】
続いて、ヘッドボルト29を、シリンダヘッド13、ボルト孔34、貫通孔28及びボルト穴27に挿入する。この段階、すなわちヘッドボルト29を締付ける前には、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31の基板32は第1シム51及び第2シム52によって支持されて、シリンダライナ21から浮いた状態となる。
【0078】
ヘッドボルト29をボルト穴27に螺入させてゆくと、その締付けに伴う力がシリンダヘッド13に伝達される。この伝達により、図9(A)に示すように、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31における第1シム51及び第2シム52間の部分が下方へ撓み、ヘッドボルト29の近傍部分でアッパデッキ部23に接触する。このようにして、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31は第1シム51を介し、アッパデッキ部23においてヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に間接的に接触するとともに、第2シム52を介してライナ本体22の上端面に間接的に接触する。また、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31は、ヘッドボルト29の近傍部分においてアッパデッキ部23に直接接触する。シリンダヘッドガスケット31の下面においてシリンダライナ21の上端面との接触に関わる箇所の面積は、シム35が設けられずにシリンダヘッドガスケット31がシリンダライナ21の上端面全面に接触する場合よりも少ない。そして、これらの接触箇所を通じて、上記ヘッドボルト29の締付けによる力がシリンダライナ21に伝達される。
【0079】
従って、図9(B)において実線で示すように、シリンダヘッド13及びシリンダヘッドガスケット31を通じてライナ本体22に伝達される力は、両シムを設けない場合に同ライナ本体22に伝達される力(同図の二点鎖線参照)よりも大きくなる。この力によりライナ本体22が押し下げられ、両シムを設けない場合よりも高い面圧でもってライナ本体22の下端面22Aがシリンダブロック本体14の底部16に密着する。
【0080】
そして、全てのヘッドボルト29の締付けを完了すると、アッパデッキ部23が外側壁15と、シリンダヘッドガスケット31及びシリンダヘッド13との間に挟まれて締結される。この締結により、ライナ本体22がシリンダブロック本体14に圧接されてシリンダブロック12が構成されるとともに、このシリンダブロック12上にシリンダヘッドガスケット31を介してシリンダヘッド13が固定される。
【0081】
以上詳述した第3実施形態によれば、上述した(3)に加え次の効果が得られる。
(4)シリンダヘッドガスケット31の下面において、ヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所に第1シム51を設け、ライナ本体22の略上方となる箇所に第2シム52を設けている。このため、ヘッドボルト29の締付けに際しライナ本体22に伝達される力を、こうしたシムを一切設けない場合よりも大きくすることができる。その結果、上記(1)と同様、ライナ本体22の下端面22Aの底部16に対する面圧がヘッドボルト29の締付けに伴い低下するのを抑制し、もって下端面22A及び底部16間のシール性の低下を解消することができる。
【0082】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・第1実施形態において、隣合うシム35,35同士を連結してもよい。また、第3実施形態において、隣合う第1シム51,51同士を連結してもよい。このようにしても、第1及び第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
・第1実施形態におけるシム35、及び第3実施形態における第1シム51を、シリンダヘッドガスケット31の基板32の上面又は上下両面に設けてもよい。第2実施形態におけるシム41、及び第3実施形態における第2シム52についても同様に、シリンダヘッドガスケット31の基板32の上面又は上下両面に設けてもよい。
【0084】
・第1実施形態におけるシム35、及び第3実施形態における第1シム51の各位置は、基板32において、各ボルト孔34(ヘッドボルト29)を挟んで孔33(シリンダボア25)の反対側となる箇所であればよい。従って、この条件が満たされる範囲で、第1実施形態や第3実施形態よりもボルト孔34(ヘッドボルト29)から離れた箇所にシム35や第1シム51を配置してもよい。
【0085】
・第2実施形態におけるシム41、及び第3実施形態における第2シム52の位置は、基板32において、孔33の周囲(ライナ本体22の略上方となる箇所)であればよい。ここでのライナ本体22の略上方とは、先述したように、ヘッドボルト29の締結によりライナ本体22が受ける力が、シムを設けない場合よりも大きくなる範囲であれば、ライナ本体22の真上からずれていてもよいことを意味する。従って、この条件を満たす範囲内でシム41及び第2シム52の位置を変更してもよい。例えば、ライナ本体22とアッパデッキ部23との境界部分にシム41及び第2シム52を配置してもよい。
【0086】
・第1実施形態におけるシム35は、シリンダヘッド13及びアッパデッキ部23間であり、かつヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所(以下、第1箇所という)に位置するものであればよい。
【0087】
従って、このシムを、シリンダヘッドガスケット31とは異なる部材(部品)に設けてもよい。例えば、図10(A)に示すように、シリンダヘッド13の下面において上記第1箇所に対応する箇所に、下方へ突出する突部61を設けてもよい。また、図11(A)に示すように、シリンダライナ21のアッパデッキ部23において上記第1箇所に対応する箇所に、上方へ突出する突部65を設けてもよい。これらのシリンダヘッド13やシリンダライナ21をエンジン11の構成部品として用いれば、突部61,65がそれぞれ上記シム35と同様の機能を発揮するため、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0088】
さらに、上記第1箇所のシムは上記シリンダヘッドガスケット31の一部、シリンダヘッド13の一部、及びシリンダライナ21の一部ではなく、単独の部材(部品)として用いられてもよい。
【0089】
・第2実施形態におけるシム41は、シリンダヘッド13及びアッパデッキ部23間であり、かつシリンダボア25の近傍となる箇所(以下、第2箇所という)に位置するものであればよい。
【0090】
従って、このシム41を、シリンダヘッドガスケット31とは異なる部材(部品)に設けてもよい。例えば、図10(B)に示すように、シリンダヘッド13の下面において上記第2箇所に対応する箇所に、下方へ突出する突部62を設けてもよい。また、図11(B)に示すように、シリンダライナ21の上端面において上記第2箇所に対応する箇所に、上方へ突出する突部66を設けてもよい。これらのシリンダヘッド13やシリンダライナ21をエンジン11の構成部品として用いれば、突部62,66がそれぞれ上記シム41と同様の機能を発揮するため、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0091】
さらに、上記第2箇所のシムはシリンダヘッドガスケット31の一部、シリンダヘッド13の一部、及びシリンダライナ21の一部ではなく、単独の部材(部品)として用いられてもよい。
【0092】
・第3実施形態における第1シム51はシリンダヘッド13及びアッパデッキ部23間であり、かつヘッドボルト29を挟んでシリンダボア25の反対側となる箇所(第1箇所)に位置するものであればよい。また、第2シム52は、シリンダヘッド13及びシリンダライナ21間であり、かつシリンダボア25の近傍となる箇所(第2箇所)に位置するものであればよい。
【0093】
従って、これらの第1及び第2シム51,52を、シリンダヘッドガスケット31とは異なる部材(部品)に設けてもよい。例えば、図10(C)に示すように、シリンダヘッド13の下面において上記第1箇所に対応する箇所に、下方へ突出する第1突部63を設け、上記第2箇所に対応する箇所に、下方へ突出する第2突部64を設けてもよい。また、図11(C)に示すように、アッパデッキ部23において上記第1箇所に対応する箇所に、上方へ突出する第1突部67を設け、シリンダライナ21の上端面において上記第2箇所に対応する箇所に、上方へ突出する第2突部68を設けてもよい。これらのシリンダヘッド13やシリンダライナ21をエンジン11の構成部品として用いれば、第1突部63,67がそれぞれ上記第1シム51と同様の機能を発揮し、第2突部64,68がそれぞれ上記第2シム52と同様の機能を発揮するため、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0094】
さらに、上記第1箇所の第1シム、及び上記第2箇所の第2シムは、シリンダヘッドガスケット31の一部、シリンダヘッド13の一部、及びシリンダライナ21の一部ではなく、単独の部材(部品)として用いられてもよい。
【0095】
・シリンダライナ21は、ライナ本体22とアッパデッキ部23とが別部材によって構成され、かつそのアッパデッキ部23が各ライナ本体22の上端外側に固定されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態におけるエンジンの部分破断斜視図。
【図2】シリンダブロック本体、シリンダライナ及びシリンダヘッドガスケットの斜視図。
【図3】エンジンにおけるシリンダヘッドのシリンダブロックに対する締結前の状態を示す部分断面図。
【図4】シリンダヘッドガスケットの底面図。
【図5】(A)はシリンダヘッドのシリンダブロックとの締結部分について、ヘッドボルトを締付けた後の状態を示す部分断面図であり、(B)はボルト締結によりシリンダライナに加わる力の分布を示す特性図。
【図6】本発明を具体化した第2実施形態におけるシリンダヘッドガスケットの底面図。
【図7】(A)はシリンダヘッドのシリンダブロックとの締結部分について、ヘッドボルトを締付けた後の状態を示す部分断面図であり、(B)はボルト締結によりシリンダライナに加わる力の分布を示す特性図。
【図8】本発明を具体化した第3実施形態におけるシリンダヘッドガスケットの底面図。
【図9】(A)はシリンダヘッドのシリンダブロックとの締結部分について、ヘッドボルトを締付けた後の状態を示す部分断面図であり、(B)はボルト締結によりシリンダライナに加わる力の分布を示す特性図。
【図10】(A)〜(C)は、シムとして機能する突部をシリンダヘッドの下面に設けた別の実施形態を示す部分断面図。
【図11】(A)〜(C)は、シムとして機能する突部をシリンダライナの上端面に設けた別の実施形態を示す部分断面図。
【図12】(A)は背景技術におけるシリンダヘッドのシリンダブロックとの締結部分を示す部分断面図であり、(B)はボルト締結によりシリンダライナに加わる力の分布を示す特性図。
【符号の説明】
【0097】
11…エンジン、12…シリンダブロック、13…シリンダヘッド、14…シリンダブロック本体、15…外側壁、16…底部、21…シリンダライナ、22…ライナ本体、22A…下端面、23…アッパデッキ部、25…シリンダボア、29…ヘッドボルト、31…シリンダヘッドガスケット、35,41…シム、51…第1シム、52…第2シム、61,62,65,66…突部、63,67…第1突部、64,68…第2突部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックとその上側に配置されるシリンダヘッドとを備え、
前記シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されており、
さらに、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダヘッドが前記外側壁に締結されるエンジンであって、
前記シリンダヘッド及び前記アッパデッキ部間であり、かつ前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所にシムが設けられていることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
シリンダブロックとその上側に配置されるシリンダヘッドとを備え、
前記シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されており、
さらに、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダヘッドが前記外側壁に締結されるエンジンであって、
前記シリンダヘッド及び前記シリンダライナ間であり、かつ前記シリンダボアの近傍にシムが設けられていることを特徴とするエンジン。
【請求項3】
シリンダブロックとその上側に配置されるシリンダヘッドとを備え、
前記シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されており、
さらに、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダヘッドが前記外側壁に締結されるエンジンであって、
前記シリンダヘッド及び前記アッパデッキ部間であり、かつ前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に第1シムが設けられ、
前記シリンダヘッド及び前記シリンダライナ間であり、かつ前記シリンダボアの近傍に第2シムが設けられていることを特徴とするエンジン。
【請求項4】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されたエンジンに適用され、
前記シリンダブロックの上側に配置された状態で、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記外側壁に締結されるシリンダヘッドであって、
前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、下方へ突出する突部が設けられていることを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項5】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されたエンジンに適用され、
前記シリンダブロックの上側に配置された状態で、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記外側壁に締結されるシリンダヘッドであって、
前記ライナ本体の略上方となる箇所に、下方へ突出する突部が設けられていることを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項6】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されたエンジンに適用され、
前記シリンダブロックの上側に配置された状態で、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記外側壁に締結されるシリンダヘッドであって、
前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、下方へ突出する第1突部が設けられ、
前記ライナ本体の略上方となる箇所に、下方へ突出する第2突部が設けられていることを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項7】
シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより、前記シリンダライナ上のシリンダヘッドが前記外側壁に締結されるシリンダブロックであって、
前記アッパデッキ部について、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、上方へ突出する突部が設けられていることを特徴とするシリンダブロック。
【請求項8】
シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより、前記シリンダライナ上のシリンダヘッドが前記外側壁に締結されるシリンダブロックであって、
前記シリンダライナの上端面の前記シリンダボアの近傍に、上方へ突出する突部が設けられていることを特徴とするシリンダブロック。
【請求項9】
シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより、前記シリンダライナ上のシリンダヘッドが前記外側壁に締結されるシリンダブロックであって、
前記アッパデッキ部について、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、上方へ突出する第1突部が設けられ、
前記シリンダライナの上端面の前記シリンダボアの近傍に、上方へ突出する第2突部が設けられていることを特徴とするシリンダブロック。
【請求項10】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記シリンダブロックの上側に配置されたシリンダヘッドが、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダブロックの前記外側壁に締結されるエンジンに適用され、
前記シリンダヘッドと前記シリンダライナとの間に介在されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所にシムが設けられていることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項11】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記シリンダブロックの上側に配置されたシリンダヘッドが、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダブロックの前記外側壁に締結されるエンジンに適用され、
前記シリンダヘッドと前記シリンダライナとの間に介在されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記ライナ本体の略上方となる箇所にシムが設けられていることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項12】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記シリンダブロックの上側に配置されたシリンダヘッドが、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダブロックの前記外側壁に締結されるエンジンに適用され、
前記シリンダヘッドと前記シリンダライナとの間に介在されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に第1シムが設けられ、
前記ライナ本体の略上方となる箇所に第2シムが設けられていることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項1】
シリンダブロックとその上側に配置されるシリンダヘッドとを備え、
前記シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されており、
さらに、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダヘッドが前記外側壁に締結されるエンジンであって、
前記シリンダヘッド及び前記アッパデッキ部間であり、かつ前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所にシムが設けられていることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
シリンダブロックとその上側に配置されるシリンダヘッドとを備え、
前記シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されており、
さらに、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダヘッドが前記外側壁に締結されるエンジンであって、
前記シリンダヘッド及び前記シリンダライナ間であり、かつ前記シリンダボアの近傍にシムが設けられていることを特徴とするエンジン。
【請求項3】
シリンダブロックとその上側に配置されるシリンダヘッドとを備え、
前記シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されており、
さらに、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダヘッドが前記外側壁に締結されるエンジンであって、
前記シリンダヘッド及び前記アッパデッキ部間であり、かつ前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に第1シムが設けられ、
前記シリンダヘッド及び前記シリンダライナ間であり、かつ前記シリンダボアの近傍に第2シムが設けられていることを特徴とするエンジン。
【請求項4】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されたエンジンに適用され、
前記シリンダブロックの上側に配置された状態で、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記外側壁に締結されるシリンダヘッドであって、
前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、下方へ突出する突部が設けられていることを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項5】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されたエンジンに適用され、
前記シリンダブロックの上側に配置された状態で、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記外側壁に締結されるシリンダヘッドであって、
前記ライナ本体の略上方となる箇所に、下方へ突出する突部が設けられていることを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項6】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割されたエンジンに適用され、
前記シリンダブロックの上側に配置された状態で、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記外側壁に締結されるシリンダヘッドであって、
前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、下方へ突出する第1突部が設けられ、
前記ライナ本体の略上方となる箇所に、下方へ突出する第2突部が設けられていることを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項7】
シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより、前記シリンダライナ上のシリンダヘッドが前記外側壁に締結されるシリンダブロックであって、
前記アッパデッキ部について、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、上方へ突出する突部が設けられていることを特徴とするシリンダブロック。
【請求項8】
シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより、前記シリンダライナ上のシリンダヘッドが前記外側壁に締結されるシリンダブロックであって、
前記シリンダライナの上端面の前記シリンダボアの近傍に、上方へ突出する突部が設けられていることを特徴とするシリンダブロック。
【請求項9】
シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより、前記シリンダライナ上のシリンダヘッドが前記外側壁に締結されるシリンダブロックであって、
前記アッパデッキ部について、前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に、上方へ突出する第1突部が設けられ、
前記シリンダライナの上端面の前記シリンダボアの近傍に、上方へ突出する第2突部が設けられていることを特徴とするシリンダブロック。
【請求項10】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記シリンダブロックの上側に配置されたシリンダヘッドが、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダブロックの前記外側壁に締結されるエンジンに適用され、
前記シリンダヘッドと前記シリンダライナとの間に介在されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所にシムが設けられていることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項11】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記シリンダブロックの上側に配置されたシリンダヘッドが、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダブロックの前記外側壁に締結されるエンジンに適用され、
前記シリンダヘッドと前記シリンダライナとの間に介在されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記ライナ本体の略上方となる箇所にシムが設けられていることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項12】
シリンダブロックが、シリンダボアを有するライナ本体の上端外側にアッパデッキ部を設けてなるシリンダライナと、前記ライナ本体を取り囲む外側壁を有するとともに同ライナ本体の下端面が密着される底部を有するシリンダブロック本体とに分割され、
前記シリンダブロックの上側に配置されたシリンダヘッドが、前記アッパデッキ部に通されたヘッドボルトにより前記シリンダブロックの前記外側壁に締結されるエンジンに適用され、
前記シリンダヘッドと前記シリンダライナとの間に介在されるシリンダヘッドガスケットであって、
前記ヘッドボルトを挟んで前記シリンダボアの反対側となる箇所に第1シムが設けられ、
前記ライナ本体の略上方となる箇所に第2シムが設けられていることを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−23799(P2007−23799A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203225(P2005−203225)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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