説明

エンジンのフィルタ再生制御装置

【課題】エンジンのフィルタ再生制御装置において、フィルタ再生の頻度を高めるとともに、成功率の高い状態の判別をできるだけ簡素にしたシステムで実行することにある。
【解決手段】エンジン制御装置(5)に自動料金収受装置(3)の車載機(4)を通信可能に設け、車載機(4)が路側の自動料金収受装置(8)との通信に基づいて高速走行可能な道路への進入を検知した際にエンジン制御装置(5)へ信号出力し、エンジン制御装置(5)は車載機(4)からの高速走行可能な道路への進入を示す信号出力に基づいて強制的なフィルタ再生を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンのフィルタ再生制御装置に係り、特に排ガス中に微粒子を含むディーゼルエンジン等に設けられたフィルタを再生制御するエンジンのフィルタ再生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたディーゼルエンジンにおいては、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)(以下「フィルタ」という)を設け、このフィルタに微粒子としてのススを捕集させて排ガスの浄化を果たしている。ここで、フィルタは、捕集したススを燃焼させて再生する必要がある。通常、エンジン制御装置(ECM:エンジン・コントロール・モジュール)は、エンジン制御データや各センサ情報からフィルタが捕集したスス量を把握し、必要に応じて排ガス温度を上昇させ、捕集したススを燃焼させてフィルタ再生を行っている。フィルタに入る排ガス温度を上げるために、一般的には、燃焼に寄与しない燃料を燃料噴射弁から噴射し、フィルタの上流側の酸化触媒で燃焼させている。
【0003】
従来のフィルタ再生制御を、図4のタイムチャートに基づいて説明する。
図4に示すように、エンジン2が始動すると(時間t1)、エンジン始動時からの経過時間の計測が始まり、そして、車両が動き始め(時間t2)、その後、エンジン始動時からの経過時間が許可判定値Lに達すると(時間t3)、フィルタ再生許可時間成立時の平均車速の計測が開始され、そして、この平均車速が設定値Mを達すると(時間t4)、フィルタ再生許可条件が成立し、フィルタ(DPF)再生フラグがオンとなり、フィルタ再生が実施され、その後、その平均車速が低下して設定値Mに戻ると(時間t5)、フィルタ再生フラグがオフとなり、フィルタ再生が中断され、そして、車速が零になり(時間t6)、その平均車速も零となる(時間t7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−248762号公報
【特許文献2】特開2003−155925号公報 特許文献1に係るエンジンの排気浄化装置は、高速走行を判別してフィルタを再生するものであり、地図データ等の情報を有するナビゲーションシステムを利用し、高速道路を判別してフィルタ再生を行うものである。 特許文献2に係る内燃機関の排気浄化装置は、車両走行状態に基づいてフィルタ再生制御を行うものであり、高速走行に関して地図データの料金所を考慮するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の高速走行は、負荷が高く、排ガス温度を高くすることが容易でフィルタ再生の条件に適している。つまり、フィルタ再生が必要な状況においては、高速走行を開始したら直ちにフィルタ再生の制御に入ることが、時間を無駄にすることが無く望ましいものである。フィルタ再生の制御の開始が遅れた結果、フィルタ再生の完了に至らなかった場合は、再度のフィルタ再生が必要になり、このため、燃料の無駄使い、燃料によるエンジンオイルの希釈に結びつく等の弊害が生じた。
しかしながら、従来のフィルタ再生制御においては、連続した高速走行であることを直接検出しているわけではなく、現在の車速と一定期間の平均車速を計算し、フィルタ再生の成立条件を満たしていることを確認してからフィルタ再生の制御を開始しているので、時間的な損失(ロス)が生ずる。フィルタ再生には、通常15〜30分程度を要するので、短時間の走行でもフィルタ再生を完了させるためには、時間を無駄にできないものである。
また、上記の特許文献1におけるフィルタ再生の技術では、ススがある程度溜まるまで、フィルタ再生を行わず、高速道路では、溜まったと判断する値が一般道より低いというだけであり、高速道路での走行を開始しても、直ぐにフィルタ再生を開始するものではない。しかし、微粒子が溜まれば、排気効率を下げてしまうので、できる限り微粒子のない状態あるいは少ない状態を保つのが好ましい。
一般のナビゲーションシステムは、処理速度が速く、多くの情報を保有してはいるものの、エンジン制御装置がそのまま利用できる信号出力手段を持っておらず、また、エンジン制御装置は、ナビゲーションシステムの情報信号をそのまま処理できる手段を持っておらず、信頼性を確保した処理速度に抑えられている上に、さらに、多岐にわたる情報を具体的な動作に展開できるだけの処理能力が必要になるため、具体的な動作を指示するごとき、相互通信を成り立たせることが極めて困難であった。
ナビゲーションシステムとエンジン制御装置の一方又は両方を専用設計する必要があり、排気装置の処理能力を確保する目的のために、例えば、オン/オフを切り替えるためだけに使用するには、コストが高くなるという不都合があった。
また、ナビゲーションシステムが自車位置を表示し、広域交通情報を含む各種情報を受信していても、ルート案内を実行していなければ、たとえ、渋滞情報を受信したとしても、単純な情報表示しか行わず、自車関連情報としての処理を行わない(自車関連情報の判断ができない)ので、受信した情報をフィルタ再生制御に常に反映させることができないという不都合があった。
また、高速道路や自動車専用道であっても、日常的あるいは頻繁に通る道は、ルート設定しないで走行する場合も多くなり、装着数と実際の使用数に隔たりがある。例えば、地方且つ渋滞の少ない地域であって、近距離・中距離の通勤のような走行ならば、時間がかからず、高速走行を終えてしまうものである。
【0006】
そこで、この発明の目的は、フィルタ再生の頻度を高めるとともに、成功率の高い状態の判別をできるだけ簡素にしたシステムで実行できるエンジンのフィルタ再生制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、自動料金収受装置の車載機を搭載する車両のエンジンの排気通路に排ガス中の微粒子を捕集するフィルタを設け、このフィルタに捕集された微粒子量が所定量以上になった際には車両走行中に前記フィルタに捕集されている微粒子が燃焼するように前記フィルタの温度を上昇させて強制的なフィルタ再生を行なうエンジン制御装置を備えたエンジンのフィルタ再生制御装置において、前記エンジン制御装置に前記車載機を通信可能に設け、前記車載機は路側の自動料金収受装置との通信に基づいて高速走行可能な道路への進入を検知した際に前記エンジン制御装置へ信号出力し、前記エンジン制御装置は前記車載機からの高速走行可能な道路への進入を示す信号出力に基づいて強制的なフィルタ再生を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のエンジンのフィルタ再生制御装置は、フィルタ再生の頻度を高めるとともに、成功率の高い状態の判別をできるだけ簡素にしたシステムで実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はフィルタ再生制御のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2はフィルタ再生制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【図3】図3はフィルタ再生制御のタイムチャートである。(実施例)
【図4】図4は従来のフィルタ再生制御のタイムチャートである。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、フィルタ再生の頻度を高めるとともに、成功率の高い状態の判別をできるだけ簡素にしたシステムで実行する目的を、自動料金収受装置の車載機を利用する際の通信をトリガとしてフィルタ再生制御を行って実現するものである。
【実施例】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。
図2において、1は車両に搭載されるエンジン2のフィルタ再生制御装置である。このフィルタ再生制御装置1は、自動料金収受装置(ETC装置)3の車載器(ETCユニット)4と、エンジン2を制御するエンジン制御装置(ECM:エンジン・コントロール・モジュール)5とを用いる。
このエンジン制御装置5には、自動料金収受装置3の車載機4が通信線6を介して通信可能に設けられている。このように、エンジン制御装置5に自動料金収受装置3の車載機4を相互に通信可能に接続して設ける場合に、制御装置同士を直接通信線6で繋いで構成したり、制御装置間のエリア・ネットワークや無線により構成することも可能である。車載器4は、車両に搭載されてアンテナ7を備え、ETCレーン、ゲート等の路側の自動料金収受装置8と通信可能なものであり、カード9を挿脱可能な構成である。
エンジン2は、シリンダブロック10とシリンダヘッド11とシリンダヘッドカバー12とオイルパン13とが一体的になって構成されている。
シリンダブロック10には、気筒毎に各シリンダ14が形成されているとともにこのシリンダ14にピストン15が摺動可能に設けられ、また、シリンダヘッド11と共働した燃焼室16が形成されている。
シリンダヘッド11には、吸気側で吸気ポート17が形成され、また、燃焼室16に燃料を噴射する燃料噴射弁18が配設され、更に、排気側で排気ポート19が形成され、しかも、中央部位にカム軸20が配設されている。
【0012】
エンジン2は、吸気装置21を備えている。この吸気装置21は、クリーナケース22内に設けられたエアフィルタ23を有するエアクリーナ24と、このエアクリーナ24からエンジン2のシリンダヘッド11の吸気ポート17に吸入空気を導く吸気通路25を形成する吸気管26とを備えている。吸気通路25には、エンジン2側で、例えば、電子的に作動されるスロットルバルブ27が配設されている。
【0013】
エンジン2は、排気装置28を備えている。この排気装置28は、エンジン2のシリンダヘッド11の排気ポート19からの排気を導く排気通路29を形成する排気管30を備えている。
【0014】
エンジン2は、過給機(ターボチャージャ)31を備えている。この過給機31は、吸気通路25の上流側に配設され、エアクリーナ24側からの吸入空気を過給し、この過給された空気をエンジン2側に供給するものである。
過給機31は、過給機ケース32内で、吸気通路25の途中に配設されたコンプレッサ33と、排気通路29の途中に配設されて排ガス流でコンプレッサ33を回転するタービン34と、コンプレッサ33とタービン34とを連結する回転軸35とを備えている。
また、コンプレッサ33とスロットルバルブ27との間の吸気通路25には、過給機31で過給された空気を冷却するインタクーラ36が設けられている。
過給機ケース32には、過給圧制御アクチュエータ37が設けられている。この過給圧制御アクチュエータ37は、過給圧制御管38を介してシリンダヘッド11に設けたバキュームポンプ39に連絡している。
【0015】
排気通路29には、過給機31のタービン34の下流側で、触媒装置40が設けられる。この触媒装置40は、タービン34に近い側(上流側)のプレ触媒コンバータ41と、このプレ触媒コンバータ41の下流側のメイン触媒コンバータ42とから構成される。
プレ触媒コンバータ41は、プレ触媒ケース43内で、プレ触媒44を備える。
メイン触媒コンバータ42は、メイン触媒ケース45内で、上流側のメイン触媒(酸化触媒)46と、このメイン触媒46から所定の距離により離間した下流側でディーゼル・パティキュレート・フィルタ(以下「フィルタ」という)(図面上では「DPF」と記す)47とを備えている。このフィルタ47は、排気通路29の排ガス中の微粒子を捕集するものである。
【0016】
エンジン2は、燃料供給装置48を備える。この燃料供給装置48は、燃料タンク49内で電磁式の燃料ポンプ50が設けられ、また、この燃料ポンプ50に燃料供給管51の一端側が接続している。この燃料供給管51の他端側は、燃料噴射弁18に取り付けた燃料デリバリパイプ52に接続している。
また、燃料供給管51には、燃料タンク49側から順次に、燃料フィルタ53と燃料高圧ポンプ54と燃料量調整器55とが設けられている。
燃料高圧ポンプ54に接続したポンプ側戻り管56と、燃料量調整器55に接続したバルブ側戻り管57と、燃料デリバリパイプ52に接続したバルブ側戻り管58とは、燃料ダンパ59に連絡している。この燃料ダンパ59には、燃料タンク49に開口するメイン戻り管60が接続している。
【0017】
エンジン2は、EGR装置61を備えている。このEGR装置61は、排気通路29内の排ガスの一部を吸気系に還流させるものであり、一端をエンジン2側の排気通路29に開口するとともに他端をスロットルバルブ27の下流側の吸気通路25に開口した排気還流管62と、この排気還流管62の吸気側に設けたEGR弁63と、排気還流管62の途中に設けたEGRクーラ64とを備える。
【0018】
エンジン制御装置5には、シリンダヘッド11に設けられた燃料噴射弁18と、燃料タンク49内に設けられた燃料ポンプ50と、吸気管26に設けられたEGR弁63とが連絡する。
また、エンジン制御装置5には、吸気管26に設けられたエアフローメータ65と、過給圧制御管38の途中に設けられた過給圧制御ソレノイド弁66と、シリンダヘッド11に設けられたカム角センサ67と、グロープラグ制御モジュール68を介してシリンダヘッド11に設けられたグロープラグ69と、スロットルバルブ27をアクセルペダルの人為操作状態を検知して開閉動作するように吸気管26に設けられたモータ等のスロットルバルブアクチュエータ70と、吸気管26に設けられた過給圧センサ71と、エンジン2の冷却水通路72のエンジン水温を検知する水温センサ73と、シリンダブロック10に設けられたクランク角センサ74と、プレ触媒コンバータ41とメイン触媒コンバータ42との間に設けられた上流側排ガス温度センサ75と、メイン触媒コンバータ42のメイン触媒46とフィルタ47との間に設けられた下流側排ガス温度センサ76及び差圧センサ77と、燃料フィルタ53に設けられた燃料温度センサ78・燃料ヒータ79・燃料フィルタ水検知センサ80と、燃料高圧ポンプ54に設けられた燃料流アクチュエータ81と、燃料量調整器55に設けられた燃料圧センサ82・燃料圧調整弁83とに連絡する。
更に、エンジン制御装置5には、ABS等の制御モジュール84を介して、車輪速度センサ85と、4WD制御モジュール86と、キーレススタート制御モジュール87と、コンビネーションメータ88と、ボディ制御モジュール(BCM)89と、このボディ制御モジュール89を介した電気負荷センサ90と、ステアリング角センサ91とが連絡している。
更にまた、エンジン制御装置5には、エアコン冷媒圧センサ92と、ラジエータファンモータリレー93と、追加ヒータ94と、エアコンコンプレッサ電磁クラッチ95と、ダイナミックリンケージカプラ(DLC)96と、CPPスイッチ97と、ブレーキライトスイッチ98と、APPセンサ99と、イグニションスイッチ100及びメインリレー101を介したバッテリ102と、燃料ヒータ79に接続した燃料ヒータリレー103とが連絡している。
そして、エンジン制御装置5は、車載機4と通信をする通信手段104と、燃料噴射弁18を作動する燃料噴射制御手段105と、差圧センサ77からの出力信号でフィルタ47に捕集された微粒子量を算出して判定する微粒子量判定手段106と、気圧検知手段107とを備える。
【0019】
このエンジン制御装置5は、フィルタ47に捕集された微粒子量が所定量以上になった際に、車両走行中にフィルタ47に捕集されている微粒子が燃焼するように、燃料噴射弁18から燃焼に寄与しない燃料を噴射させてフィルタ47の温度を上昇させ、強制的なフィルタ再生を行なうものである。ここで、微粒子の堆積状態は、主に、フィルタ47の直前の排気通路29に臨むように設けた差圧センサ77の信号出力に基づいて要否判断され、そして、その差圧が大きくなれば、微粒子の堆積量が多くなったことを示す。
エンジン制御装置5は、車載機4からの高速走行可能な道路への進入を示す信号出力に基づいて強制的なフィルタ47の再生を開始するものであるが、実際の進入では、進入速度等の個人差が大きいため、若干の遅延時間を設けることも可能であり、専用の入力ポートを設けることで対応できるが、制御装置間のエリア・ネットワークや無線により構成することも可能である。
車載機4は、路側の自動料金収受装置8との通信に基づいて高速走行可能な道路への進入を検知した際にエンジン制御装置5へ信号出力する。そして、このエンジン制御装置5は、車載機4からの高速走行可能な道路への進入を示す信号出力に基づいて強制的なフィルタ再生を開始する。
具体的には、車載機4と路側の自動料金収受装置8との間の認証通信が正常に済めば、運転者にその結果を音声あるいはアラーム音等で知らせることになるので、そのような報知信号等を利用して、出力信号を生成すれば良い。2値信号で充分にトリガとなるタイミングを提供可能である。
このように、自動料金収受装置3の車載器4を備えた車両では、高速道路利用時に使用する確率が極めて高く、現状でも実利用者の70%以上(さらに増加傾向)であり、フィルタ再生の取りこぼしが極めて少なくなる。
一方で、エンジン制御装置5は、車載機4からの高速走行可能な道路への進入を示す信号出力を受信しない場合に、エンジン始動後の経過時間と平均車速とに基づいて強制的なフィルタ再生を開始する。
【0020】
即ち、この実施例においては、高速走行の開始を直接検出/入力することで、時間を無駄にすることなくフィルタ再生制御を開始する方法を提案するものである。フィルタ再生が必要若しくは可能な状況下において、高速走行の開始を検出した場合は、直ちにフィルタ再生制御を開始するような制御ロジックとする。高速走行の開始を検出する手段としては、車載器4の出力信号をエンジン制御装置5に取り込みものであり、インターチェンジ進入時に車載器4から送信される出力信号をエンジン制御装置5に入力させる。
【0021】
次に、この実施例におけるフィルタ再生制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、エンジン制御装置5のプログラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、エンジン2が始動したか否かを判断し(ステップA02)、このステップA02がNOの場合には、この判断を継続する。
このステップA02がYESの場合には、ETC信号がオンか否かを判断する(ステップA03)。ここで、ETC信号のオンとは、自動料金収受装置3の車載機4からの信号出力が、高速走行可能な道路への自車の進入を示す信号出力であることを示す。
このステップA03がYESの場合には、フィルタ再生を実施する(ステップA04)。
これにより、自動料金収受装置3の車載器4からの通信に基づき、通信直後の走行状態であり、排ガス温度を高くし易く、負荷の大きな高速走行可能な走行状態でのフィルタ再生を実現でき、また、信号出力のデータ量も少なくでき、簡素なシステムで構成できるとともに、信号の信頼性が極めて高く、誤判定も少なくできる。
一方、前記ステップA04がNOの場合には、エンジン始動後の経過時間が許可判定値に達した条件が成立したか否かを判断し(ステップA05)、このステップA05がNOの場合には、前記ステップA02に戻す。
このステップA05がYESの場合には、エンジン始動後の平均車速が設定値に達した条件が成立したか否かを判断し(ステップA06)、このステップA06がNOの場合には、前記ステップA02に戻す。
前記ステップA06がYESの場合には、前記ステップA04に移行してフィルタ再生を実施する。
このように、自動料金収受装置3の車載器4の利用による高速走行開始時のフィルタ再生が不完全に終わったとしても、通常走行によってフィルタ再生が行われるので、フィルタ再生の頻度を高く確保できる。
前記ステップ04のフィルタ再生の実施後は、フィルタ再生負荷の条件が成立したか否かを判断し(ステップA07)、このステップA07がNOの場合には、フィルタ再生の完了か否かを判断する(ステップA08)。
ここで、フィルタ再生の完了とは、フィルタ再生実施中に負荷条件が不成立となって完了したのではなく、溜まった微粒子を充分処理できた完了である。また、もし、ETCレーン、ゲート等の路側の自動料金収受装置8との通信後、実際の高速道路や自動車専用道の本線の走行開始直後で渋滞等に遭遇しても、負荷条件が不成立となって、フィルタ再生の未完でも完了する。
前記ステップA08がNOの場合には、エンジン制御装置5が、車載機4からの高速走行可能な道路への進入を示す信号出力を受信しない場合であって、前記ステップA04に移行させてフィルタ再生を実施し、エンジン始動後の経過時間と平均車速に基づいて強制的なフィルタの再生を開始する。このため、ETC信号のオンに基づく再生が未完であっても、再生完了までをやり直す機会がある。
一方、前記ステップA07がYESの場合、又は前記ステップA08がYESの場合には、プログラムをエンドとする(ステップA09)。
なお、フィルタ再生の完了後、しばらくの間の設定時間では、フィルタ再生の再実行を休止させても良く、実際の走行状態に基づいて、要否判断してフィルタ再生を実施する。
【0022】
次いで、この実施例のフィルタ再生制御を、図3のタイムチャートに基づいて説明する。
図3に示すように、エンジン2が始動すると(時間t1)、エンジン始動時からの経過時間の計測が始まり、そして、車両が動き始め(時間t2)、その後、車速が高側の一定値Nに達すると(時間t3)、ETC信号がオンとなり、フィルタ(DPF)再生フラグがオンになってフィルタ再生が実施される。
そして、時間t3から一定時間T経過後(時間t4)、フィルタ再生フラグがオフになり、フィルタ再生が完了する。
その後、エンジン始動時からの経過時間が許可判定値Lに達すると(時間t5)、フィルタ再生許可時間成立時の平均車速の計測が開始され、そして、この平均車速が設定値Mに達すると(時間t6)、フィルタ再生許可条件が成立し、フィルタ再生フラグがオンとなり、フィルタ再生が実施され、その後、その平均車速が低下して設定値Mに戻ると(時間t7)、フィルタ再生フラグがオフとなり、フィルタ再生が中断され、そして、車速が零になり(時間t8)、その平均車速も零となる(時間t9)。
【0023】
なお、この実施例においては、高速道路、自動車専用道路、バイパス道路等の場合によって高速走行が可能であることに繋がる信号等を発信している場合は、それらの信号を検出するようにしておき、フィルタ再生制御を実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明に係るフィルタ再生制御装置を、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 フィルタ再生制御装置
2 エンジン
3 自動料金収受装置(ETC装置)
4 車載器(ETCユニット)4と、
5 エンジン制御装置(ECM)
18 燃料噴射弁
29 排気通路
40 触媒装置
42 メイン触媒コンバータ
47 フィルタ
77 差圧センサ
104 通信手段
105 燃料噴射制御手段
106 微粒子量判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動料金収受装置の車載機を搭載する車両のエンジンの排気通路に排ガス中の微粒子を捕集するフィルタを設け、このフィルタに捕集された微粒子量が所定量以上になった際には車両走行中に前記フィルタに捕集されている微粒子が燃焼するように前記フィルタの温度を上昇させて強制的なフィルタ再生を行なうエンジン制御装置を備えたエンジンのフィルタ再生制御装置において、前記エンジン制御装置に前記車載機を通信可能に設け、前記車載機は路側の自動料金収受装置との通信に基づいて高速走行可能な道路への進入を検知した際に前記エンジン制御装置へ信号出力し、前記エンジン制御装置は前記車載機からの高速走行可能な道路への進入を示す信号出力に基づいて強制的なフィルタ再生を開始することを特徴とするエンジンのフィルタ再生制御装置。
【請求項2】
前記エンジン制御装置は、前記車載機からの高速走行可能な道路への進入を示す信号出力を受信しない場合に、エンジン始動後の経過時間と平均車速とに基づいて強制的なフィルタ再生を開始することを特徴とする請求項1に記載のエンジンのフィルタ再生制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−117382(P2011−117382A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276367(P2009−276367)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】