説明

エンジンの給油装置

【課題】クランクシャフトの軸受部から流れ出るオイルを抑制しつつ、オイルをクランクシャフトの軸受部及びコンロッド連結部に確実に保持することができるエンジンの給油装置を提供する。
【解決手段】エンジンの給油装置1は、オイルポンプ3とクランクシャフト10の軸受部21とに接続され、オイルをオイルポンプ3から軸受部21に供給する供給通路40と、供給通路40に設けられ、オイルをクランクシャフト10のジャーナル部12からピン部13に供給可能な所定の圧力で開弁し、所定の圧力以下で閉弁する逆止弁41と、供給通路40における逆止弁41よりオイルポンプ3側に設けられ、供給通路40を開閉する開閉弁43と、開閉弁43の作動を制御する制御ユニット8とを備え、制御ユニット8は供給通路40を間欠的に開閉するように開閉弁43の作動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランクシャフトの軸受部にオイルポンプによって吸い上げたオイルを供給するとともに、軸受部に供給されたオイルをクランクシャフト内に設けられたオイル通路を通じてクランクシャフトのジャーナル部からクランクシャフトのピン部に供給するエンジンの給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンにおいては、オイルパンからオイルポンプによって吸い上げたオイルを、クランクシャフトの軸受部材とクランクシャフトのジャーナル部で構成されるクランクシャフトの軸受部に供給するエンジンの給油装置が備えられている。また、かかる給油装置においては、クランクシャフトの軸受部に供給されたオイルをクランクシャフト内に設けられたオイル通路を通じてクランクシャフトのジャーナル部からクランクシャフトのピン部に供給し、クランクシャフトのピン部とピストンとを連結するコンロッドの大端部と該ピン部とで構成されるコンロッド連結部にオイルを供給することが一般に行われている。
【0003】
このように、クランクシャフトの軸受部及びコンロッド連結部にオイルを供給することで、軸受部材とジャーナル部との間の摺動抵抗やコンロッドの大端部とピン部との間の摺動抵抗を低減することができるが、オイル供給量が少なすぎる場合には、オイルが切れて摺動抵抗が大きくなる畏れがある一方、オイル供給量が多すぎる場合には、クランクシャフトの軸受部及びコンロッド連結部からオイルが流れ出て新しいオイルと交換されることにより油膜温度が上昇しにくく、オイルの粘性抵抗が大きいために摺動抵抗が大きくなる畏れがある。従って、クランクシャフトの軸受部及びコンロッド連結部において好適なオイル量を確保するようにオイルを供給することが求められる。
【0004】
これに対して、クランクシャフトの軸受部からオイルが漏れ出ることを抑制するものとして、例えば特許文献1には、オイルポンプからクランクシャフトの軸受部に至る供給通路に絞り量の調整によりオイル供給量を制御する可変絞り弁を配置し、エンジン負荷が低いときは高いときに比べてオイル供給量を少なくするように可変絞り弁を制御するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−264241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、可変絞り弁の絞り量を調整することでクランクシャフトの軸受部に連続的に供給するオイル供給量を少なくしてクランクシャフトの軸受部からオイルが流れ出ることを抑制することができるものの、クランクシャフトの軸受部に供給されたオイルをジャーナル部からピン部に供給するためには、絞り量が制限されるとともにクランクシャフトの軸受部からは絶えずオイルが流れ出ることとなるので更なる改善が望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、クランクシャフトの軸受部から流れ出るオイルを抑制しつつ、オイルをクランクシャフトの軸受部及びコンロッド連結部に確実に保持することができるエンジンの給油装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本願の請求項1に係る発明は、エンジンのクランクシャフトの軸受部にオイルポンプによって吸い上げたオイルを供給するとともに、前記軸受部に供給されたオイルをクランクシャフト内に設けられたオイル通路を通じてクランクシャフトのジャーナル部からクランクシャフトのピン部に供給するエンジンの給油装置であって、前記オイルポンプと前記軸受部とに接続され、前記オイルを前記オイルポンプから前記軸受部に供給する供給通路と、前記供給通路に設けられ、前記オイルを前記ジャーナル部から前記ピン部に供給可能な所定の圧力で開弁し、前記所定の圧力以下で閉弁する逆止弁と、前記供給通路における前記逆止弁より前記オイルポンプ側に設けられ、前記供給通路を開閉する開閉弁と、前記開閉弁の作動を制御する開閉弁制御手段と、を備え、前記開閉弁制御手段は、前記供給通路を間欠的に開閉するように前記開閉弁の作動を制御する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記供給通路における前記開閉弁より前記オイルポンプ側と、前記供給通路における前記開閉弁と前記逆止弁との間とを接続し、前記開閉弁をバイパスするバイパス経路と、前記開閉弁を通じて前記オイルを前記オイルポンプから前記軸受部に供給する第1経路と、前記バイパス経路を通じて前記オイルを前記オイルポンプから前記軸受部に供給する第2経路とを切り換える切換弁と、前記切換弁の作動を制御する切換弁制御手段と、をさらに備え、前記切換弁制御手段は、オイル温度が極低温及び/又は極高温である場合に、前記第2経路に切り換えるように前記切換弁の作動を制御する、ことを特徴とする。
【0010】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記開閉弁制御手段は、オイル温度が高くなるにつれて前記開閉弁の開閉周期における開時の割合を大きくするように前記開閉弁の作動を制御する、ことを特徴とする。
【0011】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に係る発明において、前記開閉弁制御手段は、クランク角度が上死点を含む所定範囲にある場合に前記開閉弁を開くように前記開閉弁の作動を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願の請求項1に係る発明によれば、オイルをオイルポンプから軸受部に供給する供給通路に、オイルをクランクシャフトのジャーナル部からピン部に供給可能な所定の圧力で開弁し、所定の圧力以下で閉弁する逆止弁と、該逆止弁よりオイルポンプ側に供給通路を開閉する開閉弁とを設けて、開閉弁制御手段によって供給通路を間欠的に開閉するように開閉弁の作動を制御する。
【0013】
これにより、開閉弁の開時にオイルをクランクシャフトの軸受部及びコンロッド連結部に確実に供給することができるとともに、開閉弁の閉時に新たなオイルを供給することなく軸受部及びコンロッド連結部にオイルを保持することができるので、軸受部から流れ出るオイルを抑制しつつ、オイルを軸受部及びコンロッド連結部に確実に保持することができる。
【0014】
また、開閉弁の閉時にオイルを軸受部及びコンロッド連結部に保持することができるので、油膜温度を効率的に高めてオイルの粘性抵抗を小さくし、軸受部及びコンロッド連結部において摺動抵抗を低減することができる。さらに、開閉弁の閉時にはクランクシャフトの軸受部にオイルが吸い込まれることを抑制して供給通路における開閉弁と逆止弁との間にオイルを確保することができるので、開閉弁を開いたときにオイルを軸受部及びコンロッド連結部に迅速に供給することができる。
【0015】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、供給通路に、開閉弁をバイパスするバイパス経路と、開閉弁を通じてオイルをオイルポンプから軸受部に供給する第1経路とバイパス経路を通じてオイルをオイルポンプから軸受部に供給する第2経路とを切り換える切換弁とをさらに設けて、切換弁制御手段によってオイル温度が極低温及び/又は極高温である場合に第2経路に切り換えるように切換弁の作動を制御する。
【0016】
これにより、エンジンの始動時などのオイル温度の極低温時にオイル供給量を多くしてオイルを軸受部及びコンロッド連結部に確実に供給することができ、また、エンジンの高回転・高負荷時などのオイル温度の極高温時にオイル供給量を多くしてオイルを軸受部及びコンロッド連結部に確実に供給することができ、エンジンの信頼性を向上させることができる。
【0017】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、開閉弁制御手段は、オイル温度が高くなるにつれて開閉弁の開閉周期における開時の割合を大きくするように開閉弁の作動を制御することにより、オイル温度の上昇に伴って軸受部及びコンロッド連結部に供給するオイル供給量を多くすることができるので、軸受部及びコンロッド連結部においてオイル温度が過剰に昇温されることを抑制することができる。
【0018】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、開閉弁制御手段は、クランク角度が上死点を含む所定範囲にある場合に開閉弁を開くように開閉弁の作動を制御することにより、最も荷重負荷の大きいクランク角度が上死点を含む所定範囲である場合に軸受部及びコンロッド連結部にオイルを確実に供給することができるので、エンジンの信頼性を向上させることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの給油装置の構成を示す図である。
【図2】開閉弁の作動とオイル供給圧力との関係を示す図である。
【図3】オイル温度と開閉弁の開弁率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンの給油装置の構成を示す図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係るエンジンの給油装置1は、エンジンの各潤滑部にオイルを供給するものであり、オイルパン2に貯留したオイルをオイルポンプ3により吸い上げ、このオイルをシリンダヘッド4に供給してロッカーアーム及びカムシャフト等を含むシリンダヘッド4の動弁機構(不図示)に供給するように構成されている。
【0021】
また、給油装置1は、オイルポンプ3によって吸い上げたオイルをシリンダブロック(不図示)に供給して、該シリンダブロック内に設けられたクランクシャフト10の軸方向に延びるオイルギャラリ20を通じてクランクシャフト10の軸受部21にオイルを供給するとともに、該軸受部21に供給されたオイルをクランクシャフト10内に設けられたオイル通路11を通じてクランクシャフト10のジャーナル部12からクランクシャフト10のピン部13に供給するように構成されている。
【0022】
クランクシャフト10の軸受部21は、クランクシャフト10の軸受部材22とクランクシャフト10のジャーナル部12で構成されており、クランクシャフト10の軸受部21に供給されたオイルは、ジャーナル部12からピン部13に延びるオイル通路11を通じてピン部13に供給され、クランクシャフト10のピン部13とピストン30とを連結するコンロッド31の大端部32と該ピン部13とで構成されるコンロッド連結部25に供給される。
【0023】
オイルポンプ3は、クランクシャフト10の回転によって駆動される機械式のものが用いられ、オイルポンプ3の吐出側にリリーフ弁5を設けて、クランクシャフト10の回転数が大きい場合においてもオイルポンプ3の吐出側の圧力が略一定となるように構成されている。
【0024】
オイルポンプ3によって吸い上げたオイルをクランクシャフト10の軸受部21に供給する供給通路40は、オイルポンプ3と軸受部21とに接続されており、オイルポンプ3から延び、シリンダヘッド4への供給通路6と分岐してオイルギャラリ20に延び、オイルギャラリ20からクランクシャフト10の各軸受部21に延びている。本実施形態では、4つの気筒が列状に配置された直列4気筒エンジンに対応して設けられたクランクシャフト10の5つの軸受部材22内を通じてそれぞれクランクシャフト10の5つの軸受部21まで延びている。
【0025】
供給通路40には、軸受部21の近傍において軸受部21とオイルギャラリ20との間にオイルをジャーナル部12からピン部13に供給可能な所定の圧力で開弁し、該所定の圧力以下で閉弁する逆止弁41が設けられるとともに、逆止弁41よりオイルポンプ3側に、具体的にはシリンダヘッド4への供給通路6との分岐部とオイルギャラリ20との間に供給通路40を開閉する開閉弁43が設けられている。
【0026】
また、供給通路40には、開閉弁43よりオイルポンプ3側と、開閉弁43と逆止弁41との間とを接続し、開閉弁43をバイパスするバイパス経路44が設けられている。具体的には、バイパス経路44は、供給通路40における開閉弁43よりオイルポンプ3側とオイルギャラリ20とを接続するように設けられている。
【0027】
そして、供給通路40におけるバイパス経路44との分岐部には、開閉弁43を通じてオイルをオイルポンプ3から軸受部21に供給する第1経路L1と、バイパス経路44を通じてオイルをオイルポンプ3から軸受部21に供給する第2経路L2とを切り換える切換弁45が設けられ、第2経路L2に切り換えることで開閉弁43を通過することなく軸受部21にオイルを供給することができるようになっている。なお、開閉弁43及び切換弁45としては、例えばソレノイドバルブを用いることができる。
【0028】
また、給油装置1では、各軸受部21近傍においてオイル温度を検出する温度センサ7と、該給油装置1に関係する構成を総合的に制御する制御ユニット8とが備えられ、制御ユニット8は、温度センサ7によって検出されたオイル温度に基づいて開閉弁43及び切換弁45の作動を制御する。なお、制御ユニット8は、マイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0029】
このような構成を備えたエンジンの給油装置1では、温度センサ7によって検出されたオイル温度が所定温度範囲内である場合に、開閉弁43を通じてオイルポンプ3から軸受部21にオイルを供給する第1経路L1に切り換えるように切換弁45を制御するとともに供給通路40を間欠的に開閉するように開閉弁43の作動を制御する。
【0030】
図2は、開閉弁の作動とオイルの供給圧力との関係を示す図であり、時間に対する開閉弁43の作動とオイルの供給圧力との関係を示している。なお、図2では、オイルをクランクシャフト10のジャーナル部12からピン部13に供給可能な最低の供給圧力をP1として表し、最低の供給圧力P1より大きく逆止弁41を開弁する所定の圧力をP2として表し、オイルポンプ3の吐出圧をP3として表し、クランクシャフト10の軸受部21へのオイルの供給圧力を実線で示している。
【0031】
図2に示すように、開閉弁43は、供給通路40を間欠的に開閉するように作動され、時間t1において開閉弁43をONにして弁を開き、時間t2において開閉弁43をOFFにして弁を閉じ、開閉弁43の開時t1と閉時t2とが周期的に繰り返されるように制御される。
【0032】
給油装置1では、開閉弁43をONにして弁を開くと、オイルの供給圧力が即座に高くなり、オイルをクランクシャフト10のジャーナル部12からピン部13に供給可能な所定の圧力P2を超えると、逆止弁41が開いてオイルポンプ3から吸い上げたオイルがクランクシャフト10の軸受部21に供給されるとともに、クランクシャフト10の軸受部21に供給されたオイルがオイル通路11を通じてクランクシャフト10のジャーナル部12からピン部13に供給され、クランクシャフト10の軸受部21及びコンロッド連結部25にオイルが供給される。なお、オイルの供給圧力は、リリーフ弁5によって逆止弁41を開弁する所定の圧力をP2より高くポンプの吐出圧P3より低く設定されている。
【0033】
そして、所定時間、開閉弁43を開いた後に、開閉弁43をOFFにして弁を閉じると、オイルの供給圧力が即座に低くなり、オイルをクランクシャフト10のジャーナル部12からピン部13に供給可能な所定の圧力P2以下になると、逆止弁41が閉じられて逆止弁41と開閉弁43との間に所定の圧力P2でオイルを確保した状態でオイルポンプ3から軸受部21へのオイルの供給が停止され、新たなオイルが供給されることなく軸受部21及びコンロッド連結部25においてオイルが保持される。
【0034】
このように、開閉弁43の開時t1に、クランクシャフト10の軸受部21及びコンロッド連結部25にオイルが供給され、開閉弁43の閉時t2に、軸受部21及びコンロッド連結部25に新たなオイルが供給されることなく軸受部21及びコンロッド連結部25においてオイルが保持され、開閉弁43の作動に応じて周期的に繰り返される。
【0035】
開閉弁43の開閉周期における開時t1の割合、すなわち時間(t1+t2)に対する時間t1の割合(以下、適宜「開閉弁の開弁率」を用いる)は所定値に設定されている。開閉弁43の開弁率を変更することで、クランクシャフト10の軸受部21及びコンロッド連結部25に供給するオイル供給量を調整することができる。
【0036】
給油装置1では、好ましくは、クランク角度が上死点を含む所定範囲にある場合に開閉弁43を開くように開閉弁43の作動が制御される。これにより、最も荷重負荷の大きいクランク角度が上死点を含む所定範囲である場合に軸受部21及びコンロッド連結部25にオイルを確実に供給することができるので、エンジンの信頼性を向上させることができる。なお、開閉弁43の作動はコンロッド連結部25への給油タイムラグなどを考慮して決定することが好ましい。
【0037】
このように、本実施形態に係るエンジンの給油装置1では、オイルをオイルポンプ3から軸受部21に供給する供給通路40に、オイルをクランクシャフト10のジャーナル部12からピン部13に供給可能な所定の圧力P2で開弁し、所定の圧力P2以下で閉弁する逆止弁41と、逆止弁41よりオイルポンプ3側に供給通路40を開閉する開閉弁43とを設けて、制御ユニット8によって供給通路40を間欠的に開閉するように開閉弁43の作動を制御する。
【0038】
これにより、開閉弁43の開時にオイルをクランクシャフトの軸受部21及びコンロッド連結部25に確実に供給することができるとともに、開閉弁43の閉時に新たなオイルを供給することなく軸受部21及びコンロッド連結部25にオイルを保持することができるので、軸受部21から流れ出るオイルを抑制しつつ、オイルを軸受部21及びコンロッド連結部25に確実に保持することができる。
【0039】
また、開閉弁43の閉時にオイルを軸受部21及びコンロッド連結部25に保持することができるので、油膜温度を効率的に高めてオイルの粘性抵抗を小さくし、軸受部21及びコンロッド連結部25において摺動抵抗を低減することができる。さらに、開閉弁43の閉時にはクランクシャフト10の軸受部21にオイルが吸い込まれることを抑制して供給通路40における開閉弁43と逆止弁41との間に所定の圧力P2でオイルを確保することができるので、開閉弁43を開いたときにオイルを軸受部21及びコンロッド連結部25に迅速に供給することができる。
【0040】
本実施形態ではまた、逆止弁41が供給通路40における軸受部21近傍に設けられているので、開閉弁43を開いたときにオイルを軸受部21及びコンロッド連結部25により迅速に供給することができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0041】
前述したように、エンジン1の給油装置1では、開閉弁43をバイパスするバイパス経路44が設けられており、温度センサ7によって検出されたオイル温度が所定温度範囲外である極低温である場合及び/又は極高温である場合に、バイパス経路44を通じてオイルポンプ3から軸受部21にオイルを供給する第2経路L2に切り換えるように切換弁45を制御するとともに開閉弁43を閉じるように開閉弁43を制御する。
【0042】
この場合、オイルポンプ3から吸い上げたオイルは開閉弁43を通過することなくクランクシャフト10の軸受部21に供給されるとともに、クランクシャフト10の軸受部21に供給されたオイルがオイル通路11を通じてクランクシャフト10のジャーナル部12からピン部13に供給され、軸受部21及びコンロッド連結部25にオイルが供給される。
【0043】
なお、温度センサ7によって検出されたオイル温度が所定温度範囲外である極低温である場合としては、エンジンの始動時など、これに限定されるものではないが、例えば30度以下である場合を設定することができる。また、温度センサ7によって検出されたオイル温度が所定温度範囲外である極高温である場合としては、エンジンの高回転・高負荷時など、これに限定されるものではないが、例えば125度以上である場合を設定することができる。
【0044】
このように、エンジンの給油装置1では、供給通路40に、開閉弁43をバイパスするバイパス経路44と、開閉弁43を通じてオイルをオイルポンプ3から軸受部21に供給する第1経路L1とバイパス経路44を通じてオイルをオイルポンプ3から軸受部21に供給する第2経路L2とを切り換える切換弁45とをさらに設けて、制御ユニット8によってオイル温度が極低温及び/又は極高温である場合に第2経路l2に切り換えるように切換弁45の作動を制御する。
【0045】
これにより、エンジンの始動時などのオイル温度の極低温時にオイル供給量を多くしてオイルを軸受部21及びコンロッド連結部25に確実に供給することができ、また、エンジンの高回転・高負荷時などのオイル温度の極高温時にオイル供給量を多くしてオイルを軸受部21及びコンロッド連結部25に確実に供給することができ、エンジンの信頼性を向上させることができる。
【0046】
前述した実施形態では、開閉弁43を通じてオイルを供給する際、開閉弁43の開弁率が所定値に設定されているが、開閉弁43の開弁率をオイル温度に応じて変更するように調整することも可能である。
【0047】
図3は、オイル温度と開閉弁の開弁率との関係を示す図であり、図3では、エンジンの始動時のオイル温度をT0として表し、オイル温度が極低温である場合としてオイル温度がT1以下を設定し、オイル温度が極高温である場合としてオイル温度がT2以上を設定している。
【0048】
前述したように、エンジンの給油装置1では、エンジンの始動時などのオイル温度が極低温である場合、すなわちオイル温度がT1以下である場合、第2経路L2に切り換えるように切換弁45を制御するとともに開閉弁43を閉じるように開閉弁43を制御し、開閉弁43を通過することなくバイパス経路44を通じてオイルポンプ3から軸受部21にオイルを供給する。
【0049】
また、エンジンの高回転・高負荷時などのオイル温度が極高温である場合にも、すなわちオイル温度がT2以上である場合にも、第2経路L2に切り換えるように切換弁45を制御するとともに開閉弁43を閉じるように開閉弁43を制御し、開閉弁43を通過することなくバイパス経路44を通じてオイルポンプ3から軸受部21にオイルを供給する。
【0050】
一方、オイル温度が所定温度範囲内であるT1からT2の間では、第1経路L1に切り換えるように切換弁45を制御するとともに供給通路40を間欠的に開閉するように開閉弁43の作動を制御し、開閉弁43を通じてオイルポンプ3から軸受部21にオイルを供給する。ここで、開閉弁43の開弁率を、図3において実線で示すように、オイル温度が大きくなるにつれて大きくするように制御することが可能である。
【0051】
図3では、オイル温度がT1である場合に開閉弁43の開弁率を20%に設定し、オイル温度がT2である場合に開閉弁43の開弁率が80%になるようにオイル温度に比例して開弁率を一定の割合で大きくするように制御しているが、図3において二点鎖線で示すように、オイル温度に対する開閉弁43の開弁率の変化の割合をオイル温度T3で変更するように制御することも可能である。
【0052】
このように、オイル温度が高くなるにつれて開閉弁43の開閉周期における開時t1の割合を大きくするように開閉弁43の作動を制御することにより、オイル温度の上昇に伴ってクランクシャフト10の軸受部21及びコンロッド連結部25に供給するオイル供給量を多くすることができるので、軸受部21及びコンロッド連結部25においてオイル温度が過剰に昇温されることを抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、オイル温度が所定温度範囲内である場合、開閉弁43を通じてオイルを供給する第1経路L1に切り換えるように切換弁45を制御するとともに供給通路40を間欠的に開閉するように開閉弁43の作動を制御しているが、かかる場合に、定期的に第2経路L2に切り換えるように切換弁45を制御するとともに開閉弁43を閉じるように開閉弁43を制御して、開閉弁43を通過することなくバイパス経路44を通じてオイルを供給するようにすることも可能である。
【0054】
このように、定期的に開閉弁43を通過することなくバイパス経路44を通じてオイルを供給することにより、燃焼生成物であるすすや金属粉などのオイル内に存在する異物がクランクシャフト10の軸受部21及びコンロッド連結部25にたまることを抑制することができ、エンジンの信頼性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、図3においてオイル温度と開閉弁の開弁率との関係の一例を示しているが、これに加えて、エンジンの負荷やエンジンの回転数に応じて開閉弁の開弁率を制御することで、クランクシャフト10の軸受部21から流れ出るオイルをさらに抑制しつつ、オイルを軸受部21及びコンロッド連結部25に確実に保持することができる。
【0056】
以上のように、本発明は、例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、クランクシャフトの軸受部から流れ出るオイルを抑制しつつ、オイルを軸受部及びコンロッド連結部に確実に保持することができるエンジンの給油装置を提供することができ、複数の気筒が列状に配置された多気筒エンジンなどのエンジンにおいて好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 給油装置
3 オイルポンプ
8 制御ユニット
10 クランクシャフト
11 オイル通路
12 ジャーナル部
13 ピン部
21 軸受部
40 供給通路
41 逆止弁
43 開閉弁
44 バイパス経路
45 切換弁
L1 第1経路
L2 第2経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクシャフトの軸受部にオイルポンプによって吸い上げたオイルを供給するとともに、前記軸受部に供給されたオイルをクランクシャフト内に設けられたオイル通路を通じてクランクシャフトのジャーナル部からクランクシャフトのピン部に供給するエンジンの給油装置であって、
前記オイルポンプと前記軸受部とに接続され、前記オイルを前記オイルポンプから前記軸受部に供給する供給通路と、
前記供給通路に設けられ、前記オイルを前記ジャーナル部から前記ピン部に供給可能な所定の圧力で開弁し、前記所定の圧力以下で閉弁する逆止弁と、
前記供給通路における前記逆止弁より前記オイルポンプ側に設けられ、前記供給通路を開閉する開閉弁と、
前記開閉弁の作動を制御する開閉弁制御手段と、
を備え、
前記開閉弁制御手段は、前記供給通路を間欠的に開閉するように前記開閉弁の作動を制御する、
ことを特徴とするエンジンの給油装置。
【請求項2】
前記供給通路における前記開閉弁より前記オイルポンプ側と、前記供給通路における前記開閉弁と前記逆止弁との間とを接続し、前記開閉弁をバイパスするバイパス経路と、
前記開閉弁を通じて前記オイルを前記オイルポンプから前記軸受部に供給する第1経路と、前記バイパス経路を通じて前記オイルを前記オイルポンプから前記軸受部に供給する第2経路とを切り換える切換弁と、
前記切換弁の作動を制御する切換弁制御手段と、
をさらに備え、
前記切換弁制御手段は、オイル温度が極低温及び/又は極高温である場合に、前記第2経路に切り換えるように前記切換弁の作動を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの給油装置。
【請求項3】
前記開閉弁制御手段は、オイル温度が高くなるにつれて前記開閉弁の開閉周期における開時の割合を大きくするように前記開閉弁の作動を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの給油装置。
【請求項4】
前記開閉弁制御手段は、クランク角度が上死点を含む所定範囲にある場合に前記開閉弁を開くように前記開閉弁の作動を制御する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のエンジンの給油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−236754(P2011−236754A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106859(P2010−106859)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】