説明

エンジンセッティングシステム及びエンジンセッティング方法

【課題】個々のユーザに適したセッティングを容易とすることが可能なエンジンセッティングシステムを提供する。
【解決手段】制御マップを基にエンジン制御を行うエンジン制御装置と、前記エンジン制御装置と通信可能に接続されると共に、前記制御マップを定義する端末装置とを備えたエンジンセッティングシステムにおいて、前記端末装置は、過去に定義した制御マップと、当該制御マップの定義時に入力された走行環境データを含む履歴データとを対応付けて記憶する履歴データ記憶手段と、エンジンセッティング時に入力された検索条件に該当する履歴データを検索すると共に、当該検索により抽出された履歴データに対応する制御マップを前記エンジン制御装置で使用する制御マップとして再定義する制御マップ再定義手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のエンジンのセッティングに利用されるエンジンセッティングシステム及びエンジンセッティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の鞍乗型車両には電子制御装置(以下、ECUと称する)が搭載されていることが一般的である。このECUには、エンジンを好適な状態で運転させるための制御マップが記憶されている。ここで、制御マップとは、エンジンの運転状態を表す運転状態量(エンジン回転数やエンジン負荷など)と、エンジンの制御目標値(燃料噴射量やエンジン点火時期などの制御量に対する目標値)との対応関係を表すデータ群を指す。つまり、ECUは、現在のエンジンの運転状態に応じた制御目標値を制御マップから取得し、この取得した制御目標値を基に燃料噴射量やエンジン点火時期を制御することにより、エンジンを好適な状態で運転させる。
【0003】
ところで、上記の制御マップに設定されている制御目標値を、車両の走行する状況に応じて変更したい場合がある。例えば、レースにおいて、コースの路面状態(路面勾配、ドライ/ウエット、コーナーの数/大きさ等)や天候等に応じて、各種の制御目標値の設定(以下、セッティングと称する)を変更すると、エンジンをより好適な状態で運転させることができる。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、インターネットを介してサーバ装置と通信可能に接続された端末装置を用いて、サーバ装置からレースコース毎に適した推奨制御マップをダウンロードし、この推奨制御マップを端末装置からECUに転送して、ECUに予め記憶されている制御マップを推奨制御マップに書き換えることにより、レースコースに応じた好適なエンジンセッティングを容易とするエンジンセッティングシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2008−19843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、サーバ装置からレースコース毎に適した推奨制御マップをダウンロードすることができる。しかしながら、ダウンロードして得られる推奨制御マップが必ずしも個々のユーザに適しているとはいえず、すなわち、レース初心者とプロレーサーとは車両の操作(扱い)が異なり、また、ユーザの好み(コーナーからの立ち上がり重視型のユーザやコーナーへの突入重視型のユーザ等)もそれぞれ異なるため、個々のユーザに適した推奨制御マップを得ることは困難である。さらに、上記従来技術では、推奨制御マップを得るために、インターネット等の通信回線を介してダウンロードする必要があるが、通信インフラが整備されていないレース場では現地でのセッティングができない状況が起きてしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、エンジンセッティング時において、個々のユーザに適したセッティングを容易とすることが可能なエンジンセッティングシステム及びエンジンセッティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンセッティングシステムに係る第1の解決手段として、制御マップを基にエンジン制御を行うエンジン制御装置と、前記エンジン制御装置と通信可能に接続されると共に、前記制御マップを定義する端末装置とを備えたエンジンセッティングシステムにおいて、前記端末装置は、過去に定義した制御マップと、当該制御マップの定義時に入力された走行環境データを含む履歴データとを対応付けて記憶する履歴データ記憶手段と、エンジンセッティング時に入力された検索条件に該当する履歴データを検索すると共に、当該検索により抽出された履歴データに対応する制御マップを前記エンジン制御装置で使用する制御マップとして再定義する制御マップ再定義手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、エンジンセッティングシステムに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記履歴データは、前記走行環境データに加えて、前記制御マップの定義時に前記エンジン制御装置によって収集され且つ端末装置に送信されたエンジンの運転状態を表すエンジン状態データを含むことを特徴とする。
【0009】
また、エンジンセッティングシステムに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記履歴データは、前記走行環境データに加えて、前記制御マップの定義時に入力されたコメント文からなる印象データを含むことを特徴とする。
【0010】
また、エンジンセッティングシステムに係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記エンジン制御装置と前記端末装置との間のデータ通信を中継する中継装置をさらに備えることを特徴とする。
また、エンジンセッティングシステムに係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記中継装置は、前記エンジン制御装置に装着可能な通信アダプタであることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明では、エンジンセッティング方法に係る解決手段として、制御マップを基にエンジン制御を行うエンジン制御装置と、前記エンジン制御装置と通信可能に接続されると共に、前記制御マップを定義する端末装置とを使用するエンジンセッティング方法において、前記端末装置によって過去に定義した制御マップと、当該制御マップの定義時に入力された走行環境データを含む履歴データとを対応付けて記憶しておき、エンジンセッティング時に入力された検索条件に該当する履歴データを検索すると共に、当該検索により抽出された履歴データに対応する制御マップを前記エンジン制御装置で使用する制御マップとして再定義することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、過去に定義した制御マップと対応付けて、その当時の走行環境を表す走行環境データを含む履歴データを記憶しておき、次回以降のエンジンセッティング時には検索条件を指定して履歴データを検索し、その際の走行環境に合致、または類似する履歴データを抽出することにより、過去に使用(定義)した複数の制御マップの中から、よりユーザに適合する制御マップを得ることができる。つまり、エンジンセッティング時において、個々のユーザに適したセッティングを容易とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るエンジンセッティングシステムの構成概略図である。この図1に示すように、本実施形態に係るエンジンセッティングシステムは、鞍乗型車両Bのエンジン制御を行うECU(エンジン制御装置)1と、制御マップを定義するパーソナルコンピュータ(端末装置:以下、PCと称する)2と、ECU1とPC2との間のデータ通信を中継する中継装置として機能し、ECU1に装着可能な通信アダプタ3とから構成されている。
【0014】
このようなエンジンセッティングシステムは、例えばレースコースに応じて、好適なエンジンセッティング、つまりECU1に記憶されている制御マップのセッティングを行うためのシステムである。
【0015】
なお、図1では便宜上、ECU1と鞍乗型車両Bとを離して図示しているが、実際には、ECU1は鞍乗型車両Bの内部に搭載されるものである。また、ECU1と通信アダプタ3とも離して図示しているが、実際には、通信アダプタ3はECU1に装着されていると共に、USBケーブルを介してPC2と接続されている。つまり、ECU1とPC2とは、通信アダプタ3を介して通信可能に接続されている。
【0016】
図1に示すように、ECU1は、EEPROM1a、RAM(Random Access Memory)1b、CPU(Central Processing Unit)1c、CAN(Controller Area Network)ドライバ1d及び通信コネクタ1eを備えている。EEPROM1aは、鞍乗型車両Bの通常運転時に使用される制御マップや、その他のエンジン制御に必要なデータ、CPU1cで実行されるプログラム等を固定記憶する書き換え可能な不揮発性記憶媒体である。RAM1bは、一時的なデータの記憶に用いられる書き換え可能な揮発性記憶媒体である。
【0017】
CPU1cは、通常運転時において、EEPROM1aに記憶されている制御マップを基に鞍乗型車両Bのエンジン制御(具体的には燃料噴射量、エンジン点火時期、吸気量、空燃比等の制御)を行う。また、このCPU1cは、エンジンセッティング時において、PC2によって定義され且つPC2から通信アダプタ3を介して送信される制御マップを基にEEPROM1aの制御マップの書き換えを行う機能を有している。
【0018】
さらに、このCPU1cは、エンジンセッティング時において、鞍乗型車両Bのエンジンの運転状態を表すエンジン状態データ(例えば、トルク、エンジン回転数、スロットルバルブ開度、冷却水温、吸気圧、吸気温度など)をRAM1bに記憶する一方、PC2からデータ転送要求を受信した場合、RAM1bに記憶されている上記のエンジン状態データを通信アダプタ3を介してPC2に送信する機能を有している。上記のエンジン状態データは、鞍乗型車両Bに設置された各種センサの出力から得ることができる。つまり、この各種センサの出力は、ECU1に入力され、不図示のA/Dコンバータによってデジタルデータに変換された後、CPU1cに送られることになる。
【0019】
CANドライバ1dは、CPU1cから送られるデータ(上記のエンジン状態データなど)をCAN通信プロトコルに準じたデータフォーマットに変換して通信アダプタ3に送信する一方、通信アダプタ3から受信したデータ(CAN通信プロトコルに準じたデータフォーマット)をCPU1cで処理可能なデータに変換してCPU1cに出力する。通信コネクタ1eは、通信アダプタ3を装着するために用いられるコネクタであり、通信アダプタ3の装着時には通信アダプタ3側の通信コネクタ3gと電気的且つ機械的に接続される。
【0020】
PC2は、入力情報に基に制御マップを定義するパーソナルコンピュータであり、図2に示すように、入力装置2a、表示装置2b、記憶装置2c及び制御装置2dから構成されている。入力装置2aは、例えばキーボードやマウス等であり、ユーザの操作によって入力された入力情報を制御装置2dに出力する。表示装置2bは、例えば液晶ディスプレイであり、制御装置2dの制御によって所定の画像を表示する。
【0021】
記憶装置(履歴データ記憶手段)2cは、例えばハードディスクであり、制御装置2dで実行されるプログラムやアプリケーションソフト等を記憶する他、過去に定義した制御マップと、当該制御マップの定義時に入力装置2aを介して入力された履歴データとを対応付けて記憶するものである。ここで、履歴データには、過去に制御マップを定義した当時の走行環境(例えば、路面状況、天気、気温、湿度、気圧、水温等)を表す走行環境データと、その当時にユーザが得た印象等を記載したコメント文からなる印象データとが含まれている。
【0022】
図3は、表示装置2bに表示される履歴データ入力画面の一例を示すものである。つまり、本実施形態では、エンジンセッティング時において、レースコース毎に最適な制御マップを定義して、ECU1におけるEEPROM1aの制御マップの書き換えを行うと共に、図3に示す履歴データ入力画面を用いて、当時の走行環境データ(路面状況、天気、気温、湿度、気圧、水温)と、印象データ(コメント文)とをユーザが入力することにより、制御マップと履歴データとが対応付けられて記憶装置2cに記憶されることになる。
【0023】
制御装置(制御マップ再定義手段)2dは、例えばCPUであり、記憶装置2cに記憶されているプログラムやアプリケーションソフトを実行することにより、PC2の全体動作を制御する。この制御装置2dは、通信アダプタ3とUSBケーブルを介して接続されており、通信アダプタ3とUSBプロトコルに準じたデータ通信を行うことが可能である。
【0024】
この制御装置2dは、入力装置2aから送られる入力情報を基に制御マップを定義し、その制御マップを通信アダプタ3を介してECU1に送信する機能を有している。また、詳細は後述するが、この制御装置2dは、エンジンセッティング時に入力された検索条件に該当する履歴データを記憶装置2cから検索すると共に、当該検索により抽出された履歴データに対応する制御マップを記憶装置2cから読み出し、ECU1で使用する制御マップとして再定義する機能を有している。
【0025】
以下、図1に戻って説明を続ける。
通信アダプタ3は、FROM(フラッシュROM)3a、FeRAM(Ferroelectric RAM)3b、CPU3c、CANドライバ3d、K−Lineドライバ3e、USBドライバ3f、通信コネクタ3g及びUSBコネクタ3hを備えている。FROM3aは、CPU3cで実行されるプログラムや、その他の通信アダプタ3の制御に必要なデータを固定記憶する書き換え可能な不揮発性記憶媒体である。FeRAM3bは、一時的なデータの記憶に用いられる書き換え可能な不揮発性記憶媒体である。
【0026】
CPU3cは、通信アダプタ3の全体動作(つまりデータ中継動作)を制御するものであり、PC2からUSBドライバ3fを介して受信したデータ(制御マップ等)をFeRAM3bに記憶する一方、当該データをCANドライバ3dを介してECU1に送信する。また、このCPU3cは、CANドライバ3dを介してECU1から受信したデータ(エンジン状態データなど)をFeRAM3bに記憶する一方、当該データをUSBドライバ3fを介してPC2に送信する。
【0027】
CANドライバ3dは、CPU3cから送られるデータをCAN通信プロトコルに準じたデータフォーマットに変換してECU1に送信する一方、ECU1から受信したデータ(CAN通信プロトコルに準じたデータフォーマット)をCPU3cで処理可能なデータに変換してCPU3cに出力する。K−Lineドライバ3eは、CPU3cから送られるデータをK−Line通信プロトコルに準じたデータフォーマットに変換してECU1に送信する一方、ECU1から受信したデータ(K−Line通信プロトコルに準じたデータフォーマット)をCPU3cで処理可能なデータに変換してCPU3cに出力する。なお、これらCANドライバ3d及びK−Lineドライバ3eは、ECU1の通信プロトコルに応じて選択的に使用されるものであり、本実施形態ではECU1の通信プロトコルはCANであるのでCANドライバ3dが使用される。
【0028】
USBドライバ3fは、CPU3cから送られるデータをUSB通信プロトコルに準じたデータフォーマットに変換してPC2に送信する一方、PC2から受信したデータ(USB通信プロトコルに準じたデータフォーマット)をCPU3cで処理可能なデータに変換してCPU3cに出力する。通信コネクタ3gは、通信アダプタ3をECU1に装着するために用いられるコネクタであり、通信アダプタ3の装着時にはECU1側の通信コネクタ1eと電気的且つ機械的に接続される。USBコネクタ3hは、通信アダプタ3をUSBケーブルを介してPC2に接続するために用いられるコネクタである。
【0029】
次に、上記のように構成された本実施形態に係るエンジンセッティングシステムの動作について説明する。
図4は、エンジンセッティング時に表示装置2bに表示される履歴データの検索条件入力画面の一例を示すものである。この図4に示すように、検索条件入力画面には、検索条件として、「フォルダ名」、「開始日付」、「終了日付」、「路面状況」、「天気」、「気温」、「湿度」、「気圧」、「水温」、「コメント」を入力するための入力ボックスが設けられている。この内、「路面状況」、「天気」、「気温」、「湿度」、「気圧」、「水温」が走行環境データに対応する検索条件であり、「コメント」が印象データに対応する検索条件である。
【0030】
「フォルダ名」入力ボックスは、記憶装置2c内における履歴データの保存先を指定するためのボックスである。「開始日付」入力ボックスは、検索条件の開始となる日付を指定するためのボックスである。「終了日付」入力ボックスは、検索条件の終了となる日付を指定するためのボックスである。「路面状況」入力ボックスは、路面条件検索キーワードを指定するためのボックスである。「天気」入力ボックスは、天気条件検索キーワードを指定するためのボックスである。「気温」入力ボックスは、温度条件検索範囲を指定するためのボックスである。「湿度」入力ボックスは、湿度条件検索範囲を指定するためのボックスである。「水温」入力ボックスは、水温条件検索範囲を指定するためのボックスである。「コメント」入力ボックスは、コメント条件検索キーワードを指定するためのボックスである。
【0031】
「開始日付」、「終了日付」、「路面状況」、「天気」、「気温」、「湿度」、「気圧」、「水温」、「コメント」の各検索条件には、それぞれチェックボックスが設けられており、チェックボックスがONとなっている検索条件から履歴データの検索を行うことが可能となっている。なお、図4では、全てのチェックボックスがONとなっている場合を例示している。
【0032】
ユーザは、エンジンセッティング時において、入力装置2aを操作することにより、上記の検索条件入力画面に現在のレースコースにおける走行環境や印象に応じた検索条件を入力する。制御装置2dは、検索条件入力画面に検索条件が入力されて、検索開始キーが操作された場合、記憶装置2cに記憶されている履歴データの中から検索条件に該当する履歴データを検索する。以下、このような制御装置2dによる履歴データの検索処理について図5を参照して説明する。
【0033】
図5は、履歴データの検索処理を表すフローチャートである。
まず、制御装置2dは、ロギングデータの読み込みを行い(ステップS1)、ロギングデータが無いか否かを判定する(ステップS2)。このステップS2において、「Yes」、つまりロギングデータが無い場合、制御装置2dは履歴データの検索処理を終了する。
【0034】
一方、上記ステップS2において、「No」、つまりロギングデータが有る場合、制御装置2dは、記憶装置2cにおいて、「フォルダ名」の入力ボックスに入力された保存先に記憶されている履歴データの1つを読み出し、登録フラグをOFFに初期化する(ステップS3)。以下では、この読み出された履歴データを検索対象履歴データと称する。
【0035】
そして、制御装置2dは、検索条件「開始日付」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS4)、「Yes」の場合、検索対象履歴データの日付が「開始日付」の入力ボックスに入力された日付以降か否かを判定する(ステップS5)。このステップS5において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS6)。なお、上記ステップS4において、「No」の場合には、ステップS7の処理に移行し、また、上記ステップS5において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0036】
続いて、制御装置2dは、検索条件「終了日付」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS7)、「Yes」の場合、検索対象履歴データの日付が「終了日付」の入力ボックスに入力された日付以前か否かを判定する(ステップS8)。このステップS8において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS9)。なお、上記ステップS7において、「No」の場合には、ステップS10の処理に移行し、また、上記ステップS8において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0037】
続いて、制御装置2dは、検索条件「路面状況」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS10)、「Yes」の場合、検索対象履歴データに「路面状況」の入力ボックスに入力された路面条件検索キーワードが含まれているか否かを判定する(ステップS11)。このステップS11において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS12)。なお、上記ステップS10において、「No」の場合には、ステップS13の処理に移行し、また、上記ステップS11において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0038】
続いて、制御装置2dは、検索条件「天気」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS13)、「Yes」の場合、検索対象履歴データに「天気」の入力ボックスに入力された天気条件検索キーワードが含まれているか否かを判定する(ステップS14)。このステップS14において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS15)。なお、上記ステップS13において、「No」の場合には、ステップS16の処理に移行し、また、上記ステップS14において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0039】
続いて、制御装置2dは、検索条件「気温」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS16)、「Yes」の場合、検索対象履歴データに含まれている気温データが、「気温」の入力ボックスに入力された温度条件検索範囲の下限値以上か否かを判定する(ステップS17)。このステップS17において、「Yes」の場合、制御装置2dは、検索対象履歴データに含まれている気温データが、「気温」の入力ボックスに入力された温度条件検索範囲の上限値以下か否かを判定する(ステップS18)。このステップS18において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS19)。なお、上記ステップS16において、「No」の場合には、ステップS20の処理に移行し、また、上記ステップS17及びS18において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0040】
続いて、制御装置2dは、検索条件「湿度」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS20)、「Yes」の場合、検索対象履歴データに含まれている湿度データが、「湿度」の入力ボックスに入力された湿度条件検索範囲の下限値以上か否かを判定する(ステップS21)。このステップS21において、「Yes」の場合、制御装置2dは、検索対象履歴データに含まれている湿度データが、「湿度」の入力ボックスに入力された湿度条件検索範囲の上限値以下か否かを判定する(ステップS22)。このステップS22において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS23)。なお、上記ステップS20において、「No」の場合には、ステップS24の処理に移行し、また、上記ステップS21及びS22において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0041】
続いて、制御装置2dは、検索条件「気圧」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS24)、「Yes」の場合、検索対象履歴データに含まれている気圧データが、「気圧」の入力ボックスに入力された気圧条件検索範囲の下限値以上か否かを判定する(ステップS25)。このステップS25において、「Yes」の場合、制御装置2dは、検索対象履歴データに含まれている気圧データが、「気圧」の入力ボックスに入力された気圧条件検索範囲の上限値以下か否かを判定する(ステップS26)。このステップS26において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS27)。なお、上記ステップS24において、「No」の場合には、ステップS28の処理に移行し、また、上記ステップS25及びS26において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0042】
続いて、制御装置2dは、検索条件「水温」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS28)、「Yes」の場合、検索対象履歴データに含まれている水温データが、「水温」の入力ボックスに入力された水温条件検索範囲の下限値以上か否かを判定する(ステップS29)。このステップS29において、「Yes」の場合、制御装置2dは、検索対象履歴データに含まれている水温データが、「水温」の入力ボックスに入力された水温条件検索範囲の上限値以下か否かを判定する(ステップS30)。このステップS30において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS31)。なお、上記ステップS28において、「No」の場合には、ステップS32の処理に移行し、また、上記ステップS29及びS30において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0043】
続いて、制御装置2dは、検索条件「コメント」のチェックボックスがONか否かを判定し(ステップS32)、「Yes」の場合、検索対象履歴データのコメント欄に「コメント」の入力ボックスに入力されたコメント条件検索キーワードが含まれているか否かを判定する(ステップS33)。このステップS33において、「Yes」の場合、制御装置2dは登録フラグをONに設定する(ステップS34)。なお、上記ステップS32において、「No」の場合には、ステップS35の処理に移行し、また、上記ステップS33において、「No」の場合には、ステップS1の処理に戻る。
【0044】
そして、制御装置2dは、最終的に検索対象履歴データの登録フラグがONか否かを判定し(ステップS35)、「No」の場合は、上記ステップS1に戻り、「Yes」の場合は、検索対象履歴データを検索条件に該当する履歴データとして登録し、図6に示すような検索結果一覧画面に追加して表示する。
上記のようなステップS1〜S35の処理が、「フォルダ名」の入力ボックスに入力された保存先に記憶されている履歴データの全てについて繰り返されることにより、検索条件に該当する全ての履歴データが抽出されることになる。
【0045】
制御装置2dは、上記の検索処理によって抽出した、検索条件に該当する履歴データに対応する制御マップを記憶装置2cから読み出し、ECU1で使用する制御マップとして再定義する。この時、ユーザによる入力装置2aの操作によって、制御マップの送信指示が入力された場合、制御装置2dは再定義した制御マップをECU1に通信アダプタ3を介して送信する。そして、ECU1におけるCPU1cは、通信アダプタ3を介して送信される制御マップを基にEEPROM1aの制御マップの書き換えを行う。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るエンジンセッティングシステムによれば、過去にレース場を実走行した際の制御マップと対応付けて、その当時の走行環境を表す走行環境データ、及びその当時にユーザが得た印象などを記載したコメント文からなる印象データを履歴データとして記憶しておき、次回以降のエンジンセッティング時には検索条件を指定して履歴データを検索し、その際の走行環境や印象と合致する、または類似する履歴データを抽出することにより、過去に使用した複数の制御マップの中から、よりユーザに適合する制御マップを得ることができる。つまり、エンジンセッティング時において、個々のユーザに適したセッティングを容易とすることが可能となる。
【0047】
なお、上記実施形態では、履歴データとして、走行環境データと印象データとを用いた場合を例示したが、これらにECU1で取得されるエンジン状態データを加えて、さらに詳しく検索条件の絞込みを行えるようにしても良い。また、必ずしも履歴データに走行環境データと印象データとを含ませる必要はなく、走行環境データだけでも良いし、走行環境データとエンジン状態データとの組み合わせでも良い。
【0048】
また、上記実施形態では、ECU1とPC2との間のデータ通信を中継する中継装置として、ECU1に直接装着するタイプの通信アダプタ3を用いる構成を例示して説明したが、必ずしも装着タイプの通信アダプタ3を用いる必要はなく、通信ケーブル等によってECU1と接続可能な中継装置を用いる構成としても良い。また、中継装置を設けず、ECU1とPC2とを直接、通信ケーブル等で接続するような構成としても良い。また、無線通信機能を有する通信アダプタ3を用いて、通信アダプタ3とPC2との間で無線通信によるデータ通信を行うような構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンセッティングシステムの構成概略図である。
【図2】本実施形態におけるPC2の詳細構成図である。
【図3】本実施形態における履歴データ入力画面の一例である。
【図4】本実施形態における検索条件入力画面の一例である。
【図5】本実施形態におけるエンジンセッティングシステムの動作(PC2による履歴データの検索処理)を表すフローチャートである。
【図6】本実施形態における履歴データの検索結果一覧画面の一例である。
【符号の説明】
【0050】
1…ECU(エンジン制御装置)、2…パーソナルコンピュータ(端末装置)、3…通信アダプタ(中継装置)、1a…EEPROM、1b…RAM、1c…CPU、1d…CANドライバ、1e…通信コネクタ、2a…入力装置、2b…表示装置、2c…記憶装置(履歴データ記憶手段)、2d…制御装置(制御マップ再定義手段)、3a…FROM、3b…FeRAM、3c…CPU、3d…CANドライバ、3e…K−Lineドライバ、3f…USBドライバ、3g…通信コネクタ、3h…USBコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御マップを基にエンジン制御を行うエンジン制御装置と、
前記エンジン制御装置と通信可能に接続されると共に、前記制御マップを定義する端末装置とを備えたエンジンセッティングシステムにおいて、
前記端末装置は、
過去に定義した制御マップと、当該制御マップの定義時に入力された走行環境データを含む履歴データとを対応付けて記憶する履歴データ記憶手段と、
エンジンセッティング時に入力された検索条件に該当する履歴データを検索すると共に、当該検索により抽出された履歴データに対応する制御マップを前記エンジン制御装置で使用する制御マップとして再定義する制御マップ再定義手段と、
を備えることを特徴とするエンジンセッティングシステム。
【請求項2】
前記履歴データは、前記走行環境データに加えて、前記制御マップの定義時に前記エンジン制御装置によって収集され且つ端末装置に送信されたエンジンの運転状態を表すエンジン状態データを含むことを特徴とする請求項1記載のエンジンセッティングシステム。
【請求項3】
前記履歴データは、前記走行環境データに加えて、前記制御マップの定義時に入力されたコメント文からなる印象データを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンセッティングシステム
【請求項4】
前記エンジン制御装置と前記端末装置との間のデータ通信を中継する中継装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンジンセッティングシステム。
【請求項5】
前記中継装置は、前記エンジン制御装置に装着可能な通信アダプタであることを特徴とする請求項4記載のエンジンセッティングシステム。
【請求項6】
制御マップを基にエンジン制御を行うエンジン制御装置と、
前記エンジン制御装置と通信可能に接続されると共に、前記制御マップを定義する端末装置とを使用するエンジンセッティング方法において、
前記端末装置によって過去に定義した制御マップと、当該制御マップの定義時に入力された走行環境データを含む履歴データとを対応付けて記憶しておき、
エンジンセッティング時に入力された検索条件に該当する履歴データを検索すると共に、当該検索により抽出された履歴データに対応する制御マップを前記エンジン制御装置で使用する制御マップとして再定義することを特徴とするエンジンセッティング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−84569(P2010−84569A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252728(P2008−252728)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】