説明

エンジン・シリンダの潤滑のための潤滑装置および油圧ピストン

例えば船舶用エンジンにおける、シリンダ潤滑油用の定量供給システムのための油圧潤滑装置および油圧ピストンを説明する。この潤滑装置は、油圧油によって加圧され得る少なくとも1つの油圧ピストン106と、複数の定量供給ピストン21と、一方側が定量供給ピストン21に接触しており他方側が定量供給ピストンを作動させるように分配板を変位させるために少なくとも1つの油圧ピストン106に接触している分配板7とを有する。油圧ピストン106は油圧ピストンの変位方向に延在する内部ボアBを備えており、このボアは、油圧油用の噴出し口Hに接触している中空のインサート・ピストンEが中に設けられているインサート・シリンダCを含むインサートC5Eを備えている。それにより、油圧ピストン106がより速く移動できるようになり、圧力状態および流れ状態が向上し、その結果、噴霧ノズル内の圧力および流れを大幅に改善することが実現されて結果として潤滑システムの性能が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば船舶用エンジンにおける、少なくとも1つの油圧ピストンを有しており潤滑油を給油するように油圧式で駆動される、シリンダ潤滑油用の定量供給システムのための油圧式潤滑装置に関する。この装置は油圧油によって加圧されてよく、さらに、複数の定量供給ピストンと、一方側が定量供給ピストンに接触しており他方側が定量供給ピストンを作動させるように分配板を変位させるために少なくとも1つの油圧ピストンに接触している分配板とを有している。
【0002】
また、本発明は、このような潤滑装置のための油圧ピストンに関する。
【背景技術】
【0003】
従来のシリンダ潤滑装置では、主に大型2サイクル・ディーゼル・エンジンの場合においては、各々が単一または複数のシリンダ内のある箇所で潤滑を行う、すなわち、適当な時間間隔で潤滑される種々の箇所までの個別に接続ラインを介して圧力を受けている部分の油を給油することにより潤滑を行う2つ以上の中央潤滑装置が使用される。例えば、EP0 678 152を参照されたい。この適当な時間間隔は、通常、ピストンが上向きに移動している圧縮ストロークにおいてピストンリングがそれと関連する潤滑箇所と向かい合う位置にあるときであってよい。
【0004】
潤滑装置は、伝統的に、それぞれのシリンダに近接して取り付けられ、シリンダ壁上の異なった箇所におけるポンピング・ユニットとして設計される潤滑油の給油用容器と、油噴射ノズルの形態の潤滑箇所とに接続される。各ポンプ・ユニットは複数のレジプロ・ポンプを含んでおり、これらのレジプロ・ポンプは、様々な潤滑箇所に油を給油し、カムが設けられている共通の回転制御軸によって駆動される。制御軸が回転すると、押圧ヘッドを備えるカムが、制御軸に向かう方向にばね付勢された軸方向に変位するそれぞれのピストンに作用し、その結果、これらのピストンが、制御軸が回転する時点において往復動作してレジプロ・ポンプのピストンを駆動させる。
【0005】
長年にわたり、潤滑装置は、ピストンポンプからの吐出圧がそれほど高くない条件下で稼動され続けてきたが、これは、エンジンピストンの上方への戻りストローク中に、すなわち圧縮動作中であるが着火燃焼によるその後のパワーストロークより前に、油がシリンダ内に噴射されることが、定着した基準であったからである。このため、潤滑装置は、10バール(1MPa)程度の噴射圧力またはポンプ圧力で作動される必要があった。
【0006】
近年になって、ピストンの上昇運動中にオイルミスト潤滑を行うために、加圧された噴霧ノズルを介して油を噴射することにより潤滑効率を向上させることが提案された。しかし、この場合、油には、噴霧ノズルを介して微細な噴霧化を行うために例えば最大100バール(10MPa)以上のはるかに高い圧力が加えられる。
【0007】
さらに、近年、電子ベースのディーゼル・エンジンがより幅広く製造される傾向にあり、このようなエンジンでは、従来より機械式潤滑装置を駆動させるのに使用されていた機械式の駆動が取り除かれる。
【0008】
このように、潤滑箇所には、本明細書で言及するように、油噴射ノズルおよび/または加圧噴霧ノズルが含まれる。
【0009】
どちらのシステムにおいても、制御軸は、エンジンのクランクシャフトとの直接的または間接的な機械式継手を介して駆動されることから、ポンプを作動させる動力を供給するのと同時に、エンジンのクランクシャフトと潤滑装置の制御軸との間で同期を達成することが可能となる。
【0010】
ポンプ・ユニットは、例えば箱形の装置ハウジングを備えており、このハウジングから、関連するエンジン・シリンダの、例えば6〜24の数の潤滑箇所に接続パイプが延びている。
【0011】
従来より、ピストンは、エンジンのクランクシャフトと同期して回転する貫通した制御軸上の作動カム/ロッカアームによって駆動される。ピストンは作動カムの方向にばね付勢されている。関連する作動カムの極限位置を定める止めねじが設けられる。この止めねじは、ピストンの個々の作動ストロークを決定してそれにより個々のピストンポンプの関連する吐出量を決定するように作動されてよい。
【0012】
シリンダ潤滑油は、エンジンが1回転する毎に1回ずつ定量供給されるのが一般的であるため、この定量供給を調整するためにはポンプのストロークを変更するしかない。この目的のためのシステムが、例えばデンマーク特許出願第4998/85号に記載されている。このシステムは、エンジン負荷に基づいてポンプストロークを調節するためのカムディスク機構により作動される。負荷への依存度の変更は、カムディスクを、伝達関数の異なる別のカムディスクに交換することでしか行えない。
【0013】
また、ポンプストロークを例えばステップモータといった制御可能なモータによって調整することも提案されている。これは、点潤滑に使用されるが、従来型の潤滑装置と接続して実行することが困難である。このようなシステムは、例えば国際特許出願国際公開WO02/35068A1に開示されている。
【0014】
さらに、DE28 27 626により、シリンダ壁の開口部を通して所定の時間間隔で計量供給される潤滑油に基づく潤滑システムが知られている。ここには、定量供給の無段階制御を個々の潤滑箇所において実行する可能性については一切示されていない。
【0015】
さらに、GB834533A、DK173512B1またはCH673506A5により、導入部で述べたタイプのシステムが知られており、これらのシステムでは、油圧シリンダが分配板または類似の構造を介して複数の定量供給ピストンに作用する。このような設計では、起動用に1つ油圧シリンダが存在する。そのため、この油圧シリンダが故障すると、すべての定量供給ピストンの動作が中断されてしまう。
【0016】
従来のシリンダ壁潤滑に関連して、これまで、シリンダ内の内圧に対抗することはできるが若干高い外部噴射圧力には負ける単純なばね付勢式の逆止弁が慣例的に使用されてきた。しかし、加圧噴霧式噴射の場合には、油噴射が、はじめから、加圧噴霧式噴射の特徴を享受できるように、はるかに高い油圧がかかった場合にのみ弁システムが開くようにすることが所望されかつ必要とされる。
【0017】
これまでに、デンマーク特許出願PA2005 01629において、導入部で言及したタイプの油圧駆動式の潤滑装置およびシリンダ潤滑油を定量供給する方法が提案されている。名前を挙げたこの特許出願で説明されている原理により、潤滑箇所への定量供給の柔軟な電子制御および無段階中央制御が実現されるような形でシリンダ潤滑を行うことが可能となる。さらに、正確かつ単純なタイミング制御を行うこともできる。このシステムでは、分配板の使用も記載されている。
【0018】
この油圧システムでは、少なくとも1つの油圧ピストンと定量供給ピストンとの断面積の比を使用することが所望される。したがって、DK173512B1では、潤滑油内で必要とされる圧力状態を確立するために、油圧ピストンが定量供給ピストンの断面積の4倍、好適には6倍〜15倍の断面積を有することが示されている。大きい面積比は余分な空間が必要となるために好ましくない。
【0019】
これらの従来技術の潤滑装置の試験に関連して、例えばEP1 129 275に記載されているようなタイプの潤滑装置が噴霧ノズル内で使用される場合に十分な速さで潤滑油を送出することができないという問題が観察された。これは、とりわけ、ライナーの内側にある潤滑箇所のところで適切に高速かつ正確な定量提供を行うことができる高速作動シリンダ潤滑システム(rapidly operating cylinder lubricating system)を実現するという解決策を実際に追求していたDK173512B1に示されているタイプの潤滑装置に関連して観察された。油圧システム内の圧力を増大させて実験が行われたが、はっきりと分かる効果は見られなかった。その理由は、とりわけ、システム内の電磁弁が十分な能力を有していないことであった。電磁弁は容易に取り替えられないことから、この問題は、単に電磁弁を交換するということでは解決されない。
【0020】
既存の、および新たに開発されたシリンダ潤滑システム内で効率的な加圧噴霧ノズルを使用するという課題を解決することが所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】EP 0678152
【特許文献2】国際公開WO02/35068A
【特許文献3】DE2827626
【特許文献4】GB834533A
【特許文献5】DK173512B
【特許文献6】CH673506A
【特許文献7】DK173512B
【特許文献8】EP1129275
【特許文献9】EP1129275
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、上述の欠点を軽減し、非常に信頼性が高く安価なシステムを提供することを可能にする油圧駆動式の潤滑装置を示すことであり、この装置では、動作不良の危険性を排除または軽減するために高い作動圧力において十分に速い速度で潤滑油を給油することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によると、この目的は、導入部で言及したタイプの油圧式潤滑装置によって達成される。この装置は、油圧ピストンが、油圧ピストンの変位方向に延在する内部ボアを有し、その内部ボアにインサートが備えられていること、当該インサートは、油圧油用の噴出口に接触する中空のインサート・ピストンが中に配設されているインサート・シリンダを備えて構成されること、を特徴とする。
【0024】
本発明による油圧ピストンは、同様に、油圧ピストンが油圧ピストンの変位方向に延在する内部ボアを有すること、および、このボアが、油圧油用の噴出し口に接触している中空のインサート・ピストンが中に設けられているインサート・シリンダを含むインサートを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明は上述した特許公報で開示されている装置と接続して使用されてよく、この場合、分配板を備える油圧式潤滑装置が使用される。
【0026】
しかし、本発明は、シリンダ潤滑油用の定量供給ピストンを有する噴射ユニットに作用するために油圧ピストンを用いた油圧式の潤滑が適用されるような別の種類の潤滑装置および別の方法と接続して使用されてもよく、ここでは、1つまたは複数の油圧ピストンが、定量供給ピストンを作動させるのに使用される分配板に作用する。
【0027】
以上より、インサートの直径が油圧ピストン上において変化していることで、油圧ピストンがより速く移動することができるようになることが分かっており、それにより圧力状態および流れ状態が大幅に向上し、その結果、噴霧ノズル内の圧力および流れの大幅な改善が実現されて潤滑システムの性能が向上する。また、修正された油圧ピストンにより、噴霧ノズルのための最適な圧力および流れを達成するためにシステム内の電磁弁に過度の流量容量が要求されることがなくなる。これは、使用する1つまたは複数の油圧ピストンを修正するだけで既存のシステムに適合され得るような技術的に簡単な手法で実現される。
【0028】
それにより、定量供給ピストンを作動させるために必要となる油圧油の量が減り、潤滑油を噴霧ノズルへ大量かつ高速に給油することが実現される。
【0029】
別の実施形態によると、本発明による潤滑装置および油圧ピストンは、油圧油が供給されるときに通過するボア内にインサート・ピストンがねじ込まれていることを特徴とする。その結果、インサート・ピストンの底部内の減少した断面積のところに油圧油が送られることにより、接続がより緊密となる。
【0030】
別の実施形態によると、本発明による潤滑装置および油圧ピストンは、少なくとも1つの油圧ピストンの断面積と定量供給ピストンの断面積との比が7未満、好適には5未満であることを特徴とする。
【0031】
具体的な例として、図2および3に示されたタイプの油圧ピストンを以下のように変更することができる:
− 標準的な油圧ピストン:
油圧ピストン:φ31mm 定量供給ピストン:5×φ3.5
比=312/(5×3.52)=15.7
− 修正した油圧ピストン:
油圧ピストンインサート:φ16mm 定量供給ピストン:5×φ3.5
比=162/(5×3.52)=4.2
【0032】
このように変更することにより、本発明による油圧ピストン用いて、噴霧ノズル用の潤滑油の圧力増大および圧力軽減サイクルの速度を50%上げることができる。
【0033】
別の実施形態によると、本発明による潤滑装置および油圧ピストンは、インサート・ピストンの外側と油圧ピストンのボアとの間に油圧油用のドレンが設けられることを特徴とする。漏洩油は油圧ピストンを介して外へ誘導され得ることから、中に油圧ピストンが配置されているチャンバ内部に油圧油が蓄積することはない。油圧油がチャンバ内部に蓄積するようなことがあると、それは、油圧油がチャンバ内部の断面積全体に作用することを意味する。必要となる流量が減少されてその分は存在しないことになるが、これは、本発明の技術的な利点を達成することに基づいている。
【0034】
別の実施形態によると、本発明による潤滑装置および油圧ピストンは、油圧ピストンのボア、インサート・シリンダ、およびインサート・ピストンの断面が円形であり、これらが中心軸を中心として同心円上に配置されることを特徴とする。これは、製造が容易である非常に簡単な実施形態である。
【0035】
別の実施形態によると、本発明による潤滑装置は、定量供給システムが、
− 油圧油を供給するために1つまたは複数の弁を介して潤滑装置に接続された供給ラインおよび戻りラインと、
− 各々が油圧ピストンを有している油圧シリンダに供給ラインを介して接続されており油圧油の圧力を受けることができる中央油圧油給油ポンプと、
− エンジン内の複数のシリンダの数に対応しており、定量供給ピストンを備える個々の定量供給シリンダに接続されている多数の噴射ユニットと、
− シリンダ潤滑油用の供給ラインと
を有することを特徴とする。
【0036】
これにより、必要とされる油圧油および潤滑油が確実に供給されるようになる。潤滑用の油と油圧ピストンを作動させるための油とが同じ種類であることから、同一の供給源からの油を使用することができることに留意されたい。
【0037】
次に、本発明を添付図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による複数の潤滑装置を備えるシステムの概略全体図である。
【図2】本発明による潤滑装置を備えるシステムの第2の実施形態の概略図である。
【図3】本発明による潤滑装置の一部を形成することができるシリンダ潤滑ユニットの一実施形態の縦断面図である。
【図4】図1に示したシステム内で使用される、本発明による潤滑装置の別の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、PCT/DK2007/000364に示されている仕様に従って作られたシステムを示している。
【0040】
図1は4つのシリンダ250を概略的に示しており、各シリンダ上には8つの噴射ノズル251が見られる。潤滑装置252が、通常はそれぞれの単一の潤滑装置252のためのものであるローカル制御ユニット254により中央コンピュータ253に接続されている。潤滑装置252は下で詳細に説明されるような形に適合されている。
【0041】
中央コンピュータ253は、中央コンピュータのバックアップを構成する別の制御ユニット255に並列に結合されている。また、ポンプ(油圧ポンプまたは油圧ステーションであってよい)を監視するための監視ユニット256、負荷を監視するための監視ユニット257、およびクランクシャフトの位置を監視するための監視ユニット258が設けられている。
【0042】
図1の上方部分には、油圧油用タンク262内にポンプ261を駆動するためのモータ260を有する油圧ステーション259が示されている。油圧ステーション259はクーラ263およびフィルタ264をさらに有する。システム油は供給ライン265を介して圧送され、弁220を介して潤滑装置まで到達する。油圧ステーションはまた、弁を介して潤滑装置にやはり接続されている戻りライン266に接続されている。
【0043】
潤滑油は、潤滑油供給タンク(図示せず)からライン267を介して潤滑装置252へ送られる。潤滑油は、潤滑装置からライン110を介して噴射ノズル251へ送られる。
【0044】
図2および3には、デンマーク特許明細書173512号の説明よりその原理が既知であるタイプのシステムが示されている。
【0045】
図2は、2つのシリンダ2を図示したシリンダ潤滑システムを示している。各シリンダ2には、噴射ユニット6’を備える4つの潤滑箇所6が設けられている。潤滑ユニット6’の各々は、接続ライン29を介して、制御弁31に接続されている中央潤滑装置30に接続される。制御弁31は、配線32を介して電子制御ユニット9に接続されている。さらに、配線34、35を介して電子制御ユニット9に接続されており、潤滑油供給ライン36、37を介してシリンダ潤滑ユニット30に接続されている圧力制御ユニット33が図示されている。
【0046】
シリンダ潤滑ユニット30は図3により詳細に示されている。
【0047】
図3の断面図は、中央シリンダ潤滑ユニット30が、潤滑油用の供給ゲート38を備えていることを示している。また、中央シリンダ潤滑ユニット30は、示した実施形態では潤滑油と同じものである駆動油(drive oil)のための戻しゲート39を有する。制御弁31は、油の供給および吐出を調整する弁40に接続されている。シリンダ潤滑ユニット30は、フランジ42を備える油圧ピストン41を有する。フランジ42の各々は、図2に示すようにゲート44および接続ライン29を介して潤滑箇所6に潤滑油を給油する定量供給ピストン43に係合されている。
【0048】
すなわち、図3には、分配板として機能するフランジ42を備える油圧ピストン41が示されており、これは複数の定量供給ピストン43に作用する。
【0049】
ユニット30は、油圧ピストン41の動作距離を決定する調節可能なストッパ要素45を有する。ストッパ要素45は、油圧ピストン41のストロークを設定し、それにより定量供給ポンプとして機能する定量供給ピストン43のストロークも設定される。
【0050】
圧縮ばね46が、油圧ピストン41を始動位置の方向に予め荷重を与えている。調節可能なストッパ要素45は、ユニットの端部分48のねじ山(thread)47にねじ込まれている。調節可能なストッパ要素45をねじ込むことにより、油圧ピストン41のストロークが制限され、それにより定量供給ピストン43から吐出される潤滑油の量が制限される。したがって、調節可能なストッパ要素45は、レジプロ・ポンプのストロークを調節する装置として機能する。調節可能なストッパ要素45は、電子的に制御される調整手段49に接続されている。調整手段49は、配線50を介して中央電子制御ユニット9に接続されている。これにより、レジプロ・ポンプのストロークの電子制御が可能となり、個々の潤滑箇所6での定量供給の無段階の中央制御を柔軟な形で行うことが可能となる。
【0051】
油圧ピストン41は、円筒状であり、チャンバA内に配置される。このチャンバAは、従来の潤滑装置では、中でピストンが変位されるシリンダとして機能する。油圧ピストン41は、中にインサート・シリンダCが取り付けられている中央ボアBを有する。インサート・シリンダCは、中空であり、インサート・ピストンEが収容されている内部ボアDを有しており、閉鎖された底部Fで終わっている。インサート・ピストンEは、チャンバA内へ油圧油を給油するために、ねじ山(screw thread)Gを介して開口部H内に取り付けられる。インサート・ピストンEは内部ボアを有しており、油圧油がそこを流れてインサート・シリンダ内の底部Fに作用する。それにより、油圧ピストンが変位されてさらにそれによりフランジ42が変位されて定量供給ピストンが作動される。油圧ピストン41はドレン開口部(drain opening)Jを有しており、インサート・シリンダCの外側とボアBとの間の空間とドレン開口部Jを介した外部との間に漏洩油を拡散させることができる。それにより、油圧ピストン41の裏側でチャンバA内に油が蓄積するのが回避される。
【0052】
図4に示した潤滑装置は、装置を起動させる電磁弁115、116が取り付けられた底部110上に組み立てられている。底部110の側部には、システム油圧供給部のためのねじ継手142と、タンクへのシステム油圧戻り部のためのねじ継手143とが設けられている。
【0053】
駆動油は、一方が一次電磁弁116でありもう一方が二次電磁弁115である2つの電磁弁を介して供給され得る。
【0054】
初期位置では、一次電磁弁116が作動する。これにより、駆動油は、関連する供給用ねじ継手142から一次電磁弁116へ誘導され、切り換え弁117を介して装置内に入り、分配用通路を通って関連する油圧ピストンのグループに到達する。
【0055】
一次電磁弁116が故障している場合には、二次電磁弁115を自動的に接続することが可能である。この接続は、二次電磁弁115を作動させることによって行われる。
【0056】
これにより、関連する分配通路が加圧される。この圧力により、切り換え弁117が右へ変位されて、一次電磁弁116と関連する分配通路との間の接続が中断される。これにより、電磁弁116に接続されている油圧ピストンから圧力が除去される。
【0057】
二次電磁弁115を起動することによって、関連する分配通路および関連する油圧ピストンが加圧される。これにより、次に、分配板7が二次電磁弁115を介して装置内に誘導された油によって駆動される。
【0058】
切り換え弁117はばね119を装備することができる。二次電磁弁を通る供給圧力がない場合には、このばねが切り換え弁117を自動的に上述の初期位置へ戻す。
【0059】
切り換え弁は、切り換え弁の戻りを遅延させるレストリクタを装備することができる。それにより、作動の合間に切り換え弁117が前後方向に移動することを回避または制限することができる。図4では、このような制限は、ドレン・ピン118と切り換え弁117との間に形成された溝によって定められる。
【0060】
各電磁弁が油圧ピストンの別々のグループに接続されている場合、電磁弁間の独立性が確保される。一次電磁弁116と二次電磁弁115との間で切り換えを行う場合、切り換え弁117により、油圧ピストンの一次グループから圧力が除去され、それにより、一次電磁弁が遮断されている場合でも二次電磁弁115を作動させることができる。
【0061】
符号121は塞止ねじ(blanking screw)を示す。
【0062】
符号122は塞止ねじと端部ストッパとの組合せを示す。この組合せは、一部が切り換え弁117の爪120の端部ストッパとして機能し、一部がパッキン(図示せず)を介した密封機能を有している。
【0063】
油圧ピストン106の上には分配板7が存在する。ここでは、分配板は、上方分配板部材125と下方分配板部材123との2部品で構成された設計として示されている。定量供給ピストン21は、上方分配板部材125の内部または上に取り付けられる。駆動用および潤滑用に様々な油が使用されるような装置では、上方分配板部材と下方分配板部材との間にピストン・パッキン124が存在する。原理的には、1種類の油を駆動油および潤滑油として使用することで十分である場合もある。
【0064】
各油圧ピストン106は、円筒状であり、チャンバA内に配置される。このチャンバAは、従来の潤滑装置では、中でピストンが変位されるシリンダとして機能する。油圧ピストン106は、中にインサート・シリンダCが取り付けられている中央ボアBを有する。インサート・シリンダCは、中空であり、インサート・ピストンEが収容されている内部ボアDを有しており、閉鎖された底部Fで終わっている。インサート・ピストンEが、チャンバA内へ油圧油を給油するために、ねじ山Gを介して開口部H内に取り付けられる。インサート・ピストンEは内部ボアを有しており、油圧油がそこを流れてインサート・シリンダ内の底部Fに作用する。それにより、油圧ピストンが変位されてさらにそれにより分配板7が変位されて定量供給ピストン21が作動される。油圧ピストン106はドレン開口部Jを有しており、インサート・シリンダCの外側とボアBとの間の空間とドレン開口部Jを介した外部との間に漏洩油を拡散させることができる。それにより、油圧ピストン106の裏側でチャンバA内に油が蓄積するのが回避される。
【0065】
定量供給ピストン21の周囲に、油圧ピストン106にかかる供給圧力を遮断した後にピストン21を戻すための共通の戻しばね109が存在する。戻しばね109の周囲には、ベース・ブロック111によって外側の境界が画定される小型の潤滑油容器147が存在する。潤滑油は、パッキン138および139を備える別個のねじ継手を介して供給される。この装置は、任意選択で、パッキンを備える放風ねじを装備することができる。
【0066】
ベース・ブロック111の上にシリンダ・ブロック112が位置されており、ここには、往復動作するように定量供給ピストン21が配置されている。定量供給ピストン21の上にポンプ室148が存在する。このポンプ室には、ばね14によって付勢された逆止弁ボール(non−return valve ball)13を備える出口が存在する。さらに、シリンダ壁内の逆止弁/SIP弁に直接に接続されるねじ継手128が設けられる。
【0067】
この実施形態では、ストロークの調整を行うために、ウォーム機構ドライブ131に結合されたモータ132を備える構成が示されている。ウォーム機構ドライブ131は、ウォーム機構ホイール130を介して、設定ピンまたは止めねじ66上での位置を変更することによりストロークの調整を行う。
【0068】
この実施形態では、ストローク・ストッパ(stroke stop)の位置を変更することによりストロークを調整することが可能である。これは、固定された原点が使用され、その後にストロークが調整されるというような前述の実施形態とは異なる。
【0069】
実際のストローク長を制御するために、センサ/ピックアップ・ユニット114が、設定ピン/止めねじ66に連続するように、例えばエンコーダまたは電位差計の形態でストロークを検出するように取り付けられる。
【0070】
符号113は、設定ピン/止めねじ構成のためのハウジングを示す。
【0071】
符号124は、底部の駆動油側と頂部の潤滑油側とにおいてそれぞれ漏洩油が油圧ピストン6を迂回している2つの空間149および147の間を密閉するピストン・パッキンを示している。
【0072】
符号127は、ベース・ブロック111とシリンダ・ブロック112との間を密閉するOリングを示す。
【0073】
符号133は、ウォーム機構ホイール130用のベアリングケースを固定するための固定ねじを示す。
【0074】
符号134は、底部板110とベース・ブロック111との間を密閉するOリングを示す。
【符号の説明】
【0075】
7 分配板; 21 定量供給ピストン; 106 油圧ピストン;
A チャンバ; B 中央ボア; C インサート・シリンダ;
D 内部ボア; E インサート・ピストン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えば船舶用エンジンにおける、少なくとも1つの油圧ピストンを有しており潤滑油を給油するように油圧式で駆動される、シリンダ潤滑油用の定量供給システムのための油圧式潤滑装置において、前記油圧式潤滑装置が、油圧油による圧力を受けることができ、さらに、複数の定量供給ピストンと、一方側が前記定量供給ピストンに接触しており他方側が前記定量供給ピストンを作動させることを目的として分配板を変位させるために前記少なくとも1つの油圧ピストンに接触している分配板とを有する油圧式潤滑装置であって、前記油圧ピストンが前記油圧ピストンの変位方向に延在する内部ボアを有すること、および、前記内部ボアはインサートを備え、そのインサートには、前記油圧油用の噴出し口に接触している中空のインサート・ピストンを収容するインサート・シリンダが含まれている、ことを特徴とする油圧式潤滑装置。
【請求項2】
前記インサート・ピストンが、前記油圧油が供給されるときに通過するボア内にねじ込まれていることを特徴とする、請求項1に記載の油圧式潤滑装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの油圧ピストンの断面積と前記定量供給ピストンの断面積との比が7未満、好適には5未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の油圧式潤滑装置。
【請求項4】
前記油圧油用のドレンが、前記インサート・ピストンの外側と前記油圧ピストンの前記ボアとの間に設けられることを特徴とする、前記いずれかの請求項に記載の油圧式潤滑装置。
【請求項5】
前記油圧ピストンの前記ボア、前記インサート・シリンダ、および前記インサート・ピストンが、円形断面を有し、中心軸を中心として同心円上に配置されることを特徴とする、前記いずれかの請求項に記載の油圧式潤滑装置。
【請求項6】
前記定量供給システムが、油圧油を供給するために1つまたは複数の弁の各々を介して前記潤滑装置に接続されている供給ラインおよび戻りラインと、各々が油圧ピストンを有しており油圧油による圧力を受けることができる油圧シリンダに前記供給ラインを介して接続される中央油圧油給油ポンプと、前記エンジン内の複数の前記シリンダの数に対応しており、定量供給ピストンを備える定量供給シリンダの各々に接続されている複数の噴射ユニットと、シリンダ潤滑油用の供給ラインとを有することを特徴とする、前記いずれかの請求項に記載の油圧式潤滑装置。
【請求項7】
例えば船舶用エンジンにおける、少なくとも1つの油圧ピストンを有しており潤滑油を給油するように油圧式で駆動される、シリンダ潤滑油用の定量供給システムのための油圧式潤滑装置で使用するための油圧ピストンにおいて、前記油圧式潤滑装置が、油圧油による圧力を受けることができ、さらに、複数の定量供給ピストンと、一方側が前記定量供給ピストンに接触しており他方側が前記定量供給ピストンを作動させることを目的として分配板を変位させるために前記少なくとも1つの油圧ピストンに接触している分配板とを有する、油圧ピストンであって、前記油圧ピストンが前記油圧ピストンの変位方向に延在する内部ボアを有すること、および、前記ボアが、前記油圧油用の噴出し口に接触している中空のインサート・ピストンが中に設けられているインサート・シリンダを含むインサートを備えることを特徴とする油圧ピストン。
【請求項8】
前記インサート・ピストンが、前記油圧油が供給されるときに通過するボア内にねじ込まれていることを特徴とする、請求項7に記載の油圧ピストン。
【請求項9】
前記少なくとも1つの油圧ピストンの断面積と前記定量供給ピストンの断面積との比が7未満、好適には5未満であることを特徴とする、請求項7または8に記載の油圧ピストン。
【請求項10】
前記油圧油用のドレンが、前記インサート・ピストンの外側と前記油圧ピストンの前記ボアとの間に設けられることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の油圧ピストン。
【請求項11】
前記油圧ピストンの前記ボア、前記インサート・シリンダ、および前記インサート・ピストンが、円形断面を有し、中心軸を中心として同心円上に配置されることを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の油圧ピストン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−534788(P2010−534788A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518497(P2010−518497)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【国際出願番号】PCT/DK2008/000281
【国際公開番号】WO2009/015666
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(501173704)
【Fターム(参考)】