説明

エンジン制御システム

【課題】車両の安全性をより確保しながらドライバーの利便性をより向上させることを可能にする。
【解決手段】エンジンの始動に備えた操作がなされたことを検出した場合であっても、ドライバー5が携行する携帯機70とシフトレバー30、ブレーキペダル40、およびステアリングホイール50との間にドライバー5の体を介した人体通信が確立していない場合には、エンジンを自動的に始動させないことによって、ドライバー5の意思に反してエンジンを自動的に始動させる事態を生じなくさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンの制御に関するエンジン制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キーシリンダーにイグニッションキーを差し込むことなく、ユーザが携帯機(電子キー)を持ってプッシュボタン式エンジンスイッチをオン/オフするだけでエンジンを始動・停止することができるシステムが知られている。
【0003】
また、近年では、車両のエンジンの始動・停止に関してのドライバーの利便性をさらに向上させるため、さらにプッシュボタン式エンジンスイッチをオン/オフしなくてもエンジンを始動・停止させることができる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、車両の発進時にドライバーによって通常行われる操作を検出した場合に携帯機との間でコード照合を行い、この照合の結果が適正であった場合にエンジンを自動的に始動させる技術、および車両の駐車時にドライバーによって通常行われる所定の操作を検出した場合に携帯機との間でコード照合を行い、この照合の結果が適正であった場合にエンジンを自動的に停止させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−269305号公報
【特許文献2】特開平10−228524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、上述の所定の操作をドライバーが行ったのか、ドライバー以外の乗員が誤って行ったのかを区別することができないため、上述の所定の操作のうちの一部をドライバー以外の乗員が誤って行った場合であっても、ドライバーの意思に反してエンジンを自動的に始動や停止させてしまうという問題点があった。従って、特許文献1に開示の技術は、車両の安全性の確保が不十分であるという問題点を有していた。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、車両の安全性をより確保しながらドライバーの利便性をより向上させることを可能にするエンジン制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のエンジン制御システムは、上記課題を解決するために、ドライバーによって携行されるとともに、前記ドライバーの体を介した人体通信によってデータの送受信を行うことが可能な携帯機側人体通信部を備えている携帯機と、駐車中の車両が発進に至るまでにドライバーによって通常行われ、且つ、エンジンを始動するためのみに行われる操作ではない所定の操作を検出するための始動用操作検出部と、前記所定の操作が行われる部材のうちの少なくともいずれかであって、前記ドライバーの体を介した人体通信によってデータの送受信を行うことが可能なユニット側人体通信部を備えている始動時操作ユニットと、前記所定の操作が行われたことを前記始動用操作検出部で検出したか否かを判定するとともに、前記携帯機と前記始動時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたか否かを判定する判定部と、前記判定部によって、前記所定の操作が行われたことを前記始動用操作検出部で検出したと判定したとともに、前記携帯機と前記始動時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたと判定したことに基づいて、エンジンを自動的に始動させる始動制御部と、を含むことを特徴としている。
【0007】
なお、駐車中の車両が発進に至るまでにドライバーによって通常行われ、且つ、エンジンを始動するためのみに行われる操作ではない所定の操作とは、イグニッションキーの操作、あるいはスマートエントリーシステムにおけるエンジンスイッチの操作のようなエンジンを始動させるためのみに行われる操作ではないが、エンジンの始動に備えてなされる可能性が高い操作のことを示している。
【0008】
請求項1の構成によれば、この所定の操作がなされたことを検出した場合であっても、ドライバーが携行する携帯機とこの所定の操作のうちの少なくともいずれかが行われる始動時操作ユニットとの間にドライバーの体を介した人体通信が確立していない場合には、エンジンを自動的に始動させないことになる。よって、上述の携帯機を携行していない同乗者等が始動時操作ユニットの操作を誤って行ってしまった場合などであっても、ドライバーの意思に反してエンジンを自動的に始動させる事態が生じなくなる。従って、車両のエンジンの始動を自動的に行うことによってドライバーの利便性を向上させるシステムにおいて、車両の安全性をより確保することができる。つまり、請求項1の構成によれば、車両の安全性をより確保しながらドライバーの利便性をより向上させることが可能になる。
【0009】
また、請求項2のエンジン制御システムでは、前記判定部によって、前記所定の操作が行われたことを前記始動用操作検出部で検出したと判定したとともに、前記携帯機と前記始動時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたと判定した場合に、前記携帯機との間でコード照合を行う照合部をさらに含み、前記始動制御部は、前記照合部によって行った照合結果が適正であった場合に、エンジンを自動的に始動させることを特徴としている。
【0010】
これによれば、照合部と携帯機との間でコード照合を行って得られた照合結果が適正でなかった場合にはエンジンを自動的に始動させないので、コード照合の照合結果が適正となる携帯機を携行するドライバー以外によって上述の所定の操作がされても、エンジンを自動的に始動させないようにすることが可能になる。従って、請求項2の構成によれば、安全性をさらに確保するととともに防犯性も高めることができる。
【0011】
また、請求項3のエンジン制御システムでは、前記車両は自動変速機を備えており、前記所定の操作とは、シフトレバーが握られたこと、ブレーキペダルが踏み込まれたこと、シートベルトが締められたこと、運転席に着座されたこと、およびステアリングホイールが握られたことのうちの少なくともいずれかであって、前記始動時操作ユニットは、シフトレバー、ブレーキペダル、運転席、およびステアリングホイールのうちの少なくともいずれかであることを特徴としている。
【0012】
「シフトレバーが握られたこと」、「ブレーキペダルが踏み込まれたこと」、「シートベルトが締められたこと」、「運転席に着座されたこと」、および「ステアリングホイールが握られたこと」は、自動変速機を備える車両において、エンジンの始動に備えてなされる可能性が高い操作である。
【0013】
請求項3の構成によれば、これらの操作のうちの少なくともいずれかがなされたことを検出した場合であっても、ドライバーが携行する携帯機とこれらの操作のうちの少なくともいずれかが行われる始動時操作ユニットとの間にドライバーの体を介した人体通信が確立していない場合には、エンジンを自動的に始動させないことになるので、自動変速機を備えている車両のエンジンの始動を自動的に行うことによってドライバーの利便性を向上させるシステムにおいても、車両の安全性をより確保することができる。
【0014】
また、請求項4のエンジン制御システムでは、前記車両は手動変速機を備えており、前記所定の操作とは、クラッチペダルが踏み込まれたこと、ブレーキペダルが踏み込まれたこと、前記手動変速機がニュートラル位置にあり、且つ、シートベルトが締められたこと、前記手動変速機がニュートラル位置にあり、且つ、運転席に着座されたこと、前記手動変速機がニュートラル位置から走行位置に切り替えられたこと、およびステアリングホイールが握られたことのうちの少なくともいずれかであって、前記始動時操作ユニットは、シフトレバー、クラッチペダル、ブレーキペダル、運転席、およびステアリングホイールのうちの少なくともいずれかであることを特徴としている。
【0015】
「クラッチペダルが踏み込まれたこと」、「ブレーキペダルが踏み込まれたこと」、「手動変速機がニュートラル位置にあり、且つ、シートベルトが締められたこと」、「手動変速機がニュートラル位置にあり、且つ、運転席に着座されたこと」、「手動変速機がニュートラル位置から走行位置に切り替えられたこと」、および「ステアリングホイールが握られたこと」は、手動変速機を備える車両において、エンジンの始動に備えてなされる可能性が高い操作である。
【0016】
請求項4の構成によれば、これらの操作のうちの少なくともいずれかがなされたことを検出した場合であっても、ドライバーが携行する携帯機とこれらの操作のうちの少なくともいずれかが行われる始動時操作ユニットとの間にドライバーの体を介した人体通信が確立していない場合には、エンジンを自動的に始動させないことになるので、手動変速機を備えている車両のエンジンの始動を自動的に行うことによってドライバーの利便性を向上させるシステムにおいても、車両の安全性をより確保することができる。
【0017】
また、請求項5のエンジン制御システムは、上記課題を解決するために、ドライバーによって携行されるとともに、前記ドライバーの体を介した人体通信によってデータの送受信を行うことが可能な携帯機側人体通信部を備えている携帯機と、エンジン作動中の停止車両が駐車に至るまでにドライバーによって通常行われ、且つ、エンジンを停止するためのみに行われる操作ではない所定の操作を検出するための停止用操作検出部と、前記所定の操作が行われる部材のうちの少なくともいずれかであって、前記ドライバーの体を介した人体通信によってデータの送受信を行うことが可能なユニット側人体通信部を備えている停止時操作ユニットと、前記所定の操作が行われたことを前記停止用操作検出部で検出したか否かを判定するとともに、前記携帯機と前記始動時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたか否かを判定する判定部と、前記判定部によって、前記所定の操作が行われたことを前記停止用操作検出部で検出したと判定したとともに、前記携帯機と前記停止時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたと判定したことに基づいて、エンジンを自動的に停止させる停止制御部と、を含むことを特徴としている。
【0018】
なお、エンジン作動中の車両が駐車に至るまでにドライバーによって通常行われ、且つ、エンジンを始動するためのみに行われる操作ではない所定の操作とは、イグニッションキーの操作、あるいはスマートエントリーシステムにおけるエンジンスイッチの操作のようなエンジンを停止させるためのみに行われる操作ではないが、エンジンの停止に備えてなされる可能性が高い操作のことを示している。
【0019】
請求項5の構成によれば、この所定の操作がなされたことを検出した場合であっても、ドライバーが携行する携帯機とこの所定の操作のうちの少なくともいずれかが行われる停止時操作ユニットとの間にドライバーの体を介した人体通信が確立していない場合には、エンジンを自動的に停止させないことになる。よって、上述の携帯機を携行していない同乗者等が停止時操作ユニットの操作を誤って行ってしまった場合などであっても、ドライバーの意思に反してエンジンを自動的に停止させる事態が生じなくなる。従って、請求項5の構成によれば、車両の安全性をより確保しながらドライバーの利便性をより向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された車両用エンジン制御システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す車両用エンジン制御システム100は、オート制御ECU10、車両用イグニッションスイッチ装置20、シフトレバー30、ブレーキペダル40、ステアリングホイール50、エンジンECU60、および携帯機70を含んでいる。なお、オート制御ECU10、車両用イグニッションスイッチ装置20、シフトレバー30、ブレーキペダル40、ステアリングホイール50、およびエンジンECU60は、車両に設置されているものとする。また、ドライバー5は、上述の車両の操縦者であるものとする。
【0021】
オート制御ECU10は、自動変速機を備える車両におけるエンジンの自動始動・自動停止の制御を実行するための電子制御ユニットである。オート制御ECU10は、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM、アナログ入力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ、各種デジタル信号が入出力される入出力インターフェース(I/O)、およびこれらを接続するバスライン(いずれも図示せず)から構成されている。なお、後述するフローチャートに示す処理は、上述のROMに予め書き込まれている制御プログラムに基づいて実行される。
【0022】
車両用イグニッションスイッチ装置20は、オートエンジンスイッチ(オートエンジンSW)21、アクセサリスイッチ(アクセサリSW)22、イグニッションオンスイッチ(イグニッションオンSW)23、およびスタートスイッチ(スタートSW)24を備えている。このうち、アクセサリSW22、イグニッションオンSW23、およびスタートSW24は従来から存在する周知のものである。なお、オートエンジンSW21がオンされた場合には、オートエンジンスタート制御ECU10が、後述するエンジンの自動始動・自動停止の制御を実行する。なお、オートエンジンSW21、アクセサリSW22、イグニッションオンSW23、およびスタートSW24の切り替えは、例えばロータリスイッチの操作子を回転させることによって行うものとする。
【0023】
シフトレバー30は、変速機(トランスミッション)のギアの組み合わせを変えるために運転手が操作するレバーであって、シフトロック解除ボタン31、シフトポジションセンサ32、タッチセンサ33、およびユニット側人体通信機34を備えている。シフトロック解除ボタン31は、シフトレバー30がパーキング(P)のレンジからシフトできないようにするシフトロック機構のシフトロックを解除するためのボタンである。また、シフトポジションセンサ32は、シフトレバー30のポジションがパーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)、セカンド(2)、ロー(L)の各レンジのうちのいずれにあるのかを検出する。タッチセンサ33は、車両の乗員がシフトレバー30を握っているか否かを検出するセンサである。例えばタッチセンサ33は、シフトレバー30上に配置した感圧素子によって実現することができる。さらに、ユニット側人体通信機34は、人体通信によってデータを送受信するための部材である。なお、人体通信とは、例えば特許文献2に開示されているように、人体を伝送路として用いる通信である。また、本実施形態では、電流方式および電界方式のうちの電界方式によって人体通信を行う場合を例に挙げて以降の説明を行う。さらに、本実施形態では、人体通信によって送受信されるデータの信号は、例えば矩形波で表されるパルス信号であるものとする。
【0024】
ブレーキペダル40は、ドライバー5がブレーキを操作するための部材であって、ブレーキスイッチ(ブレーキSW)41およびユニット側人体通信機42を備えている。ブレーキSW41は、ブレーキペダル40の踏み込み操作を検出する。また、ユニット側人体通信機42は、人体通信によってデータを送受信するための部材である。
【0025】
ステアリングホイール50は、車両の進行方向を任意に変えるためのかじ取り装置であって、タッチセンサ51およびユニット側人体通信機52を備えている。タッチセンサ51は、車両の乗員がステアリングホイール50を握っているか否かを検出するセンサである。例えばタッチセンサ51は、ステアリングホイール50上に配置した感圧素子によって実現することができる。また、ユニット側人体通信機52は、人体通信によってデータを送受信するための部材である。
【0026】
エンジンECU60は、エンジン制御を司る電子制御ユニットである。なお、エンジンECU60もオート制御ECU10と同様に、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM、アナログ入力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ、各種デジタル信号が入出力される入出力インターフェース(I/O)、およびこれらを接続するバスライン(いずれも図示せず)から構成されている。また、エンジンECU60は、オート制御ECU10の制御に従ったエンジンの始動・停止の制御も行う。
【0027】
携帯機70は、ドライバー5の体に装着されたり、ドライバー5に携帯されたりなどすることによってドライバー5に携行される機器であって、携帯機側人体通信機71を備えている。携帯機側人体通信機71は、人体通信によってデータを送受信するための部材である。
【0028】
ここで、図2および図3を用いて、携帯機側人体通信機71およびユニット側人体通信機34・42・52の概略的な構成について説明を行う。図2は、携帯機側人体通信機71の概略的な構成を示すブロック図である。また、図3は、ユニット側人体通信機34の概略的な構成を示すブロック図である。
【0029】
まず、携帯機側人体通信機71の概略的な構成について説明を行う。図2に示すように、携帯機側人体通信機71は、マイコン72、送信回路73、通信用電極74、および受信回路75を備えている。
【0030】
送信回路73は、人体通信に用いられる周知の送信回路と同様のものであって、マイコン72から後述するトリガ信号を受け取った場合に、このトリガ信号を、通信用電極74およびドライバー5を介して、ユニット側人体通信機34・42・52に送信する。また、送信回路73は、マイコン72から後述する携帯機IDのデータを受け取った場合に、この携帯機IDのデータを、通信用電極74およびドライバー5を介して、ユニット側人体通信機34・42・52に送信する。
【0031】
通信用電極74は、人体通信に用いられる周知の通信用電極と同様のものである。具体的には、携帯機側人体通信機71の通信用電極74は、ドライバー5が携帯機70を携行している場合に、絶縁体を介してドライバー5に接触可能なように、携帯機70に設けてある。
【0032】
受信回路75は、人体通信に用いられる周知の受信回路と同様のものであって、ユニット側人体通信機34・42・52から後述するシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、ステアリングIDのデータが人体通信によって送信されてきた場合には、通信用電極74を介してこのシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、ステアリングIDのデータを受信する。そして、受信回路75は、受信したシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、ステアリングIDのデータをマイコン72に送る。また、受信回路75は、ユニット側人体通信機34からのシフトIDのデータ、ユニット側人体通信機42のブレーキIDのデータ、およびユニット側人体通信機52からのステアリングIDのデータがともに送信されてきた場合には、このシフトIDのデータとこのブレーキIDのデータとこのステアリングIDのデータとを重畳して受信する。なお、シフトIDのデータとブレーキIDのデータとステアリングIDのデータとの重畳については以下で詳述する。そして、受信回路75は、上述の3種類のIDのデータを重畳して受信したデータ(以下、重畳受信データと呼ぶ)をマイコン72に送る。
【0033】
ここで、本実施形態の人体通信における通信プロトコルについて説明を行う。本実施形態の人体通信における通信プロトコルでは、ユニット側人体通信機34からのシフトIDのデータの送信タイミング、ユニット側人体通信機42のブレーキIDのデータの送信タイミング、およびユニット側人体通信機52からのステアリングIDのデータの送信タイミングのそれぞれに所定の空きを設けるように定められている。また、シフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、ステアリングIDのデータの送信タイミングは、それぞれのデータ部分がお互いの空きの部分に重なるように定められている。なお、シフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、ステアリングIDのデータの送信タイミングにおいては、上述のトリガ信号を基準とすることによって、お互いの上述の空きの部分にそれぞれのデータ部分を重ねることを可能にしている。また、本実施形態の人体通信における通信プロトコルに従った送信タイミングでシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、ステアリングIDのデータの送信を行うことによって、携帯機側人体通信機71でシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、およびステアリングIDのデータを重畳して受信した場合に得られる重畳受信データでは、データのパルス信号の波形の山がお互いに重なり合わないようになっている。本実施形態ではこのような構成によって、携帯機側人体通信機71で複数種類のデータを重畳して受信した場合にもこれらの複数種類のデータをマイコン72で容易に分けて処理することが可能となっている。
【0034】
なお、本実施形態では、人体通信によって送受信されるデータの信号は、矩形波で表されるパルス信号であるものとする構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、人体通信によって送受信されるデータの信号は、アナログおよびデジタルのいずれの信号であってもよいし、これらのデータを変調した信号であってもよい。
【0035】
続いて、マイコン72は、携帯機側人体通信機71とユニット側人体通信機34・42・52との間での人体通信が確立したときに、送信回路73にトリガ信号を送り、送信回路73からこのトリガ信号を、ユニット側人体通信機34・42・52に向けて送信させる。
【0036】
また、マイコン72は、受信回路75から重畳受信データを受け取った場合、携帯機70を識別する識別子(つまり、携帯機70に固有の識別子)である携帯機70の携帯機IDのデータを送信回路73に送り、送信回路73からこの携帯機IDのデータを、ユニット側人体通信機34・42・52に向けて送信させる。マイコン72は、受信回路75から受け取るデータが、上述の3種類のIDのデータ(つまり、シフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、およびステアリングIDのデータ)のうちの1つのデータであったり、上述の3種類のデータのうちの2つのデータを重畳して受信したデータであったりした場合には、携帯機IDのデータを送信回路73に送らない。なお、マイコン72は、本実施形態の通信プロトコルに定められた送信タイミングに基づいて、受信回路75から受け取ったデータからシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、およびステアリングIDのデータを抽出する。そして、受信回路75から受け取ったデータに上述の3種類のIDのデータのすべてが含まれていたことを検出した場合に、携帯機側人体通信機71で上述の3種類のIDのデータのすべてを受信したものと判断する。また、携帯機70の携帯機IDは、携帯機70の所有者が特定のドライバー5である場合には、ドライバー5に固有の識別子として用いることになる。また、携帯機IDのデータはマイコン72のメモリに予め格納しておくものとする。
【0037】
なお、本実施形態では、受信回路75から受け取ったデータからシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、およびステアリングIDのデータを抽出し、受信回路75から受け取ったデータに上述の3種類のIDのデータのすべてが含まれているか否かを検出する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、受信回路75から受け取ったデータのうちの上述の3種類のIDのデータの送信タイミングに該当する部分にデータが存在するか否かを判定することによって、受信回路75から受け取ったデータに上述の3種類のIDのデータのすべてが含まれているか否かを検出する構成としてもよい。
【0038】
続いて、ユニット側人体通信機34・42・52の概略的な構成について説明を行う。なお、ここでは、ユニット側人体通信機34を例に挙げて説明を行う。図3に示すように、ユニット側人体通信機34は、通信用電極35、受信回路36、マイコン37、および送信回路38を備えている。
【0039】
通信用電極35は、人体通信に用いられる周知の通信用電極と同様のものである。具体的には、ユニット側人体通信機34の通信用電極35は、ドライバー5がシフトレバー30を握ったときに絶縁体を介してドライバー5に接触可能なように、シフトレバー30のグリップ部に設けてある。
【0040】
受信回路36は、人体通信に用いられる周知の受信回路と同様のものであって、携帯機70の携帯機側人体通信機71からトリガ信号が人体通信によって送信されてきた場合には、通信用電極35を介してこのトリガ信号を受信する。また、受信回路36は、携帯機側人体通信機71から携帯機IDのデータが人体通信によって送信されてきた場合には、通信用電極35を介してこの携帯機IDのデータを受信する。
【0041】
マイコン37は、受信回路36でトリガ信号を受信した場合に、シフトレバー30のユニット側人体通信機34由来のデータであることを示す識別子であるシフトIDのデータを送信回路38に送り、送信回路38からこのシフトIDのデータを、携帯機70の携帯機側人体通信機71に向けて所定の送信タイミングで(つまり、トリガ信号を基準にした所定の時間後に所定のタイミングで)送信させる。なお、ここで言うところの所定の送信タイミングは、本実施形態の人体通信における通信プロトコルによって予め上述したように定められているものとする。
【0042】
また、マイコン37は、受信回路36で携帯機IDのデータを受信した場合に、この携帯機IDのデータをオート制御ECU10に送る。オート制御ECU10では、送られてきたこの携帯機IDのデータに基づいてコード照合を行う。なお、オート制御ECU10でのコード照合の処理の詳細については後述する。
【0043】
送信回路38は、人体通信に用いられる周知の送信回路と同様のものであって、マイコン37からシフトIDのデータを受け取った場合に、マイコン37の指示に従って、このシフトIDのデータを、通信用電極35およびドライバー5を介して、携帯機側人体通信機71へ向けて所定の送信タイミングで送信する。
【0044】
また、ユニット側人体通信機34の受信回路36、マイコン37、および送信回路38は、シフトレバー30の内部に設けられていてもよいし、例えば車両の床下、ステアリングコラムの内側、インストルメントパネルの内側などに設けられていてもよい。
【0045】
なお、図3を用いた説明では、シフトレバー30のユニット側人体通信機34を例に挙げて説明を行ったが、ブレーキペダル40のユニット側人体通信機42およびステアリングホイール50のユニット側人体通信機52についても同様である。つまり、ユニット側人体通信機42は、通信用電極35、受信回路36、マイコン37、および送信回路38と同様の機能を有する通信用電極45、受信回路46、マイコン47、および送信回路48を備えている。また、ユニット側人体通信機52は、通信用電極35、受信回路36、マイコン37、および送信回路38と同様の機能を有する通信用電極55、受信回路56、マイコン57、および送信回路58を備えている。
【0046】
ただし、シフトレバー30のユニット側人体通信機34では通信用電極35がシフトレバー30のグリップ部に設けられていたのに対して、ブレーキペダル40のユニット側人体通信機42の通信用電極45は、ドライバー5がブレーキペダル40を踏み込んだときに絶縁体を介してドライバー5に接触可能なように、ブレーキペダル40のペダル部に設けてある。また、ステアリングホイール50のユニット側人体通信機52の通信用電極55は、ドライバー5がステアリングホイール50を握ったときに絶縁体を介してドライバー5に接触可能なように、ステアリングホイール50のグリップ部に設けてある。
【0047】
さらに、ユニット側人体通信機34ではシフトIDのデータを携帯機側人体通信機71に向けて所定の送信タイミングで送信させるのに対して、ユニット側人体通信機42は、ブレーキペダル40のユニット側人体通信機42由来のデータであることを示す識別子であるブレーキIDのデータを携帯機側人体通信機71に向けて所定の送信タイミングで送信させる。また、ユニット側人体通信機52は、ステアリングホイール50のユニット側人体通信機52由来のデータであることを示す識別子であるステアリングIDのデータを携帯機側人体通信機71に向けて所定の送信タイミングで送信させる。なお、シフトIDのデータはマイコン37のメモリに、ブレーキIDのデータはマイコン47のメモリに、そしてステアリングIDのデータはマイコン57のメモリに予め格納しておくものとする。
【0048】
ここで、車両用エンジン制御システム100においてドライバー5を介して行われる人体通信について図4を用いて説明を行う。図4は、本実施形態における人体通信を説明するための模式図である。なお、ここでは、運転席のシートに着座したドライバー5が、エンジンの始動に備えた操作としてブレーキペダル40を踏み込みながらシフトレバー30およびステアリングホイール50を握っている場合を例に挙げて説明を行う。なお、図4中ではシフトレバー30をフロア配置のフロアシフトとして示しているが、必ずしもこれに限らず、シフトレバー30はインストルメンタルパネル配置のインパネシフトであってもよいし、ステアリングコラム配置のコラムシフトであってもよい。
【0049】
携帯機70をドライバー5が携行している場合、携帯機側人体通信機71の通信用電極74はドライバー5に接触する。また、ドライバー5がブレーキペダル40を踏み込んでいる場合、ユニット側人体通信機42の通信用電極45がドライバー5に接触する。さらに、ドライバー5がシフトレバー30を握っている場合、ユニット側人体通信機34の通信用電極35がドライバー5に接触する。そして、ドライバー5がステアリングホイール50を握っている場合、ユニット側人体通信機52の通信用電極55がドライバー5に接触する。従って、ドライバー5が、エンジンの始動に備えた操作としてブレーキペダル40を踏み込みながらシフトレバー30およびステアリングホイール50を握った場合、携帯機側人体通信機71とユニット側人体通信機34・42・52との間でのドライバー5を介した人体通信が確立する。
【0050】
なお、携帯機側人体通信機71とユニット側人体通信機34・42・52との間での人体通信が確立した場合には、上述したように携帯機側人体通信機71からユニット側人体通信機34・42・52に人体通信によってトリガ信号が送信される。続いて、ユニット側人体通信機34・42・52は、このトリガ信号を基準として上述の通信プロトコルに従ったそれぞれの送信タイミングでシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、ステアリングIDのデータの人体通信による送信を行う。そして、ユニット側人体通信機34・42・52から送信されるシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、およびステアリングIDのデータが重畳されて携帯機側人体通信機71で受信されることになる。また、携帯機側人体通信機71は、上述の3種類のIDのデータを重畳して受信すると、人体通信によって携帯機IDのデータをユニット側人体通信機34・42・52に送信する。
【0051】
次に、図5を用いて、車両用エンジン制御システム100でのエンジンの自動始動の処理についての説明を行う。図5は、車両用エンジン制御システム100でのエンジンの自動始動に関する動作フローを示すフローチャートである。なお、本フローは、エンジン停止時にオートエンジンSW21がオン状態になっていたときに開始される。
【0052】
まず、ステップS1では、ブレーキペダル40の踏み込み操作が行われたか否かを、ブレーキSW41からの信号をもとにオート制御ECU10が判断する。そして、ブレーキペダル40の踏み込み操作が行われたと判断した場合(ステップS1でYes)には、ステップS2に移る。また、ブレーキペダル40の踏み込み操作が行われたと判断しなかった場合(ステップS1でNo)には、ステップS1のフローを繰り返す。
【0053】
ステップS2では、シフトレバー30が握られたか否かを、シフトレバー30のタッチセンサ33からの信号をもとにオート制御ECU10が判断する。そして、シフトレバー30が握られたと判断した場合(ステップS2でYes)には、ステップS3に移る。また、シフトレバー30が握られたと判断しなかった場合(ステップS2でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0054】
ステップS3では、ステアリングホイール50が握られたか否かを、ステアリングホイール50のタッチセンサ51からの信号をもとにオート制御ECU10が判断する。そして、ステアリングホイール50が握られたと判断した場合(ステップS3でYes)には、ステップS4に移る。また、ステアリングホイール50が握られたと判断しなかった場合(ステップS3でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0055】
ステップS4では、携帯機側人体通信機71とユニット側人体通信機34・42・52の少なくともいずれかとの間での人体通信が確立した場合(ステップS4でYes)に、ステップS5に移る。また、携帯機側人体通信機71とユニット側人体通信機34・42・52のいずれとの間にも人体通信が確立しなかった場合(ステップS4でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0056】
ステップS5では、携帯機側人体通信機71が人体通信によってトリガ信号を送信し、ステップS6に移る。ステップS6では、ユニット側人体通信機34・42・52のうち、このトリガ信号を受信したユニット側人体通信機がこのトリガ信号に応答し、ステップS7に移る。具体的には、ユニット側人体通信機34がこのトリガ信号に応答する場合にはシフトIDのデータを人体通信によって送信し、ユニット側人体通信機42がこのトリガ信号に応答する場合にはブレーキIDのデータを人体通信によって送信し、ユニット側人体通信機52がこのトリガ信号に応答する場合にはステアリングIDのデータを人体通信によって送信する。
【0057】
ステップS7では、上述の3種類のIDのデータ(つまり、シフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、およびステアリングIDのデータ)のすべてを受信したか否かを、携帯機側人体通信機71のマイコン72が判断する。そして、3種類のIDのデータのすべてを受信したと判断した場合(ステップS7でYes)には、ステップS8に移る。また、3種類のIDのデータのすべてを受信したと判断しなかった場合(ステップS7でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0058】
ステップS8では、携帯機側人体通信機71が人体通信によって携帯機IDのデータをユニット側人体通信機34・42・52に向けて送信し、ステップS9に移る。
【0059】
ステップS9では、ユニット側人体通信機34・42・52で受信した携帯機IDのデータをもとに、オート制御ECU10がコード照合処理を行って、ステップS10に移る。コード照合処理では、オート制御ECU10のROM等のメモリに予め登録してある照合用のIDのデータと受信した携帯機IDのデータとを比較して照合を行う。なお、オート制御ECU10のROM等のメモリに予め登録してある照合用のIDのデータと受信した携帯機IDのデータとが一致した場合に、照合結果が適正であるとオート制御ECU10が判断する。また、オート制御ECU10のROM等のメモリに予め登録してある照合用のIDのデータは、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。
【0060】
なお、本実施形態では、ユニット側人体通信機34・42・52で受信した携帯機IDのデータをもとに、オート制御ECU10がコード照合処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ユニット側人体通信機34・42・52で受信した携帯機IDのデータのうちのいずれかの携帯機IDのデータのみをオート制御ECU10に送ってオート制御ECU10でコード照合処理を行う構成であってもよい。
【0061】
ステップS10では、オート制御ECU10での照合結果が適正であると判断した場合(ステップS10でYes)には、ステップS11に移る。また、オート制御ECU10での照合結果が適正であると判断しなかった場合(ステップS10でNo)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0062】
ステップS11では、オート制御ECU10がエンジンECU60にエンジン始動要求を行ってエンジンECU60によるエンジンの始動処理を行わせ、フローを終了する。
【0063】
なお、図5のフローでは、ステップS1〜ステップS3の処理の全てで肯定判断がされた場合に、ステップS4〜ステップS10の処理が行われる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステップS4〜ステップS10の処理が行われ、ステップS10の処理で肯定判断がされたときにステップS1〜ステップS3の処理を行う構成であってもよいし、ステップS1〜ステップS3の処理とステップS4〜ステップS10の処理とを並行して行う構成であってもよい。また、ステップS1〜ステップS3の処理はお互いの順番が入れ替わってもよい。
【0064】
以上の構成によれば、「シフトレバー30が握られたこと」、「ブレーキペダル40が踏み込まれたこと」、および「ステアリングホイール50が握られたこと」といったエンジンの始動に備えた操作(または、エンジンの始動に備えてなされる可能性が高い操作)がなされたことを検出した場合であっても、ドライバー5が携行する携帯機70とエンジンの始動に備えた操作が行われるシフトレバー30、ブレーキペダル40、およびステアリングホイール50との間にドライバー5の体を介した人体通信が確立していない場合には、エンジンを自動的に始動させないことになる。よって、携帯機70を携行していない同乗者等がシフトレバー30、ブレーキペダル40、およびステアリングホイール50のうちのいずれかの操作を誤って行ってしまった場合などであっても、ドライバー5の意思に反してエンジンを自動的に始動させる事態が生じなくなる。従って、車両のエンジンの始動を自動的に行うことによってドライバー5の利便性を向上させるシステムにおいて、車両の安全性をより確保することができる。つまり、以上の構成によれば、車両の安全性をより確保しながらドライバー5の利便性をより向上させることが可能になる。
【0065】
また、以上の構成によれば、オート制御ECU10と携帯機70との間でコード照合を行って得られた照合結果が適正でなかった場合にはエンジンを自動的に始動させないので、オート制御ECU10のROM等のメモリに予め登録してある照合用のIDのデータに一致する携帯機IDのデータを有する携帯機70を携行するドライバー5以外によって「シフトレバー30が握られたこと」、「ブレーキペダル40が踏み込まれたこと」、および「ステアリングホイール50が握られたこと」といったエンジンの始動に備えた操作が行われた場合でも、エンジンを自動的に始動させないようにすることが可能になる。従って、以上の構成によれば、安全性をさらに確保するととともに防犯性も高めることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、携帯機側人体通信機71でシフトIDのデータ、ブレーキIDのデータ、およびステアリングIDのデータを重畳して受信した場合に携帯機IDのデータを送信する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ユニット側人体通信機34・42・52のいずれかで自己由来のIDのデータ以外のIDのデータを重畳して受信した場合に、携帯機側人体通信機71に人体通信によってリクエスト信号を送信し、携帯機側人体通信機71から携帯機IDのデータを送信させる構成としてもよい。一例を示すと、ユニット側人体通信機34でブレーキIDのデータおよびステアリングIDを重畳して受信した場合に、ユニット側人体通信機34が携帯機側人体通信機71に人体通信によってリクエスト信号を送信し、携帯機側人体通信機71から携帯機IDのデータを送信させることになる。なお、IDのデータを重畳して受信したか否かの判断は、ユニット側人体通信機のマイコンにおいて、前述のマイコン72の処理と同様にして行えばよい。
【0067】
また、本実施形態では、「シフトレバー30が握られたこと」、「ブレーキペダル40が踏み込まれたこと」、および「ステアリングホイール50が握られたこと」についてオート制御ECU10で肯定判断されることをエンジンの自動始動の条件に含む構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、「シフトレバー30が握られたこと」、「ブレーキペダル40が踏み込まれたこと」、および「ステアリングホイール50が握られたこと」の一部のみをエンジンの自動始動の条件に含む構成であってもよい。
【0068】
さらに、例えば「イグニッションオンSW23がオフであること」、「運転席のドアが開状態から閉状態になったこと」、「シフトレバー30のポジションがPレンジであること」、「運転席に着座されたこと」、「シートベルトが締められたこと」、「シフトロック解除ボタン31が操作されたこと」の一部または全てをエンジンの自動始動の条件に含む構成であってもよい。なお、「イグニッションオンSW23がオフであること」はイグニッションオンSW23で検出すればよく、「運転席のドアが開状態から閉状態になったこと」は運転席のドアの開閉状態を検出するための運転席カーテシスイッチで検出すればよい。また、「シフトレバー30のポジションがPレンジであること」はシフトポジションセンサ32で検出すればよく、「運転席に着座されたこと」は運転席のシートに設けられた着座センサで検出すればよい。さらに、「シートベルトが締められたこと」は運転席のシートベルトのバックルスイッチで検出すればよく、「シフトロック解除ボタン31が操作されたこと」はシフトロック解除ボタン31で検出すればよい。なお、シフトロック解除ボタン31は通常ブレーキペダル40を踏んでいないと操作できないため、シフトロック解除ボタン31が操作される場合にはブレーキペダル40が踏まれていることが前提となる。
【0069】
また、上述した各操作のうちの少なくとも1つをエンジンの自動始動の条件に含む構成とすることも可能であるが、「シフトレバー30が握られたこと」、「ブレーキペダル40が踏み込まれたこと」、および「ステアリングホイール50が握られたこと」をエンジンの自動始動の条件に少なくとも含む構成とすることが好ましい。
【0070】
なお、本実施形態では、携帯機70とシフトレバー30、ブレーキペダル40、およびステアリングホイール50の全てとの間で人体通信が確立していることをエンジンの自動始動の条件に含む構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、シフトレバー30、ブレーキペダル40、およびステアリングホイール50の一部との間で人体通信が確立していることをエンジンの自動始動の条件に含む構成であってもよい。このような構成であっても、携帯機70を携行していない同乗者等がシフトレバー30、ブレーキペダル40、およびステアリングホイール50のうちのいずれかの操作を誤って行ってしまった場合などにドライバー5の意思に反してエンジンを自動的に始動させる事態が生じる可能性を低減することができる。
【0071】
さらに、例えば携帯機70と運転席との間で人体通信が確立していることをエンジンの自動始動の条件に含む構成であってもよい。この場合、運転席にユニット側人体通信機34・42・52と同様のユニット側人体通信機を備え、このユニット側人体通信機の通信用電極を、ドライバー5が運転席に座ったときに絶縁体を介してドライバー5に接触可能なように運転席のシートもしくは床面に設ける構成とすればよい。
【0072】
なお、エンジンの始動に備えた操作が行われる部材のうち、ユニット側人体通信機が備えられた部材については、エンジンの始動に備えた操作を検出するセンサ等を備えない構成としてもよい。一例を示すと、シフトレバー30およびステアリングホイール50にタッチセンサを備えず、エンジンの始動に備えた操作としては「ブレーキペダル40が踏み込まれたこと」のみを検出する。そして、「シフトレバー30が握られたこと」および「ステアリングホイール50が握られたこと」については、携帯機70とシフトレバー30およびステアリングホイール50との間で人体通信が確立したことをもって検出する構成とする。なお、「ブレーキペダル40が踏み込まれたこと」については、携帯機70とブレーキペダル40との間で人体通信が確立したことをもって検出することはできないので、ブレーキSW41で検出することとする。このような構成とすれば、エンジンの始動に備えた操作を検出するのに人体通信を利用するので、エンジンの始動に備えた操作を検出するセンサ等を設ける手間やコストを抑えることができる。
【0073】
また、本実施形態では、エンジンの自動始動の処理について説明を行ったが、エンジンの自動停止の処理についても同様にして実現することができる。具体的には、エンジンの停止に備えた操作が行われたことを検出するとともに、携帯機70とエンジンの停止に備えた操作が行われる部材のうちの少なくともいずれかとの人体通信が確立したときにオート制御ECU10がエンジンの自動停止を行わせる構成とすればよい。なお、エンジンの自動停止の条件には、「エンジンの停止に備えた操作」として例えば「停車していること」、「シフトレバー30のポジションがPレンジであること」、「ブレーキペダル40が踏み込まれていること」、「エアコンスイッチがオフであること」、「シートベルトが外されたこと」、「パーキングブレーキ(つまり、サイドブレーキ)がかけられたこと」、などのうちの少なくともいずれかを含む構成とすればよい。なお、「停車していること」は車速センサやエンジン回転数センサなどで検出すればよく、「エアコンスイッチがオフであること」はエアコンスイッチで検出すればよい。また、「シートベルトが外されたこと」はシートベルトのバックルスイッチで検出すればよく、「パーキングブレーキがかけられたこと」はパーキングブレーキスイッチで検出すればよい。さらに、例えば携帯機70とシフトレバー30、ブレーキペダル40、およびパーキングブレーキのうちの少なくともいずれかとの間で人体通信が確立していることをエンジンの自動停止の条件に含む構成とすればよい。この場合、パーキングブレーキにユニット側人体通信機34・42・52と同様のユニット側人体通信機を備え、このユニット側人体通信機の通信用電極を、ドライバー5がパーキングブレーキをかけたときに絶縁体を介してドライバー5に接触可能なようにパーキングブレーキのグリップ部に設ける構成とすればよい。
【0074】
以上の構成によれば、エンジンの停止に備えた操作(または、エンジンの停止に備えてなされる可能性が高い操作)がなされたことを検出した場合であっても、ドライバー5が携行する携帯機70とエンジンの停止に備えた操作のうちの少なくともいずれかが行われる部材との間にドライバー5の体を介した人体通信が確立していない場合には、エンジンを自動的に停止させないことになる。よって、携帯機70を携行していない同乗者等がこの部材の操作を誤って行ってしまった場合などであっても、ドライバー5の意思に反してエンジンを自動的に停止させる事態が生じなくなる。従って、以上の構成によれば、車両の安全性をより確保しながらドライバー5の利便性をより向上させることが可能になる。
【0075】
なお、本実施形態では、自動変速機を備える車両を前提としたが、手動変速機を備える車両を前提としても実現は可能である。その場合には、「エンジンの始動に備えた操作」として「ブレーキペダル40が踏まれたこと」、「クラッチペダルが踏み込まれたこと」、「手動変速機がニュートラル位置(Nレンジ)にあり、且つ、シートベルトが締められたこと」、「手動変速機がニュートラル位置(Nレンジ)にあり、且つ、運転席に着座されたこと」、「手動変速機がニュートラル位置(Nレンジ)から走行位置(DレンジやRレンジなど)に切り替えられたこと」、「ステアリングホイール50が握られたこと」の少なくともいずれかをエンジンの自動始動の条件に含む構成とすればよい。なお、「クラッチペダルが踏み込まれたこと」はクラッチスイッチで検出すればよく、「手動変速機がニュートラル位置にあり、且つ、シートベルトが締められたこと」はシフトポジションセンサと運転席のシートベルトのバックルスイッチとで検出すればよい。また、「手動変速機がニュートラル位置にあり、且つ、運転席に着座されたこと」はシフトポジションセンサと運転席のシートに設けられた着座センサで検出すればよく、「手動変速機がニュートラル位置から走行位置(DレンジやRレンジなど)に切り替えられたこと」はシフトポジションセンサで検出すればよい。
【0076】
また、携帯機70とシフトレバー30、ブレーキペダル40、ステアリングホイール50、クラッチペダル、および運転席のうちの少なくともいずれかとの間で人体通信が確立していることをエンジンの自動始動の条件に含む構成とすればよい。この場合、クラッチペダルや運転席にユニット側人体通信機34・42・52と同様のユニット側人体通信機を備える構成とすればよい。なお、クラッチペダルにユニット側人体通信機を備える場合には、このユニット側人体通信機の通信用電極を、ドライバー5がクラッチペダルを踏み込んだときに絶縁体を介してドライバー5に接触可能なように、クラッチペダルのペダル部に設ける構成とすればよい。また、運転席にユニット側人体通信機を備える場合には、上述したのと同様の構成とすればよい。
【0077】
なお、本実施形態では、オート制御ECU10と携帯機70との間でのコード照合に人体通信を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らず、オート制御ECU10と携帯機70との間でのコード照合に人体通信を用いない構成としてもよい。この場合、例えば、携帯機70にトランスポンダやアンテナを備え、携帯機IDのデータを無線通信でオート制御ECU10に接続されたチューナに送信する。そして、チューナによって受信された携帯機IDのデータをオート制御ECU10に出力し、オート制御ECU10がコード照合を行う構成とすればよい。
【0078】
また、本実施形態では、オート制御ECU10と携帯機70との間でのコード照合を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らず、コード照合を行わない構成としてもよい。
【0079】
なお、前述したようなエンジンの自動始動・自動停止だけでなく、ユーザが操作子を操作してロータリスイッチをアクセサリ位置、イグニッションオン位置、スタート位置に切り替えたり、オフ位置に切り替えたりすることで、従来と同様の手作業によるエンジンの始動や停止も行える構成と併用することが好ましい。また、プッシュボタン式エンジンスイッチをオン/オフすることによってエンジンの始動や停止を行う構成と併用してもよい。
【0080】
また、エンジンの始動および停止のうちのいずれか一方のみを自動的に行う構成であってもよい。例えばプッシュボタン式エンジンスイッチをオン/オフすることによってエンジンの始動や停止を行う構成と併用する場合には、例えばプッシュボタン式エンジンスイッチのオンによってエンジン始動をユーザにさせ、エンジン停止については上述したような自動的な停止制御を実行しても良い。逆に、エンジン始動については上述したような自動的な始動制御を実行し、エンジン停止に際してはプッシュボタン式エンジンスイッチのオフをユーザにさせるようにしてもよい。この場合には、車両用イグニッションスイッチ装置20は不要となる。
【0081】
なお、本発明におけるエンジンの停止とは、エンジンの回転を停止させることであってもよいし、車両の電源状態をイグニッションオン状態からオフ状態にする、つまり、エンジンECU60自体の電源をオフにすることであってもよい。また、本発明におけるエンジンの始動とは、例えばエンジンの回転を開始させることであってもよいし、エンジンECU60自体の電源をオンにすることであってもよい。
【0082】
また、オート制御ECU10とエンジンECU60とは一体に設けられている構成であってもよいし、別体に設けられている構成であってもよい。
【0083】
本発明では、前述したようにエンジンの自動始動・自動停止の制御において人体通信を利用するため、無線通信によってコード照合を行う技術に比べ秘匿性をより確保することができる。また、前述したように、携帯機70を携行するドライバー5がエンジンの始動に備えた操作やエンジンの停止に備えた操作を行っただけで車両の安全性を確保しながらエンジンを自動的に始動・停止させることができるので、車両用エンジン制御システム100を搭載した車両に対してドライバー5がより強い快適性を感じることになる。
【0084】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】車両用エンジン制御システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】携帯機側人体通信機71の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】ユニット側人体通信機34の概略的な構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態における人体通信を説明するための模式図である。
【図5】車両用エンジン制御システム100でのエンジンの自動始動に関する動作フローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
5 ドライバー、10 オート制御ECU(判定部、始動制御部、照合部)、20 車両用イグニッションスイッチ装置、30 シフトレバー(始動時操作ユニット、停止時操作ユニット)、32 シフトポジションセンサ、33 タッチセンサ(始動用操作検出部、停止用操作検出部)、34 ユニット側人体通信機(ユニット側人体通信部)、40 ブレーキペダル(始動時操作ユニット、停止時操作ユニット)、41 ブレーキSW(始動用操作検出部、停止用操作検出部)、42 ユニット側人体通信機(ユニット側人体通信部)、50 ステアリングホイール(始動時操作ユニット)、51 タッチセンサ(始動用操作検出部)、52 ユニット側人体通信機(ユニット側人体通信部)、60 エンジンECU、70 携帯機、71 携帯機側人体通信機(携帯機側人体通信部)、100 車両用エンジン制御システム(エンジン制御システム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーによって携行されるとともに、前記ドライバーの体を介した人体通信によってデータの送受信を行うことが可能な携帯機側人体通信部を備えている携帯機と、
駐車中の車両が発進に至るまでにドライバーによって通常行われ、且つ、エンジンを始動するためのみに行われる操作ではない所定の操作を検出するための始動用操作検出部と、
前記所定の操作が行われる部材のうちの少なくともいずれかであって、前記ドライバーの体を介した人体通信によってデータの送受信を行うことが可能なユニット側人体通信部を備えている始動時操作ユニットと、
前記所定の操作が行われたことを前記始動用操作検出部で検出したか否かを判定するとともに、前記携帯機と前記始動時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって、前記所定の操作が行われたことを前記始動用操作検出部で検出したと判定したとともに、前記携帯機と前記始動時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたと判定したことに基づいて、エンジンを自動的に始動させる始動制御部と、を含むエンジン制御システム。
【請求項2】
前記判定部によって、前記所定の操作が行われたことを前記始動用操作検出部で検出したと判定したとともに、前記携帯機と前記始動時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたと判定した場合に、前記携帯機との間でコード照合を行う照合部をさらに含み、
前記始動制御部は、前記照合部によって行った照合結果が適正であった場合に、エンジンを自動的に始動させることを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御システム。
【請求項3】
前記車両は自動変速機を備えており、
前記所定の操作とは、シフトレバーが握られたこと、ブレーキペダルが踏み込まれたこと、シートベルトが締められたこと、運転席に着座されたこと、およびステアリングホイールが握られたことのうちの少なくともいずれかであって、
前記始動時操作ユニットは、シフトレバー、ブレーキペダル、運転席、およびステアリングホイールのうちの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン制御システム。
【請求項4】
前記車両は手動変速機を備えており、
前記所定の操作とは、クラッチペダルが踏み込まれたこと、ブレーキペダルが踏み込まれたこと、前記手動変速機がニュートラル位置にあり、且つ、シートベルトが締められたこと、前記手動変速機がニュートラル位置にあり、且つ、運転席に着座されたこと、前記手動変速機がニュートラル位置から走行位置に切り替えられたこと、およびステアリングホイールが握られたことのうちの少なくともいずれかであって、
前記始動時操作ユニットは、シフトレバー、クラッチペダル、ブレーキペダル、運転席、およびステアリングホイールのうちの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン制御システム。
【請求項5】
ドライバーによって携行されるとともに、前記ドライバーの体を介した人体通信によってデータの送受信を行うことが可能な携帯機側人体通信部を備えている携帯機と、
エンジン作動中の停止車両が駐車に至るまでにドライバーによって通常行われ、且つ、エンジンを停止するためのみに行われる操作ではない所定の操作を検出するための停止用操作検出部と、
前記所定の操作が行われる部材のうちの少なくともいずれかであって、前記ドライバーの体を介した人体通信によってデータの送受信を行うことが可能なユニット側人体通信部を備えている停止時操作ユニットと、
前記所定の操作が行われたことを前記停止用操作検出部で検出したか否かを判定するとともに、前記携帯機と前記始動時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって、前記所定の操作が行われたことを前記停止用操作検出部で検出したと判定したとともに、前記携帯機と前記停止時操作ユニットとの間で前記人体通信によってデータの送受信が行われたと判定したことに基づいて、エンジンを自動的に停止させる停止制御部と、を含むエンジン制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−59887(P2010−59887A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227533(P2008−227533)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】