説明

エンジン回転数制御方法

【課題】オートデセル目標回転数を低下させて燃費および騒音の低減を図れるとともに、このときに発生する作業の立ち上がりが遅くなり作業効率が低下する問題を、エンジン回転数の制御のみで解決できるエンジン回転数制御方法を提供する。
【解決手段】設定モード26では、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値がフルスロットルの場合のみ、オートデセル目標回転数を従来通り中間アクセル(例えば1200rpm程度)に設定し、若しくは、立ち上がり速度が許容可能なエンジン回転数に設定する。アクセルスロットル13のアクセルスロットル値がフルスロットル以外の場合、すなわちフルスロットル以下のエコモード等のスロットルでは、燃料消費および騒音の低減を優先し、オートデセル目標回転数をローアクセル(例えば800rpm程度)に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートデセル目標回転数を変化させるエンジン回転数制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオートデセルと呼ばれる機能は、作業機械のエンジン回転数が設定された回転数(例えば1300rpm)以上のときに、一定時間(例えば3秒間)、操作レバーが操作されないと、設定された回転数までエンジン回転数が自動的に低下し、操作レバーを操作すると自動的に元の回転数に復帰する機能である。
【0003】
このオートデセル機能により、エンジン回転数は自動的に設定された回転数まで低下するものの、燃料消費および騒音低減を図るなら、更にエンジン回転数を低下させることが望ましい。
【0004】
そこで、操作レバーが中立になると、直ちにオートデセル装置を短時間作動させてエンジン回転数を少し低下させ、この回転を所定時間保持してから、再びオートデセル装置を作動させてさらにエンジン回転数を低下させるエンジン回転数制御方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この機能によって燃料消費と騒音の低減を図れるが、油圧出力の立ち上がりは遅くなってしまう。
【0006】
そこで、操作レバー中立時の回転数を極低速に設定して、操作レバー操作時のエンジン加速を電動機で発生するトルクによってアシストすることで、操作レバーが中立位置に戻されたときの燃費、騒音を従来よりも低減させつつ、操作レバーが中立位置から操作されたときにエンジンを短時間で目標回転数に上昇させるエンジン回転数制御装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−142338号公報(第1頁、第3図)
【特許文献2】特開2004−150305号公報(第1頁、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、エンジン回転数を低下させすぎると、ダンプ積み込み等を伴う重掘削の際に、操作レバーを操作してもエンジン回転数の復帰が遅いため、油圧出力の立ち上がりがオペレータにとって許容できないほど遅くなってしまい、操作性が低下するか、または上記のようなエンジン加速アシスト用の電動機を付加しなければならないなどの問題がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、オートデセル目標回転数を低下させて燃費および騒音の低減を図れるとともに、このときに発生する作業の立ち上がりが遅くなり作業効率が低下する問題を、エンジン回転数の制御のみで解決できるエンジン回転数制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明は、エンジンから生まれる油圧出力を制御して作業機械を動かす操作レバーが操作されないときは、エンジン回転数をオートデセル目標回転数に低下させるエンジン回転数制御方法において、エンジン回転数を設定するエンジン回転数設定器による回転数設定値によってオートデセル目標回転数を変化させるエンジン回転数制御方法である。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のエンジン回転数制御方法において、エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットルの場合のみ、オートデセル目標回転数を中間アクセルに設定し、エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットル以外の場合は、オートデセル目標回転数をローアクセルに設定するエンジン回転数制御方法である。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1記載のエンジン回転数制御方法において、エンジン回転数設定器による回転数設定値に応じてオートデセル目標回転数を漸次増減させるエンジン回転数制御方法である。
【0013】
請求項4に記載された発明は、請求項1記載のエンジン回転数制御方法において、エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットルおよびフルスロットルより低い高スロットルの場合は、オートデセル目標回転数を中間アクセルに設定し、エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットルおよび高スロットル以外の場合は、オートデセル目標回転数をローアクセルに設定し、エンジン回転数設定器による回転数設定値が高スロットルで操作レバーが一定時間操作されないときは、オートデセル目標回転数をローアクセルに低下させるエンジン回転数制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、エンジン回転数を設定するエンジン回転数設定器による回転数設定値によってオートデセル目標回転数を変化させることで、重負荷作業時は、オートデセル目標回転数を作業効率重視のエンジン回転数に制御し、それ以外ではオートデセル目標回転数を省エネ静音重視のエンジン回転数に制御することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットルの場合のみ、オートデセル目標回転数を中間アクセルに設定し、それ以外の場合はローアクセルに設定するので、フルスロットルでは中間アクセルからのエンジン回転数立ち上がりにより、油圧出力の立ち上がりを高速化できるとともに、フルスロットル以外ではローアクセルにより燃料消費量および騒音を低減させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、エンジン回転数設定器による回転数設定値に応じてオートデセル目標回転数を漸次増減させるので、オートデセル目標回転数を、作業効率重視のエンジン回転数制御と、省エネ静音重視のエンジン回転数制御との間で、きめ細かく制御できる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットルより低い高スロットルの場合は、オートデセル目標回転数は、中間アクセルからのエンジン回転数立ち上がりにより、油圧出力の立ち上がりを高速化できるとともに、操作レバーが更に一定時間操作されないときは、ローアクセルにより燃料消費量および騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るエンジン回転数制御方法の一実施の形態を示す制御系構成図である。
【図2】同上制御系のブロック図である。
【図3】同上制御系のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図1乃至図3に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0020】
図2に示されるように、作業機械の動作を制御するマシンコントローラ11の入力側には、作業機械のスイッチパネル12に設置されたエンジン回転数を設定するエンジン回転数設定器としてのアクセルスロットル13と、作業機械のモニタに設置されたオートデセルのモードを切替えるための切替ボタンスイッチ14と、作業機械のオペレータにより操作される操作レバー15の操作有無を検出する検出器16とが接続されている。
【0021】
マシンコントローラ11の出力側は、エンジン17の燃料噴射を制御するエンジンコントローラ18に接続され、このエンジンコントローラ18は、燃料噴射用のインジェクタ19に接続されている。
【0022】
エンジン17の出力軸は、油圧ポンプ21の駆動軸に接続され、この油圧ポンプ21は、油タンク22内の作動油をコントロール弁23に供給し、このコントロール弁23は、上記操作レバー15によりパイロット操作され、作業機械の作業装置用アクチュエータ24の動作を制御する。操作レバー15がパイロット操作弁(いわゆるリモコン弁)の場合は、上記操作有無を検出する検出器16として圧力スイッチを用いる。
【0023】
そして、エンジン17から油圧ポンプ21を介して生まれる油圧出力を制御して作業機械の作業装置用アクチュエータ24を動かす操作レバー15が、操作されないときは、すなわち検出器16がレバー操作無しを検出した場合は、マシンコントローラ11が、エンジン回転数をオートデセル目標回転数に低下させるエンジン回転数制御方法である。
【0024】
このようなエンジン回転数制御方法において、マシンコントローラ11は、アクセルスロットル13により設定された回転数設定値としてのアクセルスロットル値によって、操作レバー中立時のエンジン回転数であるオートデセル目標回転数を変化させる。
【0025】
図3は、マシンコントローラ11での制御手順を示すフローチャートであり、エンジン17が始動している場合は(ステップ1でYES)、操作レバー15の操作有無を判断し、操作無し、すなわち操作レバー15が中立状態でX秒経過したか否かを判定し(ステップ2)、レバー中立状態でX秒経過した場合は、アクセルスロットル13により設定されたアクセルスロットル値と、切替ボタンスイッチ14により設定されたオートデセルの図1に示された設定モードとから、オートデセル目標回転数を決定し(ステップ3)、このオートデセル目標回転数をエンジンコントローラ18へ送信する(ステップ4)。
【0026】
さらに、操作レバー15またはアクセルスロットル13が操作されたか否かを判定し(ステップ5)、これらの操作があった場合は(ステップ5でYES)、オートデセル制御を解除して、マシンコントローラ11からエンジンコントローラ18へ、アクセルスロットル13により設定されたエンジン回転数設定値を送信し、この回転数設定値によりエンジン17のインジェクタ19を制御する。
【0027】
次に、図1を参照しながら、切替ボタンスイッチ14により選択された具体的な設定例を以下に挙げる。なお、以下の設定例はあくまで一例であり、本発明の要点は、アクセルスロットル値によってオートデセル目標回転数を作業機械の作業内容に適した設定回転数に変化させることにある。
【0028】
(設定モード26)
設定モード26では、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値がフルスロットルの場合のみ、オートデセル目標回転数を従来通り中間アクセル(例えば1200rpm程度)に設定し、若しくは、立ち上がり速度が許容可能なエンジン回転数に設定し、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値がフルスロットル以外の場合、すなわちフルスロットル以下のエコモード等の、ダンプ積み込み作業を伴う重掘削が行われる可能性が低いスロットルでは、燃料消費および騒音の低減を優先し、オートデセル目標回転数をローアクセル(例えば800rpm程度)に設定する。
【0029】
この設定モード26によれば、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値がフルスロットルの場合のみ、オートデセル目標回転数を中間アクセルに設定し、それ以外の場合はローアクセルに設定するので、フルスロットルでは中間アクセルからのエンジン回転数立ち上がりにより、油圧出力の立ち上がりを高速化できるとともに、フルスロットル以外ではローアクセルにより燃料消費量および騒音を低減させることができる。
【0030】
(設定モード27,28)
設定モード27,28では、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値に応じてオートデセル目標回転数を漸次増減させる。すなわち、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値に応じて、オートデセル目標回転数を段階的に漸次増減させる場合(設定モード27)と、リニアに漸次増減させる場合(設定モード28)とを選択可能である。
【0031】
この実施の形態によれば、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値に応じてオートデセル目標回転数を漸次増減させるので、オートデセル目標回転数を、作業効率重視のエンジン回転数制御と、省エネ静音重視のエンジン回転数制御との間で、きめ細かく制御できる。
【0032】
(設定モード29)
設定モード29では、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値がフルスロットルおよびフルスロットルより低い高スロットルの場合は、オートデセル目標回転数を中間アクセルに設定し、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値がフルスロットルおよび高スロットル以外の場合は、オートデセル目標回転数をローアクセルに設定し、さらに、アクセルスロットル13が高スロットルで操作レバー15が一定時間操作されないときは、オートデセル目標回転数を点線に示す中間アクセルから実線に示すローアクセルに低下させるエンジン回転数制御方法である。
【0033】
すなわち、高めのスロットルではダンプ積み込みを伴う重掘削を行う可能性があるので、フルスロットルと高めのスロットルを従来通り中間アクセルに設定し、若しくは、立ち上がり速度が許容可能なエンジン回転数に設定し、それ以下のスロットルではローアクセルにするが、オートデセル目標回転数は、フルスロットル以外の点線で示された高めのスロットルでは、燃料消費量の低減を重視して、中間アクセルにエンジン回転数が低下した後に、さらに操作レバー15が更に一定時間操作されなければ、実線に示されるようにローアクセルまで回転数を低下させる。
【0034】
この実施の形態によれば、アクセルスロットル13がフルスロットルより低い高スロットルの場合は、オートデセル目標回転数は、中間アクセルからのエンジン回転数立ち上がりにより、油圧出力の立ち上がりを高速化できるとともに、操作レバー15が更に一定時間操作されないときは、ローアクセルにより燃料消費量および騒音を低減させることができる。
【0035】
以上のように、各実施の形態は、エンジン17から生まれる油圧出力を制御して作業機械を動かす操作レバー15が操作されないときは、エンジン回転数をオートデセル目標回転数に低下させるエンジン回転数制御方法において、エンジン回転数を設定するアクセルスロットル13に応じてオートデセル目標回転数を変化させるエンジン回転数制御方法である。
【0036】
すなわち、オートデセル目標回転数をローアクセル(例えば800rpm程度)に設定することで燃費および騒音の低減を図り、一方、オートデセル目標回転数を常にローアクセルに設定すると、作業に必要なエンジン回転数に上がるまで時間がかかり生産性が悪くなる場合があるので、中間アクセル(例えば1200rpm)のオートデセル目標回転数も設け、アクセルスロットル13のアクセルスロットル値に応じてオートデセル目標回転数を自動的に変化させる。
【0037】
このような各実施の形態によれば、エンジン回転数を設定するアクセルスロットル13のアクセルスロットル値に応じてオートデセル目標回転数を変化させることで、例えば、ダンプ積み込みを伴う重掘削時などの重負荷作業時は、レバー中立時のオートデセル目標回転数を作業効率重視のエンジン回転数(中間アクセル)に制御し、ローアクセルに低下させる場合より油圧出力の立ち上がりを高速化でき、それ以外のアクセルスロットル値ではオートデセル目標回転数を省エネ静音重視のエンジン回転数(ローアクセル)に制御することができ、燃料消費量および騒音を低減させることができ、相反する目的を両立可能である。
【0038】
その際、複数のパターンの設定モード26,27,28,29を設けておいて、オペレータの好みまたは作業内容などによって、モニタの切替ボタンスイッチ14により設定モード26,27,28,29および図示されない設定モードの中から任意の設定モードを選択できるようにする。
【0039】
なお、エンジン回転数設定器としてのアクセルスロットル13で設定する回転数設定値は、無段階のアナログ値および所定段階のデジタル値の両方を含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、油圧ショベル、ブルドーザ、ローダなどの作業機械に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
13 エンジン回転数設定器としてのアクセルスロットル
15 操作レバー
17 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから生まれる油圧出力を制御して作業機械を動かす操作レバーが操作されないときは、エンジン回転数をオートデセル目標回転数に低下させるエンジン回転数制御方法において、
エンジン回転数を設定するエンジン回転数設定器による回転数設定値によってオートデセル目標回転数を変化させる
ことを特徴とするエンジン回転数制御方法。
【請求項2】
エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットルの場合のみ、オートデセル目標回転数を中間アクセルに設定し、
エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットル以外の場合は、オートデセル目標回転数をローアクセルに設定する
ことを特徴とする請求項1記載のエンジン回転数制御方法。
【請求項3】
エンジン回転数設定器による回転数設定値に応じてオートデセル目標回転数を漸次増減させる
ことを特徴とする請求項1記載のエンジン回転数制御方法。
【請求項4】
エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットルおよびフルスロットルより低い高スロットルの場合は、オートデセル目標回転数を中間アクセルに設定し、
エンジン回転数設定器による回転数設定値がフルスロットルおよび高スロットル以外の場合は、オートデセル目標回転数をローアクセルに設定し、
エンジン回転数設定器による回転数設定値が高スロットルで操作レバーが一定時間操作されないときは、オートデセル目標回転数をローアクセルに低下させる
ことを特徴とする請求項1記載のエンジン回転数制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−7064(P2011−7064A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148674(P2009−148674)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】