エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイル
【課題】製品品質の低減を防止し、製品寿命に優れたエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルを提供する。
【解決手段】誘導加熱コイル体10の母材よりなる複数の予備成型体60〜64に、予備成型体60〜64を接合面60a等で組み合わせることで全体として冷却水流路5が形成されるように所定の形状の溝部80a等を穿設する第一加工工程S100と、第一加工工程S100にて溝部80a等が穿設された予備成型体60〜64を、それぞれ所定の接合面60a等で組み合わせ、固相接合により予備成型体60〜64の接合面60a等を接合して一の成型体6とする接合工程S110と、接合工程S110にて接合された成型体6に対して、溝部80a等の形状に基づいて誘導加熱コイル体10を削り出す第二加工工程S120と、を有する。
【解決手段】誘導加熱コイル体10の母材よりなる複数の予備成型体60〜64に、予備成型体60〜64を接合面60a等で組み合わせることで全体として冷却水流路5が形成されるように所定の形状の溝部80a等を穿設する第一加工工程S100と、第一加工工程S100にて溝部80a等が穿設された予備成型体60〜64を、それぞれ所定の接合面60a等で組み合わせ、固相接合により予備成型体60〜64の接合面60a等を接合して一の成型体6とする接合工程S110と、接合工程S110にて接合された成型体6に対して、溝部80a等の形状に基づいて誘導加熱コイル体10を削り出す第二加工工程S120と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルの技術に関し、より詳細には、内部に冷却水を流す冷却水流路を有する、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱を利用して鋼製部材などの被加熱物を所定の焼入れ温度に加熱し、急冷する高周波焼入れ装置の構成が公知である。このような高周波焼入れ装置には、通常、被加熱物の外周面又は内周面を誘導加熱するために、被加熱物の形状(外周形状等)に沿って形成された加熱導体部を有する誘導加熱コイルが用いられる。被加熱物としては、例えば、自動車エンジン用クランクシャフト等の軸状部材など様々な形状のものがあり、誘導加熱コイルにおいて被加熱物の形状に応じて様々に構成されている。
【0003】
誘導加熱コイルの構成としては、一般的には、高周波電源に接続される一対のリード導体部の間に、直線状又は湾曲状の加熱導体部が接続され、全体として上述した被加熱物の外周形状に沿うようにして一部が延出、屈曲、又は湾曲された構造体として形成されている。また、このリード導体部や加熱導体部の内部には、冷却水を流す冷却水流路が設けられており、誘導加熱時に冷却水流路に冷却水が常時流されることで、加熱導体部において自身の過熱による損傷を防止するように構成されている。
【0004】
これらの従来の誘導加熱コイルは、例えば、特許文献1〜3に開示されるように、リード導体部や加熱導体部が銅などの導電性材料を断面略矩形のパイプ状に成形したパイプ部材を用いて、加熱導体部が全体として所定形状をなすように、パイプ部材がろう付けにより連結されて構成されている。特に、誘導加熱コイルにおいては、リード導体部と加熱導体部との接続部位や加熱導体部に複数の屈曲部が形成されることが多いため、従来の誘導加熱コイルの製造方法としては、具体的には、まず断面矩形の複数のパイプ部材が成形され、次いで加熱導体部を構成する屈曲部にてパイプ部材の端部同士をろう付けにより連結させることで形成されていた。
【0005】
ところで、高周波焼入れ装置に用いられる誘導加熱コイルは、焼入れ時に、高周波電源より供給される交流の高周波電流が流れることで交番磁束を発生させ、この交番磁束によって被加熱物にうず電流が発生する。そして、被加熱物に発生するうず電流による抵抗発熱と誘導加熱コイルからの交番磁束によるヒステリシス損から生じる発熱によって、被加熱物が加熱されるのである。また、焼入れ時には、誘導加熱コイルにおいて、加熱された被加熱物からの輻射熱により高温に加熱されるため、上述したように冷却水流路に冷却水が常時流されている。
【0006】
しかし、従来の誘導加熱コイルの構成では、高周波電源より供給された高周波電流が他の部位に比べて屈曲部に集中するため、焼入れによる通電が繰り返されることで、屈曲部の温度が局所的に上昇したり、屈曲部において加熱・冷却による温度振幅が他の部分よりも大きくなったりしてしまう。そのため、ろう材自体が劣化(収縮や気泡発生)して、ろう付け部分の接合強度が低減したり、ろう付けが剥がれたりする場合があり、屈曲部の接続部位において製品品質が低減し、ひいては誘導加熱コイルの製品寿命に劣るという課題があった。
【0007】
特に、自動車等のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いられる誘導加熱コイルにおいては、従来のろう付けによる製造方法では、精密ろう付けの箇所が多く、かつろう付け箇所(接合部位)が近接しているために円熟した技能が求められ、作業者の熟練度による製品品質のばらつきが生じてしまうという課題があった。
【0008】
また、近年では、誘導加熱コイルは、被加熱物に対する加熱むらを低減し、また焼入れ深さを均質化して焼入れ精度を向上すべく、被加熱物の形状に応じてより複雑化・細緻化された形状に構成される傾向にある。このような誘導加熱コイルの形状の複雑化に伴って、誘導加熱部において複数の屈曲部が形成されることから、屈曲部の接合部位において製品品質が低減してしまうという課題がより深刻化してきている。
【0009】
なお、上述した観点から、特許文献3では、屈曲部で接続される少なくとも一方のパイプ部材の断面形状を屈曲部のコーナ部の間に頂点を有する多角断面とした誘導加熱コイルの構成が提案されている。しかしながら、このような誘導加熱コイルの構成であっても、従来の誘導加熱コイルの製造方法において、かかる断面形状を有するパイプ部材がろう付けにより連結されるため、上述したような課題は依然として解消されないままであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−283862号公報
【特許文献2】特開2004−52013号公報
【特許文献3】特開2006−302683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明では、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルに関し、前記従来の課題を解決するもので、製品品質の低減を防止し、製品寿命に優れたエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
すなわち、請求項1においては、内部に冷却水を流す冷却水流路を有する、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法であって、誘導加熱コイルの母材よりなる複数の予備成型体に、該予備成型体を所定の接合面で組み合わせることで全体として前記冷却水流路が形成されるように所定の形状の溝部を穿設する第一加工工程と、前記第一加工工程にて前記溝部が穿設された前記予備成型体を、それぞれ所定の接合面で組み合わせ、固相接合により予備成型体の接合面を接合して一の成型体とする接合工程と、前記接合工程にて接合された成型体に対して、前記溝部の形状に基づいて誘導加熱コイルを削り出す第二加工工程と、を有してなるものである。
【0014】
請求項2においては、前記第一加工工程は、誘導加熱コイルを平行する複数の水平面にて所定の分割層部にそれぞれ分割した場合に、前記分割層部の平断面に表れる形状に対応する形状の前記溝部を、前記予備成型体の接合面に穿設するものである。
【0015】
請求項3においては、前記第一加工工程は、誘導加熱コイルを前記予備成型体と同数であって、かつ同じ厚さの分割層部にそれぞれ分割するものである。
【0016】
請求項4においては、前記第一加工工程は、誘導加熱コイルに形成される屈曲部を通る水平面にて分割するものである。
【0017】
請求項5においては、前記接合工程は、所定の予備成型体に穿設された前記溝部と、対応する予備成型体に穿設された前記溝部とを組み合わせることで、前記冷却水流路の一部が形成されるように予備成型体を位置決めするものである。
【0018】
請求項6においては、前記請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルの製造方法により製造されるエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルであって、屈曲部にてろう付けされることなく一体的に連続されるものである。
【0019】
請求項7においては、前記請求項6に記載の誘導加熱コイルであって、被加熱物の外周形状に沿うようにして湾曲状に成形され、複数の屈曲部が形成された加熱導体部を具備してなるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、製品品質の低減を防止し、製品寿命に優れたエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る誘導加熱コイルの全体的な構成を示した斜視図。
【図2】誘導加熱コイル体の構成を示した斜視図。
【図3】誘導加熱コイルの製造方法を示したフローチャート。
【図4】溝部が穿設された予備成型体を組み付けた状態を示した斜視図。
【図5】誘導加熱コイル体を水平面で分割する様子を示した側面図。
【図6】分割層部の構成を示した斜視図。
【図7】予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【図8】同じく予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【図9】同じく予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【図10】同じく予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【図11】同じく予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、発明を実施するための形態を説明する。
なお、以下の実施例において、図1に示す矢印X方向を誘導加熱コイル1(誘導加熱コイル体10)の上下方向とし、図1に示す矢印Y方向を誘導加熱コイル1(誘導加熱コイル体10)の水平方向とする。
【0023】
まず、本実施例の製造方法により製造される誘導加熱コイル1の全体構成について、以下に概説する。
図1に示すように、本実施例の誘導加熱コイル1は、図示せぬ高周波焼入れ装置に接続された状態で、誘導加熱を利用して鋼製部材などの被加熱物2を所定の焼入れ温度に加熱・急冷して焼入れ処理(又は焼戻し処理)するためのコイル部材として使用される。なお、本実施例の誘導加熱コイル1は、自動車等のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いるコイル部材として構成され、被加熱物2としては、主に、自動車等のエンジン用クランクシャフトを対象とし、誘導加熱コイル1にてかかるエンジン用クランクシャフトの外周面が誘導加熱される。
【0024】
本実施例の誘導加熱コイル1は、被加熱物2の軸心方向に沿って略対称形状に形成された一対の誘導加熱コイル体10・10として構成されている。誘導加熱コイル体10・10は、それぞれ導電性材料としての銅材にて断面矩形のパイプ状に形成されたパイプ部材が、全体として被加熱物2の外周形状(外周面)に沿うようにして延出、屈曲、又は湾曲された構造体として形成されている。
【0025】
なお、以下の実施例においては、誘導加熱コイル体10・10が略対称形状に形成されていることから、特に言及する場合を除いて、一方の誘導加熱コイル体10の構成について説明し、他方の誘導加熱コイル体10の構成については、その詳細な説明は省略する。
【0026】
次に、誘導加熱コイル体10の構成について、以下に詳述する。
図1及び図2に示すように、本実施例の誘導加熱コイル体10は、高周波焼入れ装置に設けられた図示せぬ高周波電源に接続される一対のリード導体部3と、リード導体部3に接続され、被加熱物2の外周形状に沿うようにして湾曲状に成形された加熱導体部4等とで構成されている。また、誘導加熱コイル体10は、上下方向の中心位置を通る水平面に対して上下方向に略対称形状に形成されている。
【0027】
リード導体部3は、略直線状に形成された断面略矩形のパイプ部材より構成されており、一端が図示せぬ高周波電源に接続され、他端が後述する加熱導体部4へと連続されている。特に、本実施例のリード導体部3は、水平方向に延出された一対のパイプ部材より構成されており、上方に配置された上リード導体部30aと、下方に配置された下リード導体部30bとが、誘導加熱コイル1の上下方向に所定の離間を有するようにして並設されている。
【0028】
上リード導体部30a及び下リード導体部30bは、それぞれ略同形に形成されており、上リード導体部30a及び下リード導体部30bの間に後述する加熱導体部4が接続されている。高周波電源からリード導体部3に供給された高周波電流は、誘導加熱コイル体10において、上リード導体部30aを介して加熱導体部4に流れ、加熱導体部4の形状にそって流れた後に、下リード導体部30bより高周波電源に戻る。
【0029】
加熱導体部4は、リード導体部3(上リード導体部30a及び下リード導体部30b)の一端に接続され、被加熱物2の外周形状に沿うようにして水平方向に湾曲状に形成されたパイプ部材より構成されている。具体的には、水平方向に湾曲状に延出され、上下方向に所定の離間を有するようにして並設される一対の湾曲部40(上湾曲部40a及び下湾曲部40b)と、湾曲部40(上湾曲部40a及び下湾曲部40b)の一端側を上下方向に連結させる上下連結部41と、湾曲部40(上湾曲部40a及び下湾曲部40b)の他端側を上リード導体部30a及び下リード導体部30bにそれぞれ接続させる接続部42(上接続部42a及び下接続部42b)等とで構成されている。
【0030】
本実施例の誘導加熱コイル体10は、上湾曲部40a及び下湾曲部40bと、上下連結部41と、上接続部42a及び下接続部42bとを有する加熱導体部4と、上述した上リード導体部30a及び下リード導体部30bを有するリード導体部3とが、それぞれ連続して一体的に形成されている。すなわち、誘導加熱コイル体10は、リード導体部3及び加熱導体部4において、上リード導体部30aに上接続部42aを介して上湾曲部40aが連続され、下リード導体部30bに下接続部42bを介して下湾曲部40bが連続されるとともに、上湾曲部40a及び下湾曲部40bが、上接続部42a及び下接続部42bと連続される反対側の端部において上下連結部41を介して連続されて、一体形成されている。
【0031】
上湾曲部40a及び下湾曲部40bは、被加熱物2の外周形状に沿うように、誘導加熱コイル体10の水平方向に延出しながら湾曲され、誘導加熱コイル体10の上下方向に所定の離間を有するようにして並設される。また、上湾曲部40a及び下湾曲部40bの湾曲面であって被加熱物2に対向する縁部は、被加熱物2に近接する方向に突出されている。焼入れ時には、湾曲部40に高周波電流が流れることで発生した交番磁束によって被加熱物にうず電流が発生されるため、被加熱物2の外周形状に対して縁部を近接させることで、湾曲部40にて焼入れ効率を向上させることができる。
【0032】
上下連結部41は、上下方向に延出された略長板状のパイプ部材より形成され、上湾曲部40aの上リード導体部30a側の端部とは反対側の端部と、下湾曲部40bの下リード導体部30b側の端部とは反対側の端部とをそれぞれ連結するように形成されており、本実施例では、上下連結部41は、上湾曲部40a及び下湾曲部40bの端部に対して水平方向から当接するようにして連結されている。
【0033】
上接続部42a及び下接続部42bは、一端が上リード導体部30a及び下リード導体部30bの端部形状と略同形に形成された断面矩形のパイプ部材より構成されている。具体的には、上接続部42aは、上リード導体部30aの端部に連続され、上湾曲部40aが上接続部42aの上面側に被加熱物2の外周形状に沿って水平方向に延出されるようにして連続されている。一方、下接続部42bは、下リード導体部30bの端部に連続され、下湾曲部40bが下接続部42bの下面側に被加熱物2の外周形状に沿って水平方向に延出されるようにして連続されている。
【0034】
本実施例の誘導加熱コイル体10は、全体として、被加熱物2に対して被加熱物2の径方向に向けて水平方向に延出された上リード導体部30aから、上接続部42aにて被加熱物2の上方かつ円周方向に向けて屈曲されるとともに、被加熱物2の外周形状に沿って水平方向に延出・湾曲された上湾曲部40aから上下連結部41にて下方向に向けて屈曲されている。同様に、被加熱物2に対して被加熱物2の径方向に向けて水平方向に延出された下リード導体部30bから、下接続部42bにて被加熱物2の下方かつ円周方向に向けて屈曲されるとともに、被加熱物2の外周形状に沿って水平方向に延出・湾曲された下湾曲部40bから上下連結部41にて上方向に向けて屈曲されている。
【0035】
このように構成されることで、本実施例の誘導加熱コイル体10には、上リード導体部30aと上湾曲部40aとの接続部位である上接続部42aにて屈曲部10aが形成され、上湾曲部40aと上下連結部41との接続部位にて屈曲部10bが形成され、下湾曲部40bと上下連結部41との接続部知にて屈曲部10cが形成され、下リード導体部30bと下湾曲部40bとの接続部位である下接続部42bにて屈曲部10dが形成されている。
【0036】
ここで、誘導加熱コイル体10に形成される冷却水流路5の構成について、以下に詳述する。
図2に示したように、本実施例の誘導加熱コイル体10は、銅材にて断面矩形のパイプ部材より構成されることで、内部に冷却水を流す冷却水流路5が形成されている。冷却水流路5は、リード導体部3及び加熱導体部4を構成するパイプ部材の内部中空に連続して形成されており、図示せぬ冷却水タンクより上リード導体部30aに供給された冷却水は、上リード導体部30a→上接続部42a→上湾曲部40a→上下連結部41→下湾曲部40b→下接続部42b→下リード導体部30bの順に流れて、下リード導体部30bから機外に排出される。
【0037】
具体的には、冷却水流路5は、上リード導体部30a及び下リード導体部30bの内部中空に水平方向に沿って直線状に延出された上流路50a及び下流路50bと、上湾曲部40a及び下湾曲部40bの内部中空に水平方向に沿って湾曲状に延出された上流路51a及び下流路51bと、上下連結部41の内部中空に上下方向に沿って直線上に延出された上下流路52と、上接続部42a及び下接続部42bの内部中空であって、上リード導体部30a又は下リード導体部30bとの接続側では水平方向に沿って直線状に延出されつつ、途中で上方又は下方に屈曲されて、上湾曲部40a又は下湾曲部40bとの接続側で上下方向に沿って直線上に延出された上流路53a及び下流路53bとで構成されている。
【0038】
本実施例の誘導加熱コイル体10は、上述したように、上リード導体部30a・下リード導体部30b・上湾曲部40a・下湾曲部40bにてそれぞれ水平方向に略平行に延出されており、その上下方向の相対位置としては、上湾曲部40aが一番上方に位置され、以下、上湾曲部40a→上リード導体部30a→下リード導体部30b→下湾曲部40bの順に従って下方に位置され、下湾曲部40bが一番下方に位置されている。そのため、誘導加熱コイル体10の冷却水流路5としては、上流路50a及び下流路50b、並びに上流路51a及び下流路51bにてそれぞれ水平方向に延出され、その上下方向の相対位置としては、上流路51a→上流路50a→下流路50b→下流路51bの順に従って下方に位置されている。
【0039】
次に、本実施例の誘導加熱コイル1の製造方法について、以下に詳述する。
以下の実施例においては、誘導加熱コイル1の製造方法として、一方の誘導加熱コイル体10の製造方法について主に説明するが、他方の誘導加熱コイル体10の製造方法についても同様である。
【0040】
本実施例の誘導加熱コイル体10の製造方法は、リード導体部3及び加熱導体部4における屈曲部10a〜10dにてろう付けされることなく誘導加熱コイル体10を一体形成する方法であって、誘導加熱コイル体10の母材よりなる成型体6から誘導加熱コイル体10が削り出により製造される。特に、本実施例の誘導加熱コイル体10は、内部中空に冷却水流路5が形成されるため、予め、複数の予備成型体60〜64に所定の形状の溝部80a等を穿設しておき、予備成型体60〜64を対応する接合面60a等で組み合わせて一の成型体6とすることで、成型体6の内部に冷却水流路5に相当する空間部を形成させておくことを特徴としている。
【0041】
具体的には、図3に示すように、本実施例の誘導加熱コイル体10の製造方法は、誘導加熱コイル体10の母材よりなる複数の予備成型体60〜64に、予備成型体60〜64を接合面60a等で組み合わせることで全体として冷却水流路5が形成されるように所定の形状の溝部80aを穿設する第一加工工程S100と、第一加工工程S100にて溝部80a等が穿設された予備成型体60〜64を、それぞれ所定の接合面60a等で組み合わせ、固相接合により予備成型体60〜64の接合面60a等を接合して一の成型体6とする接合工程S110と、接合工程S110にて接合された成型体6に対して、溝部80a等の形状に基づいて誘導加熱コイル体10を削り出す第二加工工程S120と、を有するものである。
【0042】
まず、図4に示すように、第一加工工程S100で用いられる予備成型体60〜64は、誘導加熱コイル体10の母材よりなる平面視矩形の平板状の部材であって、上下平面において水平面を有し、それぞれ略同形に形成されている。本実施例では、5個の予備成型体60〜64が用いられ、各予備成型体60〜64において、それぞれ厚さ(上下方向高さ)が略同じとなるように形成される。後述するように、誘導加熱コイル体10は、この予備成型体60〜64と同数であって、かつ同じ厚さの分割層部11〜15に分割される(図5参照)。
【0043】
予備成型体60〜64は、後述する接合工程S110にて、上下方向に接合面60a等で組み合わされることで直方体形状の一の成型体6として組み付けられる。本実施例では、予備成型体60が一番上方位置に配置され、以下予備成型体60→予備成型体61→予備成型体62→予備成型体63→予備成型体64の順に下方に位置され、予備成型体64が一番下方位置に配置される。
【0044】
予備成型体60及び予備成型体61は、予備成型体60の下水平面である接合面60aと予備成型体61の上水平面である接合面61bとが面接された状態で組み合わされる。同様に、以下、予備成型体61及び予備成型体62は、予備成型体61の下水平面である接合面61aと予備成型体62の上水平面である接合面62bとが面接された状態で組み合わされ、予備成型体62及び予備成型体63は、予備成型体62の下水平面である接合面62aと予備成型体63の上水平面である接合面63bとが面接された状態で組み合わされ、予備成型体63及び予備成型体64は、予備成型体63の下水平面である接合面63aと予備成型体64の上水平面である接合面64bとが面接された状態で組み合わされる。
【0045】
図5乃至図11に示すように、第一加工工程S100では、上述した予備成型体60〜64の接合面60a等に所定の形状の溝部80a等がそれぞれ穿設される。溝部80a等は、誘導加熱コイル体10の水平方向に沿って平行する複数の水平面70〜73にて、誘導加熱コイル体10を分割層部11〜15にそれぞれ分割した場合に、分割層部11〜15の平断面に表れる冷却水流路5の形状に対応する形状とされる。
【0046】
図5に示すように、具体的には、まず、4つの水平面70〜73によって、誘導加熱コイル体10が略同じ厚さ(上下方向高さ)の5個の分割層部11〜15にそれぞれ分割される。水平面70〜73は、誘導加熱コイル体10の水平方向に沿ってそれぞれ平行とされる疑似平面であって、水平面70〜73によって、誘導加熱コイル体10に形成された屈曲部10a〜10dを通るようにして誘導加熱コイル体10が分割される。
【0047】
より詳細には、水平面70は、上湾曲部40aと上下連結部41との接続部位に形成された屈曲部10bを通る疑似平面である。同様に、以下、水平面71は、誘導加熱コイル体10の上リード導体部30aと上湾曲部40aとの接続部位(上接続部42a)に形成された屈曲部10aを通る疑似平面であり、水平面72は、下湾曲部40bと上下連結部41との接続部に形成された屈曲部10cを通る疑似平面であり、水平面73は、下リード導体部30bと下湾曲部40bとの接続部位(下接続部42b)に形成された屈曲部10dを通る疑似平面である。
【0048】
このように水平面70〜73により誘導加熱コイル体10を水平方向に分割することで、誘導加熱コイル体10は5個の分割層部11〜15に分割され、分割層部11〜15の平断面には、誘導加熱コイル体10の内部中空部に形成された冷却水流路5の水平断面形状が現れる。
【0049】
図6を参照しながら、本実施例における分割層部11〜15の平断面に現れる形状について説明すると、分割層部11の下水平面である平断面には、上湾曲部40a・上下連結部41の上流路51a・上下流路52の水平面断面形状が現れる(図6(a)参照)。
同様に、分割層部12の上水平面である平断面には、上湾曲部40a・上下連結部41・上接続部42aの上流路51a・上下流路52・上流路53aの水平面断面形状が現れ(図6(b)参照)、分割層部12の下水平面である平断面には上リード導体部30a・上下連結部41・上接続部42aの上流路50a・上下流路52・上流路53aの水平面断面形状が現れる。
分割層部13の上水平面である平断面には、上下連結部41の上下流路52の水平面断面形状が現れ、分割層部13の下水平面である平断面には上下連結部41の上下流路52の水平面断面形状が現れる(図6(c)参照)。
分割層部14の上水平面である平断面には、下リード導体部30b・上下連結部41・下接続部42bの下流路50b・上下流路52・下流路53bの水平面断面形状が現れ(図6(d)参照)、分割層部14の下水平面である平断面には、下湾曲部40b・上下連結部41・下接続部42bの下流路51b・上下流路52・下流路53bの水平面断面形状が現れる。
分割層部15の上水平面である平断面には、下湾曲部40b・上下連結部41の下流路51b・上下流路52の水平面断面形状が現れる(図6(e)参照)。
【0050】
次いで、第一加工工程S100では、このようにして誘導加熱コイル体10を水平面70〜73にて分割した分割層部11〜15の平断面に現れる冷却水流路5の水平断面形状に基づいて、上述した予備成型体60〜64の接合面60a等にそれぞれ対応する形状の溝部80a等が穿設される。
【0051】
図7乃至図11を参照しながら、本実施例における予備成型体60〜64の接合面60a等に穿設される溝部80a等の形状について説明すると、予備成型体60の接合面60aには、分割層部11の平断面に現れた上流路51a・上下流路52の水平面断面形状に対応する形状の溝部80aが穿設される(図7参照)。
同様に、予備成型体61の接合面61bには、分割層部12の上水平面である平断面に現れた上流路51a・上下流路52・上流路53aの水平面断面形状に対応する形状の溝部81bが穿設され、予備成型体61の接合面61aには、分割層部12の下水平面である平断面に現れた上流路50a・上下流路52・上流路53aの水平面断面形状に対応する形状の溝部81aが穿設される(図8参照)。
予備成型体62の接合面62bには、分割層部13の上水平面である平断面に現れた上下流路52の水平面断面形状に対応する形状の溝部82bが穿設され、予備成型体62の接合面62aには、分割層部13の下水平面である平断面に現れた上下流路52の水平面断面形状に対応する形状の溝部82aが穿設される(図9参照)。
予備成型体63の接合面63bには、分割層部14の上水平面である平断面に現れた下流路50b・上下流路52・下流路53bの水平面断面形状に対応する形状の溝部83bが穿設され、予備成型体63の接合面63aには、分割層部14の下水平面である平断面に現れた下流路51b・上下流路52・下流路53bの水平面断面形状に対応する形状の溝部83aが穿設される(図10参照)。
予備成型体64の接合面64bには、分割層部15の上水平面である平断面に現れた下流路51b・上下流路52の水平面断面形状に対応する形状の溝部84bが穿設される(図11参照)。
【0052】
図3に戻って、接合工程S110では、第一加工工程S100にて溝部80a等が穿設された予備成型体60〜64を用いて、予備成型体60〜64に穿設された溝部80a等と、対応する予備成型体60〜64に穿設された溝部80a等とを組み合わせることで、冷却水流路5の一部がそれぞれ形成されるように、予備成型体60〜64が位置決めして固定された状態で、予備成型体60〜64が対応する接合面60a等で組み合わされる。なお、本実施例では、予備成型体60〜64が全体として直方体形状となるように組み合わされる(図4参照)。
【0053】
次いで、接合工程S110では、かかる状態の予備成型体60〜64に対して、固相接合を用いて、接合面60a等を全体として接合させる。この固相接合としては、公知の技術を採用することができ、例えば、拡散接合、熱間圧接、冷間圧接(常温圧接)、ガス圧接、及び超音波圧接などの各種の圧接技術を用いることができる。特に、本実施例では、このような公知の固相接合の中でも、パルス通電接合が好ましく用いられる。
【0054】
パルス通電接合は、接合部材に電流(主にパルス電流)を流し、発生した熱により接合を行う技術の総称であって、複雑な形状の金属部品の精密接合に適していることから、様々な要望に応えることが可能な接合技術として注目されており、本実施例においても公知のパルス通電接合が用いられる。
【0055】
本実施例で用いられるパルス通電接合の一例を説明すると、まず、本実施例では、予備成型体60〜64と電気的に導電可能な一対の電極部と、電極部に電流を供給する電源装置と、電極部を予備成型体60〜64の接合面60a等に向かって押圧する加圧装置等とを具備してなる公知の接合装置(図略)が用いられる。そして、予備成型体60〜64を加圧装置にて所定の圧力にて押圧しながら、電極部より予備成型体60〜64に対して所定のパルス電流及び直流電流の一方又は両方を流して接合面60a等を仮接合し、次いで、かかる状態で所定の温度条件のもとで熱処理することで、予備成型体60〜64の接合面60a等が接合されて一の成型体6が得られる。
【0056】
第二加工工程S120では、接合工程S110にて接合された成型体6に対して、溝部80a等の形状に基づいて誘導加熱コイル体10が削り出される。削り出し加工としては、公知の加工技術が用いられる。その際には、成型体6の内部に形成された溝部80a等の形状、すなわち、誘導加熱コイル体10の冷却水流路5の形状を基準として、所定の誘導加熱コイル体10の外周形状となるように削り出し加工される。
【0057】
以上のように、本実施例の誘導加熱コイル1の製造方法は、誘導加熱コイル体10の母材よりなる複数の予備成型体60〜64に、予備成型体60〜64を接合面60a等で組み合わせることで全体として冷却水流路5が形成されるように所定の形状の溝部80aを穿設する第一加工工程S100と、第一加工工程S100にて溝部80a等が穿設された予備成型体60〜64を、それぞれ所定の接合面60a等で組み合わせ、固相接合により予備成型体60〜64を接合して一の成型体6とする接合工程S110と、接合工程S110にて接合された成型体6に対して、溝部80a等の形状に基づいて誘導加熱コイル体10を削り出す第二加工工程S120と、を有するものであるため、製品品質の低減を防止し、製品寿命に優れた誘導加熱コイル1を製造することができる。
【0058】
すなわち、本実施例の製造方法によれば、内部中空に冷却水流路5を有する誘導加熱コイル1を製造する際にあたって、リード導体部3と加熱導体部4との連続部位や加熱導体部4において屈曲部10a等が形成される構成であっても、リード導体部3や加熱導体部4等を連続して一体的に形成することができる。そのため、従来の製造方法によって製造される誘導加熱コイルのように、断面矩形の複数のパイプ部材をろう付けにより連結させる構成ではないため、焼入れにより、ろう材自体が劣化して、ろう付け部分の接合強度が低減したりろう付けが剥がれたりするなどを防止することができ、製品品質を向上させ、ひいては誘導加熱コイル1を長寿命化させることができるのである。
【0059】
特に、本実施例の製造方法によれば、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイル1を製造する際に、従来の作業者によるろう付け加工が不要となって機械化が可能となり、誘導加熱コイル1の機械的強度を高めて品質の安定化を図ることができるのである。
【0060】
また、第一加工工程S100において、誘導加熱コイル体10を平行する複数の水平面70〜73にて所定の分割層部11〜15にそれぞれ分割した場合に、分割層部11〜15の平断面に表れる形状に対応する形状の溝部80a等を、予備成型体60〜64の接合面60a等に穿設するものであるため、接合面60aへの加工が容易であり、また接合面60aを面接させた状態で予備成型体60〜64を組み合わせるだけで、予備成型体60〜64の内部に各溝部80a等を連続させることができ、冷却水流路5を精度よく形成させることができる
【0061】
また、第一加工工程S100において、誘導加熱コイル体10を予備成型体60〜64と同数であって、かつ同じ厚さの分割層部11〜15にそれぞれ分割するものであるため、分割層部11〜15の平断面に表れた形状と、予備成型体60〜64の接合面60a等に穿設される溝部80a等の形状と容易に一致させることができ、冷却水流路5の加工精度を向上できる。さらに、かかる場合に、誘導加熱コイル体10に形成される屈曲部10a〜10dを通る水平面にて分割することで、予備成型体60〜64に溝部80a等を穿設する際の加工負担を低減することができる。
【0062】
また、接合工程S110において、所定の予備成型体60〜64に穿設された溝部80a等と、対応する予備成型体60〜64に穿設された溝部80a等とを組み合わせることで、冷却水流路5の一部が形成されるように予備成型体60〜64を位置決めするものであるため、冷却水流路5を精度よく形成できるとともに、誘導加熱コイルの外部形状の切り出し加工精度を向上できる。
【0063】
なお、誘導加熱コイル1の製造方法及び誘導加熱コイル1の構成としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0064】
すなわち、上述した実施例では、誘導加熱コイル1を構成する一方の誘導加熱コイル体10を製造する方法について説明したが、一度に製造される誘導加熱コイル体10又は誘導加熱コイル1の個数については、特に限定されない。例えば、一度に複数個の誘導加熱コイル体10(又は複数個の誘導加熱コイル1)を製造するために、第一加工工程において、予備成型体60〜64に、製造する誘導加熱コイル体10(又は誘導加熱コイル1)に対応する溝部80a等を一度に穿設することで、続く接合工程及び第二加工工程にて、目的とする個数の誘導加熱コイル体10(又は誘導加熱コイル1)を一度に製造することが可能である。
【0065】
また、上述した実施例では、5個の予備成型体60〜64を用いて一の成型体6が接合されるが、用いられる予備成型体の個数はこれに限定されず、製造する誘導加熱コイル1の形状に応じて適宜変更することができる。ただし、予備成型体の個数としては、所定の水平面により分割される分割層部の個数と同数又は多くなることが好ましい。このような予備成型体の個数とすることで、予備成型体に溝部を穿設する際の加工負担を低減することができるからである
【0066】
また、上述した実施例では、厚さ(上下方向高さ)が略同じの予備成型体60〜64が用いられるが、かかる予備成型体の厚さは、製造する誘導加熱コイル1の形状に応じて予備成型体ごとに適宜変更することができる。誘導加熱コイル1に形成される屈曲部の配置によっては、厚さが異なる予備成型体を用いた方が好ましい場合があるからである。
【0067】
また、上述した実施例の接合工程S110において、パルス通電接合としては、接合中の予備成型体60〜64の変形度合いを考慮して、接合の圧力、接合温度、通電時間などの諸条件が適宜調整される。
【0068】
上述した実施例の製造方法によれば、製造される誘導加熱コイル1の形状についても、特に限定されず、被加熱物2の外周形状に応じて、かかる誘導加熱コイル1の形状も適宜変更することができ、広範な形状の誘導加熱コイル1を製造することが可能である。例えば、誘導加熱コイル体10として、湾曲部40(上湾曲部40a及び下湾曲部40b)の外周面に長板状に突出された複数の突片部が配設される形状としてもよい。
【0069】
その他の形状としては、上述した実施例の誘導加熱コイル1では、各誘導加熱コイル体10が上下方向の中心位置を通る水平面に対して上下方向に略対称形状に形成されるが、例えば、上下方向に非対称な形状であってもよく、また、上下方向の形状として屈曲部10a等の形状や個数が異なる形状であってもよい。
【0070】
また、上述した実施例の誘導加熱コイル1は、被加熱物2として広範なエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いることができ、被加熱物2としては、例えば、自動車やバイク用のガソリン・ディーゼルエンジンや、自動車等以外の作業機や船舶などの多様な機械に用いられる汎用ガソリンエンジン・汎用ディーゼルエンジンなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0071】
1 誘導加熱コイル
2 被加熱物
3 リード導体部
4 加熱導体部
5 冷却水流路
6 成型体
10 誘導加熱コイル体
10a〜10d 屈曲部
11〜15 分割層部
40 湾曲部
41 上下連結部
42 接続部
60〜64 予備成型体
50a等 流路
60a等 接合面
80a等 溝部
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルの技術に関し、より詳細には、内部に冷却水を流す冷却水流路を有する、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱を利用して鋼製部材などの被加熱物を所定の焼入れ温度に加熱し、急冷する高周波焼入れ装置の構成が公知である。このような高周波焼入れ装置には、通常、被加熱物の外周面又は内周面を誘導加熱するために、被加熱物の形状(外周形状等)に沿って形成された加熱導体部を有する誘導加熱コイルが用いられる。被加熱物としては、例えば、自動車エンジン用クランクシャフト等の軸状部材など様々な形状のものがあり、誘導加熱コイルにおいて被加熱物の形状に応じて様々に構成されている。
【0003】
誘導加熱コイルの構成としては、一般的には、高周波電源に接続される一対のリード導体部の間に、直線状又は湾曲状の加熱導体部が接続され、全体として上述した被加熱物の外周形状に沿うようにして一部が延出、屈曲、又は湾曲された構造体として形成されている。また、このリード導体部や加熱導体部の内部には、冷却水を流す冷却水流路が設けられており、誘導加熱時に冷却水流路に冷却水が常時流されることで、加熱導体部において自身の過熱による損傷を防止するように構成されている。
【0004】
これらの従来の誘導加熱コイルは、例えば、特許文献1〜3に開示されるように、リード導体部や加熱導体部が銅などの導電性材料を断面略矩形のパイプ状に成形したパイプ部材を用いて、加熱導体部が全体として所定形状をなすように、パイプ部材がろう付けにより連結されて構成されている。特に、誘導加熱コイルにおいては、リード導体部と加熱導体部との接続部位や加熱導体部に複数の屈曲部が形成されることが多いため、従来の誘導加熱コイルの製造方法としては、具体的には、まず断面矩形の複数のパイプ部材が成形され、次いで加熱導体部を構成する屈曲部にてパイプ部材の端部同士をろう付けにより連結させることで形成されていた。
【0005】
ところで、高周波焼入れ装置に用いられる誘導加熱コイルは、焼入れ時に、高周波電源より供給される交流の高周波電流が流れることで交番磁束を発生させ、この交番磁束によって被加熱物にうず電流が発生する。そして、被加熱物に発生するうず電流による抵抗発熱と誘導加熱コイルからの交番磁束によるヒステリシス損から生じる発熱によって、被加熱物が加熱されるのである。また、焼入れ時には、誘導加熱コイルにおいて、加熱された被加熱物からの輻射熱により高温に加熱されるため、上述したように冷却水流路に冷却水が常時流されている。
【0006】
しかし、従来の誘導加熱コイルの構成では、高周波電源より供給された高周波電流が他の部位に比べて屈曲部に集中するため、焼入れによる通電が繰り返されることで、屈曲部の温度が局所的に上昇したり、屈曲部において加熱・冷却による温度振幅が他の部分よりも大きくなったりしてしまう。そのため、ろう材自体が劣化(収縮や気泡発生)して、ろう付け部分の接合強度が低減したり、ろう付けが剥がれたりする場合があり、屈曲部の接続部位において製品品質が低減し、ひいては誘導加熱コイルの製品寿命に劣るという課題があった。
【0007】
特に、自動車等のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いられる誘導加熱コイルにおいては、従来のろう付けによる製造方法では、精密ろう付けの箇所が多く、かつろう付け箇所(接合部位)が近接しているために円熟した技能が求められ、作業者の熟練度による製品品質のばらつきが生じてしまうという課題があった。
【0008】
また、近年では、誘導加熱コイルは、被加熱物に対する加熱むらを低減し、また焼入れ深さを均質化して焼入れ精度を向上すべく、被加熱物の形状に応じてより複雑化・細緻化された形状に構成される傾向にある。このような誘導加熱コイルの形状の複雑化に伴って、誘導加熱部において複数の屈曲部が形成されることから、屈曲部の接合部位において製品品質が低減してしまうという課題がより深刻化してきている。
【0009】
なお、上述した観点から、特許文献3では、屈曲部で接続される少なくとも一方のパイプ部材の断面形状を屈曲部のコーナ部の間に頂点を有する多角断面とした誘導加熱コイルの構成が提案されている。しかしながら、このような誘導加熱コイルの構成であっても、従来の誘導加熱コイルの製造方法において、かかる断面形状を有するパイプ部材がろう付けにより連結されるため、上述したような課題は依然として解消されないままであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−283862号公報
【特許文献2】特開2004−52013号公報
【特許文献3】特開2006−302683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明では、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルに関し、前記従来の課題を解決するもので、製品品質の低減を防止し、製品寿命に優れたエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法および誘導加熱コイルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
すなわち、請求項1においては、内部に冷却水を流す冷却水流路を有する、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法であって、誘導加熱コイルの母材よりなる複数の予備成型体に、該予備成型体を所定の接合面で組み合わせることで全体として前記冷却水流路が形成されるように所定の形状の溝部を穿設する第一加工工程と、前記第一加工工程にて前記溝部が穿設された前記予備成型体を、それぞれ所定の接合面で組み合わせ、固相接合により予備成型体の接合面を接合して一の成型体とする接合工程と、前記接合工程にて接合された成型体に対して、前記溝部の形状に基づいて誘導加熱コイルを削り出す第二加工工程と、を有してなるものである。
【0014】
請求項2においては、前記第一加工工程は、誘導加熱コイルを平行する複数の水平面にて所定の分割層部にそれぞれ分割した場合に、前記分割層部の平断面に表れる形状に対応する形状の前記溝部を、前記予備成型体の接合面に穿設するものである。
【0015】
請求項3においては、前記第一加工工程は、誘導加熱コイルを前記予備成型体と同数であって、かつ同じ厚さの分割層部にそれぞれ分割するものである。
【0016】
請求項4においては、前記第一加工工程は、誘導加熱コイルに形成される屈曲部を通る水平面にて分割するものである。
【0017】
請求項5においては、前記接合工程は、所定の予備成型体に穿設された前記溝部と、対応する予備成型体に穿設された前記溝部とを組み合わせることで、前記冷却水流路の一部が形成されるように予備成型体を位置決めするものである。
【0018】
請求項6においては、前記請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルの製造方法により製造されるエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルであって、屈曲部にてろう付けされることなく一体的に連続されるものである。
【0019】
請求項7においては、前記請求項6に記載の誘導加熱コイルであって、被加熱物の外周形状に沿うようにして湾曲状に成形され、複数の屈曲部が形成された加熱導体部を具備してなるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、製品品質の低減を防止し、製品寿命に優れたエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る誘導加熱コイルの全体的な構成を示した斜視図。
【図2】誘導加熱コイル体の構成を示した斜視図。
【図3】誘導加熱コイルの製造方法を示したフローチャート。
【図4】溝部が穿設された予備成型体を組み付けた状態を示した斜視図。
【図5】誘導加熱コイル体を水平面で分割する様子を示した側面図。
【図6】分割層部の構成を示した斜視図。
【図7】予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【図8】同じく予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【図9】同じく予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【図10】同じく予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【図11】同じく予備成型体に穿設される溝部の形状を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、発明を実施するための形態を説明する。
なお、以下の実施例において、図1に示す矢印X方向を誘導加熱コイル1(誘導加熱コイル体10)の上下方向とし、図1に示す矢印Y方向を誘導加熱コイル1(誘導加熱コイル体10)の水平方向とする。
【0023】
まず、本実施例の製造方法により製造される誘導加熱コイル1の全体構成について、以下に概説する。
図1に示すように、本実施例の誘導加熱コイル1は、図示せぬ高周波焼入れ装置に接続された状態で、誘導加熱を利用して鋼製部材などの被加熱物2を所定の焼入れ温度に加熱・急冷して焼入れ処理(又は焼戻し処理)するためのコイル部材として使用される。なお、本実施例の誘導加熱コイル1は、自動車等のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いるコイル部材として構成され、被加熱物2としては、主に、自動車等のエンジン用クランクシャフトを対象とし、誘導加熱コイル1にてかかるエンジン用クランクシャフトの外周面が誘導加熱される。
【0024】
本実施例の誘導加熱コイル1は、被加熱物2の軸心方向に沿って略対称形状に形成された一対の誘導加熱コイル体10・10として構成されている。誘導加熱コイル体10・10は、それぞれ導電性材料としての銅材にて断面矩形のパイプ状に形成されたパイプ部材が、全体として被加熱物2の外周形状(外周面)に沿うようにして延出、屈曲、又は湾曲された構造体として形成されている。
【0025】
なお、以下の実施例においては、誘導加熱コイル体10・10が略対称形状に形成されていることから、特に言及する場合を除いて、一方の誘導加熱コイル体10の構成について説明し、他方の誘導加熱コイル体10の構成については、その詳細な説明は省略する。
【0026】
次に、誘導加熱コイル体10の構成について、以下に詳述する。
図1及び図2に示すように、本実施例の誘導加熱コイル体10は、高周波焼入れ装置に設けられた図示せぬ高周波電源に接続される一対のリード導体部3と、リード導体部3に接続され、被加熱物2の外周形状に沿うようにして湾曲状に成形された加熱導体部4等とで構成されている。また、誘導加熱コイル体10は、上下方向の中心位置を通る水平面に対して上下方向に略対称形状に形成されている。
【0027】
リード導体部3は、略直線状に形成された断面略矩形のパイプ部材より構成されており、一端が図示せぬ高周波電源に接続され、他端が後述する加熱導体部4へと連続されている。特に、本実施例のリード導体部3は、水平方向に延出された一対のパイプ部材より構成されており、上方に配置された上リード導体部30aと、下方に配置された下リード導体部30bとが、誘導加熱コイル1の上下方向に所定の離間を有するようにして並設されている。
【0028】
上リード導体部30a及び下リード導体部30bは、それぞれ略同形に形成されており、上リード導体部30a及び下リード導体部30bの間に後述する加熱導体部4が接続されている。高周波電源からリード導体部3に供給された高周波電流は、誘導加熱コイル体10において、上リード導体部30aを介して加熱導体部4に流れ、加熱導体部4の形状にそって流れた後に、下リード導体部30bより高周波電源に戻る。
【0029】
加熱導体部4は、リード導体部3(上リード導体部30a及び下リード導体部30b)の一端に接続され、被加熱物2の外周形状に沿うようにして水平方向に湾曲状に形成されたパイプ部材より構成されている。具体的には、水平方向に湾曲状に延出され、上下方向に所定の離間を有するようにして並設される一対の湾曲部40(上湾曲部40a及び下湾曲部40b)と、湾曲部40(上湾曲部40a及び下湾曲部40b)の一端側を上下方向に連結させる上下連結部41と、湾曲部40(上湾曲部40a及び下湾曲部40b)の他端側を上リード導体部30a及び下リード導体部30bにそれぞれ接続させる接続部42(上接続部42a及び下接続部42b)等とで構成されている。
【0030】
本実施例の誘導加熱コイル体10は、上湾曲部40a及び下湾曲部40bと、上下連結部41と、上接続部42a及び下接続部42bとを有する加熱導体部4と、上述した上リード導体部30a及び下リード導体部30bを有するリード導体部3とが、それぞれ連続して一体的に形成されている。すなわち、誘導加熱コイル体10は、リード導体部3及び加熱導体部4において、上リード導体部30aに上接続部42aを介して上湾曲部40aが連続され、下リード導体部30bに下接続部42bを介して下湾曲部40bが連続されるとともに、上湾曲部40a及び下湾曲部40bが、上接続部42a及び下接続部42bと連続される反対側の端部において上下連結部41を介して連続されて、一体形成されている。
【0031】
上湾曲部40a及び下湾曲部40bは、被加熱物2の外周形状に沿うように、誘導加熱コイル体10の水平方向に延出しながら湾曲され、誘導加熱コイル体10の上下方向に所定の離間を有するようにして並設される。また、上湾曲部40a及び下湾曲部40bの湾曲面であって被加熱物2に対向する縁部は、被加熱物2に近接する方向に突出されている。焼入れ時には、湾曲部40に高周波電流が流れることで発生した交番磁束によって被加熱物にうず電流が発生されるため、被加熱物2の外周形状に対して縁部を近接させることで、湾曲部40にて焼入れ効率を向上させることができる。
【0032】
上下連結部41は、上下方向に延出された略長板状のパイプ部材より形成され、上湾曲部40aの上リード導体部30a側の端部とは反対側の端部と、下湾曲部40bの下リード導体部30b側の端部とは反対側の端部とをそれぞれ連結するように形成されており、本実施例では、上下連結部41は、上湾曲部40a及び下湾曲部40bの端部に対して水平方向から当接するようにして連結されている。
【0033】
上接続部42a及び下接続部42bは、一端が上リード導体部30a及び下リード導体部30bの端部形状と略同形に形成された断面矩形のパイプ部材より構成されている。具体的には、上接続部42aは、上リード導体部30aの端部に連続され、上湾曲部40aが上接続部42aの上面側に被加熱物2の外周形状に沿って水平方向に延出されるようにして連続されている。一方、下接続部42bは、下リード導体部30bの端部に連続され、下湾曲部40bが下接続部42bの下面側に被加熱物2の外周形状に沿って水平方向に延出されるようにして連続されている。
【0034】
本実施例の誘導加熱コイル体10は、全体として、被加熱物2に対して被加熱物2の径方向に向けて水平方向に延出された上リード導体部30aから、上接続部42aにて被加熱物2の上方かつ円周方向に向けて屈曲されるとともに、被加熱物2の外周形状に沿って水平方向に延出・湾曲された上湾曲部40aから上下連結部41にて下方向に向けて屈曲されている。同様に、被加熱物2に対して被加熱物2の径方向に向けて水平方向に延出された下リード導体部30bから、下接続部42bにて被加熱物2の下方かつ円周方向に向けて屈曲されるとともに、被加熱物2の外周形状に沿って水平方向に延出・湾曲された下湾曲部40bから上下連結部41にて上方向に向けて屈曲されている。
【0035】
このように構成されることで、本実施例の誘導加熱コイル体10には、上リード導体部30aと上湾曲部40aとの接続部位である上接続部42aにて屈曲部10aが形成され、上湾曲部40aと上下連結部41との接続部位にて屈曲部10bが形成され、下湾曲部40bと上下連結部41との接続部知にて屈曲部10cが形成され、下リード導体部30bと下湾曲部40bとの接続部位である下接続部42bにて屈曲部10dが形成されている。
【0036】
ここで、誘導加熱コイル体10に形成される冷却水流路5の構成について、以下に詳述する。
図2に示したように、本実施例の誘導加熱コイル体10は、銅材にて断面矩形のパイプ部材より構成されることで、内部に冷却水を流す冷却水流路5が形成されている。冷却水流路5は、リード導体部3及び加熱導体部4を構成するパイプ部材の内部中空に連続して形成されており、図示せぬ冷却水タンクより上リード導体部30aに供給された冷却水は、上リード導体部30a→上接続部42a→上湾曲部40a→上下連結部41→下湾曲部40b→下接続部42b→下リード導体部30bの順に流れて、下リード導体部30bから機外に排出される。
【0037】
具体的には、冷却水流路5は、上リード導体部30a及び下リード導体部30bの内部中空に水平方向に沿って直線状に延出された上流路50a及び下流路50bと、上湾曲部40a及び下湾曲部40bの内部中空に水平方向に沿って湾曲状に延出された上流路51a及び下流路51bと、上下連結部41の内部中空に上下方向に沿って直線上に延出された上下流路52と、上接続部42a及び下接続部42bの内部中空であって、上リード導体部30a又は下リード導体部30bとの接続側では水平方向に沿って直線状に延出されつつ、途中で上方又は下方に屈曲されて、上湾曲部40a又は下湾曲部40bとの接続側で上下方向に沿って直線上に延出された上流路53a及び下流路53bとで構成されている。
【0038】
本実施例の誘導加熱コイル体10は、上述したように、上リード導体部30a・下リード導体部30b・上湾曲部40a・下湾曲部40bにてそれぞれ水平方向に略平行に延出されており、その上下方向の相対位置としては、上湾曲部40aが一番上方に位置され、以下、上湾曲部40a→上リード導体部30a→下リード導体部30b→下湾曲部40bの順に従って下方に位置され、下湾曲部40bが一番下方に位置されている。そのため、誘導加熱コイル体10の冷却水流路5としては、上流路50a及び下流路50b、並びに上流路51a及び下流路51bにてそれぞれ水平方向に延出され、その上下方向の相対位置としては、上流路51a→上流路50a→下流路50b→下流路51bの順に従って下方に位置されている。
【0039】
次に、本実施例の誘導加熱コイル1の製造方法について、以下に詳述する。
以下の実施例においては、誘導加熱コイル1の製造方法として、一方の誘導加熱コイル体10の製造方法について主に説明するが、他方の誘導加熱コイル体10の製造方法についても同様である。
【0040】
本実施例の誘導加熱コイル体10の製造方法は、リード導体部3及び加熱導体部4における屈曲部10a〜10dにてろう付けされることなく誘導加熱コイル体10を一体形成する方法であって、誘導加熱コイル体10の母材よりなる成型体6から誘導加熱コイル体10が削り出により製造される。特に、本実施例の誘導加熱コイル体10は、内部中空に冷却水流路5が形成されるため、予め、複数の予備成型体60〜64に所定の形状の溝部80a等を穿設しておき、予備成型体60〜64を対応する接合面60a等で組み合わせて一の成型体6とすることで、成型体6の内部に冷却水流路5に相当する空間部を形成させておくことを特徴としている。
【0041】
具体的には、図3に示すように、本実施例の誘導加熱コイル体10の製造方法は、誘導加熱コイル体10の母材よりなる複数の予備成型体60〜64に、予備成型体60〜64を接合面60a等で組み合わせることで全体として冷却水流路5が形成されるように所定の形状の溝部80aを穿設する第一加工工程S100と、第一加工工程S100にて溝部80a等が穿設された予備成型体60〜64を、それぞれ所定の接合面60a等で組み合わせ、固相接合により予備成型体60〜64の接合面60a等を接合して一の成型体6とする接合工程S110と、接合工程S110にて接合された成型体6に対して、溝部80a等の形状に基づいて誘導加熱コイル体10を削り出す第二加工工程S120と、を有するものである。
【0042】
まず、図4に示すように、第一加工工程S100で用いられる予備成型体60〜64は、誘導加熱コイル体10の母材よりなる平面視矩形の平板状の部材であって、上下平面において水平面を有し、それぞれ略同形に形成されている。本実施例では、5個の予備成型体60〜64が用いられ、各予備成型体60〜64において、それぞれ厚さ(上下方向高さ)が略同じとなるように形成される。後述するように、誘導加熱コイル体10は、この予備成型体60〜64と同数であって、かつ同じ厚さの分割層部11〜15に分割される(図5参照)。
【0043】
予備成型体60〜64は、後述する接合工程S110にて、上下方向に接合面60a等で組み合わされることで直方体形状の一の成型体6として組み付けられる。本実施例では、予備成型体60が一番上方位置に配置され、以下予備成型体60→予備成型体61→予備成型体62→予備成型体63→予備成型体64の順に下方に位置され、予備成型体64が一番下方位置に配置される。
【0044】
予備成型体60及び予備成型体61は、予備成型体60の下水平面である接合面60aと予備成型体61の上水平面である接合面61bとが面接された状態で組み合わされる。同様に、以下、予備成型体61及び予備成型体62は、予備成型体61の下水平面である接合面61aと予備成型体62の上水平面である接合面62bとが面接された状態で組み合わされ、予備成型体62及び予備成型体63は、予備成型体62の下水平面である接合面62aと予備成型体63の上水平面である接合面63bとが面接された状態で組み合わされ、予備成型体63及び予備成型体64は、予備成型体63の下水平面である接合面63aと予備成型体64の上水平面である接合面64bとが面接された状態で組み合わされる。
【0045】
図5乃至図11に示すように、第一加工工程S100では、上述した予備成型体60〜64の接合面60a等に所定の形状の溝部80a等がそれぞれ穿設される。溝部80a等は、誘導加熱コイル体10の水平方向に沿って平行する複数の水平面70〜73にて、誘導加熱コイル体10を分割層部11〜15にそれぞれ分割した場合に、分割層部11〜15の平断面に表れる冷却水流路5の形状に対応する形状とされる。
【0046】
図5に示すように、具体的には、まず、4つの水平面70〜73によって、誘導加熱コイル体10が略同じ厚さ(上下方向高さ)の5個の分割層部11〜15にそれぞれ分割される。水平面70〜73は、誘導加熱コイル体10の水平方向に沿ってそれぞれ平行とされる疑似平面であって、水平面70〜73によって、誘導加熱コイル体10に形成された屈曲部10a〜10dを通るようにして誘導加熱コイル体10が分割される。
【0047】
より詳細には、水平面70は、上湾曲部40aと上下連結部41との接続部位に形成された屈曲部10bを通る疑似平面である。同様に、以下、水平面71は、誘導加熱コイル体10の上リード導体部30aと上湾曲部40aとの接続部位(上接続部42a)に形成された屈曲部10aを通る疑似平面であり、水平面72は、下湾曲部40bと上下連結部41との接続部に形成された屈曲部10cを通る疑似平面であり、水平面73は、下リード導体部30bと下湾曲部40bとの接続部位(下接続部42b)に形成された屈曲部10dを通る疑似平面である。
【0048】
このように水平面70〜73により誘導加熱コイル体10を水平方向に分割することで、誘導加熱コイル体10は5個の分割層部11〜15に分割され、分割層部11〜15の平断面には、誘導加熱コイル体10の内部中空部に形成された冷却水流路5の水平断面形状が現れる。
【0049】
図6を参照しながら、本実施例における分割層部11〜15の平断面に現れる形状について説明すると、分割層部11の下水平面である平断面には、上湾曲部40a・上下連結部41の上流路51a・上下流路52の水平面断面形状が現れる(図6(a)参照)。
同様に、分割層部12の上水平面である平断面には、上湾曲部40a・上下連結部41・上接続部42aの上流路51a・上下流路52・上流路53aの水平面断面形状が現れ(図6(b)参照)、分割層部12の下水平面である平断面には上リード導体部30a・上下連結部41・上接続部42aの上流路50a・上下流路52・上流路53aの水平面断面形状が現れる。
分割層部13の上水平面である平断面には、上下連結部41の上下流路52の水平面断面形状が現れ、分割層部13の下水平面である平断面には上下連結部41の上下流路52の水平面断面形状が現れる(図6(c)参照)。
分割層部14の上水平面である平断面には、下リード導体部30b・上下連結部41・下接続部42bの下流路50b・上下流路52・下流路53bの水平面断面形状が現れ(図6(d)参照)、分割層部14の下水平面である平断面には、下湾曲部40b・上下連結部41・下接続部42bの下流路51b・上下流路52・下流路53bの水平面断面形状が現れる。
分割層部15の上水平面である平断面には、下湾曲部40b・上下連結部41の下流路51b・上下流路52の水平面断面形状が現れる(図6(e)参照)。
【0050】
次いで、第一加工工程S100では、このようにして誘導加熱コイル体10を水平面70〜73にて分割した分割層部11〜15の平断面に現れる冷却水流路5の水平断面形状に基づいて、上述した予備成型体60〜64の接合面60a等にそれぞれ対応する形状の溝部80a等が穿設される。
【0051】
図7乃至図11を参照しながら、本実施例における予備成型体60〜64の接合面60a等に穿設される溝部80a等の形状について説明すると、予備成型体60の接合面60aには、分割層部11の平断面に現れた上流路51a・上下流路52の水平面断面形状に対応する形状の溝部80aが穿設される(図7参照)。
同様に、予備成型体61の接合面61bには、分割層部12の上水平面である平断面に現れた上流路51a・上下流路52・上流路53aの水平面断面形状に対応する形状の溝部81bが穿設され、予備成型体61の接合面61aには、分割層部12の下水平面である平断面に現れた上流路50a・上下流路52・上流路53aの水平面断面形状に対応する形状の溝部81aが穿設される(図8参照)。
予備成型体62の接合面62bには、分割層部13の上水平面である平断面に現れた上下流路52の水平面断面形状に対応する形状の溝部82bが穿設され、予備成型体62の接合面62aには、分割層部13の下水平面である平断面に現れた上下流路52の水平面断面形状に対応する形状の溝部82aが穿設される(図9参照)。
予備成型体63の接合面63bには、分割層部14の上水平面である平断面に現れた下流路50b・上下流路52・下流路53bの水平面断面形状に対応する形状の溝部83bが穿設され、予備成型体63の接合面63aには、分割層部14の下水平面である平断面に現れた下流路51b・上下流路52・下流路53bの水平面断面形状に対応する形状の溝部83aが穿設される(図10参照)。
予備成型体64の接合面64bには、分割層部15の上水平面である平断面に現れた下流路51b・上下流路52の水平面断面形状に対応する形状の溝部84bが穿設される(図11参照)。
【0052】
図3に戻って、接合工程S110では、第一加工工程S100にて溝部80a等が穿設された予備成型体60〜64を用いて、予備成型体60〜64に穿設された溝部80a等と、対応する予備成型体60〜64に穿設された溝部80a等とを組み合わせることで、冷却水流路5の一部がそれぞれ形成されるように、予備成型体60〜64が位置決めして固定された状態で、予備成型体60〜64が対応する接合面60a等で組み合わされる。なお、本実施例では、予備成型体60〜64が全体として直方体形状となるように組み合わされる(図4参照)。
【0053】
次いで、接合工程S110では、かかる状態の予備成型体60〜64に対して、固相接合を用いて、接合面60a等を全体として接合させる。この固相接合としては、公知の技術を採用することができ、例えば、拡散接合、熱間圧接、冷間圧接(常温圧接)、ガス圧接、及び超音波圧接などの各種の圧接技術を用いることができる。特に、本実施例では、このような公知の固相接合の中でも、パルス通電接合が好ましく用いられる。
【0054】
パルス通電接合は、接合部材に電流(主にパルス電流)を流し、発生した熱により接合を行う技術の総称であって、複雑な形状の金属部品の精密接合に適していることから、様々な要望に応えることが可能な接合技術として注目されており、本実施例においても公知のパルス通電接合が用いられる。
【0055】
本実施例で用いられるパルス通電接合の一例を説明すると、まず、本実施例では、予備成型体60〜64と電気的に導電可能な一対の電極部と、電極部に電流を供給する電源装置と、電極部を予備成型体60〜64の接合面60a等に向かって押圧する加圧装置等とを具備してなる公知の接合装置(図略)が用いられる。そして、予備成型体60〜64を加圧装置にて所定の圧力にて押圧しながら、電極部より予備成型体60〜64に対して所定のパルス電流及び直流電流の一方又は両方を流して接合面60a等を仮接合し、次いで、かかる状態で所定の温度条件のもとで熱処理することで、予備成型体60〜64の接合面60a等が接合されて一の成型体6が得られる。
【0056】
第二加工工程S120では、接合工程S110にて接合された成型体6に対して、溝部80a等の形状に基づいて誘導加熱コイル体10が削り出される。削り出し加工としては、公知の加工技術が用いられる。その際には、成型体6の内部に形成された溝部80a等の形状、すなわち、誘導加熱コイル体10の冷却水流路5の形状を基準として、所定の誘導加熱コイル体10の外周形状となるように削り出し加工される。
【0057】
以上のように、本実施例の誘導加熱コイル1の製造方法は、誘導加熱コイル体10の母材よりなる複数の予備成型体60〜64に、予備成型体60〜64を接合面60a等で組み合わせることで全体として冷却水流路5が形成されるように所定の形状の溝部80aを穿設する第一加工工程S100と、第一加工工程S100にて溝部80a等が穿設された予備成型体60〜64を、それぞれ所定の接合面60a等で組み合わせ、固相接合により予備成型体60〜64を接合して一の成型体6とする接合工程S110と、接合工程S110にて接合された成型体6に対して、溝部80a等の形状に基づいて誘導加熱コイル体10を削り出す第二加工工程S120と、を有するものであるため、製品品質の低減を防止し、製品寿命に優れた誘導加熱コイル1を製造することができる。
【0058】
すなわち、本実施例の製造方法によれば、内部中空に冷却水流路5を有する誘導加熱コイル1を製造する際にあたって、リード導体部3と加熱導体部4との連続部位や加熱導体部4において屈曲部10a等が形成される構成であっても、リード導体部3や加熱導体部4等を連続して一体的に形成することができる。そのため、従来の製造方法によって製造される誘導加熱コイルのように、断面矩形の複数のパイプ部材をろう付けにより連結させる構成ではないため、焼入れにより、ろう材自体が劣化して、ろう付け部分の接合強度が低減したりろう付けが剥がれたりするなどを防止することができ、製品品質を向上させ、ひいては誘導加熱コイル1を長寿命化させることができるのである。
【0059】
特に、本実施例の製造方法によれば、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイル1を製造する際に、従来の作業者によるろう付け加工が不要となって機械化が可能となり、誘導加熱コイル1の機械的強度を高めて品質の安定化を図ることができるのである。
【0060】
また、第一加工工程S100において、誘導加熱コイル体10を平行する複数の水平面70〜73にて所定の分割層部11〜15にそれぞれ分割した場合に、分割層部11〜15の平断面に表れる形状に対応する形状の溝部80a等を、予備成型体60〜64の接合面60a等に穿設するものであるため、接合面60aへの加工が容易であり、また接合面60aを面接させた状態で予備成型体60〜64を組み合わせるだけで、予備成型体60〜64の内部に各溝部80a等を連続させることができ、冷却水流路5を精度よく形成させることができる
【0061】
また、第一加工工程S100において、誘導加熱コイル体10を予備成型体60〜64と同数であって、かつ同じ厚さの分割層部11〜15にそれぞれ分割するものであるため、分割層部11〜15の平断面に表れた形状と、予備成型体60〜64の接合面60a等に穿設される溝部80a等の形状と容易に一致させることができ、冷却水流路5の加工精度を向上できる。さらに、かかる場合に、誘導加熱コイル体10に形成される屈曲部10a〜10dを通る水平面にて分割することで、予備成型体60〜64に溝部80a等を穿設する際の加工負担を低減することができる。
【0062】
また、接合工程S110において、所定の予備成型体60〜64に穿設された溝部80a等と、対応する予備成型体60〜64に穿設された溝部80a等とを組み合わせることで、冷却水流路5の一部が形成されるように予備成型体60〜64を位置決めするものであるため、冷却水流路5を精度よく形成できるとともに、誘導加熱コイルの外部形状の切り出し加工精度を向上できる。
【0063】
なお、誘導加熱コイル1の製造方法及び誘導加熱コイル1の構成としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0064】
すなわち、上述した実施例では、誘導加熱コイル1を構成する一方の誘導加熱コイル体10を製造する方法について説明したが、一度に製造される誘導加熱コイル体10又は誘導加熱コイル1の個数については、特に限定されない。例えば、一度に複数個の誘導加熱コイル体10(又は複数個の誘導加熱コイル1)を製造するために、第一加工工程において、予備成型体60〜64に、製造する誘導加熱コイル体10(又は誘導加熱コイル1)に対応する溝部80a等を一度に穿設することで、続く接合工程及び第二加工工程にて、目的とする個数の誘導加熱コイル体10(又は誘導加熱コイル1)を一度に製造することが可能である。
【0065】
また、上述した実施例では、5個の予備成型体60〜64を用いて一の成型体6が接合されるが、用いられる予備成型体の個数はこれに限定されず、製造する誘導加熱コイル1の形状に応じて適宜変更することができる。ただし、予備成型体の個数としては、所定の水平面により分割される分割層部の個数と同数又は多くなることが好ましい。このような予備成型体の個数とすることで、予備成型体に溝部を穿設する際の加工負担を低減することができるからである
【0066】
また、上述した実施例では、厚さ(上下方向高さ)が略同じの予備成型体60〜64が用いられるが、かかる予備成型体の厚さは、製造する誘導加熱コイル1の形状に応じて予備成型体ごとに適宜変更することができる。誘導加熱コイル1に形成される屈曲部の配置によっては、厚さが異なる予備成型体を用いた方が好ましい場合があるからである。
【0067】
また、上述した実施例の接合工程S110において、パルス通電接合としては、接合中の予備成型体60〜64の変形度合いを考慮して、接合の圧力、接合温度、通電時間などの諸条件が適宜調整される。
【0068】
上述した実施例の製造方法によれば、製造される誘導加熱コイル1の形状についても、特に限定されず、被加熱物2の外周形状に応じて、かかる誘導加熱コイル1の形状も適宜変更することができ、広範な形状の誘導加熱コイル1を製造することが可能である。例えば、誘導加熱コイル体10として、湾曲部40(上湾曲部40a及び下湾曲部40b)の外周面に長板状に突出された複数の突片部が配設される形状としてもよい。
【0069】
その他の形状としては、上述した実施例の誘導加熱コイル1では、各誘導加熱コイル体10が上下方向の中心位置を通る水平面に対して上下方向に略対称形状に形成されるが、例えば、上下方向に非対称な形状であってもよく、また、上下方向の形状として屈曲部10a等の形状や個数が異なる形状であってもよい。
【0070】
また、上述した実施例の誘導加熱コイル1は、被加熱物2として広範なエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いることができ、被加熱物2としては、例えば、自動車やバイク用のガソリン・ディーゼルエンジンや、自動車等以外の作業機や船舶などの多様な機械に用いられる汎用ガソリンエンジン・汎用ディーゼルエンジンなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0071】
1 誘導加熱コイル
2 被加熱物
3 リード導体部
4 加熱導体部
5 冷却水流路
6 成型体
10 誘導加熱コイル体
10a〜10d 屈曲部
11〜15 分割層部
40 湾曲部
41 上下連結部
42 接続部
60〜64 予備成型体
50a等 流路
60a等 接合面
80a等 溝部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却水を流す冷却水流路を有する、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法であって、
誘導加熱コイルの母材よりなる複数の予備成型体に、該予備成型体を所定の接合面で組み合わせることで全体として前記冷却水流路が形成されるように所定の形状の溝部を穿設する第一加工工程と、
前記第一加工工程にて前記溝部が穿設された前記予備成型体を、それぞれ所定の接合面で組み合わせ、固相接合により予備成型体の接合面を接合して一の成型体とする接合工程と、
前記接合工程にて接合された成型体に対して、前記溝部の形状に基づいて誘導加熱コイルを削り出す第二加工工程と、
を有してなることを特徴とするエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項2】
前記第一加工工程は、誘導加熱コイルを平行する複数の水平面にて所定の分割層部にそれぞれ分割した場合に、前記分割層部の平断面に表れる形状に対応する形状の前記溝部を、前記予備成型体の接合面に穿設することを特徴とする請求項1に記載のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項3】
前記第一加工工程は、誘導加熱コイルを前記予備成型体と同数であって、かつ同じ厚さの分割層部にそれぞれ分割することを特徴とする請求項2に記載のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項4】
前記第一加工工程は、誘導加熱コイルに形成される屈曲部を通る水平面にて分割することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項5】
前記接合工程は、所定の予備成型体に穿設された前記溝部と、対応する予備成型体に穿設された前記溝部とを組み合わせることで、前記冷却水流路の一部が形成されるように予備成型体を位置決めすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項6】
前記請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルの製造方法により製造されるエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルであって、
屈曲部にてろう付けされることなく一体的に連続されることを特徴とするエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイル。
【請求項7】
前記請求項6に記載の誘導加熱コイルであって、
被加熱物の外周形状に沿うようにして湾曲状に成形され、複数の屈曲部が形成された加熱導体部を具備してなることを特徴とするエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイル。
【請求項1】
内部に冷却水を流す冷却水流路を有する、エンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法であって、
誘導加熱コイルの母材よりなる複数の予備成型体に、該予備成型体を所定の接合面で組み合わせることで全体として前記冷却水流路が形成されるように所定の形状の溝部を穿設する第一加工工程と、
前記第一加工工程にて前記溝部が穿設された前記予備成型体を、それぞれ所定の接合面で組み合わせ、固相接合により予備成型体の接合面を接合して一の成型体とする接合工程と、
前記接合工程にて接合された成型体に対して、前記溝部の形状に基づいて誘導加熱コイルを削り出す第二加工工程と、
を有してなることを特徴とするエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項2】
前記第一加工工程は、誘導加熱コイルを平行する複数の水平面にて所定の分割層部にそれぞれ分割した場合に、前記分割層部の平断面に表れる形状に対応する形状の前記溝部を、前記予備成型体の接合面に穿設することを特徴とする請求項1に記載のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項3】
前記第一加工工程は、誘導加熱コイルを前記予備成型体と同数であって、かつ同じ厚さの分割層部にそれぞれ分割することを特徴とする請求項2に記載のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項4】
前記第一加工工程は、誘導加熱コイルに形成される屈曲部を通る水平面にて分割することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項5】
前記接合工程は、所定の予備成型体に穿設された前記溝部と、対応する予備成型体に穿設された前記溝部とを組み合わせることで、前記冷却水流路の一部が形成されるように予備成型体を位置決めすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【請求項6】
前記請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルの製造方法により製造されるエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルであって、
屈曲部にてろう付けされることなく一体的に連続されることを特徴とするエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイル。
【請求項7】
前記請求項6に記載の誘導加熱コイルであって、
被加熱物の外周形状に沿うようにして湾曲状に成形され、複数の屈曲部が形成された加熱導体部を具備してなることを特徴とするエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いる誘導加熱コイル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−192167(P2010−192167A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33157(P2009−33157)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(594020248)株式会社幸和電熱計器 (11)
【出願人】(509045298)株式会社ケイディケイ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(594020248)株式会社幸和電熱計器 (11)
【出願人】(509045298)株式会社ケイディケイ (1)
【Fターム(参考)】
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