説明

エンドキャップ及びモール

【課題】クリップ直上位置を下方へ押圧してクリップ20を係止させると、被押圧部位付近が下方へ微小変形して外観不良となる。これを防止する。
【解決手段】モール本体5とともに車体70に装着されるエンドキャップ1。クリップ20をモール本体5の反開口部側の天壁部55を介して押圧して車体70に係止する。蓋部30と、挿入部40と、挿入部40の挿入摺接面451から突出するように設けられ、モール本体5の摺接案内面571に設けられた切欠部570に挿入部40(45)の弾力により嵌入されて係止される係止部450と、挿入部40のクリップ20の近傍に設けられモール本体5の天壁部55を介する押圧時に先端部4702が車体70に当接して車体70からの反力を受けるリブ470とを有するエンドキャップ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モール本体の端部に装着されるエンドキャップに関する。詳しくは、モール本体の開口部から突出するクリップを、その直上のモール本体外面から押圧して車体に係止することにより、モール本体とともに車体に装着されるエンドキャップに関する。
また、本発明は、エンドキャップをモール本体に装着して成るモールに関する。
【背景技術】
【0002】
断面に開口部を有するモール本体の端部に装着されるエンドキャップであって、開口部から下方へ突出するクリップを、モール本体の外面から該モール本体を介して押圧してアウタパネルに係止することにより、モール(モール本体+エンドキャップ)をアウタパネルに装着する構造としては、例えば、特許第4292932号公報(特許文献1)に記載されている構造を挙げることができる。なお、「断面に開口部を有する」とは、断面の形状が環の一部を欠損して該欠損部分を開口部と成した形状であることをいい、例えば、断面形状を「C、U、J、V、コ」等の文字で表し得るようなことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4292932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンドキャップに設けられていてモール本体の開口部から突出するクリップをアウタパネルに係止する特許文献1の構造では、クリップを係止するべくクリップ直上位置(=モール本体の反開口部側に位置する壁部の外面)をクリップに沿う方向へ押圧すると、被押圧部位とその近傍部位が、押圧方向へ微小変形しようとする。このとき、モール本体・エンドキャップ・アウタパネル等の各寸法が設計図通りに極めて高い精度で製造されている場合は、図3(c)に示すように、エンドキャップの蓋体30の下端(アウタパネル70寄りの端部)がアウタパネル70に当接して支えるため、上記の微小変形は防止される。
一方、何れかが、設計図の寸法から若干外れてしまっている場合もあり、その結果、図3(c)とは異なり、蓋体30の下端がアウタパネル70の右端からはみ出ている場合もある。
そのような場合には、上述の微小変形を防止することができず、当該の微小変形部位に対応するアウタパネル70の上縁の部位(ドア端部寄りの上縁部位)が、エンドキャップ30の蓋体下部の内側とクリップ20の縁部との間に嵌まり込み、上記の微小変形を固定して、モール端部に外観不良を生じ易いという不具合がある。
本発明は、上記の外観不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の構成を、以下の[1]〜[4]に記す。なお、本項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
【0006】
[1]構成1
断面に開口部51を有するモール本体5の端部に装着され、モール本体5の前記開口部51から突出するクリップ20をモール本体5を介して押圧して車体70に係止することにより、モール本体5とともに車体70に装着されるエンドキャップ1であって、
モール本体5に装着された状態でモール本体5の端部を覆う蓋部30と、
基端部401が前記蓋部30の内面に連なり先端部402からモール本体5内へ挿入される挿入部40と、
モール本体5の前記開口部51から突出するように前記挿入部40に設けられ、前記モール本体5を介するクリップ20係止時の押圧力により先端部4702が車体70に当接した場合に車体70からの反力を受けるリブ470と、
を有することを特徴とするエンドキャップ1。
【0007】
[2]構成2
構成1に於いて、
前記挿入部40は、モール本体5内への挿入時に該モール本体5内の案内面571と摺接する挿入摺接面451を有する縦板部45と、前記リブ470の基端部4701が連なる横板部47とを有し、前記縦板部45はその一縁部452がモール本体5の反開口部側の壁部55内面に当接して前記モール本体5を介するクリップ20係止時の押圧力を受けるように設けられ、前記リブ470は前記縦板部45が含まれる仮想平面45pより車外側に位置する、
ことを特徴とするエンドキャップ1。
【0008】
[3]構成3
構成1又は構成2に於いて、
前記挿入部40は、モール本体5内への挿入時に該モール本体5内の案内面571と摺接する挿入摺接面451から突出するように設けられ、前記案内面571に設けられた切欠部570に、当該挿入部40の弾力により嵌入されて係止される係止部450を有し、
前記リブ470は挿入方向に沿う板面4703を有する板状リブであり、該板状リブ470の挿入方向先端部4704は前記係止部450より挿入方向前方に位置する、
ことを特徴とするエンドキャップ1。
【0009】
[4]構成4
構成1〜構成3の何れかのエンドキャップ1と、該エンドキャップ1が装着されたモール本体5と、から成るモール。
【発明の効果】
【0010】
構成1は、断面に開口部51を有するモール本体5の端部に装着され、モール本体5の前記開口部51から突出するクリップ20をモール本体5を介して押圧して車体70に係止することにより、モール本体5とともに車体70に装着されるエンドキャップ1であって、モール本体5に装着された状態でモール本体5の端部を覆う蓋部30と、基端部401が前記蓋部30の内面に連なり先端部402からモール本体5内へ挿入される挿入部40と、モール本体5の前記開口部51から突出するように前記挿入部40に設けられ、前記モール本体5を介するクリップ20係止時の押圧力により先端部4702が車体70に当接した場合に車体70からの反力を受けるリブ470とを有するエンドキャップ1であるため、クリップ20を車体70に係止するべくモール本体5を介して押圧したとき、例えば部材の寸法精度誤差等に起因して蓋部30が車体70の縁からはみ出る等していて上記の押圧力によりリブ470の先端部4702が車体70に当接した場合には、該リブ470が車体70からの反力を受けて被押圧部位やその近傍部位を支持する。このため、当該の部位が押圧方向へ微小変形する(=落ち込む)ことが防止され、外観不良の発生を防止できる。
【0011】
構成2は、前記挿入部40は、モール本体5内への挿入時に該モール本体5内の案内面571と摺接する挿入摺接面451を有する縦板部45と、前記リブ470の基端部4701が連なる横板部47とを有し、前記縦板部45はその一縁部452がモール本体5の反開口部側の壁部55内面に当接して前記モール本体5を介するクリップ20係止時の押圧力を受けるように設けられ、前記リブ470は前記縦板部45が含まれる仮想平面45pより車外側に位置するエンドキャップ1であるため、構成1が有する前述の作用効果に加えて、さらに、モール装着時の押圧力でシール性に悪影響を及ぼしてしまうことが無いという作用効果を奏する。即ち、上記のように構成されている結果、クリップ係止時の押圧力Faとリブ470に車体70から加わる反力Fbとにより、モールの上縁寄りの部位を車体接近方向cへ付勢し、且つ、リブ470寄りの部位を車体離隔方向dへ付勢する回転力が生ずるため、シール性を損なうことが無いという作用効果を奏する。
【0012】
構成3は、構成1又は構成2に於いて、前記挿入部40は、モール本体5内への挿入時に該モール本体5内の案内面571と摺接する挿入摺接面451から突出するように設けられ、前記案内面571に設けられた切欠部570に、当該挿入部40の弾力により嵌入されて係止される係止部450を有し、前記リブ470は挿入方向に沿う板面4703を有する板状リブであり、該板状リブ470の挿入方向先端部4704は前記係止部450より挿入方向前方に位置するエンドキャップ1であるため、構成1(又は、構成1及び構成2)が有する前述の作用効果に加えて、さらに、リブ470が挿入部40のモール本体5内への挿入の妨げとなることを確実に防止できる効果がある。つまり、係止部450が切欠部570へ嵌入するのに先立ってモール本体5の摺接案内面571に押されて挿入部40(45)が変形するのであるが、その前に、リブ470の挿入方向先端部4704がモール本体5内に挿入されるため、リブ470が挿入部40の挿入の妨げとなることを確実に防止できる。
【0013】
構成4は、構成1〜構成3の何れかのエンドキャップ1と、該エンドキャップ1が装着されたモール本体5とから成るモールであるため、構成1〜構成3の作用効果を奏するモールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態のエンドキャップを示す斜視図。(a)は正面(車体へ装着した状態で車外側;以下、同様)から見た様子を示し、(b)は背面(車体へ装着した状態で車内側;以下、同様)から見た様子を示す。
【図2】図1のエンドキャップを示し、(a)は背面側からの透視図、(b)は上方(車体装着時での上方)からの透視図、(c)は(a)内C−C線端面図、(d)は(a)内D−D線端面図、(e)は(a)内E−E線端面図、(f)は(a)内F−F線端面図、(g)は(a)内G−G線端面図、(h)は(a)内H−H線端面図、(i)は(a)の右側面を透視して見た図である。
【図3】(a)と(b)は図1のエンドキャップが装着されるモール本体の端部付近を示し、(a)は平面図(車体装着時の上方視の図)、(b)は背面図である。(c)〜(f)は図1のエンドキャップを図3(a)(b)のモール本体の端部に装着した状態を示し、(c)は(a)内C−C線断面図、(d)は(b)内D視図、(e)は(b)内E−E線断面図、(f)は(b)内F−F線断面図である。
【図4】(a)は図3(a)(b)のモール本体の一般断面を示す図、(b)は自動車のモール装着部位を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態のエンドキャップ1を説明し、及び、該エンドキャップ1をモール本体5に装着して成るモールを説明する。
なお、モール本体5にエンドキャップ1を装着して成るモールは、図4(b)に例示するように、アウタパネル70の上縁部分に装着される。また、図4(a)はモール本体5の一般断面(端部等を除く通常の部分の断面)を示し、58は上リップ、59は下リップである。モール本体5の一般断面は公知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0016】
エンドキャップ1は、断面に開口部を有するモール本体5の端部に装着されて、その外観に意匠性を付与等する。モール本体5に装着されると、エンドキャップ1に設けられているクリップ20は、モール本体5の開口部51から下方へ突出する。このクリップ20を、モール本体5の開口部51とは反対側の部位(反開口部側)である壁部(天壁部)55の外面(上面)側から、該壁部55を介して下方へ押圧して、車体(アウタパネル)70に係止する。これにより、エンドキャップ1は、モール本体5とともに車体(アウタパネル)70に装着される。
ここで、「上」「下」とは車体へ装着した状態での「上」「下」を基準とする定義である。また、「モール本体5の断面が開口部を有する」とは、「モール本体5の断面が、図2(d)〜(f)や図3(d)〜(f)に示すように、環の一部を欠損して該欠損部分を開口部と成した形状であることをいい、例えば、断面形状を「C、U、J、V、コ」等の文字で表し得るようなことをいう。
【0017】
エンドキャップ1は、蓋部30と挿入部40とを有する。蓋部30は、モール本体5の端部が露出しないように覆う部位である。また、挿入部40は、モール本体5の内部へ挿入される部位である。
【0018】
モール本体5の端部から内部へ向けて、挿入部40を、その先端部402の側から挿入すると、挿入部40に設けられている係止部450が、該係止部450を支持している挿入部40の縦板部45の弾力によって、モール本体5の対応部位に設けられている切欠部570(図3(b))に嵌まり込む(図3(f))。これにより、エンドキャップ1がモール本体5に係止されて装着状態となり、一体のモールとされる。なお、401は挿入部40の基端部である。
【0019】
係止部450の切欠部570への嵌まり込みは、係止部450が、弾性を有する樹脂製の縦板部45の挿入摺接面451から突出するように設けられており、挿入部40がモール本体5内に挿入されるときには、その挿入摺接面451が、モール本体5の案内面571と摺接しつつ案内されることにより、実現される。即ち、挿入摺接面451から突出されている係止部450に押されて縦板部45が変形し、その変形に抗するように縦板部45が弾力で押し返すことにより、実現される。
【0020】
クリップ20と蓋部30の間(係止部450の付近)に於いて、縦板部45の下端近傍には、図3(f)に示すように、横板部47が、縦板部45との間に隙間を空けて設けられている。なお、この隙間は、蓋部30の側では蓋部30を介して縦板部45と横板部47が連設され、且つ、クリップ20の側ではクリップ20の位置にて縦板部45と横板部47が直接連設されているため、クリップ20〜蓋部30の間のみに存在する。即ち、クリップ20より前方(挿入部40の先端部402寄り)では、縦板部45と横板部47とは、隙間無く連設されている。
【0021】
横板部47の縁(隙間の部分の縁)の下方には、板状のリブ470が、その板面4703が挿入方向に沿うようにして、横板部47から連設されている。この板状リブ470の下端部(先端部)4702は、クリップ20をアウタパネル70に係止するべく反開口部側の壁部(例:天壁部)55の側から押圧力が加えられたときに於いて、前述のように例えば部材の精度誤差等に起因して蓋部30の下端側がアウタパネル70の右縁よりはみ出ている場合には、アウタパネル70の上面に当接するように設けられている。例えば、板状リブ470の先端部4702と、アウタパネル70の対応部位の上面は、微小なクリアランスを空けて、対向されている。
【0022】
板状リブ470の下端部(先端部)4702が上述のようにしてアウタパネル70の上面に当接すると、板状リブ470は、アウタパネル70側からの反力を受けて、モール(モール本体5・エンドキャップ1)を押し返す。このため、モールは、クリップ20を係止しようとするときの押圧力による変形を生ぜず、したがって、上述の部材の精度誤差等があったとしても、エンドキャップ1の蓋部30〜クリップ20間に、アウタパネル70の対応部位が嵌まり込むことも無く、外観不良が防止される。
【0023】
また、本例では、図2(g)に示すように、クリップ20の係止時に反開口部側の壁部である天壁部55に加えられる押圧力Faを一縁部(上縁部)452にて受ける縦板部45が含まれる仮想平面45pと、押圧力Faに抗してアウタパネル70が及ぼす反力Fbを受ける板状リブ470が含まれる仮想平面470pとは、若干ずれた位置に設けられている。このため、モールに対しては回転力が作用することとなる。つまり、モールの上部寄りに対しては車体へ接近する方向(矢印c)の力が作用し、モールの下部寄りに対しては車体から離隔する方向(矢印d)の力が作用することとなる。その結果、ガラスに当接する上部がより強くガラス側へ押されることとなり、クリップ20を装着するときの押圧力がシール性に悪影響を及ぼしてしまうということも防止される。
【0024】
また、本例では、図2(a)に示すように、板状リブ470の挿入方向先端部4704は、係止部450よりも、図に「t」として示す長さだけ、挿入方向前方に設けられている。このため、係止部450がモール本体5の摺接案内面571に到達する前に、板状リブ470の挿入方向先端部4704が、モール本体5内に挿入されることとなる。換言すれば、係止部450が摺接案内面571に押されて係止部450を支持する縦板部45が変形を開始する前に、板状リブ470が、モール本体5内への挿入を開始されることとなる。このため、板状リブ470がモール本体5の端部で引っ掛かって、エンドキャップ1のモール本体5内への挿入を妨げるという不具合も生じない。
【符号の説明】
【0025】
1 エンドキャップ
20 クリップ
30 蓋部
40 挿入部
401 挿入部の基端部
402 挿入部の先端部
45 縦板部
45p 縦板部が含まれる仮想平面
450 係止部
451 挿入摺接面
452 縦板部の一縁部
47 横板部
470 リブ
470p リブが含まれる仮想平面
4701 リブの基端部
4702 リブの先端部
4703 リブの板面(挿入方向に沿う)
4704 リブの挿入方向先端部
5 モール本体
51 開口部
55 (反開口部側の)壁部(天壁部)
570 切欠部
571 (摺接の)案内面
58 上リップ
59 下リップ
70 アウタパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面に開口部を有するモール本体の端部に装着され、モール本体の前記開口部から突出するクリップをモール本体を介して押圧して車体に係止することにより、モール本体とともに車体に装着されるエンドキャップであって、
モール本体に装着された状態でモール本体の端部を覆う蓋部と、
基端部が前記蓋部の内面に連なり先端部からモール本体内へ挿入される挿入部と、
モール本体の前記開口部から突出するように前記挿入部に設けられ、前記モール本体を介するクリップ係止時の押圧力により先端部が車体に当接した場合に車体からの反力を受けるリブと、
を有することを特徴とするエンドキャップ。
【請求項2】
請求項1に於いて、
前記挿入部は、モール本体内への挿入時に該モール本体内の案内面と摺接する挿入摺接面を有する縦板部と、前記リブの基端部が連なる横板部とを有し、前記縦板部はその一縁部がモール本体の反開口部側の壁部内面に当接して前記モール本体を介するクリップ係止時の押圧力を受けるように設けられ、前記リブは前記縦板部が含まれる仮想平面より車外側に位置する、
ことを特徴とするエンドキャップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に於いて、
前記挿入部は、モール本体内への挿入時に該モール本体内の案内面と摺接する挿入摺接面から突出するように設けられ、前記案内面に設けられた切欠部に、当該挿入部の弾力により嵌入されて係止される係止部を有し、
前記リブは挿入方向に沿う板面を有する板状リブであり、該板状リブの挿入方向先端部は前記係止部より挿入方向前方に位置する、
ことを特徴とするエンドキャップ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかのエンドキャップと、該エンドキャップが装着されたモール本体と、から成るモール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−207333(P2011−207333A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76716(P2010−76716)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】