説明

オイルストレーナの取付構造

【課題】コントロールバルブ等の被取付部材に対して、オイルストレーナを簡単かつ確実に取付けることができる、オイルストレーナの取付構造を提供する。
【解決手段】このオイルストレーナの取付構造は、オイルが流動する流路を有する被取付部材1に、連結具20を介してオイルストレーナ10を取付けるもので、被取付部材1には、連結具20の一端が連結される取付孔5が設けられ、オイルストレーナ10には、連結具20の他端が連結される軸受部18が設けられ、連結具20は、その一端に、被取付部材1の取付孔5に係合するクリップ部21が設けられると共に、その他端に、オイルストレーナ10の軸受部18に嵌着されて揺動可能に連結される球状部28が設けられている。そして、球状部28を介して連結具20を揺動させることによって、クリップ部21を取付孔3に整合させて係合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の自動変速機や内燃機関等に用いられる各種オイルを清浄化するためのオイルストレーナを、コントロールバルブ等の被取付部材に取付けるための、オイルストレーナの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の自動変速機や内燃機関には作動油や潤滑油等として、オイルが循環移動するようになっているが、このようなオイルを清浄化するための部材として、オイルストレーナが広く用いられている。このオイルストレーナは、次のようにしてコントロールバルブ等の被取付部材に取付けられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に示す自動変速機の潤滑構造には、変速機ケース底部に配置されたコントロールバルブに複数のネジ孔を設けると共に、オイルストレーナの周縁に挿通孔が形成されたフランジ部を設け、そして、コントロールバルブ下方にオイルストレーナを配置した後、オイルストレーナのフランジ部の下面側から挿通孔にボルトを挿入して、その先端部をコントロールバルブのネジ孔に螺着させることにより、オイルストレーナがコントロールバルブに締め付け固定されることが記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、ケーシング底部に配置されたコントロールバルブに、オイルストレーナを取付けるための構造が開示されており、コントロールバルブの下面に金属板よりなる油路シール板をボルトにより固定する一方、オイルストレーナ周縁から上方に立ち上がる複数の取付爪をオイルストレーナと一体的に設け、コントロールバルブの下方からオイルストレーナを押し上げて、複数の取付爪を前記油路シール板の周縁にそれぞれ係合させることにより、油路シール板を介してコントロールバルブにオイルストレーナが取付けられている。
【特許文献1】特開平10−231921号公報
【特許文献2】特許第3556118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、コントロールバルブに形成されたネジ孔に対して、オイルストレーナに設けた挿通孔の位置が、寸法誤差等によりずれている場合には、ボルトを挿通させにくく、コントロールバルブにオイルストレーナをしっかりと取付けることができないことがあった。
【0006】
また、ボルトは挿通孔を通して、その先端部をネジ孔に螺着させ、オイルストレーナの下方側から挿通孔に挿通するようになっているので、取付け作業が煩雑で作業性に支障をきたすことがあった。
【0007】
一方、特許文献2では、オイルストレーナに一体形成された複数の取付爪を、コントロールバルブ下方の油路シール板周縁に係合させるようになっているが、例えば、油路シール板が所定寸法よりも幅広若しくは幅狭に形成されている場合等、取付爪と、該取付爪が係合する油路シール板周縁とが所定位置よりずれていると、上記特許文献1と同じく、コントロールバルブにオイルストレーナをしっかりと取付けることができない。
【0008】
したがって、本発明の目的は、コントロールバルブ等の被取付部材に対して、オイルストレーナを簡単かつ確実に取付けることができる、オイルストレーナの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、オイルが流動する流路を有する被取付部材に、連結具を介してオイルストレーナを取付けるオイルストレーナの取付構造において、前記被取付部材には、前記連結具の一端が連結される取付孔が設けられ、前記オイルストレーナには、前記連結具の他端が連結される軸受部が設けられ、前記連結具は、その一端に、前記被取付部材の取付孔に係合するクリップ部が設けられると共に、その他端に、前記オイルストレーナの軸受部に嵌着されて揺動可能に連結される球状部が設けられていることを特徴とするオイルストレーナの取付構造を提供するものである。
【0010】
上記発明によれば、オイルストレーナの軸受部に連結具の球状部を嵌着させて、オイルストレーナに連結具を揺動可能に連結し、次に、この連結具のクリップ部を被取付部材の取付孔に挿入して係合させることにより、連結具を介して、オイルストレーナを被取付部材に取付けることができる。
【0011】
このとき、連結具は、オイルストレーナの軸受部に球状部を介して揺動可能に連結されているので、被取付部材の取付孔の位置と、それに係合する連結具のクリップ部の位置とが、寸法誤差等により多少ずれていても、連結具を揺動させることによって、クリップ部を取付孔に整合させて係合させることができる。
【0012】
また、被取付部材の取付孔に連結具のクリップを挿入して係合させるだけで取付けることができるので、オイルストレーナの取付作業性が良好となる。
【0013】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記オイルストレーナに設けられた軸受部は、前記被取付部材側とその反対側に開口しており、前記連結具は、前記球状部から更に他端方向に延出された軸部を有しており、前記連結具の球状部が前記軸受部に保持されると共に、前記軸部が前記被取付部材側とは反対側に開口する孔から延出されるオイルストレーナの取付構造を提供するものである。
【0014】
上記発明によれば、連結具の他端の球状部をオイルストレーナの軸受部に嵌着させるとき、球状部から延出された軸部が挿入ガイドとなるので、連結具のオイルストレーナへの取付作業性を向上させることができる。
【0015】
また、連結具のクリップ部を被取付部材の取付孔に挿入するとき、上記軸受部の被取付部材側とは反対側に開口する孔から延出された軸部を把持して、クリップ部を任意の方向に動かすことができるので、クリップ部の取付孔への位置合わせがしやすくなり、連結具の被取付部材への連結作業性も良好となる。
【0016】
本発明の第3は、前記第1又は第2の発明において、前記連結具のクリップ部は、連結具の一端に形成された合成樹脂製の台座部と、この台座部に装着された金属製のクリップ本体とで構成されているオイルストレーナの取付構造を提供するものである。
【0017】
上記発明によれば、金属製のクリップ本体を介して連結具を被取付部材に取付けることができるので、被取付部材にオイルストレーナを強固に固定することができる。また、被取付部材の取付孔に係合するクリップ本体は金属製であるので、例えば、被取付部材等が高温になったとしても軟化しにくく、被取付部材に対するオイルストレーナの取付け強度を十分に確保することができる。
【0018】
本発明の第4は、前記第1〜3のいずれか1つの発明において、前記オイルストレーナは、ロアケースとアッパーケースとを有しており、それぞれのケースの周縁から延出された板状部分の対向する位置に、前記軸受部を形成する凹部がそれぞれ設けられており、両ケースの周縁部を突き合わせると、前記板状部分に内部が拡径された軸受部が構成されているオイルストレーナの取付構造を提供するものである。
【0019】
上記発明によれば、ロアケース及びアッパーケースのそれぞれの周縁から延出された板状部分の対向する位置に凹部を設け、両ケースの板状部分を接合することによって軸受部を構成するようにしたので、連結具の球状部を揺動可能に保持することができる、内部が拡径された軸受部を、比較的単純な型抜き構造によって容易に成形することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のオイルストレーナの取付構造によれば、被取付部材の取付孔に連結具のクリップを挿入して係合させるだけで、連結具を介してオイルストレーナを被取付部材に取付けることができるので、オイルストレーナの取付作業性が良好となると共に、狭いスペースでの取付作業も容易に行うことができる。
【0021】
また、連結具の球状部が軸受部に揺動可能に連結されているので、オイルストレーナの取付孔の位置と、それに係合する連結具のクリップの位置とが、寸法誤差等により多少ずれていても、取付具を揺動させることによって、クリップを取付孔に整合させて係合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明のオイルストレーナの取付構造の一実施形態について説明する。
【0023】
このオイルストレーナの取付構造は、図1,3に示すように、オイルが流動する流路を有する被取付部材1に、連結具20を介してオイルストレーナ10を取付けるためのものである。この実施形態では、複数の連結具20を用いて、被取付部材1にオイルストレーナ10を取付ける構成となっている。
【0024】
この実施形態における被取付部材1は、自動変速機に用いられるもので、図示しない自動変速機ケースの下方で、かつ、自動変速機ケースの底面に固設された、オイル貯留用の有底箱状をなすオイルパン7(図3参照)の開口端付近に配設されて、油圧回路を構成するコントロールバルブユニットである。この被取付部材1は、その内部にオイルが流動する流路が形成されていて、図示しないオイルポンプを介して、オイルストレーナ10を通って清浄化されたオイルが供給されるようになっている。また、コントロールバルブユニットである被取付部材1には、特に図示しないが、自動変速機ケースに内蔵されている自動変速機構造の摩擦係合要素を係脱する各油圧サーボや、この各油圧サーボに供給する油圧を切替え動作させるソレノイドバルブ等の各要素が配設されている。
【0025】
また、被取付部材1の周縁から外方に向かって、フランジ部3が広がって形成されており、更に、このフランジ部3には、長孔状をなす取付孔5が複数設けられている(この実施形態では4個)。この複数の取付孔5に、複数の連結具20の一端に設けられたクリップ部21(後述する)が、それぞれ挿入されて連結されるようになっている。なお、被取付部材1としては、上記のようにコントロールバルブユニットに限らず、オイルが流動する流路を有するものであればよい。
【0026】
一方、オイルストレーナ10は、被取付部材1の下方に複数の連結具20を介して取付けられるものであって、図3に示すように、流入口11aを有するロアケース11と、流出口13aを有するアッパーケース13と、オイル中の異物を補足するフィルタ15とを有している。各ケース11,13は、それぞれ一方が開口した有底箱状をなすと共に、その周縁部11b,13bが外方に広がるフランジ状をなしている。そして、フィルタ15を格子状のフィルタ枠17の下面に配置して、これらの周縁を両ケース11,13の各周縁部11b,13bの間に挟み込み、両周縁部11b,13bを超音波溶着等で溶着することにより、両ケース11,13が接合されて一体化されるようになっている。
【0027】
そして、図1に示すように、アッパーケース13の周縁部13bの端面からは、帯状をなす板状部分17が外方に向かって所定長さで複数伸びていて、これら各板状部分17の先端部に、連結具20の他端が連結される軸受部18がそれぞれ設けられている。図4を参照すると、この軸受部18は、連結具20の他端に設けられた球状部28(後述する)を保持するための保持部18aと、この保持部18aに連通して被取付部材1側とその反対側とにそれぞれ開口する円形状の孔18b,18bを有している。
【0028】
図4に示すように、保持部18aの内周は、連結具20の球状部28の形状に対応して、軸受部18の厚さ方向中央が最も拡径していると共に、被取付部材1側及びその反対側の開口に向かって次第に縮径して、略球面状に窪んだ形状をなしている。それにより、軸受部18内に孔18bを通して連結具20の球状部28が嵌め込まれると、保持部18aにより球状部28が揺動可能に保持されると共に、縮径した両開口部によって球状部28が抜け止め保持される。なお、円形状の孔18bは、連結具20の球状部28を嵌入可能な内径で形成されている。
【0029】
以上、被取付部材1と連結具20を介してそれに取付けられるオイルストレーナ10とについて説明したが、本発明においては、連結具20の他端に、オイルストレーナ10に形成された軸受部18に対して揺動可能に連結される球状部28を設けて、連結具20の一端に設けたクリップ部21を所定向きに揺動自在とした点が特徴となっている。
【0030】
図2を併せて参照すると、この実施形態の連結具20は、その一端に、前記被取付部材1の取付孔5に係合するクリップ部21と、他端に、前記オイルストレーナ10の軸受部18に嵌着されて揺動可能に連結される球状部28を設けた構成となっている。前記クリップ部21は、合成樹脂製の台座部22と、この台座部22に装着される金属製のクリップ本体30とからなっている。
【0031】
まず、台座部22について説明すると、この台座部22は、長板状の基板23と、この基板23の長手方向両側縁から立設した左右一対の側壁24,24と、前記基板23の表面中央から前記側壁24よりも高く立設した板状のリブ25とを有している。各側壁24,24内側の高さ方向中間からは、突起24a,24aが対向して突設している。また、リブ25は、その先端部25aが拡径した形状をなしており、後述するクリップ本体30をガタツキなく支持可能となっている。
【0032】
上記台座部22の基板23の裏面中央からは、略円柱状をなす柱部26が所定高さで突出しており、この柱部26の先端に、前記軸受部18の保持部18a内に嵌入保持されて、連結具20を揺動可能とする球状部28が連結されている。また、柱部26の先端部側の外周は、球状部28側に向かって次第に縮径したテーパ面26aをなしており、これによって、軸受部18に対して連結具20を大きく傾けることができ、連結具20の揺動角度を大きくとれるようになっている。また、球状部28の、柱部26との連結部分とは反対側の部分からは、前記柱部26と同じ軸方向で、軸部29が所定長さで延出している。この軸部29は、球状部28を軸受部18内の保持部18aにて揺動可能に保持されたときに、被取付部材1とは反対側に開口する孔18bから延出されるようになっている(図3参照)。この軸部29は、連結具20を揺動させる際に把持する部分となる。
【0033】
なお、上記柱部26、球状部28及び軸部29は、合成樹脂からなる台座部22に一体形成されている。
【0034】
一方、上記台座部22に装着される金属製のクリップ本体30は、図2に示すように、前記台座部22のリブ25を挟持可能となるように、U字状に折り曲げられた本体部31と、この本体部31の左右両片にスリットを介して斜め外側に向かって折曲形成された一対の脚部33,33とを有している。各脚部33は、その先端部が斜め内側に折曲されて、被取付部材1の取付孔5の表側周縁に係合する係止肩部33aをなし、更にその先端部が斜め外側に折曲されて、クリップ本体30を台座部22に装着したときに、台座部22の両側壁24に係止する係止端部33bをなしている(図4参照)。また、本体部31の長手方向両端は、斜め外側にそれぞれ屈曲されて開き止め片35,35が形成されており、これがクリップ本体30を台座部22に装着したときに、台座部22の突起24a,24aにそれぞれ係止してクリップ本体30の開き止め並びに抜け止めをなすようになっている。
【0035】
なお、この実施形態では、クリップ部21として、台座部22とそれに装着されるクリップ本体30とからなる2部品構成を採用しているが、この態様に限定されるものではない。例えば、台座部22に設けたリブ25の外側面に、取付孔5周縁に係合可能な係合爪等を一体に設けてもよい。
【0036】
次に、上記構成からなる本発明のオイルストレーナの取付構造によって、被取付部材1にオイルストレーナを取付ける手順及びその作用について説明する。
【0037】
まず、図2に示すように、台座部22の長手方向に沿った側面からクリップ本体30を挿入して、台座部22にクリップ本体30を装着し(図4参照)、連結具20にクリップ部21を設ける。このとき、図4に示すように、リブ25の両側がU字状の本体部31に挟み込まれると共に、開き止め片35,35が突起24a,24aの下面に係止し、更に、係止端部33b,33bが側壁24,24に係止して、台座部22からクリップ本体30が抜け外れないように、しっかりと装着される。
【0038】
そして、図1に示すように、連結具20の球状部28を、オイルストレーナ10の軸受部18の上方から嵌入していく。すなわち、軸受部18の被取付部材1側の孔18bから、連結具20の軸部29を挿入して、同軸部29を軸受部18の被取付部材1とは反対側の孔18bから突き出すと共に、縮径した被取付部材1側の孔18bから球状部28を嵌入していき、軸受部18内部の保持部18aに球状部28を嵌着させることにより、図4に示すように、軸受部18に球状部28を揺動可能に連結する。
【0039】
このとき、連結具20の球状部28からは軸部29が延出しているので、上記のように、軸受部18に球状部28を嵌着させるときに、同軸部29が挿入ガイドとなり、連結具20のオイルストレーナ10への取付作業性を向上させることができる。
【0040】
上記作業を繰り返して、複数の連結具20をオイルストレーナ10の複数の軸受部18にそれぞれ嵌着させ、各連結具20のクリップ部21を、軸受部18の上方側に配置させると共に、各連結具20の軸部29を、軸受部18の被取付部材1とは反対側の孔18bからそれぞれ延出させる。
【0041】
そして、被取付部材1に形成された複数の取付孔5に、オイルストレーナ10に連結された各連結具20がほぼ整合するように、被取付部材1の下方に取付すべきオイルストレーナ10を配置する(図1参照)。
【0042】
この状態で、オイルストレーナ10を持上げて、軸受部18上方に配置された各連結具20のクリップ部21を、被取付部材1の各取付孔5に挿入していく。すると、クリップ本体30の脚部33,33が、取付孔5の内周に押圧されて内側に撓み、係止肩部33a,33aが取付孔5の表側(被取付部材1側)に抜き出ると、両脚部33,33が弾性復帰して、取付孔5の表側周縁に係止肩部33a,33aが係合すると共に、連結具20の台座部22の側壁24,24が、オイルストレーナ10のフランジ部3の裏側(被取付部材1の反対側)に突き当たり、連結具20の一端が取付孔5に連結される(図4参照)。
【0043】
このように、オイルストレーナ10の軸受部18に連結具20の球状部28を嵌着させて、オイルストレーナ10に連結具20を揺動可能に連結した後、連結具20のクリップ部21を被取付部材1の取付孔5に挿入して係合させることにより、連結具20を介して、オイルストレーナ10を被取付部材1に取付けることができる。
【0044】
ところで、上記のオイルストレーナの取付作業の際には、被取付部材1の取付孔5の位置と、それに係合する連結具20のクリップ部21の位置とが、寸法誤差等によってずれている場合がある。このとき、本発明においては、連結具20がオイルストレーナ10の軸受部18に球状部28を介して揺動可能に連結されているので、連結具20を適宜揺動させて、その一端のクリップ部21を取付孔5に整合させることができ、その結果、クリップ部21を取付孔5に確実に係合させることができる。
【0045】
また、図3,4に示すように、オイルストレーナ10の軸受部18の、被取付部材1とは反対側の孔18bから、連結具20の軸部29が延出するようになっている。そのため、上記のように、連結具20のクリップ部21を被取付部材1の取付孔5に挿入するときに、軸部29を把持してクリップ部21を任意の方向に動かすことができるので、クリップ部21の取付孔5への位置合わせがしやすくなり、連結具20の被取付部材1への連結作業性が向上させることができる。
【0046】
更に、本発明においては、オイルストレーナ10をボルト等を介して被取付部材1に取付ける構成ではなく、被取付部材1の取付孔5に、連結具20のクリップ部21を挿入して係合させるだけの簡単な操作で、被取付部材1にオイルストレーナ10を取付けることができるので、オイルストレーナ10の取付作業性が良好となると共に、狭いスペースでの取付作業も容易に行うことができる。
【0047】
また、この実施形態では、金属製のクリップ本体30を介して連結具20を被取付部材1に取付けることができるので、被取付部材1にオイルストレーナ10を強固に固定することができる。また、被取付部材1の取付孔5に係合するクリップ本体30は金属製であるので、例えば、被取付部材1等が高温になったとしても軟化しにくく、被取付部材1に対するオイルストレーナ10の取付け強度を十分に確保することができる。
【0048】
なお、以上のようにして被取付部材1に取付けられたオイルストレーナ10は、次のように作用する。すなわち、図示しないオイルポンプが作動すると、流入口11aからオイルパン7に貯留されたオイルが吸引されて、フィルタ15を通過する際にオイル中の金属等の異物が補足されて取り除かれ、清浄化されたオイルが流出口13aから流出して、オイルポンプを介してコントロールバルブである被取付部材1に供給される(図3参照)。
【0049】
図5には、本発明によるオイルストレーナの取付構造の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0050】
この実施形態では、前記実施形態が、アッパーケース13の周縁部13bからのみ板状部分17を設けていたのに対し、図5に示すように、ロアケース11及びアッパーケース13の各周縁部11b,13bからそれぞれ板状部分11c,13cを延出させ、各板状部分11c,13cの対向する位置に、軸受部18を形成する凹部18c,18cがそれぞれ設けられている。更に、各凹部18c,18cの内周は、対向する部分が最も拡径し、それとは反対側に向かって次第に縮径した形状をなしている。
【0051】
そして、両ケース11,13の各周縁部11b,13bを突き合わせて溶着すると共に、各板状部分11c,13cも溶着することによって、上記2つの凹部18c,18cが連通した状態で対向配置されて、内部が拡径された保持部18aを有する軸受部18が構成されるようになっている。
【0052】
この実施形態によれば、ロアケース11及びアッパーケース13のそれぞれの周縁部11a,13aから延出された板状部分11c,13cの対向する位置にそれぞれ凹部18c,18cを設け、両ケース11,13の板状部分11c,13cを接合することによって軸受部18を構成するようにしたので、連結具20の球状部28を揺動可能に保持することができる、内部が拡径された保持部18aを有する軸受部18を、比較的単純な型抜き構造によって容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明によるオイルストレーナの取付構造の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同オイルストレーナの取付構造に用いられる連結具の分解斜視図である。
【図3】同オイルストレーナの取付構造により、被取付部材にオイルストレーナを取付けた状態を示す説明図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本発明によるオイルストレーナの取付構造の他の実施形態を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0054】
1 被取付部材
5 取付孔
10 オイルストレーナ
11 ロアケース
13 アッパーケース
18 軸受部
18a 保持部
18b 孔
20 連結具
21 クリップ部
22 台座部
28 球状部
29 軸部
30 クリップ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルが流動する流路を有する被取付部材に、連結具を介してオイルストレーナを取付けるオイルストレーナの取付構造において、
前記被取付部材には、前記連結具の一端が連結される取付孔が設けられ、
前記オイルストレーナには、前記連結具の他端が連結される軸受部が設けられ、
前記連結具は、その一端に、前記被取付部材の取付孔に係合するクリップ部が設けられると共に、その他端に、前記オイルストレーナの軸受部に嵌着されて揺動可能に連結される球状部が設けられていることを特徴とするオイルストレーナの取付構造。
【請求項2】
前記オイルストレーナに設けられた軸受部は、前記被取付部材側とその反対側に開口しており、前記連結具は、前記球状部から更に他端方向に延出された軸部を有しており、前記連結具の球状部が前記軸受部に保持されると共に、前記軸部が前記被取付部材側とは反対側に開口する孔から延出される請求項1記載のオイルストレーナの取付構造。
【請求項3】
前記連結具のクリップ部は、連結具の一端に形成された合成樹脂製の台座部と、この台座部に装着された金属製のクリップ本体とで構成されている請求項1又は2記載のオイルストレーナの取付構造。
【請求項4】
前記オイルストレーナは、ロアケースとアッパーケースとを有しており、それぞれのケースの周縁から延出された板状部分の対向する位置に、前記軸受部を形成する凹部がそれぞれ設けられており、両ケースの周縁部を突き合わせると、前記板状部分に内部が拡径された軸受部が構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のオイルストレーナの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−286275(P2008−286275A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130255(P2007−130255)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】