説明

オイルポンプ装置

【課題】ポンプハウジングのポンプ組込空間内に、駆動軸によって駆動される第1のポンプと、電動モータによって駆動される第2のポンプとを容易に組み込むことができるオイルポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプハウジング10のポンプ組込空間13に、エンジンに接続される駆動軸2によって駆動される第1のポンプ20と、モータステータ31及びモータロータ33を有する電動モータ30によって駆動される第2のポンプ40とが軸方向に隣接して組み込まれる。電動モータ30は、第2のポンプ40の外周に位置してポンプ組込空間13に組み込まれる。駆動軸2と、第2のポンプ40と、モータロータ33との三者間には、遊星歯車機構51が配設されて連結される。駆動軸2のトルクが遊星歯車機構51を介して第2のポンプ40に伝達される構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はオイルポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンの作動時において、各種機構の潤滑、作動、制御等を行うオイルを供給するために、自動変速機にオイルポンプが組み込まれるポンプハウジングが配設されることが知られている。
また、車両の一時停止の際、エンジンを一時停止させるアイドリングストップシステムが搭載された車両が知られている。
このようなアイドリングストップシステムが搭載された車両において、エンジンの一時停止(アイドルストップ)に伴ってオイルポンプが停止するため、自動変速機内のクラッチ機構等に油圧を供給することができなくなる。
このため、アイドリングストップシステムが搭載された車両において、自動変速機内のクラッチ機構等に油圧を供給する電動ポンプを自動変速機の外部に設置することが知られている。
しかしながら、各種形式が異なる車両において、電動ポンプを設置するスペースを確保することが困難となる場合があり、この場合には、アイドリングストップシステムを採用することができなくなる。
また、従来、例えば、特許文献1に開示されているように、エンジンと、油圧作動機器へ作動油を吐出するオイルポンプと、オイルポンプを駆動するための駆動軸に接続されるとともにシャフトを介してエンジンに接続された遊星歯車機構と、出力軸を介して遊星歯車機構に接続された電動モータとを備えたオイルポンプ駆動システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−191645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたオイルポンプ駆動システムにおいては、遊星歯車機構を介してエンジンに接続されたオイルポンプの駆動軸の回転を、電動モータの出力軸の回転によって変速させることができる。従って、オイルポンプによって吐出される作動油の吐出量を調整して、オイルポンプによって作動油が過剰に吐出されることを抑制することができる。また、遊星歯車機構を介して、電動モータのみによってオイルポンプを駆動することができるため、例えばエンジンが停止している場合にも、油圧作動機器へ油圧供給を行うことができる。
しかしながら、引用文献1においては、自動変速機のポンプハウジング内に電動モータ及び遊星歯車機構を組み込むことが困難である。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、ポンプハウジングのポンプ組込空間内に、駆動軸によって駆動される第1のポンプと、電動モータによって駆動される第2のポンプとを容易に組み込むことができるオイルポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るオイルポンプ装置は、ポンプハウジングのポンプ組込空間に、エンジンに接続される駆動軸によって駆動される第1のポンプと、モータステータ及びモータロータを有する電動モータによって駆動される第2のポンプとが軸方向に隣接して組み込まれ、
前記電動モータは、前記第2のポンプの外周に位置して前記ポンプ組込空間に組み込まれ、
前記駆動軸と、前記第2のポンプと、前記モータロータとの三者間には、遊星歯車機構が配設されて連結され、
前記駆動軸のトルクが前記遊星歯車機構を介して前記第2のポンプに伝達される構成にしてあることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、エンジンの作動時には、駆動軸によって第1のポンプが駆動されると共に、電動モータによって遊星歯車機構を介して第2のポンプが駆動される。
このため、自動変速機のポンプハウジングに組み込まれる従来のオイルポンプの軸方向の厚さ寸法に比べ、第1のポンプの軸方向の厚さ寸法を小さくすることができる。
そして、第1のポンプの軸方向の厚さ寸法を小さくすることで、ポンプハウジング内に対する第2のポンプの組み付けが容易となる。
また、エンジンの作動時において、モータステータのコイルを通電させてモータロータを正方向又は逆方向へ駆動させることで、遊星歯車機構を介して第2のポンプの回転数を可変させることができる。例えば、モータロータを逆方向へ駆動させることで、この分だけ第2のポンプの回転数を小さくすることができ、オイルの過剰な吐出量を抑制することができる。
また、エンジンの停止時には、モータステータのコイルを通電させてモータロータを正方向へ駆動させることで、遊星歯車機構を介して第2のポンプを駆動することができる。
これによって、エンジンの一時停止(アイドルストップ)に必要なオイル量を吐出することができる。
【0008】
請求項2に係るオイルポンプ装置は、請求項1に記載のオイルポンプ装置であって、
第1のポンプのオイル吐出容量は、エンジンの回転数がアイドリング回転数であるときに、必要最小限のオイル吐出量を確保する吐出容量に設定されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、仮に、第2のポンプに作動不良が生じた場合においても、第1のポンプのオイル吐出量によって車両の走行が可能となる。
【0010】
請求項3に係るオイルポンプ装置は、請求項1又は2に記載のオイルポンプ装置であって、
モータロータは、外周面の周方向にS極、N極の複数の永久磁石が交互に配設された円筒部と、この円筒部の内周面の軸方向中央部近傍から駆動軸の外周面に向けて形成され、かつ中心部に駆動軸又は、駆動軸と同一中心線上に設けられる軸体の外周面に軸受を介して回転可能に外嵌する円板部とを備え、
前記円板部によって第1のポンプと第2のポンプとが仕切られていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、モータロータの円板部が、その中心孔において駆動軸の外周面に軸受を介して回転可能に支持されるため、モータロータを中心振れなく安定よく回転させることができる。
また、モータロータの円板部は、第1のポンプと第2のポンプとの仕切壁としても機能する。このため、第1のポンプと第2のポンプとを仕切る専用の仕切壁を製作して組み付ける手間を省くことができ、部品点数や組付工数の削減によってコスト低減を図ることができる。
【0012】
請求項4に係るオイルポンプ装置は、請求項3に記載のオイルポンプ装置であって、
第2のポンプは、外周面の周方向に複数の外歯が形成されたインナギアと、このインナギアの複数の外歯と噛み合う複数の内歯が内周面の周方向に形成されたアウタギアとを備えた内接ギヤポンプによって構成され、
前記インナギアの内周面には、径方向内方へ突出され、中心部に駆動軸の外周面に軸受を介して回転可能に外嵌する端板が形成され、
前記端板とモータロータの円板部との間に、遊星歯車機構が収納される収納空間が構成されていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によると、第2のポンプのインナギアの内周面に形成した端板が、その中心孔において駆動軸の外周面に軸受を介して回転可能に支持される。
これによって、第2のポンプのインナギアを中心振れなく安定よく回転させることができる。
また、第2のポンプのインナギアの端板とモータロータの円板部との間に構成される収納空間に、遊星歯車機構を収納することができる。
【0014】
請求項5に係るオイルポンプ装置は、請求項4に記載のオイルポンプ装置であって、
遊星歯車機構は、収納空間に位置して駆動軸の外周面に動力伝達可能に設けられた太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛み合う複数の遊星歯車と、
前記複数の遊星歯車を中心軸を中心として回転可能に支持するキャリアとしてのインナギアの端板と、
前記複数の遊星歯車に噛み合う内歯を有し、モータロータの円板部に一体状に設けられた内歯歯車とを備えていることを特徴とする。
【0015】
前記構成によると、第2のポンプのインナギアの端板は、複数の遊星歯車を中心軸を中心として回転可能に支持するキャリアとして機能する。
また、モータロータの円板部は、遊星歯車機構の内歯歯車を支持する支持部材として機能する。
これによって、第2のポンプのインナギアの端板と、モータロータの円板部との間の収納空間に、遊星歯車機構を合理的に配設して収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施例1に係るオイルポンプ装置を示す縦断面図である。
【図2】同じくオイルポンプ装置のポンプハウジングに第1のポンプと第2のポンプとが組み付けられた状態を拡大して示す縦断面図である。
【図3】同じく図2のIII−III線に沿う第1のポンプの横断面図である。
【図4】同じく図2のIV−IV線に沿う第2のポンプの横断面図である。
【図5】同じくオイルポンプ装置の駆動軸としてのスリーブと、モータロータと、第2のポンプのインナギアとの回転数(単位時間当たりの回転数)の関係を示す説明図である。
【図6】同じくオイルポンプ装置の駆動軸としてのスリーブの回転数と第1のポンプ及び第2のポンプによるオイルの吐出総量との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0018】
この発明の実施例1に係るオイルポンプ装置を図1〜図6にしたがって説明する。
図1に示すように、自動変速機のトルクコンバータ1に組み付けられるオイルポンプ装置において、自動変速機のケーシング(図示しない)にボルトによって固定されるポンプハウジング10は、図1において左右に分割された第1、第2の両ハウジング体11、12がボルト(図示しない)によって結合されることで構成される。そして、第1、第2の両ハウジング体11、12の間には、ポンプ組込空間13が形成される。より具体的には、ポンプ組込空間13は、第1ハウジング体11の第2ハウジング体12に対向する内壁面の中心部に軸方向へ凹んで形成された組込凹部と、第2ハウジング体12の第1ハウジング体11に対向する内壁面とにより形成される。
【0019】
また、第1、第2の両ハウジング体11、12の対向内壁面には、吸入ポート15、17と吐出ポート16、18とがそれぞれ形成されている。
さらに、第1ハウジング体11の組込凹部の底面には、後述する第1のポンプ20のアウタギア23の外周面に嵌合してアウタギア23を回転可能に案内する突輪11aが形成されている。
また、第2ハウジング体12の内壁面には、後述する第2のポンプ40のアウタギア46の外周面に嵌合してアウタギア46を回転可能に案内する突輪12aが形成されている。
また、第2ハウジング体12の中心部には、トルクコンバータ1のスリーブ2内に向けてステータシャフト5が配置されている。
また、この実施例1において、トルクコンバータ1のスリーブ2がエンジンに接続される駆動軸に相当する。
【0020】
図2に示すように、ポンプ組込空間13には、駆動軸としてのスリーブ2によって駆動される第1のポンプ20と、モータステータ31及びモータロータ33を有する電動モータ(可逆モータ)30によって駆動される第2のポンプ40とが軸方向に隣接して組み込まれている。
また、電動モータ30は、第1のポンプ20及び第2のポンプ40の外周に位置してポンプ組込空間13に組み込まれている。
また、スリーブ2と、第2のポンプ40と、モータロータ33との三者間には、遊星歯車機構51が配設され、三者2、40、33が遊星歯車機構51によって連結されている。そして、スリーブ2のトルクが遊星歯車機構51を介して第2のポンプ40に伝達される。
【0021】
すなわち、この実施例1において、図2に示すように、モータステータ31は、ポンプ組込空間13の内周壁面の径寸法に対応する外径寸法を有すると共に、ポンプ組込空間13の軸方向の長さ寸法とほぼ同じ長さ寸法を有して形成され、ポンプ組込空間13の周壁面に回り止めされた状態で固定されている。
このモータステータ31は、鉄心部32aと、その鉄心部32aの内周面の周方向に形成された複数のコイル装着部に装着された複数のコイル32bとを備える。
【0022】
モータステータ31の内周に配設されるモータロータ33は、外周面の周方向にS極、N極の複数の永久磁石が交互に配設された円筒部34と、この円筒部34の内周面の軸方向中央部近傍からスリーブ2の外周面に向けて形成され、かつ中心部にスリーブ2(又はスリーブ2と同一中心線上に配設される軸体、例えば、ステータシャフト5)の外周面に軸受(滑り軸受、又は転がり軸受)37を介して回転可能に外嵌する円板部35とを備えている。
そして、円板部35によって第1のポンプ20と第2のポンプ40とが仕切られている。
なお、電動モータ30は、図示しない制御装置に接続され、設定されたプログラムに基づいて回転制御される。
【0023】
図2に示すように、第1のポンプ20は、ポンプ組込空間13を構成する第1ハウジング体11の組込凹部の底面と、モータロータ33の円板部35との間に配設されている。
図3に示すように、第1のポンプ20は、外周面の周方向には複数の外歯22が形成されたインナギア21と、インナギア21の複数の外歯22と噛み合う複数の内歯24が内周面の周方向に形成されたアウタギア23とを有する内接ギヤポンプによって構成されている。
そして、第1のポンプ20のインナギア21は、トルクコンバータ1のスリーブ2に動力伝達可能に結合される。
【0024】
また、第1のポンプ20のアウタギア23は、インナギア21の中心と偏心(図3中、偏心量Aだけ偏心)した状態で、図2に示すように、第1ハウジング体11の突輪11aに回転可能に嵌込まれている。
そして、インナギア21の外歯22と、アウタギア23の内歯24との間にはオイル閉込め部25が形成されており、スリーブ2からの動力伝達(トルク伝達)を受けてインナギア21が回転し、これに伴ってアウタギア23が追従回転することでポンプ作用をなすようになっている。
また、第1のポンプ20のオイル吐出容量は、エンジン(スリーブ2)の回転数がアイドリング回転数Nであるときに、必要最小限のオイル吐出量を確保する吐出容量に設定されている。
【0025】
図2に示すように、第2のポンプ40は、ポンプ組込空間13を構成する第2ハウジング体12の内壁面と、モータロータ33の円板部35との間に配設されている。
図4に示すように、第2のポンプ40においても、第1のポンプ20と同様にして外周面の周方向に複数の外歯42が形成されたインナギア41と、インナギア41の複数の外歯42と噛み合う複数の内歯47が内周面の周方向に形成されたアウタギア46とを備えた内接ギヤポンプによって構成されている。
また、第2のポンプ40のアウタギア46は、インナギア41の中心と偏心(図中、偏心量Bだけ偏心)した状態で、図2に示すように、第2ハウジング体12の突輪12aに回転可能に嵌込まれている。
【0026】
また、インナギア41の外歯42と、アウタギア46の内歯47との間にはオイル閉込め部48が形成される。そして、インナギア41の回転に伴ってアウタギア46が追従回転することでポンプ作用をなすようになっている。
また、この実施例1において、第2のポンプ40のインナギア41及びアウタギア46は、第1のポンプ20のインナギア21及びアウタギア23とほぼ同径に形成されると共に、偏心量A、Bにおいてもほぼ同じに設定される。
【0027】
図2に示すように、第2のポンプ40のインナギア41の内周面の第2ハウジング12側端部には、径方向内方へ突出され、中心部にスリーブ2の外周面に軸受(滑り軸受、又は転がり軸受)45を介して回転可能に外嵌する端板43が一体に形成されている。
そして、端板43とモータロータ33の円板部35との間に、遊星歯車機構51が収納される収納空間50が構成されている。
【0028】
図2と図4に示すように、遊星歯車機構51は、収納空間50に位置してスリーブ2の外周面に動力伝達可能に設けられた太陽歯車52と、太陽歯車52に噛み合う複数の遊星歯車53と、複数の遊星歯車53を中心軸54を中心として回転可能に支持するキャリア55としてのインナギア41の端板43と、複数の遊星歯車53に噛み合う内歯を有し、モータロータ33の円板部35に一体状に設けられた内歯歯車56とを備えている。
そして、太陽歯車52の歯数をZaとし、遊星歯車53の歯数をZbとし、内歯歯車56の歯数をZcとし、スリーブ2(エンジンの出力軸)の回転数をω1とし、モータロータ33の回転数をω3としたときに、第2のポンプ40が図5に示す回転数で駆動(回転)されるように設定されている。
【0029】
すなわち、図5に示すように、エンジンの停止時(スリーブ2の回転数が0)のときには、モータステータ31の各コイル32bを通電させてモータロータ33を正方向へ回転数ω3で回転させることで、モータロータ33の駆動力が、遊星歯車機構51の内歯歯車56、遊星歯車53、キャリア55としての第2のポンプ40のインナギア41に伝達される。
そして、第2のポンプ40のインナギア41が「(Zc/Za+Zc)×ω3」の回転数で回転される。
【0030】
エンジンの作動時で、かつモータステータ31のコイル32bが非通電状態にあるときには、スリーブ2によって第1のポンプ20のインナギア21が駆動されると共に、遊星歯車機構51の太陽歯車52、遊星歯車53、キャリア55としての第2のポンプ40のインナギア41に伝達される。この際、モータロータ33は停止状態に保たれ、これに伴って内歯歯車56の回転数が0に保たれる。
これによって、第1のポンプ20のインナギア21が、エンジンの回転数ω1で回転され、第2のポンプ40のインナギア41が「(Za/Za+Zc)×ω1」の回転数で回転される。
【0031】
エンジンの作動時において、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を正方向又は逆方向へ駆動させることで、遊星歯車機構51を介して第2のポンプ40のインナギア41の回転数を可変させることが可能となる。
例えば、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を正方向へ回転させて、遊星歯車機構51の内歯歯車56を正方向(モータロータ33と同方向)へ回転させることによって、第2のポンプ40のインナギア41が増速されて回転される。
これとは逆に、モータステータ31のコイルを通電させてモータロータ33を逆方向へ回転させて、遊星歯車機構51の内歯歯車56を逆方向(モータロータ33と同方向)へ回転させることによって、第2のポンプ40のインナギア41が減速されて回転される。
そして、モータロータ33(内歯歯車56)を「ー(Za/Zc)×ω1」の回転数で逆回転することで、第2のポンプ40のインナギア41の回転数が0となる。
【0032】
この実施例1に係るオイルポンプ装置は上述したように構成される。
したがって、エンジンの作動時には、駆動軸としてのスリーブ2によって第1のポンプ20のインナギア21が回転され、これによって第1のポンプ20が駆動される。この際、モータステータ31のコイル32bが非通電状態にあるときには、遊星歯車機構51を介して第2のポンプ40が駆動される。
このため、自動変速機のポンプハウジング10に組み込まれる従来のオイルポンプの軸方向の厚さ寸法に比べ、第2のポンプ40のオイル吐出量に相当する分だけ第1のポンプ20の厚さ寸法を小さくすることができる。
そして、第1のポンプ20の軸方向の厚さ寸法を小さくすることで、ポンプハウジング10内に対する第2のポンプ40の組み付けが容易となる。
【0033】
エンジンの作動時において、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を正方向又は逆方向へ駆動させることで、遊星歯車機構51を介して第2のポンプ40の回転数(オイル吐出量)を可変させることができる。
例えば、図6に示すように、エンジンの作動時において、エンジンが低速回転領域にあるときには、変速が頻繁になされる場合がある。このため、必要とするオイル吐出量が多くなる。
したがって、エンジンの低速回転領域では、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を正方向へ駆動させることで、この分だけ第2のポンプ40のインナギア41の回転数を大きくする。これによって、エンジンの低速回転領域に必要なオイル吐出量を確保する。
【0034】
また、エンジンの中速回転領域では、通常走行に必要なオイル吐出量を確保するため、モータステータ31のコイル32bが非通電状態とされ、遊星歯車機構51を介して第2のポンプ40のインナギア41が回転される。
また、エンジンの高速回転領域では、オイル吐出量が過剰になりやすいため、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を逆方向へ駆動させる。そして、モータロータ33を逆方向へ駆動させた分だけ第2のポンプ40のインナギア41の回転数を小さくする。
これによって、エンジンの高速回転領域においては、オイルの過剰な吐出量を抑制することができる。
【0035】
エンジンの一時停止(アイドルストップ)時には、モータステータ31のコイル32bを通電させてモータロータ33を正方向へ駆動させることで、遊星歯車機構51を介して第2のポンプ40を駆動することができる。
これによって、エンジンの一時停止(アイドルストップ)に自動変速機内のクラッチ機構等に必要なオイル量を吐出することができる。なお、エンジンの一時停止(アイドルストップ)時には、必要なオイル量及び油圧は、エンジンの作動時に比べ少量でかつ低圧である。
【0036】
また、この実施例1において、第1のポンプ20のオイル吐出容量は、エンジンの回転数がアイドリング回転数Nであるときに、必要最小限のオイル吐出量を確保する吐出容量に設定されている。
このため、仮に、第2のポンプ40に作動不良が生じた場合においても、第1のポンプ20のオイル吐出量によって車両の走行が可能となる。
【0037】
また、この実施例1において、モータロータ33の円板部35が駆動軸としてのスリーブ2の外周面に軸受37を介して回転可能に支持される。
これによって、モータロータ33を中心振れなく安定よく回転させることができる。
また、モータロータ33の円板部35は、第1のポンプ20と第2のポンプ40との仕切壁としても機能する。このため、第1のポンプ20と第2のポンプ40とを仕切る専用の仕切壁を製作して組み付ける手間を省くことができ、部品点数や組付工数の削減によってコスト低減を図ることができる。
【0038】
また、この実施例1において、第2のポンプ40のインナギア41の内周面に形成した端板43が駆動軸としてのスリーブ2の外周面に軸受45を介して回転可能に支持される。これによって、第2のポンプ40のインナギア41を中心振れなく安定よく回転させることができる。
また、第2のポンプ40のインナギア41の端板43とモータロータ33の円板部35との間に構成される収納空間50に、遊星歯車機構51を収納することができる。
【0039】
また、第2のポンプ40のインナギア41の端板43は、複数の遊星歯車53を中心軸54を中心として回転可能に支持するキャリア55として機能する。
また、モータロータ33の円板部35は、遊星歯車機構51の内歯歯車56の支持部材として機能する。
これによって、第2のポンプ40のインナギア41の端板43と、モータロータ33の円板部35との間の収納空間50に、遊星歯車機構51を合理的に配設して収納することができる。
【0040】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 ポンプハウジング
11 第1ハウジング体
12 第2ハウジング体
13 ポンプ組込空間
15、17 吸入ポート
16、18 吐出ポート
20 第1のポンプ
21 インナギア
23 アウタギア
30 電動モータ
31 モータステータ
32b コイル
33 モータロータ
34 円筒部
35 円板部
36 中心孔
37 軸受
40 第2のポンプ
41 インナギア
42 外歯
43 端板
44 中心孔
45 軸受
46 アウタギア
47 内歯
51 遊星歯車機構
52 太陽歯車
53 遊星歯車
54 中心軸
55 キャリア
56 内歯歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングのポンプ組込空間に、エンジンに接続される駆動軸によって駆動される第1のポンプと、モータステータ及びモータロータを有する電動モータによって駆動される第2のポンプとが軸方向に隣接して組み込まれ、
前記電動モータは、前記第2のポンプの外周に位置して前記ポンプ組込空間に組み込まれ、
前記駆動軸と、前記第2のポンプと、前記モータロータとの三者間には、遊星歯車機構が配設されて連結され、
前記駆動軸のトルクが前記遊星歯車機構を介して前記第2のポンプに伝達される構成にしてあることを特徴とするオイルポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルポンプ装置であって、
第1のポンプのオイル吐出容量は、エンジンの回転数がアイドリング回転数であるときに、必要最小限のオイル吐出量を確保する吐出容量に設定されていることを特徴とするオイルポンプ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイルポンプ装置であって、
モータロータは、外周面の周方向にS極、N極の複数の永久磁石が交互に配設された円筒部と、この円筒部の内周面の軸方向中央部近傍から駆動軸の外周面に向けて形成され、かつ中心部に駆動軸又は、駆動軸と同一中心線上に設けられる軸体の外周面に軸受を介して回転可能に外嵌する円板部とを備え、
前記円板部によって第1のポンプと第2のポンプとが仕切られていることを特徴とするオイルポンプ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のオイルポンプ装置であって、
第2のポンプは、外周面の周方向に複数の外歯が形成されたインナギアと、このインナギアの複数の外歯と噛み合う複数の内歯が内周面の周方向に形成されたアウタギアとを備えた内接ギヤポンプによって構成され、
前記インナギアの内周面には、径方向内方へ突出され、中心部に駆動軸の外周面に軸受を介して回転可能に外嵌する端板が形成され、
前記端板とモータロータの円板部との間に、遊星歯車機構が収納される収納空間が構成されていることを特徴とするオイルポンプ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のオイルポンプ装置であって、
遊星歯車機構は、収納空間に位置して駆動軸の外周面に動力伝達可能に設けられた太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛み合う複数の遊星歯車と、
前記複数の遊星歯車を中心軸を中心として回転可能に支持するキャリアとしてのインナギアの端板と、
前記複数の遊星歯車に噛み合う内歯を有し、モータロータの円板部に一体状に設けられた内歯歯車とを備えていることを特徴とするオイルポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72494(P2013−72494A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212250(P2011−212250)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】