説明

オペアンプ位相補償回路及び位相補償方法

【課題】新規なオペアンプの位相補償回路及び位相補償方法を示す。
【解決手段】オペアンプの正の入力端子と、出力端子の間に、容量、または容量と抵抗を直列に接続することで、位相補償を行い、安定した動作のできるオペアンプ回路を示す。容量値、抵抗値はいずれも使用プロセスにおける、チップ面積の極端な増大につながらない範囲内の値で設定できる。また設計後に事後的に容量、容量と抵抗を追加でき、チップ外部に接続することも出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオペアンプに関し、位相補償回路を接続することで、広帯域で安定動作できるようにすることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
オペアンプのDCゲインやユニティゲイン周波数、位相余裕などの各指標はトレードオフの関係にある。半導体集積回路のチップ面積や消費電流を考慮したうえで、ゲインや周波数帯域を広げたい場合は、どうしても位相余裕が悪化し、安定動作の面で不安が出る。つまり最悪の場合、発振する危険が出る。
【0003】
そこで位相補償を行い、位相余裕を改善する方法が取られる。一般的には2段オペアンプの場合は、1段目の出力と2段目の入力の間に、容量、容量と抵抗を接続する方法が取られる。
また、出力端子とグラウンド間に、容量または容量と抵抗を接続する方法もある。
【0004】
一般に正帰還がかかると、回路が発振してしまうので、このような回路構成は採用されていなかった。しかし、正帰還と負帰還が同時にかかるような回路構成は、非特許文献1のp238などにも示されていて、必ずしも発振するというのは、適切な判断ではない。
そのような回路構成を、半導体集積回路のチップ内部で行うことも、同様である。
【0005】
またDCゲインを上げるため、オペアンプは2段構成で使用される場合が多く見られるが、回路の安定性、つまり使いやすさを考慮すると、1段構成のほうが望ましい場合もある。
【非特許文献1】馬場清太郎著 OPアンプによる実用回路設計 CQ出版社 p106〜p132
【非特許文献2】谷口研二著 CMOSアナログ回路入門 CQ出版社 p186〜p189
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1段オペアンプの場合は、1段目の出力と、2段目の入力の間に位相補償をする方法は論理的に採用できない。また出力端子とグラウンド間に位相補償する方法もまだ一般的な設計方法として、確立されていない。
【0007】
また多段オペアンプでも、一般的に、回路の外部に容量または容量と抵抗を電源ラインに接続して、ノイズ対策や位相補償を行っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、オペアンプの正の入力端子と出力端子間に位相補償回路を接続する方法を提案する。
【発明の効果】
【0009】
1段オペアンプの場合は、正の入力端子と出力端子の間に位相補償回路を接続するよりも、容量値を小さくできるので、最適な位相補償の方法だといえる。
【0010】
多段オペアンプでも回路の外部から、事後的に位相補償ができ、設計変更が簡単に可能である。
【0011】
本発明にかかる位相補償方法によって、広帯域のオペアンプが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は特許請求の範囲により定義され、実施例に限定されるものではない。したがって、オペアンプの回路の外部であろうと内部であろうと、同様に位相補償でき、また既存の回路に事後的に位相補償を施すことも出来る。さらにあらゆる種類のオペアンプに適用可能である。
【実施例1】
【0013】
CMOSプロセスでのシンメトリカルオペアンプを例に、この回路構成の効果を以下に示す。図1の回路で、電源電圧を1.8V、負荷容量を10pFとして解析したときの結果を示す。AC解析の結果、DCゲイン40.7dB、位相余裕5.5度、GBW646MHzである。したがってもうちょっと位相余裕が欲しいと考える。
【0014】
そこで図2のように、正の入力端子と出力端子に、容量を直列に接続する。AC解析の結果、DCゲイン40.7dB、位相余裕42度、GBW390MHzである。
【0015】
参考に図3のように、同じ容量値を正の入力端子とグラウンド端子に直列に接続する。AC解析の結果、DCゲイン40.7dB、位相余裕22度、GBW404MHzである。
【0016】
したがって、同じ容量値ならば、新しい回路構成のほうが良い特性を示していることがわかる。
【実施例2】
【0017】
そこで図4のように、正の入力端子と出力端子に、容量と抵抗を直列に接続する。AC解析の結果、DCゲイン40.7dB、位相余裕45度、GBW400MHzである。
【0018】
参考に図5のように、同じ容量値と抵抗値を正の入力端子とグラウンド端子に直列に接続する。AC解析の結果、DCゲイン40.7dB、位相余裕35度、GBW480MHzである。
【0019】
したがって、同じ抵抗値と容量値ならば、新しい回路構成のほうが良い特性を示していることがわかる。なおここで用いるC1の容量値及び抵抗値はすべて同じ値である。
【0020】
実施例2にかかる回路で、DC解析を行うと、消費電量が5.4mA、同相入力電圧範囲が0.25〜1.15Vとなる。
パルスを同相入力範囲で与えて、スルーレートを計算すると、立ち上がり90V/uS、立下り88.5V/uSとなる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
容量は、製造プロセスや回路構成にもよるが、数ピコファラドでそれほどの半導体集積回路のチップ面積の増大や、寄生容量の増大にもつながらない。したがって効果的な回路構成だといえる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の前提となる、位相補償の無い回路図。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる回路図。
【図3】本発明の第1の実施の形態と比較用の回路図。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかる回路図。
【図5】本発明の第2の実施の形態と比較用の回路図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペアンプの正の入力端子と出力端子間に容量を接続することで位相補償をした、オペアンプ。
【請求項2】
オペアンプの正の入力端子と出力端子間に容量を接続する、オペアンプの位相補償方法。
【請求項3】
請求項2にかかる方法で位相補償をした、オペアンプ。
【請求項4】
オペアンプの正の入力端子と出力端子間に容量と抵抗を直列に接続することで、位相補償をした、オペアンプ。
【請求項5】
オペアンプの正の入力端子と出力端子間に容量と抵抗を直列に接続する、オペアンプの位相補償方法。
【請求項6】
請求項4にかかる方法で位相補償をした、オペアンプ。
【請求項7】
オペアンプの正の入力端子と出力端子間に容量を接続する、オペアンプのノイズのフィルタリング方法。
【請求項8】
オペアンプの正の入力端子と出力端子間に容量と抵抗を接続する、オペアンプのノイズのフィルタリング方法。
【請求項9】
事後的に既存のオペアンプの回路外部において、正の入力端子と出力端子間に容量を接続し、位相補償する、オペアンプの設計変更方法。
【請求項10】
事後的に既存のオペアンプの回路外部において、正の入力端子と出力端子間に容量と抵抗を直列に接続し、位相補償する、オペアンプの設計変更方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−246985(P2009−246985A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−123575(P2009−123575)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(509142427)
【Fターム(参考)】