説明

オルガノポリシロキサン系組成物および硬化物。

【課題】
成型加工性、透明性、耐熱性、ガスバリア性に優れるオルガノポリシロキサン系組成物および硬化物を提供する。
【解決手段】
(A)アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に対して、ヒドロシリル基を有する化合物(b)を変性して得られた多面体構造ポリシロキサン変性体、
(B)環状オレフィン化合物、
からなるオルガノポリシロキサン系組成物により成型加工性、透明性、耐熱性、ガスバリア性に優れる組成物および硬化物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型加工性、透明性、耐熱性、ガスバリア性に優れるオルガノポリシロキサン系組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン組成物は、耐熱性、耐寒性、耐候性、耐光性、化学的安定性、電気特性、難燃性、耐水性、透明性、着色性、非粘着性、非腐食性に優れている。中でも、多面体構造を有するポリシロキサンで構成された組成物は、その特異的な化学構造から、さらに優れた耐熱性、耐光性、化学的安定性、低誘電性等を示すことが知られており、その応用が期待されている。しかし、ポリシロキサン組成物は優れた特性を持つ一方で、一般にガスバリア性が低いといった問題点を有しており、例えば、特許文献1において、ガスバリア性が低いポリシロキサン系組成物を封止材として用いた場合、リフレクターが硫化物によって黒色化すると記載されている。
【0003】
また、特許文献2において、多面体構造を有するポリシロキサン変性体を用いた液状組成物が開示されているが、この組成物は、成型加工性、透明性、接着性に優れているものの、ガスバリア性についてはさらなる改良の余地も残されていた。
一方、環状オレフィンポリマーは透明性、強度、耐熱性、ガスバリア性に優れており、光学用途の機能性プラスチックとして注目されている。この環状オレフィンとポリシロキサンの機能を併せ持つ材料として、例えば、特許文献3で、ヒドロシリル基を持つシロキサンと、ポリシクロオレフィン官能性ポリシロキサンからなる硬化性組成物が開示されている。しかし、該当技術で得られる硬化物は、いずれも淡黄色であり、透明性に問題があった。
【0004】
上記のように、ポリシロキサン及び、環状オレフィンの機能を併せ持つ材料の開示は見られず、新たな材料の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206124
【特許文献2】WO08/010545
【特許文献3】特開2007−77252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成型加工性、透明性、耐熱性、ガスバリア性に優れるオルガノポリシロキサン系組成物および硬化物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、
(A)アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に対して、ヒドロシリル基を有する化合物(b)を変性して得られた多面体構造ポリシロキサン変性体、
(B)環状オレフィン化合物、
からなるオルガノポリシロキサン系組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
1)(A)アルケニル基有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に対して、ヒドロシリル基を有する化合物(b)を変性して得られた多面体構造ポリシロキサン変性体、
(B)環状オレフィン化合物、
からなるオルガノポリシロキサン系組成物。
2)前記(B)成分が、炭素‐炭素2重結合を2個以上有する環状オレフィン化合物であることを特徴とする1)に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
3)前記(B)成分が、平均分子量1000以下であることを特徴とする1)または2)に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
4)多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、温度20℃において、液状であることを特徴とする、1)〜3)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
5)ヒドロシリル基を有する化合物(b)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンであることを特徴とする、1)〜4)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
6)ヒドロシリル基を有する化合物(b)が、分子末端にヒドロシリル基を含有する直鎖状シロキサンであることを特徴とする、1)〜5)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
7)アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、式
[ARSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、1)〜6)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
8)多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)のアルケニル基1個あたりSi原子に直結した水素原子が2.5〜20個になる範囲で、ヒドロシリル基を有する化合物(b)を過剰量加えて変性し、未反応のヒドロシリル基を有する化合物(b)を留去して得られることを特徴とする、1)〜7)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
9)多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有することを特徴とする、1)〜8)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
10)多面体構造ポリシロキサン変性体(A)成分が、
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0008】
【化1】



【0009】
【化2】




【0010】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である;Rは、アルキル基、もしくはアリール基であり、同一であっても異なっていてもよい。))を構成単位とすることを特徴とする1)〜9)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
11)ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする、1)〜10)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
12)硬化遅延剤を含有することを特徴とする、1)〜11)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
13)接着性付与剤を含有することを特徴とする、1)〜12)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
14)無機フィラーを含有することを特徴とする、1)〜13)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
15)1)〜14)のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物を硬化して得られる硬化物。
16)周波数10Hzで測定した損失正接(tanδ)の極大値が20℃以上の温度範囲内にあることを特徴とする15)に記載の硬化物。
17)硬化後の透湿度が30/g/m/24h以下であることを特徴とする16)に記載の硬化物。
【発明の効果】
【0011】
成型加工性、透明性、耐熱性、ガスバリア性に優れるオルガノポリシロキサン系組成物および硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)>
本発明におけるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)は、分子中にアルケニル基を含有する多面体骨格を有するポリシロキサンであれば、特に限定はない。具体的に、例えば、以下の式
[RSiO3/2[RSiO3/2
(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;Rはアルケニル基、または、アルケニル基を有する基;Rは、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物を好適に用いることができ、さらには、式
[ARSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物が好ましいものとして例示される。
【0013】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0014】
は、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0015】
は、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるRとしては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0016】
aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、化合物の取り扱い性や得られる硬化物の物性から、2以上、さらには3以上が好ましい。また、前記数値bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。
aとbの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる硬化物の安定性の観点から、6〜12、さらには、6〜10であることが好ましい。
【0017】
アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。合成方法としては、例えば、RSiX(式中Rは、上述のR、Rを表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、RSiXの加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、多面体構造ポリシロキサンを合成する方法も知られている。
【0018】
その他にも、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能である。
【0019】
<ヒドロシリル基を有する化合物(b)>
本発明で用いるヒドロシリル基を有する化合物は、分子中に1個以上のヒドロシリル基を有していれば特に制限はないが、得られる多面体構造ポリシロキサン変性体の透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を有するシロキサン化合物であることが好ましく、さらには、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状ポリシロキサンであることが好ましい。これらヒドロシリル基を有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ヒドロシリル基を含有する直鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。
【0021】
特に、ヒドロシリル基を含有する直鎖状ポリシロキサンとしては、変性させる際の反応性や得られる硬化物の耐熱性、耐光性等の観点から、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリシロキサン、さらにはジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリジメチルシロキサンを好適に用いることができ、具体的に例えば、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。
【0022】
ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
【0023】
本発明における環状シロキサンとしては、工業的入手性および変性させる場合の反応性、あるいは、得られる硬化物の耐熱性、耐光性、強度等の観点から、具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを好適に用いることができる。
【0024】
本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子、ビニル基およびメチル基から構成されることが好ましい。
【0025】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明では、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の合成、および、該化合物を用いたオルガノポリシロキサン系組成物を硬化させる際に、ヒドロシリル化触媒を用いる。
【0026】
本発明で用いるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを用いることができ特に制限はない。
【0027】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0028】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0029】
<多面体構造ポリシロキサン変性体(A)>
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、ヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)とヒドロシリル基を有する化合物(b)とのヒドロシリル化反応により合成することができる。この際、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)のアルケニル基は、すべて反応する必要はなく、一部残存していてもよい。
【0030】
ヒドロシリル基を有する化合物の添加量は、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)のアルケニル基の個数1個あたり、Si原子に直結した水素原子の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)のハンドリング性が劣り、多すぎると、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0031】
また、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の合成時には、過剰量のヒドロシリル基を有する化合物(b)を存在させるため、例えば減圧・加熱条件下にて、未反応のヒドロシリル基を有する化合物(b)を取り除くことが好ましい。
【0032】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、アルケニル基含有多面体構造シロキサン(a)のアルケニル基1モルに対して10−1〜10−10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−4〜10−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多すぎると、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる硬化物の耐光性が低下する恐れがあり、また、硬化物が発泡する恐れもある。また、ヒドロシリル化触媒が少なすぎると、反応が進まず、目的物が得られない恐れがある。
【0033】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する恐れがある。
【0034】
このようにして得られた多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、各種化合物、特にはシロキサン系化合物との相溶性を確保でき、さらに、分子内にヒドロシリル基が導入されていることから、各種炭素-炭素2重結合を有する化合物と反応させることが可能となる。具体的には、後述の環状オレフィン化合物(B)と反応させることにより、硬化物を得ることができる。この際、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)におけるヒドロシリル基は、分子中に少なくとも3個含有することが好ましい。ヒドロシリル基が3個未満である場合、得られる硬化物の強度が不十分となる恐れがある。
【0035】
また、本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、温度20℃において液状とすることも可能である。このような液状の多面体構造ポリシロキサン変性体(A)は、例えば、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に、ヒドロシリル基を有する環状シロキサンまたは直鎖状ポリシロキサンで変性することで得ることができる。多面耐構造ポリシロキサン変性体(A)を液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0036】
本発明における多面体構造ポリシロキサン変性体(A)成分としては、
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0037】
【化3】




【0038】
【化4】





【0039】
(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である。;Rは、アルキル基、もしくはアリール基であり、同一であっても異なっていてもよい。))が耐熱性、耐光性、あるいは、得られる硬化物の強度の観点から、好ましい例として挙げられる。
【0040】
<(B)環状オレフィン化合物>
本発明における(B)成分である環状オレフィン化合物は、前記(A)成分とヒドロシリル化反応により硬化する。本発明における(B)成分は(A)成分との相溶性が良く、(A)成分および(B)成分を用いたオルガノポリシロキサン系組成物は成型加工性に優れている。そのため、(A)成分および(B)成分を用いたオルガノポリシロキサン系組成物を硬化させることで、硬化ムラのない透明な硬化物が得られる。また、(B)成分を硬化材として用いることで、耐熱性が高く、ガスバリア性が高い材料が得られる。
【0041】
本発明における(B)成分は、環状オレフィン化合物であればよいが、内部オレフィンを含む炭素-炭素2重結合が2個以上有することがガスバリア性の観点から好ましく、内部オレフィン以外に、末端オレフィンを有していてもよい。
また、本発明における(B)成分は、平均分子量が1000以下であることが(A)成分との相溶性の観点から好ましい。
【0042】
このような環状オレフィン化合物として、脂肪族環状ポリエン化合物、置換脂肪族環状オレフィン化合物等が挙げられる。
【0043】
脂肪族環状ポリエン化合物として、具体的に例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等が挙げられる。
【0044】
置換脂肪族環状オレフィン化合物として、具体的に例えば、4−ビニル−1−シクロヘキセン、3−ビニル−1−シクロヘキセン、5−ビニルノルボルネン、4−ビニル−1−シクロペンテン、4−ビニル−1−シクロヘプテン、4−ビニル−1−シクロオクテン、5−ビニル−1−シクロオクテン、4−アリル−1−シクロヘキセン、3−アリル−1−シクロヘキセン、5−アリルノルボルネン、4−アリル−1−シクロペンテン、4−アリル−1−シクロヘプテン、4−アリル−1−シクロオクテン、5−アリル−1−シクロオクテン等が挙げられる。
【0045】
中でも、入手性、相溶性、硬化物の透明性、ガスバリア製の観点から、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセンが好ましい例として挙げられる。
これらは、単独で用いても良く、2種類以上併用して用いてもよい。
【0046】
本発明における(B)成分の添加量は種々設定できるが、炭素-炭素2重結合1個あたり、多面体構造ポリシロキサン系化合物に含まれるSi原子に直結した水素原子が0.3〜5個、好ましくは、0.5〜3個となる割合で添加されることが望ましい。炭素-炭素2重結合の割合が少なすぎると、発泡等による外観不良が生じやすくなり、また、多すぎると硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0047】
<硬化触媒>
本発明では、オルガノポリシロキサン系組成物を硬化させる際に、ヒドロシリル化触媒を用いる。
【0048】
本発明で用いるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを用いることができ特に制限はない。
【0049】
具体的には例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)34、Pt〔P(OBu)34(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0050】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。
【0051】
<硬化遅延剤>
硬化遅延剤は、本発明のオルガノポリシロキサン系組成物の保存安定性を改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整するための成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0052】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0053】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0054】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0055】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0056】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0057】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0058】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10−1〜10モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0059】
<接着性付与剤>
接着性付与剤は本発明におけるオルガノポリシロキサン系組成物と基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものであれば特に制限はないが、シランカップリング剤が好ましい例として例示できる。
【0060】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0061】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0062】
シランカップリング剤の添加量としては、(A)成分と(B)成分の混合物100重量部に対して、0.05〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0063】
本発明においては、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることができる。接着性促進剤としては、エポキシ含有化合物、エポキシ樹脂、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
<無機フィラー>
本発明のオルガノポリシロキサン系組成物は、必要に応じて無機フィラーを添加することができる。
【0065】
本発明のオルガノポリシロキサン系組成物の組成分として無機フィラーを用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
【0066】
無機フィラーは、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0067】
無機フィラーは、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0068】
前記カップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0069】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。
【0070】
上記無機フィラーをオルガノポリシロキサン系組成物の組成分として用いることにより、得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性等の諸物性を改善することができる。
【0071】
無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種用いることができる。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、平均粒径が0.005〜100μmであることが好ましく、さらには0.01〜50μmであることが好ましい。同様に、比表面積についても、特に限定されない。
【0072】
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、(A)成分と(B)成分の混合物100重量部に対して、1〜1000重量部、よりこの好ましくは、5〜500重量部、さらに好ましくは、10〜300重量部である。無機フィラーの添加量が多すぎると、流動性が悪くなる場合があり、少ないと、得られる成型体の物性が不十分となる場合がある。
【0073】
無機フィラーの混合の順序としては、特に限定されないが、貯蔵安定性が良好になりやすいという点においては、(B)成分に混ぜた後、(A)成分を混合する方法が望ましい。また、反応成分である(A)成分、(B)成分がよく混合され安定した成形物が得られやすいという点においては、(A)成分、(B)成分を混合したものに、無機フィラーを混合することが好ましい。
【0074】
これら無機フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下に行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
【0075】
<オルガノポリシロキサン系組成物および硬化物>
本発明のオルガノポリシロキサン系組成物は、多面体構造ポリシロキサン変性体(A)に、環状オレフィン化合物(B)、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤、接着性付与剤を加えることにより得ることができる。本発明のオルガノポリシロキサン系組成物は、液状樹脂組成物として取り扱うことが可能であり、成型加工性に優れる。この液状組成物を、型、パッケージ、基板等に流し込み、加熱して硬化させることで容易に成型体を得ることができる。本発明のオルガノポリシロキサン系組成物によって得られる成型体は、透明性、耐熱、耐光性、ガスバリア性に優れるに優れる。
【0076】
硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高くなり過ぎると、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低すぎると硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
本発明においては、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒を追加して用いることができる。
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及びヒドロシリル基の量、その他、本願組成物のその他の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜12時間、好ましくは10分〜8時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0077】
本発明におけるオルガノポリシロキサン系組成物は、具体的に例えば、パッケージや基板などに、注入あるいは塗布して使用することが可能である。注入あるいは塗布した後、上述の硬化条件にて、硬化させることで、用途に応じた成型体を容易に得ることができる。
【0078】
また、本発明のオルガノポリシロキサン系組成物には、必要に応じて蛍光体、着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0079】
本発明に用いるオルガノポリシロキサン系組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりしてもよい。
【0080】
本発明のオルガノポリシロキサン系組成物は、成形体として使用することができる。成形方法としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、液状射出成形、注型成形などの任意の方法を使用することができる。
本発明によるオルガノポリシロキサン系組成物から得られる成形体は、耐熱性、耐光性に優れ、光学材料用組成物として用いることができる。ここで言う光学材料とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザーなどの光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。
【0081】
本発明において得られる変性体および組成物の用途としては、具体的には、カラーフィルター、レジスト材料、液晶ディスプレイ分野における基板材料、パッシベーション膜、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料が例示される。
【0082】
また、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されるカラーPDP(プラズマディスプレイ)の封止剤、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、LED表示装置に使用されるLED素子のモールド材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイにおける基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム。
【0083】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイにおける前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、フィールドエミッションディスプレイ(FED)における各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤が例示される。
【0084】
光記録分野では、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤が例示される。
【0085】
光学機器分野では、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部が例示される。また、ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダーが例示される。またプロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止剤、接着剤などが例示される。光センシング機器のレンズ用材料、封止剤、接着剤、フィルムなどが例示される。
【0086】
光部品分野では、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止剤、接着剤などが例示される。
光受動部品、光回路部品ではレンズ、導波路、LED素子の封止剤、接着剤などが例示される。
光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0087】
光ファイバー分野では、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイドなど、工業用途のセンサー類、表示・標識類など、また通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバーが例示される。
【0088】
半導体集積回路周辺材料では、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料が例示される。
【0089】
自動車・輸送機分野では、自動車用のランプリフレクタ、ベアリングリテーナー、ギア部分、耐蝕コート、スイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、各種内外装品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、自動車用防錆鋼板、インテリアパネル、内装材、保護・結束用ワイヤーネス、燃料ホース、自動車ランプ、ガラス代替品が例示される。また、鉄道車輌用の複層ガラスが例示される。また、航空機の構造材の靭性付与剤、エンジン周辺部材、保護・結束用ワイヤーネス、耐蝕コートが例示される。
【0090】
建築分野では、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池周辺材料が例示される。農業用では、ハウス被覆用フィルムが例示される。
【0091】
次世代の光・電子機能有機材料としては、次世代DVD、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子、光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止剤、接着剤などが例示される。
【0092】
<透湿度>
本発明のオルガノポリシロキサン系組成物を用いた硬化後の透湿度は30g/m/24h以下であることがガスバリア性の観点から好ましい。
なお、透湿度とは以下の方法に従って算出することができる。
【0093】
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)1gをロの字型内に充填しこれを試験体とする。さらに上部に5cm角の評価用硬化物(2mm厚)を固定し、恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度、90%RHで24時間養生する。下記式に従い、透湿度を算出することができる。
【0094】
透湿度(g/m/24h)={(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))}×10000/9cm
尚、ここに記載の試験体総重量とは、5cm角の板ガラス、および5cm角のポリイソブチレンゴムシート、および塩化カルシウム、および5cm角の評価用硬化物を含んだ総重量である。また、ここで使用したポリイソブチレンゴムは、同様の透湿度の試験の結果、0g/m/24hであることが確認されている。
【0095】
硬化後の透湿度が30g/m/24h以下であることにより水分、更には、酸素、硫化水素等のガス透過が抑制されて、例えば、LEDにおける銀リードフレームや、リフレクター等の腐食が生じにくくなるなど、耐久性が向上する効果が期待できる。
【0096】
<粘弾性(損失正接の極大値:℃)>
本発明におけるオルガノポリシロキサン系組成物は特定の粘弾性挙動を示すものである。一般に角周波数ωの正弦波形震動応力(歪)を受けた場合、歪と応力における複素弾性率はE*=E’+iE”で示される。ここでE’は貯蔵弾性率、E”は損失弾性率である。応力と歪の位相差がδである場合、損失正接(tanδ)は、E”/E’で表される。
【0097】
本発明におけるオルガノポリシロキサン系組成物は、20℃以上において、少なくとも1つの損失正接の極大値を有する。損失正接の極大値は、30℃以上の範囲内にあることがより好ましく、40℃以上の範囲内にあることがさらに好ましい。低温に極大値を有すると、硬化物の耐熱性が低下し、ガスバリア性が低下する場合がある。
【実施例】
【0098】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0099】
(組成物の相溶性)
オルガノポリシロキサン系組成物を配合後、30分間室温で放置しても分離することなく、透明であるものは○、配合後、白濁し分離するものは×とした。
【0100】
(硬化物形状)
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に、7cm角のシリコーンゴムシート(2mm厚、ロの字型になるように内部を5cm角に切り取ったもの)を固定した治具を作製した。そこにオルガノポリシロキサン系組成物を流し込み、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させることで、2mm厚の硬化物を作成した。得られた硬化物形状を目視で確認し、透明で皺による硬化ムラのないものは○、皺による硬化ムラがあるものは×とした。
【0101】
(透明性)
10cm×10cmの板ガラス2枚を純水で洗浄し、乾燥させた。その後、フッ素系離型剤(ダイキン工業社製ダイフリー、GA6010)でスプレーし、キムワイプで均一に塗布した後、余剰分を除去した。コの字型に切った2mm厚のシリコーンゴムにテフロン(登録商標)シールを巻いた素ペーサーを2枚の上記板ガラスで挟んでクリップで固定し、150℃、1h加熱乾燥してガラスセルを作成した。
このガラスセルにオルガノポリシロキサン系組成物を流し込み、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させることで、2mm厚の硬化物を作成した。
初期の指標として、硬化後のサンプルを目視により確認し、透明であるものは○、透明でないものは×とした。
【0102】
透明性(耐熱後)の指標として、上記、ガラスセルで作成した2mm厚の硬化物を、さらに対流式オーブンにて120℃×50時間加熱した。この硬化物を放冷後、目視により、硬化物が着色せず透明であるものは○、着色や透明でないものは×とした。
【0103】
(光線透過率)
10cm×10cmの板ガラス2枚を純水で洗浄し、乾燥させた。その後、フッ素系離型剤(ダイキン工業社製ダイフリー、GA6010)でスプレーし、キムワイプで均一に塗布した後、余剰分を除去した。コの字型に切った2mm厚のシリコーンゴムにテフロン(登録商標)シールを巻いた素ペーサーを2枚の上記板ガラスで挟んでクリップで固定し、150℃、1h加熱乾燥してガラスセルを作成した。
このガラスセルにオルガノポリシロキサン系組成物を流し込み、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させることで、2mm厚の硬化物を作成した。
この2mm厚の硬化物を、試紫外可視分光光度計(日本分光社製 JASCO JSV 560)により、空気中での600nmの光線透過率を測定した値とした。
【0104】
(透湿度)
オルガノポリシロキサン系組成物を型に5cm角の型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて厚さ2mmの試料を作成した。この硬化物を室温25℃、湿度55%RHの状態で24時間養生した。
本発明における透湿度とは以下の方法に従って算出したものである。
【0105】
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)1gをロの字型内に充填しこれを試験体とした。さらに上部に5cm角の評価用硬化物(2mm厚)を固定し、恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度、90%RHで24時間養生した。下記式に従い、透湿度を算出した。
【0106】
透湿度(g/m/24h)={(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))}×10000/9.0cm
尚、ここに記載の試験体総重量とは、5cm角の板ガラス、および5cm角のポリイソブチレンゴムシート、および塩化カルシウム、および5cm角の評価用硬化物を含んだ総重量である。また、ここで使用したポリイソブチレンゴムは、同様の透湿度の試験の結果、0g/m/24hであることが確認されている。
【0107】
<損失正接の極大値(℃)>
(動的粘弾性測定用サンプル作成)
封止層を形成させる硬化性組成物を型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×6時間熱硬化させて、長さ35mm、幅5mm、厚さ2mmのサンプルを作成した。
【0108】
(動的粘弾性測定)
上記の通り作成したサンプルの動的粘弾性を、UBM社製動的粘弾性測定装置ReogelE4000を用い、測定温度−40℃〜150℃、昇温速度4℃毎分、歪み4μメートル、周波数10Hz、チャック間25mm、引張モードで測定した。測定温度−40℃〜150℃の間で、損失正接(tanδ)の極大値(℃)を求めた。
【0109】
(製造例1)
48%コリン水溶液1262gにテトラエトキシシラン1083gを加え、室温で2時間激しく攪拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、攪拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1000mLを加え、均一溶液とした。
【0110】
ジメチルビニルクロロシラン537g、トリメチルシリクロリド645gおよびヘキサン1942mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基3個を有するアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンを白色固体として536g得た。
【0111】
(製造例2)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン10.0gをトルエン15.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)1.93μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン15.47g、トルエン15.47gの溶液にゆっくりと滴下し、95℃で3時間反応させ、室温まで冷却した。
【0112】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体11.0gを得た。
【0113】
(製造例3)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であるトリス(ビニルジメチルシロキシ)ペンタキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン20.0gをトルエン40.0gに溶解させ、さらに白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt-VTSC-3X)3.85μLを溶解させた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン20.62g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン11.52g、トルエン32.14gの溶液にゆっくりと滴下し、95℃で3時間反応させ、室温まで冷却した。
【0114】
反応終了後、トルエンと過剰量加えた1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン変性体29.0gを得た。
【0115】
(実施例1)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、ビニルノルボルネン(TCI製、重量平均分子量120)0.96gを加え撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、オルガノポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたオルガノポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0116】
(実施例2)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、ジシクロペンタジエン(TCI製、重量平均分子量132)1.06gを加え撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、オルガノポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたオルガノポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0117】
(実施例3)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、4−ビニル−1−シクロヘキセン(TCI製、重量平均分子量108)0.86gを加え撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、オルガノポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたオルガノポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。
そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0118】
(実施例4)
製造例3で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、ビニルノルボルネン(TCI製、重量平均分子量120)0.79gを加え撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、オルガノポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたオルガノポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0119】
(実施例5)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、ビニルノルボルネン(TCI製、重量平均分子量120)0.96g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニング製、SH6040)0.29、を加え、さらに、エチニルシクロヘキサノールを0.21μl、マレイン酸ジメチルを0.1μl添加し撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、オルガノポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたオルガノポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0120】
(実施例6)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、ビニルノルボルネン(TCI製、重量平均分子量120)0.96gを加え混合した。そこに、一次平均粒径7nmでBET比表面積が260(m/g)であるヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、商品名アエロジルR812)0.18g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レダウコーニング製、SH6040)0.29g、さらに、エチニルシクロヘキサノールを0.21μl、マレイン酸ジメチルを0.1μl添加し撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、オルガノポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたオルガノポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0121】
(比較例1)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、トリアリルイソシアヌレート(重量平均分子量249)1.32gを加え、さらに、エチニルシクロヘキサノールを0.21μl、マレイン酸ジメチルを0.1μl添加し撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0122】
(比較例2)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、ジアリルイソシアヌレート(重量平均分子量223)1.23gを加え、さらに、エチニルシクロヘキサノールを0.21μl、マレイン酸ジメチルを0.1μl添加し撹拌した後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、ポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0123】
(比較例3)
製造例2で得た多面体構造ポリシロキサン変性体5.00gに、ビニル基を両末端に含有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(クラリアント製、商品名MVD8V、重量平均分子量780、Vi価数2.56mol/kg)8.33gを加え、良く混合することによりポリシロキサン系組成物を得た。このようにして得られたポリシロキサン系組成物を型枠およびLEDパッケージに流し込み、80℃で2h、100℃で1h、150℃で6h加熱して硬化させ、評価用成形体を得た。そして、各評価項目にしたがって、評価した結果を表1に記載した。
【0124】
【表1】

【0125】
上記のように、本発明のオルガノポリシロキサン系組成物は成型加工性に優れており、また本発明のオルガノポリシロキサン系組成物より得られた成型体は、硬化ムラがなく、透明性、耐熱性、ガスバリア性に優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)に対して、ヒドロシリル基を有する化合物(b)を変性して得られた多面体構造ポリシロキサン変性体、
(B)環状オレフィン化合物、
からなるオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、炭素‐炭素2重結合を2個以上有する環状オレフィン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、平均分子量1000以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項4】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、温度20℃において、液状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項5】
ヒドロシリル基を有する化合物(b)が、ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項6】
ヒドロシリル基を有する化合物(b)が、分子末端にヒドロシリル基を含有する直鎖状シロキサンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項7】
アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)が、式
[ARSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)
で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項8】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、アルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン系化合物(a)のアルケニル基1個あたりSi原子に直結した水素原子が2.5〜20個になる範囲で、ヒドロシリル基を有する化合物(b)を過剰量加えて変性し、未反応のヒドロシリル基を有する化合物(b)を留去して得られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項9】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)が、分子中に少なくとも3個のヒドロシリル基を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項10】
多面体構造ポリシロキサン変性体(A)成分が、
[XRSiO−SiO3/2][RSiO−SiO3/2]
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Rは、アルキル基またはアリール基;Rは、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【化1】



【化2】




(lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子である;Rは、アルキル基、もしくはアリール基であり、同一であっても異なっていてもよい。))を構成単位とすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項11】
ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項12】
硬化遅延剤を含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項13】
接着性付与剤を含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項14】
無機フィラーを含有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン系組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項16】
周波数10Hzで測定した損失正接(tanδ)の極大値が20℃以上の温度範囲内にあることを特徴とする請求項15に記載の硬化物。
【請求項17】
硬化後の透湿度が30/g/m/24h以下であることを特徴とする請求項16に記載の硬化物。

【公開番号】特開2012−52055(P2012−52055A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197330(P2010−197330)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】