説明

オレキシン受容体阻害剤としての3−ヘテロアリール(アミノ又はアミド)−1−(ビフェニル又はフェニルチアゾリル)カルボニルピペリジン誘導体

本発明は式(I)のピペリジン化合物、それらの薬学的に許容される塩、及びそのような化合物の医薬、特にオレキシン受容体拮抗薬としての使用に関する:


式中
X−Rは-N(H)-ピリミジニルを表し、当該ピリミジニルは未置換であるか、若しくは1個の置換基により置換されており、当該置換基は(C1−4)アルキル若しくはハロゲンから選択され、又は
X−Rは-NH−C(O)-ヘテロシクリルを表し、当該ヘテロシクリルはベンゾフラニル及びイミダゾ[2,1−b]−チアゾリルから選択され、当該ヘテロシクリルは未置換であるか、若しくは1,2若しくは3個の置換基により独立に置換されており、当該置換基は、独立に(C1−4)アルキルから選択され;
Aはフェニル−又はチアゾリル−基を表し、当該フェニル又はチアゾリルは未置換であるか、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換されており;
Bはフェニル−基を表し、当該フェニルは未置換であるか、又は1若しくは2個の置換基により置換されており、当該置換基は、独立に(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル、シアノ及びハロゲンから成る群より選択される。
A、B、n、X及びRが明細書中に記載された意味を有する、式(I)の3-アザ-ビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体、それらの塩及びオレキシン受容体拮抗薬としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の新規なピペリジン化合物および医薬としてのこれらの使用に関する。本発明はまた上記化合物の製造方法、式(I)の化合物を1又は2以上含有する医薬組成物、及び特にオレキシン受容体拮抗薬としてのそれらの使用を含む関連した側面に関する。
【背景技術】
【0002】
オレキシン類(オレキシンAまたはOX−AおよびオレキシンBまたはOX−B)は、二つの研究グループによって1998年に発見された新規な神経ペプチド類であり、オレキシンAは、33個のアミノ酸ペプチドであり、オレキシンBは、28個のアミノ酸ペプチドである(例えば、非特許文献1参照)。オレキシン類は、外側視床下部の離散性神経細胞内で産生され、G蛋白質共役型受容体(OX及びOX受容体)に結合する。オレキシン−1受容体(OX)はOX−Aに対して選択的であり、オレキシン−2受容体(OX)はOX−Bと同様にOX−Aにも結合することができる。オレキシン類は、ラットにおいて食物消費を刺激し、食行動を調節する中枢フィードバック機構におけるこれらペプチド類のメディエーターとしての生理学的役割を示唆している(例えば、非特許文献1参照)。他方、オレキシン類は睡眠状態および覚醒状態を調節しており、ナルコレプシー(睡眠発作)患者に対する潜在的な新規治療への道を開くものであるとも提唱されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
オレキシン受容体は哺乳動物の脳に見出され、文献から知られているように、気分変調障害、気分障害、精神病性障害及び不安障害;糖尿病及び食欲、味覚、摂食又は摂水(drinking)障害;視床下部疾患;生物リズムおよび概日リズム障害;神経障害、神経障害性疼痛、下肢静止不能症候群等の疾患に関連した睡眠障害;精神障害に関連する不眠症;睡眠時無呼吸症;ナルコレプシー;突発性不眠症;錯眠;良性前立腺肥大;健常者並びに精神及び神経障害におけるすべての痴呆及び認知機能障害;ならびに一般のオレキシン系機能障害に関連するその他の疾患等の病理学に多くの密接な関係をもっている可能性がある。
【0004】
本発明は、ピペリジン誘導体を提供し、これらはヒトオレキシン受容体の非ペプチド性拮抗薬である。これらの化合物は、特に、例えば摂食障害、摂水障害(drinking disorders)、睡眠障害又は精神及び神経障害における認知障害の治療における利用可能性を有している。
【0005】
これまでに、OXかまたはOXのどちらか、あるいは同時に両方の受容体に拮抗する能力を有するいくつかの低分子量化合物が知られている。オレキシン受容体拮抗薬として有用なピペリジン誘導体が特許文献に開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ナトリウム・チャンネルの阻害が有効な疾患に有用なニトロ化複素環式化合物が、欧州特許に記載されている(例えば、特許文献2参照)。ヒスタミン−3受容体拮抗薬として有用な1,3−置換シクロアミノ誘導体が、特許文献に記載されている(例えば、特許文献3参照)。
【非特許文献1】Sakurai T.ら, Cell, 1998, 92, 573-585
【非特許文献2】Chemelli R.M.ら, Cell, 1999, 98, 437-451
【特許文献1】国際公開第01/96302号
【特許文献2】欧州特許第1484327号
【特許文献3】国際公開第2006/011042号
【発明の開示】
【0007】
i) 本発明は式(I)の化合物からなる:
【化1】

式中
X−Rは-N(H)-ピリミジニルを表し、当該ピリミジニルは未置換であるか、若しくは1個の置換基により置換されており、当該置換基は(C1−4)アルキル若しくはハロゲンから選択され、又は
X−Rは-NH−C(O)−ヘテロシクリルを表し、当該ヘテロシクリルはベンゾフラニル及びイミダゾ[2,1−b]−チアゾリルから選択され、当該ヘテロシクリルは未置換であるか、若しくは1,2若しくは3個の置換基により独立に置換されており、当該置換基は、独立に(C1−4)アルキルから選択され;
Aはフェニル−又はチアゾリル−基を表し、当該フェニル又はチアゾリルは未置換であるか、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換されており;
Bはフェニル−基を表し、当該フェニルは未置換であるか、又は1若しくは2個の置換基により置換されており、当該置換基は、独立に(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル、シアノ及びハロゲンから成る群より選択される。
【0008】
本特許出願において、矢印は記載された基の結合位置を示す。例えば、下記の基
【化2】

は、5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−イル基である。
【0009】
式(I)の化合物は、1または2以上の不斉炭素原子などの、1または2以上のキラルまたは不斉中心を含んでいてもよい。従って、式(I)の化合物は、立体異性体の混合物として、または好ましくは純粋な立体異性体として存在してもよい。立体異性体の混合物は当業者に知られた方法で分離してもよい。
【0010】
ハロゲンという用語は、フッ素、塩素又は臭素、好ましくはフッ素又は塩素を意味する。
【0011】
(C1−4)アルキルという用語は、単独で、または組み合わせて、1から4の炭素原子をもつ、直鎖又は分枝鎖アルキル基を意味する。(C1−4)アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec.−ブチル又はtert.−ブチルである。好ましくはメチル又はエチルである。
【0012】
(C1−4)アルコキシという用語は、単独で、または組み合わせて、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec.−ブトキシ又はtert.−ブトキシ等の、用語(C1−4)アルキルが前記の意味を有する式(C1−4)アルキル−O−の基を意味する。好ましくはメトキシ又はエトキシである。
【0013】
フェニル基は未置換であるか、又は1若しくは2個の置換基により置換されており、当該置換基は、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル、シアノ及びハロゲンから成る群より独立に選択される。
【0014】
Aがフェニルを表す場合には、この用語は、好ましくは、未置換の、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換されたフェニル基を意味する。特に、フェニル基は未置換である。上記の置換基に加えて、基Aは置換基Bによっても置換されており、Bは、好ましくは、Aを分子の残りの部分に結合させるカルボニル基の結合位置に対して、オルト位に結合する。
【0015】
Bがフェニルを表す場合には、この用語は、好ましくは、未置換の、又は1又は2個の置換基により置換され、当該置換基が(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル、シアノ及びハロゲンから成る群より独立に選択されたフェニル基を意味する。より好ましくは、置換基は、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル及びハロゲンから成る群より独立に選択される。さらに好ましい態様において、置換基は、メチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメチル、フッ素及び塩素から成る群より独立に選択される。
【0016】
A及びBが共にフェニルを表す場合には、組み合わせA−Bは、好ましくは、Aが未置換であり、Bが未置換であるか、又は1、2又は3個の置換基により置換され、当該置換基が(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル及びハロゲン、特に(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ及びハロゲンから成る群より独立に選択されるビフェニル基である。Bの置換基のさらに好ましい例は、メチル、メトキシ及びフッ素である。
【0017】
そのようなビフェニル基A-Bの例は:
【化3】

である。
【0018】
基Aに対して定義したチアゾリル−基は、未置換であってもよく、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換されていてもよい。好ましくは、チアゾリル−基は、1個のメチルにより置換される。上記の置換基に加えて、基Aは置換基Bによっても置換されており、Bは、好ましくは、Aを分子の残りの部分に結合させるカルボニル基の結合位置に対して、オルト位に結合する;最も好ましくは、基A−CO−はチアゾール−4−カルボニル−5−イル基である。
【0019】
Aがチアゾリル−基を表し、Bがフェニル−基を表す例は;
【化4】

である。
【0020】
Xが基NH−C(O)を表す場合において、当該基のカルボニル部分は、好ましくはRに結合する。本発明の態様において、X−Rが-N(H)-ピリミジニルを表し、当該ピリミジニルが未置換であるか、又は1個の置換基により置換されており(好ましくは、1置換)、当該置換基が(C1−4)アルキル及びハロゲンから成る群より独立に選択される場合には、置換基は、好ましくはハロゲン、特に臭素である。置換基-NH-Rのために用いられるRの例は:
【化5】

である。
【0021】
本発明の別の態様において、X−Rが-NH−C(O)−ヘテロシクリルを表し、当該ヘテロシクリルがイミダゾ[2,1−b]−チアゾリルである場合には、当該イミダゾ[2,1−b]−チアゾリルは未置換であるか、又は1、2又は3個の置換基により置換され(特に1置換)、当該置換基は(C1−4)アルキル(特にメチル)から独立に選択される。
【0022】
本発明の別の態様において、X−Rが-NH−C(O)−ヘテロシクリルを表し、当該ヘテロシクリルがベンゾフラニルである場合には、当該ベンゾフラニルは、好ましくは未置換である。
【0023】
置換基-NH−C(O)-Rのために用いられるRの例は:
【化6】

である。
【0024】
置換基-NH−C(O)-Rのために用いられるRの例は、特に:
【化7】

である。6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−イルが好ましい。
【0025】
ii) 本発明のさらなる態様は、ピリジン環の3位におけるキラル中心が絶対的(R)−配置にある、式(Ia)の化合物でもある、態様i)に記載の式(I)の化合物に関する:
【化8】


【0026】
iii) 本発明のさらなる態様は、Aがフェニル−又はチアゾリル−基を表し、当該フェニル又はチアゾリルが未置換であるか、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換され、Bがフェニル−基を表し、当該フェニルが、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル及びハロゲンから成る群から独立に選択される1又は2個の置換基により置換された、態様i)又はii)に記載の式(I)の化合物を含む。
【0027】
iv) 本発明のさらなる態様は、Aがフェニル−基を表し、当該フェニルが未置換であるか、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換され、Bがフェニル−基を表し、当該フェニルが、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル及びハロゲンから成る群から独立に選択される1又は2個の置換基により置換された、態様i)又はii)に記載の式(I)の化合物を含む。
【0028】
V) 本発明のさらなる態様は、Aがチアゾリル−基を表し、当該チアゾリルが未置換であるか、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換され、Bがフェニル−基を表し、当該フェニルが、メチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメチル、フッ素及び塩素から成る群から独立に選択される1又は2個の置換基により置換された、態様i)又はii)に記載の式(I)の化合物を含む。
【0029】
vi) 本発明のさらなる態様は、X−Rが−N(H)ピリミジニルを表し、当該ピリミジニルが(C1−4)アルキル又はハロゲンから選択される1個の置換基により置換され、又はX−Rが−NH−C(O)イミダゾ[2,1−b]−チアゾリルを表し、当該イミダゾ[2,1−b]−チアゾリルが、(C1−4)アルキルから独立に選択される1,2又は3個の置換基により置換された、態様i)〜v)のいずれかに記載の式(I)の化合物を含む。
【0030】
vii) 本発明のさらなる態様は、Rがイミダゾ[2,1−b]−チアゾリルを表し、当該イミダゾ[2,1−b]−チアゾリルが未置換であるか、又は(C1−4)アルキルから独立に選択される1,2又は3個の置換基により置換された、態様i)〜v)のいずれかに記載の式(I)の化合物を含む。
【0031】
viii) 本発明のさらなる態様は、XがNHを表す、態様i)〜vi)のいずれかに記載の式(I)の化合物を含む。
【0032】
ix) 本発明のさらなる態様は、XがNH−C(O)を表す、態様i)〜vii)のいずれかに記載の式(I)の化合物を含む。
【0033】
x) 態様i)に記載の式(I)の好ましい化合物は、以下の化合物から成る群より選択され:
(R)−ビフェニル−2−イル−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−メタノン;
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(4’−メトキシ−ビフェニル−2−イル)−メタノン;
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(2’−フルオロ−ビフェニル−2−イル)−メタノン;
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(3’−フルオロ−ビフェニル−2−イル)−メタノン;
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(3’,4’−ジメチル−ビフェニル−2−イル)−メタノン;
(R)−ベンゾフラン−4−カルボン酸{1−[5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸[1−(2−メチル−5−m−トリル−チアゾール−4−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸[1−(2−メチル−5−p−トリル−チアゾール−4−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−エチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[2−メチル−5−(3−トリフルオロ−フェニル)−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(2−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(2−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
[(R)−3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−[5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2 メチル−チアゾール−4−イル]−メタノン;
ベンゾフラン−4−カルボン酸 [(R)−1−(ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;
6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸 [(R)−1−(3’−クロロ−ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;及び
6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸 [(R)−1−(3’−メチル−ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;
上記リストの最初の19化合物が特に好ましい。
【0034】
また、式(I)及び(Ia)、並びにそれらの薬学的に許容される塩も、本発明の一部である。
【0035】
薬学的に許容される塩という用語は、無毒性の無機もしくは有機酸および/または塩基付加塩を意味する。"Salt selection for basic drugs", Int. J. Pharm. (1986), 33, 201-217を参照してもよい。
【0036】
式(I)及び(Ia)の化合物及びこれらの薬学的に許容される塩は、医薬として、例えば経腸または非経口投与のための医薬組成物の形態で使用することができる。
【0037】
一般式(I)及び(Ia)の化合物は、ここに言及した疾病の治療及び/又は予防に有用である。
【0038】
本発明の一つの態様において、本発明は、一般式(I)の化合物の薬学的に有効な量を患者に投与することを含む、ここに言及した疾病の治療及び/又は予防のための方法に関する。
【0039】
一般式(I)及び(Ia)の化合物は医薬の製造のために使用されてもよく、そして下記の群より選択される疾病の予防または治療に好適である:
大うつ病性障害及び気分循環症を含む気分変調性障害、情動神経症、躁鬱病、譫妄、精神病性障害、精神分裂病、妄想性偏執病、 適応障害及びすべての群の人格障害;全般性不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、パニック発作、すべてのタイプの恐怖症性不安及び回避性障害を含む不安障害;ストレス関連症候群; 向精神薬の使用、乱用、探索及び再燃;薬物の濫用;すべてのタイプの心理的又は身体依存、多重人格症候群及び心因性健忘を含む解離性障害;性機能障害、心理性的障害及び依存;麻薬耐性または麻薬離脱症状;視床下部・副腎機能不全;生物リズムおよび概日リズム障害; すべてのタイプの睡眠障害;神経障害性疼痛、下肢静止不能症候群を含む神経障害等の疾患に関連した睡眠障害;睡眠時無呼吸;ナルコレプシー;精神障害に関連する不眠症; すべてのタイプの突発性不眠症及び錯眠;時差ぼけを含む睡眠-覚醒スケジュール障害; 健常者並びに精神及び神経障害におけるすべての痴呆及び認知機能障害;加齢に伴う精神機能障害;重度知的障害;ジスキネジア及び筋疾患;ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病及びトウレット症候群を含む神経変性障害;筋萎縮性側索硬化症;パーキンソン病;クッシング症候群; 外傷性病変;脱髄疾患;脊髄及び脳神経疾患;癲癇;発作障害;欠神発作、複雑部分及び全般発作;レノックスガストー症候群;偏頭痛及び頭痛;疼痛性障害;感覚脱失及び痛覚脱失; 痛覚過敏、灼熱痛、異痛症などの疼痛感受性増強または過大;急性疼痛;熱傷痛;非定型顔面痛;神経障害性疼痛;背部痛;複合局所 性疼痛症候群IおよびII;関節炎性疼痛;スポーツ外傷痛;感染、たとえばHIVに関連した疼痛、化学療法後の疼痛;発作後疼痛;術後痛;神経痛;過敏腸 管症候群などの内臓痛に関連した状態;摂食障害;糖尿病;無酸素脳症、糖尿病性神経障害及びアルコール依存症を含む中毒性及び代謝異常疾患;食欲、味覚障害、摂食又は摂水(Drinking)障害;心気症を含む身体表現性障害;嘔吐/悪心;炎症性腸疾患;胃運動機能異常(ジスキ ネジア);胃潰瘍;カルマン症候群(嗅覚脱失);耐糖能障害;腸運動機能異常;視床下部疾患;下垂体疾患;特発性発育不全;小人症;巨人症;先端巨大症;好塩基性細胞腺腫、プロラクチノーマ、高プロラクチン血症;脳腫瘍、腺腫;良性前立腺肥大、前立腺癌;すべてのタイプの精巣機能障害、避妊法;視床下部性生殖機能低下、機能性または心因性無月経; 膀胱尿失禁;喘息;アレルギー;すべてのタイプの皮膚炎、面皰及び嚢胞、皮脂腺機能障害;心臓血管疾患;心・肺疾患、急性・鬱血性心不全; 低血圧;高血圧;尿閉;骨粗鬆症;狭心症;心筋梗塞;虚血性または出血性発作;クモ膜下出血;クモ膜下出血、虚血性及び出血性発作並びに血管性痴呆を含むすべてのタイプの脳血管障害; 慢性腎不全及びその他の腎疾患;並びに一般のオレキシン系機能障害に関連するその他の疾患。
【0040】
一般式(I)の化合物は、下記のグループから選択される疾患または障害の治療における使用に特に適切である:
すべてのタイプの睡眠障害、ストレス関連症候群、向精神薬の使用及び乱用、健常者並びに精神及び神経障害における認知機能障害並びに摂食又は摂水(Drinking)障害。摂食障害は代謝機能不全;食欲調節不全;強迫的肥満;嘔吐・過食または神経性食欲不振症を含むものとして定義できる。この摂食の病理学的変形は、食欲障害(食物に対する誘惑または嫌悪);エネルギーバランスの変調(摂取/消費)、食品品質についての知覚障害(高脂肪または高炭水化物、良味覚);食物入手可能性障害(無制限節食または遮断)または水分平衡障害から生じるかもしれない。精神障害における多飲症及びすべての他のタイプの過剰液体摂取を含む摂水障害(Drinking disorders)。睡眠障害は、すべてのタイプの不眠症、ナルコレプシーおよび過眠症、睡眠関連失調症、下肢静止不能症候群、睡眠時無呼吸症、時差症候群、交代勤務睡眠障害、睡眠相遅延症候群、睡眠相前進症候群又は精神障害に関連する不眠症を含む。不眠症は、加齢と関係付けられる睡眠障害;慢性不眠の間歇治療;環境による一過性の不眠症(新しい環境、騒音)またはストレス;悲嘆;疼痛または病気による短期間の不眠症を含むものとして定義される。不眠症は、全般性不安障害、強迫性障害、パニック発作並びにすべてのタイプの恐怖症性不安及び回避性障害等の他のタイプ及びサブタイプの不安障害のみならず心的外傷後ストレス障害を含むストレス関連症候群をも包含する;向精神薬の使用、乱用、探索及び再燃は、すべてのタイプの心理的又は身体依存並びにそれらに関連する耐性及び依存因子と定義される。認知機能障害は、正常な、健康な、若年の、成人の又は老齢の集団において一時的に又は慢性的に生じ、また精神、神経、心臓血管及び免疫疾患において一時的に又は慢性的に生じるすべてのタイプの注意、学習及び記憶機能における欠損を含む。
【0041】
本発明のさらなる好ましい態様において、一般式(I)の化合物は、下記のグループから選択される疾患または障害の治療における使用に特に適切である:すべてのタイプの不眠、ナルコレプシー及び過眠症、睡眠関連失調症、下肢静止不能症候群、睡眠時無呼吸症、時差症候群、交代勤務睡眠障害、睡眠相遅延症候群、睡眠相前進症候群又は精神障害に関連する不眠症の他の障害を含む睡眠障害。
【0042】
本発明の別の好ましい態様において、一般式(I)及び(Ia)の化合物は、下記のグループから選択される疾患または障害の治療における使用に特に適切である:正常な、健康な、若年の、成人の又は老齢の集団において一時的に又は慢性的に生じ、また精神、神経、心臓血管及び免疫疾患において一時的に又は慢性的に生じるすべてのタイプの注意、学習及び記憶機能における欠損を含む認知機能障害。
【0043】
本発明の別の好ましい態様において、一般式(I)及び(Ia)の化合物は、下記のグループから選択される疾患または障害の治療における使用に特に適切である:代謝機能不全;食欲調節不全;強迫的肥満;嘔吐・過食または神経性食欲不振症を含む摂食障害。
【0044】
本発明の別の好ましい態様において、一般式(I)及び(Ia)の化合物は、下記のグループから選択される疾患または障害の治療における使用に特に適切である:すべてのタイプの心理的又は身体依存並びにそれらに関連する耐性及び依存因子を含む向精神薬の使用及び乱用。
【0045】
医薬組成物の製造は、いずれの当業者によく知られた様式で(例えば、Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition (2005), Part 5, “Pharmaceutical Manufacturing” [published by Lippincott Williams & Wilkins]を参照されたい。)、記述された式(I)の化合物又はこれらの薬学的に許容される塩を、任意にその他の治療的に有益な物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な薬学的に許容される固体または液体の担体材料および必要に応じて、通常の薬学的アジュバントと共に、ガレノスの投与形態とすることにより遂行することができる。
【0046】
温度に関して、他の記載がされていない場合、数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X−10%XからX+10%Xの間、好ましくはX−5%XからX+5%Xの間を表す。温度の特定の場合には、温度「Y」の前に置かれる「約」の用語は、この出願において、Y−10℃からY+10℃の間、好ましくはY−5℃からY+5℃の間を表す;さらに、室温は、本出願において、25℃を意味する。
【0047】
式(I)の化合物の製造
本発明のさらなる側面は、式(I)及び(Ia)の化合物の製造のための方法である。本発明の式(I)及び(Ia)の化合物は、下記のスキームに概説した反応の一般的順序に従って製造することができ、該スキーム中、A、B、X及びRは、式(I)及び(Ia)についての説明において定義された意味を有する。下記のスキームにおいて用いられる、さらなるジェネリック・グループは以下のように定義される:Rは水素、(C1−4)アルキル又はハロゲンを表し;R’は水素又は(C1−4)アルキルを表し;そしてR‘’は水素、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル、シアノ又はハロゲンを表す。得られた化合物は、それ自体知られた方法により、薬学的に許容されるそれらの化合物の塩に変換してもよい。
【0048】
X−Rが-N(H)-ピリミジニル(特に、Rがピリミジン−2−イル基である場合)である、式(I)及び(Ia)の化合物は、商業的に入手可能な(+/−)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジン(1)又は光学的に純粋な(R)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジンから、キシレン等の溶媒中、DIEAの存在下、KCO等の塩基性条件下で、還流下、商業的に入手可能な、対応する2−クロロ−ピリミジン誘導体との反応により製造してもよい。得られたアミン中間体(2)は、DCM中のTFA等の、Boc保護基の酸性条件下での開裂、続くDMF等の溶媒中における、DIEAの存在下での、PyBOP等の通常のアミドカップリング技術を用いた、それぞれのカルボン酸B−A−COHとのアミド形成により、化合物(3)に変換される(スキーム1)。
【化9】

【0049】
X−Rが-NH−C(O)−ヘテロシクリルを表す式(I)及び(Ia)の化合物は、商業的に入手可能な(+/−)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジン(1)又は光学的に純粋な(R)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジンより、上記のような通常のアミドカップリング技術を用いて、それぞれのカルボン酸誘導体R−COHとの反応により製造してもよい。得られたアミド中間体(4)は、上記したようなBoc保護基の開裂、続くそれぞれのカルボン酸B−A−COHとの上記のようなアミド形成により、化合物(5)に変換される(スキーム2)。
【化10】

【0050】
カルボン酸B−A−COHの製造
B−Aが5−フェニル−チアゾール−4−イル誘導体を表すカルボン酸誘導体B−A−COHは、商業的に入手可能であるか、又はスキーム3に従って合成できる。
【化11】

【0051】
RTにおける、THF等の非プロトン性極性溶媒中での、KOtBu等の塩基の存在下における、メチルジクロロアセテート(6)の、商業的に入手可能なベンズアルデヒド誘導体B−CHOとの反応により、3−クロロ−2−オキソ−プロピオン酸エステル誘導体(7)が得られる(Hamamoto H.ら Tetrahedron Asymmetry 2000, 11, 4485-4497)。構造(7)の化合物は、RTでの、MeCN等の溶媒中における、商業的に入手可能なチオアミドとの反応により変換され、チアゾール−4−カルボン酸エステル誘導体(8)を与える(US3282927)。MeOH等の溶媒中におけるNaOH等の塩基での処理のような、当該技術分野において知られた方法を用いたエステル官能基のけん化により、対応する5−フェニル−チアゾール−4−カルボン酸誘導体(9)が得られる。それぞれのベンズアルデヒドは、商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野においてよく知られている。Rが(C1−4)アルキルを表す式R−C(S)−NHのチオアミドは、商業的に入手可能であるか、又は商業的に入手可能なカルボキサミドからLawessonの試薬で合成することができる。
【0052】
B−Aが4−フェニル−チアゾール−5−イル誘導体を表すカルボン酸誘導体B−A−COHは、商業的に入手可能であるか、又はスキーム4に従って合成される。
【化12】

【0053】
商業的に入手可能な3−オキソ−プロピオン酸エステル誘導体(10)の、CHCl等の溶媒中における、SOClとの還流により、対応する2−クロロ−3−オキソ−プロピオン酸エステル誘導体(11)を得ることができる。構造(11)の化合物は、還流温度での、THF等の溶媒中における、NaHCO等の塩基の存在下での、商業的に入手可能なチオアミドR−C(S)−NHとの反応により、対応するチアゾール−5−カルボン酸エステル誘導体(12)に変換することができる。エタノール等の溶媒中におけるKOH等の塩基での処理のような、当該技術分野において知られた方法を用いたエステル官能基のけん化により、対応する4−フェニル−チアゾール−5−カルボン酸誘導体(13)が得られる。
【0054】
B−Aがビフェン−2−イル誘導体を表すカルボン酸誘導体B−A−COHは、商業的に入手可能であるか、又はスキーム5に従って合成することができる。
【化13】

【0055】
Pd(PPh等の触媒及びNaCO等の塩基の存在下での、トルエン、ジオキサン、THF等の溶媒中における加熱下での、商業的に入手可能な(2−カルボキシフェニル)−ボロン酸誘導体(14)又はそのエステルの、商業的に入手可能な臭化フェニル又はヨウ化フェニルとの反応により、必要であれば、よく知られた方法を用いたエステルのけん化の後、対応するビフェニル−2−カルボン酸誘導体(15)が得られる。また、前記の条件を用いた、商業的に入手可能な2−ブロモ−若しくは2−ヨウ化−安息香酸、又はそれらのエステルの、商業的に入手可能なフェニル−ボロン酸誘導体との反応により、対応するビフェニル−2−カルボン酸誘導体(15)が得られる。
【0056】
カルボン酸R−COOHの合成
式R−COHのカルボン酸は、商業的に入手可能であるか、又は当該技術分野においてよく知られている(文献、例えば、WO2001/096302; T. Eicher, S. Hauptmann "The chemistry of Heterocycles: structure, Reactions, Syntheses, and Applications", 2nd Edition 2003, Wiley, ISBN 978-3-527-30720-3)。
【0057】
イミダゾ[2,1−b]チアゾール−カルボン酸誘導体を表すカルボン酸誘導体R−COHは、商業的に入手可能であるか、又はスキーム6に従い、文献に従って製造することができる。
【化14】

【化15】

【化16】

【0058】
経路A:商業的に入手可能な2−クロロ−3−オキソ−ブタン酸 メチルエステルの、チオ尿素との反応により、アミノ−チアゾール(16)が得られる。エステル(17)への変換は、酸性条件下で、ブロモアセトアルデヒド ジエチルアセタールよりin−situで生成するブロモアセトアルデヒドにより行われる。水酸化ナトリウム等の塩基でのけん化の後、所望の酸(18)を得ることができる(WO02/46158)。
【0059】
経路B:商業的に入手可能な、構造19のアミノチアゾール誘導体を、トルエン等の溶媒中で、N,N−ジメチルホルムアミド ジメチルアセタールとともに加熱することにより、ホルムアミジン誘導体(20)が得られる。それらはエチルブロモアセテートによりアルキル化され、それぞれの臭化チアゾリウム(21)を生成し、臭化チアゾリウム(21)は、DBU等の強塩基で環化され、エステル(22)を与える。エタノール/水等の溶媒中におけるNaOH等の塩基での処理のような、当該技術分野において知られた方法を用いたエステル官能基のけん化により、対応するイミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸誘導体(23)(WO95/29922及びUS6191124)が得られる。
【0060】
経路C:4−エトキシカルボニルイミダゾ−2−チオール誘導体(24)の、ブロモ−ケトン誘導体との、EtOH中における反応、続くPOClでの環化により、エステル誘導体の二つの位置異性体(25)及び(26)の混合物が得られ、これらはFCにより分離することができる。エタノール/水等の溶媒中におけるNaOH等の塩基でのけん化により、所望のイミダゾ[2,1−b]チアゾールカルボン酸(27)及び(33)(US4267339及びDE2505068)が得られる。4−エトキシカルボニルイミダゾ−2−チオール誘導体(24)は、商業的に入手可能であるか、又は対応する商業的に入手可能なイミダゾロンから、Lawessonの試薬により合成することもできる。Rがメチルを表す構造(28)の酸は、構造(19)の化合物をブロモアセトンによりアルキル化及び環化し、続いて、得られたイミダゾ[2,1−b]チアゾールの5位をPOCl/DMFでホルミル化し、得られたアルデヒドを、よく知られた方法により、対応するカルボン酸に酸化することにより、合成される。スキーム6において、R、R及びRは、独立に水素又はメチルを表す。
【0061】
式(I)の化合物がエナンチオマーの混合物の形態で得られる場合には常に、エナンチオマーは、当業者に知られた方法、例えばジアステレオマー塩の形成及び分離、またはRegis Whelk−O1(R,R)(10μm)カラム、Daicel ChiralCel OD−H(5−10μm)カラム、またはDaicel ChiralPak IA(10μm)若しくはAD−H (5μm)カラム等のキラル固定相上のHPLC、を用いて分離することができる。キラルHPLCの典型的な条件は、0.8から150mL/分の流速における、溶出液A(EtOH。トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミンの存在下または非存在下で)及び溶出液B(ヘキサン)の無勾配混合物である。
【0062】
実験の部
(この項において、及び明細書のこれまでの部分において使用される)略語:
Boc tert−ブトキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
CHO チャイニーズハムスター卵巣
conc 濃縮された
d 日
DBU 1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデス−7−エン
DCM ジクロロメタン
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EA エチルアセテート
eq 当量
ES 電子スプレー
Ether ジエチルエーテル
FC フラッシュクロマトグラフィー
FCS ウシ胎児血清
FLIPR 蛍光イメージングプレートリーダー
h 時間
HBSS ハンクス平衡塩溶液
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン−1−エタンスルホン酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC 液体クロマトグラフィー
M モル
MeOH メタノール
min 分
MS 質量分析
Ph フェニル
PyBOP (ベンゾトリアゾール−1イルオキシ)−トリピロリジノホスフォニ
ウム−ヘキサフルオロホスフェート
RT 室温
sat 飽和
THF テトラヒドロフラン
TFA トリフルオロ酢酸
保持時間
【0063】
I-化学
以下の実施例は、本発明の薬理学的に活性を有する化合物の製造を説明するが、本発明の範囲をまったく限定するものではない。
【0064】
温度はすべて℃で示した。
非キラル相のすべての分析HPLCの検討は、PR−C18をベースとしたカラムを用いて行われる。分析HPLCの検討は、サイクルタイムがそれぞれ〜2.5分の2個の機器を用いて行われる。NMRの測定は、Bruker Avance400装置で行われる。
【0065】
A. 前駆物質及び中間体の製造
A.1 チアゾール-4-カルボン酸誘導体の合成
A.1.1 3-クロロ-2-オキソ-プロピオン酸エステル誘導体の合成(一般的手順)
それぞれのアルデヒドB−CHO(338mmol、1.0eq)及びメチルジクロロアセテート(338mmol、1.0eq)のTHF(100mL)中の溶液を、KOtBu(335mmol、1.0eq)のTHF(420mL)中の冷懸濁液(−60℃)に滴下する。4h後、混合物をRTにし、一晩撹拌し、真空濃縮する。DCM及び氷冷水を添加し、相を分離し、水相をDCMで2回抽出する。合わせた有機相を氷冷水及び塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、真空濃縮して、所望の2−オキソ−プロピオン酸エステルを得、これをさらに精製することなく使用する。
【0066】
3−クロロ−2−オキソ−3−m−トリル−プロピオン酸 メチルエステル
3−メチル−ベンズアルデヒドのメチルジクロロアセテートとの反応により製造。
3−クロロ−2−オキソ−3−p−トリル−プロピオン酸 メチルエステル
4−メチル−ベンズアルデヒドのメチルジクロロアセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(4−エチル−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
4−エチル−ベンズアルデヒドのメチルジクロロアセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(3−フルオロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
3−フルオロ−ベンズアルデヒドのメチルジクロロアセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
4−フルオロ−ベンズアルデヒドのメチルジクロロアセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
4−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(2−フルオロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
2−フルオロ−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(2−クロロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
2−クロロ−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(3−クロロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
3−クロロ−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
3−クロロ−2−オキソ−3−o−トリル−プロピオン酸 メチルエステル
2−メチル−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(2−メトキシ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
2−メトキシ−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
3−クロロ−3−(3−メトキシ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
3−メトキシ−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
3−クロロ−2−オキソ−3−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−プロピオン酸 メチルエステル
2−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
3−クロロ−2−オキソ−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−プロピオン酸 メチルエステル
3−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテート.
3−クロロ−3−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステル
3,4−ジメチル−ベンズアルデヒドのメチルジクロロ−アセテートとの反応により製造。
【0067】
A.1.2 チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル誘導体の合成
(一般的手順)
チオアセタミド(132mmol、1.0eq)のMeCN(250mL)中の溶液を、それぞれの2−オキソ−プロピオン酸エステル(132mmol、1.0eq)及びモレキュラー・シーブ(4A、12g)のMeCN(60mL)中の混合物に添加する。5hの撹拌の後、混合物を氷浴中で冷却し、得られた沈殿をろ過により除去する。残渣を冷MeCNで洗浄し、乾燥し、MeOH(280mL)に溶解し、50℃で6h撹拌する。溶媒を真空除去し、所望のチアゾール誘導体を、白色の固体として得る。
【0068】
2−メチル−5−m−トリル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−2−オキソ−3−m−トリル−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.94 min; [M+H]+ = 248.0。
2−メチル−5−p−トリル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−2−オキソ−3−p−トリル−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.92 min; [M+H]+ = 248.2。
5−(4−エチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(4−エチル−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.98 min; [M+H]+ = 262.1。
5−(3−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(3−フルオロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.91 min; [M+H]+ = 252.1。
5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(4−フルオロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。
1H-NMR (CDCl3): δ = 2.75 (s, 3H); 3.84 (s, 3H); 7.10 (m, 2H); 7.47 (m, 2H)。
2−メチル−5−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.98 min; [M+H]+ = 302.0。
2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.98 min; [M+H]+ = 302.2。
2−メチル−5−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.94 min; [M+H]+ = 302.3。
5−(2−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(2−フルオロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.89 min; [M+H]+ = 252.0。
5−(2−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(2−クロロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.92 min; [M+H]+ = 268.0。
5−(3−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(3−クロロ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.95 min; [M+H]+ = 268.0。
2−メチル−5−o−トリル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−2−オキソ−3−o−トリル−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.92 min; [M+H]+ = 248.1。
5−(2−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(2−メトキシ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.88 min; [M+H]+ = 264.1。
5−(3−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(3−メトキシ−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.90 min; [M+H]+ = 263.9。
5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステル
3−クロロ−3−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−オキソ−プロピオン酸 メチルエステルのチオアセタミドとの反応により製造。 LC-MS: tR = 0.96 min; [M+H]+ = 262.3。
【0069】
A.1.3 チアゾール−4−カルボン酸誘導体の合成
(一般的手順)
それぞれのチアゾール−4−カルボン酸エステル誘導体(96.2mmol)の、THF(150mL)及びMeOH(50mL)の混合物中の溶液を、NaOH水溶液(1.0M、192mL)で処理する。3hの撹拌の後、白色の懸濁液が生成し、有機性揮発物を真空除去する。残りの混合物を水(100mL)で希釈し、HCl水溶液(1.0M)の添加により酸性(pH=3−4)にする。懸濁液をろ過し、残渣を冷水で洗浄する。乾燥後、所望の酸を白色の固体として得る。
【0070】
2−メチル−5−m−トリル−チアゾール−4−カルボン酸
2−メチル−5−m−トリル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.83 min; [M+H]+ = 234.0。
2−メチル−5−p−トリル−チアゾール−4−カルボン酸
2−メチル−5−p−トリル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.83 min; [M+H]+ = 234.0。
5−(4−エチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(4−エチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.88 min; [M+H]+ = 248.0。
5−(3−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(3−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.82 min; [M+H]+ = 238.1。
5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 1H-NMR (DMSO-d6): δ = 2.67 (s, 3H); 7.27 (m, 2H); 7.53 (m, 2H); 12.89 (br.s, 1H)。
2−メチル−5−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸
2−メチル−5−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.90 min; [M+H]+ = 288.0。
2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸
2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.88 min; [M+H]+= 288.0。
2−メチル−5−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸
2−メチル−5−(2−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.84 min; [M+H]+= 288.3。
5−(2−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(2−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.78 min; [M+H]+ = 238.3。
5−(2−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(2−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.82 min; [M+H]+ = 253.9。
5−(3−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(3−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.84 min; [M+H]+ = 254.0。
2−メチル−5−o−トリル−チアゾール−4−カルボン酸
2−メチル−5−o−トリル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.80 min; [M+H]+ = 234.3。
5−(3−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(3−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.80 min; [M+H]+ = 250.0。
5−(2−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(2−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.78 min; [M+H]+ = 250.0。
5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸
5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸 メチルエステルのけん化により製造。 LC-MS: tR = 0.86 min; [M+H]+ = 248.3。
【0071】
A.2 3−(N−置換)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルの合成
A.2.1 3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルの合成
(+/−)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジン(1g)の乾燥o−キシレン(20mL)中の溶液に、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(965mg)、無水KCO(1.38g)、DIEA(3.42mL)を順に添加した。反応混合物を、窒素下、3日間、還流しながら撹拌した。RTに冷却した後、茶色の懸濁液をろ過し、ろ液を濃縮して、粗製の茶−オレンジ色の油状物を得た。FC(EA/n−ヘプタン:3/7)により、850mg(46%)の表題化合物を明茶色の固体として得た。
LC-MS: tR = 0.98 min; [M+H]+ = 358。
【0072】
A.2.2 (R)−3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルの合成
(R)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジン(920mg)の乾燥EtOH(20mL)中の溶液に、5−ブロモ−2−クロロピリミジン(957mg)、DIEA(0.86mL)を順に添加した。反応混合物を窒素下、16時間、還流しながら撹拌した。RTに冷却した後、反応混合物をEAで希釈し、sat.NaHCO、1N NaOHで洗浄した。有機抽出物を乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮して、粗製の茶−オレンジ色の油状物を得た。FC(EA/n−ヘプタン:2/8)により、787mg(48%)の表題化合物を明茶色の固体として得た。
LC-MS: tR= 0.98 min; [M+H]+ = 358。
【0073】
A.2.3 (R)−3−[(6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボニル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルの合成
(R)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジン(800mg)、6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸(801.5mg)、PyBOP(2.08g)、DIEA(1.57mL)の乾燥DMF(10mL)中の混合物を、窒素下、RTで20h、撹拌した。反応混合物をEAで希釈し、水で洗浄した。水相をEAで2回抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮して、粗製の明茶色の油状物を得た。FC(EA/n−ヘプタン:1/1〜EA)により、1.47g(100%)の表題化合物を固体として得た。
LC-MS: tR = 0.78 min; [M+H]+ = 365。
【0074】
A.2.4 (R)−3−[(ベンゾフラン−4−カルボニル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルの合成
(R)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジン(1g)、ベンゾフラン−4−カルボン(809mg)、PyBOP(2.6g)、DIEA(1.96mL)の乾燥DMF(10mL)中の混合物を、窒素下、RTで20h、撹拌した。反応混合物をEAで希釈し、水で洗浄した。水相をEAで2回抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮して、粗製の明茶色の油状物を得た。FC(EA/n−ヘプタン:1/1〜EA)により、1.41g(82%)の表題化合物を油状物として得た。
LC-MS: tR = 0.93 min; [M+H]+ = 345。
【0075】
(RS)−3−[(ベンゾフラン−4−カルボニル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルを、(+/−)−3−アミノ−1−N−Boc−ピペリジンから、同様に合成した。
【0076】
A.3 3−(N−置換)−ピペリジン誘導体の合成
A.3.1 (5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−3−イルアミンの合成
3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(850mg)の乾燥DCM(10mL)中の冷溶液(〜0℃)に、TFA(0.911mL)をゆっくりと添加した。反応混合物をRTで20h撹拌し、さらに5eqのTFA(0.911mL)を添加し、撹拌を2h継続した。反応液を真空濃縮し、表題化合物を、ビス−トリフルオロアセテート塩として得、これをさらに精製することなく、次の工程で使用した。
LC-MS: tR = 0.56 min; [M]+ = 257。
【0077】
A.3.2 (R)−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−3−イル−アミンの合成
(R)−3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(775mg)の乾燥DCM(10mL)中の冷溶液(〜0℃)に、TFA(0.831mL)をゆっくりと添加した。反応混合物をRTで20h撹拌し、さらに5eqのTFA(0.831mL)を添加し、撹拌を2h継続した。反応液を真空濃縮し、表題化合物をビス−トリフルオロアセテート塩として得、これをさらに精製することなく、次の工程で使用した。
LC-MS: tR= 0.56 min; [M]+ = 257。
【0078】
A.3.3 (R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドの合成
(R)−3−[(6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボニル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(1.47g)の乾燥DCM(30mL)中の冷溶液(〜0℃)に、TFA(4.63mL)をゆっくりと添加した。反応混合物をRTで20h撹拌し、さらに5eqのTFA(4.63mL)を添加し、撹拌を2h継続した。反応液を真空濃縮し、表題化合物をビス−トリフルオロアセテート塩として得、これをさらに精製することなく、次の工程で使用した。
LC-MS: tR = 0.45 min; [M+H]+ = 265。
【0079】
A.3.4 (R)−ベンゾフラン−4−カルボン酸 ピペリジン−3−イルアミドの合成
(R)−3−[(ベンゾフラン−4−カルボニル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(1.4g)の乾燥DCM(15mL)中の冷溶液(〜0℃)に、TFA(1.61mL)をゆっくりと添加した。反応混合物をRTで20h撹拌した。反応液を真空濃縮し、得られた残渣をDCMで希釈し、sat.NaHCO溶液で洗浄した。水相をDCMで2回抽出した。合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮して、粗製の明茶色の油状物を得、これをさらに精製することなく、次の工程で使用した。
LC-MS: tR = 0.62 min; [M+H]+ = 246。
【0080】
(RS)−ベンゾフラン−4−カルボン酸 ピペリジン−3−イルアミドを、(RS)−3−[(ベンゾフラン−4−カルボニル)−アミノ]−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルから、同様に合成した。
【0081】
B. 一般式(I)の化合物の製造:(一般的手順)
それぞれのカルボン酸B−A−COH(0.1mmol、1eq)、DIEA(0.5mmol、5eq)、PyBOP(0.1mmol、1eq)の乾燥DMF(0.1mL)中の混合物に、それぞれのピペリジン誘導体(0.1mmol、1.0eq、トリフルオロアセテート塩)の乾燥DMF(0.1mL)中の溶液を添加した。混合物をRTで16h、撹拌し、EAで希釈し、水で洗浄した。水相を再びEAで1回抽出し、合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮して、粗製の油状物を得た。生成物はFC(EA/n−ヘプタン:1/1〜EA)で精製した。
【0082】
実施例1
(R)−ビフェニル−2−イル−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−メタノン
ビフェニル−2−カルボン酸の(R)−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−3−イル−アミンとの反応により製造。LC-MS: tR = 1.01 min; [M+H]+ = 438。
【0083】
実施例2
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(4’−メトキシ−ビフェニル−2−イル)−メタノン
4’−メトキシ−ビフェニル−2−カルボン酸の(R)−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−3−イル−アミンとの反応により製造。LC-MS: tR = 1.00 min; [M+H]+ = 468。
【0084】
実施例3
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(2’−フルオロ−ビフェニル−2−イル)−メタノン
2’−フルオロ−ビフェニル−2−カルボン酸の(R)−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−3−イル−アミンとの反応により製造。LC-MS: tR = 1.00 min; [M+H]+ = 456。
【0085】
実施例4
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(3’−フルオロ−ビフェニル−2−イル)−メタノン
3’−フルオロ−ビフェニル−2−カルボン酸の(R)−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−3−イル−アミンとの反応により製造。LC-MS: tR = 0.95 min; [M+H]+ = 456。
【0086】
実施例5
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(3’,4’−ジメチル−ビフェニル−2−イル)−メタノン
3’,4’−ジメチル−ビフェニル−2−カルボン酸の(R)−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−3−イル−アミンとの反応により製造。LC-MS: tR = 1.05 min; [M+H]+ = 466。
【0087】
実施例6
(RS)−ベンゾフラン−4−カルボン酸{1−[5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}アミド
5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(RS)−ベンゾフラン−4−カルボン酸 ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。LC-MS: tR = 0.96 min; [M+H]+ = 464。
【0088】
実施例7
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸[1−(2−メチル−5−m−トリル−チアゾール−4−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド
2−メチル−5−m−トリル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.82 min; [M+H]+ = 480。
【0089】
実施例8
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.81 min; [M+H]+ = 484。
【0090】
実施例9
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸[1−(2−メチル−5−p−トリル−チアゾール−4−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド
2−メチル−5−p−トリル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.83 min; [M+H]+ = 480。
【0091】
実施例10
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−エチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(4−エチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.87 min; [M+H]+ = 494。
【0092】
実施例11
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(3−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.81 min; [M+H]+ = 484。
【0093】
実施例12
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[2−メチル−5−(3−トリフルオロ−フェニル)−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
2−メチル−5−(トリフルオロ−フェニル)−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.88 min; [M+H]+ = 534。
【0094】
実施例13
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(3−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.84 min; [M+H]+ = 500。
【0095】
実施例14
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(3−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.80 min; [M+H]+ = 496。
【0096】
実施例15
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(2−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(2−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.80 min; [M+H]+ = 484。
【0097】
実施例16
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(2−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(2−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.83 min; [M+H]+ = 500。
【0098】
実施例17
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.86 min; [M+H]+ = 494。
【0099】
実施例18
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.82 min; [M+H]+ = 500。
【0100】
実施例19
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド
5−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸の(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]−チアゾール−5−カルボン酸−ピペリジン−3−イルアミドとの反応により製造。
LC-MS: tR = 0.83 min; [M+H]+ = 502。
【0101】
実施例20
[(R)−3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−[5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2 メチル−チアゾール−4−イル]−メタノン
(R)−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−3−イル−アミンの5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボン酸との反応により製造。
LC-MS: tR= 1.00 min; [M+H]+ = 486.46。
【0102】
実施例21
ベンゾフラン−4−カルボン酸 [(R)−1−(ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド
(R)−ベンゾフラン−4−カルボン酸 ピペリジン−3−イルアミドのビフェニル−2−カルボン酸との反応により製造。
LC-MS: tR= 0.99 min; [M+H]+ = 425.17。
【0103】
実施例22
6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸 [(R)−1−(3’−クロロ−ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸 ピペリジン−3−イルアミドの3’−クロロ−ビフェニル−2−カルボン酸との反応により製造。
LC-MS: tR= 0.87 min; [M+H]+ = 479.48。
【0104】
実施例23
6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸 [(R)−1−(3’−メチル−ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸 ピペリジン−3−イルアミドの3’−メチル−ビフェニル−2−カルボン酸との反応により製造。
LC-MS: tR= 0.87 min; [M+H]+ = 479.48。
【0105】
II. 生物学的試験
In vitro アッセイ
式(I)の化合物の オレキシン受容体拮抗活性は、次の実験法に従って測定された。
【0106】
実験方法
細胞内カルシウム濃度の測定:
ヒトオレキシン-1受容体およびヒトオレキシン-2受容体を発現しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をそれぞれ300μg/mlのG418、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンおよび10%不活性化牛胎児血清(FCS)を含む培地(L-グルタミン含有ハム F-12)で培養した。予め、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に溶解した1%ゼラチンで被覆した96穴の黒色の透明底の滅菌プレート(コースター)に1穴当り80、000個の細胞を播種した。全ての試薬はギブコ(Gibco)BRLからのものであった。播種したプレートを37℃で一晩5%のCO下でインキュベートした。
【0107】
作働薬のヒトオレキシン-Aを、MeOHと水の混合溶液(1:1)に1mMの保存溶液として調製し、アッセイでの使用に際しては0.1%牛血清アルブミン(BSA)および2mMのHEPESを含むHBSSに10nMの最終濃度に希釈した。
【0108】
拮抗薬はDMSOに10mMの保存溶液として調製したのち、96穴のプレートに、最初はDMSOで、それから0.1%牛血清アルブミン(BSA)および2mMのHEPESを含むHBSSで希釈した。
【0109】
アッセイの日に、負荷培地100μl(1%のFCS、2mMのHEPES、5mMのプロベネシド(シグマ)および3μMの蛍光カルシウム指示薬のフルオ -3AM(1mMの保存溶液は10%のプルロン酸を含むDMSOに溶解)(モルキュラープローブス社製)を含むHBSS)を各穴に添加した。
【0110】
その96穴プレートを37℃で60分間、5%CO下でインキュベートした。それから、負荷溶液を吸引し、細胞を2.5mMのプロベネシド、0.1%のBSA、2mMのHEPESを含有する200μlのHBSSで3回洗浄した。同一の緩衝液100μlを各穴に残した。
【0111】
蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR、モルキュラーデバイセス社製)内で、50μlの容量の拮抗薬をプレートに添加し、20分間インキュベートし、最後に100μlの作働薬を加えた。各穴の蛍光を1秒間隔で測定し、各蛍光ピークの高さを、拮抗薬を緩衝液に代えた10nMのオレキシン-Aによって誘発される蛍光ピークの高さと比較した。各拮抗薬に対して、IC50値(作動薬による反応を50%抑制するために必要とされる化合物の濃度)を測定した。
【0112】
例示されたすべての化合物の拮抗活性(IC50値)は、OX及び/又はOX受容体に関して、1000nM未満である。23個の例示化合物のIC50値は、OX受容体に関して、8−1784nMの範囲内であり、平均は357nMである。すべての例示化合物のIC50値は、OX受容体に関して、49−1159nMの範囲内であり、平均は292nMである。選択した化合物の拮抗活性を表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、又はそのような化合物の塩:
【化1】

式中
X−Rは-N(H)-ピリミジニルを表し、当該ピリミジニルは未置換であるか、若しくは1個の置換基により置換されており、当該置換基は(C1−4)アルキル若しくはハロゲンから選択され、又は
X−Rは-NH−C(O)−ヘテロシクリルを表し、当該ヘテロシクリルはベンゾフラニル及びイミダゾ[2,1−b]−チアゾリルから選択され、当該ヘテロシクリルは未置換であるか、若しくは1,2若しくは3個の置換基により独立に置換されており、当該置換基は、独立に(C1−4)アルキルから選択され;
Aはフェニル−又はチアゾリル−基を表し、当該フェニル又はチアゾリルは未置換であるか、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換されており;
Bはフェニル−基を表し、当該フェニルは未置換であるか、又は1若しくは2個の置換基により置換されており、当該置換基は、独立に(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル、シアノ及びハロゲンから成る群より選択される。
【請求項2】
ピリジン環の3位におけるキラル中心が絶対的(R)−配置にある、請求項1に記載の化合物、又はそのような化合物の塩:
【化2】


【請求項3】
Aがフェニル−又はチアゾリル−基を表し、当該フェニル又はチアゾリルが未置換であるか、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換され;
Bがフェニル−基を表し、当該フェニルが、(C1−4)アルキル、(C1−4)アルコキシ、トリフルオロメチル及びハロゲンから成る群から独立に選択される1又は2個の置換基により置換された、
請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項4】
Aがチアゾリル-基を表し、当該チアゾリルが未置換であるか、又は1個の(C1−4)アルキルにより置換され;
Bがフェニル−基を表し、当該フェニルが、メチル、エチル、メトキシ、トリフルオロメチル、フッ素及び塩素から成る群から独立に選択される1又は2個の置換基により置換された、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項5】
X−Rが-N(H)ピリミジニルを表し、当該ピリミジニルが(C1−4)アルキル又はハロゲンから選択される1個の置換基により置換され、又は
X−Rが−NH−C(O)イミダゾ[2,1−b]−チアゾリルを表し、当該イミダゾ[2,1−b]−チアゾリルが、(C1−4)アルキルから独立に選択される1,2又は3個の置換基により置換された、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項6】
がイミダゾ[2,1−b]−チアゾリルを表し、当該イミダゾ[2,1−b]−チアゾリルが未置換であるか、又は(C1−4)アルキルから独立に選択される1,2又は3個の置換基により置換された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項7】
XがNH−C(O)を表す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物、又はそのような化合物の塩。
【請求項8】
以下からなる群より選択される請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物:
(R)−ビフェニル−2−イル−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−メタノン;
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(4’−メトキシ−ビフェニル−2−イル)−メタノン;
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(2’−フルオロ−ビフェニル−2−イル)−メタノン;
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(3’−フルオロ−ビフェニル−2−イル)−メタノン;
(R)−[3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−(3’,4’−ジメチル−ビフェニル−2−イル)−メタノン;
(R)−ベンゾフラン−4−カルボン酸{1−[5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸[1−(2−メチル−5−m−トリル−チアゾール−4−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸[1−(2−メチル−5−p−トリル−チアゾール−4−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−エチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[2−メチル−5−(3−トリフルオロ−フェニル)−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3−メトキシ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(2−フルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(2−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;及び
(R)−6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸{1−[5−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2−メチル−チアゾール−4−カルボニル]−ピペリジン−3−イル}−アミド;
[(R)−3−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−[5−(3,4−ジメチル−フェニル)−2 メチル−チアゾール−4−イル]−メタノン;
ベンゾフラン−4−カルボン酸 [(R)−1−(ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;
6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸 [(R)−1−(3’−クロロ−ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;及び
6−メチル−イミダゾ[2,1−b]チアゾール−5−カルボン酸 [(R)−1−(3’−メチル−ビフェニル−2−カルボニル)−ピペリジン−3−イル]−アミド;
又はそのような化合物の塩。
【請求項9】
医薬として使用するための請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
すべてのタイプの睡眠障害、ストレス関連症候群、向精神薬の使用及び乱用、健常者並びに精神及び神経障害における認知機能障害、摂食又は摂水障害からなる群より選択される疾患の予防または治療のための医薬を製造するための請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2010−511038(P2010−511038A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538843(P2009−538843)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054851
【国際公開番号】WO2008/065626
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(500226786)アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド (151)
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH−4123 Allschwil,Switzerland
【Fターム(参考)】