説明

オレフィン系ポリマーのための重合方法

本発明は、溶液重合方法であって:A)1種または複数のモノマーを重質炭化水素溶媒および軽質炭化水素溶媒を含む溶媒の存在下において重合させて、ポリマー溶液を生成させるステップと、B)このポリマー溶液をこの溶液に熱を加えずに液−液分離器に移すステップであり、このステップにおいてポリマー溶液の圧力を液−液分離器より前にもしくは液−液分離器内で、制御された形で有効に低下させて、少なくとも2つの液相、ポリマーに富む相および溶媒に富む相を生じさせ、かつポリマーに富む相中のポリマー濃度が、液−液分離器に移されるポリマー溶液中のポリマー濃度よりも高いステップと、C)溶媒に富む相を除去するステップとを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2009年7月16日に出願され、参照により本明細書に全体的に組み込まれている米国仮出願第61/226,046号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー溶液は、下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature)(LCST)現象を示すことができ、それにより、均質なポリマー溶液が、ある温度を超えるとポリマーに富む液相と、溶媒に富む相とに分離する。この温度は、溶媒の型、ポリマー流組成および圧力の関数である。任意のこれらの変数を操作して、液−液分離を誘発させることができる。この分離は、特に等量の溶媒の蒸発に比較すると、液−液分離に関連した熱使用(heat duty)が非常に少ない。商業的溶液重合において、溶媒除去方法に関連した効率向上およびコスト低減の必要性が存在している。
【0003】
米国特許第6,881,800号は、連続的溶液重合のための方法およびプラントに関する。このようなプラントおよび方法には、圧力源;前記圧力源の下流側の重合反応器;前記重合反応器の下流側の圧力引き下げデバイス;および前記圧力引き下げデバイスの下流側の分離器が含まれる。圧力源は、反応器と分離器の間にさらなる圧力源の存在なしで、重合の間、反応混合物に、反応器内に単一相の液体反応混合物、また分離器内に2相液−液反応混合物をもたらすのに十分な圧力を提供するものとして開示される。米国特許第7,163,989号も参照されたい。この方法は、液−液相(liquid-liquid phase)分離を誘発させる前に、反応器出口流を加熱する加熱器の使用を開示している。反応器から出てくる溶液は、分離器から出てくる溶液よりも、ポリマー1ポンド当り多い溶媒を有するので、分離器前の加熱が、ポリマー1ポンド当りの熱使用を著しく増加させる。
【0004】
国際公開第WO2008/076589号は、緻密な流体均一重合系におけるオレフィン重合方法を開示している。この方法は、次のステップ:(a)1基もしくは複数の反応器内で、30重量パーセント以上存在する3個以上の炭素原子を有するオレフィンモノマーを、下記の:1)1種もしくは複数の触媒化合物、2)1種もしくは複数の活性化剤、3)0〜50モルパーセントのコモノマーおよび4)0〜40重量パーセントの希釈剤もしくは溶媒と接触させるステップと、(b)ポリマー−モノマー混合物を含む反応器流出物を生成させるステップと、(c)場合によって、(b)のポリマー−モノマー混合物を、それが反応器を出た後に、またステップ(e)で圧力が下がる前もしくは後に加熱するステップと、(d)(b)のポリマー−モノマー混合物を分離容器内に集めるステップと、(e)ポリマー−モノマー混合物を分離容器内に集める前もしくは後のいずれかの時点に(b)のポリマー−モノマー混合物を含む反応器流出物の圧力を曇点(cloud point)未満の圧力まで下げて、ポリマーに富む相およびモノマーに富む相を含む2相混合物を生成させるステップとを含む。反応器内の圧力は、分離容器内の圧力よりも7〜100MPa高く、また分離容器内の温度は、ポリマーの結晶化温度の高い方を超える、またはポリマーが結晶化温度を有さない場合80℃を超える温度とする。モノマーに富む相が、ポリマーに富む相から分離され、1基または複数の反応器に再循環される。この特許は、超臨界重合媒質を確保するため、40重量パーセント未満の溶媒でこの方法を運転するのに要する反応器圧力が高い(200MPaまで)ことを開示している。この高い圧力により反応器の運転は課題の多いものとなり、壁の厚い反応器の使用を要し、資本およびエネルギー効率を低下させている。
【0005】
米国特許第6,255,410号は、2相系において実質的に従来の高圧条件未満の圧力でポリオレフィンを製造する方法を開示している。この方法は、次のステップ:(a)オレフィンモノマーおよび触媒系(メタロセンおよび共触媒の)を連続的に供給するステップと、(b)モノマー供給物を連続的に重合させて、モノマー−ポリマー混合物をもたらすステップと、(c)2相混合物を連続的溶融ポリマー相および連続的モノマー蒸気に連続的に定着させるステップであり、場合によってその後者を(a)に少なくとも一部再循環することができるステップとを含む。ステップ(b)では、混合物は、ポリマーの融点を超える温度であり、ポリマーに富む相およびモノマーに富む相をもたらす曇点圧力未満の圧力である。重合は、触媒系の生産性が、その温度で曇点を超える圧力(前記圧力の2倍)で得られる生産性を超える温度および圧力で行われる。この特許は、触媒担体として必要とされる少量の溶媒のみを開示しており、溶液重合方法に関連した、より低い温度および圧力を用いる利点を有していない。
【0006】
米国特許第4,444,922号は、溶液の熱力学的状態を変化させて、スピノーダル分解によって希釈相および濃縮相を生成させることによる、ポリマー溶液の処理方法を開示している。この参考文献は、高い圧力および温度における共役ジエンポリマー溶液の処理方法であって、前記加熱した溶液の圧力をスピノーダル分解により前記溶液に、比較的低いポリマー濃度を有する第1の相および比較的高いポリマー濃度を有する第2の相を生成させるのに十分に低い圧力まで、急速に低下させるステップを含む方法を開示している。この特許は、液−液相分離を誘発させる3つの方法であって、それらが全て、液−液分離を誘発させるため、熱を加えるステップを含む方法を開示している。反応器溶液全体を加熱しなければならないので、それぞれの方法は費用がかかり、また一部エネルギー集約的である。
【0007】
米国特許第4,433,121号は、ある重合域で行われる重合であって、前記ポリマー溶液の上部曇点を超える温度における、また、このポリマー溶液が2相に分離されることを可能にする条件下における重合を開示する。この重合は、分散されかつ混合された状態である、前記相分離条件下で2相を保持している撹拌条件下でも行われる。得られたポリマー溶液は、前記重合域とは独立した位置にある分離域に送られ、上部曇点を超える温度で2相に分離される。その後、ポリマーに富む液相が、下層として回収され、一方ポリマーに乏しい液相が、上層として重合域に再循環される。2液相領域で溶液重合反応器を操作するという固有の課題が存在する。ポリマー微細構造が、反応器内の成分の濃度によって決定されるので、両方の相における成分の分布が、生成物組成および分子量に影響を有するであろう。その後、最終生成物におけるばらつきの増加をもたらす可能性がある。
【0008】
米国特許第5,599、885号は、100℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素希釈剤または脂環式炭化水素希釈剤の存在下において行われるポリオレフィン重合を開示する。一実施形態において、得られたポリオレフィンを含有するポリマー溶液が分離域に供給され、ポリマー溶液の上部曇点以上の温度に保持されて、高濃度のポリオレフィンを含有する下相部分と、より低い濃度のポリオレフィンを含有する上相部分とにポリマー溶液を分離する。EP0552945B1も参照されたい。温度を上げることによって達成される液−液分離は、全体の反応器内容物をどれほど速やかに加熱することができるかについて、時間の限度が存在するので、効率的ではない。このような分離の手段は、不可避的に、スピノーダル分解よりもむしろ「核生成および成長」機構による、少なくとも部分的な液−液分離につながる。
【0009】
米国特許第4,319,021号は、高温相分離による、溶媒中のポリマーの溶液からのポリマー回収方法であって、この溶液に低分子量炭化水素が添加され、この溶液および添加された炭化水素が、ある温度および圧力に掛けられ、そのため1つの液相が生成される方法を開示する。圧力を低下させて、3つの相、すなわち炭化水素に富む気相、ポリマーに乏しい液相、およびポリマーに富む液相を生成させる。気相およびポリマーに乏しい液相から、ポリマーに富む液相が分離され、次いで、ポリマーに富む液相からポリマーが回収される。この方法では、相分離を誘発させるため、反応器の後で、軽質炭化水素溶媒が添加される。これは次に工程を連続的に進行させるため、反応器溶媒および未反応コモノマーおよびこの添加された軽質炭化水素の分離を必要とする。この分離は、特に、コモノマーが揮発性を有し、それが相分離を誘発させるため添加されている軽質炭化水素の揮発性に近い場合に困難である可能性がある。相分離を誘発させる前に、ポリマー溶液を加圧化しまた加熱することは、非常に非効率的である。
【0010】
国際公開第WO2008/082511号は、ポリマーの流体相インラインブレンディング方法を開示している。この方法には、並列に配置された2つ以上の反応器列、生成物ブレンディング用および生成物−供給物分離のための分離器を提供するステップが含まれる。少なくとも1つの並列反応器列において、3個以上の炭素原子を有するオレフィンモノマー、触媒系、場合によるコモノマー、場合によるスカベンジャー、および場合による不活性希釈剤もしくは不活性溶媒を、重合系の固体−流体相転移温度を超える温度で、また重合系の曇点圧力未満の10MPa以上、および1500MPa未満の圧力で反応させて、反応器流出物を生成し、この流出物には、それぞれの並列反応器列中における均一な流体相ポリマー−モノマー混合物が含まれる。それぞれの並列反応器からの反応器流出物が組み合わされて、分離器を通過する。米国出願公開第2008/0234443号も参照されたい。
【0011】
国際公開第WO2008/109212号は、オレフィン重合方法であって、65℃〜150℃の温度および1.72〜34.5MPaの圧力でプロピレンを、1)1種もしくは複数の活性化剤、および1種もしくは複数の非メタロセン金属中心ヘテロアリールリガンド触媒化合物を含む触媒系、2)場合によって、エチレンおよびC4〜C12オレフィンから選択される1種もしくは複数のコモノマー、3)希釈剤または溶媒、および4)場合によってスカベンジャーと接触させるステップを含む方法を開示する。オレフィンモノマーおよび任意のコモノマーは、重合系中に30重量%以上存在し、またプロピレンは、供給物中に80重量%以上存在する。重合は、重合系の固体−流体相転移温度を超える温度および重合系の曇点圧力未満の1MPaを超える圧力で起こり、また重合は、重合系の臨界温度未満の温度または重合系の臨界圧力未満の圧力で起こる。
【0012】
国際公開第WO2008/079565号は、オレフィン重合方法であって、炭素原子3個以上を有する1種もしくは複数のオレフィンモノマーを1種もしくは複数の活性化剤および1種もしくは複数の非メタロセン金属中心ヘテロアリールリガンド触媒化合物を含む触媒系、2)場合によって、1種もしくは複数のコモノマー、3)場合によって希釈剤または溶媒と接触させるステップを含む方法を開示する。オレフィンモノマーおよび任意のコモノマーは、重合系中に40重量%以上存在し、また炭素原子3個以上を有するモノマーは、供給物中に存在する全てのモノマーおよびコモノマーの重量に基づいて80重量%以上存在する。重合は、重合系の固体−流体相転移温度を超える温度および重合系の曇点圧力未満10MPa以上、および1500MPa未満の圧力で起こる。重合系の固体−流体相転移温度を測定することができない場合、重合は、流体相転移温度を超える温度で起こる。米国出願公開第2008/0153996号も参照されたい。
【0013】
国際公開第WO2008/109094号は、ポリマーの流体相インラインブレンディングのためのモノマー再循環方法を開示している。このモノマー再循環方法には、第1群(G1)の1基または複数の反応器列、第2群(G2)の1基または複数の反応器列、およびG1およびG2に流体接続された1基または複数の分離器を提供するステップが含まれる。それぞれのG1およびG2において、オレフィンモノマーは重合されて、均一な流体相ポリマー−モノマー混合物を生成し、その際それぞれのG1およびG2は、少なくとも1種の共通のモノマーを有する。G1からの反応器流出物は、G1分離器を通過して、ポリマーに富む相からモノマーに富む相を分離し、またG2からのポリマーに富む相および反応器流出物は、G2分離器中を通り、ポリマーに富むブレンドから他のモノマーに富む相を分離する。モノマーに富む相は、再循環される。
【0014】
さらなる重合方法またはポリマー分離方法は、米国特許第3,781,253号、同第3,553,156号、同第3,726,843号、同第3,496,135号、同第4,857,633号、同第4,623,712号、同第4,319,021号、同第4,946,940号、同第5,264,536号、同第6,683,153号、同第7,629,397号、同第7,650,930号、米国出願公開第2009/0259005号、同第2008/0090974号、同第2008/0027173号、同第2008/0033127号、同第2007/0299161号、同第2007/0244279号、欧州特許第EP0149342B1号、同第EP0184935B1号、カナダ特許出願CA2372121A1、CA1203348、およびドイツ特許出願DE19905029において開示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の参考文献中に記載される重合方法は、典型的にエネルギー集約的であり、重合反応器と分離器間の熱交換、超臨界重合条件および/またはさらなるポリマー−溶媒分離手段を必要とする。運転するのに要するエネルギーがより少ない溶媒分離手段を使用し、また高い効率、および低減されたコストを有する新たな重合方法を開発する必要性が存在する。補助的なかつエネルギー集約的なデバイスをなくし、こうして資本コストおよび運転コストを低減する必要性も存在する。これらおよび他の必要性が、下記の発明によって満たされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、溶液重合方法であって:
A)1種または複数のモノマーを重質炭化水素溶媒および軽質炭化水素溶媒を含む溶媒の存在下において重合させて、ポリマー溶液を生成させるステップと、
B)このポリマー溶液をこの溶液に熱を加えずに液−液分離器(Liquid-Liquid Separator)に移すステップであり、このステップにおいてポリマー溶液の圧力を液−液分離器より前にもしくは液−液分離器内で、制御された形で能動的に低下させて、少なくとも2つの液相、ポリマーに富む相および溶媒に富む相を生じさせ、かつポリマーに富む相中のポリマー濃度が、液−液分離器に移されるポリマー溶液中のポリマー濃度よりも高いステップと、
C)溶媒に富む相を除去するステップと
を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】LCST(V=蒸気およびL=液体)を呈するポリマー溶液の状態図である。
【図2】液−液分離を用いる溶液重合方法を示す図である。
【図3】液−液分離器の概略図である。
【図4】可変体積観察セル(view cell)の概略図である。この図において、[1]は観察セルであり、[2]はピストンであり、[3]は手動ポンプ(ピストンを動かす)であり、[4]は温度浴であり、[T]は温度プローブであり、また[P]は圧力変換器である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記において考察したように、本発明は、溶液法において下限臨界溶液温度(LCST)の現象を利用することにより、ポリマーから溶媒を除去する技術に関する。反応溶媒は、重質炭化水素溶媒(例えば、C6〜C10炭化水素成分を含有する)および軽質炭化水素溶媒(例えば、C2〜C5炭化水素成分を含有する)の混合物である。液−液分離は、圧力を低下させ、それにより2相、すなわちポリマーに富む液相および溶媒に富む液相の生成を生じさせることによって、達成することができる。溶媒に富む相は、再びまた反応器に再循環することができ、またポリマーに富む相は、完全に溶媒を除去するためさらに処理することができる。本発明の方法により、既存の技術と比較して、プラントの熱負荷全体を低下させることが可能になる。さらに、既存の重合方法についての冷却負荷を低下させる必要性が存在する。本発明の方法は、既存の重合方法に特有なものである、補助的設備およびエネルギー集約的デバイスをなくすことによって、資本コストおよび運転コストを低下させる。
【0019】
上記において考察したように、本発明は、溶液重合方法であって:
A)1種または複数のモノマーを重質炭化水素溶媒および軽質炭化水素溶媒を含む溶媒の存在下において重合させて、ポリマー溶液を生成させるステップと、
B)このポリマー溶液をこの溶液に熱を加えずに液−液分離器(LLS)に移すステップであり、このステップにおいてポリマー溶液の圧力を液−液分離器より前にもしくは液−液分離器内で、制御された形で有効に低下させて、少なくとも2つの液相、ポリマーに富む相および溶媒に富む相を生じさせ、かつポリマーに富む相中のポリマー濃度が、液−液分離器に移されるポリマー溶液中のポリマー濃度よりも高いステップと、
C)溶媒に富む相を除去するステップと
を含む方法を提供する。
【0020】
一実施形態において、ステップAでは、1種または複数のモノマーは、重質炭化水素溶媒および軽質炭化水素溶媒を含む(comprises of)溶媒の存在下において重合して、単一相ポリマー溶液を生成する。重合は、単一相重合反応であることが好ましい。
【0021】
好ましい実施形態において、ポリマーに富む相中のポリマー濃度は、溶媒中の軽質炭化水素成分の量を調節することによって制御される。
【0022】
一実施形態において、重質炭化水素溶媒は、炭素原子6〜10個、好ましくは炭素原子7〜9個を含有する少なくとも1種の炭化水素を含む。重質炭化水素溶媒は、炭素原子6個未満を含有する炭化水素を含まないが、残渣量(重質炭化水素溶媒の全重量に基づいて通例10000ppm未満)のこのような炭化水素は存在してよい。本明細書で使用される「炭化水素」は、炭素原子および水素原子だけで構成される有機分子を指す。
【0023】
一実施形態において、軽質炭化水素溶媒は、炭素原子2〜5個、好ましくは炭素原子2〜4個を含有する少なくとも1種の炭化水素を含む。軽質炭化水素溶媒は、5個を超える炭素原子を含有する炭化水素を含まないが、残渣量(軽質炭化水素溶媒の全重量に基づいて通例10000ppm未満)のこのような炭化水素は存在してよい。本明細書で使用される「炭化水素」は、炭素原子および水素原子だけで構成される有機分子を指す。
【0024】
一実施形態において、軽質炭化水素溶媒は、エタン、プロパン、イソブタンもしくはイソペンタンまたはこれらの混合物から選択され、プロパンまたはイソブタンが好ましい。
【0025】
一実施形態において、軽質炭化水素溶媒の量は、重合系の重量に基づいて5〜40重量パーセント、また好ましくは20〜35重量パーセントである。
【0026】
一実施形態において、重質炭化水素溶媒は、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソ−オクタン、n−ノナン、n−デカンまたはこれらの混合物、好ましくはn−オクタン、イソ−オクタン、n−ノナン、n−デカンまたはこれらの混合物、またより好ましくはn−オクタンから選択される。
【0027】
一実施形態において、ステップAでは、溶媒は、n−オクタンおよびイソブタンを含む。
【0028】
一実施形態において、ステップAでは、溶媒は、本質的にn−オクタンおよびイソブタンからなる。
【0029】
一実施形態において、ステップAでは、溶媒は、n−オクタンおよびイソブタンからなる。
【0030】
一実施形態において、ステップAでは、溶媒は、n−オクタンおよびプロパンを含む。
【0031】
一実施形態において、ステップAでは、溶媒は、本質的にn−オクタンおよびプロパンからなる。
【0032】
一実施形態において、ステップAでは、溶媒は、n−オクタンおよびプロパンからなる。
【0033】
一実施形態において、重質溶媒および軽質炭化水素溶媒とも、反応器より前に混合される。
【0034】
好ましい実施形態において、重合工程では、溶媒の重質および軽質炭化水素成分をお互いから分離する特別な単位操作(蒸留など)は存在しない。
【0035】
他の実施形態において、重合工程では、モノマーおよびコモノマーから溶媒を分離する特別な単位操作(蒸留など)は存在しない。
【0036】
好ましい実施形態において、ステップAの重合は、次の:(a)反応器1基、および(b)直列に配置される反応器2基以上の1つからなる群から選択される反応器配置において行われる。さらなる実施形態において、この反応器配置におけるそれぞれの反応器は、冷却系を包含していない。他の実施形態において、この反応器配置におけるそれぞれの反応器は、冷却系を包含している。
【0037】
好ましい実施形態において、この反応器配置におけるそれぞれの反応器は、断熱型反応器である。
【0038】
一実施形態において、ステップAのそれぞれの反応器における圧力は、18MPa(180バール)未満、好ましくは15MPa(150バール)未満、より好ましくは12MPa(120バール)未満である。
【0039】
一実施形態において、ステップAのそれぞれの反応器における圧力は、40バール(4MPa)〜180バール(18MPa)、好ましくは60バール(6MPa)〜150バール(15MPa)である。
【0040】
一実施形態において、ステップAのそれぞれの反応器における圧力は、110バール(11MPa)〜150バール(15MPa)、好ましくは110バール(11MPa)〜130バール(13MPa)である。
【0041】
一実施形態において、ステップAの重合温度は、150℃を超え、好ましくは155℃を超え、より好ましくは160℃を超え、またより一層好ましくは170℃を超える。
【0042】
一実施形態において、ステップAの重合温度は、170℃〜220℃、好ましくは180℃〜210℃、より好ましくは190℃〜200℃である。
【0043】
一実施形態において、ステップAの重合温度は、170℃〜220℃、好ましくは180℃〜220℃、より好ましくは190℃〜220℃である。
【0044】
一実施形態において、ステップAの重合温度は、170℃〜200℃、好ましくは180℃〜200℃、より好ましくは190℃〜200℃である。
【0045】
一実施形態において、ステップAにおける溶媒は、重合系の重量に基づいて40重量パーセントを超える量で存在している。
【0046】
一実施形態において、ステップAにおける溶媒は、重合系の重量に基づいて50重量パーセントを超える量で存在している。
【0047】
一実施形態において、ステップAにおける溶媒は、重合系の重量に基づいて60重量パーセントを超える量で存在している。
【0048】
一実施形態において、ステップAにおける溶媒は、重合系の重量に基づいて70重量パーセントを超える量で存在している。
【0049】
一実施形態において、ステップAにおける溶媒は、重合系の重量に基づいて80重量パーセントを超える量で存在している。
【0050】
一実施形態において、ステップAにおける溶媒は、重合系の重量に基づいて85重量パーセント以上の量で存在している。
【0051】
一実施形態において、ステップAにおける溶媒は、重合系の重量に基づいて90重量パーセント以上の量で存在している。
【0052】
一実施形態において、ステップAにおける溶媒は、重合系の重量に基づいて80〜90重量パーセント、好ましくは85〜90重量パーセントの量で存在している。
【0053】
一実施形態において、ステップAにおける軽質炭化水素溶媒は、重合系の重量に基づいて20〜50重量パーセント、好ましくは25〜45重量パーセント、またより好ましくは30〜40重量パーセントの量で存在している。
【0054】
一実施形態において、ステップAにおける重質炭化水素溶媒は、重合系の重量に基づいて50〜80重量パーセント、好ましくは55〜75重量パーセント、またより好ましくは60〜70重量パーセントの量で存在している。
【0055】
一実施形態において、ステップAにおける軽質炭化水素溶媒は、溶媒の重量に基づいて25〜60重量パーセント、好ましくは30〜50重量パーセント、またより好ましくは35〜45重量パーセントの量で存在している。
【0056】
一実施形態において、ステップAにおける重質炭化水素溶媒は、溶媒の重量に基づいて40〜75重量パーセント、好ましくは50〜70重量パーセント、またより好ましくは55〜65重量パーセントの量で存在している。
【0057】
一実施形態において、溶媒は、軽質炭化水素溶媒および重質炭化水素溶媒の合計重量に基づいて20〜50重量パーセント、好ましくは20〜40重量パーセントの軽質炭化水素溶媒、および80〜50重量パーセント、好ましくは80〜60重量パーセントの重質炭化水素溶媒を含む。
【0058】
一実施形態において、重質炭化水素溶媒は、炭素原子6個以上、好ましくは炭素原子7個以上、より好ましくは炭素原子8個以上を有する炭化水素を含む。
【0059】
一実施形態において、重質炭化水素溶媒は、炭素原子8個以上、好ましくは炭素原子9個以上、より好ましくは炭素原子10個以上を有する炭化水素を含む。
【0060】
一実施形態において、軽質炭化水素溶媒は、炭素原子5個以下、好ましくは炭素原子4個以下、より好ましくは炭素原子3個以下を有する炭化水素を含む。
【0061】
一実施形態において、軽質炭化水素溶媒はC3炭化水素を含み、また重質炭化水素溶媒は、炭素原子6個以上、好ましくは炭素原子7個以上、より好ましくは炭素原子8個以上を有する炭化水素を含む。
【0062】
一実施形態において、軽質炭化水素溶媒はC3炭化水素を含み、また重質炭化水素溶媒は、炭素原子8個以上、好ましくは炭素原子9個以上、より好ましくは炭素原子10個以上を有する炭化水素を含む。
【0063】
一実施形態において、重質炭化水素溶媒の最高沸点成分と、軽質炭化水素溶媒中の最高沸点成分との間の炭素数における差異は、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6、またより一層好ましくは少なくとも7である。
【0064】
一実施形態において、重質炭化水素溶媒の最高沸点成分と、軽質炭化水素溶媒中の最高沸点成分との間の温度差は、少なくとも125℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも170℃、またより一層好ましくは少なくとも200℃である。沸点は、ASTM E 1719-97を使用して測定することができる(沸点は、その温度で蒸気圧が1気圧(1.013バール)に等しくなる温度である。)。典型的には、撹拌されるフラスコ沸点測定計(温度200℃以下)を使用して、沸点を測定する。また、沸点は典型的には、CRC Handbooks of Chemistry and PhysicsおよびDIPPR(Design Institute for Physical Properties) 801 Database中に見出すことができる。
【0065】
一実施形態において、重質炭化水素溶媒中の最高沸点物質(boiler)の最低沸点は、105℃を超え、好ましくは120℃を超え、より好ましくは150℃を超える。
【0066】
一実施形態において、重質炭化水素溶媒中の最高沸点物質の最高沸点は、200℃未満、好ましくは180℃未満、より好ましくは160℃未満である。
【0067】
一実施形態において、軽質炭化水素溶媒中の最高沸点成分の最高沸点は、35℃未満、好ましくは0℃未満、より好ましくは−40℃未満である。
【0068】
溶媒分析は、GC−MS技術(例えば、市販の石油カラム、温度約280℃まで)によって行うことができる。1重量パーセント以上の質量留分を有する成分だけが、分析において考慮される。
【0069】
溶媒は、本明細書において記述している2つ以上の実施形態の組合せを含むことができる。
【0070】
一実施形態において、ステップAにおける重合は、亜臨界(subcritical)領域で操作される。
【0071】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、1種または複数のモノマーおよび溶媒の重量に基づいて40重量パーセントを超える溶媒の存在下において、ステップAにおける重合において使用されるそれぞれの反応器中に供給される。
【0072】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、1種または複数のモノマーおよび溶媒の重量に基づいて80重量パーセントを超える溶媒の存在下において、ステップAにおける重合において使用されるそれぞれの反応器中に供給される。
【0073】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、1種または複数のモノマーおよび溶媒の重量に基づいて85重量パーセントを超える溶媒の存在下において、ステップAにおける重合において使用されるそれぞれの反応器中に供給される。
【0074】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて40重量パーセント以下の量で存在する。
【0075】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて35重量パーセント以下の量で存在する。
【0076】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて30重量パーセント以下の量で存在する。
【0077】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて25重量パーセント以下の量で存在する。
【0078】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて20重量パーセント以下の量で存在する。
【0079】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて15重量パーセント以下の量で存在する。
【0080】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて10重量パーセント以下の量で存在する。
【0081】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて10〜40重量パーセントの量で存在する。
【0082】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて10〜30重量パーセントの量で存在する。
【0083】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて10〜25重量パーセントの量で存在する。
【0084】
一実施形態において、1種または複数のモノマーは、ステップAにおいて、重合系の重量に基づいて10〜20重量パーセントの量で存在する。
【0085】
一実施形態において、ステップBでは、液−液分離器に入るポリマー溶液中のポリマー濃度は、ポリマー溶液の重量に基づいて5〜30重量パーセントである。
【0086】
一実施形態において、ステップBでは、液−液分離器に入るポリマー溶液中のポリマー濃度は、ポリマー溶液の重量に基づいて10〜15重量パーセントである。
【0087】
一実施形態において、ステップBでは、液−液分離器を出るポリマーに富む相中のポリマー濃度は、ポリマーに富む相の重量に基づいて20〜50重量パーセント、また好ましくは30〜40重量パーセントである。
【0088】
一実施形態において、それぞれの反応器と液−液分離器との間では、熱は加えられない。
【0089】
好ましい実施形態において、本方法は、ステップAとステップBの間の熱交換器などの、加熱デバイスを包含していない。
【0090】
一実施形態において、熱は、熱交換器によって、ステップAおよびステップBにおいてポリマー溶液に加えられない。
【0091】
一実施形態において、熱は、より高温の流れ(より高エネルギー)によって、ステップAおよびステップBにおいてポリマー溶液に加えられない。
【0092】
好ましい実施形態において、ステップBは繰り返されない。
【0093】
一実施形態において、ステップBでは、圧力を、80バール(8MPa)〜10バール(1MPa)、好ましくは70バール(7MPa)〜30バール(3MPa)の範囲にある圧力まで低下させる。
【0094】
一実施形態において、ステップBの後、ポリマーに富む相は、180℃〜250℃、好ましくは180℃〜230℃の範囲にある温度まで加熱される。
【0095】
一実施形態において、液−液分離器を出た後、ポリマーに富む相は、180〜230℃の範囲にある温度まで加熱される。
【0096】
一実施形態において、ステップBでは、ポリマー溶液は、2つの液相だけを生成する。
【0097】
好ましい実施形態において、軽質炭化水素溶媒は、本発明の方法のステップBまたはステップCに添加されない。
【0098】
好ましい実施形態において、相分離剤は、液−液分離器より前または液−液分離器内で、重合溶液に添加されない。さらなる実施形態において、相分離剤は、液−液分離器の後で、重合溶液に添加されない。
【0099】
相分離剤のいくつかの例には、H2、N2、CO、CO2およびCH4が含まれる。
【0100】
一実施形態において、ポリマーに富む相は、液−液分離器の下流側で加熱される。さらなる実施形態において、ポリマーに富む相は、180℃〜250℃、好ましくは180℃〜230℃の範囲にある温度まで加熱される。
【0101】
一実施形態において、本方法は、LLSの下流側のポリマーに富む相の圧力を低下させて、溶液の全重量に基づいて40重量パーセントを超える、好ましくは50重量パーセントを超えるポリマーを含有する溶液を生成させるステップをさらに含む。さらなる実施形態において、このポリマーに富む相は、圧力を低下させる間加熱される。
【0102】
一実施形態において、ステップBで生成される少なくとも2つの液相は、加熱されない。
【0103】
一実施形態において、本重合方法は、少なくとも2つの液相を加熱するステップを含まない。
【0104】
一実施形態において、ポリマーに富む相は、これらの2相の合計重量に基づいて5重量パーセントを超える、同伴された「溶媒に富む相」を含有しない。
【0105】
一実施形態において、ステップBでは、液−液分離器内の圧力は、800psi以下、好ましくは700psi以下、またより好ましくは600psi以下である。
【0106】
一実施形態において、ステップBでは、液−液分離器内の圧力は、400psi〜800psi、好ましくは450psi〜700psi、またより好ましくは500psi〜600psiである。
【0107】
一実施形態において、液−液分離器内の温度は、150℃以上、好ましくは160℃以上、またより好ましくは170℃以上である。
【0108】
一実施形態において、ステップBでは、液−液分離器内の温度は、150℃〜220℃、好ましくは160℃〜210℃、またより好ましくは165℃〜205℃である。
【0109】
好ましい実施形態において、液−液分離器は容器である。
【0110】
一実施形態において、液−液分離器は、10ガロン以上の容量を有する。
【0111】
一実施形態において、液−液分離器は、100ガロン以上の容量を有する。
【0112】
一実施形態において、液−液分離器は、1000ガロン以上の容量を有する。
【0113】
一実施形態において、液−液分離器は、10,000ガロン以上の容量を有する。
【0114】
一実施形態において、液−液分離器は、50,000ガロン以上の容量を有する。
【0115】
一実施形態において、液−液分離器は、10〜50,000ガロンの容量を有する。
【0116】
一実施形態において、液−液分離器は、100〜25,000ガロンの容量を有する。
【0117】
一実施形態において、液−液分離器は、40分以下の、好ましくは30分以下の、より好ましくは20分以下の滞留時間を有する。滞留時間は、流体(典型的には2相)がLLS内で費やす平均時間量である。この時間は、「LLS容器の体積」/「LLS入口への流体の体積流量速度」の比率として計算される。
【0118】
一実施形態において、液−液分離器は、15分以下の、好ましくは10分以下の、より好ましくは5分以下の滞留時間を有する。
【0119】
一実施形態において、液−液分離器は、5〜30分の、好ましくは5〜25分の、より好ましくは5〜20分の滞留時間を有する。
【0120】
好ましい実施形態において、液−液分離器内では、機械的混合は行われない。
【0121】
一実施形態において、液−液分離器は、ステップBにおいて、少なくとも2つの液相、また好ましくは2つの液相を含む。液相は、重量法により測定して0.2g/cc以上の、好ましくは0.3g/cc以上の密度を有する。
【0122】
液−液分離器は、本明細書において記述した2つ以上の実施形態の組合せを含むことができる。
【0123】
一実施形態において、ステップAにおける重合は、連続重合である。
【0124】
一実施形態において、ステップAにおける重合は、バッチ重合である。
【0125】
一実施形態において、ステップAの重合は、フルオロ炭化水素を含まない。
【0126】
一実施形態において、ステップAの重合は、フルオロカーボンを含まない。
【0127】
一実施形態において、それぞれの重合反応器は、熱交換器に接続されていない。
【0128】
好ましい実施形態において、この重合はイオン重合ではない。
【0129】
一実施形態において、ポリマー溶液は、エチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマーから選択されるポリマーを含む。さらなる実施形態において、ポリマーはエチレン系ポリマーである。その上さらなる実施形態において、反応器に供給されるエチレンの濃度は、反応器1基だけ使用される場合、反応器への供給物の重量に基づいて、または反応器2基以上が使用される場合、それぞれの反応器への供給物の重量に基づいて、30重量パーセント未満、好ましくは20重量パーセント未満である。さらなる実施形態において、エチレン系ポリマーは、エチレン/アルファ−オレフィンインターポリマーである。さらなる実施形態において、アルファ−オレフィンは、C3〜C8、好ましくはC4〜C8アルファ−オレフィンである。さらなる実施形態において、インターポリマーは、インターポリマーの重量に基づいて、30重量パーセント未満のアルファ−オレフィンを含有する。
【0130】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、EPDMである。
【0131】
一実施形態において、ステップAからのポリマー溶液は、ポリマー溶液の重量に基づいて5〜30重量パーセントのポリマーを含む。
【0132】
一実施形態において、ステップAからのポリマー溶液は、ポリマー溶液の重量に基づいて6〜20重量パーセントのポリマーを含む。
【0133】
一実施形態において、ステップAからのポリマー溶液は、ポリマー溶液の重量に基づいて8〜15重量パーセントを含む。
【0134】
一実施形態において、ステップAからのポリマー溶液は、ポリマー溶液の重量に基づいて10〜12重量パーセントのポリマーを含む。
【0135】
本発明の重合方法は、本明細書において記述した2つ以上の実施形態の組合せを含むことができる。例えば、この重合方法は、重合温度、反応器圧力、溶媒の型および量、1種もしくは複数のモノマーの1つもしくは複数の量、および/または本明細書において記述した他の実施形態の組合せを含むことができる。
【0136】
一実施形態において、触媒は、ポリマー溶液が液−液分離器に移される前に、もしくは移された後に失活される。他の実施形態において、触媒は、ポリマー溶液が液−液分離器に移された後に失活される。一実施形態において、ステップCでは、溶媒に富む相が、ステップAの重合に戻される。
【0137】
一実施形態において、溶媒は、1もしくは2段階の脱揮発でポリマーから除去される。
【0138】
一実施形態において、溶媒は、脱揮発−押出し(devo-extrusion)方法を使用して、ポリマーから除去される。
【0139】
一実施形態において、この方法は、ポリマーに富む相を液−液分離器の下流側に位置している第1段の脱揮発装置(devolatizer)に移すステップをさらに含む。さらなる実施形態において、第1段の脱揮発装置は、5バール(0.5MPa)を超える圧力で操作される。
【0140】
一実施形態において、この方法は、再循環モノマーを反応器に移すのに、蒸発したモノマーを加圧して流体とするのに使用される圧縮機に移すステップを含まない。
【0141】
一実施形態において、この方法は、液−液分離器の下流側で、ポリマーに富む相を加熱する(例えば、熱交換器を使用する)ステップをさらに含む。この加熱エレメントは、液−液分離器の下流側に位置する脱揮発装置の上流側に位置することができる。さらなる実施形態において、ポリマーに富む相は、脱揮発装置より前、もしくは脱揮発装置内で加熱される。
【0142】
上記において考察したように、本発明の方法により、熱が、液−液分離器(LLS)の下流側でポリマーに富む相に加えられるだけなので、従来の技術と比較して全プラントの熱入力の低下が可能になることが見出されている。さらに、LLSの前において熱が加えられないので、LLSの下流側で溶媒に富む相を冷却するのに要する冷却負荷も、より低い。
【0143】
本発明の方法は、次の:1)熱除去を用いる、より高価な反応器(断熱型反応器を使用することができるので)、2)再循環モノマーの圧縮機、および3)水素ストリッピングカラム、をなくすことにより、資本コストおよび運転コストを著しく節約することができる。溶媒の脱揮発を助けるため、ポリマーに富む相に熱を加えることができる(例えば、熱交換器を使用して)。一実施形態において、流体は相境界に存在するので、熱交換器は、多重相を取り扱うように設計される。何らかの熱の付加または圧力の低下は、第2の液相を生成させ、また気相を生成させる可能性もある。熱交換器操作を単一相(均一)にするように、ポンプを使用して圧力を上げてもよい。
【0144】
また、軽質炭化水素溶媒も、重質炭化水素溶媒も一緒に、1種もしくは複数の反応器供給物に再循環することができるので、混合溶媒系について、軽質炭化水素溶媒を重質炭化水素溶媒から分離する必要性も存在しない。液−液分離器出口流のポリマー濃度を制御するため予熱器を使用する代わりに、種々の製品等級(異なるレベルの同一コモノマーを有するポリマー)のために、反応器内での軽質炭化水素(例えば、プロパンにプロピレン(コモノマー)を加えたもの)の一定濃度を維持するため、軽質炭化水素溶媒濃度を容易に調節することができる点が見出されている。さらに、同一の型の液−液分離器を種々のポリマー系列(種々のコモノマーを有するポリマー)のために使用することができる。
【0145】
溶液ポリマー方法のため、ポリマー溶液から溶媒、モノマーおよびコモノマーを分離する従来の取組みは、脱揮発である。このシナリオにおいて、脱揮発操作は、液−液分離器の下流側で行われる。ポリマーの脱揮発は、ポリマー溶液中の揮発性物質を急速蒸発させて蒸気相とする場合である。反応後に、通例では多段階の脱揮発が必要とされ、それぞれのその後の段階は、従来の段階よりも低い圧力で操作される。最終段階は、通例深度真空(deep vacuum)で操作されて、ポリマー中に残される揮発性有機化合物の所望の低レベルが達成される。深度真空(5〜30ミリバール)で操作することは、取扱わなければならない蒸気量に対してエネルギー面でも資本面でも集約的である。前段階の脱揮発によって、送風機、圧縮機および真空ポンプなどの真空設備で処理しなければならない揮発性物質量が減少し、このような設備の設計を合理的な規模とすることが可能になる。真空設備の規模を縮減するのに使用される他の技術は、後続の圧力増加デバイスよりも前に、これらの深度真空圧で大部分の蒸気を冷却および凝縮させることである。
【0146】
溶媒の選択、ならびにモノマーおよびコモノマー組成は、脱揮発操作に基本的影響を有する。顕著な量の、エチレンもしくはプロピレンなどの軽質モノマーは容易に凝縮せず、これらのモノマーを除去する単離工程において深度真空とするのは非実際的である。これらの軽質成分は、脱揮発の第1段階を実用的圧力で操作して、広く大部分のこれらの軽質成分の容易な除去を可能とすることができるように、その上多くの溶媒を除去するように、優先的に蒸発させる。そうすると、その後の段階は、溶媒が揮発性過ぎないかぎり、深度真空とすることができる。液−液平衡を十分促進する程軽質の揮発性有機溶媒(例えば、C5以下)も、合理的な冷凍温度(すなわち、>−20℃)で容易に凝縮させるには軽質過ぎる。より寒冷な温度は、深度真空条件(すなわち、5〜30ミリバール)で使用するため特別な構築材料を必要とする。ポリマー中に残される残渣的溶媒は、より重質な溶媒(例えば、n−オクタン)よりも、同一圧力では、より軽質な溶媒では少ないが、軽質溶媒は容易には凝縮しないので、真空系は、深度真空を達成するにはより効率が悪いであろう。直観では明らかではないことは、より軽質な溶媒は、より性能が悪い脱揮発系をもたらす可能性があり、第3段階の脱揮発を加える必要性を生じる。ここに、本発明に基づいて、混合溶媒の取組みを使用すれば、大部分のより軽質な成分(未反応C2〜C5モノマーおよびコモノマーならびに軽質溶媒)が、第1段階で急速蒸発して、深度真空条件下で凝縮可能である溶媒を残し、したがって2段階の脱揮発系が実用的なものとなる。
【0147】
本発明の方法の一実施形態において、溶媒は、1もしくは2段階の脱揮発で、ポリマーから除去される。さらなる実施形態において、それぞれの脱揮発段階は、30バール以下の圧力で操作される。
【0148】
一実施形態において、溶媒は、2段階の脱揮発で、ポリマーから除去される。さらなる実施形態において、第1の脱揮発段階は、圧力1〜15バール、好ましくは6〜10バールで操作される。さらなる実施形態において、第2の脱揮発段階は、圧力5〜30ミリバール、好ましくは10〜20ミリバールで操作される。
【0149】
典型的には、溶媒はポリマーから除去もしくは分離され、安全性、環境性、FDAおよび製品品質の要求条件によって設定される工業的実施に関して許容可能である残渣レベルが、ポリマー中に残っている。
【0150】
重質および軽質炭化水素の溶媒混合物が、重合溶媒として単一成分溶媒が使用される場合の溶媒組成のドリフトをなくす助けになり、またその後、モノマーおよびコモノマー中の不純物から徐々に生じる異性体および不活性蓄積物からもたらされる、液−液分離性能低下のリスクをなくす助けになることも見出されている。
【0151】
一実施形態において、本発明の方法は、多段階真空系と結合されない、また脱揮発押出装置と結合されない、単一段階の真空系を使用する。
【0152】
重質および軽質炭化水素溶媒の混合物の使用により、液−液分離器における液−液相分離挙動の制御が可能になる。この制御の特徴により、生成物の遷移、モノマー/コモノマー中の不純物の蓄積、または溶媒、生成物および/もしくは反応物中の他の変化による溶媒組成の変化を調整することができる。液−液分離器中のポリマーに富む相の組成を所望の操作レベルに保持することができる。
【0153】
本発明の方法は、本明細書において記述した2つ以上の実施形態の組合せを含むことができる。例えば、この重合方法は、重合温度、反応器圧力、溶媒の型および量、1種もしくは複数のモノマーの1つもしくは複数の量、および/または本明細書において記述した他の実施形態の組合せを含むことができる。
【0154】
定義
本明細書において列挙される任意の数的範囲には、任意の低値および任意の高値の間に少なくとも2つの単位に分かれたものが存在するとの条件で、1単位の増分として、その低値および高値からの全ての値が含まれる。一例として、工程パラメーター、物理的もしくは他の性質例えば温度(℃)、圧力などが20〜100であると言及される場合、本明細書では、20、21、22などの全ての個々の値、および20〜44、55〜70、75〜100などの小範囲が、明白に列挙されることを意図している。1未満である値または1を超える分数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲については、一単位は、適正なものとして0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。10未満の単一ディジット数を含む範囲(例えば、1〜5)については、一単位は通例0.1であるとみなされる。これらは、具体的に意図されるものの一例に過ぎず、本出願において、列挙された最低値と最高値の間の全ての可能な数値の組合せが明白に言及されているものとみなすべきである。本明細書において考察されるように、温度、圧力および他の性質を参照して、数的範囲が列挙されている。
【0155】
本明細書において使用される、用語「ポリマー」とは、同一もしくは異なる型であるかに拘らずモノマーを重合させることにより調製したポリマー質化合物を指す。したがって総称的用語ポリマーは、用語ホモポリマー(1つの型のモノマーだけから調製したポリマーを指すのに用いられる)および本明細書において以後定義される用語インターポリマーを包含する。
【0156】
本明細書において使用される、用語「インターポリマー」とは、少なくとも2つの異なる型のモノマーの重合によって調製したポリマーを指す。したがって総称的用語インターポリマーには、コポリマー(2つの異なる型のモノマーから調製したポリマーを指すのに用いられる)および3つ以上の異なる型のモノマーから調製したポリマーが、含まれる。
【0157】
本明細書において使用される、用語「オレフィン系ポリマー」とは、ポリマーの重量に基づいて少なくとも大部分の重量パーセントの重合したオレフィン(例えばエチレンまたはプロピレン)、および場合によって、1種もしくは複数のさらなるコモノマーを含有するポリマーを指す。
【0158】
本明細書において使用される、用語「エチレン系ポリマー」とは、少なくとも大部分の重量パーセントの重合したエチレン(ポリマーの重量に基づいて)、および場合によって、1種もしくは複数のさらなるコモノマーを含有するポリマーを指す。
【0159】
本明細書において使用される、用語「プロピレン系ポリマー」とは、少なくとも大部分の重量パーセントの重合したプロピレン(ポリマーの重量に基づいて)、および場合によって、1種もしくは複数のさらなるコモノマーを含有するポリマーを指す。
【0160】
本明細書において使用される、用語「ポリマーに富む相」とは、考察下にある2つ以上の相に関連して、ポリマーに富む相の全重量に基づく、その重量分率により測定して、より大きい濃度のポリマーを含有する相を指す。
【0161】
本明細書において使用される、用語「溶媒に富む相」とは、考察下である2つ以上の相に関連して、溶媒に富む相の全重量に基づく、その重量分率により測定して、より大きい濃度の溶媒を含有する相を指す。
【0162】
本明細書において使用される、用語「重質炭化水素溶媒」とは、炭素原子6個以上を含有する、少なくとも1種の炭化水素を含有する非反応性(重合触媒に関して)炭化水素を指す。典型的には、重質炭化水素溶媒は、95℃を超える正常沸点を有する。重質炭化水素溶媒は、炭素原子6個未満を含有する炭化水素は含まないが、しかし残渣量(重質炭化水素溶媒の全重量に基づいて通例10000ppm未満)のこのような炭化水素は存在できる。本明細書において使用される「炭化水素」とは、炭素および水素原子だけで構成される有機分子を指す。例は、n−オクタン、n−ノナン、イソ−オクタンのようなアルカンおよびオクテンの内部異性体(internal isomers)のようなアルケン(末端炭素原子上に位置しない二重結合を有するもの)である。
【0163】
本明細書において使用される、用語「軽質炭化水素溶媒」とは、炭素原子5個以下を含有する、少なくとも1種の炭化水素を含有する非反応性(重合触媒に関して)炭化水素を指す。典型的には、軽質炭化水素溶媒は、40℃未満の正常沸点を有する。軽質炭化水素溶媒は、5個を超える炭素原子を含有する炭化水素は含まないが、しかし残渣量(軽質炭化水素溶媒の全重量に基づいて通例10000ppm未満)のこのような炭化水素は存在できる。本明細書において使用される「炭化水素」とは、炭素および水素原子だけで構成される有機分子を指す。例には、エタン、プロパン、イソブテンなどが含まれる。
【0164】
本明細書において使用される、相とは、その領域全体では物質の全ての物理的性状が本質的に均一な空間の領域(熱力学系)を指す。物理的性状の例には、密度、屈折率および化学組成が含まれる。
【0165】
液−液相は、混和していない2つの別々の液相の組合せである。
【0166】
本明細書において使用される、用語「液−液分離器(LLS)」とは、2つ以上の液相を分離するのに使用されるデバイスを指す。この分離は、特定の動作、例えば、2つ以上の液相を生じさせるために取られる圧力の低下からもたらされる。
【0167】
本明細書において使用される、用語「ポリマー溶液」とは、1種もしくは複数の溶媒中でポリマーが完全に溶解して(典型的には、ポリマーよりも分子量がはるかに低い)、均一な(極めてしばしば液体状態である)相を形成しているものを指す。この溶液はポリマーおよび溶媒を含み、また重合反応の未反応モノマーおよび他の残留物も含み得る。
【0168】
本明細書において使用される、用語「溶媒」とは、モノマーおよび/またはポリマーのような考察中の化学種を溶解して、液相をもたらす物質(例えば、炭化水素または2種以上の炭化水素の混合物(モノマーおよびコモノマーを除く))を指す。
【0169】
本明細書において使用される、用語「混合溶媒」とは、2種以上の溶媒の混合物(例えば、2種以上の炭化水素の混合物)を指す。
【0170】
本明細書において使用される、用語「単一溶媒」とは、1種の溶媒(例えば、1種の炭化水素)を指す。
【0171】
本明細書において使用される、用語「溶液重合」とは、生成されたポリマーが、重合溶媒中に溶解される重合方法を指す。
【0172】
本明細書において使用される、用語「相分離剤」とは、既存のポリマー溶液に添加されると、所与のポリマー重量分率で、下限臨界溶液温度(LCST)を低下させる効果を有する物質を指す。
【0173】
本明細書において使用される、下限臨界溶液温度(LCST)とは、それを超えると、一定の組成の溶液が、一定の圧力で、2つの液相に分離し、この温度未満では、この溶液が単一液相として存在する温度として、定義される。
【0174】
本明細書において使用される、用語「重合系」とは、モノマー、溶媒および触媒を含む混合物であり、適正な条件下で重合反応に掛けられる混合物を指す。重合系は、反応器への全供給物に対応する。
【0175】
本明細書において使用される、用語「断熱型反応器」とは、有効な熱除去機構を有さない、また有効な熱付加機構を有さない反応器を指す。
【0176】
本明細書において使用される、用語「圧力低下手段」とは、液体の連続流または液体の一定バッチの圧力低下を可能にする制御弁などのデバイスを指す。
【0177】
本明細書において使用される、語句「制御された形で能動的に低下させる」とは、所望のレベルまで、所望の速度で圧力を低下させる、制御弁の使用などの操作を指す。
【0178】
本明細書において使用される、用語「単一相ポリマー溶液」とは、1種もしくは複数の溶媒(典型的には、ポリマーよりも分子量がはるかに低い)中でポリマーが完全に溶解して、均一な(極めてしばしば液体状態である)相を形成しているものを指す。
【0179】
本明細書において使用される、語句「ポリマーに富む相におけるポリマーの濃度」とは、ポリマーを含有する溶液(ポリマーに富む相)の全重量に基づくポリマーの重量分率を指す。
【0180】
本明細書において使用される、語句「溶媒に富む相におけるポリマーの濃度」とは、ポリマーを含有する溶液(溶媒に富む相)の全重量に基づくポリマーの重量分率を指す。
【0181】
本明細書において定義される、用語「亜臨界領域」とは、重合媒質(1種もしくは複数の溶媒、モノマーおよび1種もしくは複数のコモノマーの混合物[1種もしくは複数の触媒または1種もしくは複数の助触媒を含まない]として定義される)の臨界温度未満の重合温度、および重合媒質の臨界圧力未満の重合圧力を指す。
【0182】
本明細書において使用される、用語「臨界温度」とは、その温度を超えると、どんな圧力変化にも拘らず、その重合媒質が相分離しない、重合媒質の温度を指す。
【0183】
本明細書において使用される、用語「臨界圧力」とは、その圧力を超えると、どんな温度変化にも拘らず、その重合媒質が相分離しない、重合媒質の圧力を指す。
【0184】
曇点圧力を定義すると、その圧力未満であると、一定温度における一定組成のポリマー溶液が、2つの液相に分離する圧力である。この圧力を超えると、ポリマー溶液は、単一液相である。
【0185】
曇点温度は、その温度を超えると、一定圧力における一定組成のポリマー溶液が、2つの液相に分離する温度(閾温度)である。この温度未満であると、ポリマー溶液は、単一液相である。さらに、曇点温度は、その温度未満では2相が存在し、その温度を超えると1相が存在する、天井温度(ceiling temperature)でもあるとしてよい。
【0186】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびそれらの派生語は、それが特に開示されているかいないかに拘らず、任意のさらなる成分、ステップまたは手順の存在を排除することを意図しない。これに反して、用語「本質的に、からなる(consisting essentially of)」は、それに続くどんな列挙の範囲からも、実施可能性に対し本質的ではないものを除いて、任意の他の成分、ステップまたは手順を排除する。用語「からなる(consisting of)」は、特に明確に記述されまたは列挙されていない任意の成分、ステップまたは手順を排除するものである。
【0187】
試験方法
相中のポリマーの重量分率および溶媒の重量分率の測定
所与の二成分溶液におけるポリマーおよび溶媒の量を溶液の重量から測定する。その場合、溶媒を完全に蒸発させ、乾燥したポリマーの重量を量っている。乾燥したポリマー重量は、初めに存在するポリマーの量であり、溶媒の重量は、溶液の重量とポリマーの重量との間の差異から、決定される。溶媒およびポリマーの量から、それぞれの重量分率を計算することができる。ポリマーからの低分子量部分の蒸発を最小限にするように気を付けるべきである。このことは、溶媒を真空下で、低温で蒸発させること(回転蒸発器(roto-vaporator)においてなど)により達成することができる。
【0188】
相境界(温度および圧力)を測定するため、既知組成の溶液を調製し、次いで曇点を測定することによって、組成の測定を完全に避けることができる。温度もしくは圧力またはその両方を変化させることによって、特に一定とした組成の溶液が単一液相から2つの液相に変化すると、2相の屈折率の差異のため、混合物の外観が透明から曇りに変化する。この試験は、極めて少量の第2の液相を測定するのに非常に効果的である。したがって、初期の相分離、または言い換えると相境界の測定として、この試験を取ることができる。
【0189】
気−液平衡(vapor-liquid equilibrium)(VLE)測定のため、液体溶液上方の一部の上部空間(headspace)を残し、蒸気生成を可能にしている。上部空間は、液体組成の変化を最小限とするように、蒸発した溶媒の量が少ないようなものとすべきである。系の温度を所望の値に調節し、次いで蒸気による上部空間の全圧を測定する。上部空間下方の液相溶液を撹拌して、熱力学的平衡を確保することが重要である。
【0190】
実験
実施例の溶液重合の適切な工程流れ図を図2に示している。それぞれ熱除去機構を有さない2基の反応器[1、2]が重合に使用される。圧力低下のため、制御弁[3]が使用される。液−液分離器(LLS)[4]は、ポリマーに富む液相および溶媒に富む液相を分離するためにある。第1段脱揮発装置[5]は、蒸発によって溶媒を除去するためにある。熱交換器[6]も示される。第2段脱揮発装置[7]は、近真空(5〜30ミリバール)条件で操作することにより、さらなる溶媒除去のために使用される。この工程配置はまた、真空系デバイス[8]、溶媒蒸気用凝縮交換器[9、10]、再循環溶媒急速蒸発ドラム[11]、ポンプ[12]、再循環溶媒精製ベッド[13]、供給ポンプ[14]、供給物冷却交換器[15]および冷却交換器[16]も包含する。LLSを出て行く溶媒に富む相は、フィルター[17]を通して濾過して、ポリマー粒子を除去することができる。LLSの上流側で触媒が失活されると、LLSを出て行く溶媒に富む相は精製ベッド[18]に掛けられて、1種または複数の触媒キル剤を除去することができる。触媒失活を促進するため、1種または複数の触媒キル剤および反応器出口流を静的ミキサー[19]で混合することができる。最終ポリマー製品は、溶媒除去(真空下)に掛けた後で、造粒系[20]を使用して造粒することができる。
【0191】
重合は、1基または複数の断熱型反応器内で行われる。反応器の数は、ポリマーの型および所望の分子量分布によって決まる。反応器圧力は、通例40バール(4MPa)〜150バール(15MPa)である。反応器作動温度は、通例140℃〜190℃である。反応溶媒は、重質炭化水素溶媒および軽質炭化水素溶媒の混合物である。適切な重質炭化水素溶媒の例には、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカンなどが含まれる。適切な軽質炭化水素溶媒の例には、エタン、プロパンおよびイソブタンが含まれる。典型的な軽質炭化水素溶媒濃度は、重合系の重量に基づいて、5重量パーセント〜40重量パーセントである。
【0192】
重合が完了したら、ポリマー溶液はLLS[4]に移される。LLS内の圧力を低下させて、液−液分離を生じさせ、こうしてポリマーに富む相および溶媒に富む相を生成させる。LLS内で、重力または強化した重力デバイスを使用して、ポリマーに富む相は、溶媒に富む相から分離される。溶媒に富む相は、冷却され[16]、濾過され[17]、再びまた反応器[1および/または2]に再循環される。
【0193】
ポリマーに富む相は、熱交換器[6]を通過し、次いで第1の脱揮発装置[5]に供給される。触媒キル[K]は、ポリマーに富む相が第1の脱揮発装置に入る前に、ポリマーに富む相に添加される。第1の脱揮発装置内の圧力を低下させて、濃縮したポリマーに富む相の重量に基づいて、50重量パーセントを超えるポリマーを含有するポリマー溶液を生成させる。
【0194】
濃縮したポリマーに富む相から、最終的に溶媒を除去するために、第1の脱揮発装置[5]を出て行く濃縮相は、第2の脱揮発装置[7]に移される。ここで、圧力を低下させて、残渣量(ppmレベル)の溶媒を有するポリマーを生成させる。第2の脱揮発装置から出てくる溶媒を凝縮させ、第1の脱揮発装置からの溶媒と合わせ、次いで、合せた溶媒を精製して[13]、触媒キルの生成物を除去し、次いで再びまた反応器[1および/または2]に再循環させる。ポリマーは、造粒機[20]などの、さらなる材料処理系に送られる。
【0195】
この方法は、第1の脱揮発装置[5]および/または第2の脱揮発装置[7]の下流側に再循環モノマー圧縮機を必要としない。また、再循環モノマー圧縮機の使用によって、99%を超えるモノマー収率を維持するため、ドラム[11]の操作圧力を十分に高く保つこともできる。ここで、モノマー収率は、ポリマーに変換される新たなモノマーの量を指す。例えば、エチレン収率99%は、重合工程に加えられた新たなエチレンの99%が、ポリマーに変換されるであろうことを意味する。
【0196】
LLSにおける分離ステップと、再びまた反応器に、溶媒に富む相から溶媒を再循環するステップとの間に下記のステップを付加することができる。
【0197】
熱交換器[6]の下流側の第1のLLS「4」の下流側の位置に第2のLLSを付加して、ポリマーに富む流れをさらに濃縮することができる。
【0198】
第1の脱揮発装置[5]の前において、熱交換器[6]をなくすことができる。
【0199】
LLS[4]の前に触媒キルを行うことができる。この提案は、触媒キルの生成物を除去するための吸着ベッド[18]の付加をフィルター[17]の下流側の位置に、また再循環流が反応器[1および/または2]に戻る前に必要ともするであろう。この新たなデザインの利点の1つは、LLS[4]に入る前に、反応が終結される点である。これにより、LLS中におけるさらなる反応のどんな可能性もなくなり、このため、仕上がりポリマー性状に影響を及ぼすことができる。
【0200】
コンピューターシミュレーション方法
ASPEN PLUSコンピューターソフトウエア(ASPEN Technologyから入手可能)およびVLXEコンピューターソフトウエア(VLXE Incorporatedから入手可能)を使用して、非晶質級EPDMその場ブレンド(in-situ blend)(A)および半結晶質EPDMその場ブレンド(B)の重合のコンピューターシミュレーションを行った。それぞれのその場ブレンドのコンピューターシミュレーションは、上記に示したように、直列の2基の連続撹拌反応器を包含する溶液重合方法で行った。第2の反応器を出る流れの、それぞれのその場ブレンドについての濃度を以下の表1に示している。それぞれの重量パーセントは、これらの流れ成分の合計重量に基づいている。
【0201】
【表1】

【0202】
それぞれの反応器出口流は、LLSの上流側で120バールから60バールに圧力を低下させた後、液−液分離器(LLS)に導入される。それぞれの重合について、LLSを出るポリマーに富む相におけるポリマー濃度は、出口流の全重量に基づいて約37重量パーセントであると測定される。2つの異なる入口条件からもたらされる、これらの一定した液−液分離は、反応器供給物中のプロパン量を調節し、それによって、LLS内におけるC3の全量(流れ成分の合計重量に基づく、プロパンにプロピレンを加えたものの重量%)が、比較的変わらずに保たれることによって達成し得ることが見出された。したがって、第1の反応器への供給物中のプロパン(軽質炭化水素溶媒)のレベルを調節することによって、種々のEPDMブレンドの液−液分離を制御することが可能である。
【0203】
設定温度および設定組成についての曇点圧力の測定
高圧視覚セル(visual cell)[1]内で曇点測定を行った。例えば、図4を参照されたい。Gutowskiら、「A Low-Energy Solvent Separation Method」、Polymer Engineering and Science、1983年、23(4)、230〜237頁も参照されたい。セルの内部体積は、およそ50mLであり、ピストン[2]は、セルの底部穴部における位置にある。このピストンを動かしてセルの内部体積を変化させることができ、したがって、セル内の流体を圧縮することによって圧力を調節するのに使用することができる。200℃までの温度、および1500psia(103.5バール、10.35MPa)までの圧力において、系(ポリマー混合物)を評価することができる。
【0204】
セルの上部の撹拌器接続部を通じて、既知量のポリマーをセルに添加した。次いで、撹拌器を取り付け、シリコーン油浴[4]中に装置を沈めて、周囲温度で平衡させた。真空ポンプを使用して、セル内の雰囲気を真空にした。重量を量ったシリンジを使用して、既知量のオクタンをセルに添加した。次に、RUSKAシリンジポンプを使用して、既知量のプロパンをセルに添加した。セル内のプロパン、オクタンおよびポリマーの量を、周囲温度におけるセル内の全体積が、ピストンがその最下位置にあるセルの全体積(液体として)よりも約「0.5〜1mL」少ないように、最初に計算した。例えば、ポリマー含量は、10〜15重量パーセントの範囲にあることができ、プロパン含量は、25〜30重量パーセントの範囲にあることができ、またオクタン含量は、セル内の混合物の残りの量を含む。油浴を所望の温度に加熱し、セル内の混合物を撹拌した。
【0205】
最初に、混合物は2つの液相、透明な溶媒に富む相および白っぽいポリマーに富む相を有していた。系が所望の温度に達したら、セルの底部にあるピストンを動かすことにより、混合物が均質な単一の液体になるまで、セル内の圧力を増大させた。
【0206】
この均質な混合物を「2相が観察された最低圧力」を超える圧力に、撹拌せずに約5分間保持した。装置内の圧力は、ゆっくり低下した。装置の内容物を目視観察し、セル内の混合物が曇ってきた(透明な白っぽい色から黒色への、色の瞬間的変化により観察された)ときに曇点圧力を記録した。系の圧力を増大させ、曇点測定を3〜5回繰り返した。特定の温度について曇点圧力が測定されたら、油浴の温度を次の所望される温度まで上昇させ、それぞれのさらなる温度について曇点圧力測定を繰り返した。
【0207】
上記の手順を繰り返したが、最初の圧力は、測定した曇点圧力を超え、また最終圧力は曇点圧力未満の約250〜300psiaであった。圧力を急速に低下させた(約100psi/秒)。均一な単一相溶液は瞬間的に曇り状態になり、約5分以内、不透明相の上方に透明な液相が観察された。
【0208】
上記の実施例において、本発明は、かなり詳細に記述されているが、この詳細は例示の目的のためであり、下記の特許請求の範囲において記述される本発明に関する制約と解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0209】
1 反応器
2 反応器
3 制御弁
4 液−液分離器(LLS)
5 第1段脱揮発装置
6 熱交換器
7 第2段脱揮発装置
8 真空系デバイス
9 凝縮交換器
10 凝縮交換器
11 再循環溶媒急速蒸発ドラム
12 ポンプ
13 再循環溶媒精製ベッド
14 供給ポンプ
15 供給物冷却交換器
16 冷却交換器
17 フィルター
18 精製ベッド
19 静的ミキサー
20 造粒系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)1種または複数のモノマーを重質炭化水素溶媒および軽質炭化水素溶媒を含む溶媒の存在下において重合させて、ポリマー溶液を生成させるステップと、
B)ポリマー溶液を溶液に熱を加えずに液−液分離器に移すステップであり、このステップにおいてポリマー溶液の圧力を液−液分離器より前にもしくは液−液分離器内で、制御された形で有効に低下させて、少なくとも2つの液相、ポリマーに富む相および溶媒に富む相を生じさせ、かつポリマーに富む相中のポリマー濃度が、液−液分離器に移されるポリマー溶液中のポリマー濃度よりも高いステップと、
C)溶媒に富む相を除去するステップと
を含む溶液重合方法。
【請求項2】
ステップAにおいて、1種または複数のモノマーが、重質炭化水素溶媒および軽質炭化水素溶媒を含む溶媒の存在下において重合して、単一相ポリマー溶液を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマーに富む相中のポリマー濃度が、溶媒中の軽質炭化水素成分の量を調節することによって制御される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ステップAの重合が、次の:(a)反応器1基、および(b)直列に配置される反応器2基以上の1つからなる群から選択される反応器配置において行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応器配置におけるそれぞれの反応器が、冷却系を包含していない、請求項5に記載の方法。
【請求項6】
反応器配置におけるそれぞれの反応器が、断熱型反応器である、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項7】
ステップAのそれぞれの反応器における圧力が、18MPa未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
それぞれの反応器における圧力が、110バール(11MPa)〜150バール(15MPa)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップAの重合温度が、150℃を超える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップAにおける溶媒が、重合系の重量に基づいて80重量パーセントを超える量で存在する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップBが繰り返されない、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
軽質炭化水素溶媒が、ステップBおよびCにおいて、工程に添加されない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップBにおいて、圧力を80バール(8MPa)〜10バール(1MPa)の範囲にある圧力まで低下させる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップAにおいて生成されるポリマーが、エチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマーから選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーが、エチレン系ポリマーである、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−533656(P2012−533656A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520780(P2012−520780)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/042139
【国際公開番号】WO2011/008955
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】