説明

オンライン印刷品質検査装置

【課題】印刷機に取り付けられた受光素子からの反射光量信号を、印刷の品質管理に用いる色彩値等のデータに変換し、あらかじめ準備された基準となる色彩値等の画像品質データとオンラインで瞬時に比較、確認ができるようにする方法及び装置を提案する。
【解決手段】印刷機で印刷中の印刷物の品質検査装置であって、印刷機に設置した発光素子と受光素子とからなり、印刷物の印刷画像情報を3原色などに分解して読み取る第一の入力手段と、前記3原色などを色彩値に変換する変換手段と、あらかじめ印刷状態を考慮して算出準備された前記印刷画像の色彩値を入力する第二の入力手段と、前記変換手段で得られた値と、前記第二の入力手段より与えられた値を比較し、印刷の品質管理に必要な情報に変換する解析手段と、前記解析手段で得られた結果を印刷機稼働中にリアルタイムで表示する表示手段と、を備えたオンライン印刷品質検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷機によって印刷される印刷物の品質を、オンラインで検査するようにした印刷物の検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷物の品質の検査は、汚れや乱丁、折れ、ちぎれ等を印刷時にオンラインで検査するものと、濃度、ドットゲインや色調などを印刷終了後もしくは、停止後オフラインで検査するものとが行われていた。
前者は、輪転機などの印刷機上に設置されたCCDカメラ等の読取装置を用いて、印刷物を連続で読み取り、汚れや乱丁、折れ、ちぎれ等の印刷不良をオンラインで検出、表示していた。しかしながらこの方法では、印刷の濃度や色彩値等の品質を検査、管理することは不可能であった。
【0003】
一方後者は、印刷機によって印刷された印刷物をぬきとり、市販の濃度計や測色機で濃度、色彩値、ドットゲイン等の印刷管理に用いるデータを測定し、品質の管理を行っていた。印刷オペレータは、品質確認のために、そのつど印刷機を止め測定し、それに従い機械調整を行い、印刷品質の管理をするという一連の工程をオフラインで行っていた。
また一部、印刷機に取り付けられた信号検出装置からの反射光量信号を、印刷の管理に用いる濃度、色彩値、ドットゲイン等のデータに変換し、オンラインで瞬時に、印刷品質の確認ができるようにする方法及び装置発明もあった。
【0004】
しかしながらこの方法では、印刷機で印刷した印刷物の品質管理は行えるが、事前に想定された基準となる色彩値等の画像品質データと瞬時に比較し、印刷品質の確認作業を行い、機械調整をすることは困難であった。
【特許文献1】特開平7−323526号公報
【特許文献2】特開平7−323525号公報
【特許文献3】特願2004−173812号公報
【特許文献4】特願2004−175225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、印刷機に取り付けられた信号検出装置からの反射光量信号を、印刷の管理に用いる色彩値等のデータに変換し、あらかじめ準備された基準となる画像品質データとオンラインで瞬時に比較、確認ができるようにする方法及び装置を提案しようとするものである。
【0006】
本発明は印刷機で印刷中の印刷物の品質を検査するオンライン印刷品質検査装置であって、
印刷機に設置した発光素子と受光素子とからなり、印刷物の印刷画像情報を3原色、あるいは3原色及び赤外色に分解して読み取る第一の入力手段と、
前記3原色、あるいは3原色及び赤外色を色彩値に変換する変換手段と、
あらかじめ印刷状態を考慮して算出準備された前記印刷画像用の色彩値を入力する第二の入力手段と、
前記変換手段で得られた値と、前記第二の入力手段より入力された値を比較し、印刷の品質管理に必要な情報に変換する解析手段と、
前記解析手段で得られた結果を印刷機稼働中にリアルタイムで表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とするオンライン印刷品質検査装置に関する。
また、本発明は、第一の入力手段が、印刷機稼動時に、3種あるいは4種の発光素子から、3原色あるいは3原色及び赤外色の光を前記印刷画像へ照射し、各反射光量を入力手段に備えられた光に反応する受光素子を使って印刷画像を連続して検出し、検出した信号を平均化することにより、印刷画像の3原色あるいは3原色及び赤外色の信号を得ることを特徴とする上記オンライン印刷品質検査装置に関する。
【0007】
また、本発明は、変換手段が、第一の入力手段から得られた印刷画像の3原色あるいは3原色及び赤外色の信号から、色毎に異なる多項式近似式によりXYZあるいはCIEL*a*b*の色彩値に変換するものである上記オンライン印刷品質検査装置に関する。
【0008】
また、本発明は、第二の入力手段が、目標とすべき印刷画像のRGB値もしくはCMYK値から、既知のカラーマネージメントシステムを用いて、印刷機で再現されるXYZあるいはCIEL*a*b*の色彩値に変換算出するものである上記オンライン印刷品質検査装置に関する。
【0009】
また、本発明は、解析手段が、変換手段で得られた色彩値と、第二の入力手段で得られた色彩値を比較し、印刷品質管理に必要な値に変換し、あらかじめ設定された印刷品質管理基準値に適合しているかどうかをとリアルタイムに解析するものである上記オンライン印刷品質検査装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上述の点に鑑み、本発明は、印刷機に取り付けられた受光素子からの反射光量信号を、印刷の品質管理に用いる色彩値等のデータに変換し、あらかじめ準備された基準となる色彩値等の画像品質データとオンラインで瞬時に比較、確認が可能となる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の装置の構成の例を示した図である。本装置は、印刷機上に設置され画像を取り込む第一入力部と、入力された画像をあらかじめ準備された基準と比較解析し印刷品質を検査する検査部と、検査結果をリアルタイムで表示する表示部と含む。
【0012】
第一の入力手段である第一入力部は、発光素子と受光素子からなり、発光素子として例えば、赤色・緑色・青色の3色の光、あるいは赤色・緑色・青色・赤外色の4色の光を照射することができるLED等の発光ダイオードを用いることができる。3色あるいは4色は、後述するデータ変換可能で有れば、特に限定されるものではないが、利便性等の面でRGB3原色は好ましく、以下、RGB3原色を代表例にして説明する。
【0013】
上記発光素子は、印刷機稼働中の印刷物に照射される。発光素子は、印刷物を監視できる位置であれば、特に、制限はなく、印刷機内部であっても、外部であってもよい。照射は、直接照射でも、ミラーやカラーフィルター等を介したものであってもよい。照射し、反射した光は受光素子で検出される。発光素子と印刷物と受光素子との位置関係も、印刷画像を検知できるものであれば、特に制限はない。例えば、印刷される基材の走行方向に反射させるように配置される。受光素子としては、CCDやCMOS、フォトダイオードなどの光に反応する半導体素子を用いることができる。さらに将来より有効な発光素子や受光素子が開発された場合にも用いることができる。
【0014】
上記発光素子は、1つの発光素子が、フィルタ交換などにより2色以上の発光が可能なものであってもよいし、1つの色に対して1つの発光素子であってもよい。上記受光素子は、フィルタ交換などにより2色以上の受光が可能なものであってもよいし、1つの色に対して1つの受光素子であってもよい。照射される色の順番に特に制限はなく、また、装置上独立して読み取りが可能であるならば、いくつかの色の光が同時に照射されることになってもよい。
【0015】
第一入力部は、オンライン印刷品質検査装置において、1つあってもよいし、2つ以上あってもよい。例えば、第一入力部を印刷する用紙の横方向に等間隔で並べるようなことがあってもよい。
【0016】
本装置の主要部である検査部は、指示部、変換手段である変換部、第二の入力手段である第二入力部、解析手段である解析部、保存部とからなる。検査部は、キーボードのごとき指示部が接続された通常のパソコンであってもよい。指示部からは、第一入力部、第二入力部に対してデータ入力の開始信号や、変換部、解析部、保存部への検査の開始や検査諸条件の設定、指示が行われる。また、表示部への検査結果出力も該指示部からなされても良い。
【0017】
変換部は、前記第一入力部から印刷機の稼動に合わせて逐次送られてくる、RGB3原色、あるいは3原色に赤外色を加えた4色からなる印刷画像データをあらかじめ規定された読み込み回数に従い平均化し、多項式近似法により印刷CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の色彩値(XYZ、CIEL*a*b*等)に変換するもので、
例えば、(式1)を用い、
【0018】
【数1】

【0019】
入力装置の受光素子の特性を変数a、a'、a"、b、b'、b“、c、c'、c"としてあらかじめ設定しておき、変換時に入力RGBを出力色彩値信号L*a*b*に変換するものである。本実施例では3変数1次の変換式を示しているが、3変数2次でも3次でも用いて良い。
【0020】
第二入力部は、目標とすべき印刷する画像の基準となる色彩値を入力するものである。該基準となる色彩値は、本装置が接続された印刷機の印刷特性や印刷条件を考慮して算出準備されたものであり、通常、目標とすべき印刷画像のRGB値もしくはCMYK値を市販既知のカラーマネージメントシステムで変換したXYZあるいはCIEL*a*bの色彩値を用いることができる。また、それ以外に、基準となる色彩値として、標準的な印刷での基準値や異なる印刷機の値あるいは、同一印刷機の異なる時期の値を用いても良い。
【0021】
解析部は、変換手段及び第二入力部で得られた色彩値から両者を比較解析するもので、色差などを用いて、印刷物の色むらや、変動、安定性などの印刷の品質管理に必要な情報に変換することが可能である。変換された品質管理に必要な情報は、あらかじめ設定された印刷品質管理基準値に適合しているかどうかをとリアルタイムに解析し、検査結果とする。
【0022】
検査部は、保存部を備えることが好ましい。保存部は、解析結果をデジタルデータとして保存するものである。
【0023】
さらに表示手段である表示部は、印刷機稼働中に、検査部から逐次送られてくる検査結果をリアルタイムで表示するもので、モニタやプリンタを用いることができる。
【0024】
図2は、オンライン印刷品質検査装置の処理を示すフローチャートである。
まず、第二入力部で入力された基準となる色彩値、およびそれを管理するための印刷品質管理基準値を検査部に取り込む。これらの値は、例えば、ネットワークや各種記憶媒体や前記指示部を用いて入力される。次に、該画像の印刷を開始する。印刷機稼働中に解析開始指示を検査部から第一入力部に送ることで、第一入力部の画像の取り込みが始まる。
【0025】
次に、印刷機の稼動に合わせて逐次送られてくる取り込み画像のRGB3原色、あるいは3原色に赤外色を加えた4色からなる印刷画像データをあらかじめ規定された読み込み回数に従い平均化し、多項式近似法により印刷CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の色彩値(XYZ、CIEL*a*b*等)に変換する。
そして、変換作成された色彩値および第二入力部で入力された基準となる色彩値を解析部に送信する。
【0026】
解析部は、2つの画像色彩値から色差等を導出し、基準となる色彩値からのズレなど比較解析した結果をモニタやプリンタなどの表示部で表示する。この際印刷品質管理基準値から大きくずれる結果に対しては、警告を合わせて表示する。
【0027】
最後に、解析結果を保存する場合は、保存指示により前記保存部に再利用可能な形で保存することができる。
さらに、解析結果により印刷品質に不具合があった場合、印刷機に備えられたインキの供給量を調整する為のインキング装置に解析結果を信号として送信し、最適なインキ供給量に調整することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】装置の構成の例
【図2】印刷物検査の処理を示すフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機で印刷中の印刷物の品質を検査するオンライン印刷品質検査装置であって、
印刷機に設置した発光素子と受光素子とからなり、印刷物の印刷画像情報を3原色、あるいは3原色及び赤外色に分解して読み取る第一の入力手段と、
前記3原色、あるいは3原色及び赤外色を色彩値に変換する変換手段と、
あらかじめ印刷状態を考慮して算出準備された前記印刷画像用の色彩値を入力する第二の入力手段と、
前記変換手段で得られた値と、前記第二の入力手段より入力された値を比較し、印刷の品質管理に必要な情報に変換する解析手段と、
前記解析手段で得られた結果を印刷機稼働中にリアルタイムで表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とするオンライン印刷品質検査装置。
【請求項2】
第一の入力手段が、印刷機稼動時に、3種あるいは4種の発光素子から、3原色あるいは3原色及び赤外色の光を前記印刷画像へ照射し、各反射光量を入力手段に備えられた光に反応する受光素子を使って印刷画像を連続して検出し、検出した信号を平均化することにより、印刷画像の3原色あるいは3原色及び赤外色の信号を得ることを特徴とする請求項1に記載したオンライン印刷品質検査装置。
【請求項3】
変換手段が、第一の入力手段から得られた印刷画像の3原色あるいは3原色及び赤外色の信号から、色毎に異なる多項式近似式によりXYZあるいはCIEL*a*b*の色彩値に変換するものである請求項1または2に記載したオンライン印刷品質検査装置。
【請求項4】
第二の入力手段が、目標とすべき印刷画像のRGB値もしくはCMYK値から、既知のカラーマネージメントシステムを用いて、印刷機で再現されるXYZあるいはCIEL*a*b*の色彩値に変換算出するものである請求項1〜3いずれかに記載したオンライン印刷品質検査装置。
【請求項5】
解析手段が、変換手段で得られた色彩値と、第二の入力手段で得られた色彩値を比較し、印刷品質管理に必要な値に変換し、あらかじめ設定された印刷品質管理基準値に適合しているかどうかをとリアルタイムに解析するものである請求項1〜4いずれかに記載したオンライン印刷品質検査装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−168287(P2006−168287A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367062(P2004−367062)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】