説明

カシューアップルの用途

【課題】本発明は、カシューアップルの有用な用途を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明はカシューアップル又はその処理物を有効成分として含有する脂質自動酸化抑制剤、チロシナーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、コラーゲン架橋形成抑制剤、α-アミラーゼ阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、蛋白糖化反応最終産物の生成抑制剤、リパーゼ阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、ウレアーゼ阻害剤、又は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカシューアップルの新規用途に関する。
【背景技術】
【0002】
カシュー(Anacardium occidentale)は、ブラジル原産のウルシ科に属する常緑高木であり、花の柄が肥大し、5〜6cmの黄色い洋ナシ型になったものがカシューアップルと呼ばれ、生食やジュースなどの原料になる。この肥大した柄の先端に2〜3cm、湾曲したマガタマ状の果実が実る。この殻の中に入っているのがカシューナッツである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カシューアップルはカシューナッツ採取時に廃棄されることが多い。カシューアップルの有効利用が望まれている。
そこで本発明は、カシューアップルの有用な用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意研究した結果、以下の発明を完成するに至った。
(1) カシューアップル又はその処理物を有効成分として含有する抗酸化剤、ラジカル消去剤、脂質自動酸化抑制剤、チロシナーゼ阻害剤、美白剤、エラスターゼ阻害剤、皮膚老化防止剤、エラスターゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、コラゲナーゼ阻害剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、ヒアルロニダーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、コラーゲン架橋形成抑制剤、α-アミラーゼ阻害剤、α-アミラーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、α-グルコシダーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、蛋白糖化反応最終産物の生成抑制剤、蛋白糖化反応最終産物が関与する疾患の予防剤もしくは治療剤、リパーゼ阻害剤、リパーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、脂質劣化抑制剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、ウレアーゼ阻害剤、抗ヘリコバクターピロリ剤、ヘリコバクターピロリが関与する状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、又は、キサンチンオキシダーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤。
(2) カシューアップルの処理物が、カシューアップルの抽出物である、(1) 記載の剤。
(3) カシューアップルの抽出物が、カシューアップルの水による抽出物である、(2) 記載の剤。
(4) カシューアップルの処理物が、カシューアップルの水による抽出物を、水溶性ポリフェノール化合物を水中において吸着可能な物質が充填されたカラムに通し、該カラムにより吸着された画分を分離して得られるものである、(1) 記載の剤。
【発明の効果】
【0005】
本発明により従来廃棄されることの多かったカシューアップルの有効活用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に用いられるカシューアップルは、どのような品種のカシュー(Anacardium occidentale)に由来するものであってもよい。
【0007】
本発明の用途では、カシューアップル自体も、その処理物も用いることができる。カシューアップルの処理物としては、抽出物、抽出物をさらに分画したものなどが挙げられる。
【0008】
カシューアップルの抽出物は、通常の方法により抽出されたものであれば特に限定されない。抽出に用いられる溶媒は、水又は親水性有機溶媒が好ましく、水が特に好ましい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸等の公知の有機溶媒が挙げられる。上記の親水性有機溶媒は水との混合物として用いられてもよい。
【0009】
抽出条件は特に限定されないが、抽出時間は1〜24時間程度が好ましく、また抽出に使用する溶媒量は原料に対して質量比で1〜20倍量が好ましい。
【0010】
抽出終了後、ろ過あるいは遠心分離により残渣を除くことにより抽出物が得られる。カシューアップル抽出物は必要に応じて濃縮又は乾燥されてもよい。
【0011】
本発明におけるカシューアップルの処理物には、上記カシューアップル抽出物を更に処理したもの、即ちカシューアップル抽出物の処理物もまた包含される。ここで「アカシューアップル抽出物の処理物」には、カシューアップル抽出物を各種クロマトグラフィーを用いて精製したもの等が包含されるが、これらに限定されない。精製処理手段としては、順相又は逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらの精製処理手段は適宜組み合わされてもよい。
【0012】
カシューアップルの処理物として特に好ましいものは、カシューアップルの水による抽出物を、水溶性ポリフェノール化合物を水中において吸着可能な物質が充填されたカラムに通し、該カラムにより吸着された画分を分離して得られるものである。「水溶性ポリフェノール化合物を水中において吸着可能な物質」としては、例えば活性炭、ポリビニルピロリドン、イオン交換樹脂、合成吸着剤、珪藻土、タンパク質が挙げられ、なかでもC18アルキル基を有するシリカゲルが好ましい。
【0013】
カシューアップル又はその処理物は以下の活性又は能力を有する。
カシューアップル又はその処理物はラジカル消去作用を有する。「ラジカル」とは、不対電子を1つ又はそれ以上有する分子又は原子を意味し、スーパーオキサイドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカル、DPPH等が含まれる。よってカシューアップル又はその処理物はラジカル消去剤又は抗酸化剤の有効成分として有用である。
【0014】
カシューアップル又はその処理物はリノール酸の自動酸化を抑制する作用を有する。よってカシューアップル又はその処理物は抗酸化剤、又は脂質自動酸化抑制剤の有効成分として有用である。
【0015】
カシューアップル又はその処理物はチロシナーゼ阻害作用を有する。チロシナーゼ活性の阻害によりメラニン色素の合成を阻害できることから、カシューアップル又はその処理物は美白剤の有効成分として有用である。
【0016】
カシューアップル又はその処理物はエラスターゼ阻害作用を有する。エラスターゼ活性を抑制することにより皮膚などにおけるエラスチンの変性を防止し、シワなどの皮膚老化が抑制される。また、哺乳動物、特にヒトにおけるエラスターゼ活性に起因する疾患、例えばリウマチ、の予防又は治療に有用である。よってカシューアップル又はその処理物は皮膚老化防止剤、又はエラスターゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患(例えばリウマチ)の予防剤もしくは治療剤の有効成分として用いることができる。
【0017】
カシューアップル又はその処理物はコラゲナーゼ阻害作用を有する。コラゲナーゼ活性を抑制することにより皮膚などにおけるコラーゲンの分解が抑制され、シワなどの皮膚老化が抑制される。よってカシューアップル又はその処理物は皮膚老化防止剤として有用である。
【0018】
カシューアップル又はその処理物はヒアルロニダーゼ阻害作用を有する。ヒアルロニダーゼ活性を抑制することにより皮膚などにおけるヒアルロン酸の分解が抑制され、シワなどの皮膚老化が抑制される。また、ヒアルロニダーゼは炎症時に活性化され、結合組織のマトッリクスを破壊し、炎症系の組織への浸潤・血管の透過性を亢進すること、I型アレルギーにおける肥満細胞からのヒスタミンの遊離の過程に介在している可能性が高いことが知られている。ヒアルロニダーゼ活性を抑制することによりヒアルロニダーゼ活性に起因する疾患、例えば炎症、アレルギー、を予防又は治療することができる。よって、カシューアップル又はその処理物は皮膚老化防止剤、又はヒアルロニダーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患(炎症、アレルギー等)の予防剤もしくは治療剤の有効成分として用いることができる。
【0019】
カシューアップル又はその処理物はコラーゲン架橋形成を抑制する作用を有する。皮膚中のコラーゲンの架橋が増加するにつれて、皮膚の弾力がなくなり、シワ等が増加して、皮膚の老化が進行することが知られている。よってカシューアップル又はその処理物は皮膚老化防止剤の有効成分として用いることができる。
【0020】
カシューアップル又はその処理物はα-アミラーゼ阻害作用及びα-グルコシダーゼ阻害作用を有する。α-アミラーゼ又はα-グルコシダーゼを阻害することにより、食後の急激な血糖上昇を緩和することができる。よってカシューアップル又はその処理物は、アミラーゼ又はα-グルコシダーゼの阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患(血糖値上昇抑制剤、糖尿病等)の予防剤又は治療剤の有効成分として用いることができる。
【0021】
カシューアップル又はその処理物は蛋白糖化反応最終産物(Advanced Glycation Endproducts;AGE)の生成を阻害する作用を有する。AGEは、神経障害、白内障、腎障害、網膜症、関節硬化症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性壊疽等の種々の糖尿病合併症に関与することが知られている。またAGEの体内での蓄積はアルツハイマー病、老化、炎症反応等、種々の疾患にも関与していることが明らになってきている。よってカシューアップル又はその処理物は糖尿病合併症等のAGEが関与する疾患の予防剤もしくは治療剤の有効成分として用いることができる。
【0022】
カシューアップル又はその処理物はリパーゼ阻害作用を有する。リパーゼ活性を阻害することにより、脂質摂取後の脂質の体内吸収を抑制して、肥満や高脂血症を予防又は治療することができる。またリパーゼ活性を阻害することにより、食品等の脂質を含む飲食品や化粧品中に微生物が混入した場合の微生物が産生するリパーゼによる脂質の分解を抑制し、変敗臭等の脂質の劣化を抑制することができる。よってカシューアップル又はその処理物は肥満、高脂血症等の、リパーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、あるいは、脂質劣化抑制剤の有効成分として有用である。
【0023】
カシューアップル又はその処理物はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害作用を有する。ACEは血管を収縮させる作用を持つアンジオテンシン2の産生に関与して高血圧を引き起こすことが知られている。よってカシューアップル又はその処理物はアンジオテンシン変換酵素活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患(高血圧症等)の予防剤もしくは治療剤の有効成分として有用である。
【0024】
カシューアップル又はその処理物はウレアーゼ阻害作用を有する。胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍に関与することが知られているヘリコバクター ピロリは、強いウレアーゼ活性を有し、胃の中に存在する尿素をアンモニアに分解して胃酸を中和することで胃の中での生育を可能にし、またアンモニアは胃の粘膜に障害を与えると考えられている。従ってウレアーゼ阻害剤はヘリコバクター ピロリが関与する疾患の予防剤又は治療剤として有用である。よってカシューアップル又はその処理物は抗ヘリコバクター ピロリ剤、あるいはヘリコバクター ピロリが関与する状態もしくは疾患の予防剤又は治療剤の有効成分として有用である。
【0025】
カシューアップル又はその処理物はキサンチンオキシダーゼ活性阻害作用を有する。キサンチンオキシダーゼは、プリン化合物の代謝の最終経路において尿酸を生じる酵素である。血中尿酸値を長期間高値に放置すると痛風等の疾病をひきおこす。よってカシューアップル又はその処理物はキサンチンオキシダーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患(高尿酸血症、通風等)の予防剤又は治療剤の有効成分として有用である。
【0026】
本発明に係る各種剤は、医薬品、化粧品、食品等の任意の形態であってよい。そして本発明が目的とする作用を妨げない範囲で他の活性成分、添加剤、賦形剤、充填剤等と組み合わされて使用される。
【0027】
(実施例)
以下の参考例及び実施例ではブラジル産のカシューアップルから調製された販売されているカシューアップルピューレを用いた。このピューレのBrix値は9.5であった。
(参考例1)
実施例に使用したカシューアップルピューレ100gあたりの成分分析結果は以下の通りであった。
【0028】
【表1】

【実施例1】
【0029】
〔カシューアップルポリフェノール画分の製造〕
ブラジル産のカシューアップルの可食部をホモジナイズしたピューレ(40.0g)に、同量の純水を添加して常温で1時間攪拌抽出後、遠心分離(6595×g、10分、室温)して1次上清を得た。さらに、沈殿物に対し20.0gの純水を添加して同様の操作で再抽出を行い2次上清を得た。回収した1次上清と2次上清を合わせ、定量濾紙(ADVANTEC No.5A)により自然ろ過後、C18カートリッジ(Waters製 Sep-Pak)に吸着させた。カラムを純水で洗浄した後、メタノールで溶出されてくる画分を減圧乾燥し、27.4mgの粉末を得た。この粉末をカシューアップルポリフェノール画分(C18吸着画分)とした。
【0030】
このカシューアップルポリフェノール画分の粉末について、フォーリン・デニス法によりポリフェノール含量を解析した。その結果、ポリフェノール含量は24.4%であった。
【実施例2】
【0031】
〔スーパーオキシド消去活性試験〕
実施例1で調整したカシューアップルポリフェノール画分のラジカル消去活性を、キサンチン-キサンチンオキシダーゼ反応系によるスーパーオキシドアニオンラジカルの消去活性で評価し、ESRを用いてラジカルの検出を行なった。なお、実施例1の試料は50mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し、試料溶液とした。
【0032】
具体的には、DMPO(5,5-Dimethyl-1-Pyrroline-N-Oxide) 15 μl、リン酸緩衝液50 μl、試料溶液 50 μl、2mMヒポキサンチン/リン酸緩衝液溶液 50 μl、0.4unit/mlキサンチンオキシダーゼ (牛乳由来、Santa Cruz Biotechnology社) / リン酸緩衝液50 μlを混合し、XOD添加後45秒後にESR測定を行った。
【0033】
なお、ESR装置は日本電子社製 ESR (JES-FR30) を用い、ESRによるスペクトル解析は以下の条件で行った。
磁場掃引幅:335.9±5mT、磁場変調:0.1mT、増幅率:100、掃引時間2min、応答時間:0.1sec、測定温度:室温
【0034】
測定結果を表2に示す。なお、阻害率(%)は、コントロールとの比較で、式1により算出した。
スーパーオキシド消去活性の算出方法
(式1)
スーパーオキシド消去阻害活性率(%)=(1−(A/B))×100
A:試料溶液のアダクト信号強度
B:対照溶液(リン酸緩衝液)のアダクト信号強度
【0035】
【表2】

【0036】
表2より、実施例1で調製したカシューアップルポリフェノール画分は強い抗酸化活性を示すことが確認された。
【実施例3】
【0037】
〔ヒドロキシラジカル消去活性試験〕
実施例1で調整したカシューアップルポリフェノール画分のラジカル消去活性を、硫酸鉄-過酸化水素反応系によるヒドロキシラジカルの消去活性で評価し、ESRを用いてラジカルの検出を行なった。なお、実施例1の試料は50mM リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し、試料溶液とした。
【0038】
具体的には、0.18M DMPO/リン酸緩衝液溶液 50 μl、試料溶液 50 μl、2mM H2O2/リン酸緩衝液溶液50 μl、0.2mM FeSO4水溶液50 μlを混合し、FeSO4添加後45秒後にESR測定を行った。
【0039】
なお、ESR装置は日本電子社製 ESR (JES-FR30) を用い、ESRによるスペクトル解析は以下の条件で行った。
磁場掃引幅:335.9±5mT、磁場変調:0.1mT、増幅率:100、掃引時間 2min、応答時間:0.1sec、測定温度:室温
【0040】
測定結果を表3に示す。なお、阻害率(%)は、コントロールとの比較で、式2により算出した。
(式2)
ヒドロキシラジカル消去活性の算出方法
ヒドロキシラジカル消去活性率(%)=(1-(A/B))×100
A:試料溶液のアダクト信号強度
B:対照溶液(リン酸緩衝液)のアダクト信号強度
【0041】
【表3】

【0042】
表3より、実施例1で調製したカシューアップルポリフェノール画分は強い抗酸化活性を示すことが確認された。
【実施例4】
【0043】
〔DPPHラジカル消去活性試験〕
実施例1で調整したカシューアップルポリフェノール画分のラジカル消去活性を、DPPH(1, 1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)を用いて退色の度合いを分光光度計で測定することにより求めた。なお、実施例1の試料は、50%エタノール溶液に溶解し、試料溶液とした。
【0044】
具体的には、マイクロプレートに0.25M 酢酸緩衝液(pH5.5) 100μl、試料溶液50μl、エタノール50 μlを加えて室温で5分間プレインキュベーションした後、500μM DPPH/エタノール 50 μlを添加し、遮光しながら室温で30分間反応させた。反応後、マイクロプレートリーダーで517nmにおける吸光度を測定した。
【0045】
測定結果を表4に示す。なお、阻害率(%)は、コントロールとの比較で、式3により算出した。
(式3)
DPPHラジカル消去活性の算出方法
DPPHラジカル消去活性率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
A:試料溶液添加,DPPH添加時の吸光値
B:試料溶液添加,DPPH無添加時(エタノール添加)の吸光値
C:試料無添加(50%エタノール添加),DPPH添加時の吸光値
D:試料無添加(50%エタノール添加),DPPH無添加時(エタノール添加)の吸光値
【0046】
【表4】

【0047】
表4より、実施例1で調製したカシューアップルポリフェノール画分は強い抗酸化活性を示すことが確認された。
【実施例5】
【0048】
〔リノール酸-β-カロチン抗酸化試験〕
実施例1で調整したカシューアップルポリフェノール画分の過酸化脂質抑制能を、リノール酸の自動酸化に伴い生じるリノール酸過酸化物がβ-カロチンの二重結合と反応することによって、β-カロチンの色が消失することを利用した試験系であるリノール酸-β-カロチン退色法により行なった。なお、実施例1の試料は、純水に溶解し、試料溶液とした。
【0049】
具体的には、リノール酸溶液(リノール酸10gをクロロホルムに溶かし100mlとしたもの)0.2mlとβ-カロチン溶液(β-カロチン100mgをクロロホルムに溶かし100mlとしたもの)0.5mlとツイーン溶液(ツイーン40・20gをクロロホルムに溶かし100mlとしたもの)1.0mlを三角フラスコに入れて、窒素ガスを吹き込みながらクロロホルムを揮発させた。クロロホルムが完全に揮発した後、残渣に水を90ml程度入れ、0.2Mリン酸緩衝液(pH6.8)を10ml添加し、良く攪拌した。この反応液2.45mlに試料溶液50μlを添加し、60℃の温浴で反応を開始した。反応後0min, 20min, 60min, 120min, 180min, 360min, 480min後の470nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した
【0050】
測定結果を表5に示す。なお、阻害率(%)は、コントロールとの比較で、式4により算出した。
(式4)
過酸化脂質生成阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
但し、A:試料溶液添加,0min時の吸光度
B:試料溶液添加,480min経過後の吸光度
C:試料無添加(水),0min時の吸光度
D:試料無添加,480min経過後の吸光度
【0051】
【表5】

【0052】
表5より、実施例1で調製したカシューアップルポリフェノール画分は強い過酸化脂質抑制能を示すことが確認された。
【実施例6】
【0053】
〔チロシナーゼ阻害活性試験〕
実施例1で調整したカシューアップルポリフェノール画分のチロシナーゼ阻害活性を、マッシュルーム由来チロシナーゼを用いて測定した。なお、実施例1の試料は、ジメチルスルホオキシド(DMSO)に溶解し、試料溶液とした。
【0054】
具体的には、1/15M リン酸緩衝液(pH6.8) 70μl、試料溶液2μl、マッシュルーム由来チロシナーゼ(CALZYME Laboratories)/リン酸緩衝液70μl(10umits)を加えて混合した後、室温で10分間プレインキュベーションした。その後10mM L-DOPA 70μlを添加して反応を開始し、波長475nmの吸光度を20秒ごとに2分間測定し、次式を用いてチロシナーゼ活性阻害率を算出した。その結果を表6に示した。
(式5)
チロシナーゼ活性阻害率(%)=(1−A/B)×100
A:試料溶液を添加した反応溶液の単位時間当たりの吸光度変化
B:試料溶液の代わりにDMSOを添加した反応溶液の単位時間当たりの吸光度変化
【0055】
【表6】

【0056】
表6から明らかなように、カシューアップルポリフェノール画分にチロシナーゼ活性阻害効果が認められた。
【実施例7】
【0057】
〔エラスターゼ阻害活性試験〕
実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分を蒸留水に溶解し、試料溶液とした。
【0058】
反応用緩衝液として、0.1M HEPES、0.5M NaCl(pH7.4)を用いて行った。エラスターゼ基質として、Suc(Ome)-Ala-Ala-Pro-Val-MCA(ペプチド化学研究所社製)を用いた。エラスターゼはヒト白血球由来のエラスターゼ(CALBIOCHEM社製)を使用した。
【0059】
具体的には、96穴プレートに、試料溶液を100μlずつ分注しそれぞれに上記緩衝液で溶解したエラスターゼを50μl添加した(酵素最終濃度1μg/ml)。なお、対照には試料溶液と等量の試料溶媒を用いた。酵素を添加した後、プレートを37℃、5分間加温し、その後上記緩衝液に溶かしたエラスターゼ基質を50μlずつ分注し(基質最終濃度:10μmol/L)、反応を開始した。反応開始後は37℃に保ち、蛍光光度計(Spectra MAX Plus : Molucular Devices社製)を用いて反応開始後1分間隔で10分間、酵素分解生成物である7-アミノ-4-メチルクマリンの生成速度を、励起波長355nm、蛍光波長460nmで蛍光強度を測定することにより評価した。
【0060】
エラスターゼ阻害活性算出方法
測定結果より、次式によりエラスターゼ阻害率を算出した。
(式6)
エラスターゼ阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
A:試料溶液添加,酵素添加時の反応速度
B:試料溶液添加,酵素無添加時の反応速度
C:試料無添加,酵素添加時の反応速度
D:試料無添加,酵素無添加時の反応速度
【0061】
カシューアップルポリフェノール画分におけるエラスターゼ阻害活性率(%)の測定を行い、その結果を表7に示す。
【0062】
この結果から分かるように、カシューアップルポリフェノール画分の50μg/mlの濃度でエラスターゼ活性を阻害することが明らかとなった。また、その阻害度合いは濃度依存的であることが明らかとなった。
【0063】
【表7】

【0064】
表7から明らかなように、カシューアップルポリフェノール画分の50μg/mlの濃度でエラスターゼ活性を阻害することが明らかとなった。また、その阻害度合いは濃度依存的であることが明らかとなった。
【0065】
次に、ポリフェノールを吸着する性質を有する樹脂であるPoly-vinylpolypyrrolidone(PVPP)を、実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分の0.06%水溶液に1.1%となるように添加し、0.5時間の攪拌の後、遠心分離(1,800×g・15分)して上清を回収した。さらに、この上清に1%となるようにPVPP樹脂を添加し、同様に0.5時間攪拌した後遠心分離し、その上清を得た。これを凍結乾燥させPVPP非吸着画分として、37℃で上記と同様にエラスターゼ活性阻害を調べた。なお、添加濃度は0.5mg/mlとした。また、ポリフェノール含量測定は実施例1で行なった操作と同様に検量線にカテキンを標準物質として用いたFolin−Denis法により測定した。それらの結果を表8に示す。表8から明らかなように、ポリフェノール画分のエラスターゼ活性阻害にはポリフェノール成分が強く関与していると考えられる。
【0066】
【表8】

【実施例8】
【0067】
〔コラゲナーゼ阻害活性試験〕
実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分水溶液50μLに、蒸留水で溶解した0.005mg/mlコラゲナーゼType IV(シグマ社製)を50μL(最終濃度:0.0005mg/ml)及び基質溶液として、緩衝液(20mmol/L CaCl2 , 0.5mol/L tris-HCl緩衝液(pH7.1))に溶解した0.39mg/ml Pz-ペプチド(Bachem Feinchemikalien AG社)400μL(最終濃度:0.312mg/ml)を混合し、37℃で30分間インキュベーションした。次いで、25mmol/Lクエン酸溶液1mLで反応を停止し、酢酸エチル5mLで攪拌抽出した。得られた抽出液について、波長320nmの吸光度(対照液:酢酸エチル)を測定した。上記と同様の酵素反応と吸光度測定を、試料溶液の代わりに試料溶液と等量の試料溶媒を添加して行った。更に、それぞれの場合について、コラゲナーゼ溶液の代わりに蒸留水を添加して同じ操作と測定を行った。
【0068】
コラゲナーゼ阻害活性算出方法
測定結果より、次式によりコラゲナーゼ阻害率を算出した。
(式7)
コラゲナーゼ阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
A:試料溶液添加,酵素添加時の吸光度
B:試料溶液添加,酵素無添加時の吸光度
C:試料無添加,酵素添加時の吸光度
D:試料無添加,酵素無添加時の吸光度
カシューアップルポリフェノール画分におけるコラゲナーゼ阻害活性率(%)の測定を行い、その結果を表9に示す。本試験では、各データは同時に測定した2回の平均値を取った。
【0069】
【表9】

【0070】
表9から明らかなように、カシューアップルポリフェノール画分の50μg/mlの濃度でコラゲナーゼ活性を阻害することが明らかとなった。また、その阻害度合いは濃度依存的であることが明らかとなった。
【0071】
次に、ポリフェノールを吸着する性質を有する樹脂であるPoly-vinylpolypyrrolidone(PVPP)を、実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分の0.06%水溶液に1.1%となるように添加し、0.5時間の攪拌の後、遠心分離(1,800g・15分)して上清を回収した。さらに、この上清に1%となるようにPVPP樹脂を添加し、同様に0.5時間攪拌した後遠心分離し、その上清を得た。これを凍結乾燥させPVPP非吸着画分として、37℃で上記と同様にコラゲナーゼ活性阻害を調べた。なお、添加濃度は0.5mg/mlとした。また、ポリフェノール含量測定は実施例1で行なった操作とと同様に検量線にカテキンを標準物質として用いたFolin−Denis法により測定した。それらの結果を表10に示す。表10から明らかなように、ポリフェノール画分のコラゲナーゼ活性阻害にはポリフェノール成分が強く関与していると考えられる。
【0072】
【表10】

【実施例9】
【0073】
〔ヒアルロニダーゼ阻害活性試験〕
実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分水溶液200μlと、0.1M酢酸緩衝液(pH 4.0)に溶解した牛精巣由来ヒアルロニダーゼ(シグマ社製)を400単位(100μl)添加して反応液とした。また、対照として、試料溶液と等量の試料溶媒を酵素溶液に添加した。
【0074】
上記の反応液を37℃で20分間プレインキュベートした後、ヒアルロニダーゼの活性化物質であるCompound48/80(シグマ社製)を上記緩衝液に溶解したものを200μl(終濃度:0.1mg/ml)加え、さらに37℃で20分間プレインキュベートした。この溶液に、基質であるヒアルロン酸カリウム(MP Biomedical社、ヒト臍帯由来)を上記緩衝液で溶解し、500μl(終濃度:0.4mg/ml)加えて、37℃で40分間インキュベートして酵素反応を行った。
【0075】
その後、基質が分解されることによって遊離したN-アセチルグルコサミンをモルガン・エルソン法により発色させ、測定を行った。すなわち、反応時間終了時に0.4N NaOHを200μl添加後速やかに氷冷し、酵素反応を終了させた。その後0.8mmol/Lホウ酸溶液(pH 9.1)を200μl加え、攪拌後、100℃で5分間加熱し、その後氷冷した。その後溶液を96穴プレートに47μlずつ分注し、1%p-ジメチルベンズアルデヒドを200μlずつ添加後、37℃で20分間加温し、分光光度計(Spectra MAX Plus : Molucular Devices社製)を用いて585nmの吸光度を測定した。
【0076】
ヒアルロニダーゼ阻害活性算出方法
測定結果より、次式によりヒアルロニダーゼ阻害率を算出した。
(式8)
ヒアルロニダーゼ阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
A:試料溶液添加,酵素添加時の吸光度
B:試料溶液添加,酵素無添加時の吸光度
C:試料無添加,酵素添加時の吸光度
D:試料無添加,酵素無添加時の吸光度
【0077】
カシューアップルポリフェノール画分におけるヒアルロニダーゼ阻害活性率(%)の測定を行い、その結果を表11に示す。本試験では、各データは同時に測定した2回の平均値を取った。
【0078】
【表11】

【0079】
表11から明らかなように、カシューアップルポリフェノール画分の500μg/mlの濃度でヒアルロニダーゼ活性を阻害することが明らかとなった。また、その阻害度合いは濃度依存的であることが明らかとなった。
【0080】
次に、ポリフェノールを吸着する性質を有する樹脂であるPoly-vinylpolypyrrolidone(PVPP)を、実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分の0.06%水溶液に1.1%となるように添加し、0.5時間の攪拌の後、遠心分離(1,800g・15分)して上清を回収した。さらに、この上清に1%となるようにPVPP樹脂を添加し、同様に0.5時間攪拌した後遠心分離し、その上清を得た。これを凍結乾燥させPVPP非吸着画分として、37℃で上記と同様にヒアルロニダーゼ活性阻害を調べた。なお、添加濃度は0.5mg/mlとした。また、ポリフェノール含量測定は実施例1で行なった操作と同様に検量線にカテキンを標準物質として用いたFolin−Denis法により測定した。それらの結果を表12に示す。表12から明らかなように、ポリフェノール画分のヒアルロニダーゼ活性阻害にはポリフェノール成分が強く関与していると考えられる。
【0081】
【表12】

【実施例10】
【0082】
〔コラーゲン老化試験〕
コラーゲンの架橋形成の抑制作用
実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分を蒸留水に溶解し、試料溶液とした。
【0083】
試料溶液100μlに50mmol/L Tris-HCl緩衝液に溶解した1mg/mlの仔牛皮膚由来I型コラーゲン溶液(シグマ社製)200μl(最終濃度:0.2mg/ml)に、同じく緩衝液で作製した200μmol/Lヘマトポルフィリン(シグマ社製)100μl(最終濃度:20μmol/L)を加え、更に600μlの緩衝液を加えた。これをガラスバイアルに取り、長波長ブラックライトUVランプ365nm(UVP社製)を用いUV-A 2mw/cm を氷冷下で20分間照射した。なお、照射強度はRadiometer Sensor,UVX-36を用いて調節した。UV−A照射前後のサンプルをSDS−PAGEにて分離し、コラーゲンのα、β、γ鎖の量の変化を見る。このコラーゲンのα、βおよびγ鎖の変化量を、カシューアップルポリフェノール画分を添加した場合(最終濃度:0.5mg/ml)と添加しない場合で比較し、その作用を調べた。この結果を図1及び表13に示す。
【0084】
【表13】

【0085】
その結果、添加していない場合は高分子側のγ鎖バンドが増え、架橋形成が示されたが、添加した場合はUV-A照射前とほぼ変わりなく、コラーゲンの架橋形成が抑制されることが示された。
【実施例11】
【0086】
〔α−アミラーゼ阻害活性試験〕
実施例1で調整したカシューアップルポリフェノール画分のα-アミラーゼ阻害活性をブタ膵臓由来アミラーゼを用いて測定した。なお、実施例1の試料は、250mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、試料溶液とした。
【0087】
具体的には、試料溶液25μl、α-アミラーゼ(SIGMA社製)/リン酸緩衝液25μl(4umits)を加えて混合した後、37℃で10分間プレインキュベートした。その後2.0%でんぷん/リン酸緩衝液50μlを加えて反応を開始し、37℃で30分間のインキュベート後、0.1M塩酸を添加して、反応を停止させた。その後、反応溶液に0.01Mヨウ素溶液を添加し、ヨウ素により着色した未分解のデンプン量を吸光度(Abs.660nm)測定した。対照には、試料溶液の代わりに250mMリン酸緩衝液を用いた。なお、それぞれのブランクとしては、でんぷん添加前に塩酸を加えたものを用いた。
【0088】
酵素阻害率(%)は、対照溶液との比較で、式9により算出した。
(式9)
α-アミラーゼ阻害活性の算出方法
α-アミラーゼ阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
A:試料溶液のブランクの吸光度
B:試料溶液の吸光度
C:対照溶液のブランクの吸光度
D:対照溶液の吸光度
【0089】
実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分におけるα-アミラーゼ阻害率(%)の測定を行い、その結果を表14に示す。本試験では、各データは同時に測定した2回の平均値を取った。
【0090】
【表14】

【0091】
表14から明らかなように、カシューアップルポリフェノール画分100μg/mlの添加濃度でα-アミラーゼ活性を強力に阻害することが明らかとなった。また、その阻害度合いは濃度依存的であることが明らかとなった。
【0092】
次に、ポリフェノールを吸着する性質を有する樹脂であるPoly-vinylpolypyrrolidone(PVPP)を、実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分の0.06%水溶液に1.1%となるように添加し、0.5時間の攪拌の後、遠心分離(1,800g・15分)して上清を回収した。さらに、この上清に1%となるようにPVPP樹脂を添加し、同様に0.5時間攪拌した後遠心分離し、その上清を得た。これを凍結乾燥させPVPP非吸着画分として、37℃で上記と同様にα-アミラーゼ活性阻害を調べた。なお、添加濃度は100μg/mlとした。また、ポリフェノール含量測定は実施例1で行なった操作と同様に検量線にカテキンを標準物質として用いたFolin−Denis法により測定した。それらの結果を表15に示す。表15から明らかなように、ポリフェノール画分のα-アミラーゼ活性阻害にはポリフェノール成分が強く関与していると考えられる。なお、PVPP非吸着画分は逆にアミラーゼ活性を向上させる結果が観察された。
【0093】
【表15】

【実施例12】
【0094】
〔α-グルコシダーゼ阻害活性試験〕
実施例1で調製したカシューアップルポリフェノール画分について、以下の方法によりα-グルコシダーゼ阻害作用(マルターゼ阻害およびスクラーゼ阻害)を測定した。なお、試料は56mMマレイン酸緩衝液(pH6.0)に溶解し、試料溶液とした。
【0095】
市販ラット腸管アセトン粉末に9倍量のマレイン酸緩衝液を添加し、ガラスホモジナイザーで均質化した後、遠心分離を行い、上清を回収し、これを粗酵素液とした。マルターゼ反応は粗酵素液を20倍希釈、スクラーゼ反応には2倍希釈して使用した。
【0096】
まず、2%マルトースまたは2%スクロース溶液100μlに試料溶液100μlを添加し、37℃で5分間保温した。溶液の一部をブランク用として回収したその後、粗酵素液を100μl添加して反応を開始し、37℃で120分間反応させた。反応後、沸騰水中で10分間加熱し酵素を失活させた後、遠心分離を行い、上清のグルコース量をグルコースC II テストワコー(和光純薬工業製)により測定した。対照には、試料溶液の代わりに56mMマレイン酸緩衝液を用いた。なお、それぞれのブランクとしては、粗酵素液添加後、すぐに沸騰水中で酵素を加熱失活させたものを用いた。
【0097】
酵素阻害率(%)は、対照との比較で、式10により算出した。
(式10)
α-グルコシダーゼ阻害活性の算出方法
α-グルコシダーゼ阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
但し、A:試料溶液のブランクの吸光度
B:試料溶液の吸光度
C:対照溶液のブランクの吸光度
D:対照溶液の吸光度
【0098】
実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分におけるα-グルコシダーゼ阻害活性率(%)の測定を行い、その結果を表16に示す。本試験では、各データは同時に測定した2回の平均値を取った。
【0099】
【表16】

【0100】
表16から明らかなように、カシューアップルポリフェノール画分にα-グルコシダーゼ活性阻害効果が認められた。
【実施例13】
【0101】
〔AGE生成阻害作用〕
実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分について、以下の方法によりAGE生成阻害作用を測定した。
【0102】
16mg/mlの牛血清アルブミン1ml、4Mグルコース1ml、1/15Mリン酸緩衝液(pH7.2)1ml、0.3mg/mlの試料溶液1mlを混合し、60℃で貯蔵した。3日後に、タンパク質とグルコースによって生成されたAGEを蛍光分光計により分析した。蛍光の条件は、AGE初期産物の分析では励起波長325nm・蛍光波長405nm、AGE後期産物の分析では励起波長370nm・蛍光波長440nmとした。また、比較のためにアミノグアニジンを用いた実験も同様に行った。また、試料溶液の代わりに同量の蒸留水を用いたものを対照溶液とし、同様に蛍光分析を行った。対照溶液の結果をAGE生成阻害率0%とした。
【0103】
阻害率(%)は、コントロールとの比較で、式11により算出した。
(式11)
AGE生成阻害活性の算出方法
AGE生成阻害率(%)=〔1−(A−C)/(B−C)〕×100
但し、A:試料溶液の蛍光波長
B:対照溶液の蛍光波長
C:水の蛍光波長
実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分におけるα-グルコシダーゼ阻害活性率(%)の測定を行い、その結果を表17に示す。
【0104】
【表17】

【0105】
実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分は、AGE生成阻害作用を有することが示された。
【実施例14】
【0106】
〔リパーゼ阻害活性試験〕
実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分について、以下の方法によりリパーゼ阻害作用を測定した。なお、試料はMcllvaine緩衝液(pH7.4)に溶解し、試料溶液とした。
【0107】
0.5mg/mlブタ膵リパーゼ(SIGMA社製) 100μl、試料溶液50μl、5mM 4-methylumbelliferyl oleate(Fulka)50μlを混合して反応を開始し、励起波長320nm、蛍光波長450nmにおける蛍光を測定した。測定開始1分ごとに10分間まで測定し、次式を用いてリパーゼ活性阻害率を算出した。対照には、試料溶液の代わりにMcllvaine緩衝液を用いた。阻害率(%)は、対照との比較で、式12により算出した。
(式12)
リパーゼ阻害活性の算出方法
リパーゼ阻害率(%)=(1−A/B)×100
A:試料溶液の単位時間当たりの波長の変化
B:対照溶液の単位時間当たりの波長の変化
【0108】
結果を表18に示す。実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分は、リパーゼ阻害作用を有することが示された。
【0109】
【表18】

【実施例15】
【0110】
〔アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用試験〕
実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分について、以下の方法によりACE阻害作用を測定した。なお、緩衝液には0.1Mホウ酸緩衝液に塩化ナトリウムを溶解させたもの(pH8.3)を用いた。
【0111】
試料/緩衝液50μlに60mU/mlのウサギ肺由来ACE(SIGMA製)50μlを入れて、37℃で15分間放置した後、12.5mMのHHL(Hippuryl-L-Histidyl-L-Leucine)を基質液として50μl添加し、37℃で60分間インキュベートした。その後、1Nの塩酸100μlを添加して反応を停止させ、得られた反応液に、酢酸エチル1mlを加えてACEの作用により遊離した馬尿酸を抽出し、10分間遠心分離をした後、酢酸エチル層0.5mlを分取して遠心濃縮機で酢酸エチルを留去させた。残渣を0.5mlの水で溶解させた後、抽出された馬尿酸の紫外吸収228nmにおける吸光度を測定した。対照には、試料溶液の代わりに緩衝液を加えたものを用いた。なお、それぞれのブランクとしては、酵素を入れずに、代わりに緩衝液を加えたものを用いた。
【0112】
阻害率は、対照溶液との比較で、式13により算出した。
(式13)
ACE阻害活性の算出方法
阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
但し、A:試料溶液のブランクの吸光度
B:試料溶液の吸光度
C:対照溶液のブランクの吸光度
D:対照溶液の吸光度
【0113】
結果を表19に示す。実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分は、ACE阻害作用を有することが示された。
【0114】
【表19】

【実施例16】
【0115】
〔ウレアーゼ阻害作用試験〕
実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分について、以下の方法によりウレアーゼ阻害作用を測定した。
【0116】
試料/0.1M リン酸緩衝液(pH7.0) 50μlと20umits/mlのナタ豆由来ウレアーゼ(和光純薬工業株式会社製)50μlを試験管に入れて、37℃で10分間放置した後、400mM尿素添加100mMリン酸緩衝液を基質液として300μl添加し、37℃で30分間インキュベートした。その後、1Nの塩酸100μlを添加して反応を停止させた。得られた反応液に、溶液A(フェノール5g及びニトロプルシドナトリウム25mgを水500mlに溶解させたもの)2.5mlと溶液B(リン酸水素ナトリウム2.2g、水酸化ナトリウム2.5g、次亜塩素酸ナトリウム3.0mlを水に溶解させて500mlとしたもの)2.5mlを添加し、65℃で20分間放置後、630nmにおける吸光度を測定した。対照には、試料溶液の代わりにリン酸緩衝液を加えたものを用いた。なお、それぞれのブランクとしては、酵素の代わりにリン酸緩衝液を加えたものを用いた。
【0117】
阻害率は、対照溶液との比較で、式14により算出した。
(式14)
阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
但し、A:試料溶液のブランクの吸光度
B:試料溶液の吸光度
C:対照溶液のブランクの吸光度
D:対照溶液の吸光度
結果を表20に示す。実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分は、ウレアーゼ阻害作用を有することが示された。
【0118】
【表20】

【実施例17】
【0119】
〔キサンチンオキシダーゼ(XOD)阻害作用試験〕
実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分について、以下の方法によりキサンチンオキシダーゼ阻害作用を測定した。
【0120】
すなわち、試験管に0.1M リン酸緩衝液(pH7.5)に溶解したキサンチンオキシダーゼ(0.03umit/ml)100μlとリン酸緩衝液180μlとリン酸緩衝液に溶解させた試料溶液20μlを加えて37℃で10分間、プレインキュベーションした。次に、0.1M リン酸緩衝液に溶解した1mMのキサンチン溶液 700μlを加え、37℃で60分間反応させた。1N塩酸 100μlを加えて反応を停止させ、生成した尿酸をHPLCで測定した。
【0121】
HPLCによる尿酸測定は、以下のように行った。カラムはSymmetryShield RP18 5μm 4.6×150mm(Waters)を用い、移動相として50mM Na4H2PO4を流速1.0ml/minで流し、尿酸のピークを286nmで検出した。対照には、試料溶液の代わりにリン酸緩衝液を加えたものを用いた。なお、それぞれのブランクとしては、酵素の代わりにリン酸緩衝液を加えたものを用いた。
【0122】
阻害率は、対照溶液との比較で、式15により算出した。
(式15)
阻害率(%)=〔1−(A−B)/(C−D)〕×100
但し、A:試料溶液のブランクのピーク面積
B:試料溶液のピーク面積
C:対照溶液のブランクのピーク面積
D:対照溶液のピーク面積
【0123】
結果を表21に示す。実施例1で調製されたカシューアップルポリフェノール画分は、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有することが示された。
【0124】
【表21】

【0125】
(参考例2)
カシューアップルピューレ、実施例1で得られたカシューアップルポリフェノール画分、及び、カシューナッツ殻にアナカルド酸、カルドール、カルダノールが含まれているかを確認した。分析は、kubo I. et al.,Molluscicides from the Cashew Anacardium occidentale and Their Large-Scale Isolation. J. Agric. Food Chem. 1986, 34, 973-979に記載の方法を改変した方法により行った。
【0126】
<分析試料>
カシューアップルピューレ、ポリフェノール画分、カシューナッツ殻
【0127】
<測定方法>
1)抽出
カシューアップルピューレはそのまま使用した。
ポリフェノール画分として実施例1で調製したものを使用した。
カシューナッツ殻はカシューアップル(ブラジル産)10個分から殻を引き剥がし、中からナッツを取り出したものを使用した。
いずれも凍結乾燥したものをヘキサン100mlで常温攪拌抽出し、吸引濾過(No.5C, ADVANTEC社製)する。濾液をロータリーエバポレーターで留去後、HPLC分析試料とした。HPLCには移動相でヘキサン抽出画分を0.1%(w/v)に調製したものを供した。
【0128】
<HPLC条件>
【0129】
【表22】

【0130】
<結果>
【0131】
【表23】

【0132】
図2,3,4はそれぞれ、カシューアップルピューレ試料、カシューアップルポリフェノール画分試料、及びカシューナッツ殻試料の検出波長(280nm)におけるクロマトグラムを示す。
【0133】
いずれのクロマトグラムでも、保持時間15分〜30分の間にアナカルド酸に由来する3つの大きなピークが確認された。カシューナッツ殻試料のクロマトグラムでは、ピューレ試料やポリフェノール画分試料のクロマトグラムと比べて、アナカルド酸に由来するピーク面積が大きかった。カシューナッツ殻試料では保持時間7分〜10分付近にも2つの大きなピークが見られたが、こちらはUV吸収スペクトルがアナカルド酸とは異なるため、文献との比較でカルドールと考えられる。
【0134】
以上より、カシューアップルのピューレやポリフェノール画分にもわずかながらアナカルド酸が含まれていることが明らかとなった。
【0135】
カシューナッツ殻試料のクロマトグラムにおいて15〜30分に認められる3つのピーク面積を1とすると、ピューレ試料及びポリフェノール画分試料のクロマトグラムにおける対応するピーク面積はそれぞれ0.30及び0.16であった。
【0136】
得られた結果に基づいてアナカルド酸の含有量を計算すると、ピューレでは0.0056%以下、ポリフェノール画分では0.416%以下のアナカルド酸含有量であった。これらは全体から見ると濃度が低いため、アナカルド酸がカシューアップルのすべての機能性に大きく寄与している可能性は低いものと予想された。
【0137】
【表24】

【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】実施例10のコラーゲン架橋形成抑制確認試験の結果を示す。
【図2】参考例2記載の実験で取得された、カシューアップルピューレ試料の検出波長(280nm)におけるクロマトグラムを示す。
【図3】参考例2記載の実験で取得された、カシューアップルポリフェノール画分試料の検出波長(280nm)におけるクロマトグラムを示す。
【図4】参考例2記載の実験で取得された、カシューナッツ殻試料の検出波長(280nm)におけるクロマトグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カシューアップル又はその処理物を有効成分として含有する抗酸化剤、ラジカル消去剤、脂質自動酸化抑制剤、チロシナーゼ阻害剤、美白剤、エラスターゼ阻害剤、皮膚老化防止剤、エラスターゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、コラゲナーゼ阻害剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、ヒアルロニダーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、コラーゲン架橋形成抑制剤、α-アミラーゼ阻害剤、α-アミラーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、α-グルコシダーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、蛋白糖化反応最終産物の生成抑制剤、蛋白糖化反応最終産物が関与する疾患の予防剤もしくは治療剤、リパーゼ阻害剤、リパーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、脂質劣化抑制剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン変換酵素活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、ウレアーゼ阻害剤、抗ヘリコバクターピロリ剤、ヘリコバクターピロリが関与する状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤、キサンチンオキシダーゼ阻害剤、又は、キサンチンオキシダーゼ活性の阻害により症状が予防もしくは改善される状態もしくは疾患の予防剤もしくは治療剤。
【請求項2】
カシューアップルの処理物が、カシューアップルの抽出物である、請求項1記載の剤。
【請求項3】
カシューアップルの抽出物が、カシューアップルの水による抽出物である、請求項2記載の剤。
【請求項4】
カシューアップルの処理物が、カシューアップルの水による抽出物を、水溶性ポリフェノール化合物を水中において吸着可能な物質が充填されたカラムに通し、該カラムにより吸着された画分を分離して得られるものである、請求項1記載の剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−155259(P2009−155259A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334886(P2007−334886)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(505145149)株式会社ニチレイバイオサイエンス (7)
【Fターム(参考)】