説明

カバー及びエアバッグ装置

【課題】側面衝突時のエアバッグの展開方向を、その展開箇所に応じて的確且つ簡便に調整可能なエアバッグ装置に用いられるカバーを提供すること。
【解決手段】このカバー20は、巻回されたエアバッグ10に沿うように形成される保護部202と、車両のボディに取り付けられるように形成される複数の取付部201と、を備え、保護部202には、タブ104が車両のボディに向けて通る箇所をエアバッグ10の巻回方向において変更させることで、エアバッグ10の展開方向を制御することが可能なスリット202fが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端側から他端側に向けて巻回され、ガスを受け入れることで展開可能なエアバッグと、このエアバッグが取り付けられる車両のボディと、の間に配置されるカバーに関する。また本発明は、一端側から他端側に向けて巻回され、ガスを受け入れることで展開可能なエアバッグと、このエアバッグが取り付けられる車両のボディとの間に配置されるカバーと、を含むエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置は、車両に取り付けられて衝突時の乗員保護を目的とするものである。乗員保護のためには様々な方向から乗員に対して展開する必要があるため、エアバッグ装置は車両の様々な部分に取りつけられている。一部のエアバッグ装置には、車体の開口部例えば車両のサイドウインドウの上縁に沿ってエアバッグを折り畳んだ状態で取付けておき、車両の側面衝突時にエアバッグがカーテン状に展開して乗員の頭部等を保護するようにしたものがある。
【0003】
この種のエアバッグ装置において、折り畳まれたエアバッグは、例えば、筒状に形成された可撓性を有する保形カバーに収められて折り畳み姿を保持されている。更に、車体の溶接部等によって干渉されないように、エアバッグの長手方向に沿ってプロテクターにより、保形カバーと共に覆うように配置される。このようにエアバッグ及び保形カバーを囲んだプロテクターを、例えばブラケットを介して車体に装着することにより、エアバッグを車体に装着するようになっている。
【0004】
ところで、この種のエアバッグ装置のように、側面衝突時に展開するカーテン状のエアバッグを有するものは、そのエアバッグの展開方向を乗員の頭部と車両の窓との間に確実に調整する必要がある。そのため、エアバッグを保形カバーに収める際にも、保形カバーに収めたエアバッグを更にプロテクターに収める際にも、収容姿勢を調整する必要がある。この煩雑さを回避するため、下記特許文献1に記載のエアバッグ装置が提案されている。
【0005】
下記特許文献1に記載のエアバッグ装置は、プロテクターに係合片を形成すると共に、保形カバーには係合片に係合する係合部を形成している。係合部は、係合片を係入する入口側係合孔と、入口側係合孔に係入された後の係合片の先端側の係合鉤部を突出して係合させる出口側係合孔とによって構成されている(同文献図2参照)。このような構成によって、エアバッグを保形カバーと共にプロテクターに組付け配設し、エアバッグが保形カバーと共にプロテクターに常に所定位置に組付配設されるようにユニット化したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−23439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、側面衝突時に展開するカーテン状のエアバッグを有するエアバッグ装置では、エアバッグの展開方向を乗員の頭部と車両の窓との間に確実に調整する必要がある。この点について詳細に考察してみると、上述した従来の技術では対応することができない場面が想定される。
【0008】
例えば、電柱等の障害物に車両が側面衝突する際には、車両の窓ガラスが破損し、その破損した窓ガラスが車内側に入り込むことが想定される。これに対して、上述した従来の技術では、車両の前後方向に渡るエアバッグ全体を、窓に沿った単一の方向に展開するようにしか案内できない。従って、エアバッグ全体が窓の極めて近くで展開するため、破損した窓ガラスによってエアバッグが破損してしまい、エアバッグが正しく展開しないおそれがある。
【0009】
これに対して、上述した従来の技術において、ユニット化したエアバッグ全体をプロテクターごと内側に向けることも想定される。しかしながら、エアバッグ全体を内側に向けると、破損した窓ガラスによるエアバッグの破損は回避できる可能性は高まるが、エアバッグ全体が同じく内側に展開してしまうため、乗員に過度に力を加えてしまうおそれがある。特に側面衝突時の衝撃によって、瞬間的に乗員の頭部の位置が窓側に移動する場合には、その衝撃がより大きくなるおそれがある。このような事態を回避するためには、側面衝突時のエアバッグの展開方向を、その展開箇所に応じて的確に調整することが必要であるが、従来の技術では対応することができなかった。
【0010】
このように側面衝突時のエアバッグの展開方向を、その展開箇所に応じて的確に調整するため、従来の技術のようなユニット化をせずに、例えば、エアバッグを捻りながら車両のボディに取り付けることも考えられる。しかしながら、このようにエアバッグを捻りながら車両のボディに取り付けることは、異なる作業者であれば異なる捻り方になるおそれもあり、そのような作業者間の個体差を無くそうとすれば作業負荷の増大に繋がる。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、側面衝突時に展開するカーテン状のエアバッグを有するエアバッグ装置として好適なエアバッグ装置であって、側面衝突時のエアバッグの展開方向を、その展開箇所に応じて的確且つ簡便に調整可能なエアバッグ装置及びそれに用いられるカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係るカバーは、一端側から他端側に向けて巻回され、ガスを受け入れることで展開可能なエアバッグと、このエアバッグが取り付けられる車両のボディと、の間に配置されるカバーであって、一端側から他端側に向けて巻回されたエアバッグに沿うように形成される保護部と、前記保護部から延出し、車両のボディに取り付けられるように形成される複数の取付部と、を備えている。前記保護部に収められるエアバッグの他端側には、車両のボディに取り付けられる複数のタブが形成されている。前記保護部には、前記タブが車両のボディに向けて通る箇所を前記エアバッグの巻回方向において変更させることで、前記エアバッグの展開方向を制御することが可能な展開方向制御手段が設けられている。
【0013】
本発明では、保護部を設けることで、エアバッグが展開した際に、車両のボディ内面における溶接箇所等に当たってエアバッグが破損することを防止することができる。保護部に収められたエアバッグの他端側には、エアバッグを車両に取り付けるための複数のタブが形成されているので、簡便にエアバッグを保護部に配した状態で取り付けることができる。
【0014】
更に、保護部には展開方向制御手段を設けることで、エアバッグの展開方向を制御するものとしている。この展開方向制御手段は、タブが車両のボディに向けて通る箇所をエアバッグの巻回方向において変更させることで、エアバッグの展開方向を制御するものである。従って、エアバッグを保護部に配し、エアバッグのタブを車両のボディに向けて通して取り付けるという簡便な作業によって、エアバッグの展開方向を制御可能なものとしている。
【0015】
また本発明に係るカバーでは、前記展開方向制御手段は、前記保護部に形成され前記タブを通過させることが可能なスリットを有しており、前記スリットは、前記エアバッグを前記保護部に沿わせて配置した場合の前記エアバッグの巻回中心が形成する配置軸に沿って形成されることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、エアバッグの巻回中心が形成する配置軸に沿って形成されるスリットを形成し、そのスリットにタブを通すことでエアバッグの展開方向を制御するので、エアバッグの保護部に対する位置決めがより容易且つ確実なものとなる。
【0017】
また本発明に係るカバーでは、前記タブは、前記配置軸に沿って互いに離隔して形成される第一タブ及び第二タブを有し、前記スリットは、前記第一タブを車両のボディに向けて通すための第一スリット及び前記第二タブを車両のボディに向けて通すための第二スリットを有しており、前記配置軸回りに、前記第一スリットと前記第二スリットとが捩れた位置に形成されることも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、配置軸回りに、第一スリットと第二スリットとを捩れた位置に形成し、その捩れた位置にある第一スリット及び第二スリットに第一タブ及び第二タブを通すので、第一タブがある箇所と第二タブがある箇所とが捩れた状態で取り付けることができる。従って、エアバッグを展開した際に、第一タブがある箇所と第二タブがある箇所とを異なる位置に方向付けることができる。このように、保護部に形成する第一スリットと第二スリットの位置を工夫するという簡便な手法で、確実にエアバッグの展開方向を調整することができる。
【0019】
上記課題を解決するために本発明に係るエアバッグ装置は、一端側から他端側に向けて巻回され、ガスを受け入れることで展開可能なエアバッグと、このエアバッグが取り付けられる車両のボディとの間に配置されるカバーと、を含むエアバッグ装置である。前記カバーは、一端側から他端側に向けて巻回されたエアバッグに沿うように形成される保護部と、前記保護部から延出し、車両のボディに取り付けられるように形成される複数の取付部と、を備えている。前記保護部に収められるエアバッグの他端側には、車両のボディに取り付けられる複数のタブが形成されている。前記保護部には、前記タブが車両のボディに向けて通る箇所を前記エアバッグの巻回方向において変更させることで、前記エアバッグの展開方向を制御することが可能な展開方向制御手段が設けられている。
【0020】
本発明では、保護部を設けることで、エアバッグが展開した際に、車両のボディ内面における溶接箇所等に当たってエアバッグが破損することを防止することができる。保護部に収められたエアバッグの他端側には、エアバッグを車両に取り付けるための複数のタブが形成されているので、簡便にエアバッグを保護部に配した状態で取り付けることができる。
【0021】
更に、保護部には展開方向制御手段を設けることで、エアバッグの展開方向を制御するものとしている。この展開方向制御手段は、タブが車両のボディに向けて通る箇所をエアバッグの巻回方向において変更させることで、エアバッグの展開方向を制御するものである。従って、エアバッグを保護部に配し、エアバッグのタブを車両のボディに向けて通して取り付けるという簡便な作業によって、エアバッグの展開方向を制御可能なものとしている。
【0022】
また本発明に係るエアバッグ装置では、前記展開方向制御手段は、前記保護部に形成され前記タブを通過させることが可能なスリットを有し、前記スリットは、前記エアバッグを前記保護部に沿わせて配置した場合の前記エアバッグの巻回中心が形成する配置軸に沿って形成されることが好ましい。更に、前記エアバッグは、一端側から他端側に向けて巻回された第一巻回部分と、この第一巻回部分とは逆方向に巻回された第二巻回部分とが形成されるように巻回されており、前記スリットと前記第一巻回部分との間に前記第二巻回部分が形成されることが好ましい。
【0023】
一端側から他端側に向けて巻回されたエアバッグは、インフレーターから他端側に高圧ガスを供給すると、他端側が保護部に当接してその部分が他の部分を押し出すように展開する。そこでこの好ましい態様では、第一巻回部分と第二巻回部分とを形成し、第二巻回部分を他端側、すなわちスリット側に配置することで、第二巻回部分が第一巻回部分を押し出すように展開させている。更に、第一巻回部分は一端側から他端側に向けて巻回し、第二巻回部分は第一巻回部分とは逆方向に巻回することで、第一巻回部分と第二巻回部分との間に折返し部分を形成し、この折返し部分が一時的に高圧ガスを留めることで、第二巻回部分の展開効果をより高めている。そして、スリット側にこの第二巻回部分を配置することで、スリットによる展開方向の制御と第二巻回部分による展開方向の制御とを組み合わせて、より確実なエアバッグの展開制御を可能なものとしている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、側面衝突時のエアバッグの展開方向を、その展開箇所に応じて的確且つ簡便に調整可能なエアバッグ装置及びそれに用いられるカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願発明の実施形態であるカバーを有するエアバッグ装置を車両に取り付けた状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1のI−I断面を示す概略断面図である。
【図3】図2におけるエアバッグを捩じって取り付ける例を示す概略断面図である。
【図4】図2においてカバーを取り去った状態を比較のために示す概略断面図である。
【図5】図2の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0027】
本発明の実施形態であるカバーを有するエアバッグ装置について、図1を参照しながら説明する。図1の(A)は、エアバッグ装置AAを車両Cの進行方向右側に取り付けた状態を車内側からみた概略斜視図である。図1の(B)は、(A)の状態からエアバッグ装置AAを作動させてエアバッグ10を展開させた状態を示す概略斜視図である。図1においては、車両Cの前方から後方に向かう方向をx方向としてx軸を設定し、車両Cの下方から上方に向かう方向をy方向としてy軸を設定し、車両Cの進行方向右側から進行方向左側に向かう方向をz方向としてz軸を設定している。以降の図面においても、同様にしてx軸、y軸、z軸を設定している。
【0028】
エアバッグ装置AAは、車両Cの窓近傍にエアバッグ10を展開させるカーテンエアバッグ装置である。尚、以下全ての実施形態を図1に示すように、車両Cの進行方向右側用のカーテンエアバッグ装置として説明するが、車両Cの進行方向左側用のカーテンエアバッグ装置も同様且つ対称な構造を有するものである。
【0029】
図1の(A)に示すように、エアバッグ装置AAは、車室側面上方に収納されるものである。エアバッグ装置AAは、サイドルーフレールSLに取り付けられている。車両Cには複数のピラーが設けられており、前方から順に、AピラーAP、BピラーBP、CピラーCP、及びDピラーDPとして設けられている。AピラーAP、BピラーBP、CピラーCP、及びDピラーDPの車内側は、樹脂等で成形されたピラートリムで覆われている。本実施形態の場合、エアバッグ装置AAは、AピラーAPからDピラーDPに渡って設けられている。
【0030】
エアバッグ装置AAは、エアバッグ10と、カバー20と、インフレーター30とを備えている。エアバッグ10は、車両Cの前後方向(x軸方向)に延在するように設けられている。エアバッグ10は、一端側から他端側に向かって巻回された状態で、カバー20に沿って配置されている。エアバッグ10は、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One−Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成されている。
【0031】
インフレーター30は、シリンダーインフレーターであって、エアバッグ10上端の好適に定められる位置から、エアバッグ10にガスを供給する。車両Cに側面衝突やロールオーバー(横転)が発生すると、インフレーター30が作動するように構成されている。具体的には、側面衝突やロールオーバーが発生すると、車両Cに設けられたセンサー(図示せず)が衝撃を感知し、インフレーター30へと発火信号を送信する。そして、インフレーター30の火薬が燃焼し、発生したガスがエアバッグ10へと供給される。
【0032】
カバー20は、一端側から他端側に向けて巻回されたエアバッグ10に沿うように形成される保護部202と、保護部202から延出し、車両Cのボディ(サイドルーフレールSL)に取り付けられるように形成される複数の取付部201とを備えている。
【0033】
続いて、図2を参照しながら、エアバッグ10及びカバー20について説明を加える。図2は、図1のI−I断面を示す概略断面図である。図2に示すように、サイドルーフレールSLの下端側には、ドア(図2においては明示しない)との間に挟みこまれるウェザーストリップWSが設けられている。ウェザーストリップWSには、ルーフトリムTRが接するように設けられている。エアバッグ10及びカバー20は、サイドルーフレールSLと、ウェザーストリップWSと、ルーフトリムTRとによって囲まれる空間の中に配置されている。
【0034】
エアバッグ10は、一端10A側から他端10B側に向けて巻回されている。エアバッグ10の他端10B側には、車両Cのボディに取り付けられるタブ104が設けられている。図2において、タブ104は一つのみ描かれているけれども、エアバッグ10全体ではタブ104は複数設けられている。タブ104には、タブ取付穴104aが設けられている。
【0035】
エアバッグ10は、一端10A側から他端10B側に向けて巻回された第一巻回部分102と、この第一巻回部分102の巻回方向とは逆方向に折り返して巻回された第二巻回部分103と、を有している。第二巻回部分103は、タブ104側と第一巻回部分102との間に形成されている。従って、第一巻回部分102は一端10A側に、第二巻回部分103は他端10B側に、それぞれ形成されている。エアバッグ10は、ルーフトリムTRの内側に当接するように配置されている。
【0036】
カバー20は、取付部201と、保護部202と、を備えている。保護部202は、巻回されたエアバッグ10に沿うように形成され、エアバッグ10がサイドルーフレールSL等のボディに当たって損傷しないように保護する部分である。
【0037】
保護部202は、第一直壁部202aと、曲壁部202bと、第二直壁部202cと、を有している。曲壁部202bは、巻回されたエアバッグ10の外周に沿って湾曲面が形成された部分である。曲壁部202bには、スリット202fが設けられている。
【0038】
スリット202fは、保護部202の取付部201側であって、曲壁部202bに形成されている。スリット202fは、エアバッグ10のタブ104が、エアバッグ10の第一巻回部分102及び第二巻回部分103側から車両CのボディであるサイドルーフレールSL側へと通る隙間である。スリット202fは、タブ104が設けられる場所に対応させて形成される。
【0039】
スリット202fは、エアバッグ10を保護部202に沿わせて配置した場合の、エアバッグ10の巻回中心(一端10A側)が形成する配置軸に沿って矩形状に形成されている。エアバッグ10の巻回中心が形成する配置軸は、エアバッグ10が湾曲して配置されればそれに応じて湾曲する軸であるけれども、図2においてはx軸にほぼ沿った軸である。尚、スリット202fは、厳密にx軸に平行に形成される必要はなく、エアバッグ10のスリット202fが挿通可能であれば、x軸に対して傾いていても構わないものである。
【0040】
曲壁部202bは、図2に正対する方向(x軸を見通す方向)から見た場合に、その円弧の成す角が180度以下となるように形成されている。換言すれば、曲壁部202bは、巻回されたエアバッグ10の外周の半分(半円、半外周)よりも少ない領域に沿うように形成されている。
【0041】
曲壁部202bの両端には、第一直壁部202aと第二直壁部202cとが繋がれている。第一直壁部202aは、曲壁部202bの車両内側よりの端部に繋げて形成されている。第二直壁部202cは、曲壁部202bの車両外側よりの端部に繋げて形成されている。従って、第二直壁部202cが、サイドルーフレールSL及びウェザーストリップWS側に形成されている。
【0042】
曲壁部202bには、第一突起部202dが形成されている。第一突起部202dは、曲壁部202bのサイドルーフレールSLに対向する側の面であって、エアバッグ10に当接する面とは反対側の面に形成されている。第一突起部202dは、サイドルーフレールSLに当接するように設けられている。従って、エアバッグ10が展開した場合でも、曲壁部202bが移動することなく、確実に一定の方向にエアバッグ10を押し出すことができる。
【0043】
第二直壁部202cには、第二突起部202eが形成されている。第二突起部202eは、第二直壁部202cのサイドルーフレールSLに対向する側の面であって、エアバッグ10に当接する面とは反対側の面に形成されている。第二突起部202eは、第二直壁部202cの下端に形成されている。
【0044】
取付部201は、保護部202から延出し、車両Cのボディに取り付けられるように形成されている。取付部201には、カバー取付穴201aが形成されている。取付部201は、曲壁部202bに設けられているスリット202f近傍から、エアバッグ10に当接する面とは反対側に延びるように形成されている。
【0045】
サイドルーフレールSLには、ボディ取付穴SLaが形成されている。ボディ取付穴SLaには、ファスナーFa及びファスナーFbが差し込まれるように構成されている。エアバッグ10及びカバー20は、ファスナーFa及びファスナーFbによってサイドルーフレールSLに共締めされて固定されている。
【0046】
エアバッグ10は、第一巻回部分102及び第二巻回部分103を、カバー20の曲壁部202b、第一直壁部202a、第二直壁部202cに当接させて、タブ104をスリット202fから通してカバー20と一体化される。エアバッグ10のタブ104に形成されたタブ取付穴104aと、カバー20の取付部201に形成されたカバー取付穴201aとが重なるようにして、カバー20及びエアバッグ10はサイドルーフレールSLに当接される。この際に、タブ取付穴104aと、カバー取付穴201aと、ボディ取付穴SLaとが重なるように配置される。
【0047】
タブ取付穴104aと、カバー取付穴201aと、ボディ取付穴SLaとが重なるように配置された後、それらを内側かから貫通するようにファスナーFaが挿入される。ファスナーFaの中央には穴が形成されており、この穴にファスナーFbを挿入することで、ファスナーFaが広がった状態で固定される。
【0048】
図2に示すエアバッグ10にガスを導入して展開させると、図中矢印の方向にエアバッグ10が展開する。エアバッグ10にガスを導入すると、第二巻回部分103において最初に膨張が進行し、第二巻回部分103が曲壁部202bを押した反力によってエアバッグ10が展開する。
【0049】
この展開方向には、スリット202fをどの位置に形成するかも影響を及ぼすものである。スリット202fの位置を変更した場合について、図3を参照しながら説明する。図3は、図2におけるエアバッグ10を捩じって取り付ける例を示す概略断面図である。図3においては、カバー20のスリット位置を変更している。
【0050】
図3に示すように、カバー20は、取付部211と、保護部212と、を備えている。保護部212は、第一直壁部212aと、曲壁部212bと、第二直壁部212cと、を有している。曲壁部212bは、巻回されたエアバッグ10の外周に沿って湾曲面が形成された部分である。曲壁部212bには、スリット212fが設けられている。
【0051】
スリット212fは、保護部212の取付部211側であって、曲壁部212bに形成されている。スリット212fは、エアバッグ10のタブ104が、エアバッグ10の第一巻回部分102及び第二巻回部分103側から車両CのボディであるサイドルーフレールSL側へと通る隙間である。スリット212fは、タブ104が設けられる場所に対応させて形成される。
【0052】
スリット212fは、エアバッグ10を保護部212に沿わせて配置した場合の、エアバッグ10の巻回中心(一端10A側)が形成する配置軸に沿って矩形状に形成されている。スリット212fは、図2に示すスリット202fよりも、サイドルーフレールSL寄りに捩じれた位置に形成されている。
【0053】
曲壁部212bには、第一突起部212dが形成されている。第一突起部212dは、曲壁部212bのサイドルーフレールSLに対向する側の面であって、エアバッグ10に当接する面とは反対側の面に形成されている。第一突起部212dは、サイドルーフレールSLに当接するように設けられている。
【0054】
第二直壁部212cには、第二突起部212eが形成されている。第二突起部212eは、第二直壁部212cのサイドルーフレールSLに対向する側の面であって、エアバッグ10に当接する面とは反対側の面に形成されている。第二突起部212eは、第二直壁部212cの下端に形成されている。
【0055】
図3に示すエアバッグ10にガスを導入して展開させると、図中矢印の方向にエアバッグ10が展開する。エアバッグ10にガスを導入すると、第二巻回部分103において最初に膨張が進行し、第二巻回部分103が曲壁部212bを押した反力によってエアバッグ10が展開する。
【0056】
図2に示すエアバッグ10の展開方向と、図3に示すエアバッグ10の展開方向とを比較すると、図2に示すエアバッグ10の展開方向は比較的直下寄りの方向であり、図3に示すエアバッグ10の展開方向は車両内側の比較的高い寄りの方向である。従って、図2に示すスリット202fと、図3に示すスリット212fとのように、同一のカバー20における長手方向の異なる位置であって互いに捩じれた位置にスリットを形成することで、簡便にエアバッグ10の展開方向を制御することができる。
【0057】
比較のため、カバー20を取り付けない例を図4に示す。図4に示すように、カバー20を取り付けずに、エアバッグ10を直接取り付けると、エアバッグ10の展開時にエアバッグ10はサイドルーフレールSLに直接当たってしまう。そのため、エアバッグ10の展開方向を制御することができない。
【0058】
上述した実施形態では、曲壁部202bに形成した第一突起部202dや、曲壁部212bに形成した第一突起部212dを、サイドルーフレールSLに当接させることで曲壁部202b及び曲壁部212bの変形を防止していたが、カバーの変形防止対策はこれに限られるものではない。
【0059】
図5に、カバーの変形防止対策の変形例を示す。図5に示すように、カバー22は、取付部221と、保護部222と、を備えている。取付部221は、保護部222から延出し、車両Cのボディに取り付けられるように形成されている。取付部221には、カバー取付穴221aが形成されている。一方、保護部222は、巻回されたエアバッグ10に沿うように形成されている。
【0060】
保護部222は、第一直壁部222aと、曲壁部222bと、第二直壁部222cと、を有している。曲壁部222bは、巻回されたエアバッグ10の外周に沿って湾曲面が形成された部分である。曲壁部222bには、スリット222fが設けられている。スリット222fは、図2に示したスリット202fに相当するものである。
【0061】
曲壁部222bは、図5に正対する方向(x軸を見通す方向)から見た場合に、その円弧の成す角が180度以下となるように形成されている。換言すれば、曲壁部222bは、巻回されたエアバッグ10の外周の半分(半円、半外周)よりも少ない領域に沿うように形成されている。
【0062】
曲壁部222bの両端には、第一直壁部222aと第二直壁部222cとが繋がれている。第一直壁部222aは、曲壁部222bの車両内側よりの端部に繋げて形成されている。第二直壁部222cは、曲壁部222bの車両外側よりの端部に繋げて形成されている。従って、第二直壁部222cが、サイドルーフレールSL及びウェザーストリップWS側に形成されている。
【0063】
本例の場合、図2に示した第一突起部202dに相当する突起は形成されていない。一方、第二直壁部222cには、第二突起部222eが形成されている。第二突起部222eは、第二直壁部222cのサイドルーフレールSLに対向する側の面であって、エアバッグ10に当接する面とは反対側の面に形成されている。第二突起部222eは、第二直壁部222cの下端に形成されている。
【0064】
図5に示すエアバッグ10にガスを導入して展開させると、第二巻回部分103において最初に膨張が進行し、第二巻回部分103が曲壁部222bを押した反力によってエアバッグ10が展開する。第二巻回部分103が曲壁部222bを押すと、曲壁部222bが撓んで、結果として第二直壁部222cがウェザーストリップWS側に押される。従って、第二突起部222eは、位置222e1から、二点鎖線で示す位置222e2まで移動し、ウェザーストリップWSに当接する。このように、第二突起部222eが直接ウェザーストリップWSに当接することで、それ以上のカバー22の変形が抑制される。また、ウェザーストリップWSに、展開したエアバッグ10が引っかかってしまうことも確実に防止することができる。
【0065】
上述したように本実施形態に係るカバー20は、一端10A側から他端10B側に向けて巻回され、ガスを受け入れることで展開可能なエアバッグ10と、このエアバッグ10が取り付けられる車両Cのボディと、の間に配置されるカバーである。カバー20は、巻回されたエアバッグ10に沿うように形成される保護部202,212と、保護部202,212から延出し、車両Cのボディに取り付けられるように形成される複数の取付部201,211と、を備えている。保護部202,212に収められるエアバッグ10の他端10B側には、車両Cのボディに取り付けられる複数のタブ104が形成されている。保護部202,212には、タブ104が車両Cのボディに向けて通る箇所をエアバッグ10の巻回方向(図2及び図3において、x軸周りの方向)において変更させることで、エアバッグ10の展開方向を制御することが可能な展開方向制御手段としてのスリット202f及びスリット212fが設けられている。
【0066】
本実施形態では、保護部202,212を設けることで、エアバッグ10が展開した際に、車両Cのボディ内面における溶接箇所等に当たってエアバッグ10が破損することを防止することができる。保護部202,212に収められたエアバッグ10の他端10B側には、エアバッグ10を車両Cに取り付けるための複数のタブ104が形成されているので、簡便にエアバッグ104を保護部202,212に配した状態で取り付けることができる。
【0067】
更に、保護部202,212には展開方向制御手段としてのスリット202f及びスリット212fを設けることで、エアバッグ10の展開方向を制御するものとしている。このように展開方向制御手段としてスリット202f及びスリット212fを設けることで、タブ104が車両Cのボディに向けて通る箇所をエアバッグ10の巻回方向において変更させることが確実且つ簡便にできる。従って、エアバッグ10を保護部202に配し、エアバッグ10のタブ104を車両Cのボディに向けて通して取り付けるという簡便な作業によって、エアバッグ10の展開方向を制御可能なものとしている。
【0068】
また本実施形態では、スリット202f及びスリット212fは、エアバッグ10を保護部202に沿わせて配置した場合のエアバッグ10の巻回中心が形成する配置軸に沿って形成されている。このように、エアバッグ10の巻回中心が形成する配置軸に沿って形成されるスリット202f及びスリット212fを形成し、そのスリット202f及びスリット212fにタブ104を通すことでエアバッグ10の展開方向を制御するので、エアバッグ10の保護部202に対する位置決めがより容易且つ確実なものとなる。
【0069】
また本実施形態では、タブ104は、配置軸に沿って互いに離隔して形成される第一タブとして機能するタブ104及び第二タブとして機能するタブ104を有し、第一スリットとしてのスリット202fは第一タブとしてのタブ104を通し、第二スリットとしてのスリット212fは第二タブとしてのタブ104を通すように構成されている。そして配置軸回りに、第一スリットとしてのスリット202fと第二スリットとしてのスリット212fとが捩れた位置に形成されている。
【0070】
このように構成することで、第一タブとしてのタブ104がある箇所と第二タブとしてのタブ104がある箇所とが捩れた状態で、エアバッグ10を取り付けることができる。従って、エアバッグ10を展開した際に、第一タブがある箇所と第二タブがある箇所とを異なる位置に方向付けることができる。このように、保護部202に形成するスリット202f及びスリット212fの位置を工夫するという簡便な手法で、確実にエアバッグ10の展開方向を調整することができる。
【0071】
また本実施形態では、エアバッグ10において、第一巻回部分102と第二巻回部分103とを形成し、第二巻回部分103を他端10B側、すなわちスリット202f,212f側に配置することで、第二巻回部分103が第一巻回部分102を押し出すように展開させている。更に、第一巻回部分102は一端10A側から他端10B側に向けて巻回し、第二巻回部分103は第一巻回部分102とは逆方向に巻回することで、第一巻回部分102と第二巻回部分103との間に折返し部分を形成している。この折返し部分が一時的に高圧ガスを留めることで、第二巻回部分103の展開効果をより高めている。そして、スリット202f,212f側にこの第二巻回部分103を配置することで、スリット202f,212fによる展開方向の制御と第二巻回部分103による展開方向の制御とを組み合わせて、より確実なエアバッグ10の展開制御を可能なものとしている。
【0072】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0073】
10:エアバッグ
10A:一端
10B:他端
20:カバー
22:カバー
30:インフレーター
102:第一巻回部分
103:第二巻回部分
104:タブ
104a:タブ取付穴
201:取付部
201a:カバー取付穴
202:保護部
202a:第一直壁部
202b:曲壁部
202c:第二直壁部
202d:第一突起部
202e:第二突起部
202f:スリット
211:取付部
212:保護部
212a:第一直壁部
212b:曲壁部
212c:第二直壁部
212d:第一突起部
212e:第二突起部
212f:スリット
221:取付部
221a:カバー取付穴
222:保護部
222a:第一直壁部
222b:曲壁部
222c:第二直壁部
222e:第二突起部
222e1:位置
222e2:位置
222f:スリット
AA:エアバッグ装置
AP:Aピラー
BP:Bピラー
C:車両
CP:Cピラー
DP:Dピラー
Fa:ファスナー
Fb:ファスナー
SL:サイドルーフレール
SLa:ボディ取付穴
TR:ルーフトリム
WS:ウェザーストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側から他端側に向けて巻回され、ガスを受け入れることで展開可能なエアバッグと、このエアバッグが取り付けられる車両のボディと、の間に配置されるカバーであって、
一端側から他端側に向けて巻回されたエアバッグに沿うように形成される保護部と、
前記保護部から延出し、車両のボディに取り付けられるように形成される複数の取付部と、を備え、
前記保護部に収められるエアバッグの他端側には、車両のボディに取り付けられる複数のタブが形成されており、
前記保護部には、前記タブが車両のボディに向けて通る箇所を前記エアバッグの巻回方向において変更させることで、前記エアバッグの展開方向を制御することが可能な展開方向制御手段が設けられていることを特徴とするカバー。
【請求項2】
前記展開方向制御手段は、前記保護部に形成され前記タブを通過させることが可能なスリットを有しており、
前記スリットは、前記エアバッグを前記保護部に沿わせて配置した場合の前記エアバッグの巻回中心が形成する配置軸に沿って形成されることを特徴とする請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記タブは、前記配置軸に沿って互いに離隔して形成される第一タブ及び第二タブを有し、
前記スリットは、前記第一タブを車両のボディに向けて通すための第一スリット及び前記第二タブを車両のボディに向けて通すための第二スリットを有しており、
前記配置軸回りに、前記第一スリットと前記第二スリットとが捩れた位置に形成されることを特徴とするカバー。
【請求項4】
一端側から他端側に向けて巻回され、ガスを受け入れることで展開可能なエアバッグと、このエアバッグが取り付けられる車両のボディとの間に配置されるカバーと、を含むエアバッグ装置であって、
前記カバーは、
一端側から他端側に向けて巻回されたエアバッグに沿うように形成される保護部と、
前記保護部から延出し、車両のボディに取り付けられるように形成される複数の取付部と、を備え、
前記保護部に収められるエアバッグの他端側には、車両のボディに取り付けられる複数のタブが形成されており、
前記保護部には、前記タブが車両のボディに向けて通る箇所を前記エアバッグの巻回方向において変更させることで、前記エアバッグの展開方向を制御することが可能な展開方向制御手段が設けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項5】
前記展開方向制御手段は、前記保護部に形成され前記タブを通過させることが可能なスリットを有し、前記スリットは、前記エアバッグを前記保護部に沿わせて配置した場合の前記エアバッグの巻回中心が形成する配置軸に沿って形成され、
前記エアバッグは、一端側から他端側に向けて巻回された第一巻回部分と、この第一巻回部分とは逆方向に巻回された第二巻回部分とが形成されるように巻回されており、
前記スリットと前記第一巻回部分との間に前記第二巻回部分が形成されることを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148594(P2012−148594A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6914(P2011−6914)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
【復代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
【復代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
【復代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
【Fターム(参考)】