説明

カバー部材の取付構造

【課題】カバー部材の組付作業性の向上と保持力の確保。
【解決手段】開口部10を開閉可能に覆うカバー部材30を開口部周縁に係止させて取り付けるカバー部材の取付構造であって、カバー部材取付状態で当該カバー部材を裏側から表側に向かって付勢する付勢機構16,16が、カバー部材と開口部周縁との間に設けられ、カバー部材の一側縁に、開口部周縁の突状係止部18に裏側から表側に向かって嵌合して係止される、表側が開口した凹状嵌合部34が設けられており、カバー部材は、凹状嵌合部が開口部周縁の前記突状係止部に裏側から表側に向かって嵌合して係止された取付状態で、前記付勢機構により裏側から表側に向かって付勢されている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材の取付構造、より詳しく言えば、開口部を開閉可能に覆うカバー部材を開口部周縁に係止させて取り付けるカバー部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の車体前端下部には、当該車両を牽引する際に用いられる牽引フック、或いは該牽引フックを必要時に取り付けるためのフック取付部が設けられ、車体前端下部の前方を覆う例えばバンパフェイスには、かかる牽引フック又はフック取付部にアクセスするための開口部が形成されている。この開口部は、通常時はカバー部材で覆われて閉塞されている。そして、必要時にはカバー部材を開いて、牽引フック又はフック取付部へのアクセスが行えるようになっている。
【0003】
このように、開口部を開閉可能に覆うカバー部材を開口部周縁に係止させて取り付けるカバー部材の取付構造としては、例えば特許文献1に開示されているように、カバー部材の周縁の一部に係止爪部を設けると共に、開口部周縁の一部に被係止溝を形成しておき、カバー部材を表側から裏側に向かって押圧することで係止爪部を弾性的に撓ませ、この係止爪部を被係止溝に嵌め込むことによってカバー部材を開口部周縁に固定するようにした構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3966013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のような係止爪部を用いた構造では、カバー部材の組付作業性を向上させるために、係止爪部の爪高さを低くして組付時のカバー部材押圧力を低減すれば、それだけカバー部材に対する開口部周縁の保持力が低下して、カバー部材が開口部から外れ易くなる。また、逆に、カバー部材に対する開口部周縁の保持力を高めるために、爪高さを高くすれば、組付時のカバー部材押圧力が高くなり過ぎて組付作業性が損なわれることになる。
【0006】
そこで、本発明は、カバー部材の組付作業性の向上と、カバー部材に対する開口部周縁の保持力の確保とを、両立して達成することができるカバー部材の取付構造を提供することを、基本的な目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本願の第1の発明は、開口部を開閉可能に覆うカバー部材を開口部周縁に係止させて取り付けるカバー部材の取付構造であって、カバー部材取付状態で当該カバー部材を裏側から表側に向かって付勢する付勢機構が、カバー部材と前記開口部周縁との間に設けられ、前記カバー部材の一側縁に、前記開口部周縁の係止部に裏側から表側に向かって嵌合して係止される、表側が開口した凹状被係止部が設けられており、前記カバー部材は、前記凹状被係止部が前記開口部周縁の係止部に裏側から表側に向かって嵌合して係止された取付状態で、前記付勢機構により裏側から表側に向かって付勢されている、ことを特徴としたものである。
【0008】
また、本願の第2の発明は、前記第1の発明において、前記開口部周縁に、開口部内へ所定幅だけ張り出し前記カバー部材の裏面側を受け合うフランジ部が形成され、該フランジ部に前記付勢機構が設けられている、ことを特徴としたものである。
【0009】
更に、本願の第3の発明は、前記第1又は第2の発明において、前記開口部周縁の係止部には、当該係止部への前記凹状被係止部の嵌合状態を解除するための工具を挿入する切欠部が形成されている、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本願の第1の発明によれば、カバー部材は、凹状被係止部が開口部周縁の係止部に裏側から表側に向かって嵌合し係止されることにより開口部周縁に取り付けられ、その取付状態で付勢機構により裏側から表側に向かって付勢されているので、確実かつ安定してカバー部材を開口部周縁に保持させることができる。また、カバー部材の凹状被係止部を開口部周縁の係止部に係止させる際には、カバー部材を、付勢機構の付勢力に抗して、表側から裏側に向かって開口部内に押し込めばよいので、従来の係止爪構造を用いた場合に比して小さい力でカバー部材を開口部に組み付けることができ、組付作業性も向上する。すなわち、カバー部材の組付作業性の向上と、カバー部材に対する開口部周縁の保持力の確保とを、両立して達成することができる。
【0011】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には、前記第1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、前記開口部周縁に、開口部内へ所定幅だけ張り出しカバー部材の裏面側を受け合うフランジ部が形成され、前記付勢機構は具体的には前記フランジ部に設けられるので、カバー部材取付状態で当該カバー部材の裏面側を受け合う部材を利用して付勢機構を設けることができ、かかる付勢機構を別設する場合に比して構造の簡素化を図ることができる。また、カバー部材取付状態で当該カバー部材の裏面側を受け合うフランジ部に、カバー部材を取付状態で裏側から表側に向かって付勢する付勢機構を設けたので、この付勢機構の付勢特性および寸法関係等を適切に設定することにより、カバー部材取付状態でのカバー部材表面と開口部周囲の表面との間で段差が生じることを抑制する段差調整を特に行う必要性を無くすることができる。
【0012】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には、前記第1又は第2の発明と同様の効果を奏することができる。特に、前記開口部周縁の係止部には、当該係止部への前記凹状被係止部の嵌合状態を解除するための工具を挿入する切欠部が形成されているので、開口部周縁の係止部に対する凹状被係止部の嵌合状態を解除するに際して、その解除用の工具をスムースに挿入することができ、かかる工具の挿入によって、開口部周縁の係止部やカバー部材の側縁が傷付けられることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るカバー部材が取り付けられた自動車の前部を示す斜視図である。
【図2】前記自動車のバンパフェイスの牽引フック用開口部を前記カバー部材が取り外された状態で示す拡大正面図である。
【図3】前記牽引フック用開口部を拡大して示す斜視図である。
【図4】前記牽引フック用開口部の周縁フランジ部の構造を説明するための図で、図3のY4−Y4線に沿った断面図である。
【図5】前記カバー部材を前斜め下方から見て示した斜視図である。
【図6】前記カバー部材を前斜め上方から見て示した斜視図である。
【図7】前記カバー部材の牽引フック用開口部への取付構造の要部を拡大して示す斜視図である。
【図8】前記カバー部材の牽引フック用開口部への取付構造を説明するための図で、図1のY8−Y8線に沿った断面図である。
【図9】前記カバー部材の牽引フック用開口部からの取り外し作業を示す断面図である。
【図10】前記実施形態の変形例に係るカバー部材の牽引フック用開口部への取付構造の要部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、例えば、自動車のバンパフェイスに設けた牽引フック用開口部を開閉可能に覆うカバー部材の取付構造に適用した場合を例にとって、添付図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係るカバー部材が取り付けられた自動車の前部を示す斜視図、図2は前記自動車のバンパフェイスの牽引フック用開口部をカバー部材が取り外された状態で示す拡大正面図、図3は前記牽引フック用開口部を拡大して示す斜視図、また、図4は前記牽引フック用開口部の周縁フランジ部の構造を説明するための図で、図3のY4−Y4線に沿った断面図である。
【0015】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る自動車1は、車体の前端下部の前方を覆うバンパフェイス3に牽引フック用開口部10が形成され、該開口部10は、通常時はカバー部材30で覆われて閉塞されている。尚、前記牽引フック用開口部10は、当該自動車を牽引する際に用いられる牽引フック(不図示)、或いは該牽引フックを必要時に取り付けるためのフック取付部(不図示)にアクセスするための開口部であり、必要時にはカバー部材30を開いて、牽引フック又はフック取付部へのアクセスが行えるようになっている。前記牽引フック用開口部10は、正面視で例えば円形に形成されている。
【0016】
また、図3及び図4に示されるように、牽引フック用開口部10の開口部周縁には、開口部10内へ所定幅だけ張り出すフランジ部12が形成されている。このフランジ部12は、カバー部材30の取付状態で当該カバー部材30の裏面30r側を受け合うもので、バンパフェイス3の表面から所定量段下げして、当該バンパフェイス3と一体に形成されている。尚、バンパフェイス3は、より好ましくは合成樹脂製である。
【0017】
前記フランジ部12は、開口部周縁の上部および下部において所定長さに亘ってそれぞれ切り欠かれており、上側の切欠部13を挟んで一対の切り起こし部14がフランジ部12に形成されている。また、下側の切欠部15を挟んで一対の切り起こし部16が形成されている。これら切り起こし部14,16は何れも、切り起こした先端側がフランジ部12の表側(車両前側)に所定高さだけ隆起している。従って、フランジ部12の表裏方向(車両前後方向)の荷重に対して弾性変位可能で付勢力を生じ得る。
【0018】
上側の切り起こし部14を例にとって説明すれば、図4に示されるように、牽引フック用開口部10にカバー部材30(一点鎖線参照)が取り付けられた状態では、切り起こし部14の先端部分がカバー部材30の裏面30rに当接し、裏面側に弾性変形する。換言すれば、カバー部材30には、この弾性変形した切り起こし部14の弾性特性に応じて、当該カバー部材を裏面側から表面側に向かって付勢する付勢力を受けることになる。
すなわち、切り起こし部14,16が、カバー部材30と開口部10の周縁との間に設けられて、カバー部材取付状態で当該カバー部材30を裏面側から表面側に向かって付勢する付勢機構を構成している。
【0019】
本実施形態では、上述のように、カバー部材取付状態で当該カバー部材30の裏面側を受け合うフランジ部12を利用して付勢機構を設けたことにより、かかる付勢機構を別設する場合に比して構造の簡素化を図ることができる。また、カバー部材取付状態で当該カバー部材の裏面側を受け合うフランジ部12に、カバー部材30を取付状態で裏側から表側に向かって付勢する付勢機構14,16を設けたので、この付勢機構14,16の付勢特性および寸法関係等を適切に設定することにより、カバー部材取付状態でのカバー部材30の表面30fと開口部10の周囲(バンパフェイス3)の表面との間で段差が生じることを抑制する段差調整を特に行う必要性を無くすることができる。
【0020】
図5は前記カバー部材30を前斜め下方から見て示した斜視図、図6はカバー部材30を前斜め上方から見て示した斜視図、図7はカバー部材30の牽引フック用開口部10への取付構造の要部を拡大して示す斜視図、また、図8は、カバー部材30の牽引フック用開口部10への取付構造を説明するための図で、図1のY8−Y8線に沿った断面図、更に、図9はカバー部材30の牽引フック用開口部10からの取り外し作業を示す断面図である。
【0021】
図5及び図6に示すように、牽引フック用開口部10を開閉可能に覆うカバー部材30は、その一側縁(上縁)に、取付状態にあるカバー部材30が牽引フック用開口部10から脱落することを防止するための抜け止め突起部32を備えている。この抜け止め突起部32は、図8及び図9から良く分かるように、カバー部材30の裏面(30r)側に所定量だけ伸長し組付時に牽引フック用開口部10の周壁10wにガイドされるガイド部32gと、該ガイド部32gの端末部から上方に突き出た突起片部32kとを有し、全体として逆L字状の断面形状を備えている。
【0022】
一方、カバー部材30前記一側縁(上縁)に対向する他側縁(下縁)には、カバー部材30の表面(30f)側が開口した凹状の嵌合部34が設けられている。この凹状嵌合部34は、図7,図8及び図9から良く分かるように、カバー部材30の裏面(30r)側に所定量だけ伸長し組付時に牽引フック用開口部10の周壁10wにガイドされるガイド部34gと、該ガイド部34gの端末部から下方に延びた奥壁部34bと、該奥壁部34bの下端から表面側に折り返された折り返し部34cとを有している。尚、カバー部材30も、より好ましくは合成樹脂製である。
【0023】
牽引フック用開口部10の周壁10wの下端部分には、裏面側へ突出する突状係止部18が形成されており、この突状係止部18に前記凹状嵌合部34が裏面側から表面側に向かって嵌合することにより、カバー部材30の下端側が、牽引フック用開口部10の周縁下端部に係止されるようになっている。前記突状係止部18の先端面は、凹状嵌合部34の奥壁部34bよりも面積が小さく設定されており、突状係止部18に凹状嵌合部34が裏面側から表面側に向かって嵌合した際には、突状係止部18の先端面が凹状嵌合部34の奥壁部34bに当接することにより、安定した嵌合状態が得られるようになっている。
【0024】
また、カバー部材30の裏面の適所には、例えば合成樹脂製の係止紐36の一端部(基端部)が結合されている。この係止紐36の他端部には、弾性的に撓んで開閉動作を行う係止フック37が一体的に形成されている。尚、この係止紐36及び係止フック37も合成樹脂製で、より好ましくはカバー部材30と一体成形されている。
【0025】
牽引フック用開口部10のフランジ部12には、前記係止フック37を係止させる係止穴17が形成されており、係止フック37を弾性的に撓ませてフック37が閉じるように窄ませた状態で、フランジ部12の係止穴17に表側から挿通させ、挿通後にフック37を開かせる(撓みを解除する)ことにより、係止フック37は係止穴17から抜脱できなくなる。
【0026】
このように、係止紐36の係止フック37をフランジ部12の係止穴17に装着することにより、カバー部材30を牽引フック用開口部10から取り外した際に、係止紐36を介してカバー部材30を牽引フック用開口部10のフランジ部12に連繋させておくことができ、牽引フック使用時の利便性を高めることができる。
【0027】
以上の構成において、牽引フック用開口部10にカバー部材30を取り付けて覆う際には、まず、カバー部材30の上縁裏面に設けられた抜け止め突起部32の突起片部32kを牽引フック用開口部10のフランジ部12に設けられた上側の切欠部13から周壁10wの裏面側に差し込む。その後、付勢機構(切り起こし部14,16)の付勢力に抗して、カバー部材30の主として下部を表側から裏側に向かって押圧する。これにより、カバー部材30の下縁裏面に設けられた凹状嵌合部34が、弾性的に若干上方へ撓ませられながら、フランジ部12に設けられた下側の切欠部15から周壁10wの突状係止部18の上面に沿って表側から裏側へ押し込まれる。
【0028】
そして、凹状嵌合部34の折り返し部34cが突状係止部18の上面を表側から裏側に乗り越えると、凹状嵌合部34が突状係止部18に裏側から表側に向かって嵌合する。これにより、カバー部材30の下縁が牽引フック用開口部10の下縁側に係止される。
このとき、カバー部材30は、付勢機構(切り起こし部14,16)により裏側から表側に向かって付勢されており、カバー部材30は、その下縁側において、凹状嵌合部34が牽引フック用開口部10周縁の突状係止部18に裏側から表側に向かって嵌合して係止され、且つ、上縁側において、抜け止め突起部32の突起片部32kが牽引フック用開口部10の周壁10wの裏面側に差し込まれて当接した状態で、牽引フック用開口部10に取り付けられる。
【0029】
尚、カバー部材30の主として下部を表側から裏側に向かって押圧する際に、カバー部材30の凹状嵌合部34が、弾性的に上方へ撓ませられることなく、周壁10wの突状係止部18の上面に沿って表側から裏側へ通過するように、前記抜け止め突起部32及び凹状嵌合部34等の形状及び寸法を設定することも可能である。この場合、凹状嵌合部34自体の弾性的撓みによる保持力は作用しないことになるが、この場合でも、カバー部材30は、付勢機構(切り起こし部14,16)により裏側から表側に向かって付勢されているので、確実かつ安定して牽引フック用開口部10の周縁に保持される。
【0030】
また、牽引フック用開口部10への取付状態にあるカバー部材30を取り外す際には、図9に示すように、先端Tsが薄板状に形成された取り外し工具Tが用いられる。
カバー部材30を表側から裏側に向かって押圧しながら(図9の矢印A参照)、取り外し工具Tの先端Tsを凹状嵌合部34のガイド部34gと周壁10wとの間(具体的には、突状係止部18の上面との間)に差し込んで(同矢印B参照)、好ましくは、凹状嵌合部34の奥壁部34bを裏側に向かって突き出すことにより、突状係止部18に対する凹状嵌合部34の嵌合状態を解除する。
【0031】
そして、カバー部材30の上縁側を支点にして、下縁側を回動させるように若干持ち上げることにより(同矢印C参照)、カバー部材30の下縁側の係止状態を解除し、次いで、上縁側の係止状態を解除することにより、当該カバー部材30を牽引フック用開口部10から、簡単に取り外すことができる。
【0032】
以上、説明したように、本実施形態によれば、カバー部材30は、凹状嵌合部34が牽引フック用開口部10周縁の突状係止部18に裏側から表側に向かって嵌合し係止されることにより前記開口部10の周縁に取り付けられ、その取付状態で付勢機構(切り起こし部14,16)により裏側から表側に向かって付勢されるので、確実かつ安定してカバー部材30を牽引フック用開口部10の周縁に保持させることができる。
【0033】
また、カバー部材30の凹状嵌合部34を前記突状係止部18に嵌合して係止させる際には、カバー部材30を、付勢機構(切り起こし部14,16)の付勢力に抗して、表側から裏側に向かって開口部10内に押し込めばよいので、従来の係止爪構造を用いた場合に比して小さい力でカバー部材30を開口部10に組み付けることができ、組付作業性も向上する。すなわち、カバー部材30の組付作業性の向上と、カバー部材30に対する開口部周縁の保持力の確保とを、両立して達成することができる。
【0034】
図10は、上述の実施形態の一変形例を示している。この変形例は、取り外し工具Tを使用する際に、牽引フック用開口部10の下縁側の突状係止部やカバー部材30の下縁側が傷付けられることを抑制するものである。
尚、この変形例の説明において、前述の図1から図9で示した実施形態における場合と同様の構成を備え同様の作用をなすものについては、同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0035】
この変形例では、牽引フック用開口部10の下縁側に設けられる突状係止部40の正面視で左右方向の略中央に、所定幅の切欠部41が形成されており、この切欠部41を挟んで左右両側に一対の係止片部42が設けられている。また、前記切欠部41の表側(前側)に対応する周壁10w上には、所定角度の傾斜ガイド面45gを有する台座45が一体的に形成されている。
【0036】
前記切欠部41の幅は、取り外し工具Tの幅よりも大きく設定され、この切欠部41を通して取り外し工具Tの先端Tsをスムースに、カバー部材30の表側から裏側へ挿入できるようになっている。また、前記傾斜ガイド面45gの傾斜角度は、取り外し工具Tを傾斜ガイド面45gに沿って挿入することにより、工具Tが凹状嵌合部34のガイド部34gの下面にスムースに差し込まれ、好ましくは、凹状嵌合部34の奥壁部34bを裏側に向かって突き出すことができるように設定されている。
【0037】
すなわち、カバー部材30を取り外す際には、取り外し工具Tの先端Tsが凹状嵌合部34の奥壁部34bを裏側に向かって押し出した後、台座45の傾斜ガイド面45gの最高位置を支点にして、工具先端Tsが上方へ持ち上がるように取り外し工具Tを回動させることにより、係止片部42に対する凹状嵌合部34の嵌合状態をスムースに解除することができる。このとき、取り外し工具Tは、台座45上でのみ操作され、周壁部10wに接触することがないので、外部から視認し易い周壁部10wの入口側部分を傷付けることはなく、外観性に悪影響を及ぼすことが防止される。
【0038】
このように、本変形例によれば、牽引フック用開口部10の下縁側に設けられる突状係止部40の正面視で左右方向の略中央に、取り外し工具Tを挿入するための切欠部41が形成されているので、取り外し工具Tを使用する際に、当該工具Tをスムースにカバー部材30の表側から裏側へ挿入することができ、かかる工具Tの挿入によって、牽引フック用開口部10の下縁側の突状係止部40やカバー部材30の下縁側が傷付けられることを、効果的に抑制することができる。
【0039】
尚、以上の実施形態および変形例は何れも、自動車のバンパフェイスに設けた牽引フック用開口部を開閉可能に覆うカバー部材の取付構造に適用した場合についてのものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、開口部を開閉可能に覆うカバー部材を開口部周縁に係止させて取り付ける、他の種々のカバー部材の取付構造として、有効に適用できるものである。
【0040】
このように、本発明は、上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更や設計上の改良等を行い得るものであることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、開口部を開閉可能に覆うカバー部材を開口部周縁に係止させて取り付けるカバー部材の取付構造に関し、例えば、自動車のバンパフェイスに設けた牽引フック用開口部を開閉可能に覆うカバー部材の取付構造として、有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
3 バンパフェイス
10 牽引フック用開口部
12 フランジ部
14 上側切り起こし部
16 下側切り起こし部
18,40 突状係止部
30 カバー部材
30f カバー部材表面
30r カバー部材裏面
34 凹状嵌合部
41 切欠部
42 係止片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉可能に覆うカバー部材を開口部周縁に係止させて取り付けるカバー部材の取付構造であって、
カバー部材取付状態で当該カバー部材を裏側から表側に向かって付勢する付勢機構が、カバー部材と前記開口部周縁との間に設けられ、
前記カバー部材の一側縁に、前記開口部周縁の係止部に裏側から表側に向かって嵌合して係止される、表側が開口した凹状被係止部が設けられており、
前記カバー部材は、前記凹状被係止部が前記開口部周縁の係止部に裏側から表側に向かって嵌合して係止された取付状態で、前記付勢機構により裏側から表側に向かって付勢されている、
ことを特徴とするカバー部材の取付構造。
【請求項2】
前記開口部周縁に、開口部内へ所定幅だけ張り出し前記カバー部材の裏面側を受け合うフランジ部が形成され、該フランジ部に前記付勢機構が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のカバー部材の取付構造。
【請求項3】
前記開口部周縁の係止部には、当該係止部への前記凹状被係止部の嵌合状態を解除するための工具を挿入する切欠部が形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−175019(P2010−175019A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20103(P2009−20103)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】