説明

カバー部材

【課題】比較的大型となる電子機器の筐体に適用する場合にも、成形コストの低減を図ること。
【解決手段】電子部品Eを搭載したベース部材10を覆うことにより、ベース部材10との間に電子部品Eを収容するための筐体1を構成するカバー部材20であって、予め基準壁部21に開口21Aaを設けた状態で射出成形した枠部21Aと、基準壁部21の開口21Aaを覆う態様で枠部21Aに取り付けた蓋部21Bとを備えてカバー部材20を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搭載したベース部材との間に電子部品を収容するための筐体を構成するカバー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータ等の電子機器の筐体は、電子部品を搭載したベース部材と、ベース部材を覆うカバー部材とを備えて構成したものが一般的である。カバー部材は、例えば一端面が開口した箱状に構成してあり、ベース部材との間に電子部品を収容するための収容空間を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。ベース部材としては、電子部品の放熱性を考慮して金属製のものが適用され、一方、カバー部材としては、軽量化や成形性の点で合成樹脂を材料として射出成形されたものが多く適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−284694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、射出成形を行う場合には、型締め力が必要となる。型締め力は、合成樹脂を射出する際に金型を閉じておくために必要となるもので、成形品の投影面積に応じた値となる。例えば、射出圧力500kg/cmで安全率を1.3とすると、縦250mm×横300mmの投影面積となるカバー部材を成形する場合には、約683トンの型締め力が必要となり、縦700mm×横300mmの投影面積となるカバー部材を成形する場合には、1365トンの型締め力が必要となる。このため、比較的大型となる電子機器の筐体に適用するカバー部材を成形するには、大きな型締め力に対応した大型の設備が必要となり、成形コストの点できわめて不利となる。特に、型締め力が1000トンを超える場合には、設備自体が特殊なものとなり、成形コストの問題が一層顕著となる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、比較的大型となる電子機器の筐体に適用する場合にも、成形コストの低減を図ることのできるカバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るカバー部材は、電子部品を搭載したベース部材を覆うことにより、前記ベース部材との間に前記電子部品を収容するための筐体を構成するカバー部材であって、予め面状部分に開口を設けた状態で射出成形した枠部と、前記面状部分の開口を覆う態様で前記枠部に取り付けた蓋部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上述したカバー部材において、前記枠部は、開口の内壁面となる位置にゲートを設けて射出成形したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述したカバー部材において、前記枠部の両側縁部に連続する一対の側壁部を有するとともに、前記枠部の一端縁に連続する端壁部を有し、かつこれら一対の側壁部及び端壁部を前記枠部と一体に成形し、前記ベース部材を覆った場合に互いの間に六面体状の筐体を構成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述したカバー部材において、前記蓋部は、金属製の薄板によって構成したものであり、前記面状部分との間の全周にシール部材を介在させた状態で前記枠部に対して着脱可能に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、予め面状部分に開口を設けた状態で射出成形した枠部と、この開口を覆う蓋部とでカバー部材を構成しているため、開口を設けた分だけ射出成形する際の型締め力を低減することができる。これにより、比較的大型となる電子機器の筐体に適用するカバー部材を成形する場合にも、大型の設備が不要となり、成形コストの低減を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるカバー部材を適用した電子機器の分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した電子機器の外観斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した電子機器のカバー部材を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1に示した電子機器のカバー部材を示す平面図である。
【図5】図5は、図1に示した電子機器のカバー部材を射出成形する際に適用する金型を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るカバー部材の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の実施の形態であるカバー部材を適用した電子機器を示したものである。ここで例示する電子機器は、直流を交流に変換するインバータであり、ベース部材10とカバー部材20とを備えて筐体1を構成している。
【0014】
ベース部材10は、内表面に電子部品Eを搭載した矩形の板状を成す部品搭載板部11と、部品搭載板部11の一端部に設けたコンジットフレーム部12と、部品搭載板部11の外表面に設けた複数の冷却フィン13とを備えている。部品搭載板部11及び冷却フィン13は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金等の比較的熱伝導率の大きな金属によって一体に成形してある。コンジットフレーム部12は、コンジットコネクタ(図示せず)を挿通させるための装着孔12aを有した板状部分であり、部品搭載板部11の一端部内表面から冷却フィン13とは反対側に向けて突出するように設けてある。図からも明らかなように、コンジットフレーム部12は、部品搭載板部11から離隔するに従って幅が漸次小さくなる台形状に形成してある。
【0015】
カバー部材20は、図1〜図3に示すように、ベース部材10との間に電子部品Eを収容するための収容空間を確保した状態でベース部材10の内表面を覆うもので、基準壁部(面状部分)21、端壁部22、一対の側壁部23,23を有している。基準壁部21は、ベース部材10の部品搭載板部11に対向して配置される部分であり、部品搭載板部11よりもわずかに幅の小さい矩形状に形成してある。端壁部22は、ベース部材10のコンジットフレーム部12に対向して配置される台形状部分であり、基準壁部21の一端縁から基準壁部21の内表面側に向けて屈曲して延在している。一対の側壁部23,23は、基準壁部21の両側縁からそれぞれ基準壁部21の内表面側に向けて屈曲して延在した部分である。これら一対の側壁部23,23は、基準壁部21から離隔するに従って相互間隔が漸次増加するように延在しており、延在端部の相互間がベース部材10の部品搭載板部11とほぼ同じ幅となるように構成してある。側壁部23,23の延在端部には、その中央部に係止爪23a,23aが設けてある。係止爪23a,23aは、ベース部材10の部品搭載板部11に係合することによって側壁部23,23がベース部材10から離隔する方向に移動するのを規制するものである。
【0016】
カバー部材20の基準壁部21、端壁部22及び一対の側壁部23,23は、合成樹脂を材料として射出成形により一体に成形してある。但し、これらのすべてを射出成形する場合には、投影面積が大きなものとなるため、型締め力もきわめて大きなものとなる。具体的には、図4に示すように、縦d1=700mm×横w1=300mmの投影面積となるカバー部材20を射出成形するには、射出圧力を500kg/cm、安全率を1.3とすると、1000トンを超える型締め力が必要となり、特殊な設備が必要となる。
【0017】
そこで、本実施の形態では、図5に示すように、上型UKと下型DKとの開閉方向に対して直角方向に延在し、投影面積の大部分を占める基準壁部21については、中央に開口21Aaを有した枠部21Aのみを射出成形によって成形し、その後、図4に示すように、中央の開口21Aaを金属薄板製の蓋部21Bによって覆うようにしている。基準壁部21に設ける開口21Aaの大きさは、できるだけ大きいことが好ましいが、本実施の形態では、図4に示すように、縦d2=640mm×横w2=200mmの開口21Aaを形成し、枠部21Aと蓋部21Bとの間にガスケット21Cを配置するための領域を確保するようにしている。基準壁部21に予め開口21Aaを形成して射出成形した場合には、型締め力が1000トンを大きく下回り、533トンとなる。これは、開口21Aaを設けていない場合の型締め力1365トンに対して約40%で済むことになり、一般的な設備を有した工場においても容易に成形することが可能となる。
【0018】
射出成形する際に合成樹脂の注入口となるゲートGは、枠部21Aに形成した開口21Aaの内壁面に対応する部位に設けている。具体的には、図3の斜線部で示すように、各内壁面の中央部にそれぞれ矩形状のサイドゲートGが開口するように構成している。サイドゲートGの寸法としては、例えば枠部21Aの板厚t=2mmであれば、幅WG=5mmとなる矩形状のサイドゲートGを設けるようにしている。サイドゲートGを設ける枠部21Aの内壁面は、射出成形後に蓋部21Bによって覆われる部分である。従って、サイドゲートGの寸法を大きく確保した場合にも、これがそのままカバー部材20の外観品質に影響を与えることはない。
【0019】
一方、蓋部21Bは、金属薄板に適宜加工を施すことによって容易に成形することが可能である。この蓋部21Bは、枠部21Aとの間の全周にガスケット21Cを介在させた状態で、図1に示すように、四隅に設けたネジ挿通孔21Baを介して枠部21AにネジBを螺合させることにより、開口21Aaを閉塞する態様で枠部21Aに着脱可能に取り付けてある。
【0020】
上記のように構成したカバー部材20は、端壁部22の延在端部及び一対の側壁部23,23の延在端部をそれぞれ部品搭載板部11の内表面に接合させ、かつ基準壁部21の他端縁部及び一対の側壁部23,23の他端縁部をそれぞれコンジットフレーム部12の外縁面に接合させた状態でベース部材10を覆うことにより、部品搭載板部11の内表面との間に電子部品Eの収容空間を確保したインバータの筐体1を構成することになる。図には明示していないが、カバー部材20とベース部材10との接合面には、それぞれガスケットを介在させることによって水密性を確保することが好ましい。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態のカバー部材20では、予め基準壁部21に開口21Aaを設けた枠部21Aを射出成形した後、枠部21Aの開口21Aaを蓋部21Bによって閉塞するようにしているため、開口21Aaを設けた分だけ射出成形する際の型締め力を低減することができる。これにより、比較的大型となるインバータの筐体1に適用するカバー部材20を成形する場合にも、大型の設備が不要となり、成形コストの低減を図ることができるようになる。
【0022】
しかも、開口21Aaの内壁面となる位置にゲートGを設けるようにしているため、外観品質に影響を与えることなくゲートGの開口面積を大きく確保することができる。これにより、射出圧力を小さく設定した場合にも、金型のキャビティに対して合成樹脂を十分に注入することが可能となり、型締め力を一層低減することができるようになる。
【0023】
尚、上述した実施の形態で記載した具体的な数値は、あくまでも例示を目的とするものであり、本願発明を何ら限定するものではない。
【0024】
また、上述した実施の形態では、面状部分である基準壁部21に端壁部22及び一対の側壁部23,23が一体成形されたカバー部材20を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、単に平板状を成すカバー部材にも適用した場合にも、型締め力を低減することが可能である。
【0025】
さらに、上述した実施の形態では、インバータの筐体1を構成するカバー部材20を例示しているが、インバータ以外の電子機器の筐体に適用されるカバー部材であってももちろん構わない。
【0026】
またさらに、矩形状を成す開口21Aaの各内壁面にそれぞれ一つずつゲートGを設けるようにしているが、開口の内壁面であれば、ゲートの位置や数はこれらに限定されない。
【符号の説明】
【0027】
10 ベース部材
11 部品搭載板部
20 カバー部材
21 基準壁部
21A 枠部
21Aa 開口
21B 蓋部
22 端壁部
23 側壁部
E 電子部品
G ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を搭載したベース部材を覆うことにより、前記ベース部材との間に前記電子部品を収容するための筐体を構成するカバー部材であって、
予め面状部分に開口を設けた状態で射出成形した枠部と、
前記面状部分の開口を覆う態様で前記枠部に取り付けた蓋部と
を備えたことを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記枠部は、開口の内壁面となる位置にゲートを設けて射出成形したことを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記枠部の両側縁部に連続する一対の側壁部を有するとともに、前記枠部の一端縁に連続する端壁部を有し、かつこれら一対の側壁部及び端壁部を前記枠部と一体に成形し、前記ベース部材を覆った場合に互いの間に六面体状の筐体を構成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記蓋部は、金属製の薄板によって構成したものであり、前記面状部分との間の全周にシール部材を介在させた状態で前記枠部に対して着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載のカバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−33825(P2012−33825A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173855(P2010−173855)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】