説明

カリーナ改良用カテーテル

本発明は、分岐血管に設置されたステントの突起部(カリーナ)を除去することができるカリーナ改良用カテーテルに関し、より詳細には、主血管及び分岐血管に各々設置されたステントの位置調整が必要な場合、簡便に主血管及び分岐血管に挿入され、分岐血管内のステントの突起部を除去することができるカテーテルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐血管に設置されたステントの突起部を除去することができるカリーナ改良用カテーテルに関し、より詳細には、(主血管及び分岐血管に各々設置されたステントの位置調整が必要な場合、)簡便に主血管及び分岐血管に挿入され、分岐血管内のステントの突起部を除去することができるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、狭窄または閉塞によって直径が細くなった血管を拡張するための治療である経皮的冠動脈形成術(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)には、ステント(stent)とバルーン(balloon)のカテーテルが多く使用されている。
【0003】
図1に示したように、主血管10と該主血管10から分岐した分岐血管11との間の境界部に狭窄が発生する場合には、ステント210と220が主血管10及び分岐血管11に、各々設置される。
【0004】
しかし、ステント210と220が挿入された患者の多くでは、ステント220が分岐部位に正確に位置しないか、または分岐血管11に挿入されたステント220の一部領域が主血管10に挿入されたステント210内に位置する。
【0005】
この際、分岐血管11に挿入されたステント220の突起部分(主血管10に挿入されたステント210内に位置する部分)を「カリーナ」と呼ぶ(図1のA部分を参照されたい)。
【0006】
すなわち、分岐点(bifurcation)に新規狭窄病変(de novo lesion)が発生する場合には、現在の薬物コーティングされた金属網形態のステントの施術だけで病変部位の効果的な治療を期待することは困難であり、外科手術後にも、分岐部位にステント内再狭窄(ISR:In-Stent Restenosis)が発生し、再治療が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、主血管及び分岐血管に各々挿入されたステントの位置を再調整する必要がある場合に、分岐血管に挿入されたステントの突起部を除去すると同時に、迅速に両ステントの位置を同時に調整することができるカリーナ改良用カテーテルを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、支持部材をカテーテルの中心軸に挿入した、その構造に起因する高い耐久力を有するカリーナ改良用カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によるカリーナ改良用カテーテルは、本体と、本体にそれぞれ固定されている(内部にガイドワイヤを通過させることができる)第1ガイド部及び第2ガイド部とを含む。
【0010】
ここで、第1ガイド部及び第2ガイド部のそれぞれは、本体に固定された固定部と、該固定部から延長した分岐部よりなり、本体の先端部に曲がり、前記本体の先端部は分岐血管に挿入されたステントの突起部分を加圧できることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によるカリーナ改良用カテーテルは、分岐血管の新規病変にステント留置(暫定的T−ステント、クラッシュステント、V−ステント、Y−ステント)を行った場合に生じるステント突起部分を、カテーテルの本体の先端部によって加圧し、突起部分を血管側に密着させることによって、血流を改善する。
【0012】
また、本発明によるカリーナ改良用カテーテルは、カテーテルを誘導するために、カテーテルの両側にガイド部を設け、ガイドワイヤの挿入時にカテーテル本体の遮断板によって2つのワイヤの間に互いに干渉が発生しないようになるので、ガイドワイヤの挿入が容易で且つ安定した外科手術が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、従来技術に従って、分岐血管にステントを設置する場合に形成されるカリーナ(隆起部)を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施態様によるカリーナ改良用カテーテルを示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施態様によるカリーナ改良用カテーテルを示す断面図であって、カテーテルの各ガイド部を通じてガイドワイヤが挿入された状態を示す。
【図4】図4は、本発明によるカテーテルを用いて分岐血管に生じたカリーナを加圧する方法を示す図である。
【図5】図5は、本発明によるカテーテルを用いて分岐血管に生じたカリーナを加圧する方法を示す図である。
【図6】図6は、本発明によるカテーテルを用いて分岐血管に生じたカリーナを加圧する方法を示す図である。
【図7】図7は、本発明によるカリーナ改良用カテーテルを用いてカリーナ部分を加圧することによって、突起部がなくなり、改良された構造を有する分岐血管内のステントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。添付の図面は、本発明の例示的な形態を図示したものであって、これは、本発明をさらに詳しく説明するために提供されるものに過ぎず、これによって本発明の技術的な範囲が限定されるものではない。
【0015】
図2は、本発明の一実施態様によるカリーナ改良用カテーテルの断面図であり、図3は、本発明の一実施態様によるカリーナ改良用カテーテル(以下、略して「カテーテル」という)を示す断面図であって、カテーテルの各ガイド部を通じてガイドワイヤが挿入された状態を示す。
【0016】
本発明の一実施態様によるカリーナ改良用カテーテルは、本体29と、該本体29の外周面にそれぞれ固定されている、(その内部をガイドワイヤ30が各々通過することができる)第1及び第2ガイド部24及び25を含む。
【0017】
ここで、第1及び第2ガイド部24、25は、本体29の外周面に固定される固定部24−1及び25−1と、本体の先端部60から外側に延長した分岐部24−2及び25−2とでそれぞれ構成されている。
【0018】
2つの分岐部24−2及び25−2は、本体の先端部で鋭角に傾斜していることが好ましく、各第1及び第2ガイド部24及び25の固定部24−1及び25−1は、本体の外周面に接合されることができ、ポリアミドで形成されたチューブであってもよく、チューブ内部にステンレスメッシュが挿入されてもよい。
【0019】
固定部24−1及び25−1は、所定の剛性を維持しなければならなくて、そして硬質の材料で形成されている。ステンレスメッシュのような補強材をそれに挿入することができる。
【0020】
分岐部24−2及び25−2は、ポリアミドで形成されたチューブであってもよく、軟質の材料で形成されることが好ましい。2つのチューブは異なった特性(固定部と分岐部)を有していて、溶接装置を使用して熱を加えて接合させることができる。
【0021】
固定部24−1及び25−1は、血管内にカテーテルの挿入時に、所定の支持力を有するように硬質材料よりなることが好ましく、本体29は、カテーテルの挿入時に、本体29の長さ方向に高い支持力を確保するために、本体29の内部に長さ方向に支持部材26を備えることが好ましい。
【0022】
支持部材26は、コアワイヤと命名され、チタニウム(Ti)43.9%とニッケル(Ni)56.1%よりなるニチノール(nitinol)で作ることができる。このような支持部材26として、0.014インチ(0.35mm)のガイドワイヤを使用することが好ましい。
【0023】
図2及び図3に示されるように、第1及び第2ガイド部24及び25の固定部24−1及び25−1の長さは、互いに異なるように形成することができる(図3のL部分を参照されたい)。互いに異なる長さを有する各固定部24−1及び25−1によって外科手術を実施すると、主血管に位置するワイヤと分岐血管に位置するワイヤとを容易に区分することができる。例えば、第1及び第2ガイド部24及び25の固定部24−1及び25−1の長さの差異は、これに限定されないが、7cm〜12cmの範囲であり、好ましくは、9cm〜11cmの範囲であり、さらに好ましくは、約10cmである。
【0024】
このような長さの差異によってカテーテルは、第1及び第2ガイド部の内部に位置することができるガイドワイヤ30に対して、分岐部24−2及び25−2の終端まで高い支持力を確保することができる。
【0025】
第1及び第2ガイド部24及び25の分岐部24−2及び25−2は、主血管及び分岐血管の連結角度によって柔軟に挿入可能になるように軟質の材料で形成されることが好ましく、Y字状の管形状で形成されることが好ましい。
【0026】
本体29の先端部60で鋭角を成す第1ガイド部24の分岐部24−2及び第2ガイド部25の分岐部25−2は、その長さが2mm〜5mmであることが好ましい。各分岐部24−2及び25−2の長さが2mm未満の場合には、分岐部としての機能を行うことが難しく、長さが5mmを超える時には、分岐部の長さがあまり長くなって、血管の損傷が生じうる。
【0027】
固定部24−1及び25−1並びに分岐部24−2及び25−2で構成された第1及び第2ガイド部24及び25は、両終端21及び23が開放された中空のチューブ形状部材であって、ガイドワイヤ30は、第1及び第2ガイド部24及び25の内部を通じて通過することができる。前記開放された両終端21及び23は、ガイドワイヤ30が最初挿入される分岐部24−2及び25−2の終端21と、ガイドワイヤ30がガイド部24及び25を通過して出る固定部24−1及び25−1の終端23から成っている。
【0028】
第1及び第2ガイド部24及び25はそれぞれ、ガイドワイヤ30が第1及び第2ガイド部24及び25に挿入されて通過が可能となるように、それぞれのガイドワイヤ30の直径より大きい直径を有していることが好ましい。例えば、0.014インチの直径を有するガイドワイヤ30を使用する場合には、第1及び第2ガイド部24及び25のそれぞれの直径は0.015インチ〜0.016インチでよい。
【0029】
本体29の先端部60に、表示部22を配置することができ、このような表示部22は、血管内に挿入されたカテーテルの位置の確認を容易にする金属または樹脂類のラジオマーカーであってよい。(このようなラジオマーカーは、放射線を不透過させる材料である鉛または金で形成され、施術時にカテーテルの位置を容易に把握することができるようにし、)カテーテルの位置の確認は、分岐血管内のステント突起部を加圧するにあたって非常に重要である。
【0030】
ラジオマーカーは、マーカーバンドとも呼ばれ、例えば、白金90%とイリジウム10%の組み合わせで製造することができる。
【0031】
分岐血管内のステント突起部が加圧される時に、カテーテル本体29が湾曲することを防止するために、表示部22としてのラジオマーカーは、本体29の支持部材26の端部に位置し、第1及び第2ガイド部24及び25の固定部24−1及び25−1と分岐部24−2及び25−2との境界点に接合されていて、表示部22を、加圧手段としても使用することができ、蛍光透視法で患者の施術部位を照射する場合、オペレーターはラジオマーカーを通じてカテーテルの位置を正確に把握することができる。
【0032】
本体29は、軟質の材料で形成されたハウジング、該ハウジング内に長さ方向に配置された支持部材26、及び前記支持部材26とハウジングとの間に各々配置され、前記第1及び第2ガイド部24及び25の固定部24−1、25−1にそれぞれに対応する第1及び第2遮断板28とを含むことができる。
【0033】
第1及び第2ガイド部24及び25の固定部24−1及び25−1は、上記のように構成されたカテーテル本体29に接合されて、本体29は、支持部及び保持部の役目を行い、保持部の役目を行う部分をハブ27とも呼び、前記ハブ27は、ポリカーボネートで作ることができる。
【0034】
ハウジングの軟質材料は、ポリアミドであってよい。支持部材26は、カテーテルを用いて施術時に、血管内に挿入または血管から除去する過程で所定の剛性を維持しなければならないので、硬質の材料で形成されることが好ましく、例えば、支持部材26は、所定の直径を有するワイヤであってもよい。
【0035】
支持部材26とハウジングとの間に、第1及び第2ガイド部24及び25の固定部24−1及び25−1にそれぞれ対応する第1及び第2遮断板28を配置することができる。従って、ガイドワイヤ30は、加圧する力によって湾曲するが、第1及び第2遮断板28によって遮断され、両側のガイドワイヤの間に互いに干渉を受けずに挿入可能になり、適正な支持力を受けて、分岐血管に挿入されたステントに形成する突起部を加圧することができる。
【0036】
現在の冠状動脈形成術において、未だ解決されていない分岐部の新規病変に対する治療効果を高めるために、次のような施術を行うことができる。
【0037】
ステントカテーテルを用いて分岐部の新規病変にそれぞれのステントを挿入した後、直径が0.014インチの2つのガイドワイヤを主血管及び分岐血管に正位置させる。その後、正位置されたガイドワイヤは、カリーナ改良用カテーテルを所望の施術部位まで誘導する機能を果たす。
【0038】
施術時に、本発明によるカテーテルを使用して、2つのガイドワイヤを第1及び第2ガイド部24及び25の分岐部24−2及び25−2の終端21に挿入し、第1及び第2ガイド部24及び25の固定部24−1及び25−2の終端23に出るようにする。各ガイドワイヤ30は、加圧する力によって湾曲するが、中間の第1及び第2遮断板28によって遮断され、両側のガイドワイヤの間に互いに干渉を受けずに挿入され、適正な支持力を受けて、分岐血管に挿入されたステントに形成した突起部を加圧する。
【0039】
図4〜6は、本発明によるカテーテルを用いて分岐血管に生じたカリーナを加圧する方法を説明する図である。
【0040】
図4を参照すると、本発明によるカテーテルを使用して主血管10及び分岐血管11に設置されたステント210、220の位置を調整しようとする場合、2つのガイドワイヤ30を各ガイド部の分岐部の終端21に各々挿入した後、固定部の終端23から取り出す。
【0041】
その後、カテーテルを主血管10に挿入して分岐血管11が分岐する位置に固定させ、ガイドワイヤ30を調節することによって、第1ガイド部の分岐部が主血管10側に挿入されるように押し込み、第2ガイド部の分岐部は、分岐血管側11に挿入されるように押し込む。
【0042】
その後、オペレーターは、カテーテルの本体の先端部60を用いて突起部を加圧して、突起部を除去する(図5を参照されたい)。この際、オペレーターは、本体の先端部60に存在する表示部22としてのラジオマーカーを通じて正確なカリーナ部位を加圧することができる。
【0043】
加圧は数回にわたって行われることができ、加圧によって突起部100は、徐々に血管壁側に折り曲げられる(図6を参照されたい)。したがって、本発明によるカテーテルは、突起部100に起因する血流の遅滞によるステント内再狭窄を防止することができ、突起部100を除去することによって血流を改善することができる。
【0044】
図7は、本発明によるカリーナ改良用カテーテルを用いてカリーナ部分を加圧することによって、突起部がなくなり、改良された構造を有する分岐血管内のステントを示す図である。
【0045】
前述のような施術によって、分岐血管11内にステント220を設置した時に生ずる突起部を除去(C部分)することができる。
【符号の説明】
【0046】
21、23 終端
22 表示部
24 第1ガイド部
25 第2ガイド部
24−1、25−1 固定部
24−2、25−2 分岐部
26 支持部材
27 ハブ
28 第1及び第2遮断板
29 本体
30 ガイドワイヤ
60 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体;及び
本体にそれぞれ固定されている第1ガイド部及び第2ガイド部を含有してなり、
第1ガイド部及び第2ガイド部はそれぞれ、本体に固定された固定部、及び固定部から延長して本体の先端部で湾曲している分岐部を含有してなり、先端部は分岐血管内に挿入されたステントの突起部分を加圧することができる、カリーナ改良用カテーテル。
【請求項2】
第1ガイド部及び第2ガイド部のそれぞれの固定部が、本体の外周面に接合されている、請求項1に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項3】
第1ガイド部及び第2ガイド部の固定部が、互いに異なる長さを有している、請求項1に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項4】
第1ガイド部の固定部の長さと第2ガイド部の固定部の長さの差異が、7cm〜12cmの範囲である、請求項3に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項5】
第1ガイド部及び第2ガイド部のそれぞれの直径が、0.014インチ〜0.015インチの範囲である、請求項1に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項6】
第1ガイド部及び第2ガイド部のそれぞれの固定部が、ポリアミドで形成されたチューブであり、そしてその内部にステンレスメッシュが挿入されている、請求項1に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項7】
第1ガイド部及び第2ガイド部のそれぞれの分岐部が、ポリアミドで形成されたチューブである、請求項1に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項8】
第1ガイド部の分岐部及び第2ガイド部の分岐部が、本体の先端部に対して鋭角に傾斜している、請求項1に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項9】
第1ガイド部及び第2ガイド部のそれぞれの分岐部が、2mm〜5mmの長さを有している、請求項8に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項10】
前記本体が、軟質の材料で形成されたハウジング;及び前記ハウジング内に長さ方向に配置された支持部材を含んでいる、請求項1に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項11】
本体の支持部材とハウジングとの間に配置されている第1遮断板及び第2遮断板をさらに含み、第1遮断板及び第2遮断板がそれぞれ第1ガイド部及び第2ガイド部に対応している、請求項10に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項12】
支持部材の先端部に固定された表示部をさらに含んでいる、請求項10に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項13】
表示部が、放射線を透過しない金属または樹脂で形成されている、請求項12に記載のカリーナ改良用カテーテル。
【請求項14】
金属が鉛または金である、請求項13に記載のカリーナ改良用カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−515183(P2011−515183A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501718(P2011−501718)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001535
【国際公開番号】WO2009/120021
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510090612)インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション, ヨンセイ ユニバーシティ (2)
【出願人】(510256643)
【Fターム(参考)】