説明

カーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造及びその組み付け方法

【課題】カーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装構造において、ピラートリムの上端近傍部に連結される付設部材を設け、この付設部材を簡単に組み付け可能にすること、ピラートリムの上端部とルーフトリムとの間に隙間が生じにくくすること。
【解決手段】ルーフトリムとピラートリムの境界を含むルーフトリム下端の隙間からカーテン部材を展開可能なカーテンエアバッグ4aを含むエアバッグモジュール4を備え、ピラートリム12には、ルーフトリム7及びピラートリム12と車体との間に配設され且つピラートリム12の上端近傍部に連結される付設部材20が設けられ、この付設部材20は、ピラートリム12の車体への組み付け前に車体に組み付けできるように、ピラートリム12とは別体に構成され、付設部材20はピラートリム12の上端近傍におけるルーフトリム7の車体側への移動を規制する規制部22を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造及びその組付け方法に関し、特にピラートリムにそれと別体の付設部材を設け、この付設部材を介してルーフトリム下端部の移動や位置ズレを規制することを特徴とするものである。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車等の車両においては、衝突や横転時等に乗員を保護する為のエアバッグ装置が装備される。エアバッグ装置の中には、車両の側突や横転時に側部ウインドの内面にカーテン状に展開するカーテンエアバッグ装置が実用に供されつつある。
このカーテンエアバッグ装置のカーテンエアバッグは、ルーフトリムと車体間の空間に配設され、展開時にはピラートリムとルーフトリムの境界を含むルーフトリムの下端部と車体間の隙間から展開する。
【0003】
上記のようにピラートリムとルーフトリムの境界を押し広げてカーテンエアバッグが展開する際に、カーテンエアバッグがピラートリムの上端に引っかかり、エアバッグの展開性が悪くなるという問題があり、その対策技術が種々提案されている。
【0004】
特許文献1のエアバッグ配設構造においては、ルーフサイドレールの内側に収納状態のカーテンエアバッグ(カーテンエアバッグモジュール)が配設され、このカーテンエアバッグモジュールはルーフサイドレールのインナパネルに取り付けられ、そのインナパネルに、カーテンエアバッグの展開時にエアバッグを案内するジャンプ台が形成されている。他方、別のジャンプ台として、ピラートリムの上端部から上方へ一体的に突出するガイド部が設けられ、このガイド部にはカーテンエアバッグの展開時にエアバッグを案内する傾斜状のガイド壁面が形成され、また、このガイド部の下端付近においてピラートリムの上端近傍部には凹部(係合溝)が形成され、この凹部(係合溝)にルーフトリム下端縁を収納して係合させる構造が開示されている。
【0005】
特許文献2のピラーガーニッシュ(ピラートリム)においては、車体インナパネルとルーフトリムとの間にカーテンエアバッグ用のエアバッグモジュールが配設され、ピラーガーニッシュにはその上端近傍から上方へ延出する案内部が一体形成され、この案内部の上端にエアバッグの展開時にエアバッグを案内する傾斜状の案内面が形成されている。また、案内部とピラーガーニッシュ上端部との間に前後方向に延びるストレートの溝状の凹部が形成され、この凹部にルーフトリムの下端部が挿入係合されている。
【0006】
特許文献3の乗員拘束装置及びカーテンエアバッグ取り付け構造においては、車体インナパネルとルーフトリムとの間にカーテンエアバッグ用のエアバッグモジュールが配設され、ピラートリムにはその上端近傍から上方へ延出する案内部材が一体形成され、この案内部材の上端にエアバッグ展開時にエアバッグを案内する傾斜状のガイド壁が形成され、ピラートリムの上端部と案内部材とで平面視ほぼコ字状の係合溝が形成され、この係合溝にルーフトリムの下端縁部が係合される。他方、案内部材に係合溝内へ突出する複数の縦リブを形成し、これら縦リブによりルーフトリムの下端縁部を押えることでルーフトリムの抜け止めを図る構造も開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−91490号公報
【特許文献2】特開2002−59802号公報
【特許文献3】特開2005−313674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ルーフトリムは、ピラートリムによりも軟質な素材で形成されており、カーテンエアバッグは、このような軟質なルーフトリムとピラートリムとの境界を含むルーフトリム端部から展開される。しかし、このようにルーフトリムは軟質であるため、例えば、不測にも乗員がルーフトリムのカーテンエアバッグが展開される部分を押圧するなどすると、ルーフトリムの一部が車体側へ移動するように変形してしまい、見映えを悪化させたり、カーテンエアバッグが展開する場合にカーテンエアバッグの展開安定性を阻害することが懸念される。これに対し、ルーフトリムのピラートリムの境界近傍において、ルーフトリムを車体側から支持するように、ルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部を設けることで、このような不具合を防止できる。また、その場合、例えば、、特許文献1,2,3に記載したようなジャンプ台やガイド部等、ピラートリム上端部に設けた部材がある場合には、このような所定部材を流用して所定部材に規制部を設けてもよい。
【0009】
このように、ピラートリム上端部の所定部材からルーフトリムの車体側、つまり裏面に向けて規制部を延設させると、規制部を含むピラートリム上端部の所定部材が大きくなり、ピラートリムの組み付け性が悪化する虞がある。つまり、ピラートリムの車体への組み付けは、通常、ルーフトリムの車体への組み付け後に行われるが、この場合、ピラートリム上端部を、車室側からルーフトリムの端部と車体との間を通って車体とルーフトリムやピラートリムとの間の空間に設置しなければならず、組み付け性が悪化する。
【0010】
本発明の目的は、カーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装構造において、ピラートリムの上端近傍部に連結される付設部材を設けることで、ピラートリムの上端部近傍のルーフトリムの変形が生じにくくすると共に、この付設部材を簡単に組み付け可能にすることなどである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造は、車両側部のウインドを覆うように、ピラートリムとピラートリムよりも軟質のルーフトリムとの境界を含むルーフトリム端部からカーテン部材を展開可能なカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造において、前記ピラートリムには、ルーフトリム及びピラートリムと車体との間に配設され且つピラートリムの上端近傍部に連結される付設部材が設けられ、前記付設部材は、ピラートリムの上端近傍におけるルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部を有すると共に、この付設部材は、ピラートリムの車体への組み付け前に車体に組み付けできるように、ピラートリムとは別体に構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
前記ピラートリムの上端近傍部に連結される付設部材は、ルーフトリム及びピラートリムと車体との間に配設され、この付設部材は、ピラートリムとは別体に構成されているため、ピラートリムの車体への組み付け前に車体に組み付けられる。前記付設部材に、ピラートリムの上端近傍におけるルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部を形成したため、ピラートリムの上端とルーフトリムとの間に隙間が生じにくくなる。
【0013】
請求項2のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造は、請求項1の発明において、前記付設部材は、ピラートリム側に形成された水平な支持壁で下方から受け止められる底壁部と、この底壁部から下方へ延びて前記支持壁の切欠き開口に係合挿通して下方へ突出する係合突部と、この係合突部に形成され且つピラートリム側のボス軸が挿入される嵌合孔とを備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項3のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造は、請求項1叉は2の発明において、前記付設部材は、カーテンエアバッグが展開する時カーテンエアバッグを案内するガイド部を備え、その付設部材は車体に対してピラートリムの延設方向に略沿った方向に上下移動可能となるように車体に支持されたことを特徴としている。
【0015】
請求項4のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造は、請求項1〜3の何れかの発明において、前記ピラートリムの上端近傍部には、ピラートリム上端部が係合するルーフトリム端部を収容する係合溝がピラートリムと付設部材とで形成されることを特徴としている。
【0016】
請求項5のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造は、請求項1の発明において、前記付設部材の規制部は、ピラートリム上端部が係合するようにルーフトリム端部に形成された開口部を挿通不可となる程大きく大きく構成されたことを特徴としている。
【0017】
請求項6のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造の組付け方法は、車両側部のウインドを覆うように、ルーフトリムとピラートリムの境界を含むルーフトリム端部の隙間からカーテン部材を展開可能なカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造を組み付ける組付け方法において、カーテンエアバッグを車体へ取り付けると共に、ピラートリムの上端近傍におけるルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部を有し且つピラートリムとは別体に構成された付設部材を車体に仮組みする第1工程と、次に前記ルーフトリムを車体に組み付ける第2工程と、次に前記ピラートリムの車体への組付けと前記付設部材のピラートリムへの組み付けとを行う第3工程とを備えたことを特徴としている。
【0018】
請求項7のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造の組付け方法は、請求項6の発明において、前記付設部材は収納状態のカーテンエアバッグに支持され、その収納状態のカーテンエアバッグと共に車体に仮組み付けされることを特徴としている。
【0019】
請求項8のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造の組付け方法は、請求項6叉は7の発明において、前記付設部材は、第3工程において、前記ピラートリムの車体への固定と同時に、ピラートリムに固定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、ピラートリムの上端近傍部に連結される付設部材を設け、この付設部材は、ピラートリムの車体への組み付け前にルーフトリム及びピラートリムと車体との間に組み付けできるようにピラートリムとは別体に構成され、この付設部材にピラートリムの上端近傍におけるルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部が形成されたので、次の効果が得られる。
【0021】
付設部材をピラートリムとは別体に構成するため、付ピラートリムの車体への組み付け前に付設部材をルーフトリム及びピラートリムと車体との間に組み付けることができ、付設部材の車体への組み付けを簡単に行うことができる。しかも、付設部材にピラートリムの上端近傍におけるルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部を形成したので、ピラートリムの上端とルーフトリムとの境界付近におけるルーフトリムの変形が生じにくくなり、ピラートリムの上端付近の意匠性や乗員える見える外観が向上すると共に、カーテンエアバッグの展開安定性を向上できる。
【0022】
請求項2の発明によれば、ピラートリム側の支持壁で下方から受け止められる底壁部を設けたため、ピラートリムが熱膨張しても、支持壁に対する付設部材の相対的位置関係は変動しないから、ピラートリムの熱膨張によりカーテンエアバッグの展開性が低下することがない。付設部材にその底壁部から下方へ延びて前記支持壁の切欠き開口に係合挿通して下方へ突出する係合突部を形成したため、付設部材とピラートリムとの位置関係を所期の状態に保持できる。また、前記係合突部にピラートリム側のボス軸が挿入される嵌合孔を形成したため、そのボス軸の先端のクリップを介して、ピラートリムの上端側部分を車体に組み付けることができる。
【0023】
請求項3の発明によれば、前記付設部材がカーテンエアバッグが展開する時にカーテンエアバッグを案内するガイド部を備えているため、カーテンエアバッグの展開性を確保することができる。この付設部材は車体に対してピラートリムの延設方向に略沿った方向に上下移動可能となるように車体に支持されているため、ピラートリムが熱膨張し、ルーフトリム端部とピラートリム上端部との境界が上下移動するとき、付設部材もピラートリムの上端部と共にピラートリムの延設方向に略沿った方向に上下移動可能であるから、カーテンエアバッグの展開性が損なわれることがない。
【0024】
請求項4の発明によれば、前記ピラートリムの上端近傍部に、ピラートリム上端部が係合するルーフトリム下端部を収容する係合溝をピラートリムと付設部材とで形成したため、ルーフトリム下端部を係合溝に収容することができるため、カーテンエアバッグの展開性を損なうことなく、ピラートリムの上端とルーフトリムとの間に隙間が生じるのを防止でき、この内装構造の意匠性や乗員から見える外観を確保することができる。
【0025】
請求項5の発明によれば 付設部材の規制部をルーフトリムの車体側に対して、広い範囲で位置させることができ、こうした広い範囲でのルーフトリムの変形を防止できる。
【0026】
請求項6の発明によれば、カーテンエアバッグを車体へ取り付けると共に、ピラートリムの上端近傍におけるルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部を有し且つピラートリムとは別体に構成された付設部材を車体に仮組みする第1工程と、次に前記ルーフトリムを車体に組み付ける第2工程と、次に前記ピラートリムの車体への組付けと前記付設部材のピラートリムへの組み付けとを行う第3工程とを備えているため、カーテンエアバッグと付設部材を車体に組み付けてからルーフトリムを組み付け、その後ピラートリムの車体への組付けと前記付設部材のピラートリムへの組み付けを行うことができるため、付設部材の組み付けと、ピラートリムの組み付けを容易に円滑に行うことができる。その他、基本的に請求項1と同様の効果が得られる。
【0027】
請求項7の発明によれば、前記付設部材は収納状態のカーテンエアバッグに支持され、その収納状態のカーテンエアバッグと共に車体に仮組み付けされるため、付設部材の仮組み付けを容易に能率的に行うことができる。
【0028】
請求項8の発明によれば、前記付設部材は、第3工程において、前記ピラートリムの車体への固定と同時にピラートリムに固定されるため、付設部材の車体への固定を容易に能率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、車両側部のウインドを覆うように、ルーフトリムとピラートリムの境界を含むルーフトリム下端の隙間からカーテン部材を展開可能なカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造とその内装構造の組み付け方法に関するものである。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、自動車1の車室内には3列のシート装置2が装備され、車両側部のウインド3を含む内面側の上半部をカーテン状に覆うようにカーテン部材4aを展開可能なカーテンエアバッグ装置を備えた車両の内装構造が設けられている。
【0031】
カーテンエアバッグ装置は、自動車1の左側車体側部と右側車体側部とに夫々装備されるが、本実施例では自動車の右側車体側部に装備されたカーテンエアバッグ装置を例にして説明する。
【0032】
このカーテンエアバッグ装置は、折り畳んだカーテンエアバッグ4aをモジュールケース4bに収納したカーテンエアバッグモジュール4と、インフレータユニット4cと、自動車1の側突を検出する複数の側突検出センサ(図示略)及び自動車1のロール傾斜角を検出する傾斜角検出センサ(図示略)と、これら側突検出センサや傾斜角検出センサからの検出信号に基づいて側突や横転が検出されたときに、インフレータユニット4cを作動させてカーテンエアバッグ4aをカーテン状に展開させるコントローラ(図示略)等を備えている。但し、超音波やマイクロ波を介して側突を予知する側突予知手段により側突を予知した時にもインフレータユニット4cを作動させるように構成してもよい。
【0033】
図1に示すように、カーテンエアバッグモジュール4は、車体右側部のルーフサイドレール5よりやや下側部位の内面に、車室11のほぼ全長に亙って配設されている。カーテンエアバッグ4aが展開した状態は図2に斜線領域で示すとおりである。
【0034】
図3〜図6に示すように、カーテンエアバッグモジュール4は、車体インナパネル6とルーフトリム7の下端側部分との間に配設され、Bピラー8とCピラー9の個所では、カーテンエアバッグモジュール4の一部は車体のピラーインナ6aとルーフトリム7の下端側部分との間に配設されている。カーテンエアバッグモジュール4のモジュールケース4bは、複数のクリップ10により車体のインナパネル6やピラーインナ6aに取り付けられる。
【0035】
カーテンエアバッグ4aが展開する際には、カーテンエアバッグ4aは、ルーフトリム7の下端側部分を車室11側へ押し開きながらルーフトリム7の下端側の隙間から車室11内へ展開し、Bピラー8とCピラー9の個所では、ルーフトリム7の下端側部分を車室11側へ押し開きながら、ピラートリム12,13とルーフトリム7との境界から車室11内へ展開する。
【0036】
Bピラー8とCピラー9の車室側内面には合成樹脂製のピラートリム12,13が設けられるが、Bピラー8の所の内装構造とCピラー9の所の内装構造とはほぼ同様であるので、Bピラー8の部位における内装構造を例にして説明する。前記ルーフトリム7は、例えば微細発泡層と表皮層とからなる柔軟性と伸縮性と圧縮性があり且つピラートリム12,13よりも軟質のウレタン製成形シート材で構成されている。
【0037】
Bピラー用のピラートリム12は、ルーフトリムよりも硬質の例えばポリプロピレン等の硬質合成樹脂製の成形品である。そのピラートリム12には、ピラートリム12の上端近傍部に連結される合成樹脂製の付設部材20が設けられ、この付設部材20はピラートリム12の車体への組み付け前に車体に組み付けできるようにピラートリム12とは別体に構成され、この付設部材20はルーフトリム7及びピラートリム12と車体のインナパネル6とピラーインナ6aとの間に配設される。
【0038】
ピラートリム12は、車室11側の内壁部12aと、この内壁部12aの前端から外側へ湾曲した前壁部12bと、内壁部12aの後端から外側へ湾曲した後壁部12cとを一体形成して構成されている。内壁部12aの上端近傍部は上方程車室内11側へ移行するように湾曲している。前壁部12bの上端近傍部は上方程前方へ移行するように湾曲している。後壁部12cの上端近傍部は上方程後方へ移行するように湾曲している。
【0039】
ピラートリム12に付設部材20を連結する為に、ピラートリム12の上端近傍部の外側(車室と反対側)には、水平な支持壁13が形成され、この支持壁13の前後方向中央部には矩形の切欠き開口14が形成されている。付設部材20は硬質の合成樹脂成形品であり、付設部材20は、底壁部21と、この底壁部21から上方へ延出した湾曲板状の規制部22と、規制部22の上端の前後方向中央部から車幅方向外側へ且つ上方へ傾斜状に延出するガイド部23と、1対の縦向きの補強リブ24などを一体形成したものである。
【0040】
付設部材20の底壁部21は、ピラートリム12の支持壁13上に載置されて支持壁13で受け止められる。この底壁部21にはその前後方向中央部から下方へ延びて前記支持壁13の切欠き開口14に挿通係合して下方へ突出する係合突部25が一体形成され、この係合突部25にはピラートリム12のボス軸15が内嵌状に挿入される嵌合孔25aが形成されている。
【0041】
図3、図4に示すように、付設部材20の底壁部21を支持壁13上に載置し、係合突部25を切欠き開口14に係合させた状態において、規制部22はピラートリム12の上端よりもルーフとの端部の車体側(裏面)形状に略沿って上方へ所定長さ(例えば約10〜15mm)延出し、ピラートリム12の上端近傍部と規制部22の下半部とで、ルーフトリム7の下端部を収容する係合溝26が平面視広幅のU形に形成され、ピラートリム12を組み付けた状態においてルーフトリム7の下端部が係合溝26のほぼ上半部に導入係合される。
【0042】
尚、ルーフトリム7には、上記係合溝26の形状に適合する形状の被係合部7aであって係合溝26に係合される被係合部7aと、その下端に切欠き状に形成された開口部7bが設けられている。図3に示すように、付設部材20の規制部22の車両前後方向における前側の前壁部22bはピラートリム12の前壁部12bの上方かつ前方へオーバーハング状に張り出している。同様に、規制部22の後壁部22cはピラートリム12の後壁部12cの上方かつ後方へオーバーハング状に張り出している。
【0043】
この係合溝26のうちピラートリム12の内壁部12aに対応する内壁側係合溝部26aは、上方程溝厚(溝幅)が僅かに大きくなるように形成され、この内壁側係合溝部26aの中段部における溝厚(溝幅)はルーフトリム7の厚さとほぼ等しい。そのため、この内壁側係合溝部26aにおいて、ルーフトリム7の下端を除き、ルーフトリム7と規制部22の壁面との間には僅かな隙間(約1〜2mm)があるため、カーテンエアバッグ4aの展開性が損なわれることがないし、上記の規制部22によりルーフトリム7の下端部が車体側(車幅方向外側)へ移動しないように規制されている。
【0044】
係合溝26のうちピラートリム12の前壁部12bに対応する前壁側係合溝部26bは、ルーフトリム7の下端部を挟み込んで軽く拘束可能にする為にルーフトリム7とほぼ同厚の溝厚(溝幅)に形成されている。係合溝26のうちピラートリム12の後壁部12cに対応する後壁側係合溝部26cは、ルーフトリム7の下端部を挟み込んで軽く拘束可能にする為にルーフトリム7とほぼ同厚の溝厚(溝幅)に形成されている。
【0045】
前記ガイド部23は、カーテンエアバッグ4aが展開する時にカーテンエアバッグ4aを案内するものである。そのため、図4に示すように、展開するカーテンエアバッグ4aがピラートリム12の上端に引っ掛からないように、ガイド部23の上面の延長線とピラートリム12の上端との間には所定距離αが空けられている。前記ガイド部23を補強する為、規制部22の外面側には、規制部22とガイド部23とに亙る縦向きの1対の補強リブ24が一体的に形成されている。
【0046】
カーテンエアバッグモジュール4の車体への組み付け時に、付設部材20をカーテンエアバッグモジュール4に支持させた状態でその収納状態のカーテンエアバッグモジュール4と共に車体に仮組み付けする。そのため、付設部材20のガイド部23の前後両端部には、前後へ例えば2〜3cm張り出す張出し部23aが形成され、カーテンエアバッグモジュール4の下面側に付設部材20のガイド部23をセットし、前後1対の張出し部23aとカーテンエアバッグモジュール4とに掛け回した紙テープ27により付設部材20がカーテンエアバッグモジュール4に支持され、その状態で車体に仮組み付けされる。
【0047】
付設部材20のガイド部23の上端部には、前後1対の屈曲片28が一体形成され、これら屈曲片28を車体インナパネル6の上下方向に細長の1対の係止孔29に係止させることで、付設部材20は車体に対して上下移動可能となるように支持されている。
【0048】
次に、図6を参照しながら、以上のカーテンエアバッグ装置含む内装構造を組み付ける方法について説明する。車体の組み立て後、第1の工程において、カーテンエアバッグモジュール4を車体のルーフサイドレール5よりやや下方の部位の内面側に組み付ける。このとき、カーテンエアバッグモジュール4に、予め付設部材20を紙テープ27にて固定しておき、カーテンエアバッグモジュール4と共に付設部材20を組み付ける。このとき、カーテンエアバッグモジュール4のモジュールケース4bの複数の固定部4cを複数のクリップ10により車体のインナパネル6に固定する。また、付設部材20の上端の1対の屈曲片28をピラーインナ6aの1対の係止孔29に挿入して係止させることにより、付設部材20を車体に仮組み付けする。
【0049】
次に、第2工程において、ルーフトリム7を車体のルーフの内面に組み付ける。その結果、カーテンエアバッグモジュール4は、ルーフトリム7の車幅方向外側部分で前後方向に沿って車室側から覆われた状態になる。次に、第3工程において、ピラートリム12をピラーインナ6aの内面に組み付ける。このとき、ピラートリム12のボス軸15を付設部材20の係合突部25の嵌合孔25aに嵌合させ、支持壁13で底壁部21を受け止めることで付設部材20を支持し、ピラートリム12の上下1対のボス軸15の先端のクリップ16をピラーインナ6aの取付け孔に係合させることでピラートリム12を車体に固定すると共に付設部材20をピラーインナ6aに固定する。そして、ピラートリム12を組み付けることで前記の係合溝26を形成し、この係合溝26にルーフトリム7の下端部を係合させる。
【0050】
以上のカーテンエアバッグ装置を備えた内装構造の作用、効果について説明する。
付設部材20をカーテンエアバッグモジュール4に固定しておき、ルーフトリム7の組み付け前に、カーテンエアバッグモジュール4の組み付けと同時に組み付けるため、付設部材20を簡単に能率的に組み付けることができる。その組み付け後、付設部材20の1対の屈曲片28を1対の係止孔29に係止させるため、付設部材20の仮組み付けも簡単に行うことができる。
【0051】
その後、ルーフトリム7の組み付け後に、ピラートリム12を組み付け、このピラートリム12を介して付設部材20を車体に固定するため、付設部材20を車体に固定する為の特別の構造を省略可能であり、付設部材20の構造を簡単化することができる。
しかも、ピラートリム12の支持壁13上に付設部材20の底壁部21を載置し、係合突部25を支持壁13の切欠き開口14に係合させ、係合突部25の嵌合孔25aにピラートリム12のボス軸15を嵌合させるため、ピラートリム12と付設部材20の位相対置が簡単に精度よく定まり、ピラートリム12の熱膨張・収縮が生じても、ピラートリム12と付設部材20の位相対置に変動が生じないから、図4に図示の間隔αを一定に維持することできる。そのため、カーテンエアバッグ4aの展開時に、ピラートリム上端部が熱膨張により上側に位置している場合に、カーテンエアバッグ4aがピラートリム12の上端に引っ掛かることがなく、確実に展開する。
【0052】
ピラートリム12の上端近傍部と付設部材20とで係合溝26を形成し、この係合溝26にルーフトリム7の下端部を導入係合させる構造にし、付設部材20の規制部22によりルーフトリム7の下端部が車体側(車幅方向外側)へ移動しないように規制するため、ピラートリム12の上端部とルーフトリム7間に隙間が生じにくく、ピラートリム12とルーフトリム7の境界部を車室側から視た見栄え(外観)が良好になる。しかも、係合溝26の内壁側係合溝部26aの大部分の溝厚(溝幅)は、ルーフトリム7の厚さよりもやや大きめに形成されているため、カーテンエアバッグ4aの展開性を損なうことがない。
【0053】
係合溝26の、前壁側係合溝部26bと後壁側係合溝部26cの溝厚(溝幅)は、ルーフトリム7の厚さとほぼ同厚で、ルーフトリム7の下端部を略挟むように構成され、しかも、図3に図示のようにオーバーハングする湾曲状に形成されているため、ピラートリム12が熱膨張・収縮により伸縮しても、ルーフトリム7の下端部を挟んだ状態のまま伸縮する。それ故、ピラートリム12の上端部とルーフトリム7間に隙間が生じにくく、ピラートリム12とルーフトリム7の境界部の見映え(外観)が良好になる。
【0054】
付設部材20の上端の1対の折曲片28は、1対の係止孔29に係止され、付設部材20の下部はクリップ16を介して車体に固定されており、クリップ16は上下方向に弾性変形可能であるので、付設部材20は上下方向(ピラートリム12の延設方向に沿う方向)に僅かに移動可能であるから、ピラートリム12及び付設部材20の熱膨張・収縮に円滑に追従可能となる。
【0055】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
(1)上記の実施例では、カーテンエアバッグモジュール4に付設部材20を予め固定しておき、ルーフトリム7を組み付ける前に、カーテンエアバッグモジュール4と付設部材20とを同時に組み付けるようにしたが、ルーフトリム7の組み付け後であってピラートリム12の組み付け前に、付設部材20を組み付けることも可能である。
【0056】
この場合、ルーフトリム7は伸縮性があるため、ルーフトリム7の被係合部7aを引っ張って拡大した状態にして、被係合部7aに形成された開口部7bから付設部材20を組み付け、その1対の折曲片28を1対の係止孔29に係止させ、次にピラートリム12を組付け、係合溝26にルーフトリム7の下端部を導入係合させる。
【0057】
(2)ピラートリム12の断面形状は、前記実施例のものに限定される訳ではなく、種々の断面形状のピラートリムも適用可能である。
(3)その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例を部分的に変更して実施可能であり、本発明はそのような変更例をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例に係る自動車のカーテンエアバッグ装置を備えた内装構造の側面図である。
【図2】カーテンエアバッグ展開状態における前記内装構造の側面図である。
【図3】前記内装構造の要部拡大側面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図5のV−V線断面図である。
【図6】前記内装構造の要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 自動車
3 ウインド
4 カーテンエアバッグモジュール
4a カーテンエアバッグ
6 インナパネル
6a ピラーインナ
7 ルーフトリム
7a 被係合部
7b 開口部
12 ピラートリム
13 支持壁
14 切欠き開口部
15 ボス軸
20 付設部材
21 底壁部
22 規制部
23 ガイド部
24 補強ブラケット
25 係合突部
26 係合溝
28 折曲片
29 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部のウインドを覆うように、ピラートリムとピラートリムよりも軟質のルーフトリムとの境界を含むルーフトリム端部からカーテン部材を展開可能なカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造において、
前記ピラートリムには、ルーフトリム及びピラートリムと車体との間に配設され且つピラートリムの上端近傍部に連結される付設部材が設けられ、前記付設部材は、ピラートリムの上端近傍におけるルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部を有すると共に、 この付設部材は、ピラートリムの車体への組み付け前に車体に組み付けできるように、ピラートリムとは別体に構成された、
ことを特徴とするカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造。
【請求項2】
前記付設部材は、ピラートリム側に形成された水平な支持壁で下方から受け止められる底壁部と、この底壁部から下方へ延びて前記支持壁の切欠き開口に係合挿通して下方へ突出する係合突部と、この係合突部に形成され且つピラートリム側のボス軸が挿入される嵌合孔とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造。
【請求項3】
前記付設部材は、カーテンエアバッグが展開する時カーテンエアバッグを案内するガイド部を備え、その付設部材は車体に対してピラートリムの延設方向に略沿った方向に上下移動可能となるように車体に支持されたことを特徴とする請求項1叉は2に記載のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造。
【請求項4】
前記ピラートリムの上端近傍部には、ピラートリム上端部が係合するルーフトリム端部を収容する係合溝がピラートリムと付設部材とで形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造。
【請求項5】
前記付設部材の規制部は、ピラートリム上端部が係合するようにルーフトリム端部に形成された開口部を挿通不可となる程大きく構成されたことを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造。
【請求項6】
車両側部のウインドを覆うように、ルーフトリムとピラートリムの境界を含むルーフトリム端部の隙間からカーテン部材を展開可能なカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造を組み付ける組付け方法において、
カーテンエアバッグを車体へ取り付けると共に、ピラートリムの上端近傍におけるルーフトリムの車体側への移動を規制する規制部を有し且つピラートリムとは別体に構成された付設部材を車体に仮組みする第1工程と、
次に前記ルーフトリムを車体に組み付ける第2工程と、
次に前記ピラートリムの車体への組付けと前記付設部材のピラートリムへの組み付けとを行う第3工程と、
を備えたことを特徴とするカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造の組付け方法。
【請求項7】
前記付設部材は収納状態のカーテンエアバッグに支持され、その収納状態のカーテンエアバッグと共に車体に仮組み付けされることを特徴とする請求項6に記載のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造の組付け方法。
【請求項8】
前記付設部材は、第3工程において、前記ピラートリムの車体への固定と同時に、ピラートリムに固定されることを特徴とする請求項6叉は7に記載のカーテンエアバッグ手段を備えた車両の内装構造の組付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−162437(P2008−162437A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354805(P2006−354805)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】