説明

カートリッジ、及び塗布装置

【課題】蛍光体分散液及び前駆体溶液を塗布装置に補充する際に生じる濃度変化を抑制することができるカートリッジを提供し、さらに、このカートリッジから供給される蛍光体分散液及び前駆体溶液を用いて、蛍光体が均一に分散された蛍光体分散膜を発光装置に形成して、発光装置が発光するときの色度の変化やバラツキを抑制することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】波長変換部を形成するための蛍光体分散膜を発光装置の発光面に塗布する塗布装置に、蛍光体を含有する塗布液を供給する供給体を、波長変換特性を有する蛍光体を含有する蛍光体分散液が充填される第1充填室と、透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液が充填される第2充填室と、を一対一体状に備えたカートリッジとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体分散膜を発光装置に塗布する塗布装置に関し、特に蛍光体を含有する塗布液を供給するカートリッジ、及びそれを備える塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化ガリウム(GaN)系の青色LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)チップの近傍にYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体等の蛍光体を配置し、青色LEDチップから出射される青色光と、蛍光体が青色光を受けて二次発光することにより出射される黄色光との混色により白色発光装置を得る技術が広く用いられている。また、青色LEDチップから出射される青色光と、各蛍光体が青色光を受けて二次発光することにより出射される赤色光及び緑色光との混色により白色発光装置を得る技術も用いられている。
【0003】
このような白色発光装置には様々な用途があり、例えば、蛍光灯や白熱電灯の代替品としての需要がある。また、自動車のヘッドライト等の非常に高い輝度が求められる照明装置へも使われつつある。ヘッドライトには、遠方の標識等の対象物に対する高い視認性が求められるため、白色発光装置の色味や照射範囲の色の均一性においても高い性能が求められる。
【0004】
このような白色発光装置において、蛍光体を含有したセラミック(ガラス)を用いて、LEDチップや実装部を封止する方法がある。例えば特許文献1には、セラミック前駆体組成物を含有した前駆体溶液中に蛍光体粒子を分散させ、これをLEDチップに塗布して加熱することで、蛍光体を含有したセラミック(ガラス)で封止する方法が開示されている。このほか、蛍光体粒子を分散する蛍光体分散液と金属アルコキシドやセラミック前駆体組成物を含有する前駆体溶液とを別々に塗布して、蛍光体粒子分散させた封止体を形成する方法も利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3307316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、発光装置に蛍光体分散液及び前駆体溶液を別々に塗布する塗布装置において、それら塗布液の補充の際に蛍光体分散液及び前駆体溶液のいずれか一方のみを供給すると、供給した塗布液に予期せぬ濃度変化が発生することがある。この場合、形成した封止体中の蛍光体の均一性が損なわれるため、発光装置に色度の変化やバラツキが生じる。そのため、塗布液を補充する際には、発光装置に色度の変化やバラツキが生じないことが予め確認された条件で濃度の調整や供給量の設定がなされた蛍光体分散液及び前駆体溶液を対にして供給する必要があった。
【0007】
本発明は、蛍光体分散液及び前駆体溶液を塗布装置に補充する際に生じる濃度変化を抑制することができるカートリッジを提供し、さらに、このカートリッジから供給される蛍光体分散液及び前駆体溶液を用いて、蛍光体が均一に分散された蛍光体分散膜を発光装置に形成して、発光装置が発光するときの色度の変化やバラツキを抑制することができる塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、波長変換部を形成するための蛍光体分散膜を発光装置の発光面に塗布する塗布装置に、蛍光体を含有する塗布液を供給するカートリッジであって、波長変換特性を有する蛍光体を含有する蛍光体分散液が充填される第1充填室と、透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液が充填される第2充填室と、を一対一体状に備える。
【0009】
上記の構成によれば、蛍光体分散膜を発光装置の発光面に塗布する塗布装置に蛍光体を含有する塗布液を供給する供給体を、蛍光体を含有する蛍光体分散液が充填された第1充填室と、透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液が充填される第2充填室とが一対一体状に設けられたカートリッジとすることができる。そのため、カートリッジの交換時に、塗布装置に蛍光体分散液及び前駆体溶液を対にして供給することができる。従って、蛍光体分散液及び前駆体溶液を塗布装置に補充する際に生じる濃度変化を抑制することができる。塗布装置は、このカートリッジから供給される蛍光体分散液及び前駆体溶液を用いて、蛍光体が均一に分散された蛍光体分散膜を発光装置に形成することができるので、発光装置が発光するときの色度の変化やバラツキを抑制することができる。
【0010】
また、上記構成において、前記蛍光体分散液及び前記前駆体溶液が、前記塗布装置における前記蛍光体分散液の消費速度と前記前駆体溶液の消費速度との比に応じた濃度及び充填量に設定されてもよい。この構成により、蛍光体分散液及び前駆体溶液の濃度や充填量を、蛍光体分散液と前駆体溶液とが同時に使い切られるように設定することができる。そのため、蛍光体分散液及び前駆体溶液を塗布装置にて過不足無く、効率よく使用することができる。
【0011】
また、上記構成において、前記蛍光体分散液を送出するための第1開口部が第1充填室に形成され、前記前駆体溶液を送出するための第2開口部が第2充填室に形成されてもよい。さらに、前記塗布装置が備える第1供給流路と第1充填室とを接続するための第1接続管と、前記塗布装置が備える第2供給流路と第2充填室とを接続するための第2接続管と、をさらに備え、第1接続管が第1開口部に設けられ、第2接続管が第2開口部に設けられてもよい。この構成により、カートリッジが塗布装置に装着されるとき、蛍光体分散液及び前駆体溶液を充填室から塗布装置に給送するための流路を形成することができる。
【0012】
また、上記構成において、第1充填室内に第1撹拌部材が設けられ、第2充填室内に第2撹拌部材が設けられてもよい。この構成により、各充填室内の蛍光体分散液及び前駆体溶液が撹拌部材により撹拌されるため、蛍光体分散液中の蛍光体粒子や前駆体溶液中の前駆体組成物の沈殿や偏析を防ぐことができる。
【0013】
また、上記構成において、第1充填室及び第2充填室に、外部から加圧するための室内加圧用開口部が形成されてもよい。この構成により、外部から第1充填室内及び第2充填室内を加圧することができるので、蛍光体分散液及び前駆体溶液を充填室から塗布装置に確実且つ充分に給送することができる。
【0014】
また、上記目的を達成するために本発明は、上述のカートリッジを装着するための装着部を備え、波長変換部を形成するための蛍光体分散膜を発光装置の発光面に塗布する塗布装置であって、第1充填室に充填された蛍光体分散液を給送する第1供給流路と、第2充填室に充填された前駆体溶液を給送する第2供給流路と、前記蛍光体分散液を前記発光装置に噴射する第1スプレーノズルと、前記前駆体溶液を前記発光装置に噴射する第2スプレーノズルと、を備える。
【0015】
上記の構成によれば、蛍光体分散膜を発光装置の発光面に塗布する塗布装置に上記のカートリッジが装着され、このカートリッジの交換時に、蛍光体分散液及び前駆体溶液が対になって塗布装置に供給される。従って、蛍光体分散液及び前駆体溶液を塗布装置に補充する際に生じる濃度変化を抑制することができる。塗布装置は、このカートリッジから供給される蛍光体分散液及び前駆体溶液を用いて、蛍光体が均一に分散された蛍光体分散膜を発光装置に形成することができる。そのため、発光装置が発光するときの色度の変化やバラツキを抑制することができる。
【0016】
また、上記構成において、第1供給流路には、前記蛍光体分散液が供給される第1供給口が形成され、第2供給流路には、前記前駆体溶液が供給される第2供給口が形成され、第1供給口及び第2供給口が鉛直上方に向かって開口していてもよい。この構成により、充填室から供給流路に、蛍光体分散液や前駆体溶液が鉛直下方に向かって給送される。そのため、充填室と供給流路との接続部における蛍光体分散液や前駆体溶液の液だれを防止することができる。
【0017】
また、上記構成において、第1充填室と第1供給流路とを接続するための第1供給管と、第2充填室と第2供給流路とを接続するための第2供給管と、をさらに備え、第1供給管が第1供給口に設けられ、第2供給管が第2供給口に設けられてもよい。この構成により、カートリッジが塗布装置に装着されたときに、蛍光体分散液や前駆体溶液を充填室から供給流路に給送するための流路を形成することができる。
【0018】
また、上記構成において、第1スプレーノズルに給送される前記蛍光体分散液を貯留し、混入した空気を排気する第1貯留槽と、第2スプレーノズルに給送される前記前駆体溶液を貯留し、混入した空気を排気する第2貯留槽と、をさらに備えていてもよい。この構成により、カートリッジの交換などの際に蛍光体分散液や前駆体溶液に空気が混入していても、第1貯留槽や第2貯留槽に貯留されている期間中に混入した空気を排出することができる。そのため、スプレーノズルから噴出される蛍光体分散液や前駆体溶液に空気が混入しないので、発光装置に均一な蛍光体分散膜を形成することができる。
【0019】
また、上記構成において、第1貯留槽が、第1充填室と第1供給流路とを接続する第1接続部よりも鉛直方向の下側の位置にあり、第2貯留槽が、第2充填室と第2供給流路とを接続する第2接続部よりも鉛直方向の下側の位置にあってもよい。この構成により、第1貯留槽や第2貯留槽に一時的に貯留された蛍光体分散液や前駆体溶液の逆流を防止することができ、さらに、第1接続部や第2接続部にて蛍光体分散液や前駆体溶液が外部に漏れ出ることを防ぐことができる。
【0020】
また、上記構成において、第1貯留槽及び第2貯留槽には、外部から加圧するための槽内加圧用開口部が形成されてもよい。この構成により、外部から第1貯留槽及び第2貯留槽内を加圧することができるので、蛍光体分散液及び前駆体溶液を貯留槽からスプレーノズルに確実且つ充分に給送することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、蛍光体分散膜を発光装置の発光面に塗布する塗布装置に蛍光体を含有する塗布液を供給する供給体を、蛍光体を含有する蛍光体分散液が充填された第1充填室と、透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液が充填される第2充填室とが一対一体状に設けられたカートリッジとすることができる。そのため、カートリッジの交換時に、塗布装置に蛍光体分散液及び前駆体溶液を対にして供給することができる。従って、蛍光体分散液及び前駆体溶液を塗布装置に補充する際に生じる濃度変化を抑制することができる。塗布装置は、このカートリッジから供給される蛍光体分散液及び前駆体溶液を用いて、蛍光体が均一に分散された蛍光体分散膜を発光装置に形成することができるので、発光装置が発光するときの色度の変化やバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る塗布装置の全体図である。
【図2】第1実施形態に係るカートリッジの構成図である。
【図3】第1実施形態に係るカートリッジの変形例を示す構成図である。
【図4】第1実施形態に係る塗布装置の構成図である。
【図5】塗布処理される前の発光装置の概略断面図である。
【図6】焼成処理後の発光装置の概略断面図である。
【図7】第2実施形態に係る塗布装置の全体図である。
【図8】第2実施形態に係るカートリッジの構成図である。
【図9】第2実施形態に係る塗布装置の構成図である。
【図10】第3実施形態に係る塗布装置の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0024】
図1は、第1実施形態に係る塗布装置の構成図である。図1に示すように、カートリッジ1は塗布装置2に装着され、塗布装置2に塗布液5を供給する。塗布装置2は、波長変換部35(図6参照)を形成するための蛍光体分散膜を発光装置3の発光面に塗布する装置である。塗布装置2は、発光装置3の発光面に波長変換特性を有する蛍光体粒子を含有する蛍光体分散液5aを塗布した後、透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液5bを発光装置3の発光面に塗布する。こうして形成される塗布膜(蛍光体分散膜)を焼成することにより、発光装置3に波長変換部35が形成される。
【0025】
カートリッジ1、塗布装置2に着脱可能に装着されている。カートリッジ1は、波長変換部35を形成するための蛍光体分散膜を発光装置3の発光面に塗布する塗布装置2に、蛍光体を含有する塗布液5を供給する。図2は、第1実施形態に係るカートリッジの構成図である。図2に示すように、カートリッジ1は、充填室11と、接続管12と、撹拌部材13と、保持部14と、を備える。
【0026】
充填室11は、第1充填室11a及び第2充填室11bで構成される。第1充填室11a及び第2充填室11bは、カートリッジ1に一対一体状に備えられている。第1充填室11aには、波長変換特性を有する蛍光体を含有する蛍光体分散液5aが充填されている。また、第2充填室11bには、透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液5bが充填されている。
【0027】
また、充填室11の底部には、塗布液5を送出するための開口部111が形成されている。図2では、蛍光体分散液5aを送出するための第1開口部111aが第1充填室11aに形成され、前駆体溶液5bを送出するための第2開口部111bが第2充填室11bに形成されている。また、第1充填室11a及び第2充填室11b内には、0.01〜0.5MPaの内圧が掛けられている。そのため、カートリッジ1が塗布装置2に装着されたとき、この内圧により蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bが充填室11の開口部111から塗布装置2に送出される。
【0028】
このほか、第1充填室11a及び第2充填室11bに、外部から加圧するための室内加圧用開口部112が形成されてもよい。図3は、第1実施形態に係るカートリッジの変形例を示す構成図である。図3では、第1充填室11aに外部から加圧するための第1室内加圧用開口部112aが形成され、第2充填室11bに外部から加圧するための第2室内加圧用開口部112bが形成されている。また、第1室内加圧用開口部112a及び第2室内加圧用開口部112bにはコンプレッサーなどの加圧装置(不図示)が接続される。この加圧装置により第1充填室11aや第2充填室11bの内部が加圧される。これにより、外部から第1充填室11a内及び第2充填室11b内を加圧することができるので、蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bを充填室11から塗布装置2に確実且つ充分に給送することができる。
【0029】
次に、接続管12は、充填室11と塗布装置2に設けられた供給流路21とを接続するための管状部材であり、充填室11の開口部111に設けられる。カートリッジ1が塗布装置2に装着されるとき、接続管12は、塗布装置2の供給流路21と接続され、塗布液5を充填室11から供給流路21に給送するための流路を形成する。なお、接続管12は、塗布装置2の供給流路21との接続により流路が開く構造となっている。
【0030】
図1や図2に示すように、接続管12は、塗布装置2が備える第1供給流路21aと第1充填室11aとを接続するための第1接続管12aと、塗布装置2が備える第2供給流路21bと第2充填室11bとを接続するための第2接続管12bと、で構成される。また、第1接続管12aは第1開口部111aに設けられ、第2接続管12bは第2開口部111bに設けられる。蛍光体分散液5aは第1接続管12aを通じて第1充填室11aから第1供給流路21aに給送される。また、前駆体溶液5bは第2接続管12bを通じて第2充填室11bから第2供給流路21bに給送される。これにより、カートリッジ1が塗布装置2に装着されるとき、蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bを充填室11から塗布装置2に給送するための流路を形成することができる。
【0031】
また、撹拌部材13は、充填室11内に回動自在に設けられている。図2では、第1充填室11a内に蛍光体分散液5aを撹拌する第1撹拌部材13aが設けられ、第2充填室11b内に前駆体溶液5bを撹拌する第2撹拌部材13bが設けられている。また、撹拌部材13は、撹拌装置131により与えられる駆動力により回動し、充填室11内の塗布液5を撹拌する。これにより、充填室11内の蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bが撹拌部材13により撹拌されるため、蛍光体分散液5a中の蛍光体粒子や前駆体溶液5b中の前駆体組成物の沈殿や偏析を防ぐことができる。撹拌部材13は、特に限定しないが、撹拌用のプロペラを有する撹拌棒や、マグネットスターラーなどを挙げることができる。
【0032】
保持部14は、カートリッジ1を塗布装置2に脱着可能に装着するための部材であり、チャック部141を有する。チャック部141は、カートリッジ1を塗布装置2に脱着可能に保持するための保持部材である。図1に示すように、チャック部141は、塗布装置2に備えられた係合部26と係合する。チャック部141が係合部26と係合すること、及び、接続管12が供給流路21に接続されることにより、カートリッジ1は塗布装置2に装着される。
【0033】
次に、蛍光体分散液5aについて説明する。蛍光体分散液5aは、波長変換特性を有する蛍光体の粒子、膨潤性粒子、及び無機微粒子が、純水及び有機溶媒からなる混合溶媒に分散された分散液である。
【0034】
蛍光体は、所定の波長(励起波長)により励起されて、励起波長と異なる波長の蛍光を出射するものである。本実施形態では、青色光(波長420nm〜485nm)を黄色光(波長550nm〜650nm)に変換するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体を使用している。なお、蛍光体の種類はこれに限定されるものではなく、例えばCeを含まない非ガーネット系蛍光体等の他の蛍光体を使用することもできる。また、蛍光体の粒子は、体積平均粒径が1μm以上50μm以下のものを用いた。
【0035】
膨潤性粒子は膨潤性に富むスメクタイト構造の層状ケイ酸塩鉱物を用いた。ここでの鉱物とは、天然又は合成の無機質で一定の化学組成と結晶構造を有する固体物質を指す。このような膨潤性粒子を混合溶媒に分散させると、スメクタイト構造の層間に混合溶媒中の水が進入して膨潤したカードハウス構造をとるため、混合液の粘性を大幅に増加させる効果が得られる。なお、膨潤性粒子の種類はこれに限定されるものではない。たとえば、層状ケイ酸塩鉱物としては、雲母構造、カオリナイト構造、スメクタイト構造等の構造を有する膨潤性粘土鉱物を用いることができる。また、膨潤性粒子として、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等のフッ化物粒子を使用してもよい。
【0036】
無機粒子は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物微粒子、フッ化マグネシウム等のフッ化物微粒子等を使用した。なお、溶媒との相溶性を考慮して、無機粒子の表面をシランカップリング剤やチタンカップリング剤で処理したものを適宜用いてもよい。無機粒子の粒径は、一次粒径の中心粒径が0.001μm以上1μm以下のものを用いた。
【0037】
蛍光体分散液5aの溶媒は、純水とIPA(イソプロピルアルコール)との混合溶液を用いた。なお、これに限定されず、IPAに変えて、他の有機溶媒を使用してもよい。水との相溶性に優れた有機溶媒であればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類を用いることができる。また、高沸点の有機溶媒を用いると、混合液のポットライフが短くならず、取り扱い性に優れる。
【0038】
次に、前駆体溶液5bについて説明する。前駆体溶液5bは、透光性セラミックの前駆体組成物が有機溶媒に混合された溶液である。これらのほか、前駆体溶液5bには上述の層状ケイ酸塩鉱物や無機粒子が混合されていてもよい。
【0039】
透光性セラミックの前駆体組成物は、金属アルコキシドを利用した。これに限定されず、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート等の有機金属化合物を使用してもよい。また、金属アルコキシドは、有機シロキサン化合物が鎖状または環状に連なったポリシロキサンを使用した。この他、テトラエトキシシランのような単分子のものを使用してもよい。なお、透光性のセラミック体を形成可能であれば金属の種類に制限はないが、形成されるセラミック体の安定性や製造の容易性の観点から、ケイ素を含有しているものがよい。また、複数種の金属を含有していてもよい。
【0040】
前駆体溶液5bの溶媒は、IPAを用いた。なお、これに限定されず、他の有機溶媒を使用してもよい。たとえば、水を添加する場合は水との相溶性に優れたメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類などが使用できる。
【0041】
なお、蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bは、塗布装置2における蛍光体分散液5aの消費速度と前駆体溶液5bの消費速度との比に応じた濃度及び充填量に設定されている。すなわち、蛍光体分散液5aにおける蛍光体の粒子、膨潤性粒子、及び無機微粒子の分散濃度や、混合溶媒での純水及び有機溶媒の混合比率、第1充填室11aへの充填量は塗布装置2における蛍光体分散液5aの消費速度と前駆体溶液5bの消費速度との比に応じて設定される。また、前駆体溶液5bにおける透光性セラミックの前駆体組成物の濃度や、第2充填室11bへの充填量は塗布装置2における蛍光体分散液5aの消費速度と前駆体溶液5bの消費速度との比に応じて設定される。これにより、各充填室11に充填される蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bの濃度及び充填量を、蛍光体分散液5aと前駆体溶液5bとが同時に使い切られるように設定することができる。そのため、蛍光体分散液5aと前駆体溶液5bとを過不足無く、効率よく使用することができる。
【0042】
次に、塗布装置2について説明する。図4は、第1実施形態に係る塗布装置の構成図である。図4に示すように、塗布装置2は、供給流路21と、貯留槽22と、貯留槽用撹拌部材23と、送出流路24と、スプレーノズル25と、係合部26と、を備える。
【0043】
供給流路21は、カートリッジ1が塗布装置2に装着されたときにカートリッジ1の充填室11と接続され、充填室11から供給される塗布液5を貯留槽22に給送ための流路である。図4に示すように、供給流路21は、第1充填室11aに充填された蛍光体分散液5aを給送する第1供給流路21aと、第2充填室11bに充填された前駆体溶液5bを給送する第2供給流路21bと、で構成される。
【0044】
また、第1供給流路21aには、蛍光体分散液5aが供給される第1供給口211aが形成されており、第2供給流路21bには、前駆体溶液5bが供給される第2供給口211bが形成されている。また、第1供給口211a及び第2供給口211bは鉛直上方に向かって開口している。これにより、充填室11から供給流路21に、蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bが鉛直下方に向かって給送される。そのため、充填室11と供給流路21との接続部における蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bの液だれを防止することができる。
【0045】
カートリッジ1が塗布装置2に装着されるとき、第1接続管12aが第1供給口211aに挿入されることにより、第1充填室11aと第1供給流路21aとが接続される。蛍光体分散液5aは第1供給流路21aを通じて第1貯留槽22aに給送される。同様に、カートリッジ1が塗布装置2に装着されるとき、第2接続管12bが第2供給口211bに挿入されることにより、第2充填室11bと第2供給流路21bとが接続される。前駆体溶液5bは第2供給流路21bを通じて第2貯留槽22bに送出される。なお、本実施形態では、充填室11と供給流路21とを接続する際、接続管12が供給流路21の供給口211に挿入されているが、これに限定されず、他の接続形態を適用してもよい。
【0046】
貯留槽22は、供給流路21から給送される塗布液5を一時的に貯留する。また、貯留槽22の下部には供給流路21が接続され、その底部には送出流路24が接続されている。図4では、貯留槽22は、蛍光体分散液5aを貯留し、混入した空気を排気する第1貯留槽22aと、前駆体溶液5bを貯留し、混入した空気を排気する第2貯留槽22bと、で構成される。これにより、カートリッジ1の交換などの際に蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bに空気が混入していても、第1貯留槽22aや第2貯留槽22bに貯留されている期間中に混入した空気を排出することができる。そのため、スプレーノズル25から噴出される蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bに空気が混入しないので、発光装置3に均一な蛍光体分散膜を形成することができる。
【0047】
たとえば、カートリッジ1を塗布装置2に装着する際には、供給流路21内に空気が入って蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bに空気が混じることがある。蛍光体分散液5aに混入した空気は、蛍光体分散液5aが第1貯留槽22aに貯留されている期間中に蛍光体分散液5aの液面221aから、その上方の空間222aに放出され、蛍光体分散液5aから分離される。同様に、前駆体溶液5bに混入した空気は、前駆体溶液5bが第1貯留槽22bに貯留されている期間中に前駆体溶液5bの液面221bから、その上方の空間222bに放出され、前駆体溶液5bから分離される。そのため、発光装置3に塗布される空気蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bに空気が混入することはないので、発光装置3に蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bをより均一に塗布することができる。
【0048】
また、図1や図4に示すように、第1貯留槽22aが、第1充填室11aと第1供給流路21aとを接続する第1接続部よりも鉛直方向の下側に位置し、第2貯留槽22bが、第2充填室11bと第2供給流路21bとを接続する第2接続部よりも鉛直方向の下側に位置している。たとえば、第1貯留槽22aは第1接続管12aや第1供給口211aよりも低い位置(すなわち、鉛直方向の下側の位置)にあり、第2貯留槽22bは第2接続管12bや第2供給口211bよりも低い位置(すなわち、鉛直方向の下側の位置)にある。これにより、第1貯留槽22aや第2貯留槽22bに一時的に貯留された蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bの逆流を防止することができ、さらに、第1接続部や第2接続部にて蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bが外部に漏れ出ることを防ぐことができる。
【0049】
また、貯留槽22には、外部から槽内を加圧するための槽内加圧用開口部223が形成されている。図4に示すように、第1貯留槽22aには第1槽内加圧用開口部223aが形成され、第2貯留槽22bには第2槽内加圧用開口部223bが形成されている。また、これらの槽内加圧用開口部223には、たとえばコンプレッサーなどの加圧装置(不図示)が接続され、この加圧装置により第1貯留槽22aや第2貯留槽22bの内部が加圧される。これにより、外部から第1貯留槽22a及び第2貯留槽22b内を加圧することができるので、貯留槽22からスプレーノズル25に蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bを確実且つ充分に給送することができる。
【0050】
また、貯留槽22内には、貯留槽用撹拌部材23が回動自在に設けられている。図4に示すように、第1貯留槽22a内には蛍光体分散液5aを撹拌するための第1貯留槽用撹拌部材23aが設けられ、第2貯留槽22b内には前駆体溶液5bを撹拌するための第2貯留槽用撹拌部材23bが設けられている。貯留槽用撹拌部材23は撹拌装置(不図示)により与えられる駆動力により回動し、貯留槽22内の塗布液5を撹拌する。これにより、蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bが貯留槽22に貯留されている期間中における蛍光体粒子やセラミック前駆体組成物の沈殿や偏析を防ぐことができる。貯留槽用撹拌部材23は、特に限定しないが、撹拌用のプロペラを有する撹拌棒や、マグネットスターラーなどを挙げることができる。
【0051】
また、送出流路24は、貯留槽22とスプレーノズル25とを接続し、蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bを貯留槽22からスプレーノズル25に給送するための流路である。図4では、送出流路24は、第1送出流路24aと第2送出流路24bとで構成されている。第1送出流路24aの一端は第1貯留槽22aの底部に接続され、他端は第スプレーノズル25aに接続されている。そして、第1送出流路24aを通じて、蛍光体分散液5aが第1貯留槽22aから第1スプレーノズル25aに給送される。また、第2送出流路24bの一端は第2貯留槽22bの底部に接続され、他端は第スプレーノズル25bに接続されている。そして、第2送出流路24bを通じて、前駆体溶液5bが第2貯留槽22bから第2スプレーノズル25bに給送される。
【0052】
スプレーノズル25は、送出流路24から給送される塗布液5を発光装置3に向かって噴射するスプレー手段である。スプレーノズル25には、圧縮ガス導入口251と噴射口252とが形成されている。また、噴射口252は、発光装置3と対向する面に形成されている。圧縮ガス導入口251にはコンプレッサーなどの加圧装置(不図示)が接続され、加圧装置から圧縮ガスが導入される。この圧縮ガスが塗布液5を巻き込んで噴射口252から噴射されることにより、塗布液5が発光装置3に塗布される。
【0053】
図4では、スプレーノズル25は、第1スプレーノズル25aと第2スプレーノズル25bとで構成される。第1スプレーノズル25aには、第1圧縮ガス導入口251aと第1噴射口252aとが形成されている。第2スプレーノズル25bには、第2圧縮ガス導入口251bと第2噴射口252bとが形成されている。塗布装置2が発光装置3の発光面に蛍光体分散膜を塗布するとき、先ず、第1スプレーノズル25aにおいて、圧縮ガスが蛍光体分散液5aを巻き込んで第1噴射口252aから噴射されることにより、蛍光体分散液5aが発光装置3に塗布される。その後、第2スプレーノズル25bにおいて、圧縮ガスが前駆体溶液5bを巻き込んで第2噴射口252bから噴射されることにより、前駆体溶液5bが発光装置3に塗布される。なお、図4では、スプレーノズル25は、被処理物である発光装置3に対して鉛直下方から塗布液5を噴出しているが、これに限定されず、鉛直上方から噴出してもよい。
【0054】
係合部26は、塗布装置2にカートリッジ1を装着するための部材である。係合部26は、チャック部141と係合し、カートリッジ1を塗布装置2に着脱可能に保持する。
【0055】
次に、塗布装置2により蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bが塗布される発光装置3について説明する。図5は、塗布処理される前の発光装置の概略断面図である。図5に示すように、塗布前の発光装置3aは、基板31と、メタル部32と、発光素子33と、突起電極34と、を有している。
【0056】
基板31は厚さ方向の断面形状が凹状となっている。メタル部32は、基板31の凹部(底部)に設けられ、メタル部32上に発光素子33が配置される。発光素子33は、メタル部32に対向する面に突起電極34が設けられている。メタル部32及び発光素子33は突起電極34を介して接続されている(フリップチップ型)。本実施形態では、発光素子33として青色LED素子を用いている。青色LED素子は、例えばサファイア基板上にn−GaN系クラッド層、InGaN発光層、p−GaN系クラッド層、及び透明電極を積層してなる。
【0057】
また、発光装置3は、塗布装置2の第1スプレーノズル25aにより蛍光体分散液5aを塗布された後、第2スプレーノズル25bにより前駆体溶液5bを塗布される。その後、発光装置3は焼成炉に移送され、発光素子33が破損しない程度に設定された温度、たとえば、100〜300℃で焼成される。その結果、波長変換部35が形成された発光装置3が得られる。
【0058】
図6は、焼成処理後の発光装置の概略断面図である。図6に示すように、焼成後の発光装置3では、基板31の凹部には発光素子33の周囲を封止するように波長変換部35が形成されている。この波長変換部35では、発光素子33から出射された光を予め定められた波長の光を、異なる波長の光に変換して放射する。言い換えると、波長変換部35に含まれる蛍光体粒子が、発光素子33から出射される予め定められた波長の光により励起され、その光の波長とは異なる波長の蛍光を放射する。
【0059】
以上、本実施形態に係るカートリッジ1は、波長変換部35を形成するための蛍光体分散膜を発光装置3の発光面に塗布する塗布装置2に、蛍光体を含有する塗布液5を供給するカートリッジであって、波長変換特性を有する蛍光体を含有する蛍光体分散液5aが充填される第1充填室11aと、透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液5bが充填される第2充填室11bと、を一対一体状に備えている。
【0060】
このようにすれば、蛍光体分散膜を発光装置3の発光面に塗布する塗布装置2に蛍光体を含有する塗布液5を供給する供給体を、蛍光体を含有する蛍光体分散液5aが充填された第1充填室11aと、透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液5bが充填される第2充填室11bとが一対一体状に設けられたカートリッジ1とすることができる。そのため、カートリッジ1の交換時に、塗布装置2に蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bを対にして供給することができる。従って、蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bを塗布装置2に補充する際に生じる濃度変化を抑制することができる。塗布装置2は、このカートリッジ1から供給される蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bを用いて、蛍光体が均一に分散された蛍光体分散膜を発光装置3に形成することができるので、発光装置3が発光するときの色度の変化やバラツキを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る塗布装置2は、カートリッジ1を装着するための係合部26(装着部)を備え、波長変換部35を形成するための蛍光体分散膜を発光装置3の発光面に塗布する塗布装置であって、第1充填室11aに充填された蛍光体分散液5aを給送する第1供給流路21aと、第2充填室11bに充填された前駆体溶液5bを給送する第2供給流路21bと、蛍光体分散液5aを発光装置3に噴射する第1スプレーノズル25と、前駆体溶液5bを発光装置3に噴射する第2スプレーノズル25bと、を備える。
【0062】
このようにすれば、蛍光体分散膜を発光装置3の発光面に塗布する塗布装置2に上述のカートリッジ1が装着され、このカートリッジ1の交換時に、蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bが対になって塗布装置2に供給される。従って、蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bを塗布装置2に補充する際に生じる濃度変化を抑制することができる。塗布装置2は、このカートリッジ1から供給される蛍光体分散液5a及び前駆体溶液5bを用いて、蛍光体が均一に分散された蛍光体分散膜を発光装置3に形成することができる。そのため、発光装置3が発光するときの色度の変化やバラツキを抑制することができる。
【0063】
なお、第1実施形態では、接続管12が充填室11と供給流路21とを接続しているが、本発明ではこれに限定されず、他の接続形態を適用してもよい。
<第2実施形態>
【0064】
図7は、第2実施形態に係る塗布装置の全体図である。第2実施形態では、カートリッジ1Bが塗布装置2Bに着脱可能に装着されている。第2実施形態では、充填室11と供給流路21とを接続する構成が異なること以外、第1実施形態と同様の構成となっている。
【0065】
図8は、第2実施形態に係るカートリッジの構成図である。カートリッジ1Bは、開口部111に接続管12が設けられていないこと以外、第1実施形態のカートリッジ1と同様の構成となっている。
【0066】
また、図9は、第2実施形態に係る塗布装置の構成図である。塗布装置2Bは、カートリッジ1Bの充填室11と接続される供給管27をさらに備えていること以外、第1実施形態の塗布装置2と同様の構成となっている。
【0067】
供給管27は、充填室11と供給流路21とを接続するための管状部材であり、供給流路21の供給口211に設けられる。カートリッジ1Bが塗布装置2Bに装着されるとき、供給管27は充填室11に接続され、蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bを充填室11から供給流路21に給送するための流路を形成する。なお、カートリッジ1Bの開口部111は、供給管27が接続されることにより流路が開く構造となっている。
【0068】
図7や図9に示すように、供給管27は、第1充填室11aと第1供給流路21aとを接続するための第1供給管27aと、第2充填室11bと第2供給流路21bとを接続するための第2供給管27bとで構成される。また、図9に示すように、第1供給管27aが第1供給口211aに設けられ、第2供給管27bが第2供給口211bに設けられる。カートリッジ1Bが塗布装置2Bに装着されるとき、第1開口部111aに第1供給管27aが挿入されることにより、第1充填室11aと第1供給流路21aとが接続される。同様に、カートリッジ1Bが塗布装置2Bに装着されるとき、第2開口部111bに第2供給管27bが挿入されることにより、第2充填室11bと第2供給流路21bとが接続される。蛍光体分散液5aは供給管27aを通じて第1充填室11aから第1供給流路21aに給送される。また、前駆体溶液5bは第2供給管27bを通じて第2充填室11bから第2供給流路21bに給送される。これにより、カートリッジ1が塗布装置2に装着されるとき、蛍光体分散液5aや前駆体溶液5bを充填室11から供給流路21に給送するための流路を形成することができる。
【0069】
なお、第1実施形態では、接続管12が充填室11と供給流路21とを接続しているが、これに限定されず、他の接続形態を適用してもよい。
<第3実施形態>
【0070】
また、開口部111に設けられた接続管12と、供給口211に設けられた供給管27とを突き合わせた状態で接続することにより、充填室11と供給流路21とを接続するしてもよい。図10は、第3実施形態に係る塗布装置の全体図である。第3実施形態では、カートリッジ1Cが塗布装置2Cに着脱可能に装着されている。第3実施形態は、充填室11と供給流路21とを接続する構成が異なること以外、第1実施形態や第2実施形態と同様の構成となっている。
【0071】
カートリッジ1Cは、第1実施形態と同様の構成(図2参照)であり、充填室11に形成された開口部111に接続管12が設けられている。また、塗布装置2Cは第2実施形態と同様の構成(図9参照)であり、供給流路21に形成された供給口211に供給管27が設けられている。
【0072】
図10に示すように、カートリッジ1Cが塗布装置2Cに装着されるとき、第1接続管12aと第1供給管27aとが突き合う状態で接続されることにより、蛍光体分散液5aを第1充填室11aから第1供給流路21aに給送するための流路が形成される。同様に、カートリッジ1Cが塗布装置2Cに装着されるとき、第2接続管12bと第2供給管27bとが突き合う状態で接続されることにより、前駆体溶液5bを第2充填室11bから第2供給流路21bに給送するための流路が形成される。なお、このとき、接続管12を供給管27に挿入してもよいし、連結部材を用いて接続管12と供給管27とを継ぎ合わせてもよい。
<実験例>
【0073】
次に、第1〜第3実施形態の塗布装置2を用いて実際に行った実験結果について説明する。これらの実験では、青色LED素子が搭載されたLED発光装置の発光面に、青色光を黄色光(波長550nm〜650nm)に変換するYAG蛍光体を含有する蛍光体分散膜を塗布した。そして、焼成により波長変換部35を形成した発光装置3の発光色度の変化やバラツキを目視にて確認した。これらの実験結果を表1に示す。なお、実験例1〜3では、それぞれ、第1〜第3実施形態においてカートリッジ1の交換により蛍光体分散液5aと前駆体溶液5bとを一度に塗布装置2に補充したのち、蛍光体分散膜を形成した結果を示す。また、比較実験例は、第1実施形態の塗布装置2に前駆体溶液5bのみを補充したのち、蛍光体分散膜を形成した結果を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示すように、実験例1〜3では発光装置3を発光させたときの色度の変化やバラツキが小さくなることが確認された。対して、比較実験例では目視であっても色度が大きく変化したりばらついたりすることが確認された。
【0076】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせに色々な変形例が可能であり、本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、発光素子を有する発光装置の発光面に、発光素子から出射される光の波長を変換する蛍光体を含む波長変換部を形成するための製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1、1A、1B、1C カートリッジ
11 充填室
111 開口部
112 室内加圧用開口部
12 接続管
13 撹拌部材
131 撹拌装置
14 保持部
141 チャック部
2、2B、2C 塗布装置
21 供給流路
211 供給口
22 貯留槽
221a、221b 液面
222a、222b 空間
223 槽内室内加圧用開口部
23 貯留槽用撹拌部材
24 送出流路
25 スプレーノズル
251 圧縮ガス導入口
252 噴射口
26 係合部(装着部)
27 供給管
3 発光装置
31 基板
32 メタル部
33 発光素子
34 突起電極
35 波長変換部
5 塗布液
5a 蛍光体分散液
5b 前駆体溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換部を形成するための蛍光体分散膜を発光装置の発光面に塗布する塗布装置に、蛍光体を含有する塗布液を供給するカートリッジであって、
波長変換特性を有する蛍光体を含有する蛍光体分散液が充填される第1充填室と、
透光性セラミックの前駆体組成物を含有する前駆体溶液が充填される第2充填室と、
を一対一体状に備えることを特徴とするカートリッジ。
【請求項2】
前記蛍光体分散液及び前記前駆体溶液が、前記塗布装置における前記蛍光体分散液の消費速度と前記前駆体溶液の消費速度との比に応じた濃度及び充填量に設定されることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記蛍光体分散液を送出するための第1開口部が第1充填室に形成され、
前記前駆体溶液を送出するための第2開口部が第2充填室に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記塗布装置が備える第1供給流路と第1充填室とを接続するための第1接続管と、
前記塗布装置が備える第2供給流路と第2充填室とを接続するための第2接続管と、
をさらに備え、
第1接続管が第1開口部に設けられ、
第2接続管が第2開口部に設けられることを特徴とする請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
第1充填室内に第1撹拌部材が設けられ、
第2充填室内に第2撹拌部材が設けられることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のカートリッジ。
【請求項6】
第1充填室及び第2充填室に、外部から加圧するための室内加圧用開口部が形成されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のカートリッジを装着するための装着部を備え、波長変換部を形成するための蛍光体分散膜を発光装置の発光面に塗布する塗布装置であって、
第1充填室に充填された蛍光体分散液を給送する第1供給流路と、
第2充填室に充填された前駆体溶液を給送する第2供給流路と、
前記蛍光体分散液を前記発光装置に噴射する第1スプレーノズルと、
前記前駆体溶液を前記発光装置に噴射する第2スプレーノズルと、を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
第1供給流路には、前記蛍光体分散液が供給される第1供給口が形成され、
第2供給流路には、前記前駆体溶液が供給される第2供給口が形成され、
第1供給口及び第2供給口が鉛直上方に向かって開口することを特徴とする請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
第1充填室と第1供給流路とを接続するための第1供給管と、
第2充填室と第2供給流路とを接続するための第2供給管と、
をさらに備え、
第1供給管は第1供給口に設けられ、
第2供給管は第2供給口に設けられることを特徴とする請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
第1スプレーノズルに給送される前記蛍光体分散液を貯留し、混入した空気を排気する第1貯留槽と、
第2スプレーノズルに給送される前記前駆体溶液を貯留し、混入した空気を排気する第2貯留槽と、
をさらに備えることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項11】
第1貯留槽が、第1充填室と第1供給流路とを接続する第1接続部よりも鉛直方向の下側の位置にあり、
第2貯留槽が、第2充填室と第2供給流路とを接続する第2接続部よりも鉛直方向の下側の位置にあることを特徴とする請求項10に記載の塗布装置。
【請求項12】
第1貯留槽及び第2貯留槽には、外部から加圧するための槽内加圧用開口部が形成されることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−130855(P2012−130855A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284528(P2010−284528)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】