説明

カード用コネクタ装置

【課題】カードの着脱作業が容易に行え、しかも構造が簡単でコンパクトなカード用コネクタ装置を提供する。
【解決手段】カード用コネクタ装置1は、ボディ26におけるICカード100の収納部26aの底部27aから突出して接触端子101に弾接される接触ばね片部6と、ボディ26の一端側に設けられ底部27aとでICカード100を狭持する固定係止部28と、ボディ26の他端側に両端方向に移動自在に設けられた可動係止体23と、可動係止体23をボディ26の一端側へ付勢し可動係止体23の係止片部23dと底部27aにてICカード100を狭持させるばね片24とを備え、可動係止体23とばね片24は弾性を有する金属材料から形成され、可動係止体23はばね片24の先端部に一体に突設さればね片24の基端部でボディ26に取り付けられ、ボディ26には係止片部23dにおける底部27aとの反対面に当接する押えリブ33bが突設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード等のカードを外部回路に接続するためのカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メモリやCPU等を構成したICチップを内包したICカードをプリント基板等の外部回路に接続するためのカード用コネクタ装置が提供されている。
【0003】
この種のカード用コネクタ装置としては、ICカードを接触支持するボディと、該ボディに回転自在に取り付けられるカバーとを備えたカード用コネクタ装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、平面方形の板状に成形され表面内に6個の接続端子が取り付けられたボディと、裏面にカード収容部を有してボディの表面部に沿って摺動自在に取り付けられるカードホルダーであるカバーとを備えたカード用コネクタ装置が提供されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2860362号公報(第1図)
【特許文献2】特許第3020020号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の前者のカード用コネクタ装置は、ボディにカバーを回転自在に取り付けて構成されているので、プリント回路基板等へ実装する際にはカバーも一緒に取り扱わなければならず、そのためプリント回路基板等へ自動実装することが困難であるという問題があった。また、このカード用コネクタ装置においては、カードの端面をボディの係合面に当接することでカードとカード用コネクタ装置との接続状態が維持されているが、このような構成では、カードとカード用コネクタ装置との接続状態を確実に維持することができない。したがって、前者のカード用コネクタ装置において、カードとカード用コネクタ装置の接続状態を確実に維持するためには、別途、接続状態を維持するためのロック機構を設けなくてはならず、当然、構造が複雑化し、その形状も大型化してしまうという問題があった。
【0006】
一方、後者のカード用コネクタ装置は、カードの取り付け時にボディとカバーとを別離させる構成とすることで、上記のプリント回路基板等への自動実装に関する問題を解決しているが、このように取り付け時に部品の取り外しを行うと、取り外した部品を紛失しやすくなってしまうという新たな問題が生じていた。また、この後者のカード用コネクタ装置においても、構造の複雑化や、形状の大型化といった問題を解決できていなかった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので、その目的は、カードの着脱作業が容易に行え、しかも構造が簡単でコンパクトなカード用コネクタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、請求項1の発明では、一面側に複数の接触端子が露設されたICカードの収納部を備えたボディと、前記ICカードの一面側が載置される前記収納部の底部から突出して前記ICカードの接触端子に各別に弾接される複数の接触ばね片部と、前記ボディの一端側に設けられて前記底部とで前記ICカードの一端部を狭持する固定係止部と、前記ボディの他端側に前記ボディの両端方向に移動自在に設けられた可動係止体と、前記可動係止体を前記ボディの一端側へ付勢して、前記可動係止体の一端部に設けた係止片部と前記底部にて前記ICカードの他端部を狭持させる付勢手段とを具備し、前記可動係止体と前記付勢手段は、弾性を有する金属材料から形成され、前記可動係止体は、前記付勢手段の先端部に一体に突設されて、前記付勢手段の基端部で前記ボディに取り付けられ、前記ボディには、前記係止片部における前記底部との反対面に当接する押えリブが突設されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、ボディに設けた固定係止部と可動係止体とでICカードを収納部に固定してICカードをカード用コネクタ装置に取り付けることができるため、別途カバーやカードホルダー等を用いる必要が無くなり、これにより簡単な構造でコンパクトなカード用コネクタ装置を得ることができる。また、可動係止体のボディの両端方向への移動によってICカードのカード用コネクタ装置への着脱作業を行えるため、ICカードの着脱作業を容易に行うことができる。さらに、ICカードを取り外す際には、可動係止体5を他端側に移動させてICカードの狭持を解除すれば、接触ばね片部の付勢によりICカードが収納部から浮き上がるから、ICカードを容易に取り外すことができる。また、底部とでICカードを狭持した際に、ICカードに弾接する接触ばね片部の付勢力によって係止片部が撓ませられて変形してしまうことを防止することができる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記ボディの一端側における前記収納部の底部に、前記ICカードの取付時に、該ICカードの一端部を一時的に挿し入れるスペースを設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、ICカードを収納部に挿し入れる際に、スペースを通してICカードの一端部をボディの一端側へ移動させることができるから、ICカードの一端部が収納部の底部に当たってICカードの移動が妨げられることがなくなり、これによりICカードのカード用コネクタ装置への取り付けが容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ボディに設けた固定係止部と可動係止体とでICカードを収納部に固定してICカードをカード用コネクタに取り付けることができるため、別途カバーやカードホルダー等を用いる必要が無くなり、これにより簡単な構造でコンパクトなカード用コネクタを得ることができるという効果があり、可動係止体のボディの両端方向への移動によってICカードのカード用コネクタへの着脱作業を行えるため、ICカードの着脱作業を容易に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のカード用コネクタ装置の基本形態および実施形態について、図1乃至図11を参照して説明する。尚、以下の実施形態においては、説明の簡略化のために、図1(a)、図5(a)及び図9(a)における上方向をカード用コネクタ装置の一端側、下方向をカード用コネクタ装置の他端側、左方向をカード用コネクタ装置の左方、右方向をカード用コネクタ装置の右方、紙面手前側をカード用コネクタ装置の上方と表記するが、カード用コネクタ装置の実際の使用形態はこれらの方向に限られるものではない。
【0014】
(基本形態)
まず、本発明の基本形態のカード用コネクタ装置1について図7〜図11を参照して説明する。本基本形態のカード用コネクタ装置1は、図7(a)及び(b)に示すように、一面側に8つの接触端子101が露設されたICカード100の収納部2aを備えた略直方体の箱状のボディ2と、ICカード100の一面側が載置される収納部2aの底部から突出してICカード100の接触端子101に各別に弾接される6つの接触ばね片部6と、ボディ2の一端側に設けられて前記底部とでICカード100の一端部を狭持する平板状の固定係止部20と、ボディ2の他端側にボディ2の両端方向に移動自在に設けられた可動係止体5と、可動係止体5をボディ2の一端側へ付勢して、可動係止体5の一端側(ボディ2の一端側)に設けた係止片部5cと前記底部にてICカード100の他端部を狭持させる付勢手段であるばね片18とを具備している。
【0015】
本基本形態のカード用コネクタ装置1に取り付けられるICカード100としては、例えばmini−UICC(USIM Integrated Circuit Card)が用いられ、このmini−UICCは、従来から使用されているUICCの外形がおよそ25mm×15mmであるのに対して、外形がおよそ15mm×12mmの超小型のICカードである。このようなICカード100は、図7(b)に示すように、例えば合成樹脂を用いて略長方形の中空の平板状に形成され、短手方向の一端側における長手方向の一端角部が切り欠かかれたカード本体と、メモリやCPU等が構成されてカード本体に内包されるICチップと、該ICチップと外部回路等とを接続するために、カード本体の裏面の長手方向における両端側に、それぞれ短手方向に4つずつ露設された接触端子101とを備えている。
【0016】
ボディ2は、図8に示すように、6つの接触ばね片部6を備えたベース3と、ベース3の外側面に被着されるシェル4とから構成されている。
【0017】
ベース3は、収納部2aの底部となる平板部3aと、平板部3aの右端部に突設された側壁部3bと、平板部3aの他端側において、平板部3aの左右方向の両端部にそれぞれ突設された片部3c,3dとを一体に備えて合成樹脂からインサート成形されている。
【0018】
平板部3aは長方形の平板状に形成され、その右端側には、接触ばね片部6用の矩形状の孔部7aが平板部3aの上下に貫通して一端側から他端側にかけて3つ並設されるとともに、左端側に、上記孔部7aと同形状の孔部7bが孔部7aと同様にして3つ並設されている。また、図9(a)に示すように、平板部3aの左右方向における両端側の下面部には、ベース3をシェル4に支持させるための凹部8a,8b,8cが、平板部3aの左右方向において各孔部7a,7bと並行しないようにずらして、他端側から一端側に向けて凹部8a,8b,8cの順にそれぞれ並設されている。
【0019】
側壁部3bは、平板部3aよりも厚幅の略直方体状を有して平板部3aの右端部の一端側から他端側に亘って突設されており、側壁部3bの上面部は、平板部3aの上面部よりも上方に位置している。また、側壁部3bの平板部3a側を向いた左側面部の上端角部は面取りされてテーパ面に形成され、このテーパ面がICカード100を収納部2aへ誘導するガイド部となっている。
【0020】
片部3c,3dは、平板部3aよりも厚幅の略直方体状に形成されて、両片部3c,3dの上面部が平板部3aの上面部より上方に位置している。また、片部3c,3dの互いに対向する面の上端側には、可動係止体5を摺動自在に支持するためのスライドリブ9a,9bがそれぞれ突設され、加えて片部3c,3dの下面部からはシェル4をベース3に取り付けるための嵌入孔10a,10bがそれぞれ開口されている。
【0021】
ベース3は、上述の平板部3aと、側壁部3bと、一対の片部3c,3dとを一体に備えてインサート成形され、図9(a)に示すように、接触ばね片部6を備えた第1の端子体11及び第2の端子体12をそれぞれ3つずつ一体に備えている。
【0022】
第1の端子体11は、基端部から先端部にいくにつれて上方へ傾斜し、先端部がICカード100の接触端子101に弾接される接触ばね片部6と、基端部から先端部にいくにつれて下方へ傾斜しプリント基板等の外部回路に接続される端子部11aと、接触ばね片部6の基端部と端子部11aの基端部とを一体に連結する長方形の平板状の連結部11bとを備えて、弾性を有する導電性の金属板から長尺状に形成されている。
【0023】
第2の端子体12は、上述の接触ばね片部6と、上記端子部11aと同様に基端部から先端部にいくにつれて下方へ傾斜しプリント基板等の外部回路に接続するための端子部12aと、接触ばね片部6の基端部と端子部12aの基端部とを一体に連結するコ字状の連結部12bとを備えるとともに、連結部12bの一方の側片部から他方の側片部に向けて接触ばね片部6が突出され、連結部12bの他方の側片部から接触ばね片部6の突出方向と略同方向に端子部12aが突出されて、弾性を有する導電性の金属板から鉤状に形成されている。
【0024】
各端子体11,12は次のようにしてベース3に一体に備えられている。すなわち、各第1の端子体11は、図9(a)に示すように、孔部7aの右内側面から左方へ接触ばね片部6を突出させるとともに、ベース3の側壁部3bの右外側面から右方へ端子部11aを突出させて、ベース3に埋設されている。また、各第2の端子体12は、図9(a)に示すように、孔部7bの右内側面から左方へ接触ばね片部6を突出させるとともに、ベース3の平板部3aの左外側面から左方へ端子部12aを突出させて、ベース3に埋設されている。
【0025】
このようにしてベース3に備えられた端子体11,12の各接触ばね片部6は、それぞれ図10(a),(b)に示すように、先端部が平板部3aの上方に位置し、且つ、それぞれ対応する孔部7a,7bによって、上下方向に揺動自在に配置されている。
【0026】
可動係止体5は、合成樹脂を用いて略直方体状に形成されており、図8に示すように左右方向の両側部の下端側には、可動係止体5の一端部及び他端部が開口し片部3c,3dのスライドリブ9a,9bがそれぞれ摺動自在に嵌め合わされる溝部5a,5aがそれぞれ形成されている。また、図10(a)に示すように、可動係止体5の上端部の一端側には、平板部3aと反対側の上面部5bが、上端側から下端側にいくにしたがって一端側へ突出するように傾斜するテーパ面に形成されて、収納部2aの底部となる平板部3aとでICカード100を狭持する三角形状の係止片部5cが突設されている。さらに、可動係止体5の上端部の他端側には、図8に示すように一端側に向けて円弧状にへこんだばね片18弾接用の凹部5dが形成されている。
【0027】
シェル4は、図8に示すように、互いに並行する一対の側片部4a,4bと、各側片部4a,4bの基端側を一体に連結するストッパ部4cとを備えて、弾性を有する金属板から略コ字状の枠体に形成されている。
【0028】
側片部4aは、側壁部3bの右側面の両端方向における長さ寸法と略同寸法の長尺状に形成されており、基端側となる一端側の下端部に、平板部3aの右端側の凹部8a,8bとそれぞれ係合する支持突片13a,13bが、左方に向けて突設されている。また、側片部4aの先端側となる他端側の下端部に、片部3cの嵌入孔10aに嵌入される突部14aを備えた取付部14が左方に向けて突設されている。尚、突部14aは、図9(b)に示すように先端部を基端部よりも広幅に形成するとともに、該先端部を先細に形成してあり、これによりベース3の嵌入孔10aに挿入し易くし、且つ、嵌入孔10aから抜け難くしてある。
【0029】
加えて、取付部14と該取付部14に最も近い支持突片13aとの間の下端部に、右方に向けて脚部15が突設してあり、側片部4aの脚部15と支持突片13aとの間、支持突片13a,13b間、支持突片13bより基端側の下端部に、各第1の端子体11の端子部11aとシェル4との短絡防止のための切欠部16がそれぞれ形成されている。
【0030】
側片部4bは、図9(a)〜(c)に示すように、側片部4aよりも長い長尺状に形成されるとともに、高さ寸法を平板部3aの厚さ寸法よりも大きく形成されており、基端側となる一端側の下端部に、平板部3aの左端側の凹部8a,8b,8cとそれぞれ係合する支持突片13a,13b,13cが右方に向けて突設されている。また、側片部4bの先端側となる他端側の下端部に、片部3dの嵌入孔10bに嵌入される突部17aを備えた取付部17が右方に向けて突設されている。尚、突部17aは、上記の突部14aと同様に先端部を基端部よりも広幅に形成するとともに、該先端部を先細に形成してあり、これによりベース3の嵌入孔10bに挿入し易くし、且つ、嵌入孔10bから抜け難くしてある。
【0031】
加えて、図9(c)に示すように、取付部17と該取付部17に最も近い支持突片13aとの間の下端部、及び側片部4bの基端部の下端部に、左方に向けてそれぞれ脚部15,15が突設されており、側片部4bの先端側の脚部15と支持突片13aとの間、支持突片13a,13b間、支持突片13b,13c間の下端部に、各第2の端子体12の端子部12aとシェル4との短絡防止のための切欠部16がそれぞれ形成されている。さらに、側片部4bの上端部には、上方にいくにつれて左方に傾斜する平板状のガイド片4dが一体に突設されており、このガイド片4dがICカード100を収納部2a内へ誘導するガイド部となっている。
【0032】
ストッパ部4cは、側片部4bの基端部に、側片部4bに対して垂直右方向に一体に突設された長辺部19aと、長辺部19aの先端部に突設されて先端部にいくにしたがって他端側へ傾斜し、先端部が側片部4aの基端部に一体に連結された短辺部19bとを有してICカード100の一端部と当接する略く字状に形成されている。長辺部19aの上端部には、収納部2aの底部となる平板部3aとでICカード100の一端部を狭持する平板状の固定係止部20を他端側に向けて突設するとともに、この固定係止部20の先端部を図11(a)に示すように上方へ湾曲するように形成してあり、これによりICカード100の一端部を固定係止部20と平板部3aとの間に挿し入れ易くしてある。また、短辺部19bの下端部には、右方に向けて脚部15が突設されるとともに、平板部3aの右端側の凹部8cと係合する支持突片13cが左方に向けて突設されている。
【0033】
このように形成されたシェル4の側片部4bの先端部には、可動係止体5をボディ2の一端側へ付勢するためのばね片18が、基端側から先端側にいくにつれて一端側に近付くようにして一体に突設されている。加えて、ばね片18の先端部は一端側に湾曲する円弧状に形成されており、これによりばね片18の先端部を可動係止体5の凹部5dの側面に弾接させた際に、ばね片18の先端部と凹部5dの側面とがスムーズに摺動できるようになっている。
【0034】
上記のベース3と、シェル4と、可動係止体5とから本基本形態のカード用コネクタ装置1が構成されており、各部材は次のようにして取り付けられている。
【0035】
すなわち、可動係止体5とベース3とは、図9(a)に示すように、可動係止体5の係止片部5cをボディ2の一端側に向けるとともに、図9(b)に示すように、可動係止体5の溝部5a,5aに片部3c,3dのスライドリブ9a,9bをそれぞれ嵌め合わせて、可動係止体5がスライドリブ9a,9bに沿って摺動自在に取り付けられている。
【0036】
次に、ベース3には、図9(a)に示すようにベース3の下方からシェル4が被着され、ベース3の端子部11a,11a,11aがシェル4の側片部4aの切欠部16,16,16を、ベース3の端子部12a,12a,12aがシェル4の側片部4bの切欠部16,16,16をそれぞれ挿通するとともに、シェル4の両取付部14,17の突部14a,17aがベース3の両片部3c,3dの嵌入孔10a,10bに下方から各別に嵌入されている。そして、ベース3の右端側の凹部8a,8b,8cと側片部4aの支持突片13a,13b及び短辺部19bの支持突片13cとをそれぞれ係合させ、且つベース3の左端側の凹部8a,8b,8cと側片部4bの支持突片13a,13b,13cとをそれぞれ係合させ、同時に、ばね片18の先端部を可動係止体5の凹部5dの側面に弾接させて、図7(a)に示すように、シェル4がベース3に被着されている。このとき、可動係止体5は、ばね片18によりボディ2の一端側へ付勢されて、可動係止体5の一端側の下端部と平板部3aの他端部とが当接し、且つ可動係止体5の係止片部5cがベース3の平板部3aの上方において平板部3aと重複する位置に配置されることになる。
【0037】
ところで、シェル4は、上述したように両側片部4a,4bの長さ寸法をベース3の両端方向の長さ寸法よりも大きく形成してあるため、シェル4をベース3に被着した際には、図7(a)に示すように、ベース3の平板部3aの一端側とシェル4のストッパ部4cとが所定の間隙を有して配置されることになる。そのため、ICカード100をカード用コネクタ装置1の収納部2aに挿し入れる際に、図11(a)に示すように、この間隙をICカード100の一端部の移動用スペースとして用いることができ、そのためICカード100の一端部が収納部2aの底部である平板部3aに当たってICカード100の移動が妨げられることがなくなるとともに、ICカード100の収納部2aへの挿し込み角度を大きくとることができる。これにより、ICカード100を収納部2aに収納し易くなって、ICカード100のカード用コネクタ装置1への取付作業が容易に行えるようになる。また、このような移動用スペースを設けることで固定係止部20の長さ寸法を十分に確保することができるようになり、ICカード100をカード用コネクタ装置1に強固に取り付けることができるようになる。
【0038】
このようにして本基本形態のカード用コネクタ装置1は構成されており、このカード用コネクタ装置1のボディ2には、平板部3aを底部とし、ベース3の側壁部3b及び片部3c,3dと、シェル4の側片部4b及びストッパ部4cとを周壁とするICカード100用の収納部2aが形成され、加えて上述した側壁部3bの左側面部のテーパ面と側片部4bのガイド片4dとによって、収納部2aの開口縁部にICカード100を収納部2aに誘導するガイド部が構成されている。また、ICカード100をカード用コネクタ装置1に取り付ける際にはストッパ部4cがICカード100の一端部と当接してICカード100が位置決めされるため、ICカード100の取付作業をさらに容易に行うことができる。
【0039】
次にカード用コネクタ装置1にICカード100を取り付ける際のカード用コネクタ装置1の動作について、図10及び図11を用いて説明する。
【0040】
カード用コネクタ装置1にICカード100を取り付ける際には、図11(a)に示すように、ICカード100の一端部を下方に向けて、該一端部を収納部2aの固定係止部20の下方へ挿し入れていくとともに、図10(a)に示すように、ICカード100の他端部を下方へ押し込んでいく。このとき、側片部4bのガイド片4dと側壁部3bのテーパ面とがICカード100を収納部2aへ誘導するガイド部としての役割を果たすので、ICカード100を収納部2aに挿し入れ易くなっている。また、ベース3とシェル4のストッパ部4cとの間に間隙が設けられているので、この間隙を通してICカード100の一端部をストッパ部4c側へ移動させることができ、そのためICカード100の一端部が収納部2aの底部に当たってICカード100の移動が妨げられることがなく、これによってもICカード100を収納部2aに挿し入れ易くなっている。
【0041】
このようにICカード100を押し込んでいくと、やがて図11(b)に示すようにICカード100の他端部の下端が可動係止体5の上面部5bに当接する。ここからさらにICカード100の他端部を押し込んでいくと、ICカード100の他端部は、可動係止体5の上面部5bに沿って下方へ摺動していき、このとき可動係止体5はICカード100の押し込みによる外力によって、ばね片18の付勢に抗して固定係止部20から離間する方向、すなわちボディ2の他端側へスライドリブ9a,9bに沿って移動していき、やがて係止片部5cが平板部3aと重複しない位置まで移動して、ICカード100を収納部2aに収納できるようになる。そして、ICカード100が収納部2aに収納されると、ICカード100はその一端部がストッパ部4cに当接されて位置決めされるとともに、ICカード100の最も一端側に位置する接触端子101はベース3とシェル4との間隙からボディ2の下方に露出し、残りの接触端子101には図10(b)に示すように平板部3aから突出した接触ばね片部6が弾接される。
【0042】
このように収納部2aに位置したICカード100は、各接触ばね片部6の付勢力によって平板部3aから浮き上がろうとするが、ICカード100は一端部が固定係止部20と平板部3aとで狭持されるとともに、他端部が、図7(b)及び図10(a)に示すようにICカード100からの外力から開放されてばね片18により元の位置に復帰した可動係止体5の係止片部5cと平板部3aとで狭持されるから、ICカード100を平板部3aから浮き上がることなく確実に収納部2aに固定することができる。
【0043】
また、カード用コネクタ装置1からICカード100を取り外す際には、可動係止体5をばね片18の付勢に抗してボディ2の他端側へ移動させて、係止片部5cと平板部3aとによるICカード100の他端部の狭持状態を解除すれば、ICカード100は接触ばね片部6によってカード用コネクタ装置1の上方へ浮き上がるから、カード用コネクタ装置1からICカード100を簡単に取り外すことができる。
【0044】
本基本形態のカード用コネクタ装置1によれば、ボディ2に設けた固定係止部20と可動係止体5とでICカード100を収納部2aに固定してICカード100をカード用コネクタ装置1に取り付けることができるため、別途カバーやカードホルダー等を用いる必要が無くなり、これにより簡単な構造でコンパクトなカード用コネクタ装置1を得ることができる。また、可動係止体5のボディ2の両端方向への移動によってICカード100のカード用コネクタ装置1への着脱作業を行えるため、ICカード100の着脱作業を容易に行うことができる。しかも、可動係止体5にテーパ面を形成してあるため、ICカード100の他端部で上面部5bを押し込むことで可動係止体5をばね片18の付勢に抗して移動させることができ、これによりICカード100をワンタッチでカード用コネクタ装置1に取り付けることができ、またICカード100を取り外す際には、可動係止体5を他端側に移動させて平板部3aとによるICカード100の狭持を解除すれば、接触ばね片部6の付勢によりICカード100が収納部2aから浮き上がることになり、これによりICカード100を容易にカード用コネクタ装置1から取り外すことができる。また、カード用コネクタ装置1を、ベース3、シェル4、及び可動係止体5の3部品から構成することができるため、部品点数を削減でき、これによりさらに簡単な構造となり、また組立作業を容易に行うことができる。
【0045】
(実施形態)
上述した基本形態のカード用コネクタ装置1は、ベース3、シェル4、及び可動係止体5の3部品から構成してあるが、本実施形態のカード用コネクタ装置21は、さらに部品点数を少なくして、図2(a),(b)に示すように、可動係止体とその付勢手段となるばね片を一体に備えた係止金具22と、固定係止部、第1の端子体、及び第2の端子体を一体に備えたボディ26との2部品から構成したことに特徴があり、上記基本形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
係止金具22は、図3に示すように、可動係止体23と一対のばね片24,24とを一体に備えて弾性を有する金属板から形成され、一対のばね片24,24の各先端部に同一の可動係止体23が一体に突設されている。
【0047】
ばね片24は、長尺状の長辺部24aと、該長辺部24aの基端部から上方へ向けて延設された矩形枠状の短辺部24bとを備えて略L字状に形成され、短辺部24bはボディ26の他端側へ折り曲げられて逆V字状に形成されている。
【0048】
この一対のばね片24,24の各先端部は、平板状の橋絡片23aにより直線状に一体に連結され、該橋絡片23aの上端部にはボディ26の一端側へ係止部23bが突設され、該係止部23bの先端部には係止部23bから上方へいくほど他端側に傾斜する斜辺部23cが突設されている。この橋絡片23aと係止部23bと斜辺部23cとから可動係止体23が構成され、係止部23bと斜辺部23cとが可動係止体23の係止片部23dとなっている。また、この係止片部23dの略中央部には、係止部23bと斜辺部23cに亘って矩形状の孔部25が形成されている。
【0049】
ボディ26は、図1(a)に示すように、インサート成形されて略中央部にICカード100の収納部26aが形成された箱状のボディ本体27に、3つの第1の端子体11と、3つの第2の端子体12と、一対の固定係止部28,28とを一体に備えている。
【0050】
ボディ本体27は、合成樹脂を用いてICカード100の外形よりもやや大きめに形成された凹部からなるICカード100の収納部26aを有する略直方体の箱状に形成され、収納部26aの一端側の内側面がICカード100の一端部と当接してICカード100の位置決めをするストッパとなっている。また、収納部26aの底部27aは、図1(c)に示すように、その一端側の上面部27bが該一端側にいくにつれて下方に向かって傾斜する傾斜面に形成されて、ICカード100の取付時にICカード100の一端部を一時的に挿し入れる移動用スペースが設けられており、また上面部27bの左右方向の両端側には、それぞれ底部27aの表裏に貫通する矩形状の接触孔27c,27cが形成されている。加えて、底部27aの右端側には、接触ばね片部6用の矩形状の孔部29aが底部27aの上下に貫通して一端側から他端側にかけて3つ並設されるとともに、長手方向の左端側に、上記孔部29aと同形状の孔部29bが孔部29aと同様に3つ並設されている。さらに、収納部26aは、図1(a)に示すように、ボディ本体27の左右方向の両端側、及び他端側の開口縁部が底部27aに向かって傾斜するテーパ面27dに形成されており、このテーパ面27dがICカード100を収納部26aに誘導するガイド部となっている。
【0051】
さらに、ボディ本体27の他端側の下部には、図1(a),(b)に示すように、係止金具22をボディ26に取り付けるための取付穴部30が形成されている。取付穴部30は、左右方向の両端部に、ばね片24の基端部となる短辺部24bがそれぞれ嵌入される一対の第1の穴部30a,30aと、両穴部30a,30aに亘って溝状に形成され、両ばね片24の長辺部24a及び可動係止体23がボディ26の両端方向に移動自在に挿し入れられる第2の穴部30bとを有している。
【0052】
第1の穴部30aは、図1(c)に示すように、ボディ本体27の表裏に貫通する矩形状の孔であり、この第1の穴部30aの内側面には、ボディ本体27の一端側の上端部に、短辺部24bの折曲部位が下面部に当接される第1のリブ31aが突設されるとともに、ボディ本体27の他端側の下端部に、短辺部24bの先端部が上面部に当接される第2のリブ31bが突設され、これら第1のリブ31a及び第2のリブ31bが係止金具22の抜け止めとなっている。
【0053】
第2の穴部30bは、図1(a)に示すように、ボディ本体27の左右方向の両端部で第1の穴部30a,30aとそれぞれ連通し、この左右方向の両端部から中央側へいくにつれて、ボディ本体27の他端側へ広がる溝状に形成されて、係止金具22がボディ26の他端側へ撓むことができるようになっている。また、第2の穴部30bの中央部は、係止片部23dを収納部26aの上方へ突出させるためにボディ本体27の他端側から収納部26aの底部27aに亘って開口している。
【0054】
一方、ボディ本体27の他端側には、その左右方向の略中央部の上面部に、矩形状の突部33が一体に突設され、該突部33の一端側の側面部33aは、可動係止体23の斜辺部23cと同様に下方から上方へいくにつれてボディ26の他端側に向かうように傾斜するとともに、この側面部33aには、係止片部23dに形成された孔部25に突退出自在な矩形状の押えリブ33bが突設してある。
【0055】
而して、ボディ26はインサート成形されて、図1(a)に示すように、接触ばね片部6を備えた第1の端子体11及び第2の端子体12をそれぞれ3つずつ一体に備えるとともに、一対の固定係止部28,28を一体に備え、各端子体11,12及び固定係止部28は、次のようにして配置されている。
【0056】
すなわち、各第1の端子体11は、図1(a)に示すように、孔部29aの右内側面から左方へ接触ばね片部6を突出させるとともに、ボディ本体27の右外側面から右方へ端子部11aを突出させて、ボディ本体27に埋設されている。また、各第2の端子体12は、図1(a)に示すように、孔部29bの右内側面から左方へ接触ばね片部6を突出させるとともに、ボディ本体27の左外側面から左方へ端子部12aを突出させて、ボディ本体27に埋設されている。このようにして配置された各端子体11,12の接触ばね片部6は、それぞれ図1(b)に示すように、先端部が底部27aの上方に位置し、且つ、それぞれ対応する孔部29a,29bによって、上下方向に揺動自在に配置されている。
【0057】
一方、固定係止部28は、底部27aとでICカード100の一端部を狭持する平板部28aと、平板部28aの基端部に一体に突設された長尺状の端子部28bとを備えて導電性の金属板から略L字状に形成され、平板部28aの先端部はICカード100を収納部26aに挿し入れ易くするために図1(c)に示すように、上方に向けて湾曲するように形成されている。
【0058】
この固定係止部28,28は、図1(a)に示すように、各平板部28a,28aをボディ本体27の一端側から他端側に向けて収納部26aの接触孔27c,27cとそれぞれ重複するように突出させるとともに、各端子部28b,28bをボディ本体27の左右方向における両側面部からそれぞれ突出させて、ボディ本体27に埋設されている。
【0059】
以上により構成された係止金具22とボディ26とから本実施形態のカード用コネクタ装置21が構成されており、係止金具22はボディ26に次のようにして取り付けられている。
【0060】
すなわち、係止金具22は、ボディ26の下方から取付穴部30に挿し入れられ、可動係止体23を第2の穴部30bの中央部から収納部26aの上方へ突出させるとともに、両ばね片24の短辺部24bを撓めてそれぞれ第1の穴部30aに嵌入して、両短辺部24bの折曲部位を第1のリブ31aの下面部に当接させてボディ26に取り付けられている。このように係止金具22をボディ26に取り付けた際には、嵌入時は撓められていた短辺部24bが復帰して、短辺部24bの先端部が第2のリブ31bの上面部に当接することになるから、係止金具22がボディ26から脱落することを防止できる。また、図1(c)に示すように、係止金具22の係止部23bの上面部には、突部33に突設された押えリブ33bが当接されることになり、これにより底部28aとでICカード100を狭持した際に、ICカード100に弾接する接触ばね片部6の付勢力によって係止部23bが上方向へ撓ませられて変形してしまうことを防止することができる。
【0061】
上記のようにして本実施形態のカード用コネクタ装置21は構成されており、次にカード用コネクタ装置21にICカード100を取り付ける際のカード用コネクタ装置21の動作について説明する。
【0062】
このカード用コネクタ装置21にICカード100を取り付ける際には、図4に示すように、ICカード100の一端部を下方に向けて、該一端部を収納部26aの固定係止部28と上面部27bとの間に挿し入れていくとともに、ICカード100の他端部を下方へ押し込んでいく。このとき、上述したように、ボディ本体27に形成したテーパ面27dがICカード100を収納部26aへ誘導するガイド部となり、これによりICカード100を収納部26aに挿し入れ易くなっている。また、上面部27bを上述したように傾斜させているので、このスペースを通してICカード100の一端部を移動させることができ、そのためICカード100の一端部が底部27aに当たってICカード100の移動が妨げられることがなく、これによってもICカード100を収納部26aに挿し入れ易くなっている。
【0063】
上記のようにICカード100を押し込んでいくと、やがてICカード100の他端部の下端が可動係止体23の斜辺部23cに当接する。ここからさらにICカード100の他端部を押し込んでいくと、ICカード100の他端部は、可動係止体23の斜辺部23cに沿って下方へ摺動していき、このとき可動係止体23はICカード100の押し込みによる外力によって、両ばね片24の付勢に抗して固定係止部28から離間する方向、すなわちボディ26の他端側へ移動し、やがて係止片部23dがICカード100の移動を妨げない位置まで移動して、ICカード100を収納部26aに収納できるようになる。このとき係止部23bの変形を防止するための押えリブ33bは、係止辺部23dの孔部25を挿通するため、可動係止体23の移動の邪魔になることがない。
【0064】
そして、ICカード100が収納部26aに収納された際には、ICカード100は一端部がストッパとなる収納部26aの一端側の内側面に当接されて位置決めされるとともに、ICカード100の最も一端側に位置する接触端子101が、両接触孔27c,27cからボディ26の下方に露出し、残りの接触端子101に図1(b)に示すように底部27aから突出した接触ばね片部6がそれぞれ弾接される。
【0065】
このように収納部26aに位置したICカード100は、各接触ばね片部6の付勢力によって収納部26aから浮き上がろうとするが、その一端部が固定係止部28,28と底部27aとで狭持されるとともに、他端部が、図1及び図2(b)に示すようにICカード100からの外力から開放されてばね片24,24により元の位置に復帰した可動係止体23の係止片部23dと収納部26aの底部27aとで狭持されるから、ICカード100をカード用コネクタ装置21の収納部26aから浮き上がることなく確実に収納部26aに固定することができる。
【0066】
カード用コネクタ装置21からICカード100を取り外す際には、可動係止体23をばね片24の付勢に抗してボディ26の他端側へ移動させて、係止片部23dと底部27aとによるICカード100の他端部の狭持状態を解除すれば、ICカード100は接触ばね片部6によってカード用コネクタ装置21の上方へ浮き上がるから、カード用コネクタ装置21からICカード100を簡単に取り外すことができる。
【0067】
本実施形態のカード用コネクタ装置21によれば、上記基本形態と同様に、ボディ26に設けた固定係止部28と可動係止体23とでICカード100を収納部26aに固定してICカード100をカード用コネクタ装置21に取り付けることができるため、別途カバーやカードホルダー等を用いる必要が無くなり、これにより簡単な構造でコンパクトなカード用コネクタを得ることができ、且つ可動係止体23のボディ26の両端方向への移動によってICカード100のカード用コネクタ装置21への着脱作業を行えるため、ICカード100の着脱作業を容易に行うことができる。加えて、本実施形態のカード用コネクタ装置21は、係止金具22とボディ26の2部品で構成してあるので、上記基本形態よりもさらに簡単な構造で、且つ安価なコンパクトなカード用コネクタ装置を得ることができ、しかも、係止金具22をボディ26に挿し入れるだけで係止金具22をボディ26に取り付けることができるから、係止金具22の取り付けをワンタッチで行え、簡単に組立てることができる。
【0068】
ところで、本実施形態の固定係止部は、上述したように金属板から形成されるものに限られるものではなく、合成樹脂から形成してボディに一体に形成することとしてもよく、このときのカード用コネクタ装置21´を図5及び図6に示す。
【0069】
このカード用コネクタ装置21´のボディ34は、図5(a)に示すように、インサート成形されて略中央部にICカード100の収納部34aが形成された箱状のボディ本体35に、3つの第1の端子体11と、3つの第2の端子体12とを一体に備えている。
【0070】
ボディ本体35は、合成樹脂を用いてICカード100の外形よりもやや大きめに形成された凹部からなるICカード100の収納部34aを有する略直方体の箱状に形成されている。この収納部34aの底部35aは、図5(a)に示すように、底部35aの一端側に底部35aの表裏に貫通する開口部35bが形成され、この開口部35bが、ICカード100の取付時に、ICカード100の一端部を一時的に挿し入れるためのスペースとなっている。
【0071】
加えて、底部35aの右端側には、接触ばね片部6用の矩形状の孔部36aが底部35aの上下に貫通して一端側から他端側にかけて3つ並設されるとともに、左端側に、上記孔部36aと同形状の孔部36bが孔部36aと同様にして3つ並設されている。さらに、ボディ本体35の左端側の下面部には、各孔部36bと左右方向において並行するように矩形状の溝部37が形成されている。
【0072】
また、収納部34aは、図5(a)に示すように、ボディ本体35の左右方向の両端側、及び他端側の開口縁部が底部35aに向かって傾斜するテーパ面35cに形成されており、このテーパ面35cがICカード100を収納部34aに誘導するガイド部となっている。加えて、収納部34aの一端側の内側面には、その上端部に他端側へ向けて平板状の固定係止部35dが一体に突設され、この固定係止部35dは、ボディ34の他端側の下端角部が面取りされてテーパ状に形成され、これにより、ICカード100を収納部34aに挿し入れ易くしてある。
【0073】
一方、ボディ本体35の他端側の下面側には、係止金具22を取り付けるために、図5(c)及び図6(a)〜(b)に示すように、上述の取付穴部30が形成されている。また、ボディ本体35の他端側の上面部には、上述の突部33が一体に突設されている。
【0074】
このようにしてボディ34は、インサート成形されて、図5(a)に示すように接触ばね片部6を備えた第1の端子体11及び第2の端子体12をそれぞれ3つずつ一体に備え、各端子体11,12は、次のようにして配置されている。
【0075】
すなわち、各第1の端子体11は、図5(a)に示すように、孔部36aの右内側面から左方へ接触ばね片部6を突出させるとともに、ボディ本体35の右外側面から右方へ端子部11aを突出させて、ボディ本体35に埋設されている。また、各第2の端子体12は、図5(a)に示すように、孔部36bの右内側面から左方へ接触ばね片部6を突出させるとともに、各孔部36bにそれぞれ対応する溝部37の右内側面から左方へ端子部12aを突出させて、ボディ本体35に埋設されている。このようにして配置された各端子体11,12の接触ばね片部6は、それぞれ図5(b)に示すように、先端部が底部35aの上方に位置し、且つ、それぞれ対応する孔部36a,36bによって、上下方向に揺動自在に配置されている。
【0076】
このように構成されたボディ34には、係止金具22が上述したように取り付けられてカード用コネクタ装置21´が構成され、次にカード用コネクタ装置21´にICカード100を取り付ける際のカード用コネクタ装置21´の動作について説明する。
【0077】
このカード用コネクタ装置21´にICカード100を取り付ける際には、図6(a)に示すように、ICカード100の一端部を下方に向けて、該一端部を収納部34aの固定係止部35dの下面側へ挿し入れていくとともに、ICカード100の他端部を下方へ押し込んでいく。このとき、上述したように、ボディ本体35に形成したテーパ面35cがICカード100を収納部34aへ誘導するガイド部となり、これによりICカード100を収納部34aに挿し入れ易くなっている。また、底部35aに開口部35bを形成しているので、この開口部35bをICカード100の一端部の移動用スペースとして用いることができ、そのためICカード100の一端部が収納部34aの底部35aに当たってICカード100の移動が妨げられることがなくなるとともに、ICカード100の収納部34aへの挿し込み角度を大きくとることができる。これにより、ICカード100を収納部34aに収納し易くなって、ICカード100のカード用コネクタ装置21´への取付作業が容易に行えるようになる。また、このような移動用スペースを設けることで固定係止部35dの長さ寸法を十分に確保することができるようになり、ICカード100をカード用コネクタ装置21´に強固に取り付けることができるようになる。
【0078】
上記のようにICカード100を押し込んでいくと、やがてICカード100の他端部の下端が可動係止体23の斜辺部23cに当接する。ここからさらにICカード100の他端部を押し込んでいくと、ICカード100の他端部は、可動係止体23の斜辺部23cに沿って下方へ摺動していき、このとき可動係止体23はICカード100の押し込みによる外力によって、両ばね片24の付勢に抗して固定係止部35dから離間する方向、すなわちボディ34の他端側へ移動し、やがて係止片部23dがICカード100の移動を妨げない位置まで移動して、ICカード100を収納部34aに収納できるようになる。このとき係止部23bの変形を防止するための押えリブ33bは、係止辺部23dの孔部25を挿通するため、可動係止体23の移動の邪魔になることがない。
【0079】
そして、ICカード100が収納部34aに収納された際には、ICカード100は一端部がストッパとなる収納部34aの一端側の内側面に当接されて位置決めされるとともに、最も一端側に位置する接触端子101が、開口部35bからボディ34の下方に露出し、残りの接触端子101に図5(b)に示すように底部35aから突出した接触ばね片部6がそれぞれ弾接される。
【0080】
このように収納部34aに位置したICカード100は、各接触ばね片部6の付勢力によって収納部34aから浮き上がろうとするが、その一端部が固定係止部35dと底部35aとで狭持されるとともに、他端部が、図5(a)及び図6(a)に示すようにICカード100からの外力から開放されて両ばね片24により元の位置に復帰した可動係止体23の係止片部23dと収納部34aの底部35aとで狭持されるから、ICカード100をカード用コネクタ装置21´の収納部34aから浮き上がることなく確実に収納部34aに固定することができる。
【0081】
カード用コネクタ装置21´からICカード100を取り外す際には、可動係止体23をばね片24の付勢に抗してボディ34の他端側へ移動させて、係止片部23dと底部35aとによるICカード100の他端部の狭持状態を解除すれば、ICカード100は接触ばね片部6によってカード用コネクタ装置21´の上方へ浮き上がるから、カード用コネクタ装置21´からICカード100を簡単に取り外すことができる。
【0082】
このカード用コネクタ装置21´によれば、上記のカード用コネクタ装置21と同様の効果を奏することができ、加えて、固定係止部を合成樹脂から形成してボディ34に一体に形成してあるので、固定係止部を金属板から形成した上記のカード用コネクタ装置21に比べて製造コストを低く抑えることができる。
【0083】
尚、本発明のカード用コネクタ装置は、本実施形態及び上記基本形態に示すような接触ばね片部を6つ備えたものに限られるものではなく、また、使用するICカードもmini−UICCに限られるものではなく、その他一般的に使用されるICカードやSIMカード等を使用することができ、加えて、カード用コネクタ装置の形状も使用するICカードの形状に応じて好適な形状に形成して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(a)は本発明の実施形態のカード用コネクタ装置においてICカードを透過した上面図であり、(b)は同上の側面図であり、(c)は同上の一部を透視した側面図である。
【図2】(a)は同上のカード用コネクタ装置の斜視図であり、(b)は同上においてICカードが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図3】同上における係止金具を示す斜視図である。
【図4】同上のカード用コネクタ装置のICカードを透過した斜視図である。
【図5】(a)は同上の他のカード用コネクタ装置のICカードを透過した上面図であり、(b)は同上のカード用コネクタ装置の一部を透視した側面図であり、(c)は同上のカード用コネクタ装置の一部を省略した下面図である。
【図6】(a)は同上のカード用コネクタ装置の一部を透視した側面図であり、(b)は図10(a)のA−A矢視線における部分断面図であり、(c)は図10(a)のB−B矢視線における部分断面図である。
【図7】(a)は本発明の基本形態のカード用コネクタ装置の斜視図であり、(b)はICカードが取り付けられた同上のカード用コネクタ装置を示す斜視図である。
【図8】同上のカード用コネクタ装置の分解斜視図である。
【図9】(a)はICカードが取り付けられた同上のカード用コネクタ装置のICカードを透過した上面図であり、(b)は同上のカード用コネクタ装置の側面図であり、(c)は同上のカード用コネクタ装置の可動係止体を省略した他方からの側面図である。
【図10】(a)は図3(a)のA−A矢視線における概略断面図であり、(b)は図3(a)のB−B矢視線における部分断面図である。
【図11】(a)は同上のカード用コネクタ装置のICカード取付時の斜視図であり、(b)は同上のカード用コネクタ装置のICカード取付時のその他の斜視図である。
【符号の説明】
【0085】
1 カード用コネクタ装置
6 接触ばね片部
23 可動係止体
23d 係止片部
24 ばね片
26 ボディ
26a 収納部
27a 底部
28 固定係止部
100 ICカード
101 接触端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に複数の接触端子が露設されたICカードの収納部を備えたボディと、前記ICカードの一面側が載置される前記収納部の底部から突出して前記ICカードの接触端子に各別に弾接される複数の接触ばね片部と、前記ボディの一端側に設けられて前記底部とで前記ICカードの一端部を狭持する固定係止部と、前記ボディの他端側に前記ボディの両端方向に移動自在に設けられた可動係止体と、前記可動係止体を前記ボディの一端側へ付勢して、前記可動係止体の一端部に設けた係止片部と前記底部にて前記ICカードの他端部を狭持させる付勢手段とを具備し、
前記可動係止体と前記付勢手段は、弾性を有する金属材料から形成され、前記可動係止体は、前記付勢手段の先端部に一体に突設されて、前記付勢手段の基端部で前記ボディに取り付けられ、
前記ボディには、前記係止片部における前記底部との反対面に当接する押えリブが突設されていることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
前記ボディの一端側における前記収納部の底部に、前記ICカードの取付時に、該ICカードの一端部を一時的に挿し入れるスペースを設けたことを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−311366(P2007−311366A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214187(P2007−214187)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【分割の表示】特願2004−238742(P2004−238742)の分割
【原出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】