説明

カード用コネクタ

【課題】ハウジングを大型化することなくカードの検知位置の設定の自由度を向上させることができるカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】検知スイッチ10はカードにより直接に押圧され回動操作される絶縁性のレバー11と、このレバー11を初期姿勢の方向に付勢するトーションスプリング14と、レバー11と一体的に回動しハウジング本体3の底部3aに対して摺接するトーションスプリング14と一体の可動導電部と、ハウジング2の前端で底部3aに対し起立しトーションスプリング14を介して可動導電部と常時導通した第1固定導電部16と、可動導電部の回動範囲内で底部3a側に第2固定導電部17A,17Bおよび絶縁部18とを有する。可動導電部はレバー11と一体的に挿入方向に回動し、第2固定導電部17A、絶縁部18、第2固定導電部17Bに順次接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードをハウジングに挿入して装着するカード用コネクタであって、ハウジング内でカードの挿入を検知するレバー操作式の検知スイッチを備えたカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のカード用コネクタにおいて、カードにより直接押圧されて回動操作される絶縁性のレバーと、このレバーを所定の初期姿勢の方向に付勢する付勢部材とが設けられている。カードの挿入方向におけるハウジングの前端にはハウジングの底部から起立した壁面が設けられている。レバーには可動導電部が、そのレバーと一体的に回動可能に設けられている。その可動導電部はレバーが初期姿勢をとった状態において壁面から離れて位置し、カードによるレバーの回動操作に伴ってその壁面に接触する。その壁面は、ハウジングの幅方向に間隔をあけて並んだ第1,第2固定導電部を含んでいる。可動導電部は第1固定導電部に常時導通していて、カードによるレバーの回動操作に伴い第2固定導電部に接触する。つまり、レバーと付勢部材と可動導電部と第1固定導電部と第2固定導電部とから、ハウジング内でカードの挿入を検知する検知スイッチが構成されている。
【0003】
付勢部材および可動導電部はそれぞれ別個の導電性のトーションスプリングで構成されている。これらのトーションスプリングは、ハウジングの底部に平行な方向に弾性変形する姿勢でレバーの長手方向に並んで位置し、一体に形成されている。ここでは、付勢部材を構成しているトーションスプリングを付勢トーションスプリングと呼称し、可動導電部を構成しているトーションスプリングを可動トーションスプリングと呼称して、これらのトーションスプリングについて説明する。
【0004】
付勢トーションスプリングはハウジングとレバーとの間でレバーを初期姿勢の方向に付勢するよう設けられていることに加えて、一方の腕部が第1固定導電部に常時接触した状態に保持されている。可動トーションスプリングは一方の腕部において、付勢トーションスプリングの他方の腕部と電気的に導通していて、これによって第1固定導電部と常時導通している。
【0005】
可動トーションスプリングの他方の端部は、レバーが初期姿勢をとった状態において第2固定導電部から離れて位置している。レバーがカードに押圧されて回動操作されたことで初期姿勢(回動角度0°)から所定角度だけ回動すると、すなわちカードがハウジングに対して所定位置まで挿入されると、可動トーションスプリングの他方の腕部は第2固定導電部に接触し、これにより第1,第2固定導電部が付勢トーションスプリングと可動トーションスプリングとを介して導通する。つまりカードの挿入が検知される。その後、可動トーションスプリングは他方の腕部が第2固定部材に押し付けられることで弾性変形し、これによって、カードによるレバーの回動操作、すなわち、所定位置よりも前方へのカードの移動が許容される。
【0006】
ここで説明した従来のカード用コネクタについては特許文献1を参照されたい。
【特許文献1】特開2005−134978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、従来のカード用コネクタにおける検知スイッチは、カードがハウジング内の所定位置まで挿入されると可動導電部が第2固定導電部に接触してオンする。そして、可動トーションスプリングの弾性変形によってカードが所定位置よりも前方に挿入されることを許容する。
【0008】
カード用コネクタの検知スイッチに対しては、カードを検知する位置(以下「検知位置」という)の設定の自由度を向上させることが要望されている。前述した従来のカード用コネクタの検知スイッチにおいて、検知位置をカードの挿入方向と反対方向にずらす変更を行う場合、レバーが初期姿勢をとった状態における可動トーションスプリングの他端と第2固定導電部との距離が短くなるよう可動トーションスプリングの他端側を延長することが考えられる。この場合、カードの装着に必要なハウジングに対するカードの挿入方向への移動量は検知位置が変更されても変わらないので、検知位置を挿入方向と反対方向にずらした分だけ、ハウジング内における検知位置から前方へのカードの移動量は長くなる。これに伴い、可動トーションスプリングとしては、その長くなったカードの移動量を許容するだけの弾性変形が可能なものを用いなければならず、その可動トーションスプリングは検知位置をずらす前に用いていたものよりも、巻き数が増加したものになる。そして、巻き数が増加した可動トーションスプリングを用いるためには、この可動トーションスプリングの格納スペースを確保するためにハウジングを大型化することが必要になる。このことは最近のカード用コネクタの小型化の傾向に反するため、好ましくない。
【0009】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ハウジングを大型化することなく、カードの検知位置の設定の自由度を向上させることができるカード用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前述の目的を達成するために次のように構成されている。
【0011】
〔1〕 本発明は、カードが挿入されるハウジングと、前記ハウジング内で前記カードを検知するレバー操作式の検知スイッチとを備え、前記検知スイッチは、前記カードにより直接または間接的に押圧されて回動操作される絶縁性のレバーと、このレバーを所定の初期姿勢の方向に付勢する付勢部材と、前記レバーと一体的に回動し前記ハウジングの底部に沿って回動する可動導電部と、前記カードの挿入方向における前記ハウジングの前端において前記ハウジングの底部に対して起立し前記可動導電部と常時導通した第1固定導電部と、前記可動導電部の回動範囲内において前記ハウジングの底部側に設けられている第2固定導電部と、前記可動導電部の回動範囲内において前記ハウジングの底部側で前記第2固定導電部と隣り合って位置する絶縁部とを有し、
前記第2固定導電部および前記絶縁部の配置は、前記可動導電部が前記レバーの回動に伴い、前記検知スイッチの状態を前記絶縁部に接触したオフ状態から前記第2固定導電部に接触したオン状態に変移させ、または、前記オン状態から前記オフ状態に変移させるよう設定され、
前記オン状態または前記オフ状態は、前記カードが前記ハウジングに対して所定位置にある状態とが対応付けられた
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【0012】
この「〔1〕」に記載の本発明は、可動導電部がレバーと一体的に回動しハウジングの底部に沿って回動するようになっている。そして、第2固定導電部および絶縁部が、可動導電部の回動範囲内においてハウジングの底部側で互いに隣り合って位置している。これらにより、カードの検知後のカードの挿入方向への移動の許容を、可動導電部の弾性変形によることなく実現できる。したがって、ハウジングを大型化することなく、カードの検知位置の設定の自由度を向上させることができる。
【0013】
〔2〕 本発明は、「〔1〕」に記載の発明において、前記付勢部材は導電性のトーションスプリングであり、前記トーションスプリングの一方の腕部が前記第1固定導電部に常時導通していて、他方の腕部が前記可動電導部と導通していることを特徴とする。
【0014】
この「〔2〕」に記載の本発明によれば、付勢部材としてのトーションスプリングが第1固定導電部と可動導電部とを導通させるための部材を兼ねているので、部品点数の削減に貢献できる。
【0015】
〔3〕 本発明は「〔2〕」に記載の発明において、前記可動電動部は前記トーションスプリングの他方の腕部に一体に形成されていることを特徴とする。
【0016】
この「〔3〕」に記載の本発明によれば、可動導電部としてトーションスプリングと別個の部材を用いる必要がないので、部品点数の削減に貢献できる。
【0017】
〔4〕 本発明は「〔2〕」に記載の発明において、前記可動導電部は前記トーションスプリングと別体であり、前記可動導電部には、前記トーションスプリングの弾性力に抗して前記トーションスプリングの他方の腕部を係止する係止部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この「〔4〕」に記載の本発明によれば、レバーにトーションスプリングの他方の腕部に対する係止部を設けなくて済む。また、可動導電部の係止部にトーションスプリングの他方の腕部がトーションスプリングの弾性力により押し付けられるので、可動導電部とトーションスプリングとを確実に導通させることができる。さらに、可動導電部とトーションスプリングとを導通させるための部材を必要としないので、部品点数の削減に貢献できる。
【0019】
〔5〕 本発明は「〔1〕」〜「〔4〕」のいずれか1に記載の発明において、前記検知スイッチは、前記可動導電部および前記第1固定導電部に対して複数の前記第2固定導電部を有し、これら複数の第2固定導電部と前記絶縁部とは交互に配列され、前記複数の第2固定導電部のそれぞれに対して前記可動導電部が接触したオン状態のそれぞれは、異なる導電路を形成することを特徴とする。
【0020】
この「〔5〕」に記載の本発明によれば、複数の第2固定導電部のそれぞれに対して可動導電部が接触したオン状態のそれぞれにおいて異なる電気信号を生成できる。したがって、ハウジングに対するカードの複数の所定位置のそれぞれについて、カードを検知することができる。
【0021】
〔6〕 本発明は「〔5〕」に記載の発明において、前記複数の第2固定導電部と前記絶縁部との配列は、前記レバーの初期姿勢に対応付けられた第1導電路と、前記レバーが初期姿勢から前記挿入方向に限界角度まで回動したフル操作姿勢に対応付けられた第2導電路とが形成されるよう設定されたことを特徴とする。
【0022】
この「〔6〕」に記載の本発明は、第1導電路が形成された状態であることによって、カードがレバーを操作する位置にないことを検知できる。また、第1導電路が形成された状態から第1,第2導電路のいずれも形成されなくなることによって、初期姿勢のレバーを回動操作し始める操作初期位置にカードがあることを検知できる。また、第1,第2導電路のいずれも形成されていない状態から第2導電路が形成されることによって、挿入の限界位置にカードがあることを検知できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、前述したように、ハウジングを大型化することなく、カードの検知位置の設定の自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の第1実施形態に係るカード用コネクタについて図を用いて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るカード用コネクタの右後斜め上方から見たときの斜視図である。図2は図1に示したカード用コネクタからカバーを取り除いた状態の上面図である。図3は図2に示した検知スイッチおよびその周辺を左前斜め上方から見たときの拡大斜視図である。図4−1は図2に示したレバーおよびトーションスプリングの組立物の上面拡大図である。図4−2は図4−1に示した組立物の背面図である。図4−3は図4−1に示した組立物を右後斜め下方から見た状態の斜視図である。図5は図2に示したカード用コネクタからレバーおよびトーションスプリングを取り除いた状態の上面図である。図6−1は図2に示したカード用コネクタからレバーを取り除いた状態であって可動導電部が後方の第2固定導電部に接触した状態の拡大上面図である。図6−2は図2に示したカード用コネクタからレバーを取り除いた状態であって可動導電部が後方の第2固定導電部と前方の第2固定導電部との間の絶縁部に接触した状態の上面図である。図6−3は図2に示したカード用コネクタからレバーを取り除いた状態であって可動導電部が前方の第2固定導電部に接触した状態の拡大上面図である。図7−1はカードがハウジングの排出位置にある状態を示す図2に対応する上面図である。図7−2はカードがハウジングの挿入の限界位置にある状態を示す図2に対応する上面図である。図7−3はカードがハウジングの装着位置にある状態を示す図2に対応する上面図である。
【0025】
図1に示すように、第1実施形態に係るカード用コネクタ1はハウジング2を備えている。このハウジング2の挿入口2aからカード40(図7−1参照)が挿入され装着される。ハウジング2は、合成樹脂製のハウジング本体3と、このハウジング本体3の上面および左右両側部を覆う金属製のカバー部材4とが結合してなる。
【0026】
図2に示すように、ハウジング本体3はハウジング2の底部3aを有する。この底部3aには、ハウジングの幅方向(図2の左右方向)に並んだ複数の端子から構成された端子列5が、インサート成形により固着されている。端子列5におけるすべての端子は、カード40の挿入方向に延びて底部3aに交差する方向に可撓な片持ち梁状に形成されていて、底部3a側からハウジング2内に突出している。カード40の一面(図7−1等に示す面の裏面)には、図示しないが端子列5と対応する配列の端子列が設けられている。端子列5の端子のそれぞれは、その可撓性により、ハウジング2内の所定位置である装着位置(図7−3に示す位置)にカード40が位置した状態において、カード40の端子列の端子のそれぞれに押し付けられる。
【0027】
図2,3に示すように、カード40の挿入方向におけるハウジング2内の前端部には、ハウジング2内でカード40を検知するレバー操作式の検知スイッチ10が設けられている。この検知スイッチ10は、カード40により直接押圧されて挿入方向に回動操作されるレバー11を有する。このレバー11は合成樹脂製の絶縁体である。このレバー11の長手方向の一端部には、下側で開口した円筒面を形成している軸挿入部11aが形成されている。ハウジング本体3の前端部の左端には、回動軸部12が底部3aから上方向に突出して形成されている。回動軸部12が軸挿入部11aに挿入されることによって、レバー11はハウジング本体3に対して回動可能に支持されている。また、レバー11の一端部からは鍔部11bが突出している。ハウジング本体3には、この鍔部11bに上方から重なって位置し鍔部11bの上方向の移動を阻止する阻止部13が形成されている。さらに、この阻止部13は、鍔部11bの上方向の移動を阻止することによって、軸挿入部11a側と反対側のレバー11の端部がハウジング本体3の底部3aに近づく方向にがたつくのを防止している。
【0028】
図4−2,図4−3に示すように、レバー11には軸部11cが下方向に突出して形成されている。図5に示すように、底部3aには、回動軸部12周りの円弧状の長孔からなる可動範囲規定部19が形成されている。この可動範囲規定部19には軸部11cが挿入されていて、この軸部11cの回動軸部12周りの可動範囲を規定することによって、レバー11の可動範囲が規定されている。また、軸部11cは導電性のトーションスプリング14のコイル部14aに挿入されている。コイル部14aの下部からは、トーションスプリング14の一端側を形成している腕部14bが延びている。この腕部14bは、図4−1に示すように、レバー11の前方側に突出している。この腕部14bは、その前側を山折り側として屈曲している。
【0029】
コイル部14aの上部からは、トーションスプリング14の他端側を形成している腕部14cが、レバー11の長手方向に沿って延びている。この腕部14cの先端からは可動導電部15がレバー11の長手方向に延びている。この可動導電部15はハウジング本体3の底部3a側(下側)を山折り側として屈曲している。可動導電部15の頂部15aはハウジング本体3の底部3aに接触して位置する。腕部14cと可動導電部15とは全体として、コイル部14a側の端部を固定端とする片持ち梁状のバネを構成していて、このバネの弾性力により、可動導電部15の頂部15aはハウジング本体3の底部3a側に押し付けられている。
【0030】
図4−3に示すように、レバー11の軸挿入部11a側と反対側の端部には、トーションスプリング14のレバー11に対する軸部11c周りの回動を規制する規制部11dが形成されている。この規制部11dは、レバー11の軸挿入部11a側に凹んだ凹部であり、可動導電部15の腕部14c側と反対側の端部が挿入されている。規制部11dの後側の内壁面は、トーションスプリング14のレバー11に対する後方向への回動を係止する。規制部11dの前側の内壁面は、トーションスプリング14のレバー11に対する前方への回動を係止する。
【0031】
図3に示すように、ハウジング2の前端には、第1固定導電部16がハウジング本体3の底部3aに対し起立して設けられている。この第1固定導電部16には、トーションスプリング14の腕部14bの山折り側が後方から常時接触している。これにより、第1固定導電部16と可動導電部15は常時導通している。第1固定導電部16はハウジング本体3の前端から突出した外部端子20と一体に形成されていて、インサート成形によりハウジング本体3に固着されている。
【0032】
トーションスプリング14は、腕部14bの前方向への移動を第1固定導電部16により阻止されるとともに、規制部11dによりレバー11に対する軸部11c周りの回動が阻止されているので、レバー11を所定の初期姿勢(図2に示す姿勢)の方向に付勢する付勢部材として機能するようになっている(図6−1〜図6−3参照)。
【0033】
図5,図6−1〜図6−3に示すように、可動導電部15の回動範囲内におけるハウジング本体3の底部3aの部分は、複数例えば2つの第2固定導電部17A,17Bと、絶縁部18とから形成されている。つまり、可動導電部15および第1固定導電部16に対して、2つの第2固定導電部17A,17Bが設けられている。これら第2固定導電部17A,17Bと絶縁部18とは交互に配列されている。第2固定導電部17A,17Bはそれぞれ、ハウジング本体3の前端から突出した外部端子21,22のそれぞれと一体に形成されていて、インサート成形によりハウジング本体3に固着されている。絶縁部18はハウジング本体3を形成している樹脂の一部である。第2固定導電部17Aに対して可動導電部15が接触した第1オン状態では、外部端子20と外部端子21とが導通する第1導電路が形成される。第2固定導電部17Bに対して可動導電部15が接触した第2オン状態では、外部端子20と外部端子22とが導通する第2導電路が形成される。第1導電路は、レバー11の姿勢が初期姿勢(図2に示す姿勢)である状態に対応付けられている。第2導電路はレバー11が初期姿勢(回動角度0°)から図6−2に示すように限界角度まで回動したフル操作姿勢となった状態に対応付けられている。
【0034】
ハウジング本体3の右側部には、カード40の排出機構30が設けられている。この排出機構30は、ハウジング2内でカード40の挿入方向および排出方向にスライド可能なスライダ31と、ハウジング本体3とスライダ31との間でスライダ31を初期位置(図2に示す位置)の方向に付勢する復帰バネ32と、カード40の押込み操作によるスライダ31のロックおよびロック解除を可能にするハート型カム機構33とから構成されている。
【0035】
スライダ31は、カード40の挿入軌道上に突出した被押圧操作部31aを有する。この被押圧操作部31aがカード40の前端部により押圧されることによって、スライダ31は復帰バネ32の弾性力に抗してカード40と一体的に挿入方向に移動するようになっている。なお、図示しないが、スライダ31には、カード40の前端部が被押圧操作部31aに当接した状態において、スライダ31に対するカード40の排出方向への移動を抑制する機構が設けられている。
【0036】
ハート型カム機構33は、スライダ31に形成されたハート型カム溝33aと、このハート型カム溝33aに沿って移動する一端を有し他端側でハウジング本体3に回動可能に支持された回動ピン33bとを有する。カバー部材4には、図1に示すように板バネ部34が形成されている。この板バネ部34は回動ピン33bを上方から押圧して、この回動ピン33bの一端をハート型カム溝33aの底部に押し付けている。
【0037】
このように構成された本実施形態に係るカード用コネクタ1の動作について、図6−1〜図6−3および図7−1〜図7−3を用いて説明する。
【0038】
ユーザーがカード40を挿入口2aからハウジング2に挿入すると、図7−1に示すように、カード40の前端部は、初期位置にあるスライダ31の被押圧操作部31aに当接する。このとき、レバー11はカード40の前端部により回動操作されていない。つまり、検知スイッチ10は、レバー11の姿勢が初期姿勢であり、図6−1に示すように、可動導電部15が第2固定導電部17Aに接触した第1オン状態、すなわち、第1固定導電部16と第2固定導電部17Aとが導通した状態となっている。
【0039】
その後、ユーザーがカード40の挿入方向への押圧を継続する。これにより、図7−2に示すように、カード40とスライダ31とが一体的に、復帰バネ32の弾性力に抗して挿入方向の限界位置まで移動する。このようにカード40とスライダ31とが限界位置まで移動する間、レバー11がカード40の前端部により押圧されて、初期姿勢から挿入方向に限界角度まで回動操作されたフル操作姿勢となる。このレバー11の姿勢の変化に伴い、検知スイッチ10は、図6−1に示すように可動導電部15が第2固定導電部17Aに接触した第1オン状態から、図6−3に示すように絶縁部18に接触したオフ状態に変移し、さらに、図6−2に示すように可動導電部15が第2固定導電部17Bに接触した第2オン状態、すなわち、第1固定導電部16と第2固定導電部17Bとが導通した状態に変移する。
【0040】
前述のようにカード40をハウジング2の限界位置まで挿入したとき、ユーザーは、カード40に対する挿入方向の押圧力の付与をやめる。これに伴い、スライダ31とカード40とは復帰バネ32の弾性力により排出方向に押し動かされる。これにより、スライダ31は図7−3に示すように装着位置まで移動し、この装着位置でハート型カム機構33により復帰バネ32の弾性力に抗してロックされ停止する。これに伴いカード40も停止し、ハウジング2に対するカード40の装着が完了する。このようにカード40が排出方向に移動して停止するまで間、レバー11は、カード40の排出方向への移動に伴い初期姿勢の方向への回動を許可されてトーションスプリング14の弾性力により初期姿勢の方向に回動し、その後、カード40の停止に伴い初期姿勢の方向への回動をカード40の前端部により阻止されてトーションスプリング14の弾性力に抗して停止する。このとき、可動導電部15は絶縁部18に接触して検知スイッチ10のオフ状態を形成している。
【0041】
第1実施形態に係るカード用コネクタ1によれば次の効果を得られる。
【0042】
カード用コネクタ1において、可動導電部15はレバー11と一体的にハウジング本体3の底部3aに沿って回動するようになっている。そして、第2固定導電部17A,17Bおよび絶縁部18は、可動導電部15の回動範囲内においてハウジング本体3の底部3a側で互いに隣り合って位置している。これらにより、カード40の検知後のカード40の挿入方向への移動の許容を、可動導電部15の弾性変形によることなく実現できる。したがって、ハウジング2を大型化することなく、カード40の検知位置の設定の自由度を向上させることができる。
【0043】
カード用コネクタ1において、付勢部材としてのトーションスプリング14は第1固定導電部16と可動導電部15とを導通させるための部材を兼ねているので、部品点数の削減に貢献できる。
【0044】
カード用コネクタ1において、可動導電部15がトーションスプリング14の腕部14cに一体に形成されている。これにより、可動導電部としてトーションスプリング14と別個の部材を用いる必要がないので、部品点数の削減に貢献できる。
【0045】
カード用コネクタ1において、検知スイッチ10は、可動導電部15および第1固定導電部16に対して2つの第2固定導電部17A,17Bを有し、これらの第2固定導電部17A,17Bと絶縁部18とは交互に配列されている。そして、第2固定導電部17A,17Bのそれぞれに対して可動導電部15が接触した第1,第2オン状態のそれぞれは、異なる導電路(第1,第2導電路)を形成する。これにより、第1,第2オン状態のそれぞれにおいて異なる電気信号を生成できる。したがって、第1導電路が形成された状態であることによって、カード40がレバー11を操作する位置にないことを検知できる。また、第1導電路が形成された状態から第1,第2導電路のいずれも形成されなくなった状態への移行によって、初期姿勢のレバー11を回動操作し始める操作初期位置にカード40があることを検知できる。また、第1,第2導電路のいずれも形成されていない状態から第2導電路が形成された状態への移行によって、挿入の限界位置にカード40があることを検知できる。
【0046】
なお、本発明は前述の第1実施形態に係るカード用コネクタ1に限定されるものではなく、次のようなものであってもよい。
【0047】
第1実施形態に係るカード用コネクタ1においては、レバー11がカード40により直接押圧されて回動操作されるようになっているが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。レバーがカードにより間接的に押圧されて、つまり、カードの挿入に伴って動作する部材、例えば排出機構のスライダを介して間接的に押圧されて回動操作されるようになっていてもよい。
【0048】
第1実施形態に係るカード用コネクタ1においては、2つの第2固定導電部17A,17Bを備えていたが、本発明は第2固定導電部の数を限定しない。第2固定導電部17A,17Bのいずれか一方のみを備えるものであってもよい。また、絶縁部18と第2固定導電部17A,17Bとの配置が入れ替わったものであってもよい。
【0049】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係るカード用コネクタについて図8−1,図8−2を用いて説明する。図8−1は本発明の第2実施形態に係るカード用コネクタに備えられたレバーとトーションスプリングと可動導電部材との組立物の上面図である。図8−2は図8−1に示した組立物の右後斜め下方から見たときの斜視図である。図8−1,図8−2において、図4−1〜図4−3に示したものと同等のものには、それら図4−1〜図4−3に示したものと同じ符号を付してある。
【0050】
第2実施形態に係るカード用コネクタは、第1実施形態に係るカード用コネクタ1におけるレバー11および可動導電部15に替えて、図8−1,図8−2に示すレバー50および可動導電部51を備えている。
【0051】
トーションスプリング14と可動導電部51とは別体である。可動導電部51は、レバー50の長手方向に沿って延びた支持板部52を有する。この支持板部52の一端側には組付け孔52aが形成されている。支持板部52は、その組付け孔52aに軸部11cが挿入された状態で、トーションスプリング14のコイル部14aとレバー50との間に配置されている。支持板部52の他端からは、可動導電部本体53が延びている。この可動導電部本体53は、支持板部52側の端部を固定端として上下方向に可撓な片持ち梁状の板バネである。また、この可動導電部本体53は、ハウジング本体3の底部3a側(下側)を山折り側として屈曲していて、図示しないが、頂部53aでハウジング本体3の底部3aに接触する。その頂部53aは可動導電部本体53の弾性によりハウジング本体3の底部3a側に押し付けられている。
【0052】
レバー50は、長手方向における軸挿入部11a側と反対側の端部に、下方向に突出した係止突起50aを有する。可動導電部本体53の支持板部52側とは反対側の端部には、係止突起50aに対して前方で隣接する被係止部54が形成されている。可動導電部51は、係止突起50aにより被係止部54の後方向の移動が係止されることで、軸部11c周りの後方向の回動が阻止された状態となっている。
【0053】
また、レバー50は、係止突起50aと軸部11cとの間に組付け突起50b,50cを有する。組付け突起50bは可動導電部本体51に前方から接触して位置し、組付け突起50cは組付け孔52aに挿入されている。これらの組付け突起50b,50cにより、可動導電部51の軸部周りの前方向への回動、および、レバー50の長手方向に対して捻じれる方向の可動導電部51のがたつきが防止されている。
【0054】
可動導電部51の支持板部52には、下方向に突出してトーションスプリング14の腕部14cに後方から接触して位置する係止部52bが形成されている。この係止部52bはトーションスプリング14の腕部14cをトーションスプリング14の弾性力に抗して係止する、つまり、トーションスプリング14のレバー50に対する後方向への回動を係止する。
【0055】
このように構成された第2実施形態に係るカード用コネクタによれば、レバー50にトーションスプリング14の腕部14cに対する係止部を設けなくて済む。また、可動導電部51の係止部52bにトーションスプリング14の腕部14cがトーションスプリング14の弾性力により押し付けられるので、可動導電部51とトーションスプリング14とを確実に導通させることができる。さらに、可動導電部51とトーションスプリング14とを導通させるための部材を必要としないので、部品点数の削減に貢献できる。
【0056】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係るカード用コネクタについて図9−1,図9−2を用いて説明する。図9−1は本発明の第3実施形態に係るカード用コネクタに備えられたレバーとトーションスプリングと可動導電部材との組立物の上面図である。図9−2は図9−1に示した組立物の右後斜め下方から見たときの斜視図である。
【0057】
第3実施形態に係るカード用コネクタは、第1実施形態に係るカード用コネクタ1におけるレバー11および可動導電部15に替えて、図9−1,図9−2に示すレバー60および可動導電部61を備えている。
【0058】
第3実施形態でもトーションスプリング14と可動導電部61とは別体である。可動導電部61は、レバー60の長手方向に沿って延びた支持板部62を有する。この支持板部62の一端側には組付け孔62aが形成されている。支持板部62はレバー60に対し、トーションスプリング14のコイル部14aから下方に突出した軸部11cに挿入され、コイル部14aとハウジング本体3の底部3aとの間に配置されている。支持板部62には上方向に突出した圧入部62bが形成されていて、この圧入部62bがレバー60に形成された圧入孔60aに圧入されることによって、支持板部62はレバー60に固着されている。
【0059】
支持板部62の圧入部62bよりも他端側は、斜め上方向に屈曲している。支持板部62の他端からは可動導電部本体63が延びている。この可動導電部本体63は、可動導電部本体63は、支持板部62側の端部を固定端として上下方向に可撓な片持ち梁状の板バネである。また、この可動導電部本体63の自由端には、下方向に突出した凸曲面63aが形成されている。図示しないが、可動導電部本体63は、その凸曲面63aの頂部63a1でハウジング本体3の底部3aに接触する。その頂部63a1は可動導電部本体63の弾性によりハウジング本体3の底部3a側に押し付けられている。
【0060】
可動導電部61の支持板部62は、組付け孔62aと圧入部62bとの間に、上方向に突出してトーションスプリング14の腕部14cに後方から接触して位置する係止部62cが形成されている。この係止部62cはトーションスプリング14の腕部14cをトーションスプリング14の弾性力に抗して係止する、つまり、トーションスプリング14のレバー50に対する後方向への回動を係止する。
【0061】
このように構成された第3実施形態に係るカード用コネクタによれば、レバー60にトーションスプリング14の腕部14cに対する係止部を設けなくて済む。また、可動導電部61の係止部62cにトーションスプリング14の腕部14cがトーションスプリング14の弾性力により押し付けられるので、可動導電部61とトーションスプリング14とを確実に導通させることができる。さらに、可動導電部61とトーションスプリング14とを導通させるための部材を必要としないので、部品点数の削減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカード用コネクタの右後斜め上方から見たときの斜視図である。
【図2】図1に示したカード用コネクタからカバーを取り除いた状態の上面図である。
【図3】図2に示した検知スイッチおよびその周辺を左前斜め上方から見たときの拡大斜視図である。
【図4−1】図2に示したレバーおよびトーションスプリングの組立物の上面拡大図である。
【図4−2】図4−1に示した組立物の背面図である。
【図4−3】図4−1に示した組立物を右後斜め下方から見た状態の斜視図である。
【図5】図2に示したカード用コネクタからレバーおよびトーションスプリングを取り除いた状態の上面図である。
【図6−1】図2に示したカード用コネクタからレバーを取り除いた状態であって可動導電部が後方の第2固定導電部に接触した状態の拡大上面図である。
【図6−2】図2に示したカード用コネクタからレバーを取り除いた状態であって可動導電部が後方の第2固定導電部と前方の第2固定導電部との間の絶縁部に接触した状態の上面図である。
【図6−3】図2に示したカード用コネクタからレバーを取り除いた状態であって可動導電部が前方の第2固定導電部に接触した状態の拡大上面図である。
【図7−1】カードがハウジングの排出位置にある状態を示す図2に対応する上面図である。
【図7−2】カードがハウジングの挿入の限界位置にある状態を示す図2に対応する上面図である。
【図7−3】カードがハウジングの装着位置にある状態を示す図2に対応する上面図である。
【図8−1】本発明の第2実施形態に係るカード用コネクタに備えられたレバーとトーションスプリングと可動導電部材との組立物の上面図である。
【図8−2】図8−1に示した組立物の右後斜め下方から見たときの斜視図である。
【図9−1】本発明の第3実施形態に係るカード用コネクタに備えられたレバーとトーションスプリングと可動導電部材との組立物の上面図である。
【図9−2】図9−1に示した組立物の右後斜め下方から見たときの斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 カード用コネクタ
2 ハウジング
2a 挿入口
3 ハウジング本体
3a 底部
4 カバー部材
5 端子列
10 検知スイッチ
11 レバー
11a 軸挿入部
11b 鍔部
11c 軸部
11d 規制部
12 回動軸部
13 阻止部
14 トーションスプリング
14a コイル部
14b 腕部
14c 腕部14c
15 可動導電部
15a 頂部
16 第1固定導電部
17A,17B 第2固定導電部
18 絶縁部
19 可動範囲規定部
20,21,22 外部端子
30 排出機構
31 スライダ
31a 被押圧操作部
32 復帰バネ
33 ハート型カム機構
33a ハート型カム溝
33b 回動ピン
34 板バネ部
40 カード
50 レバー
50a 係止突起
50b,50c 組付け突起
51 可動導電部
52 支持板部
52a 組付け孔
52b 係止部
53 可動導電部本体
53a 頂部
54 被係止部
60 レバー
60a 圧入孔
61 可動導電部
62 支持板部
62a 組付け孔
62b 圧入部
62c 係止部
63 可動導電部本体
63a 凸曲面
63a1 頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されるハウジングと、前記ハウジング内で前記カードを検知するレバー操作式の検知スイッチとを備え、
前記検知スイッチは、前記カードにより直接または間接的に押圧されて回動操作される絶縁性のレバーと、このレバーを所定の初期姿勢の方向に付勢する付勢部材と、前記レバーと一体的に回動し前記ハウジングの底部に沿って回動する可動導電部と、前記カードの挿入方向における前記ハウジングの前端において前記ハウジングの底部に対して起立し前記可動導電部と常時導通した第1固定導電部と、前記可動導電部の回動範囲内において前記ハウジングの底部側に設けられている第2固定導電部と、前記可動導電部の回動範囲内において前記ハウジングの底部側で前記第2固定導電部と隣り合って位置する絶縁部とを有し、
前記第2固定導電部および前記絶縁部の配置は、前記可動導電部が前記レバーの回動に伴い、前記検知スイッチの状態を前記絶縁部に接触したオフ状態から前記第2固定導電部に接触したオン状態に変移させ、または、前記オン状態から前記オフ状態に変移させるよう設定され、
前記オン状態または前記オフ状態は、前記カードが前記ハウジングに対して所定位置にある状態とが対応付けられた
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記付勢部材は導電性のトーションスプリングであり、
前記トーションスプリングの一方の腕部が前記第1固定導電部に常時導通していて、他方の腕部が前記可動電導部と導通している
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、
前記可動電動部は前記トーションスプリングの他方の腕部に一体に形成されている
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項4】
請求項2に記載の発明において、
前記可動導電部は前記トーションスプリングと別体であり、
前記可動導電部には、前記トーションスプリングの弾性力に抗して前記トーションスプリングの他方の腕部を係止する係止部が形成されている
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、
前記検知スイッチは、前記可動導電部および前記第1固定導電部に対して複数の前記第2固定導電部を有し、これら複数の第2固定導電部と前記絶縁部とは交互に配列され、前記複数の第2固定導電部のそれぞれに対して前記可動導電部が接触したオン状態のそれぞれは、異なる導電路を形成する
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載の発明において、
前記複数の第2固定導電部と前記絶縁部との配列は、前記レバーの初期姿勢に対応付けられた第1導電路と、前記レバーが初期姿勢から前記挿入方向に限界角度まで回動したフル操作姿勢に対応付けられた第2導電路とが形成されるよう設定された
ことを特徴とするカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【公開番号】特開2010−15876(P2010−15876A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175808(P2008−175808)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】