説明

カード用コネクタ

【課題】カードの厚みがばらついてもカードの正挿入時に確実にカードを装着可能とし、カードの誤挿入を防止することができるカード用コネクタを提供すること。
【解決手段】薄型カード41の挿入方向に薄型カード41と共にコネクタ内をスライドするスライド部材6と、スライド部材6にコネクタの厚み方向から係合し、コネクタに対しスライド部材6のスライドをロックするロック部23と、薄型カード41の正挿入時に薄型カード41の挿入によってロック部23とスライド部材6とを離間させるようにしてロックを解除可能な解除位置に薄型カード41の挿入を許容し、薄型カード41の誤挿入時に解除位置への薄型カード41の挿入を阻止する挿入位置規制部32と、解除位置において、薄型カードの厚み方向における位置を、ロック部23側に向けて底上げする底上げ部33とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関し、特に、カードの誤挿入防止構造を備えたカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードの誤挿入防止構造を備えたカード用コネクタとして、カードの挿入および排出方向にカードと共にスライドするスライド部材を、カードの逆挿入時にロックするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このカード用コネクタは、カードが挿入されるハウジングを有し、ハウジングにはスライド部材のスライドをロックする片持バネが形成されている。この片持バネは、ハウジング内に傾斜するように切り起されており、自由端側に形成された被係合部にスライド部材の係合突起が係合することで、スライド部材のスライドをロックしている。
【0003】
また、スライド部材には、カードの正挿入時に片持バネとのロックを解除可能な解除位置にカードの挿入を許容し、カードの誤挿入時に解除位置へのカードの挿入を阻止する挿入位置規制部が形成されている。そして、カードの正挿入時には、片持バネの自由端がカードの厚みにより持ち上げられてスライド部材のロックが解除され、カードがスライド部材と共に挿入方向にスライドして装着される。一方、カードの誤挿入時には、カードの解除位置への挿入が阻止されるため、スライド部材のスライドのロックが維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−204703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来のカード用コネクタにおいては、片持バネの自由端がカードの厚みにより持ち上げられることでスライド部材のロックが解除されるため、カードの厚みがばらつくと片持バネの持ち上げ量が変化して、スライド部材の適切なロックがされないおそれがあった。例えば、カードが薄すぎる場合には、カードが正挿入されたにも関わらず、片持バネの持ち上げ量が足りずにロックが解除されず、カードを装着することができなかった。この問題を解決するために、カードの厚み方向の寸法公差を小さくすることが考えられるが、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、カードの厚みがばらついてもカードの正挿入時に確実にカードを装着可能とし、カードの誤挿入を防止することができるカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカード用コネクタは、カードの装着空間を形成するハウジングと、前記カードの挿入方向に前記カードと共に前記ハウジング内をスライドするスライド部材と、前記スライド部材に前記ハウジングの厚み方向から係合し、前記ハウジングに対し前記スライド部材のスライドをロックするロック部と、前記カードの挿入方向において、前記カードの正挿入時に前記カードの挿入によって前記ロック部と前記スライド部材とを離間させてロックを解除可能な解除位置に前記カードの挿入を許容し、前記カードの誤挿入時に前記解除位置への前記カードの挿入を阻止する挿入位置規制部と、前記解除位置において、前記カードの前記ハウジングの厚み方向における位置を、前記ロック部側に向けて底上げする底上げ部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、カードの正挿入時にはカードが解除位置への挿入が許容され、カードの誤挿入時にはカードの解除位置への挿入が阻止されるため、カードの誤挿入が防止される。また、カードの正挿入時には解除位置においてカードのハウジングの厚み方向における位置が底上げされるため、カードの厚みにばらつきが生じてもロック部をスライド部材から離間させてロックを解除させることができる。特に、最薄のカードの厚みに合わせて底上げ部の底上げ量を設計することにより、確実にロック部によるロックを解除させることができる。このように、カードの厚み方向における寸法公差が大きくばらついても正挿入時にロックが解除されるため、カードの製造コストを低減させることができる。
【0009】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記底上げ部は、前記スライド部材に設けられており、前記底上げ部により前記カードが底上げされた場合に、前記スライド部材が前記カードに押し下げられることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、カードが底上げされた場合にスライド部材が押し下げられるため、さらにロック部とスライド部材とを離間させ易くすることができる。
【0011】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ハウジングの装着空間は、厚みの異なる複数種類のカードを装着可能とし、前記スライド部材の前記底上げ部側には、前記底上げ部により所定の厚み以上のカードが底上げされた場合に、前記スライド部材と前記ハウジングとの接触圧の増大を抑制するための逃げ部が設けられたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、所定の厚み以上のカードが挿入されたときに、逃げ部によりスライド部材とハウジングとの接触圧の増大が抑制されるため、厚みの異なる複数種類の規格のカードに対応させることができる。
【0013】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記カードには、先端側から挿入方向に延在する複数の仕切によって複数の溝部が形成され、前記溝部の底面の一部には前記ハウジングに設けられた端子と接触するパッドが設けられ、前記底上げ部が、一つの前記溝部の底面における前記パッドと前記端子との摺動軌跡から外れた位置に当接することにより、前記カードが底上げされることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、カードが溝部の底面のパッドと端子との摺動軌跡を避けた位置で底上げ部により底上げされるため、パッドと端子との接触に影響を与えることがない。
【0015】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ハウジングは、金属性の蓋体を有し、前記ロック部は、前記蓋体の一部で形成され、前記スライド部材の前記ロック部に係合される被係合部が金属性であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ロック部とスライド部材の係合部が金属で形成されるため、強度を高めると共に、耐摩耗性を向上させて長寿命化を図ることができる。
【0017】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記カードの先端側の一の角部は、切り欠かれて傾斜面を有しており、前記挿入位置規制部は、前記スライド部材に設けられ、前記カードの傾斜面を案内可能な傾斜面を有し、前記カードの正挿入時には前記カードの傾斜面が前記挿入位置規制部の傾斜面に案内されて前記解除位置に挿入され、前記カードの誤挿入時には前記カードの角部が前記挿入位置規制部の傾斜面に規制され前記解除位置への挿入が阻止されることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、正挿入時にのみカードの傾斜面が挿入位置規制部の傾斜面に案内されるため、簡易な構成でカードの誤挿入を防止することができる。
【0019】
また本発明は、上記カード用コネクタにおいて、前記ロック部は、前記カード部に当接する段部を有した片持バネであり、自由端側に前記段部が前記カードに押し上げられることでロックを解除することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、簡易な構成でロック部を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カードの厚みがばらついてもカードの正挿入時に確実にカードを装着可能とし、カードの誤挿入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの斜視図である。
【図2】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの分解斜視図である。
【図3】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、スライド部材の斜視図である。
【図4】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの薄型カードの誤挿入時の説明図である。
【図5】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの厚型カードの誤挿入時の説明図である。
【図6】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの最薄の薄型カードのロック解除構造の説明図である。
【図7】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、カード用コネクタの最厚の厚型カードのロック解除構造の説明図である。
【図8】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、厚型カードの正挿入時の部分拡大図である。
【図9】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、薄型カードの平面図である。
【図10】本発明に係るカード用コネクタの実施の形態を示す図であり、厚型カードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明を薄型カードおよび厚型カードの2種類のカードを挿入可能としたコンバイン型のカード用コネクタに適用する場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係るカード用コネクタの適用対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0024】
まず、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタについて説明する前に装着対象となる薄型カードおよび厚型カードについて説明する。図9は、本発明の実施の形態に係る薄型カードの平面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図を示している。図10は、本発明の実施の形態に係る厚型カードの平面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図を示している。
【0025】
図9(a)、(b)に示すように、薄型カード41は、挿入方向に一定の厚み(約1.4mm)で形成されたいわゆるマルチメディアカード(MMC)であり、上面視略矩形状に形成されている。薄型カード41の一の角部には、切り欠かれて約45度に傾斜した傾斜面42が形成されている。傾斜面42は、薄型カード41の挿入方向を識別するのに用いられ、この傾斜面42が形成されている側が挿入方向における先端側とされ、逆側が挿入方向における後端側とされる。この傾斜面42が形成された先端側から挿入されたときのみ、薄型カード41がカード用コネクタ1に装着される。また、薄型カード41の先端側には、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子11に接触する複数のパッド43(図4参照)が設けられている。
【0026】
図10(a)、(b)に示すように、厚型カード45は、薄型カード41よりも厚い(約2.1mm)厚みで形成されたいわゆるSDカードであり、上面視略矩形状に形成されている。また、厚型カード45は、薄型カードの仕様に基づいて構成されており、正面視において上段が薄型カードと同一の幅を有する段状に形成されている。厚型カード45の一の角部には、薄型カード41と同様に切り欠かれて約45度に傾斜した挿入方向識別用の傾斜面46が形成されている。また、厚型カード45の傾斜面46が形成された先端側には、挿入方向に延在する複数の仕切りによって後述する溝部47が形成されている。この溝部47には、カード用コネクタ1の複数のコンタクト端子11に接触する複数のパッド48(図8参照)が設けられている。
【0027】
次に、図1および図2を参照して、カード用コネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの分解斜視図である。
【0028】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1は、上面および前面が開口されたコネクタ本体2と、コネクタ本体2の上面の開口に装着されてカードの装着空間を形成する蓋体3とを備え、コネクタ本体2および蓋体3が組み合わされて挿入口4を有する箱状体をなしている。挿入口4は、正面視において厚型カード45と相補的な形状を有しており、厚型カード45は挿入口4の段状領域に挿入されると共に、薄型カード41は挿入口4の上段の矩形領域に挿入される。
【0029】
コネクタ本体2の奥壁2aの前面部分および底壁2bの中央部分には、複数(本実施の形態では13つ)のコンタクト端子11が設けられている。奥壁2aに設けられた各コンタクト端子11は、奥壁2aの前面部分から挿入口4側に向かって延在し、底壁2bに設けられた各コンタクト端子11は、底壁2bの中央部分から奥壁2a側に向かって延在している。
【0030】
コネクタ本体2の一の側壁2cには、挿入方向に延在する金属性の板バネ12が設けられており、板バネ12の板面には挿入されたカード41、45を内側に付勢する曲げ部12a、12bが形成されている。コネクタ本体2の他の側壁2dには、側壁2dに沿ってスライド可能なスライド部材6と、スライド部材6のスライドに伴って伸縮するコイル状の排出バネ7とが設けられている。排出バネ7は、一端が奥壁2aに当接され、他端がスライド部材6に当接されており、スライド部材6を排出方向に付勢している。
【0031】
スライド部材6は、排出バネ7に付勢された状態で挿入および排出方向にスライド可能に構成されている。スライド部材6の前端側には図示しないハートカム溝が形成されており、このハートカム溝と側壁2dの前端側に設けられたピン13によりスライド部材6の位置が規定される。ピン13は、側壁2dに沿って延在し、両端が底壁2bに向かって略直角に屈曲している。ピン13の一端は、側壁2dの前端側に回動可能に支持され、他端はスライド部材6のハートカム溝上に摺動される。
【0032】
ハートカム溝は、複数の段差と傾斜を有して上面視ハート型の環状に形成されており、スライド部材6のスライドに応じてピン13の他端を一方向に摺動させる。スライド部材6が奥壁2a近傍の装着位置に押し込まれると、ピン13の他端がハートカム溝の係止部分に係止され、排出バネ7の付勢によるスライド部材6の復帰が規制される。この状態からさらにスライド部材6が押し込まれると、ピン13とハートカム溝との係止状態が解除されて、排出バネ7の付勢によりスライド部材6が復帰される。このように、ピン13とハートカム溝は、スライド部材6の装着位置における保持機能を有している。
【0033】
また、スライド部材6には、挿入方向に延在する金属性の板バネ14が設けられており、板バネ14の板面には挿入されたカード41、45を内側に付勢する曲げ部14aが形成されている。板バネ14の上面には、スライド部材6の待機位置を規定する係合突起14bが上方に突出して形成されている。この係合突起14bが蓋体3の後述する係合孔23aに係合することで、スライド部材6のコネクタ本体2に対するスライドが規制される。なお、スライド部材6の詳細構成については後述する。
【0034】
蓋体3は、金属性の板材を折り曲げて形成されており、上面の側壁2dに対応する部分にはピン13を押えるピン押え21、22およびスライド部材6のスライドをロックするロック部23が形成されている。ピン押え21、22は、底壁2b側に切り起された片持ちバネであり、ピン13の中間部分を下方に押圧してピン13の他端をハートカム溝に押し付けている。
【0035】
ロック部23は、底壁2b側に切り起された片持ちバネであり、自由端側に板バネ12の係合突起14bに係合する係合孔23aと、カード41、45に当接する段部23bとが形成されている。係合孔23aは、上方から係合突起14bに係合してスライド部材6のスライドをロック可能に構成されている。段部23bは、底壁2b側に膨出し、カード41、45上面の右側方部分の挿入軌跡上に位置するように形成されている。
【0036】
ロック部23は、カード41、45の挿入時に、カード41、45上面に段部23bが当接することによって押し上げられ、係合孔23aから係合突起14bが外されてスライド部材6のロックが解除される。この場合、ロック部23および係合突起14bが金属性であるため、強度および摺接時の耐摩耗性が向上し、長寿命化が図られている。また、ロック部23の腕部分には、延在方向にスリット23cが形成されており、このスリット23cによりロック部23のバネ定数が下げられている。
【0037】
図3を参照して、本発明の特徴部分であるスライド部材の詳細構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係るスライド部材の斜視図である。
【0038】
図3に示すように、スライド部材6は、上面に板バネ14が装着される板バネ装着部31が形成され、下面に排出バネ7の他端が装着される図示しない排出バネ装着部が形成されている。板バネ14の係合突起14bは、挿入方向側の端面が係合孔23aの内周面に引っ掛けられるように上面に対して垂直に形成され、排出方向側の端面が係合孔23a内に復帰し易いように上面から排出方向に下るように傾斜して形成されている。
【0039】
スライド部材6の側面には、コネクタ本体2の中央に向かって突出する挿入位置規制部32が形成されている。挿入位置規制部32の側面は、スライド部材6の後端に向かって装着空間の幅方向を狭めるような傾斜面32aであり、カード41、45の傾斜面42、46に当接するように約45度に傾斜している。
【0040】
スライド部材6がロックされた状態でカード41、45が正挿入された場合には、カード41、45の先端側の傾斜面42、46が挿入位置規制部32の傾斜面32aに当接して、ロック部23によるロックを解除可能な解除位置、すなわち段部23bに対向する位置にカード41、45を案内する。一方、スライド部材6がロックされた状態でカード41、45が誤挿入された場合には、カード41、45の後端側の角部が挿入位置規制部32の傾斜面32aに当接して解除位置へのカード41、45の挿入が阻止される。このようにして、挿入位置規制部32の傾斜面32aによりカード41、45の誤挿入が防止される。
【0041】
また、挿入位置規制部32の傾斜面32aの略中間部分から挿入口4側に底上げ部33が突出して形成されている。底上げ部33は、カード41、45が解除位置に到達したときにカード41、45をロック部23の段部23bに向けて底上げするように構成されており、この底上げによりロック部23が大きく押し上げられる。
【0042】
段部23bに対向する底上げ部33の上面33aは、挿入位置規制部32の傾斜面32aから直交方向に離間するにつれて下るように傾斜しており、正挿入時にカード41、45が乗り上がるように構成されている。カード41、45が正挿入されて押し込まれることで、この底上げ部33の上面33aにカード41、45の下面が摺接されつつ解除位置に案内される。
【0043】
この場合、底上げ部33の底上げ量は、薄型カード41の最薄な寸法を基準として設計されており、最薄な薄型カード41が解除位置に挿入されたときであってもロック部23によるロックが解除されるように構成されている。また、カード41、45が底上げ部33に底上げされると、解除位置においてロック部23が上方に押し上げられると共に、スライド部材6が僅かに下方に押し下げられる。このように、解除位置においてロック部23とスライド部材6とが離間されることで、係合孔23aが係合突起14bから外れてロックが解除される。
【0044】
また、スライド部材6は、下面に後端側に向かって厚みを薄くするような逃げ部34が形成されており、この逃げ部34により前端側を支点として後端側が上下に揺動するように構成されている。この構成により、厚型カード45が挿入されたときに、スライド部材6の後端側が押し下げられ、スライド部材6と底壁2bとの接触圧が抑制される。よって、薄型カード41と厚型カード45のように厚みが異なる規格のカードに対応可能となる。
【0045】
図4および図5を参照してカード用コネクタによる誤挿入防止構造について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの薄型カードの誤挿入時の説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図を示している。図5は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの厚型カードの誤挿入時の説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図を示している。なお、図4(a)および図5(a)においては、説明の便宜上、破線で示す段部を除いて蓋体を省略している。
【0046】
最初に、図4を参照して薄型カード41の誤挿入について説明する。初期状態においては、スライド部材6に設けられた板バネ14の係合突起14bがロック部23の係合孔23aに係合されているため、スライド部材6のスライドが規制されている。図4(a)、(b)に示すように、この初期状態から薄型カード41が誤挿入された場合、薄型カード41の後端側の角部が側壁2dに沿って侵入し、解除位置の手前において挿入位置規制部32の傾斜面32aに当接する。
【0047】
この場合、排出バネ7の付勢力よりも大きな力で、薄型カード41を挿入したとしても、挿入位置規制部32の傾斜面32aによって解除位置への薄型カード41の挿入が阻止される。したがって、薄型カード41がロック部23の段部23bに接触することがなく、スライド部材6のスライドのロックが維持される。
【0048】
次に、図5を参照して厚型カード45の誤挿入について説明する。図5(a)、(b)に示すように、薄型カード41の場合と同様に初期状態から厚型カード45が誤挿入された場合、厚型カード45の後端側の角部が側壁2dに沿って侵入し、解除位置の手前において挿入位置規制部32の傾斜面32aに当接する。
【0049】
この場合、排出バネ7の付勢力よりも大きな力で、厚型カード45を挿入したとしても、挿入位置規制部32の傾斜面32aによって解除位置への薄型カード41の挿入が阻止される。したがって、厚型カード45がロック部23の段部23bに接触することがなく、スライド部材6のスライドのロックが維持される。
【0050】
図6から図8を参照してカード用コネクタによるロック解除構造およびカードの装着動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの最薄の薄型カードのロック解除構造の説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図を示している。図7は、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタの最厚の厚型カードのロック解除構造の説明図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図、(c)は(a)のE−E線に沿う断面図を示している。図8は、厚型カードの正挿入時の部分拡大図である。なお、図6(a)および図7(a)においては、説明の便宜上、破線で示す段部を除いて蓋体を省略している。
【0051】
最初に、図6を参照して薄型カード41のロック解除構造および装着動作について説明する。初期状態においては、スライド部材6に設けられた板バネ14の係合突起14bがロック部23の係合孔23aに係合されているため、スライド部材6のスライドが規制されている。図6(a)に示すように、この初期状態から薄型カード41が正挿入された場合、薄型カード41の先端側の傾斜面42が挿入位置規制部32の傾斜面32aに当接して、薄型カード41の先端側が解除位置まで案内される。
【0052】
このとき、図6(b)に示すように、薄型カード41の先端側が底上げ部33の上面33aに乗り上がり、解除位置において薄型カード41の上面がロック部23の段部23bに押し当てられる。ロック部23は、底上げ部33の底上げ量と薄型カード41の厚みにより、上方に押し上げられる。このように、底上げ部33は、薄型カード41の形成時の寸法公差の最薄の場合を想定して底上げ量が形成されているため、薄型カード41の厚みのバラツキを吸収してロック部23を押し上げ可能としている。
【0053】
ロック部23が上方に押し上げられると、ロック部23の係合孔23aがスライド部材6に設けられた板バネ14の係合突起14bから外れてスライド部材6のスライドのロックが解除される。このスライド部材6のロックが解除された状態で、排出バネ7の付勢力に抗して薄型カード41をさらに押し込むと、薄型カード41と共にスライド部材6が一体としてスライドされる。
【0054】
そして、スライド部材6が奥壁2aまでスライドすると、ピン13の他端がスライド部材6のハートカム溝の係止部分に係止されてスライドが停止され、薄型カード41が装着位置で保持される。このとき、薄型カード41の下面に設けられた複数のパッド43が、コンタクト端子11に接触される。
【0055】
カード用コネクタ1への薄型カード41が装着された状態では、薄型カード41の後端が挿入口4から突出されている。この挿入口4から突出した薄型カード41の後端がさらに押圧されると、ピン13の他端とハートカム溝の係止状態が解除され、スライド部材6が排出バネ7に押し戻されて初期状態に戻される。
【0056】
なお、図6では、最薄の薄型カード41を例示して説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、最厚の薄型カード41が正挿入された場合には、薄型カード41の厚みによりロック部23が押し上げられると共に、薄型カード41からの反力によりスライド部材6が僅かに押し下げられてロックが解除される。
【0057】
次に、図7を参照して厚型カード45のロック解除構造および装着動作について説明する。図7(a)に示すように、薄型カード41の場合と同様に初期状態から厚型カード45が正挿入された場合、厚型カード45の先端側の傾斜面46が挿入位置規制部32の傾斜面32aに当接して、厚型カード45の先端側が解除位置まで案内される。
【0058】
図8に示すように、厚型カード45の先端側が解除位置に案内されると、厚型カード45の下面は、挿入方向に延在する複数の溝部47のうち傾斜面46に対応する溝部47の底面が底上げ部33に底上げされる。このとき、底上げ部33は、溝部47の底面に設けられたパッド48とコンタクト端子11との摺動軌跡から外れた位置を底上げしており、パッド48とコンタクト端子11との接触の妨害となることがない。なお、この溝部47は、パッド48がコネクタ端子11以外のものとの接触を避けるような溝幅に形成されている。
【0059】
そして、図7(b)に示すように、厚型カード45の先端側の溝部47が底上げ部33の上面33aに乗り上げ、解除位置において厚型カード45の上面がロック部23の段部23bに押し当てられる。ロック部23は、底上げ部33の底上げ量と厚型カード45の厚みにより、上方に大きく押し上げられる。このとき、図7(c)に示すように、スライド部材6の後端側は、下面に形成された逃げ部34により、前端側を支点として底壁2b側に押し下げられる。これにより、スライド部材6が底壁2bに強く押しつけられることが抑制される。
【0060】
ロック部23が上方に押し上げられると共に、スライド部材6が下方に押し下げられると、ロック部23の係合孔23aがスライド部材6に設けられた板バネ14の係合突起14bから外れてスライド部材6のスライドのロックが解除される。このスライド部材6のロックが解除された状態で、排出バネ7の付勢力に抗して厚型カード45をさらに押し込むと、厚型カード45と共にスライド部材6が一体としてスライドされる。
【0061】
そして、スライド部材6が奥壁2aまでスライドすると、薄型カード41の装着時と同様に装着され、装着位置からさらに押し込むことでスライド部材6が排出バネ7に押し戻されて初期状態に戻される。
【0062】
以上のように、本実施の形態に係るカード用コネクタ1によれば、カード41、45の正挿入時にはカード41、45が解除位置への挿入が許容され、カード41、45の誤挿入時にはカード41、45の解除位置への挿入が阻止されるため、カード41、45の誤挿入が防止される。また、カード41、45の正挿入時には解除位置においてカード41、45の厚み方向における位置が底上げされるため、カード41、45の厚みにばらつきが生じてもロック部23の係合孔23aをスライド部材6に設けられた板バネ14の係合突起14bから離間させてロックを解除させることが可能となる。特に、最薄の薄型カード41の厚みに合わせて底上げ部33の底上げ量を設計することにより、確実にロック部23によるロックを解除させることが可能となる。このように、カード41、45の厚み方向における寸法公差が大きくばらついても、正挿入時にロックが解除されるため、カード41、45の製造コストを低減させることが可能となる。
【0063】
なお、上記した実施の形態においては、薄型カードをマルチメディアカード、厚型カードをSDカードとして説明したが、この構成に限定されるものではない。本発明は、厚みの異なる複数の規格のカードに対応可能であり、例えば、マルチメディアカードの代わりにマルチメディアカードのハーフサイズのレデュースサイズマルチメディアカード(RS−MMC)にも対応可能である。この場合、カードに金属性のアダプタが取り付けられて挿入されるが、本発明によって誤挿入が防止されているため、誤挿入によって金属性のアダプタがコンタクト端子に接触してショートすることが防止される。
【0064】
また、上記した実施の形態においては、蓋体にロック部を設ける構成としたが、この構成に限定されるものではなく、コネクタ本体の底壁にロック部を設ける構成としてもよい。
【0065】
また、上記した実施の形態においては、底上げ部がスライド部材に設けられている構成としたが、この構成に限定されるものではない。解除位置においてカードを底上げ可能な構成であればどのような構成であってもよく、例えば、コネクタ本体の底壁に底上げ部を形成するようにしてもよい。
【0066】
また、上記した実施の形態においては、逃げ部がスライド部材に形成される構成としたが、この構成に限定されるものではない。所定の厚み以上のカードが挿入された場合に、スライド部材とコネクタ本体の底面との接触圧の増大を抑制する構成であればどのような構成であってもよく、例えば、逃げ部としてコネクタ本体の底面に溝を形成する構成としてもよい。
【0067】
また、上記した実施の形態においては、スライド部材に設けられた挿入位置規制部の傾斜面により、カードの挿入位置を規制する構成としたが、この構成に限定されるものではない。カードの正挿入時に解除位置にカードが挿入されるのを許容し、カードの誤挿入時に解除位置にカードが挿入されるのを阻止可能な構成であればどのような構成であってもよく、例えば、挿入位置規制部に傾斜面の代わりに曲面を形成する構成としてもよい。
【0068】
また、上記した実施の形態においては、薄型カードおよび厚型カードの2種類のカードに対応可能なコンバイン型の構成としたが、この構成に限定されるものではない。1種類のカードのみに対応可能としてもよいし、3種類以上のカードに対応可能としてもよい。
【0069】
また、上記した実施の形態においては、ロック部と板バネの係合突起とを金属性としたが、この構成に限定されるものではない。ロック部の係合孔と係合突起との摺接による摩擦を低減可能な材質であればよく、他の耐摩擦材でロック部と板バネとを形成する構成としてもよい。
【0070】
また、上記した実施の形態においては、ロック部を片持ちバネで構成したが、この構成に限定されるものではない。カードの厚みによって押し上げられる構成であればどのような構成であってもよい。また、上記した実施の形態においては、ロック部が段部を有する構成としたが、解除位置においてカードに押し上げられる構成であれば、段部を有さない構成としてもよい。
【0071】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明は、カードの厚みがばらついてもカードの正挿入時に確実にカードを装着可能とし、カードの誤挿入を防止することができるという効果を有し、特に、カードの誤挿入防止構造を備えたカード用コネクタに有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 カード用コネクタ
2 コネクタ本体(ハウジング)
3 蓋体(ハウジング)
4 挿入口
6 スライド部材
7 排出バネ
11 コンタクト端子(端子)
14 板バネ
14b 係合突起
23 ロック部
23a 係合孔
23b 段部
32 挿入位置規制部
32a 傾斜面
33 底上げ部
34 逃げ部
41 薄型カード(カード)
45 厚型カード(カード)
47 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの装着空間を形成するハウジングと、
前記カードの挿入方向に前記カードと共に前記ハウジング内をスライドするスライド部材と、
前記スライド部材に前記ハウジングの厚み方向から係合し、前記ハウジングに対し前記スライド部材のスライドをロックするロック部と、
前記カードの挿入方向において、前記カードの正挿入時に前記カードの挿入によって前記ロック部と前記スライド部材とを離間させてロックを解除可能な解除位置に前記カードの挿入を許容し、前記カードの誤挿入時に前記解除位置への前記カードの挿入を阻止する挿入位置規制部と、
前記解除位置において、前記カードの前記ハウジングの厚み方向における位置を、前記ロック部側に向けて底上げする底上げ部とを備えたことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記底上げ部は、前記スライド部材に設けられており、
前記底上げ部により前記カードが底上げされた場合に、前記スライド部材が前記カードに押し下げられることを特徴とする請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングの装着空間は、厚みの異なる複数種類のカードを装着可能とし、
前記スライド部材の前記底上げ部側には、前記底上げ部により所定の厚み以上のカードが底上げされた場合に、前記スライド部材と前記ハウジングとの接触圧の増大を抑制するための逃げ部が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記カードには、先端側から挿入方向に延在する複数の仕切によって複数の溝部が形成され、
前記溝部の底面の一部には前記ハウジングに設けられた端子と接触するパッドが設けられ、
前記底上げ部が、一つの前記溝部の底面における前記パッドと前記端子との摺動軌跡から外れた位置に当接することにより、前記カードが底上げされることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、金属性の蓋体を有し、
前記ロック部は、前記蓋体の一部で形成され、
前記スライド部材の前記ロック部に係合される被係合部が金属性であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項6】
前記カードの先端側の一の角部は、切り欠かれて傾斜面を有しており、
前記挿入位置規制部は、前記スライド部材に設けられ、前記カードの傾斜面を案内可能な傾斜面を有し、
前記カードの正挿入時には前記カードの傾斜面が前記挿入位置規制部の傾斜面に案内されて前記解除位置に挿入され、前記カードの誤挿入時には前記カードの角部が前記挿入位置規制部の傾斜面に規制され前記解除位置への挿入が阻止されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のカード用コネクタ。
【請求項7】
前記ロック部は、前記カード部に当接する段部を有した片持バネであり、自由端側に前記段部が前記カードに押し上げられることでロックを解除することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−212057(P2010−212057A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56358(P2009−56358)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】