説明

カーボンナノチューブを含むアラミドポリマーの調製方法

本発明は、カーボンナノチューブを中に分散させたアラミドポリマー溶液を調製する方法であって、第1の溶媒中にカーボンナノチューブと担体ポリマーとを含む第1の分散液を提供する工程と、前記担体ポリマーの電子親和度より低い電子親和度を有する芳香族ジアミンと任意に第2の溶媒とを含む第1の溶液を提供する工程と、前記第1の分散液に前記第1の溶液を添加して第2の分散液を生成させる工程と、芳香族二酸または芳香族二酸クロリドを前記第2の分散液に添加する工程と、前記芳香族二酸または芳香族二酸クロリドを前記芳香族ジアミンと重合させて、第1のアラミド溶液中にカーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを生成させる工程と、前記カーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを分離する工程と、前記カーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを第3の溶媒に溶解させて、第2のアラミド溶液を生成させる工程とを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラミドポリマーとカーボンナノチューブとを含む組成物を調製する方法、ならびにアラミドポリマーおよびカーボンナノチューブを含有する、得られた組成物および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、典型的には円周において数原子のみである長い管状体を有する。これらのカーボンナノチューブは中空であり、典型的には線状フラーレン構造を有する。カーボンナノチューブの長さは、潜在的には、直径より数千倍または数百万倍大きい場合がある。単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブは両方とも、当該技術分野において知られている。
【0003】
カーボンナノチューブは、導電性のみでなく強度と重量の独特な組み合わせを有することが知られている。
【0004】
米国特許第6,872,403号明細書には、ポリメチルメタクリレートマトリックスから製造され、カーボンナノチューブで強化された合成樹脂が開示されている。この樹脂は、骨組織における人工関節、義歯および/または歯科修復固定のための骨セメントとして有用であると言われている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、本発明は、カーボンナノチューブを中に分散させたアラミドポリマー溶液を調製する方法であって、
第1の溶媒中にカーボンナノチューブと担体ポリマーとを含む第1の分散液を提供する工程と、
前記担体ポリマーの電子親和度より低い電子親和度を有する芳香族ジアミンと任意成分である第2の溶媒とを含む第1の溶液を提供する工程と、
前記第1の分散液に前記第1の溶液を添加して第2の分散液を生成させる工程と、
芳香族二酸または芳香族二酸クロリドを前記第2の分散液に添加する工程と、
前記芳香族二酸または芳香族二酸クロリドを前記芳香族ジアミンと重合させて、第1のアラミド溶液中にカーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを生成させる工程と、
前記カーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを分離する工程と、
前記カーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを第3の溶媒に溶解させて、第2のアラミド溶液を生成させる工程と
を含む方法に関する。
【0006】
本発明は、本明細書で開示された方法によって製造された組成物およびこうした組成物を含有する物品にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一実施形態において、本発明は、カーボンナノチューブを中に分散させたアラミドポリマー溶液を調製する方法であって、
第1の溶媒中にカーボンナノチューブと担体ポリマーとを含む第1の分散液を提供する工程と、
前記担体ポリマーの電子親和度より低い電子親和度を有する芳香族ジアミンと任意に第2の溶媒とを含む第1の溶液を提供する工程と、
前記第1の分散液に前記第1の溶液を添加して第2の分散液を生成させる工程と、
芳香族二酸または芳香族二酸クロリドを前記第2の分散液に添加する工程と、
前記芳香族二酸または芳香族二酸クロリドを前記芳香族ジアミンと重合させて、第1のアラミド溶液中にカーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを生成させる工程と、
前記カーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを分離する工程と、
前記カーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを第3の溶媒に溶解させて、第2のアラミド溶液を生成させる工程と
を含む方法に関する。
【0008】
溶媒が全く存在しないで第1の溶液が芳香族ジアミンを含むことができることに留意するべきである。換言すると、「第1の溶液」は純芳香族ジアミンである。しかし、幾つかの実施形態において、任意の第2の溶媒は芳香族アミンの第1の分散液への添加のより良い制御を可能にする。
【0009】
幾つかの実施形態において、芳香族ジアミンは、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルジアミン、3,3’−ジフェニルジアミン、3,4’−ジフェニルジアミン、4,4’−オキシジフェニルジアミン、3,3’−オキシジフェニルジアミン、3,4’−オキシジフェニルジアミンおよび4,4’−スルホニルジフェニルジアミンおよびそれらの混合物の1種以上を含む。
【0010】
芳香族二酸または芳香族二酸クロリドには、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリドおよび式
【化1】

(式中、ZはOHまたはClであり、Yは−O−または−SO2−である)
の化合物が挙げられる。
【0011】
幾つかの実施形態において、芳香族二酸または芳香族二酸クロリドは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−オキシ二安息香酸、3,3’−オキシ二安息香酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、3,3’−スルホニル二安息香酸、3,4’−スルホニル二安息香酸、4,4’−二安息香酸、3,3’−二安息香酸、3,4’−二安息香酸およびそれらの混合物である。更に、カルボン酸の二酸クロリド類似体を用いることが可能である。これらには、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、4,4’−オキシジベンゾイルクロリド、3,3’−オキシジベンゾイルクロリド、4,4’−スルホニルジベンゾイルクロリド、3,3’−スルホニルジベンゾイルクロリド、3,4’−スルホニルジベンゾイルクロリド、4,4’−ジベンゾイルクロリド、3,3’−ジベンゾイルクロリドおよび3,4’−ジベンゾイルクロリドが挙げられる。
【0012】
幾つかの実施形態はパラフェニレンジアミンを含むアラミドポリマーまたはコポリマーに関する。
【0013】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブまたはそれらの混合物を含むことが可能である。幾つかの実施形態において、カーボンナノチューブは5〜100%の多層カーボンナノチューブを含む。特定の実施形態において、ポリマーに導入されたナノチューブは、100:1より大きい平均アスペクト比を有する。幾つかの実施形態において、カーボンナノチューブの平均長さは50ナノメートルより長く、幾つかの実施形態において、100ナノメートルより長い。特定の実施形態において、カーボンナノチューブは浸出限界より低い濃度で存在する。
【0014】
本発明の要件内で機能するいかなる溶媒も用いてもよい。第1の溶媒および第2の溶媒には、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミドおよび/またはN,N,N’,N’−テトラメチルウレアが挙げられる。適する第3の溶媒には、硫酸および/またはメタンスルホン酸が挙げられる。幾つかの実施形態において、第1の溶媒および第2の溶媒はN−メチル−2−ピロリジノンであり、第3の溶媒は硫酸である。
【0015】
幾つかの実施形態において、アラミドはポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。
【0016】
本発明は本明細書に記載された方法によって製造された組成物にも関する。
【0017】
他の実施形態は、本明細書で開示された方法によって製造された組成物を含む物品を含む。
【0018】
本発明は、本開示の一部をなす以下の詳しい説明および実施例を参照することにより、より容易に理解され得る。本明細書で記載されたおよび/または示された特定の装置、方法、条件またはパラメータに本発明が限定されず、本明細書で用いられる用語があくまで例として特定の実施形態を記載する目的のためのものであり、権利請求された本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0019】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で用いられるとき、単数形(「a」、「an」および「the」)は、文脈から特に明示されない限り、複数を含み、特定の数値への言及は少なくとも当該特定値を含む。値の範囲が示されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、「約」という先行詞の使用によって値が近似値として示されるとき、特定の値が別の実施形態をなすことが理解される。すべての範囲は両端を含み、組み合わせられる。成分または式中に変数が複数回出現する場合、各出現についての定義は、他のすべての出現時の定義と独立している。置換基および/または変数の組み合わせは、こうした組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許される。
【0020】
「重合」という用語は、モノマーより高い分子量の分子を生成させるためのモノマーの縮合を意味する。重合の一例は、芳香族二酸クロリドと芳香族ジアミンの両方の残基を含有する材料を製造するための芳香族二酸クロリドと芳香族ジアミンの反応である。
【0021】
「担体ポリマー」は、第1の溶媒中でカーボンナノチューブの分散を促進するポリマーを意味することを意図している。
【0022】
本明細書で用いられる「分散液」という用語は、分散した粒子を含有する液体またはコロイドである。
【0023】
本明細書で用いられる「電子親和度」は、分子が電子を獲得して負イオンを生成させるときに起きるエネルギー変化である。
【0024】
「浸出限界」は、カーボンナノチューブが互いに触れ始めて実質的に連続の接続を形成する限界濃度を意味する。
【0025】
二酸の「二酸クロリド類似体」は、対応する酸クロリドの−CO2H基が−COClとして存在する組成物であることを意図している。幾つかの実施形態において、二酸クロリドは、当業者に知られている方法によって二酸から製造される。これらの化合物は、例えば、カルボン酸を塩化チオニルと反応させることにより調製することが可能である。
【0026】
「アラミド」は、アミド(−CO−NH−)連結の少なくとも85%が2個の芳香族環に直接結合されているポリアミドを意味する。適するアラミド繊維は、「Man−Made Fibers−Science and Technology」、第2巻、Section Titled Fiber−Forming Aromatic Polyamide、297頁、W.Blackら、Interscience Publichers、1968年に記載されている。アラミド繊維は、米国特許第4,172,938号明細書、米国特許第3,869,429号明細書、米国特許第3,819,587号明細書、米国特許第3,673,143号明細書、米国特許第3,354,127号明細書および米国特許第3,094,511号明細書でも開示されている。添加剤はアラミド溶液と共に用いることが可能である。10重量%ほどの他のポリマー材料をアラミドとブレンドすることが可能であるか、またはアラミドのジアミンの代わりに用いられた10%ほどの他のジアミンもしくはアラミドの二酸クロリドまたは二酸の代わりの10%ほどの他の二酸クロリドまたは二酸を有するコポリマーを用いることが可能である。
【0027】
好ましい1種のアラミドはパラアラミドであり、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)は好ましいパラアラミドである。PPD−Tは、p−フェニレンジアミンとテレフタロイルクロリドのほぼモル−モル重合から生じるホモポリマーを意味し、そしてp−フェニレンジアミンと組み合わせた少量の他のジアミンの導入とテレフタロイルクロリドと組み合わせた少量の他の二酸クロリドの導入から生じるコポリマーも意味する。通例において、他のジアミンおよび他の二酸クロリドが重合反応を妨げる反応性基をもたない場合に限り、他のジアミンおよび他の二酸クロリドをp−フェニレンジアミンまたはテレフタロイルクロリドの約10モル%ほどまでの量で、またはおそらく若干より多い量で用いることが可能である。PPD−Tは、他の芳香族ジアミンおよび、例えば、2,6−ナフタロイルクロリドまたはクロロテレフタロイルクロリドもしくはジクロロテレフタロイルクロリドまたは3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの他の芳香族二酸クロリドの導入から生じるコポリマーも意味する。
【0028】
「カーボンナノチューブ」に関しては、単層型と多層型の両方を含む。特定の実施形態において、カーボンナノチューブは約50〜約100%の多層カーボンナノチューブを含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、ナノチューブは100:1より大きいアスペクト比を有する。特定の実施形態において、ナノチューブは100〜10,000ナノメートルの平均長さを有する。
【0030】
カーボンナノチューブは様々な商業供給業者から得ることが可能である。カーボンナノチューブを製造するための種々の技術は、当該技術分野において知られている。例えば、米国特許第5,753,088号明細書および米国特許第5,482,601号明細書を参照されたい。これらの特許は参照により本明細書に援用する。カーボンナノチューブを製造するために一般に用いられる3つの技術は、レーザー蒸発、電気アーク、気相技術である。幾つかの実施形態において、(1)HipCo、(2)レーザーオーブン技術および(3)化学蒸着法(CVD)に限定されないが、それらを含む様々な技術によってカーボンナノチューブを製造することが可能である。
【0031】
CVD技術は、グラファイトを蒸発させてカーボンナノチューブを製造するパルスレーザーを用いるレーザー蒸発技術を含む。例えば、A.G.Rinzlerら、Appl.Phys.A、1998年、67、29を参照されたい。典型的には、この技術は約1.1〜1.3ナノメートル(nm)の直径を有するナノチューブを製造する。
【0032】
電気アーク技術は電気アーク放電を用いてカーボンナノチューブを製造する。単層ナノチューブは、C.Journetら、Nature(London)、388(1997年)、756によって記載されたように、金属触媒とグラファイト粉末の混合物(Ni:Y;C)が充填されたグラファイトアノードによるヘリウム雰囲気における電気アーク放電によって製造することが可能である。C.JournetおよびP.Bernier、Appl.Phys.A、67、1も参照されたい。典型的には、こうしたSWNTは最密管束として製造され、管束は5〜20nmの範囲の直径を有する。典型的には、単層カーボンナノチューブは、ファンデルワールス相互作用によって結合された二次元周期性三角格子中で整列されている。カーボンナノチューブを製造する電気アーク技術は、更に記載されている。この技術からの平均カーボンナノチューブ直径は、典型的には約1.3〜1.5nmであり、三角格子パラメータは約1.7nmである。
【0033】
カーボンナノチューブを製造するための気相技術は、典型的には、レーザー蒸発および電気アーク技術より効率的である。HiPcoTM法と呼ばれることがあるこの技術は、本質的に副生物フリーである比較的大量の高純度カーボンナノチューブを製造する温度および圧力条件下で一酸化炭素を用いる気相触媒反応を用いてカーボンナノチューブを製造する。HiPco法は、P.Nikolaevら、Chem.Phys.Lett.、1999年、313、91によって更に詳しく記載されている。
【0034】
米国特許出願公開第20040266939号明細書(EPO特許出願欧州特許第1,359,121号明細書としても公開されている)には、メチル−2−ピロリジノン(NMP)溶媒にカーボンナノチューブを分散させる方法が開示されている。特に、ナノチューブの表面は非被覆官能性ポリマーの使用によって官能化されている。官能性共役基は、一般にナノチューブの可溶化を高めるように選択される。硬質官能性共役ポリマーの例には、ポリ(アリーレンエチニレン)およびポリ(3−デシルチオフェン)が挙げられる。幾つかの実施形態において、ポリ(アリーレンエチニレン)はポリ(フェニレンエチニレン)である。官能化非被覆(non−wrapping)ポリマーの他の例は、米国特許出願公開第20040266939号明細書において見られる。
【0035】
適する芳香族二酸および芳香族二酸クロリドには、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド、イソフタロイルクロリド、4,4’−オキシジベンゾイルクロリド、3,3’−オキシジベンゾイルクロリド、4,4’−スルホニルジベンゾイルクロリド、3,3’−スルホニルジベンゾイルクロリド、3,4’−スルホニルジベンゾイルクロリド、4,4’−ジベンゾイルクロリド、3,3’−ジベンゾイルクロリド、3,4’−ジベンゾイルクロリドが挙げられる。
【0036】
本発明において有用な芳香族ジアミンには、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルジアミン、3,3’−ジフェニルジアミン、3,4’−ジフェニルジアミン、4,4’−オキシジフェニルジアミン、3,3’−オキシジフェニルジアミン、3,4’−オキシジフェニルジアミンおよび4,4’−スルホニルジフェニルジアミンが挙げられる。
【0037】
担体ポリマーには、ポリ(アリーレンエチニレン)[PPE]およびポリアリーレンエチニレン[PAE]などの硬質共役ポリマーが挙げられる。
【0038】
担体ポリマーと共にカーボンナノチューブを分散させるために有用な溶媒には、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)、N,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)およびN,N’−ジメチルエチレンウレア(DMEU)が挙げられる。
【0039】
芳香族ジアミンを溶解させるために有用な溶媒には、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)、N,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)およびN,N’−ジメチルエチレンウレア(DMEU)が挙げられる。
【0040】
アラミドポリマーまたはコポリマーを含有するアラミドを溶解させるために有用な溶媒には、硫酸およびメタンスルホン酸が挙げられる。
【0041】
本発明は、本明細書に記載された組成物を含む物品にも関する。これらの物品には、繊維、フィルム、粉末、パルプ、樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0042】
実施例1〜5
カーボンナノチューブ分散液の調製
(Zyvex Corporationに譲渡された)欧州特許第1,359,121号明細書に記載された手順により1gの多層カーボンナノチューブを500mLのNMPに分散させた。
【0043】
分散させたCNTの存在下でのPPD−Tポリマーの調製
8.3%の塩化カルシウム、p−フェニレンジアミン(PPD)を含有するN−メチル−2−ピロリドン(NMP)(溶媒プレミックス)および表1で規定されたカーボンナノチューブ分散液(NMP500ml中のカーボンナノチューブ1グラム)をバスケットスターラーおよびN2出入口を備えた予め乾燥させた反応ケトル(1リットル)に投入した。
【0044】
すべてのPPD粒子を完全に溶解させるまで内容物を室温で攪拌した。混合物を氷水浴内で5℃に冷却した。テレフタロイルクロリド(TCl)の第1の部分を一度に添加し、混合物を5分にわたり攪拌した。氷水浴を取り去った後、TClの第2の部分を添加した。混合物を高速で攪拌した。溶液は数分後に非常に粘性になり、最後に小粒子に砕いた。攪拌を更に15分にわたり続け、液体が中性を示すまで内容物を水で数回洗浄した。
【0045】
得られたポリマークラムを真空で120℃で一晩乾燥させた。固有粘度を測定し、表1に記録した。
【0046】
表1

【0047】
表1において、「重量」はプレミックスの重量(グラム)である。プレミックスは、NMP中に5.508%(w/w)のPPDおよび8.03%の塩化カルシウムを含有している。PPDおよびナノチューブ*は重量(グラム)単位である。ナノチューブ*は996グラムのNMP中に2グラムのMWNTおよび2グラムのPPE担体ポリマーを含有している。「%CNT」は、ポリマーの重量を基準にしたナノチューブの重量%である。
【0048】
「IV」は米国特許第3,869,429号明細書に記載された手順によって測定する。この特許の開示は参照により本明細書に援用する。固有粘度(I.V.)は以下の式によって定義される。
I.V.=ln(ηrel)/c
式中、「c」はポリマー溶液の濃度(溶媒100ml中のポリマー0.5グラム)であり、ηrel(相対粘度)は30℃で測定したポリマー溶液と溶媒の流れ時間との間の比である。報告され本明細書で規定された固有粘度値は濃硫酸(95〜98%(w/w))を用いて決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミドポリマー溶液を調製する方法であって、
第1の溶媒中にカーボンナノチューブと担体ポリマーとを含む第1の分散液を提供する工程と、
前記担体ポリマーの電子親和度より低い電子親和度を有する芳香族ジアミンと任意成分である第2の溶媒とを含む第1の溶液を提供する工程と、
前記第1の分散液に前記第1の溶液を添加して第2の分散液を生成させる工程と、
芳香族二酸または芳香族二酸クロリドを前記第2の分散液に添加する工程と、
前記芳香族二酸または芳香族二酸クロリドを前記芳香族ジアミンと重合させて、第1のアラミド溶液中にカーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを生成させる工程と、
前記カーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを分離する工程と、
前記カーボンナノチューブ含有アラミドポリマーまたはコポリマーを第3の溶媒に溶解させて、第2のアラミド溶液を生成させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記芳香族ジアミンが、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルジアミン、3,3’−ジフェニルジアミン、3,4’−ジフェニルジアミン、4,4’−オキシジフェニルジアミン、3,3’−オキシジフェニルジアミン、3,4’−オキシジフェニルジアミンおよび4,4’−スルホニルジフェニルジアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族二酸または芳香族二酸クロリドが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリドまたは式
【化1】

(式中、ZはOHまたはClであり、Yは−O−または−SO2−である)
の化合物の少なくとも1種を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二酸または芳香族二酸クロリドが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−オキシ二安息香酸、3,3’−オキシ二安息香酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、3,3’−スルホニル二安息香酸、3,4’−スルホニル二安息香酸、4,4’−二安息香酸、3,3’−二安息香酸、3,4’−二安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロリド、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、4,4’−オキシジベンゾイルクロリド、3,3’−オキシジベンゾイルクロリド、4,4’−スルホニルジベンゾイルクロリド、3,3’−スルホニルジベンゾイルクロリド、3,4’−スルホニルジベンゾイルクロリド、4,4’−ジベンゾイルクロリド、3,3’−ジベンゾイルクロリドおよび3,4’−ジベンゾイルクロリドの少なくとも1種を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アラミドポリマーまたはコポリマーがパラフェニレンジアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブが50〜100%の多層カーボンナノチューブを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の溶媒および第2の溶媒がN−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N,N’,N’−テトラメチルウレアである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーに導入された前記ナノチューブが100:1より大きい平均アスペクト比を有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブの平均長さが50ナノメートルより長い請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブが浸出限界より低い濃度で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の溶媒が硫酸またはメタンスルホン酸である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の溶媒および第2の溶媒がn−メチル−2−ピロリジノンであり、前記第3の溶媒が硫酸である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アラミドがポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製造される組成物。
【請求項15】
前記アラミドがポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記芳香族二酸がテレフタル酸である請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記芳香族ジアミンがパラフェニレンジアミンである請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記芳香族二酸がテレフタル酸であり、前記芳香族ジアミンがパラフェニレンジアミンである請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記カーボンナノチューブが100:1より大きい平均アスペクト比を有する請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
請求項14に記載の組成物を含む物品。

【公表番号】特表2010−511095(P2010−511095A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539302(P2009−539302)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/024494
【国際公開番号】WO2008/066838
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】