説明

ガス処理装置

【課題】ハニカム構造体に直接水分を補給して、更なるガス処理能力の向上を図る。
【解決手段】ハニカム構造体4−1〜4−4を水分補給のための対象ハニカム構造体とし、ハニカム構造体4−1および4−4のガス流対向面4bに細管14の給水口14−1および14−2を接して設け、ハニカム構造体4−2および4−3のガス流対向面4bに細管15の給水口15−1および15−2を接して設け、毛細管現象又は送風ファンの負圧現象によりタンク16,17内の水分を細管14,15を通してハニカム構造体4−1〜4−4に直接補給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理対象ガスに含まれる有害ガスを浄化するガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気ガス中で高電圧放電を行ってプラズマ状態を作ることで、排気ガスに含まれる有害ガスの浄化を行う技術が知られている。近年、この技術は、脱臭を目的として、工場の排気を浄化する浄化装置や室内の空気を浄化する空気清浄機に応用されつつある。
【0003】
熱的に非平衡な状態、つまり気体の温度やイオン温度に比べ、電子温度が非常に高い状態のプラズマ(非平衡プラズマ(以下、単にプラズマと言う))は、電子衝突でつくられるイオンやラジカルが常温では起こらない化学反応を促進させるので、有害ガスを効率的に除去あるいは分解することが可能な媒体として有害ガス処理において有用であると考えられている。実用化で肝心なことは、処理時のエネルギーの効率の向上と、プラズマで処理した後に完全に安全な生成物質へと変換されることである。
【0004】
一般に、大気圧でのプラズマは気体放電や電子ビームなどによって生成される。現在において、適用が考えられているものに、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、フロン、CO2 ,揮発性有機溶剤(VOC)などがある。中でもNOxは車の排ガスなどに含まれているので早急な実用化が必要となっている。
【0005】
NOx除去における放電プラズマ(気体放電によって生成されたプラズマ)内の現象は、電子衝突によって1次的に生成されたイオンやラジカルが最初の反応を起こし、その後の反応を通してN2 ,H2 O,NH4 NO3 などの各粒子に変換されて行くものと考えられている。
【0006】
また、有害ガスを例えばアセトアルデヒドやホルムアルデヒドとした場合、この有害ガスをプラズマを通すことによって、CO2 とH2 Oに変換される。この場合、副生成物として、オゾン(O3 )が発生する。
【0007】
図4に放電プラズマを利用した従来のガス処理装置の要部を例示する(例えば、特許文献1参照)。同図において、1は処理対象ガス(有害ガスを含む空気)GSが流れるダクト(通風路)であり、ダクト1内には、処理対象ガスGSの通過方向に沿って放電電極2とグランド電極3とが交互に配置され、これら電極2,3間にセルと呼ばれる多数の貫通孔4aを有するハニカム構造体4が配設されている。5は高電圧電源である。なお、ハニカム構造体4はセラミックス等の絶縁体で形成されており、特許文献2にもその使用例がある。
【0008】
放電電極2は、金属製メッシュ、極細ワイヤ、または針状体等で形成されている。各放電電極2は、導線6によって高電圧電源5の+極に接続されている。グランド電極3は、金属性メッシュ等で形成されている。各グランド電極3は、導線7によって高電圧電源5の−極に接続されている。
【0009】
このガス処理装置では、処理対象ガスGSをダクト1に流し、放電電極2とグランド電極3との間に高電圧電源5からの高電圧(数kV〜数10kV)を印加する。これにより、各ハニカム構造体4の貫通孔4a内にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0010】
しかしながら、このような構成のガス処理装置では、次のような問題点を有する。
(1)多数のハニカム構造体4を有するが、ばらつきなく均一なプラズマを発生させる技術が確立されておらず、ハニカム構造体4の性能にばらつきが出てしまう。例えば、同じハニカム構造体4同士でもインピータンス値が異なることがあり、また1つのハニカム構造体4内でも例えばその上下でインピーダンス値が異なるというようなこともあり、全体として均一なプラズマが発生せず、ガス処理能力が不安定となる。また、貫通孔4aだけでのプラズマ発生なので、プラズマの発生量が少なく、ガス処理能力が低い。
【0011】
(2)ハニカム構造体4は吸湿すると低インピーダンスに、乾燥すると高インピーダンスになる特性を持っており、ハニカム構造体4が低インピーダンスになると、流れる電流が増大し放電電極2とグランド電極3との間に印加される高電圧値が低下し、ハニカム構造体4が高インピーダンスになると、流れる電流が減少し放電電極2とグランド電極3との間に印加される高電圧値が上昇する。このような高電圧値の変化に対し、所望のプラズマの発生量を確保し得る高電圧値を得ることのできる高電圧電源5は、その設計に要する工数も含めて非常に高価となる。
【0012】
(3)ハニカム構造体4のそれぞれに対して放電電極2とグランド電極3を設けているため、部品点数が多く、構造も複雑となり、高価となる。
(4)処理対象ガスGSの通過方向(ダクト1の入口から出口への方向)に沿ってハニカム構造体4がダクト1内に配置されているため、ハニカム構造体4のガス流と直交する方向の寸法が長く、これに対してガス流と平行な方向の寸法が短くなっている。このため、ガス流の流速が速いと、処理対象ガスGSがハニカム構造体4の内部でプラズマに晒される時間が短く、ガス処理能力が落ちる。
【0013】
(5)ハニカム構造体4でプラズマ放電が発生する際にはハニカム構造体4内の水分が消費されるので、更にプラズマ放電が活発に行われるにはダクト1内の処理対象ガスGS内の水分がハニカム構造体4内に供給される構造であることが望ましい。しかしながら、電極間に位置するハニカム構造体4の放電面では放電により直ぐに水分が消費されてしまうので、ハニカム構造体4の放電の起こらない面であるハニカム構造体4の側面から水分が供給されねばならないが、ハニカム構造体4の側面は処理対象ガスGSの流れ方向と平行であるので、この側面からは処理対象ガスGSの水分が吸入しずらく、結果としてハニカム構造体4に水分を補給し難く、ガス処理能力を高められない。
【0014】
そこで、本出願人は、上述した従来のガス処理装置の問題点を解決するものとして、図5に示すような構造のガス処理装置を提案した(特許文献3参照)。このガス処理装置では、ダクト1の入口から出口への処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔G(G1〜G3)を設けて、多数の貫通孔(丸孔)4aを有する複数のハニカム構造体4(4−1〜4−4)を配置している。
【0015】
なお、8はハニカム構造体4−1〜4−4のうち処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向の一端に位置するハニカム構造体4−1の外側に配置された第1の電極、9はハニカム構造体4−1〜4−4のうち処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向の他端に位置するハニカム構造体4−4の外側に配置された第2の電極であり、第1の電極8と第2の電極9との間には高電圧電源(高電圧源)5からの高電圧が印加される。この高電圧の印加により、ハニカム構造体4の貫通孔4aおよびハニカム構造体4間の空間10(10−1〜10−3)にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0016】
このガス処理装置では、処理対象ガスGSが各ハニカム構造体4の貫通孔4aやハニカム構造体4間の空間10でプラズマに晒される時間を長くでき、ガス分解が行われる機会が多くなる。また、各ハニカム構造体4の処理対象ガスGSの通過方向に面する上流側の面(最上流の面)4bでは、プラズマが発生せず、処理対象ガスGSの流れに接すると共に、処理対象ガスGSの通過方向への流体圧を受けることから、この面(以下、この面をガス流対向面と呼ぶ)4bより処理対象ガスGS中の水分がハニカム構造体4内に入り込み、ハニカム構造体4でのプラズマ発生を活性化させる。これにより、処理能力が向上し、高速流におけるガス処理能力の低下を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−140562号公報
【特許文献2】特開2001−276561号公報
【特許文献3】特開2008−194669号公報
【特許文献4】特開2004−089708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、この特許文献3に示されたガス処理装置は、上述したような優れた効果を有してはいるが、ハニカム構造体4には処理対象ガスGSの水分をハニカム構造体4内に補給するガス流対向面4bが一面しかなく、このガス流対向面4bの面積は限られているので、それ以上のガス流対向面4bからの水分の補給はできず、更なるガス処理能力の向上が望めない。
【0019】
なお、特許文献4には、金属電極とハニカム電極との間の空間へ加湿装置によって水分を送り込むことにより、処理対象ガス中の水分濃度を高め、プラズマ放電を活性化させてガス浄化能力を高めるようにしたガス浄化装置が示されている。しかしながら、この特許文献4に示された技術を図5に示したガス処理装置に適用した場合、ハニカム構造体4間の空間10ではプラズマ放電によって水分が消費されてしまうので、連続して水分を送り込む必要があり、加湿装置を稼働し続けるために多くの電力を消費してしまう。
【0020】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ハニカム構造体に直接水分を補給して、更なるガス処理能力の向上を図ることができるガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このような目的を達成するために本発明は、ハニカム構造体の少なくとも1つを水分補給のための対象ハニカム構造体とし、この対象ハニカム構造体の処理対象ガスの流れに対向するガス流対向面に接して、その対象ハニカム構造体の内部に水分を補給する水分補給手段を設けたものである。
【0022】
例えば、本発明では、水分補給手段を、貯水槽と、該貯水槽と対象ハニカム構造体のガス流対向面との間に配置される細管とから構成する。この場合、細管は毛細管現象又は送風ファンの負圧現象により貯水槽内の水分を対象ハニカム構造体の内部に補給する。このような細管を用いると、加湿器のように電力を供給しなくても水分を補給することができ、省エネルギーとなる。また、プラズマ放電によって水分が消費されると、その消費分に応じて水分が補給されるものとなる。
【0023】
本発明において、ハニカム構造体が処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向に間隔を設けて配置されているものとすれば、全てのハニカム構造体に対して、プラズマ放電の生じない通風路の上流側からガス流対向面に向けて安定して水分を補給でき、ガスの流れにのってハニカム構造体内を伝わって、ハニカム構造体の下流側まで水分が補給されるものとなる。
【0024】
本発明では、ハニカム構造体に直接水分が補給され、そこからハニカム構造体の内部を水分が伝達されるので、ハニカム構造体間の空間のプラズマ放電によって水分が簡単に消費され難くなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ハニカム構造体の少なくとも1つを水分補給のための対象ハニカム構造体とし、この対象ハニカム構造体の処理対象ガスの流れに対向するガス流対向面に接して、その対象ハニカム構造体の内部に水分を補給する水分補給手段を設けるようにしたので、ハニカム構造体に直接水分が補給されるものとなり、ハニカム構造体間の空間のプラズマ放電によって水分が簡単に消費され難くなり、更なるガス処理能力の向上を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るガス処理装置の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。
【図2】本発明に係るガス処理装置の他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す図である。
【図3】本発明に係るガス処理装置の別の実施の形態(実施の形態3)の要部を示す図である。
【図4】放電プラズマを利用した従来のガス処理装置の要部を例示する図である。
【図5】特許文献3に示されたガス処理装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係るガス処理装置の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。同図において、図5と同一符号は図5を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0029】
この実施の形態においても、図5に示したガス処理装置と同様に、処理対象ガスGSの通過方向(ダクト1の入口から出口への方向)に対し直交する方向に沿って、複数のハニカム構造体4を間隔を設けてダクト1内に配置している。
【0030】
この例では、ハニカム構造体4−1と4−2との間に間隔G1を設けて、ハニカム構造体4−3と4−4との間に間隔G2を設けて、ハニカム構造体4−1〜4−4をダクト1内に配置している。
【0031】
また、ダクト1内の複数のハニカム構造体4のうち隣り合うハニカム構造体4−1と4−2を第1のハニカム構造体群とし、この第1のハニカム構造体群の両端に位置するハニカム構造体4−1および4−2の外側に、第1の電極として電極8を、第2の電極として電極9を配置している。
【0032】
同様にして、ダクト1内の複数のハニカム構造体4のうち隣り合うハニカム構造体4−3と4−4を第2のハニカム構造体群とし、この第2のハニカム構造体群の両端に位置するハニカム構造体4−3および4−4の外側に、第1の電極として電極9を、第2の電極として電極11を配置している。
【0033】
なお、本実施の形態において、電極9は第1のハニカム構造体群の第2の電極と第2のハニカム構造体群の第1の電極とを兼ねた共通電極とされているが、第1のハニカム構造体群の第2の電極と第2のハニカム構造体群の第1の電極とを独立した電極とするようにしてもよい。
【0034】
また、本実施の形態において、高電圧電源(高電圧源)5は、第1のハニカム構造体群の電極8と9との間および第2のハニカム構造体群の電極9と11との間に個別に高電圧を印加する単一の電源とされ、電極8および11が導線12によって高電圧電源5の+極に接続され、電極9が導線13によって高電圧電源5の−極に接続されている。
【0035】
ハニカム構造体4は、セラミックス等の絶縁体で形成されており、処理対象ガスGSが通過する多数の貫通孔(セル)4aを有している。各ハニカム構造体4の単位面積当たりの貫通孔4aの数は等しくされている。また、各ハニカム構造体4の形状は等しくされており、電極8,9,11は処理対象ガスGSが通過するように金属メッシュとされている。
【0036】
また、本実施の形態において、ハニカム構造体4−1〜4−4は全て水分補給のための対象ハニカム構造体とされ、ハニカム構造体4−1および4−4のガス流対向面4bに細管14の給水口14−1および14−2が接して設けられ、ハニカム構造体4−2および4−3のガス流対向面4bに細管15の給水口15−1および15−2が接して設けられている。細管14の導水口14−3は第1のタンク(貯水槽)16内に貯えられた水に浸されている。細管15の導水口15−3は第2のタンク(貯水槽)17内に貯えられた水に浸されている。
【0037】
このガス処理装置では、処理対象ガスGSをダクト1内に流し、電極8と9との間および電極9と11との間に高電圧電源5からの高電圧を印加する。これにより、ハニカム構造体4の貫通孔4aおよびハニカム構造体4間の空間10(10−1,10−2)にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0038】
本実施の形態において、プラズマはハニカム構造体4の貫通孔4aだけではなく、ハニカム構造体4間の空間10にも発生する。このため、貫通孔4a内での有害ガスの分子分解効果に加え、ハニカム構造体4間の空間10での有害ガスの分子分解効果が加わり、さらにこの貫通孔4a内での分子分解効果とハニカム構造体4間の空間10での分子分解効果との相乗効果により、有害ガスの無害な物質への分解が促進され、ガス処理能力が高まる。また、ハニカム構造体4間の空間10には、対向する貫通孔4aの縁面から電界が広がって、均一なプラズマが大量に発生する。
【0039】
また、この実施の形態では、各ハニカム構造体4が処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置されているので、処理対象ガスGSの通過方向に沿って配置される場合よりも、処理対象ガスGSが各ハニカム構造体4の貫通孔4aやハニカム構造体4間の空間10でプラズマに晒される時間が長くなる。これにより、ガス分解が行われる機会が多くなり、ガス処理能力が向上し、高速流におけるガス処理能力の低下を防ぐことが可能となる。
【0040】
また、この実施の形態では、第1のハニカム構造体群の電極8と9との間および第2のハニカム構造体群の電極9と11との間に高電圧電源5からの高電圧を個別に印加しているので、空間10−1,10−2での電位を安定的に高電界状態に保ち、プラズマを安定して発生させることが可能となる。
【0041】
さらに、この実施の形態では、処理対象ガスGSをダクト1内に流してのガス処理中、タンク16およびタンク17内の水分がハニカム構造体4−1〜4−4の内部に直接補給される。すなわち、毛細管現象又は処理対象ガスGSを送り込む送風ファン(図示せず)の負圧現象により、細管14を通してタンク16内の水分が吸い上げられ、ハニカム構造体4−1および4−4のガス流対向面4bへ至り、このガス流対向面4bよりハニカム構造体4−1および4−4の内部に補給される。また、細管15を通してタンク17内の水分が吸い上げられ、ハニカム構造体4−2および4−3のガス流対向面4bへ至り、このガス流対向面4bよりハニカム構造体4−2および4−3の内部に補給される。
【0042】
この場合、ハニカム構造体4−1〜4−4は処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向に間隔を設けて配置されているので、ハニカム構造体4−1〜4−4の内部に補給された水分がガスの流れにのってハニカム構造体4−1〜4−4内を伝わって、ハニカム構造体4−1〜4−4の下流側まで水分が補給されるものとなる。また、ハニカム構造体4−1〜4−4に直接水分が補給され、そこからハニカム構造体4−1〜4−4の内部を水分が伝達されるので、ハニカム構造体4間の空間10のプラズマ放電によって水分が簡単に消費され難くなる。これにより、ガス処理能力の向上が図られる。
【0043】
また、本実施の形態では、毛細管現象又は送風ファンの負圧現象により、ハニカム構造体4−1〜4−4の内部への水分の補給が細管14および15を通して行われるので、加湿器のように電力を供給しなくても水分を補給することができ、省エネルギーとなる。また、プラズマ放電によって水分が消費されると、その消費分に応じて水分が補給されるものとなり、プラズマ放電の安定化に必要な水分を効率よく供給することができる。また、風量が大きくなるにつれて、ガス処理装置内が負圧になるため、タンク16および17からの水分供給量も多くなり、ガス処理の効率の向上に寄与する。
【0044】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置された複数のハニカム構造体4のうち隣り合うハニカム構造体4−1と4−2を第1のハニカム構造体群とし、隣り合うハニカム構造体4−3と4−4を第2のハニカム構造体群とし、この第1および第2のハニカム構造体群に個別に高電圧を印加するようにしたが、図2に示すように、ダクト1内にハニカム構造体群を1群のみ配置した構成としてもよい。
【0045】
図2に示した例では、処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けてハニカム構造体4−1,4−2,4−3,4−4をダクト1内に配置し、このハニカム構造体4−1〜4−4のうち一端に配置されるハニカム構造体4−1の外側に第1の電極8を配置し、他端に配置されるハニカム構造体4−4の外側に第2の電極9を配置し、この第1の電極8と第2の電極9との間に高電圧電源5からの高電圧を印加するようにしている。
【0046】
〔実施の形態3〕
また、図3に示すように、処理対象ガスGSの通過方向に対し沿って間隔を設けてハニカム構造体4−1,4−2,4−3,4−4をダクト1内に配置し、このハニカム構造体4−1〜4−4のうち一端に配置されるハニカム構造体4−1の外側に第1の電極8を配置し、他端に配置されるハニカム構造体4−4の外側に第2の電極9を配置し、この第1の電極8と第2の電極9との間に高電圧電源5からの高電圧を印加するようにしてもよい。
【0047】
この場合、例えば、ハニカム構造体4−1を水分補給のための対象ハニカム構造体とし、ハニカム構造体4−1のガス流対向面4bに細管14の給水口14−1を接して設け、タンク16内の水分をハニカム構造体4−1の内部に補給するようにする。なお、ハニカム構造体4−1だけではなく、ハニカム構造体4−2も水分補給のための対象ハニカム構造体とし、同様にしてタンク16内の水分を補給するようにしてもよく、ハニカム構造体4−1〜4−4の全てを水分補給のための対象ハニカム構造体としてもよい。
【0048】
なお、上述した実施の形態1〜3において、ハニカム構造体4はオゾンを分解する触媒機能を備えたものとしてもよく、処理対象ガスGSの通過方向の下流位置にオゾンを分解する触媒を設けるようにしてもよい。
【0049】
また、上述した実施の形態1では、1つのハニカム構造体群中のハニカム構造体4の数を2つとしたが、さらにその数を増やすようにしてもよい。また、ハニカム構造体群の数も2つに限られるものではなく、さらにその数を増やしてもよい。実施の形態2,3でも、同様であり、ハニカム構造体の数は2つ以上あればよい。
【0050】
また、上述した実施の形態1では、第1のハニカム構造体群と第2のハニカム構造体群とに単一の高電圧電源5からの高電圧を個別に印加するようにしたが、異なる高電圧電源からの高電圧を個別に印加するようにしてもよい。例えば、印加する高電圧の値を変えたり、印加する高電圧の種類(交流、直流など)を変えたり、印加する高電圧の周波数を変えたりすることにより、第1のハニカム構造体群と第2のハニカム構造体群とでプラズマの発生量を変えて、分解可能な有害ガスの種類を異ならせたりすることが可能となる。
【0051】
また、上述した実施の形態1〜3において、副生成物としてオゾンを大量に発生させ、オゾン発生器として転用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のガス処理装置は、燃料電池等に用いられる水素を効率的に生成する目的で、炭化水素類等から水素含有ガスを生成する、いわゆる改質にも適用することができる。例えばオクタン(ガソリンの平均分子量に比較的近い物質)C818の場合は、本ガス処理装置に供給すると下記(1)式で示される化学反応が促進され、その結果水素ガスを効率よく生成することができる。
818+8H2O+4(O2+4N2)→8CO2+17H2+16N2・・・・(1)
【符号の説明】
【0053】
1…ダクト(通風路)、4(4−1〜4−4)…ハニカム構造体、4a…貫通孔(セル)、4b…ガス流対向面、5…高電圧電源、8,9,11…電極、10(10−1,10−2,10−3)…空間、G(G1,G2,G3)…間隔、GS…処理対象ガス、14,15…細管、14−1,14−2,15−1,15−2…給水口、14−3,15−3…導水口、16,17…タンク(貯水槽)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路に間隔を設けて配置され、前記通風路を流れる処理対象ガスが通過する多数の貫通孔を有する複数のハニカム構造体と、
前記複数のハニカム構造体のうち一端に配置されるハニカム構造体の外側に配置される第1の電極と、
前記複数のハニカム構造体のうち他端に配置されるハニカム構造体の外側に配置される第1の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に高電圧を印加し前記ハニカム構造体の貫通孔および前記ハニカム構造体間の空間にプラズマを発生させる高電圧源とを備えたガス処理装置において、
前記ハニカム構造体の少なくとも1つを水分補給のための対象ハニカム構造体とし、この対象ハニカム構造体の前記処理対象ガスの流れに対向するガス流対向面に接して、その対象ハニカム構造体の内部に水分を補給する水分補給手段
を備えることを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
通風路に間隔を設けて配置され、前記通風路を流れる処理対象ガスが通過する多数の貫通孔を有する複数のハニカム構造体と、
前記複数のハニカム構造体のうち隣り合う複数のハニカム構造体を1群のハニカム構造体群とし、このハニカム構造体群の両端に位置するハニカム構造体の両端に位置するハニカム構造体の外側に配置された第1および第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に高電圧を印加し前記ハニカム構造体の貫通孔および前記ハニカム構造体間の空間にプラズマを発生させる高電圧源とを備えたガス処理装置において、
前記ハニカム構造体の少なくとも1つを水分補給のための対象ハニカム構造体とし、この対象ハニカム構造体の前記処理対象ガスの流れに対向するガス流対向面に接して、その対象ハニカム構造体の内部に水分を補給する水分補給手段
を備えることを特徴とするガス処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたガス処理装置において、
前記ハニカム構造体は、前記処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向に間隔を設けて配置されている
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項4】
請求項1−3の何れか1項に記載されたガス処理装置において、
前記水分補給手段は、
貯水槽と、該貯水槽と前記対象ハニカム構造体のガス流対向面との間に配置される細管とからなる
ことを特徴とするガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−206705(P2011−206705A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77610(P2010−77610)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】