説明

ガス化発電装置

【課題】ガス精製装置における苛性ソーダなどの薬液費の低減、改質炉での酸素使用量の低減を図るとともに、改質炉とその後段の改質ガス処理装置、精製装置をコンパクト化することを可能とする。
【解決手段】脱水汚泥aは乾燥機21経由でガス化炉22で乾留状態で熱分解される。発生した熱分解ガスbは、改質炉24に送給され、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの可燃ガスを含む改質ガスcに変換され、この改質ガスcは、ガス精製装置25で精製され、精製ガスdとしてガスエンジン27に供給され、発電装置(図示せず)を運転する。
のである。ガスエンジン27の排ガスfは煙突29から大気中に排出される。このガス化発電装置では、ガス化炉22からの熱分解ガスbを改質炉24の手前で分岐し、その熱分解ガスb中の可燃成分を燃焼させて熱回収する熱回収装置3を付設し、回収した熱量を脱水汚泥aの乾燥機21の熱源に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみや、下水汚泥、木質廃棄物などのバイオマスから得た熱分解ガスを利用した発電装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみや、下水汚泥、木質廃棄物などバイオマスから可燃ガスを得て、ガスエンジン、ガスタービン等により発電する装置が、例えば、図2に例示するフローとして知られている。これに基づき概説すると、原料となる脱水汚泥aは乾燥機11を経てガス化炉12に投入され、約800℃の還元雰囲気下で加熱される。かくして脱水汚泥aは熱分解され、発生した熱分解ガスbは、集塵機13で焼却灰など残渣を分離して改質炉14に導入される。
【0003】
改質炉14では、供給された酸素ガスや水蒸気などと約1000℃で熱化学反応して水素ガス、一酸化炭素ガスなどの可燃ガスを含む改質ガスcに変換される。この改質ガスcは、集塵機で微細ダストを除去する集塵機15a、苛性ソーダなどアルカリ水溶液を用い有害成分を除去する除去装置15bなどのガス精製装置によって精製され、精製ガスdとしてガスエンジン17aに供給される。
【0004】
そして、このガスエンジン17aにより発電機17が運転され、所要個所に適宜に給電するように構成されている。一方、精製ガスdの一部は、燃焼ボイラ18に導入され、乾燥機11や改質炉14の供給される水蒸気eを得るように供せられる。そして、消費した燃焼ガスは煙突19から大気中に排出される。
【0005】
なお、このようなガス化発電装置は、特許文献1、2などに開示されている。すなわち、有機性廃棄物をガス化炉で熱分解し、残渣を集塵装置で分離し、次いで改質炉で改質ガスとなし、ガスエンジンに供給して発電するようにしたものである。ここでは、改質ガス中の有害成分などを除去するガス精製装置の図示を省略しているが、実機にあっては相応のガス精製装置を配置するものであった。
【0006】
【特許文献1】特開平10−132237号公報:図1
【特許文献2】特開2007−229563号公報:図1、2
【0007】
一般にガスエンジンに供給される精製ガスdには、有害ガス成分であるH2S,HCN、NH3、COS、HClが含まれるのは好ましくなく、その許容濃度は、各成分それぞれ数ppm〜数十ppmであった。そこで、前記ガス精製装置の有害成分除去装置15bでは、苛性ソーダなどアルカリ水溶液に改質ガスcを接触させてガス中から前記有害ガス成分を除去し、前記許容濃度となるよう管理されている。従って、このようなガス化発電装置の運転に際しては、苛性ソーダなどの高額の薬液費が必要となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、ガス精製装置における苛性ソーダなどの薬液費の低減を図るとともに、改質炉とその後段の改質ガス処理装置、精製装置をコンパクト化することを可能とし、さらに改質炉での酸素供給量を低減するガス化発電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス化発電装置は、ガスエンジンやガスタービン等の発電装置に供給される精製ガス中の有害ガス成分であるH2S,HCN、NH3、COS、HClの許容濃度に注目してなされたものである。すなわち、脱水汚泥などの乾燥機および改質炉などの熱源として水蒸気または加熱空気を得るための燃焼装置(図2の燃焼ボイラ18に相当)に供給される燃料ガスは、前記有害ガス許容濃度より、かなり高濃度の有害ガスが存在しても支障がないことに着目してなされたものである。
【0010】
上記の問題は、都市ごみやバイオマスを熱分解するガス化炉と、ガス化炉から得た熱分解ガスを改質する改質炉と、改質炉で得た改質ガスを精製するための有害成分除去装置と、得られた精製ガスを燃料として発電する発電装置とを含む一連の装置群からなるガス化発電装置において、前記ガス化炉から得た熱分解ガスを改質炉の手前で分岐し、その熱分解ガス中の可燃成分を燃焼させて熱回収する熱回収装置を付設したことを特徴とする本発明のガス化発電装置によって解決することができる。
【0011】
この本発明は、前記熱回収装置が、供給された熱分解ガスを800℃〜1000℃で完全燃焼する熱回収用燃焼炉と、その後段で燃焼ガスの顕熱を回収する熱交換器とを含み、回収した熱量を都市ごみまたはバイオマスの乾燥熱源に利用するようにした形態に具体化でき、さらに、前記ガス化炉から得た熱分解ガスのうち前記改質炉へ供給する量と、前記熱回収装置に供給する量とを制御するように好ましく具体化される。
さらに、前記ガス化炉から得た熱分解ガスを、改質炉と熱回収用燃焼炉に分岐する配管の改質炉入り口部分にガス遮断装置を設け、熱分解ガス全量を熱回収用燃焼炉に供給することを可能とした形態とするのが好ましい。また、前記回収用燃焼炉の燃焼用空気として、前記都市ごみやバイオマスの乾燥時に発生する臭気成分を捕集して含む空気を利用するのが好ましい。
【0012】
なお、本発明においてバイオマスとは、下水処理場で発生する下水汚泥、パルプ工場で発生するパルプスラッジなど産業廃棄物のほか、家庭ごみ、し尿などの生活廃棄物、農産物の廃材、家畜類の糞尿、あるいは間伐材、材木端材など有機質固体物質を総称する意味で用いている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガス化発電装置では、ガス化炉から得た熱分解ガスを改質炉の手前で分岐し、その熱分解ガス中の可燃成分を燃焼させて熱回収する熱回収装置へ供給する分と改質炉経由で発電用ガスエンジンへ送給する分を分配しているので、全量を改質炉に送給している装置に比較して、改質ガスのガス精製装置用苛性ソーダなどの薬液費を低減することができ、同時に、改質炉とその後段の改質ガス処理装置、精製装置をコンパクト化することができるうえ、改質炉への酸素供給量を低減できる利点が得られる。
【0014】
さらに、熱回収用燃焼炉と、その後段で燃焼ガスの顕熱を回収する熱交換器からなる本発明の熱回収装置により、回収した熱量をバイオマスの乾燥熱源などに利用することができる。また、前記ガス化炉からの熱分解ガスの改質炉へ供給する量と、熱回収装置に供給する量と需要に応じて制御することができる。また、改質炉入り口部にガスの遮断装置を設けることで、熱分解ガス全量を熱回収用燃焼炉に供給することを可能となり、改質炉や有害成分装置、ガス発電装置に不具合が生じたときも、ガス化炉と熱回収炉で都市ごみや、下水汚泥、木質廃棄物等の処理を継続することが可能となる。あるいは、回収用燃焼炉の燃焼用空気として、前記バイオマスの乾燥時に発生する臭気成分を捕集して含む空気を利用すれば、臭気成分の拡散をも防止できる利点が得られる。かくして本発明は、従来の問題点を解消したガス化発電装置として、工業的価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の脱水汚泥を用いたガス化発電装置に係る実施形態について、図1を参照しながら説明する。
この実施形態において、脱水汚泥の乾燥機21からガスエンジン27に至るフローの原理は先に説明したものと共通する装置群からなるものである。すなわち、原料となる脱水汚泥aは乾燥機21で所定の水分まで乾燥され、ガス化炉22に投入される。このガス化炉22で約800℃の還元雰囲気下で加熱される。かくして脱水汚泥aは乾留状態で熱分解され、発生した熱分解ガスbは、集塵機23で焼却灰など残渣が分離され、改質炉24に送給される。
【0016】
この改質炉24では、別途供給された酸素ガスや水蒸気などと約1000℃で熱化学反応して水素ガス、一酸化炭素ガス、炭化水素などの可燃ガスを含む改質ガスcに変換される。この改質ガスcは、ガス精製装置25によって有害成分を除去し精製され、精製ガスdとしてガスエンジン27に供給され、発電装置(図示せず)を運転するのである。ガスエンジン27かの排ガスfは煙突29から大気中に排出される。
【0017】
この実施形態のガス精製装置25は、集塵のために好ましい温度に冷却する冷却塔25a、改質ガス中のダストを除去する集塵機25b、有害ガス成分のHCN、COSを加水分解するための触媒反応塔25c、有害ガス成分であるH2S,HCN、NH3、COS、HClを許容濃度以下に除去する洗浄塔25d、洗浄塔で除去できなかった微量のH2Sを除去する乾式脱硫塔25eなどから構成されているが、ガスエンジン27に好ましい有害ガス濃度を得るためのものであって、この構成に限定されるものではない。
【0018】
この実施形態における特徴となる点は、図1に示すように、如上のようなガス化発電装置において、前記ガス化炉22から得た熱分解ガスbを改質炉24の手前で分岐し、その熱分解ガスb中の可燃成分を燃焼させて熱回収する熱回収装置3を付設し、回収した熱量を脱水汚泥aの乾燥機21の熱源に利用するようにしたところにある。
【0019】
図1では、熱回収装置3としては、供給された熱分解ガスを完全燃焼する熱回収用燃焼炉31と、その後段で燃焼排ガスgの顕熱を回収する熱交換器(流動空気予熱器32、乾燥空気予熱器33、)を主体とし、燃焼排ガスgを大気へ放出するための処理装置群(冷却器34、集塵機35、洗浄スクラバ36など)から構成されている。
【0020】
熱回収用燃焼炉31は、熱分解ガスb中の可燃分を800℃〜1000℃で完全燃焼する為の炉であり、十分な空気が供給されている。この場合、脱水汚泥の乾燥などに伴い発生する臭気を捕集しておき、この燃焼用空気に混合して供給すれば、臭気成分を分完全に燃焼して無臭化することもできる。
【0021】
その熱回収用燃焼炉31の後段で燃焼排ガスgの顕熱を回収する熱交換器としては、流動空気予熱器32、乾燥空気予熱器33が配置されている。この流動空気予熱器32は、ガス化炉22の流動熱分解用空気iとして供給される空気を予備加熱するものであり、乾燥空気予熱器33は、脱水汚泥を乾燥する熱源として供給される乾燥用空気hを予備加熱するものである。かくして、流動空気予熱器32、乾燥空気予熱器33によって回収した熱量は脱水汚泥などの乾燥熱源に利用するようにしている。
【0022】
また、冷却器34、集塵機35、ガス洗浄スクラバ36などは、燃焼排ガスgを大気に放出できる程度に浄化するためのものであるが、燃焼排ガスg自体は、熱分解ガスbを800℃〜1000℃で完全燃焼させたものなので有害成分の含有量が少ない特長がある。従って、その浄化のための上記装置類は、その能力は小規模でも対応できるし、ガス洗浄スクラバ36で用いられる苛性ソーダなどの洗浄薬剤の使用料も比較的、少量で済む利点がある。
【0023】
さらに、前記ガス化炉22から得た熱分解ガスのうち前記改質炉24への供給分と、熱回収装置3の熱回収用燃焼炉31への供給分は、図1では集塵機23の出口後で分岐されているが、ガス化炉22の出口後で分岐するようにしてもよい。また、供給ラインの風量制御機器によって配分比率を変更できるようにすれば、発電需要と乾燥需要のそれぞれに応じて最適の供給分が配分できることになる。
【0024】
次に、本発明のガス化発電装置の利点を列挙すると、次の通りである。
a)熱分解ガスbを熱回収装置と熱回収装置への送給分と分配しているので、全量を改質炉に送給している従来の場合に比較して、ガス精製装置用苛性ソーダなどの薬液費おおむね分配比率に応じて低減することができる。
b)改質炉とその後段の改質ガス処理装置、精製装置などの規模も同様にコンパクト化することができる。また、改質炉への酸素供給量を低減できる利点も得られる。
【0025】
c)発電需要と脱水汚泥の乾燥需要などに応じて、熱分解ガスの改質炉への供給量と、熱回収装置への供給量とを任意に制御することができる。
d) ガス化炉から得た熱分解ガスを、改質炉と熱回収装置に分岐する配管の改質炉入り口部分にガスの遮断装置を設けることで、改質炉や有害成分装置、ガス発電装置に不具合が生じたときも、ガス化炉と熱回収装置で都市ごみや、下水汚泥、木質廃棄物等の処理を継続することが可能となる。
e)熱回収用燃焼炉の燃焼用空気として、前記脱水汚泥などの乾燥時に発生する臭気成分を捕集して含む空気を利用するので、臭気成分の外部への拡散をも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のガス化発電装置を説明するための要部フローチャート。
【図2】従来のガス化発電装置を説明するための要部フローチャート。
【符号の説明】
【0027】
1:11:12:13:14:17a:ガスエンジン
21:乾燥機、22:ガス化炉、23:集塵機、24:改質炉、25:ガス精製装置、25a:冷却塔、25b:集塵機、25c:触媒反応塔、25d:洗浄塔、25e:乾式脱硫塔、27:ガスエンジン、29:煙突
3:熱回収装置、31:熱回収用燃焼炉、32:流動空気予熱器、33:乾燥空気予熱器、34:冷却器、35:集塵機、36:洗浄スクラバ
a:脱水汚泥、b:熱分解ガス、c:改質ガス、d:精製ガス、e:f:排ガス、g:燃焼排ガス、h:乾燥用空気、i:熱分解用空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
都市ごみやバイオマスを熱分解するガス化炉と、ガス化炉から得た熱分解ガスを改質する改質炉と、改質炉で得た改質ガスを精製するための有害成分除去装置と、得られた精製ガスを燃料として発電する発電装置とを含む一連の装置群からなるガス化発電装置において、前記ガス化炉から得た熱分解ガスを改質炉の手前で分岐し、その熱分解ガス中の可燃成分を燃焼させて熱回収する熱回収装置を付設したことを特徴とするガス化発電装置。
【請求項2】
前記熱回収装置が、供給された熱分解ガスを800℃〜1000℃で完全燃焼する熱回収用燃焼炉と、その後段で燃焼ガスの顕熱を回収する熱交換器とを含み、回収した熱量を都市ごみまたはバイオマスの乾燥熱源に利用するようにした請求項1に記載のガス化発電装置。
【請求項3】
前記ガス化炉から得た熱分解ガスのうち前記改質炉へ供給する量と、前記熱回収装置に供給する量とを制御するようにした請求項1または2に記載のガス化発電装置。
【請求項4】
前記ガス化炉から得た熱分解ガスを、改質炉と熱回収用燃焼炉に分岐する配管の改質炉入り口部分にガス遮断装置を設け、熱分解ガス全量を熱回収用燃焼炉に供給することを可能とした請求項2に記載のガス化発電装置。
【請求項5】
前記熱回収用燃焼炉の燃焼用空気として、前記都市ごみやバイオマスの乾燥時に発生する臭気成分を捕集して含む空気を利用することを特徴とした請求項2または3または4に記載のガス化発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−228958(P2009−228958A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73778(P2008−73778)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】