説明

ガス弁装置

【課題】ガスコックと、コック本体のフランジ部に接合するフランジ部を有する流路ブロックと、流路ブロック内のガス流路を開通遮断する電磁弁と、電磁弁と並列の側路に介設したオリフィス部材とを備えるガス弁装置であって、側路を形成するための孔明け加工を不要とした低コストのものを提供する。
【解決手段】コック本体2のフランジ部21に第1と第2の2つのガス流出口23,24が開設され、閉子4に、第1ガス流出口23にガスを流す第1閉子孔41と第2ガス流出口24にガスを流す第2閉子孔42とが形成される。流路ブロック5のフランジ部51に、電磁弁上流側のガス流路の部分となる第1接続口52aと、第2ガス流出口24と電磁弁下流側のガス流路の部分とを連通する第2接続口52dとが開設され、第2ガス流出口24又は第2接続口52dにオリフィス部材7が装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ等のガス器具で使用するガス弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス弁装置として、コック本体内に回動自在な閉子を収納したガスコックと、コック本体の外面のガス流出口を開設したフランジ部に接合するフランジ部を有する流路ブロックと、ガス流出口に連通する流路ブロック内のガス流路を開通遮断する電磁弁と、電磁弁と並列の側路に介設したオリフィス孔を有するオリフィス部材とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。このもので、電磁弁は、ガス器具のバーナで加熱される被加熱物の温度が所定の設定温度を上回ったときに閉弁される。電磁弁が閉弁すると、側路にのみガスが流れ、バーナへの供給ガス量がオリフィス孔で設定される所定の小流量に制限され、被加熱物の温度が低下する。
【0003】
ところで、従来は、流路ブロックに、その外面から電磁弁の弁孔に達する第1の孔と、電磁弁の弁室から第1の孔に達する第2の孔とを形成して、これら第1と第2の孔で側路を構成し、第1の孔にオリフィス部材を装着している。そして、特許文献1に記載のものでは、電磁弁の弁室に面する弁座に、弁孔と平行に側路用の第2の孔を形成している。この場合、第2の孔は、流路ブロックのダイキャスト加工時に、弁室及び弁孔と同様に型抜きで形成できる。然し、このものでは、ダイキャスト加工時の弁孔と第2の孔との間の弁座部分への湯回り性を確保するために、両孔間に比較的広い間隔を確保することが必要になる。その結果、弁室を大径化せざるを得なくなり、流路ブロックが大型化してしまう。
【0004】
一方、特許文献2に記載のものでは、弁座の外縁部に斜めに第2の孔を形成しており、これによれば、弁室を大径化せずに済む。然し、このものでは、第2の孔を流路ブロックのダイキャスト加工時に型抜きで形成することができなくなり、ダイキャスト加工後の第2の孔の孔明け加工が必要になる。そのため、加工工数が増して、コストアップを招く不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−119846号公報(図8)
【特許文献2】特開平10−300077号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、流路ブロックを大型化せずに済み、且つ、側路を形成するための孔明け加工を不要とした低コストのガス弁装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ダイキャスト品から成るコック本体内に回動自在な閉子を収納したガスコックと、コック本体の外面のガス流出口を開設したフランジ部に接合するフランジ部を有するダイキャスト品から成る流路ブロックと、ガス流出口に連通する流路ブロック内のガス流路を開通遮断する電磁弁と、電磁弁と並列の側路に介設したオリフィス孔を有するオリフィス部材とを備えるガス弁装置において、コック本体のフランジ部に第1と第2の2つのガス流出口が開設されると共に、閉子に、閉子の所定の回動範囲で第1ガス流出口にガスを流す第1閉子孔と第2ガス流出口にガスを流す第2閉子孔とが形成され、流路ブロックのフランジ部に、第1ガス流出口に連通する、電磁弁の上流側のガス流路の部分となる第1接続口と、第2ガス流出口と電磁弁の下流側のガス流路の部分とを連通する第2接続口とが開設されて、第2流出口と第2接続口とで側路が構成され、第2流出口又は第2接続口にオリフィス部材が装着されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、電磁弁の弁室から分離独立した第2流出口と第2接続口とで側路が形成されることになり、側路形成のために弁室を大径化せずに済む。また、コック本体のフランジ部と流路ブロックのフランジ部は、コック本体に対する流路ブロックの取付け強度を確保するために元々大きめに形成されている。そのため、これらフランジ部を特に大きくしなくても、コック本体のダイキャスト加工時に、そのフランジ部に第1流出口と第2流出口を型抜きで無理なく形成でき、第1接続口及び第2接続口も、流路ブロックのダイキャスト加工時に、そのフランジ部に型抜きで無理なく形成できる。従って、本発明によれば、流路ブロックの大型化を回避でき、且つ、ダイキャスト加工後に側路のための孔明け加工を行う必要がなく、工数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0009】
ところで、コック本体のフランジ部と流路ブロックのフランジ部との間に、第1流出口と第1接続口との連通部からのガス漏れを防止するために、パッキンを介設する必要がある。この場合、パッキンに、オリフィス部材の端面に当接するシール部を一体に形成しておけば、オリフィス部材専用のシール部材が不要になり、部品点数を削減して、一層のコストダウンを図ることができる。尚、上記従来例では、コック本体のフランジ部と流路ブロックのフランジ部との間にパッキンを介設すると共に、第1の孔に装着するオリフィス部材の外端部周面に、オリフィス部材専用のシール部材であるOリングを取付けており、部品点数が増してコストアップを招く。
【0010】
また、本発明において、第2閉子孔を介して第2ガス流出口にガスが流れる閉子の回動範囲は、第1閉子孔を介して前記第1ガス流出路にガスが流れる閉子の回動範囲よりも、閉子の閉じ側への回動方向に広くなるように設定されることが望ましい。これによれば、閉子の閉じ側への回動で第1閉子孔を介してのガス供給が遮断されても、第2閉子孔を介しての側路へのガス供給が継続され、オリフィス部材で設定された所定の小流量でガスが流れる。従って、最小火力への絞り込み操作をバーナの失火を生ずることなく容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態のガス弁装置の斜視図。
【図2】実施形態のガス弁装置の切断側面図。
【図3】実施形態のガス弁装置に設けられる閉子の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、図2は、ガスコンロ等のガス器具に設ける本発明の実施形態のガス弁装置を示している。ガス弁装置は、前後方向に長手のアルミダイキャスト品から成るコック本体2の後端部に電磁安全弁3を収納すると共に、コック本体2の中間部に回動自在な閉子4を収納したガスコック1と、コック本体2の中間部外面に形成したフランジ部21に接合するフランジ部51を有するアルミダイキャスト品から成る流路ブロック5と、流路ブロック5内のガス流路52を開通遮断する電磁弁6とを備えている。
【0013】
コック本体2には、電磁安全弁3の収納空間に連通するガス流入口22と、閉子4の収納空間に連通する第1と第2の2つのガス流出口23,24と、電磁安全弁3の収納空間と閉子4の収納空間との間の弁孔25とが形成されている。尚、第1と第2の両ガス流出口23,24は、コック本体2のフランジ部21に開設されている。また、これらガス流入口22、第1ガス流出口23、第2ガス流出口24及び弁孔25は、コック本体2のダイキャスト加工時に型抜きで形成される。
【0014】
電磁安全弁3は、弁孔25を閉塞する閉じ位置にばね31で付勢される弁体32と、弁体32から後方にのびる弁軸33の後端に取り付けた磁性片34と、磁性片34に対向する電磁石35とで構成されている。弁体32は、磁性片34が電磁石35に当接する位置まで後述する押圧ロッド29より押動され、この状態で電磁石35に通電することにより、電磁安全弁3が開弁状態に吸着保持される。
【0015】
閉子4は、外周面をテーパー面とした筒状体で構成されている。閉子4の周壁部には、前後方向に離隔させて、第1ガス流出口23にガスを流す第1閉子孔41と、第2ガス流出口24にガスを流す第2閉子孔42とが形成されている。第2閉子孔42は、図3に示す如く、閉子4の内部空間に連通する孔部42aと、孔部42aから周方向にのびる閉子外周面の溝部42bとで構成されている。そして、第2閉子孔42を介して第2ガス流出口24にガスが流れる閉子4の回動範囲を、第1閉子孔41を介して第1ガス流出口23にガスが流れる閉子4の回動範囲よりも、閉子4の閉じ側への回動方向に所定角度θ広くなるように設定している。そのため、閉子4の閉じ側への回動で第1閉子孔41を介してのガス供給が遮断された後も、閉子4が所定角度θ回動されるまで、第2閉子孔42を介してのガス供給が継続される。
【0016】
また、コック本体2の前端に取り付けた蓋板26を通してコック本体2内に挿入される操作軸27と、コック本体2の前端部に収納した連結子28とが設けられている。操作軸27の前端部には図外の操作摘みが取付けられる。連結子28の後端部には、断面非円形に形成した操作軸27の後端部が嵌合する断面非円形の孔28aが形成されると共に、閉子4の前端部に形成した前後方向の割溝43に係合する爪片28bが突設されている。そして、操作軸27の回動により連結子28を介して閉子4が回動されるようにしている。
【0017】
また、閉子4を貫通する前後方向に長手の押圧ロッド29が設けられている。押圧ロッド29は、ばね29aの付勢力で操作軸27の後端に当接している。そして、操作軸27を押し操作したとき、押圧ロッド29が操作軸27に押されて電磁安全弁3側に前進し、電磁安全弁3の弁体32に押圧ロッド29が当接して、電磁安全弁3が押圧開弁されるようにしている。
【0018】
以下、コック本体2から流路ブロック5に向かう方向を上方として、流路ブロック5について詳述する。流路ブロック5には、そのフランジ部51よりも上方に位置させて、電磁弁6の弁体61を収納する弁室62が後方に開口するように形成されると共に、弁室62の前端の弁座63に前後方向にのびる弁孔64が形成されている。そして、後ろ向きに開口する弁室62の開口端を電磁弁6のソレノイド65で閉塞している。尚、電磁弁6は、ガス器具のバーナで加熱される被加熱物の温度が設定温度を上回ったときに閉弁される。
【0019】
流路ブロック5のフランジ部51には、第1ガス流出口23に連通する、電磁弁6の上流側のガス流路52の部分となる第1接続口52aが弁室62に達するように開設されている。また、流路ブロック5には、電磁弁6の弁孔64から上方にストレートにのびるストレート部52bと、ストレート部52bの上端から後方にL字状に屈曲する屈曲部52cとから成る電磁弁6の下流側のガス流路52の部分が形成されている。
【0020】
また、流路ブロック5のフランジ部51には、前記第1接続口52aに加えて、第2ガス流出口24とストレート部52bとを連通する第2接続口52dが開設されている。そして、第2ガス流出口24と第2接続口52dとで電磁弁6に並列の側路を構成している。尚、第2接続口52dは、流路ブロック5のダイキャスト加工時に、ストレート部52bと一体に型抜きで形成される。また、第1接続口52a、屈曲部52c、弁室62及び弁孔64も、流路ブロック5のダイキャスト加工時に型抜きで形成される。
【0021】
第2ガス流出口24には、オリフィス孔7aを有するオリフィス部材7が装着されている。そして、電磁弁6が被加熱物の温度上昇で閉弁されたとき、側路にのみガスが流れ、バーナへの供給ガス量がオリフィス孔7aで設定される所定の小流量に制限されるようにしている。
【0022】
また、コック本体2のフランジ部21と流路ブロック5のフランジ部51との間には、第1ガス流出口23と第1接続口52aとの連通部からのガス漏れを防止するために、パッキン8が介設されている。このパッキン8には、オリフィス部材7の端面に当接するシール部8aが一体に形成されている。
【0023】
上述した実施形態によれば、電磁弁6の弁室62から分離独立した第2ガス流出口24と第2接続口52dとで側路が形成されることになり、側路形成のために弁室62を大径化せずに済む。また、コック本体2のフランジ部21と流路ブロック5のフランジ部51は、コック本体2に対する流路ブロック5の取付け強度を確保するために元々大きめに形成されている。そのため、これらフランジ部21,51を特に大きくしなくても、コック本体2のダイキャスト加工時に、そのフランジ部21に第1ガス流出口23と第2ガス流出口24を型抜きで無理なく形成でき、第1接続口52a及び第2接続口52dも、流路ブロック5のダイキャスト加工時に、そのフランジ部51に型抜きで無理なく形成できる。従って、流路ブロック5の大型化を回避でき、且つ、ダイキャスト加工後に側路のための孔明け加工を行う必要がなく、工数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0024】
また、コック本体2のフランジ部21と流路ブロック5のフランジ部51との間に介設するパッキン8に一体のシール部8aによりオリフィス部材7の装着部からのガス漏れを防止できる。従って、オリフィス部材7専用のシール部材が不要になり、部品点数を削減して、一層のコストダウンを図ることができる。
【0025】
更に、本実施形態では、閉子4の閉じ側への回動で第1閉子孔41を介してのガス供給が遮断されても、第2閉子孔42を介しての側路へのガス供給が継続され、オリフィス孔7aで設定された所定の小流量でガスが流れる。従って、最小火力への絞り込み操作をバーナの失火を生ずることなく容易に行うことができ、操作性が向上する。
【0026】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、オリフィス部材7を第2ガス流出口24に装着しているが、第2接続口52dにオリフィス部材7を装着してもよい。また、実施形態の説明では、コック本体2から流路ブロック5に向かう方向を上方としているが、上下方向はガス弁装置の使用時の方向を規定するものではなく、流路ブロック5を横方向に向けた横向き姿勢や、流路ブロック5を下方に向けた下向き姿勢で使用されるガス弁装置も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1…ガスコック、2…コック本体、21…コック本体のフランジ部、23…第1ガス流出口、24…第2ガス流出口、4…閉子、41…第1閉子孔、42…第2閉子孔、5…流路ブロック、51…流路ブロックのフランジ部、52…ガス流路、52a…第1接続口、52d…第2接続口、6…電磁弁、64…弁孔、7…オリフィス部材、7a…オリフィス孔、8…パッキン、8a…シール部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイキャスト品から成るコック本体内に回動自在な閉子を収納したガスコックと、コック本体の外面のガス流出口を開設したフランジ部に接合するフランジ部を有するダイキャスト品から成る流路ブロックと、ガス流出口に連通する流路ブロック内のガス流路を開通遮断する電磁弁と、電磁弁と並列の側路に介設したオリフィス孔を有するオリフィス部材とを備えるガス弁装置において、
コック本体のフランジ部に第1と第2の2つのガス流出口が開設されると共に、閉子に、閉子の所定の回動範囲で第1ガス流出口にガスを流す第1閉子孔と第2ガス流出口にガスを流す第2閉子孔とが形成され、
流路ブロックのフランジ部に、第1ガス流出口に連通する、電磁弁の上流側のガス流路の部分となる第1接続口と、第2ガス流出口と電磁弁の下流側のガス流路の部分とを連通する第2接続口とが開設されて、第2流出口と第2接続口とで側路が構成され、
第2流出口又は第2接続口にオリフィス部材が装着されることを特徴とするガス弁装置。
【請求項2】
前記コック本体のフランジ部と前記流路ブロックのフランジ部との間に介設するパッキンに、前記オリフィス部材の端面に当接するシール部が一体に形成されることを特徴とする請求項1記載のガス弁装置。
【請求項3】
前記第2閉子孔を介して前記第2ガス流出口にガスが流れる前記閉子の回動範囲は、前記第1閉子孔を介して前記第1ガス流出路にガスが流れる閉子の回動範囲よりも、閉子の閉じ側への回動方向に広くなるように設定されることを特徴とする請求項1又は2記載のガス弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−2294(P2012−2294A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138542(P2010−138542)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】