説明

ガス浄化装置及び方法、ガス化システム、ガス化発電システム

【課題】タール成分の影響を除去してS成分の除去効率が向上するガス浄化装置及び方法、並びにそれを用いたガス化システム、ガス化発電システムを提供する。
【解決手段】少なくとも硫黄(S)成分及びタール分を含有する高温ガス11のガス温度を減温させるガス冷却装置12と前記ガス冷却装置12で減温された冷却ガス13中に、タール除去助剤14を供給するタール除去助剤供給装置15と、タール除去後のガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えてなると共に該濾過膜の表面にタール除去助剤14の堆積層を形成してなる第1の集塵装置16と前記第1の集塵装置16の後流側に設けられ、第1の集塵装置16通過後のガスを加熱するガス加熱装置17と、加熱後のガスに粉体状の脱S剤18を供給する脱S剤供給装置19と、前記ガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えてなると共に該濾過膜の表面に脱S剤18の堆積層を形成してなる第2の集塵装置20とを具備してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばバイオマス等をガス化したガス中のS成分を除去するガス浄化装置及び方法、並びにそれを用いたガス化システム、ガス化発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ、下水汚泥、産業用廃棄物などの有機系廃棄物からエネルギー回収を図るために、廃棄物を熱分解によりガス化して燃料用ガス(ガス化ガス)を得るガス変換技術が、環境保全及び省資源の観点から注目されている。
【0003】
このガス変換技術のシステムとしては、廃棄物に水蒸気を添加して400〜800℃でガス化し、さらに1300〜1500℃でクラッキングして、煤を含まないクリーンなCO、H2リッチガスを得るシステムが開発されている。このシステムにおいては、ガス化剤(蒸気、酸素)を高温で供給することにより、部分燃焼割合を少なくして発熱量の高いガスを得て、このガス(燃料用ガス)により発電装置による発電などが行われる(特許文献1)。
【0004】
該ガス化ガス中には硫黄(S)成分が微量に含まれているので、脱硫する必要がある。従来においては、高温ガスを減温し、例えば酸化亜鉛、酸化鉄等の脱S剤を供給して除去するガス浄化装置が提案されている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−38164号公報
【特許文献2】特開2005−239905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のガス浄化装置では、排ガス中のタール成分が脱S剤の表面を覆い、脱S性能を十分に発揮することができない、という問題がある。
【0007】
特に、バイオマス等のガス化物を用いガス化し、該ガスを用いて、触媒によってメタノール等のガスを改質する場合においては、触媒被毒の原因となるS成分(硫化カルボニル:COS)の浄化効率のよいガス浄化装置の出現が望まれている。
【0008】
特に、バイオマス等のガス化物を用いガス化し、該ガスを用いて、ガスエンジン、ガスタービン、燃料電池等の各種発電装置で発電する場合においては、クリーンなガス成分であることが要求され、特に燃料電池等の触媒被毒の原因となるS成分の浄化効率のよいガス浄化装置の出現が望まれている。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、タール成分の影響を除去してS成分の除去効率が向上するガス浄化装置及び方法、並びにそれを用いたガス化システム、ガス化発電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、少なくとも硫黄(S)成分及びタール分を含有する高温ガスのガス温度を減温させるガス冷却装置と、前記ガス冷却装置で減温された冷却ガス中に、タール除去助剤を供給するタール除去助剤供給装置と、タール除去後のガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えてなる第1の集塵装置と、前記第1の集塵装置の後流側に設けられ、タール分が除去されたガスを加熱するガス加熱装置と、加熱後のガスに粉体状の脱S剤を供給する脱S剤供給装置と、前記ガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えてなると共に該濾過膜の表面に脱S剤の堆積層を形成してなる第2の集塵装置とを具備してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記硫黄(S)成分が硫化物又は酸化硫黄であることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、前記ガスが還元性ガスであることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記還元性ガスがガス化物を熱分解して改質したガスであることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0014】
第5の発明は、第1の発明において、前記ガス冷却装置におけるガス減温温度が100〜180℃であることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0015】
第6の発明は、第1の発明において、前記加熱装置で加熱するガス加熱温度が第1の集塵装置の出口温度から20℃以上高い温度であることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0016】
第7の発明は、第1の発明において、前記ガスに少なくとも酸性ガス成分を含み、前記ガス中に酸性ガス中和剤を供給する酸性ガス中和剤供給装置を具備することを特徴とするガス浄化装置にある。
【0017】
第8の発明は、第1の発明において、前記ガス加熱装置の前流側又は後流側のいずれかに硫化カルボニル(COS)を分解除去するCOS分解装置を具備してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0018】
第9の発明は、第7の発明において、酸性ガス中和剤とタール除去助剤とを同時に供給してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0019】
第10の発明は、第1の発明において、前記酸性ガス中和剤が、中和剤アルカリ、セメント、活性炭、珪藻土のうちの少なくとも一種又はこれらの混合物であることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0020】
第11の発明は、第1の発明において、前記脱S剤が、酸化亜鉛、酸化鉄、亜鉛・鉄化合物、酸化ニッケル、酸化銅、酸化コバルト、酸化モリブデン、活性炭の少なくとも一種又はこれらの混合物であることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0021】
第12の発明は、第1の発明において、前記COS分解剤が、クロム、クロム酸化物、モリブデン、モリブデン酸化物、バリウム、アルミナ、チタニア及びニッケルのうちの少なくとも一種又はこれらの混合物であることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0022】
第13の発明は、第1乃至12のいずれか一つの発明において、ガス加熱装置の熱源が、高温ガス、加熱水蒸気、加熱空気又はガス化炭化物を燃焼した燃焼ガスのいずれかであることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0023】
第14の発明は、第1乃至13のいずれか一つのガス浄化装置を備えてなることを特徴とするガス化システムにある。
【0024】
第15の発明は、第1乃至13のいずれか一つのガス浄化装置を備えてなることを特徴とするガス化発電システムにある。
【0025】
第16の発明は、第14の発明において、高温のガスを得るガス化炉が、バイオマスガス化炉、ゴミガス化炉、下水汚泥ガス化炉、石炭ガス化炉のいずれか一つであることを特徴とするガス化システムにある。
【0026】
第17の発明は、第15の発明において、高温のガスを得るガス化炉が、バイオマスガス化炉、ゴミガス化炉、下水汚泥ガス化炉、石炭ガス化炉のいずれか一つであることを特徴とするガス化発電システムにある。
【0027】
第18の発明は、少なくとも硫黄(S)成分及びタール分を含有する高温ガスを減温させ、前記減温されたガス中にタール除去助剤を供給し、ガス中のタール分を除去した後、粉体状の脱S剤を供給し、前記ガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えた集塵装置で濾過膜の表面に脱S剤の堆積層を形成し、硫黄(S)成分を捕集することを特徴とするガス浄化方法にある。
【0028】
第19の発明は、第18の発明において、前記ガス中に含まれる酸性成分を酸性ガス中和剤で同時に捕集することを特徴とするガス浄化方法にある。
【0029】
第20の発明は、第18又は19の発明において、前記還元性ガスがガス化物を熱分解して改質したガスであることを特徴とするガス浄化方法にある。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、高温ガスを減温し、ガス中のタール成分を予め除去することで、脱S性能を向上させることができ、長期間に亙って、安定して硫化水素の除去処理をすることができる。
【0031】
また、COS分解装置を介装することでガス中の硫化カルボニル(COS)を分解して、後流側での例えばガスエンジン等の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0033】
本発明による実施例に係るガス浄化装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係るガス浄化装置を示す概念図である。
図1に示すように、本実施例に係るガス浄化装置10Aは、少なくとも硫黄(S)成分及びタール分を含有する高温ガス11のガス温度を減温させるガス冷却装置12と、前記ガス冷却装置12で減温された冷却ガス13中に、タール除去助剤14を供給するタール除去助剤供給装置15と、タール除去後のガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えてなると共に該濾過膜の表面にタール除去助剤14の堆積層を形成してなる第1の集塵装置16と、前記第1の集塵装置16の後流側に設けられ、第1の集塵装置16通過後のガスを加熱するガス加熱装置17と、加熱後のガスに粉体状の脱S剤18を供給する脱S剤供給装置19と、前記ガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えてなると共に該濾過膜の表面に脱S剤18の堆積層を形成してなる第2の集塵装置20とを具備してなるものである。なお、図中符号29はガスを第1の集塵装置16及び第2の集塵装置20に供給するガス供給管を図示する。
【0034】
その後、前記第2の集塵装置20で浄化された浄化ガス21は誘引送風機22等により発電設備である例えばガスエンジン(G/E)23等に送られ、ここで、エネルギー変換して発電に供している。
【0035】
また、第1の集塵装置16で例えば逆洗浄操作によって定期的に払い落とされる堆積層であるダスト25はその一部25aを分離装置26により分離し、再度ガス供給管27に戻して、再利用を図るようにしてもよい。
同様に、第2の集塵装置20で例えば逆洗浄操作によって定期的に払い落とされる堆積層であるダスト28はその一部28aを分離装置26により分離し、再度ガス供給管29に戻して、再利用を図るようにしてもよい。
【0036】
ここで、本発明でタール分とは、ガス化物をガス化した際に副生される、有機物の熱分解などで生じる粘稠な油状物質であり、芳香族炭化水素を主成分とするものである。
このタール分を除去することで、後流側に設けた第2の集塵装置20における脱S性能が大幅に向上することになる。
それは、タール分を含むガスに脱S剤を供給する場合には、脱S剤の表面をタールミストが覆い、脱S性能を十分に発揮することができないからである。
【0037】
ここで、タール除去助剤14としては、例えば珪藻土、パーライト、ゼオライト、消石灰、生石灰、Na系反応剤(重曹、Na2CO3、NaOH等)、ゼオライト、活性炭、活性コークス等を例示することができる。
【0038】
これらの内で、消石灰、生石灰、Na系反応剤等は排ガス中の酸性物質(HCl、SOx)を除去する酸性ガス中和剤として機能するので、タール成分を除去する併用効果があるので、好ましい。
【0039】
また、ゼオライト、活性炭、活性コークスは、排ガス中の微粒有害物(例えばダイオキシン類、有機ハロゲン化物等)を除去すると共に、タール成分を除去する併用効果があるので、好ましい。
【0040】
本発明で前記硫黄(S)成分とは、H2S、COS等の硫化物又はS2O、SO、SO2、SO3、S23等の酸化硫黄であるが、ガス中に存在するS成分であればこれらに限定されるものではない。
【0041】
本発明で生成ガス中の硫黄成分を除去する脱S剤18としては、例えば酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉄、水酸化鉄、亜鉛・鉄化合物、ニッケル等の遷移金属の酸化物、銅、酸化銅、活性炭、ゼオライト等を挙げることができ、特に酸化亜鉛が好ましい。これは下記反応式及び後述する試験例にも示すように、硫化水素と反応した場合において、水分発生量が少ないからである。
【0042】
前記脱S剤は粉体状であり、その大きさは数10μm〜数100μm程度とすればよい。これにより、S成分との接触面積が増大し、反応効率が向上する。この結果、利用率の向上及び除去効率が向上する。
【0043】
前記S成分である例えば硫化水素を酸化亜鉛(ZnO)と酸化鉄(Fe23)を用いて分解除去する場合には、以下の式(1)及び(2)のようになる。
ZnO+H2S→ZnS+H2O・・・(1)
Fe23+2H2S+H2→2FeS+3H2O・・・(2)
このように、ZnOの場合には水分の発生がFe23よりも1/3も少なく、周囲に多少水分があっても影響を受けにくく、反応の進行が良好となる。
【0044】
また前記ガスは特に限定されるものではなく、燃料排ガス中の脱硫も行うことができる。
さらに、本発明では、ガスとして還元性ガスの場合が好適であり、S成分がH2Sである場合に特に有効である。ここで、前記還元性ガスとしては、ガス化物を熱分解したガス又はガス化物を熱分解して改質したガスのいずれか一方又は両方を含むものを挙げることができる。
【0045】
前記還元性ガスの一例としては、ガス化物を熱分解して改質したO2成分が少ないガスを挙げることができる。酸素の無い状態で分解されるので、ほとんど還元物質と水蒸気であり、その組成としては、例えばCO、H2S、COS、HCN、H2等である。
【0046】
前記ガス化物としては、例えばバイオマス、木屑、ごみ、下水汚泥、廃棄物、石炭等を挙げることができ、これらをガス化炉でガス化し、ガス化した生成ガスを改質して、可燃ガスである一酸化炭素や水素にするようにしている。
【0047】
ここで、ガス化した生成ガスは、高温ガス(例えば400〜1500℃、特に600℃以上)11であるので、浄化するために減温する必要がある。
そこで、本発明においては、前記ガス冷却装置12において、先ず180℃以下、より好ましくは150℃以下まで減温するようにしている。
よって、所定温度まで冷却された冷却ガス13は、タール除去助剤供給装置15から供給されるタール除去助剤14を同伴して、第1の集塵装置16に送られ、この第1の集塵装置で、集塵すると共に、前記タール除去助剤の堆積層を形成することで、排ガス中のタール成分を効率良く除去するようにしている。
【0048】
ここで、前記第1の集塵装置16としては、濾過式の例えばバグフィルタ等のような濾布を用いている。
また、減温(T1)の下限値は100℃、好ましくは120℃とするのがよい。これは酸露点により、水分が発生し、乾式濾過に不具合が生じるからである。よって、酸露天以上150℃以下とすることで、タール成分を確実に除去することができることとなる。
【0049】
このように、所定温度以下まで冷却した冷却ガス13中にタール除去助剤14を供給して排ガス中のタール成分を除去することができる。
このタール成分が除去された排ガスは、次にガス加熱装置17に導入され、ガス温度(T2)をガス冷却装置12での減温(T1)よりも約20℃以上、より好ましくは50℃以上まで加熱するようにしている。
この加熱は高ければ高いほど脱S性能が向上するので好ましく、例えば450℃程度とするのがよい。
【0050】
ここで、図9にタール分や煤塵を含む排ガス中のH2S除去性能について説明する。
図9において、集塵装置としてバグフィルタを用い、実線は模擬ガスを導入してH2Sを160℃で除去した場合の除去率を示す。
前記脱S剤としてはZnOを用いた。
ここで、図9中縦軸はH2S除去率(%)であり、横軸はZnO比である。
図9に示すように、実ガス(図中破線で示す)の場合には、H2S除去温度が220℃においても90%除去率を達成する場合には、ZnO当量比が2.5以上であるのに対し、タールを含んでいない模擬ガスの場合には、除去温度が160℃でZnO当量比が1.7程度であった。
よって、脱S処理を行う場合には、タール成分を予め除去する必要があることが判明した。
【0051】
このように、高温ガスを所定温度以下まで減温させた後に、ガス中のタール成分を除去し、その後S成分の除去効率が向上することとなる。
また、湿式の脱硫設備に較べて、排水がないので、後処理が容易である。
特に、本発明のガス浄化装置は、水供給量が不足する地域又は排水処理基準が厳しい地域における排ガス処理としての乾式の脱硫処理に用いて好適なものとなる。
【0052】
本実施例では、集塵装置16の濾過膜において、脱S剤18の堆積層を形成することで、脱S処理を行うようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、濾過膜を構成する繊維材料に前記脱S剤を予め担持させるようにしてもよい。また、繊維材料に前記脱S剤を繊維化して織り込むようにしてもよい。
このような場合には、脱S剤供給装置19が不要となり、更に簡易な構成となる。
【実施例2】
【0053】
本発明による実施例に係るガス浄化装置について、図面を参照して説明する。
図2は、実施例2に係るガス浄化装置を示す概念図である。
図2に示すように、本実施例に係るガス浄化装置10Bは、実施例1のガス浄化装置10Aにおいて、前記ガス加熱装置17と前記第2の集塵装置20との間のガス冷却管29−2に硫化カルボニル(酸化硫化炭素:carbon oxide sulfide(COS))を分解するCOS分解装置31を介装している。
【0054】
ここで、前記COS分解装置31に用いるCOS分解剤としては、例えばクロム、クロム酸化物、モリブデン、モリブデン酸化物、バリウム、アルミナ、チタニア及びニッケルのうちの少なくとも一種又はこれらの混合物を用いることができる。
このCOS分解剤をCOS分解装置に充填し、この中をタール成分が除去されたガスを通過させることで、ガス中の硫化カルボニル(COS)をH2Sに効率良く分解若しくは転換することができる。
【0055】
前記COS分解装置31で分解されたCOSの分解物であるH2Sは、導入される脱S剤により第2の集塵装置で併せて除去されることとなる。
【0056】
本発明では、ガス加熱装置17をCOS分解装置31の前流側に設けてCOS分解の触媒活性を高めているが、本発明はこれに限定されるものではなく、後流側に設けるようにしてもよい。
【実施例3】
【0057】
本発明による実施例に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムについて、図面を参照して説明する。
図3は、実施例3に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムを示す概念図である。図3に示すように、本実施例に係るガス発電システム100Aは、実施例2のガス浄化装置10Bをガス化炉61の後流側に設けたものである。前記ガス化炉61は例えば炭素質燃料(バイオマス等)のガス化物62をガス化させるものであり、得られた生成ガス63をその後流側に設けた改質装置64により改質し、CO、H2成分リッチガスとするようにしている。
【0058】
そして、本実施例では、前記ガス火炉61でガス化した際の固形排出物である炭化物60を用いて、ガス加熱装置17Aのバーナ燃料とし、直接加熱するようにしている。
【0059】
よって、第1集塵装置16でタールの除去及び集塵がなされたガスの加熱燃料としてガス発電システム100A内でその熱交換エネルギーを賄うことができ、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【実施例4】
【0060】
本発明による実施例に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムについて、図面を参照して説明する。
図4は、実施例4に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムを示す概念図である。図4に示すように、本実施例に係るガス発電システム100Bは、実施例3のガス発電システム100Aの改質装置64の後流側に熱交換器65を設けたものである。そして、前記熱交換器65に導入する空気66を熱交換して加熱空気67としている。該加熱空気67をガス加熱装置(GGH)17Bに供給して、第1の集塵装置16から排出されたガスを所定温度まで加熱するようにしている。
【0061】
よって、第1集塵装置16でタールの除去及び集塵がなされたガスの加熱源として加熱空気67を用いることで、ガス発電システム100A内でその熱交換エネルギーを賄うことができ、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【実施例5】
【0062】
本発明による実施例に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムについて、図面を参照して説明する。
図5は、実施例5に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムを示す概念図である。図5に示すように、本実施例に係るガス発電システム100Cは、実施例3のガス発電システム100Aの改質装置64の後流側に蒸気ボイラ68を設けたものである。そして、前記蒸気ボイラ68からの高温水蒸気69をガス加熱装置(SGH)17Cに供給して、第1の集塵装置16から排出されたガスを所定温度まで加熱するようにしている。
【0063】
よって、第1集塵装置16でタールの除去及び集塵がなされたガスの加熱源として高温水蒸気69を用いることで、ガス発電システム100A内でその熱交換エネルギーを賄うことができ、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【実施例6】
【0064】
本発明による実施例に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムについて、図面を参照して説明する。
図6は、実施例6に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムを示す概念図である。図6に示すように、本実施例に係るガス発電システム100Dは、実施例5のガス発電システム100Cにおいて、蒸気ボイラ68からの高温ガス11をガス供給管29−3によりガス加熱装置(GGH)17Bに供給し、ここでガスガス熱交換させ、その後ガス供給管29−4を経由してガス冷却装置12に生成ガス63を送り、ここで冷却ガス13としている。
その後タール分の除去及S成分の除去を行うようにしている。
【0065】
よって、蒸気ボイラ68を通過した高温ガス11を用いてガス加熱装置17Bでガスガス交換することで、ガス発電システム100A内でその熱交換エネルギーを賄うことができ、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【実施例7】
【0066】
本発明による実施例に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムについて、図面を参照して説明する。
図7は、実施例7に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムを示す概念図である。図7に示すように、本実施例に係るガス発電システム100Eは、実施例6のガス発電システム100Dのガス加熱装置17BとCOS分解装置31とを一体型として熱交換一体型COS分解装置31Aとしている。
【0067】
前記熱交換一体型のCOS分解装置31Aは、熱交換器のガス接触部表面を前記例えばクロム、クロム酸化物、モリブデン、モリブデン酸化物、バリウム、アルミナ、チタニア及びニッケルのうちの少なくとも一種又はこれらの混合物の固形物をCOS転換触媒として設け、この触媒表面をガスが通過する際に、COS除去を行うようにしている。
よって、別途ガス加熱装置を設けることがなく、省スペース化を図ることができる。
【実施例8】
【0068】
本発明による実施例に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムについて、図面を参照して説明する。
図8は、実施例8に係るガス浄化装置を具備するガス発電システムを示す概念図である。図8に示すように、本実施例に係るガス発電システム100Fは、実施例7の蒸気ボイラ68と熱交換一体型COS分解装置31Aとの間のガス供給管29−3に、高温集塵装置70を介装している。ここで、高温集塵装置70としては、セラミックろ布、セラミック焼結体、粒子充填層フィルタを備えた集塵装置を例示することができる。
【0069】
これにより、高温ガス11中の煤塵を除去し、熱交換器での閉塞等が発生することを防止するようにしている。
また、第1の集塵装置16からのガス中のS成分(H2S,SOx)の成分量を計測するモニタ装置を設け、該モニタ装置の情報を演算装置(CPU)で処理し、脱S剤18の供給を制御するようにしてもよい。これにより、常に適切な範囲の脱S剤18を供給することができ、効率的なガスの浄化が可能となる。また、第1の集塵装置16の集塵力及びガス浄化力の判断の指標とすることができる。
【0070】
発電設備として、ガスエンジンに限定されるものではなく、ガスタービン、燃料電池等のガスを用いて発電することができる各種発電装置におけるガスの浄化に適用することができる。
【0071】
なお、本実施例では、ガス化発電システムにおけるガス浄化装置を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばバイオマスからのガス化ガスを改質してメタノール等を得るシステムに適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかるガス浄化装置は、高温ガスを減温し、タール成分を効率的に除去することで、脱S性能を向上することができ、これにより、長期間に亙って、ガスの浄化処理することができ、ガス化ガスの精製に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例1にかかるガス浄化装置の概略図である。
【図2】実施例2にかかるガス浄化装置の概略図である。
【図3】実施例3にかかるガス発電システムの概略図である。
【図4】実施例4にかかるガス発電システムの概略図である。
【図5】実施例5にかかるガス発電システムの概略図である。
【図6】実施例6にかかるガス発電システムの概略図である。
【図7】実施例7にかかるガス発電システムの概略図である。
【図8】実施例8にかかるガス発電システムの概略図である。
【図9】硫化水素除去率を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
10A〜10B ガス浄化装置
100A〜100F ガス発電システム
11 高温ガス
12 ガス冷却装置
13 冷却ガス
14 タール除去助剤
15 タール除去助剤供給装置
16 第1の集塵装置
17 ガス加熱装置
18 脱S剤
19 脱S剤供給装置
20 第2の集塵装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも硫黄(S)成分及びタール分を含有する高温ガスのガス温度を減温させるガス冷却装置と、
前記ガス冷却装置で減温された冷却ガス中に、タール除去助剤を供給するタール除去助剤供給装置と、
タール除去後のガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えてなる第1の集塵装置と、
前記第1の集塵装置の後流側に設けられ、タール分が除去されたガスを加熱するガス加熱装置と、
加熱後のガスに粉体状の脱S剤を供給する脱S剤供給装置と、
前記ガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えてなると共に該濾過膜の表面に脱S剤の堆積層を形成してなる第2の集塵装置とを具備してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記硫黄(S)成分が硫化物又は酸化硫黄であることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記ガスが還元性ガスであることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記還元性ガスがガス化物を熱分解して改質したガスであることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記ガス冷却装置におけるガス減温温度が100〜180℃であることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記加熱装置で加熱するガス加熱温度が第1の集塵装置の出口温度から20℃以上高い温度であることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記ガスに少なくとも酸性ガス成分を含み、前記ガス中に酸性ガス中和剤を供給する酸性ガス中和剤供給装置を具備することを特徴とするガス浄化装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記ガス加熱装置の前流側又は後流側のいずれかに硫化カルボニル(COS)を分解除去するCOS分解装置を具備してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項9】
請求項7において、
酸性ガス中和剤とタール除去助剤とを同時に供給してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記酸性ガス中和剤が、中和剤アルカリ、セメント、活性炭、珪藻土のうちの少なくとも一種又はこれらの混合物であることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記脱S剤が、酸化亜鉛、酸化鉄、亜鉛・鉄化合物、酸化ニッケル、酸化銅、酸化コバルト、酸化モリブデン、活性炭の少なくとも一種又はこれらの混合物であることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記COS分解剤が、クロム、クロム酸化物、モリブデン、モリブデン酸化物、バリウム、アルミナ、チタニア及びニッケルのうちの少なくとも一種又はこれらの混合物であることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一つにおいて、
ガス加熱装置の熱源が、高温ガス、加熱水蒸気、加熱空気又はガス化炭化物を燃焼した燃焼ガスのいずれかであることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一つのガス浄化装置を備えてなることを特徴とするガス化システム。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか一つのガス浄化装置を備えてなることを特徴とするガス化発電システム。
【請求項16】
請求項14において、
高温のガスを得るガス化炉が、バイオマスガス化炉、ゴミガス化炉、下水汚泥ガス化炉、石炭ガス化炉のいずれか一つであることを特徴とするガス化システム。
【請求項17】
請求項15において、
高温のガスを得るガス化炉が、バイオマスガス化炉、ゴミガス化炉、下水汚泥ガス化炉、石炭ガス化炉のいずれか一つであることを特徴とするガス化発電システム。
【請求項18】
少なくとも硫黄(S)成分及びタール分を含有する高温ガスを減温させ、前記減温されたガス中にタール除去助剤を供給し、ガス中のタール分を除去した後、粉体状の脱S剤を供給し、前記ガス中の煤塵を集塵する濾過膜を備えた集塵装置で濾過膜の表面に脱S剤の堆積層を形成し、硫黄(S)成分を捕集することを特徴とするガス浄化方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記ガス中に含まれる酸性成分を酸性ガス中和剤で同時に捕集することを特徴とするガス浄化方法。
【請求項20】
請求項18又は19において、
前記還元性ガスがガス化物を熱分解して改質したガスであることを特徴とするガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−238670(P2007−238670A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59710(P2006−59710)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】