説明

ガス漏洩検知機能付圧力調整器

【課題】複雑な配管を要することなく、低コストでガス漏洩を検知し且つ必要なガスも供給することができる圧力調整器を提供する。
【解決手段】下流側の圧力変動に応じてダイヤフラム104が変位すると、これに連動して弁棒111も変位する。弁棒111には、小弁部材110及び、スプリング107、ガイド部材130で構成される連結部材を介して大弁部材120が接続されており、下流側の圧力がガス微少漏洩開始と判定される第1圧力より低下したときの弁棒111の変位に応じて小流量開閉部123、110が開放される。一方、下流側の圧力が通常使用開始と判定される第2圧力より低下したときの弁棒111の変位に応じて大流量開閉部106、120が開放される。ガス微少漏洩が発生したときには、このような第1圧力〜第2圧力の範囲に対応する弁棒111の変位が継続的に検出されるので、これを利用してガス漏洩の判定が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給源側である上流側とガス消費源側である下流側との間に介設される圧力調整器に関し、特に、下流側のガス漏洩を検知する機能を有する圧力調整器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、埋設ガス配管を有するマンション等の集合住宅にガスを供給するガス供給設備には、保安のために、ガス漏洩検知システムが装備されている。図9は、この種の従来のガス漏洩検知システムの一例を示す図である。
【0003】
図9に示すように、ガスボンベ2A、2B、2Cに接続されるガス管3には、自動切替機能を有する一次圧力調整器4が設けられており、一次圧力調整器4を介して、親圧力調整器5が設けられている。また、ガス管3には、親圧力調整器5の入口側と出口側とを接続するバイパスガス流路30が設けられている。更に、バイパスガス流路30の途中には、子圧力調整器6及び漏洩検知装置7が設けられている。
【0004】
子圧力調整器6の調整圧力は、親圧力調整器5の調整圧力よりも高く設定されている。また、漏洩検知装置7は、微少ガス漏洩(以下、単に、ガス漏洩ともよぶ)を検知するためのもので、所定流量以上の流量を検知したときに、ガス漏洩が発生していると判断してその旨を報知する。
【0005】
このような構成において、深夜等のようにガス消費がほとんどないときには、親圧力調整器5が閉となる。このように親圧力調整器5が閉となっている状態で、親圧力調整器5の下流側でガス漏洩が発生すると、バイパスガス流路30側、すなわち、子圧力調整器6及び漏洩検知装置7にガスが流れる。これによりガス漏洩を検知するようにしている。なお、通常の使用時には親圧力調整器5が開となり、ガス消費源に必要なガスが供給される。この結果、ガス供給を停止することなく、ガス漏洩を検知するようにしている。
【0006】
なお、上記従来技術は下記の先行技術文献情報にも記載されている。
【特許文献1】特開2001−5533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のガス漏洩検知システムによると、ガス供給を停止することなく、ガス漏洩を検知するためには、親圧力調整器5に対して、並列的に、子圧力調整器6及び漏洩検知装置7が設けられたバイパスガス流路30を接続する必要があった。
【0008】
このため、親圧力調整器5と子圧力調整器6との弁開、弁閉の圧力バランスをとったり、複雑な配管や子圧力調整器6及び漏洩検知装置7等の付加装置が必要となっていた。また、これらの取り付け作業や配管作業も必要であった。したがって、コスト高になるという問題があった。また、取り付けスペースや配管スペースを確保する必要もあった。更に、漏洩検知装置7の能力上、1時間以上、ガスの不使用が発生しないと、漏洩判定ができないという問題もあった。
【0009】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、複雑な配管を要することなく、低コストでガス漏洩を検知し且つ必要なガスも供給することができ、短時間でガス漏洩の判定ができる圧力調整器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器は、ガス供給源側である上流側とガス消費源側である下流側との間に介設されて前記下流側のガス漏洩を検知する機能を有する圧力調整器であって、前記下流側と大気開放室側とを仕切り、前記下流側の圧力変動に応じて変位するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムと連動して変位する弁棒と、前記弁棒に直接的又は間接的に連結された小弁部材及び大弁部材と、開放時には大流量のガスを通過させるために、前記下流側と前記上流側とを開閉可能に仕切る大流量開閉部と、開放時には小流量のガスを通過させるために、前記下流側と前記上流側とを開閉可能に仕切る小流量開閉部と、前記下流側の圧力がガス微少漏洩開始と判定される第1圧力より低下したときの前記弁棒の変位に応じて前記小流量開閉部を開放し、前記下流側の圧力が通常使用開始と判定される第2圧力より低下したときの前記弁棒の変位に応じて前記大流量開閉部を開放するように動作する、前記小弁部材と前記大弁部材とを連結する連結部材と、少なくとも、前記下流側の圧力が前記第1圧力〜前記第2圧力の範囲になったときの前記弁棒の変位を検出する変位検出手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた請求項2記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器は、請求項1記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器において、前記連結部材は、前記小弁部材及び前記大弁部材の対向面に設けられたスプリングと、前記小弁部材を囲むように前記大弁部材に連結された枠体状のガイド部材と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するためになされた請求項3記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器は、請求項1記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器において、前記変位検出手段は、前記弁棒の端部に設けられた永久磁石と、前記永久磁石からの磁力に基づいてオンオフする磁気近接センサと、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するためになされた請求項4記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器は、請求項1記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器において、前記変位検出手段は、前記弁棒の端部に設けられた、前記弁棒の中心軸と垂直方向に貫通された開放穴と、前記開放穴を通過する光量に基づいてオンオフするフォトカプラと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を解決するためになされた請求項5記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器は、請求項4記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器において、前記フォトカプラの前記弁棒の変位方向の位置を調整する位置調整手段、を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項1及び請求項2記載の発明によれば、開放時には大流量のガスを通過させるために、下流側と上流側とを開閉可能に仕切る大流量開閉部が設けられ、開放時には小流量のガスを通過させるために、小流量開閉部が設けられている。そして、下流側の圧力変動に応じてダイヤフラムが変位すると、これに連動して弁棒も変位する。弁棒には、小弁部材及び例えばスプリング及び枠体状のガイド部材で構成される連結部材を介して大弁部材が接続されており、下流側の圧力が第1圧力〜第2圧力の範囲になったときの弁棒及び連結部材の作用により、小流量開閉部が開放されると共にこのときの弁棒の変位が検出される。ガス微少漏洩が発生したときには、このような第1圧力〜第2圧力の範囲に対応する弁棒の変位が継続的に検出されるので、これを利用してガス漏洩の判定が可能になる。
【0016】
また、請求項3記載の発明によれば、永久磁石及び磁気近接センサにより、下流側の圧力が第1圧力より低下したこと、すなわち、ガス漏洩を検知することができる。
【0017】
また、請求項4記載の発明によれば、弁棒の端部に設けられた貫通孔及びフォトカプラにより、下流側の圧力が第1圧力より低下したこと、すなわち、ガス漏洩を検知することができる。したがって、多段階のガス漏洩検知も容易に実現できる。
【0018】
また、請求項5記載の発明によれば、フォトカプラの位置が調整できるので、より高精度のガス漏洩検知が可能になる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1及び請求項2記載の発明によれば、開放時には大流量のガスを通過させるために、下流側と上流側とを開閉可能に仕切る大流量開閉部が設けられ、開放時には小流量のガスを通過させるために、小流量開閉部が設けられている。そして、下流側の圧力変動に応じてダイヤフラムが変位すると、これに連動して弁棒も変位する。弁棒には、小弁部材及び例えばスプリング及び枠体状のガイド部材で構成される連結部材を介して大弁部材が接続されており、下流側の圧力が第1圧力〜第2圧力の範囲になったときの弁棒及び連結部材の作用により、小流量開閉部が開放されると共にこのときの弁棒の変位が検出される。ガス微少漏洩が発生したときには、このような第1圧力〜第2圧力の範囲に対応する弁棒の変位が継続的に検出されるので、これを利用してガス漏洩の判定が可能になる。したがって、従来のような複雑な配管を要することなく、低コストでガス漏洩を検知し且つ必要なガスも供給することができるようになる。また、従来システムのように、1時間以上もガスの不使用が発生しなくても漏洩判定ができるので、短時間でガス漏洩の判定ができる。
【0020】
また、請求項3記載の発明によれば、永久磁石及び磁気近接センサにより、下流側の圧力が第1圧力より低下したこと、すなわち、ガス漏洩を検知することができる。したがって、構成が簡易になりより低コスト化が可能になる、という効果が付加される。
【0021】
また、請求項4記載の発明によれば、弁棒の端部に設けられた貫通孔及びフォトカプラにより、下流側の圧力が第1圧力より低下したこと、すなわち、ガス漏洩を検知することができる。したがって、多段階のガス漏洩検知も容易に実現できる、という効果が付加される。
【0022】
また、請求項5記載の発明によれば、フォトカプラの位置が調整できるので、より高精度のガス漏洩検知が可能になる、という効果が付加される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るガス漏洩検知機能付圧力調整器が取り付けられた、ガス供給設備を示す図である。
【0024】
図1に示すように、ガス供給源としての、ガスボンベ2A、2B、2Cに接続されるガス管3には、自動切替機能を有する一次圧力調整器4が設けられており、一次圧力調整器4を介して、ガス漏洩検知機能付圧力調整器1が接続され、ガス消費源に至る。
【0025】
ガス漏洩検知機能付圧力調整器1は、これより下流側の圧力がガス微少漏洩開始と判定される第1圧力より低下したときにはこれを検知し、同じく下流側の圧力が通常使用開始と判定される第2圧力より低下したときには上記ガス供給源側からガス消費源側に必要なガスを通過させる。図1と図9とを比較すれば明らかなように、ガス漏洩検知機能付圧力調整器1を利用すると、従来のような複雑な配管や、子圧力調整器や漏洩検知装置等を要することなく、ガス漏洩を検知し且つ必要なガスも供給することができるようになる。
【0026】
次に、図2〜図6を用いて、上記ガス漏洩検知機能付圧力調整器の構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るガス漏洩検知機能付圧力調整器を示す断面図である。図3は、図2の要部拡大図である。図4(A)及び図4(B)はそれぞれ、大弁部材の斜視図及び断面図である。図5は、小弁部材の斜視図である。図6(A)及び図6(B)はそれぞれ、ガイド部材の斜視図及び断面図である。
【0027】
図2に示すような断面を有するガス漏洩検知機能付圧力調整器1は、上からみると、図1に示すように略円形状である。すなわち、ガス漏洩検知機能付圧力調整器1は、円形に近い筒状の外形を有している。ガス漏洩検知機能付圧力調整器1は、基本的に、上蓋103が被設された上ケース101及び下ケース102でその外形が構成されている。下ケース102側のガス流入口108及びガス流出口109は、それぞれガス供給源側及びガス消費源側に至るガス管3(図1参照)が連結される。
【0028】
図2に示すように、上蓋103が被設された上ケース101は、大気開放室103aを構成する。大気開放室103aは、外部に連通されて大気圧に保たれている。ダイヤフラム104は、スプリング105に支持されて、大気開放室103aと、ガス流出口109側、すなわち、下流側とを仕切り、下流側の圧力変動に応じて変位する。ダイヤフラム104には、後述の小弁部材110に連結される弁棒111が連結されている。すなわち、ダイヤフラム104の変位に連動して、弁棒111が変位し、これにともなって小弁部材110も変位する。
【0029】
図2及び図3に示すように、下ケース102は、ガス管が連結される円筒状のガス流入口108及びガス流出口109を有している。ガス流入口108側すなわち上流側と、ガス流出口109側すなわち下流側とは、大流量用ノズル106及び大弁部材120(正確には、弁座122)で構成される大流量開閉部、並びに、小流量用ノズル123及び小弁部材110(正確には、弁座112)で構成される小流量開閉部で開閉可能に仕切られている。
【0030】
大流量用ノズル106は、円筒状のノズルであり、下ケース102に一体形成されている。大弁部材120は、特に、図4(A)及び図4(B)からわかるように、中心部に導通孔124が穿設された所定厚の円盤状であり、上面にリング状の弁座122、側面にリング状に周回する溝121、下面に円筒状の小流量用ノズル123が一体形成されている。弁座122は大流量用ノズル106と共に大流量開閉部を構成する。また、小流量用ノズル123は、小弁部材110の弁座112と共に小流量開閉部を構成する。溝121には、ガイド部材130の上枠部が嵌合される。また、導通孔124には、ガスが通過可能な隙間を維持して、弁棒111が挿通される。
【0031】
小弁部材110は、特に、図5からわかるように、中心部に弁棒111が貫通された所定厚の円盤状であり、上面にリング状の弁座112が形成されている。弁座112は、上述したように、小流量用ノズル123共に小流量開閉部を構成する。ガイド部材130は、特に、図6(A)及び図6(B)からわかるように、小弁部材110を囲むような大きさの円筒枠体状である。下面部には弁棒111が挿通される孔132が穿設され、側部には下面部と上枠部とを結合する複数のブリッジ部131が設けられ、上枠部には大弁部材120の溝121に嵌合される複数の嵌合片133が内向きに凸設されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、大弁部材120は、間接的に、すなわち、スプリング107を介して、小弁部材110と連結されている。また、大弁部材120には、小弁部材110を囲むようにガイド部材130が連結されている。小弁部材110は、ダイヤフラム104に直接的に連結されているため、ダイヤフラム104の変位に連動して変位するが、大弁部材120は、小弁部材110がガイド部材130の下面部に接触して下方に押し下げられたときだけ、ダイヤフラム104の変位に連動して変位する。そして、下流側の圧力がガス微少漏洩開始と判定される第1圧力より低下したときのダイヤフラム104(又は弁棒111)の変位に応じて上記小流量開閉部が開放され、下流側の圧力が通常使用開始と判定される第2圧力より低下したときのダイヤフラム104(又は弁棒111)の変位に応じて上記大流量開閉部が開放されるように動作する。スプリング107は、このような動作を可能にする弾性に設定されている。スプリング107、ガイド部材130は、請求項中の連結部材に対応する。
【0033】
図2に戻って、一端にダイヤフラム104が連結された弁棒111の他端には、永久磁石140が設けられている。また、永久磁石140からの磁力がおよぶ程度に近接する下ケース102の壁面には、永久磁石140からの磁力に基づいてオンオフする磁気近接センサ141が設けられている。磁気近接センサ141は、永久磁石140からの磁力に応じて、下流側の圧力がガス微少漏洩開始と判定される上記第1圧力より低下したときの弁棒111の変位を検出できるように、すなわち、小流量開閉部が開放される程度に弁棒111が変位したことを検出できるように、配置されている。このような構成により、下流側のガス微少漏洩を検知できるようになる。永久磁石140及び磁気近接センサ141は、請求項中の変位検出手段に対応する。永久磁石140及び磁気近接センサ141を用いて変位検出手段することにより、構成が簡易になり低コスト化の一助となる。
【0034】
変位検出手段としては、図7に示すような変形例も考えられる。図7は、変位検出手段の変形例を示す図である。なお、図7は、図1の永久磁石140及び磁気近接センサ141近傍の断面形状に対応する。
【0035】
図7に示すように、変形例の変位検出手段では、図1に示す弁棒111に替えて、端部に弁棒の中心軸と垂直方向に貫通された開放穴111aが貫通された弁棒111′が用いられる。更に、この開放穴111aを通過する光量に基づいてオンオフするフォトカプラ143a、143bが、下ケース102の下部に配置されている。詳しくは、フォトカプラ143a、143bは、下ケース102の下部に取り付けられる基台142に配置され、更に基台142は調整台144にて所定位置に保持されている。調整台144は、ネジ145により下ケース102に固定されているが、ネジ145を緩めることにより、図中上下に移動可能である。そして、適当な位置でネジ145を締めることにより、フォトカプラ143a、143bの、上下方向(弁棒111′の変位方向)の位置を調整することが可能である。調整台144は、請求項中の位置調整手段に対応する。
【0036】
上述のような変位検出手段により、ダイヤフラム104(又は弁棒111′)の変位により、開放穴111aが下降し、例えば、フォトカプラ143aのみがオンしたときを第1段階とし、更に開放穴111aが下降し、例えば、フォトカプラ143bのみがオンしたときを第2段階とする。フォトカプラ143a、143bがオンになるのは、いずれも、上記大流量開閉部が閉塞されて、小流量開閉部が開放される程度に弁棒111′が変位したときであるが、上記構成により、小流量開閉部の開閉程度までも検知することが可能になる。すなわち、フォトカプラ143a、143bを用いることにより、ガス漏洩の程度を段階的に検知することができるようになる。
【0037】
次に、図8を用いて、上記図2〜図7を用いて説明したような構成のガス漏洩検知機能付圧力調整器による作用を説明する。図8(A)及び図8(B)は、本発明の一実施形態に係るガス漏洩検知機能付圧力調整器の作用を説明するための図である。なお、図8(A)及び図8(B)は上記図3に準ずる図であり、構成上の重複説明は省略する。
【0038】
深夜等のようにガス消費がほとんどないときには、下流側にガス漏洩が発生しないかぎり、大流量開閉部(ノズル106、弁座122)及び小流量開閉部(ノズル123、弁座112)共に閉塞された状態である。
【0039】
ところが、下流側において、ガス漏洩が発生し始めると下流側の圧力がわずかに低下する。このときの圧力を第1圧力とする。下流側の圧力が第1圧力に低下すると、ダイヤフラム104(又は弁棒111)が下方に変位する。これに連動して、図8(A)の矢印D1に示すように、小弁部材110も下方に変位する。そうすると、小流量開閉部が開放されて少量のガスが下流側に流れ始める。一方、下流側において、ガス消費源が通常使用し始めると、下流側の圧力は大きく低下する。このときの圧力を第2圧力とする。すなわち、上記第1圧力〜第2圧力の範囲が継続したときがガス漏洩に相当する。上記位置検出手段により、第1圧力〜第2圧力の範囲に対応する程度に弁棒111の下端が変位したことが検出できるので、これを利用してガス漏洩を判定できる。
【0040】
なお、下流側において、ガス消費源が通常使用されているときには、下流側の圧力は上記第2圧力より低下した状態で安定する。下流側の圧力が上記第2圧力まで低下すると、ダイヤフラム104(又は弁棒111)は上記第1圧力時よりも更に下方に変位する。これに連動して、図8(B)の矢印D2に示すように、小弁部材110は更に下方に変位する。そうすると、小弁部材110がガイド部材130に接触して、ガイド部材130を下方に押し下げるように変位させ、その結果、上記大流量開閉部が開放される。これによって、ガス供給源側からガス消費源側に必要なガスが供給される。
【0041】
上記ガス漏洩の判定方法としては、例えば、弁棒111の変位に応じた電流が発生されるようにしておき、上記第1圧力〜第2圧力の範囲に対応する電流が所定時間(例えば、1秒)以上継続したときのみ、ガス漏洩が発生しているものとする。そして、この判定結果を報知するようにする。上記電流の監視は、定期的又は常時行い、1日〜1ヶ月に1回程度、ガス漏洩有無を表示するようにしてもよい。
【0042】
以上のように、本発明の実施形態によると、従来のような複雑な配管を要することなく、低コストでガス漏洩を検知し且つ必要なガスも供給することができるようになる。したがって、コスト高を抑制することができる。また、取り付けスペースや配管スペースの確保も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス漏洩検知機能付圧力調整器が取り付けられたガス供給設備を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るガス漏洩検知機能付圧力調整器を示す断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)はそれぞれ、大弁部材の斜視図及び断面図である。
【図5】小弁部材の斜視図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)はそれぞれ、ガイド部材の斜視図及び断面図である。
【図7】変位検出手段の変形例を示す図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、本発明の一実施形態に係るガス漏洩検知機能付圧力調整器の作用を説明するための図である。
【図9】この種の従来のガス漏洩検知システムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ガス漏洩検知機能付圧力調整器
104 ダイヤフラム
105、107 スプリング
110 小弁部材
120 大弁部材
130 ガイド部材
140 永久磁石
141 磁気近接センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源側である上流側とガス消費源側である下流側との間に介設されて前記下流側のガス漏洩を検知する機能を有する圧力調整器であって、
前記下流側と大気開放室側とを仕切り、前記下流側の圧力変動に応じて変位するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムと連動して変位する弁棒と、
前記弁棒に直接的又は間接的に連結された小弁部材及び大弁部材と、
開放時には大流量のガスを通過させるために、前記下流側と前記上流側とを開閉可能に仕切る大流量開閉部と、
開放時には小流量のガスを通過させるために、前記下流側と前記上流側とを開閉可能に仕切る小流量開閉部と、
前記下流側の圧力がガス微少漏洩開始と判定される第1圧力より低下したときの前記弁棒の変位に応じて前記小流量開閉部を開放し、前記下流側の圧力が通常使用開始と判定される第2圧力より低下したときの前記弁棒の変位に応じて前記大流量開閉部を開放するように動作する、前記小弁部材と前記大弁部材とを連結する連結部材と、
少なくとも、前記下流側の圧力が前記第1圧力〜前記第2圧力の範囲になったときの前記弁棒の変位を検出する変位検出手段と、
を含むことを特徴とするガス漏洩検知機能付圧力調整器。
【請求項2】
請求項1記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器において、
前記連結部材は、
前記小弁部材及び前記大弁部材の対向面に設けられたスプリングと、
前記小弁部材を囲むように前記大弁部材に連結された枠体状のガイド部材と、
を含むことを特徴とするガス漏洩検知機能付圧力調整器。
【請求項3】
請求項1記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器において、
前記変位検出手段は、
前記弁棒の端部に設けられた永久磁石と、
前記永久磁石からの磁力に基づいてオンオフする磁気近接センサと、
を含むことを特徴とするガス漏洩検知機能付圧力調整器。
【請求項4】
請求項1記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器において、
前記変位検出手段は、
前記弁棒の端部に設けられた、前記弁棒の中心軸と垂直方向に貫通された開放穴と、
前記開放穴を通過する光量に基づいてオンオフするフォトカプラと、
を含むことを特徴とするガス漏洩検知機能付圧力調整器。
【請求項5】
請求項4記載のガス漏洩検知機能付圧力調整器において、
前記フォトカプラの前記弁棒の変位方向の位置を調整する位置調整手段、
を含むことを特徴とするガス漏洩検知機能付圧力調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−39994(P2006−39994A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219699(P2004−219699)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】