説明

ガラスランチャンネル組立体

【課題】全体としてはゴム材料から成るガラスランチャンネルよりも軽量化され且つドア枠の所定位置に装着された後にはドア枠の長手方向に沿って位置ずれしない自動車用ガラスランチャンネル組立体を提供すること。
【解決手段】本発明により提供されるガラスランチャンネル組立体は、ドア枠に沿って装着された後に、縦辺部80ではドア枠の縦枠と接触する部分83,89で所定の弾性力f2を発生させると共に上辺部60ではドア枠の上枠と接触する部分63,69で所定の弾性力f1を発生させ、ここで上辺部60における上枠との静止摩擦係数μ1に弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、縦辺部における縦枠との静止摩擦係数μ2に弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも大となるように上辺部と縦辺部の横断面形状が調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア枠に装備されるガラスランチャンネル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両におけるスライドドア、フロントドア、リアドア等のドアパネル本体に設けられるドア枠(窓枠ともいう。)には、一般にガラスランチャンネル組立体(ガラスラン、ガラスランチャンネル、ランチャン、案内部材等とも呼称される。)が装備されている。かかる用途のガラスランチャンネル組立体は、長尺状に成形された横断面形状が略U字形の溝構成部材(長尺成形部材)であり、ドア枠に形成された溝に装着され、ドア内を昇降動する窓板の昇降を案内する。ガラスランチャンネル組立体は、一般に、ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性ポリマー材料を用いて押出成形等を行うことによって製造される。例えば、特許文献1には、全体がEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)主体のゴム材料、或いはTPE(熱可塑性エラストマー)から形成されたガラスランチャンネルが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−280749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、EPDMのようなゴム材料から成る押出成形材料を使用して押出成形されたガラスランチャンネルでは、成形材料であるゴムの比重が約1.1〜1.3であり、比重が約0.9〜1.0である軟質のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)で同一形状に作製されたガラスランチャンネルよりも単位体積当りの重量が大きくなるという欠点がある。
一方、上記のとおり、軽量であることが一つの長所であるTPO製のガラスランチャンネルでは、次のような欠点がある。即ち、
(1).軟質オレフィン系熱可塑性エラストマーは軟質ゴム材よりもクリープ変形が大きい。このため、ドア枠に装着されて使用に供されるときに、装着されてから所定時間(典型的には60分)経過すると該ドア枠に対する摩擦力がゴム材からなるものよりも小さくなり、結果、ドア枠から位置ずれし易い。かかる位置ずれは、自動車の前ドアと後ドアを問わず発生し得るが、ドア枠のうちの上枠(自動車のセンターピラーに沿って上下方向に配置される縦枠の上端と一体に形成され、該上端からフロントピラー又はリアピラーに沿って斜め下方向に延びる傾斜枠を含む上枠部分をいう。以下同じ。)の特に傾斜枠部分で発生し易い。また、
(2).軟質オレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば加硫済みの軟質ゴムよりもドア枠に対する静止摩擦係数が大きい。このため、ドア枠への装着作業、具体的にはドア枠の溝内への挿入作業時の抵抗が大きく装着作業性が劣る。特に、ドア枠の上枠の溝内にガラスランチャンネルを挿入する際には、作業者は下側から上側に向けて押圧力を加えなければならず、人間工学的にみればかかる動作態様は無理な力の加え方であり、作業者に過度の負担と疲労を与えかねない。
【0005】
そこで本発明は、かかる車両のドア枠用のガラスランチャンネル組立体に関する従来の問題点を解決すべく創出されたものであり、全体としてはゴム材料から成る押出成形材料を使用して押出成形されたガラスランチャンネルよりも軽量化されること、及び、ドア枠の所定位置に装着された後にはドア枠の長手方向に沿って位置ずれが生じないこと、を共に実現し得るガラスランチャンネル組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく本発明によって車両のドア枠(窓板)に装着されるガラスランチャンネル組立体が提供される。
即ち、本発明のガラスランチャンネル組立体は、請求項1に記載のとおり、車内側壁と車外側壁とが自動車の幅方向で略平行に配置されて該二つの側壁間に溝が形成され、自動車のセンターピラーに沿って上下方向に配置される縦枠と、前記縦枠の上端と一体に形成され、前記上端からフロントピラー又はリアピラーに沿って斜め下方向に延びる傾斜枠を含む上枠と、前記縦枠の上端と前記上枠のセンターピラー側端末とを所定の交差角度で交差させて一体的に接続するコーナー枠とを有するドア枠の前記溝内に沿って連続して装着可能であり、前記溝内に装着された際には前記ドア内を昇降動する窓板をガイドするように形成された弾性ポリマー材料製の長尺なガラスランチャンネル組立体である。
そして本発明のガラスランチャンネル組立体は、前記ドア枠との静止摩擦係数が所定値μ1である加硫済みの弾性ゴムから成り前記ドア枠の上枠に沿って装着される長尺な上辺部と、前記ドア枠との静止摩擦係数μ2が前記μ1よりも大きいオレフィン系熱可塑性エラストマーから成り前記ドア枠の縦枠に沿って装着される長尺な縦辺部と、熱可塑性エラストマーから成り前記ドア枠のコーナー枠に沿って装着されるコーナー部とを含む。
また、本発明のガラスランチャンネル組立体では、前記上辺部と前記縦辺部とは、共に、前記窓板の外周縁端面と対向する位置に配置される底壁と、該底壁の幅方向車内側端部から屈曲状の車内側連結部を介して突出する車内側側壁部と、該底壁の幅方向車外側端部から屈曲状の車外側連結部を介して突出する車外側側壁部とを有している。
また、本発明のガラスランチャンネル組立体は、前記ドア枠への装着前の状態で前記底壁と前記両側の側壁部とで拡開した略U字形状の一定横断面形状に押出成形されている。
また、本発明のガラスランチャンネル組立体では、前記車内側側壁部と前記車外側側壁部とは、さらにそれぞれの突出先端側から一体に前記底壁側に向け前記側壁部との間に空間を保って折り返し状に延びる車内側シールリップと車外側シールリップとをそれぞれ有している。
そして本発明のガラスランチャンネル組立体は、前記ドア枠に沿って装着された際には、前記上辺部と縦辺部は共に前記車内側側壁部と車外側側壁部のそれぞれが前記屈曲状の連結部の弾性変位により該装着前の前記拡開U字形の拡開度合いが縮小された形状に変位して配置され、且つ、装着後に前記縦辺部では前記ドア枠の縦枠と接触する部分で所定の弾性力f2を発生させると共に前記上辺部では前記ドア枠の上枠と接触する部分で所定の弾性力f1を発生させる。
ここで前記上辺部における上枠との静止摩擦係数μ1に前記弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、前記縦辺部における縦枠との静止摩擦係数μ2に前記弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも大となるように該上辺部と縦辺部のそれぞれの横断面形状が調整されていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成の本発明のガラスランチャンネル組立体によると、ドア枠への装着作業時においては、ドア枠の上記傾斜枠を含む上枠には、ガラスランチャンネル組立体のうちの上記弾性ゴム製の上辺部が装着される。従って、かかる装着部位では、従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネル組立体よりも静止摩擦係数が低い弾性ゴム製上辺部を装着すればよいため、ドア枠への装着作業が容易となり且つ装着作業者に与える負荷(疲労)を小さくすることができる。
また、かかる装着部位において、従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネル組立体とは異なり、よりクリープ変形の小さい上記弾性ゴム製の上辺部が装着される。このため、装着後の所定時間経過後にガラスランチャンネル組立体(上辺部)とドア枠(上記傾斜枠を含む上枠)との間に生じる摩擦力を従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネル組立体よりも大きく維持できる。従って、かかる装着部位(上記傾斜枠を含む上枠)において、昇降窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体の不測の位置ずれ発生を防止することができる。
さらにまた、本発明のガラスランチャンネル組立体では、上記縦辺部は比重がゴムよりも小さいTPOで成形されている。このため、ガラスランチャンネル組立体全体をゴムで成形したものよりも軽量化が図られ、上記ドア枠への装着作業の容易化(装着作業者の負荷低減)やドア枠の上枠におけるガラスランチャンネル組立体の位置ずれ防止に加えて更に軽量化によるメリット(搬送の効率化、車両重量の軽減、等)を享受することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1のガラスランチャンネル組立体において、前記横断面形状の調整は、ガラスランチャンネル組立体を前記ドア枠に装着する際の弾性変位角度(θ)に関し、前記上辺部における車内側側壁部及び車外側側壁部のうち少なくともいずれか一方の弾性変位角度が、前記縦辺部における車内側側壁部及び車外側側壁部のいずれの弾性変位角度よりも大きくなるように設定されていることにより実現されることを特徴とする。
かかる構成の請求項2のガラスランチャンネル組立体では、上辺部において縦辺部よりも大きな弾性力を発揮させることができる。このため、請求項2のガラスランチャンネル組立体によると、ガラスランチャンネル組立体の上辺部とドア枠の上記傾斜枠を含む上枠との間に高い摩擦力を生じさせ、昇降窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体の不測の位置ずれ発生を未然に防止することができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2のガラスランチャンネル組立体において、前記上辺部における車内側側壁部及び車外側側壁部のいずれの弾性変位角度も前記縦辺部における車内側側壁部及び車外側側壁部のいずれの弾性変位角度よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする。
かかる構成の請求項3のガラスランチャンネル組立体では、上辺部において縦辺部よりもさらに大きな弾性力を発揮させることができる。このため、請求項3のガラスランチャンネル組立体によると、請求項2のガラスランチャンネル組立体よりもさらにガラスランチャンネル組立体の上辺部とドア枠の上記傾斜枠を含む上枠との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体の不測の位置ずれ発生をさらに確実に防止することができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2又は3のガラスランチャンネル組立体において、該ガラスランチャンネル組立体は前記コーナー部において一体的に接続され、前記ドア枠に沿って装着する際の該コーナー部における前記弾性変位角度は、前記上辺部側から前記縦辺部側にいくに従って該上辺部と同一の弾性変位角度から該縦辺部の弾性変位角度と同一の弾性変位角度となるまで徐々に小さく変化していることを特徴とする。
かかる構成の請求項4のガラスランチャンネル組立体では、長手方向におけるコーナー部及びその近傍(即ち上辺部のコーナー部寄り端部と縦辺部のコーナー部寄り端部)における一体性に優れ、ドア枠への装着作業が容易である。また、装着作業中にコーナー部に不測の変形が生じない。
従って、請求項4のガラスランチャンネル組立体によると、請求項2又は3のガラスランチャンネル組立体の奏する効果に加えて、ドア枠のコーナー部(即ちコーナー枠)を含む枠全体に亘って安定してガラスランチャンネル組立体を装着することができるという効果が得られる。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかのガラスランチャンネル組立体において、前記横断面形状の調整は、ガラスランチャンネル組立体を前記ドア枠に装着する前の状態において、前記上辺部の底壁と車外側側壁部との交差角度と該上辺部の底壁と車内側側壁部との交差角度の少なくともいずれか一方の交差角度が鈍角になるように成形されていることにより実現されることを特徴とする。
かかる構成の請求項5のガラスランチャンネル組立体では、上辺部において縦辺部よりも大きな弾性力を発揮させることができる。このため、請求項5のガラスランチャンネル組立体によると、ガラスランチャンネル組立体の上辺部とドア枠の上記傾斜枠を含む上枠との間に高い摩擦力を生じさせ、昇降窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体の不測の位置ずれ発生を未然に防止することができる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5のガラスランチャンネル組立体において、前記上辺部の底壁と車外側側壁部との交差角度と該上辺部の底壁と車内側側壁部との交差角度のいずれの交差角度も鈍角になるように成形されていることを特徴とする。
かかる構成の請求項6のガラスランチャンネル組立体では、上辺部において縦辺部よりもさらに大きな弾性力を発揮させることができる。このため、請求項6のガラスランチャンネル組立体によると、請求項5のガラスランチャンネル組立体よりもさらにガラスランチャンネル組立体の上辺部とドア枠の上記傾斜枠を含む上枠との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体の不測の位置ずれ発生をさらに確実に防止することができる。
【0013】
請求項7の発明は、請求項5又は6のガラスランチャンネル組立体において、該ガラスランチャンネル組立体は前記コーナー部において一体的に接続され、前記ドア枠に沿って装着される前の状態において、該コーナー部における前記交差角度は、前記上辺部側から前記縦辺部側にいくに従い、該上辺部と同一の交差角度から該縦辺部の交差角度と同一の交差角度となるまで徐々に小さく変化していることを特徴とする。
かかる構成の請求項7のガラスランチャンネル組立体では、長手方向におけるコーナー部及びその近傍(即ち上辺部のコーナー部寄り端部と縦辺部のコーナー部寄り端部)における一体性に優れ、ドア枠への装着作業が容易である。また、装着作業中にコーナー部に不測の変形が生じない。
従って、請求項7のガラスランチャンネル組立体によると、請求項5又は6のガラスランチャンネル組立体の奏する効果に加えて、ドア枠のコーナー部(即ちコーナー枠)を含む枠全体に亘って安定してガラスランチャンネル組立体を装着することができるという効果が得られる。
【0014】
また、請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれかのガラスランチャンネル組立体において、前記横断面形状の調整は、前記上辺部の車外側連結部の厚さが前記縦辺部の車外側連結部の厚さよりも厚く形成されている、及び/又は、前記上辺部の車内側連結部の厚さが前記縦辺部の車内側連結部の厚さよりも厚く形成されている、ことにより実現されることを特徴とする。
かかる構成の請求項8のガラスランチャンネル組立体では、上辺部において縦辺部よりも大きな弾性力を発揮させることができる。このため、請求項8のガラスランチャンネル組立体によると、ガラスランチャンネル組立体の上辺部とドア枠の上記傾斜枠を含む上枠との間に高い摩擦力を生じさせ、昇降窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体の不測の位置ずれ発生を未然に防止することができる。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8のガラスランチャンネル組立体において、前記上辺部の車外側連結部の厚さが前記縦辺部の車外側連結部の厚さよりも厚く形成されており、且つ、前記上辺部の車内側連結部の厚さが前記縦辺部の車内側連結部の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする。
かかる構成の請求項9のガラスランチャンネル組立体では、上辺部において縦辺部よりもさらに大きな弾性力を発揮させることができる。このため、請求項9のガラスランチャンネル組立体によると、請求項8のガラスランチャンネル組立体よりもさらにガラスランチャンネル組立体の上辺部とドア枠の上記傾斜枠を含む上枠との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体の不測の位置ずれ発生をさらに確実に防止することができる。
【0016】
また、請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれかのガラスランチャンネル組立体において、前記上辺部及び縦辺部の車外側側壁部及び車内側側壁部のそれぞれの突出先端側には、前記シールリップと反対側に前記側壁部との間に空間を保って折り返し状に延び、前記ドア枠の内周縁を外側から覆うと共に該ドア枠に装着された際には弾性変位して前記側壁部と合わせて前記内周縁を把持可能な遮蔽リップがそれぞれ一体的に形成され、前記ドア枠に装着された際には、前記遮蔽リップの弾性変位により発生する弾性力で前記車外側側壁部及び車内側側壁部を前記ドア枠の車外側内周縁及び車内側内周縁にそれぞれ引き寄せることを特徴とする。
かかる構成の請求項10のガラスランチャンネル組立体では、車外側側壁部及び車内側側壁部の弾性力に加えてさらに大きな弾性力(換言すれば押圧力)を生じさせることができる。従って、請求項10のガラスランチャンネル組立体によると、ガラスランチャンネル組立体の上辺部とドア枠の上記傾斜枠を含む上枠との間にさらに高い摩擦力を生じさせることができ、昇降窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体の不測の位置ずれ発生をさらに確実に防止することができる。
【0017】
また、請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかのガラスランチャンネル組立体において、前記上辺部の底壁における前記窓板の外周縁端面と対向する部分には、該底壁よりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層が長手方向に連続して形成されており、前記縦辺部の底壁における前記窓板の外周縁端面と対向する部分ならびに前記縦辺部の前記車内側シールリップ及び車外側シールリップの表面には、それぞれ、該底壁ならびに該車内側シールリップ及び車外側シールリップよりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層が長手方向に連続して形成されていることを特徴とする。
かかる構成の請求項11のガラスランチャンネル組立体によると、窓板の昇降動に伴って生じる当該窓板と上辺部の底壁、縦辺部の底壁及び車内側と車外側のシールリップとの間に生じる摩擦力を低減することができる。従って、請求項11のガラスランチャンネル組立体によると、請求項1〜10のいずれかのガラスランチャンネル組立体の奏する効果に加えて、窓板のよりスムーズな昇降動を実現するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば押出成形等によるガラスランチャンネルの製造に関する一般的な事項)は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明のガラスランチャンネル組立体の好適な一実施形態(第1実施形態)を詳細に説明する。図1は、自動車1(ここではセダンタイプの乗用車)に装着される前ドア1Aと後ドア1Bを模式的に示す側面図である。この図では、自動車1の左側面に装着されるドア1A,1Bのみ示しているが、車両の右側面にも同様の構成(即ち左右対称)のドアならびにガラスランチャンネル組立体が装着される。このため、以下の説明は図示される左側の前後のドア1A,1Bに装着されるガラスランチャンネル組立体についてのみ説明し、重複する右側ドアパネルに装着されるガラスランチャンネル組立体についての説明は省略する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る前ドア1Aは、大まかにいって、ドア本体を構成するドアアウターパネル2A及び図示しないドアインナーパネル(以下、両者を合わせて「ドアパネル2A」と略称する。)、ならびに該パネル2Aの上方に形成されたドア枠(前ドア枠)10から構成されている。本実施形態に係る前ドア枠10は、サッシ(即ち帯鋼板を冷間ロール成形法により所定の横断面形状に折り曲げ成形した長尺材)製である。
前ドア枠10は、自動車1のセンターピラー8に沿って上下方向に配置される縦枠12と、その縦枠12の上端と一体に形成され、その上端領域からフロントピラー4に沿って斜め下方向に延びる傾斜枠13の部分を含む上枠14とを有する。かかる縦枠12の上端と上枠14のセンターピラー8側の端末とは所定の交差角度で交差するようにTIG溶接等の溶接手段によって相互に接続されている。これにより、図示されるように、縦枠12の上端と上枠14のセンターピラー側端末とが所定の交差角度で交差するように一体的に接続されたコーナー部分、即ちコーナー枠18が形成されている。また、上枠14の傾斜枠13部分のやや前寄りの部位からは、図示するように鉛直方向(即ちドアパネル2Aの上縁2AAの延びる方向とほぼ直交する方向)に延びる仕切り枠15が着脱可能に装着されている。特に限定しないが、本実施形態においては、仕切り枠15は、図示しないL字形の接合金具を介してビス等により上枠14(具体的には傾斜枠13)に締結固定されている。
而して、前ドア枠10(即ち縦枠12、傾斜枠13を含む上枠14、仕切り枠15、コーナー枠18)の内側の溝内には、本実施例に係るガラスランチャンネル組立体50が装着されている。ガラスランチャンネル組立体の性状については後述する。
【0021】
仕切り枠15の前方においては、ドアパネル上縁2AAと上枠14(具体的には傾斜枠13)及び当該仕切り枠15で包囲された三角形状の開口部が形成され、その開口部には前クオーターウインドウガラス(即ち固定窓)7Aが嵌め込まれている。
そして、仕切り枠15の後方においては、ドアパネル上縁2AA、上枠14(傾斜枠13を含む)、縦枠12及び当該仕切り枠15で包囲されるほぼ矩形状の窓開口部9Aが形成されている。その開口部9Aには、ドアパネル2A内に設けられた図示しない窓板昇降機構に装着された窓板3Aが後述するガラスランチャンネル組立体50によりガイドされつつ昇降自在に装着される。
【0022】
同様に、本実施形態に係る後ドア1Bは、大まかにいって、ドア本体を構成するドアアウターパネル2B及び図示しないドアインナーパネル(以下、両者を合わせて「ドアパネル2B」と略称する。)、ならびに該パネル2Bの上方に形成されたドア枠(後ドア枠)20から構成されている。本実施形態に係る後ドア枠20は、前ドア枠10と同様のサッシ製である。
後ドア枠20は、自動車1のセンターピラー8に沿って上下方向に配置される縦枠22と、その縦枠22の上端と一体に形成され、その上端領域からリアピラー6に沿って斜め下方向に延びる傾斜枠23の部分を含む上枠24とを有する。かかる縦枠22の上端と上枠24のセンターピラー8側の端末とは所定の交差角度で交差するようにTIG溶接等の溶接手段によって相互に接続されている。これにより、図示されるように、縦枠22の上端と上枠24のセンターピラー側端末とが所定の交差角度で交差するように一体的に接続されたコーナー部分、即ちコーナー枠28が形成されている。また、上枠24の傾斜枠23部分のやや後寄りの部位からは、図示するように鉛直方向(即ちドアパネル2Bの上縁2BBの延びる方向とほぼ直交する方向)に延びる仕切り枠25が着脱可能に装着されている。而して、後ドア枠20(即ち縦枠22、傾斜枠23を含む上枠24、仕切り枠25、コーナー枠28)の内側の溝内には、前ドア枠10と同様の本実施例に係るガラスランチャンネル組立体150が装着されている。ガラスランチャンネル組立体の性状については後述する。
【0023】
仕切り枠25の後方においては、ドアパネル上縁2BBと上枠24(具体的には傾斜枠23)及び当該仕切り枠25で包囲された三角形状の開口部が形成され、その開口部には後クオーターウインドウガラス(即ち固定窓)7Bが嵌め込まれている。
そして、仕切り枠25の前方においては、ドアパネル上縁2BB、上枠24(傾斜枠23を含む)、縦枠22及び当該仕切り枠25で包囲されるほぼ矩形状の窓開口部9Bが形成されている。その開口部9Bには、ドアパネル2B内に設けられた図示しない窓板昇降機構に装着された窓板3Bが後述するガラスランチャンネル組立体によりガイドされつつ昇降動自在に装着される。
【0024】
図2は、上述した前ドア枠10及び後ドア枠20の溝内にそれぞれ装着される本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50,150の全体を模式的に示す側面図である。この図に示すように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50,150は、長尺な上辺部60,160と、長尺な縦辺部80,180と、上コーナー部100,200と、長尺な仕切り辺部120,220と、下コーナー部140,240とを備える。
図示するように、前後のドア枠10,20の形状の違いによって、サイズ等に若干の相違はあるものの、大まかな構成は前ドア枠10用のガラスランチャンネル組立体50と後ドア枠20用のガラスランチャンネル組立体150とはほぼ同じであり、本発明を特徴付ける構成に相違はない。従って、以下の説明は、前ドア枠10用のガラスランチャンネル組立体50について行い、後ドア枠20用のガラスランチャンネル組立体150についての説明は重複するため省略する。
【0025】
前ドア枠10の上枠14に沿って装着される長尺な上辺部60は、弾性ポリマー材料を押出成形することによって形成される長尺な成形部分である。典型的には、ドア枠10との静止摩擦係数が所定値(μ1)となるように加硫済みの弾性ゴム(典型的にはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)を主体とする材料)から形成される。例えば、EPDM(ここでは100質量部)、カーボンブラック(ここでは120質量部)、プロセスオイル(ここでは80質量部)、各種の加硫剤(ここでは黄硫を1質量部)、各種の充填材(ここではタルクを30質量部)、各種の加硫促進剤(ここでは2質量部)、等を配合して成る押出成形用ゴム材料を使用して押出成形し、さらに加熱処理(例えば約200℃)を施して押出成形物を加硫することにより得られる。
特に限定されるものではないが、この種の材料を使用すると、静止摩擦係数(μ1)が概ね1.1以上1.7未満(典型的には1.4±0.1)程度である成形体を形成することができる。
【0026】
一方、前ドア枠10の縦枠12及び仕切り枠15に沿ってそれぞれ装着される長尺な縦辺部80及び仕切り辺部120は、弾性ポリマー材料を押出成形することによって形成される長尺な成形部分である。典型的には、前ドア枠10との静止摩擦係数が上辺部60における上記静止摩擦係数μ1よりも大きい値(μ2)となるようにオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)から形成される。例えば、市販される種々のTPO製品(一例を挙げればエー・イー・エス・ジャパン(株)が販売するTPO材料(例えば商品名:サントプレーン(登録商標)121−67W))を使用して好適に得られる。
特に限定されるものではないが、この種の材料を使用すると、静止摩擦係数(μ2)が概ね1.7以上2.0未満(典型的には1.8±0.1)程度である成形体を形成することができる。
【0027】
また、前ドア枠10のコーナー枠18に沿って装着され上辺部60と縦辺部80とを接続する上コーナー部100ならびに上辺部60と仕切り辺部120とを接続する下コーナー部140は、弾性ポリマー材料を射出成形することによって形成される成形部分である。典型的には、当該コーナー部を接続する対象である長尺成形物の端末(具体的には上辺部60の端末と縦辺部80の端末あるいは上辺部60の端末と仕切り辺部120の端末)を、所定の距離を(空間)を保ち且つ所定の交差角度で交差させて射出成形型内に載置し、当該射出成形型内の空間に加熱して溶融した熱可塑性エラストマー材料(例えばTPO)を射出することによって、当該コーナー部の成形と上記接続とを同時に行うことができる。或いは、予め所定形状に成形したコーナー部100,140を用意し、適当な接着剤により該コーナー部を接続対象の長尺成形物の端末(具体的には上辺部60の端末と縦辺部80の端末あるいは上辺部60の端末と仕切り辺部120の端末)に接続してもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50を特徴付ける上辺部60と縦辺部80の構成を詳細に説明する。
先ず上辺部60の構成と該上辺部60が装着される上枠14の構造について図面を参照しつつ説明する。図3及び図4に、押出成形後(即ちドア枠10に装着する前)の上辺部60の横断面構造を示す。あわせて図4に前ドア枠10の一部である上枠14の横断面構造を示す。また、図5は上枠14に上辺部60を装着した状態を示す図1のV−V線断面図である。
【0029】
先ず、前ドア枠10の上枠14(上記後ドア枠20の上枠24についても同様である。)の構造について説明する。図4に示すように、上枠14は、車内側壁14Gと車外側壁14Aとが自動車の幅方向で略平行に配置されるように折り曲げられたスチールによって形成されており、枠に沿って該二つの側壁14A,14G間に溝14Sが形成されている。具体的には、上枠14内の溝14Sの周囲は、車外側壁14Aと車内側壁14Gと底壁14Jとによって構成されている。本実施形態においては、図5に示すように、底壁14Jの面方向と窓板3Aの昇降動方向とは直交しておらず、底壁14Jの車外側が車内側よりも高位置となるように(即ち、窓板3Aの昇降動方向と底壁14Jの車外側との交差角度が鈍角となるように)傾斜している。
また、車外側壁14Aの底壁14J寄りの部分は、溝内部空間(車外側壁14Aと車内側壁14Gとの間隔)が開口部付近よりも拡大されるように、車外側壁14Aの開口部寄りの内周壁14Dよりも凹んだ拡大壁14Bとして形成されており、該拡大壁14Bと内周壁14Dとの間には段差部14Cが形成されている。同様に、車内側壁14Gの底壁14J寄りの部分は車内側壁14Gの開口部寄りの内周壁14Eよりも凹んだ拡大壁14Hとして形成されており、該拡大壁14Hと内周壁14Eとの間には段差部14Fが形成されている。
【0030】
図3〜5に示すように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50の上辺部60は、大まかにいって、窓板3Aの外周縁端面3AAと対向する位置に配置される底壁部66と、該底壁部66の幅方向の車内側端部から車内側連結部65を介して突出する車内側側壁部63と、該底壁部66の幅方向の車外側端部から車外側連結部67を介して突出する車外側側壁部69とを有している。図5に示すように、車内側連結部65と車外側連結部67は、ドア枠10に装着された際に屈曲し得るように、隣接する底壁部66や車内側及び車外側両側の側壁部63,69よりも肉薄に形成されている(図中の対向する矢印参照)。
【0031】
図3に示すように、ドア枠10への装着前の状態では、上辺部60を構成する押出成形体は、底壁部66と上記車内側及び車外側両側の側壁部63,69とで拡開した略U字形状の一定横断面形状を有する。さらに、図示されるように、車内側側壁部63及び車外側側壁部69それぞれの突出先端側から一体に底壁部66側に向け該側壁部63,69との間に空間を保って折り返し状に延びる車内側シールリップ61及び車外側シールリップ70を有している。
さらに、図示するように、車内側側壁部63の底壁部66寄りの端部には、車内側係止突条部64が外方に張り出すように形成されている。また、車内側側壁部63のシールリップ61寄りの端部には、車内側先端張出部62が外方に張り出すように形成されている。同様に、車外側側壁部69の底壁部66寄りの端部には、車外側係止突条部68が外方に張り出すように形成されている。また、車外側側壁部66のシールリップ70寄りの端部には、車外側先端張出部71が外方に張り出すように形成されている。
【0032】
本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50の上辺部60は、上述した各構成部分の相対的な位置関係即ち角度が図3にθで示すとおりに調整されて押出成形される。具体的には、車外側側壁部69と車外側シールリップ70との間の角度θ3が約40°となり、車内側側壁部63と車内側シールリップ61との間の角度θ4が約40°となり、車外側側壁部69と車外側係止突条部68との間の角度θ5が約35°となり、車内側側壁部63と車内側係止突条部64との間の角度θ6が約35°となるように押出成形後の横断面形状が調整されている。
【0033】
さらに、図3,4と図5との比較により明らかなように、上辺部60の横断面形状は押出成形後の拡開した略U字形状(図3,4参照)から前ドア枠10の上枠14に沿って装着された(図5参照)後には、車内側側壁部63と車外側側壁部69のそれぞれが連結部65,67の屈曲状の弾性変位に伴い該装着前の拡開U字形の拡開度合いが縮小されたU字形状(ここでは上枠14への装着後の底壁部66と車外側側壁部69との角度αが約80°であり、底壁部66と車内側側壁部63との角度βが約100°であるU字形状としている。)へと変位するところ、本実施形態においては、かかる弾性変位角度はドア枠10(上枠14)装着後に車内側側壁部63と車外側側壁部69が該上枠とそれぞれ接触する部分で所定の弾性力(f1)が得られるように調整されている。ここでは車外側側壁部69の弾性変位角度θ1が約65°に設定され、且つ、車内側側壁部63の弾性変位角度θ2が約45°に設定されている。即ち、上記α及びβで示す角度及び上記θ1及びθ2で示す角度から明らかなように、本実施形態においては、ドア枠10への装着前の状態(図3,4参照)で上辺部60の底壁部66と車外側側壁部69との交差角度(α+θ1=145°)ならびに該上辺部60の底壁部66と車内側側壁部63との交差角度(β+θ2=145°)のいずれも鈍角になるように成形されている。
【0034】
また、本実施形態においては、上述した上辺部60の車外側連結部67の厚さが後述する縦辺部80の車外側連結部87の厚さよりも厚く形成され、且つ、上辺部60の車内側連結部65の厚さも縦辺部80の車内側連結部85の厚さよりも厚く形成されている。
【0035】
上記のように種々の条件を調整・設定することにより、本実施形態に係る上辺部60は、上枠14との静止摩擦係数μ1に上記弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、相対的に、後述する縦辺部80(仕切り辺部120についても同じ。)における縦枠12との静止摩擦係数μ2に弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも大となるように横断面形状が調整されている。
【0036】
而して、上記構成の上辺部60は、図5に示すように、車内側及び車外側それぞれの連結部65,67が屈曲状に曲がる弾性変位によって上述したように拡開U字形から縮小U字形状へと弾性変位しつつ上枠14の下から上方向に溝14S内に装着される。このとき、図5に示すように、弾性変位した車内側側壁部63及び車外側側壁部69が、それぞれ、所定の弾性力(f1)で車内側壁14G及び車外側壁14Aに押し当てられる。ここで本実施形態に係る上辺部60は、上述のとおり加硫済みの弾性ゴム(典型的にはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)を主体とする材料)から形成されているため、かかる装着部位では従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネル組立体よりも静止摩擦係数が低い弾性ゴム製であるためドア枠10への装着作業が容易となり且つ装着作業者に与える負荷(疲労)を小さくすることができる。具体的には、上枠14の下から上方向にガラスランチャンネルを装着することは、上から下方向或いは横方向に装着する場合よりも作業者に負担を強いる作業であるが、上辺部60は静止摩擦係数が低い弾性ゴム製であるため、当該上枠14の下から上方向への装着作業が容易となる。
【0037】
また、かかる装着部位において、従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネルとは異なり、よりクリープ変形の小さい上記弾性ゴム製の上辺部60であるため、装着後の所定時間経過後に当該上辺部60と上枠14(上記傾斜枠13部分を含む)との間に生じる摩擦力を従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネルよりも大きく維持できる。従って、かかる装着部位において、昇降する窓板3Aの作動に伴うガラスランチャンネル組立体50の不測の位置ずれ発生を長期にわたって防止することができる。
なお、上辺部60の底壁部66における窓板3Aの外周縁端面3AAと対向する部分には、底壁部66よりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層が長手方向に連続して形成されていることが好ましく、さらに図5に示す窓板3Aと接触し得る車内側及び車外側シールリップの外表面にも当該静止摩擦係数が低い低摩擦材層が長手方向に連続して形成されていることが好ましい。かかる低摩擦材層を構成する材料(材質)としては、例えば、ウレタン塗料の塗布等が挙げることができる。なお、前記塗布の好適な範囲は図3に破線で示している。
【0038】
また、本実施形態に係る上辺部60によると、装着時において、上記車内側係止突条部64及び車外側係止突条部68がそれぞれ弾性反発によって車内側拡大壁14H及び車外側拡大壁14Bに嵌り込み、段差部14C,14Fが支障になって上辺部60の抜け落ちをさらに確実に防止することができる。また、本実施形態に係る上辺部60によると、装着時において、上記車内側先端張出部62及び車外側先端張出部71により上枠14の車内側壁14G及び車外側壁14Aと上辺部60との間に隙間が生じるのを防止することができる。
【0039】
次に、縦辺部80の構成と該縦辺部80が装着される縦枠12の構造について図面を参照しつつ説明する。なお、仕切り辺部120の構成と該仕切り辺部120が装着される仕切り枠15の構造は、縦辺部80の構成と該縦辺部80が装着される縦枠12の構造とほぼ同じであるため、重複した説明は省略する。
図6に、押出成形後(即ちドア枠10に装着する前)の縦辺部80の横断面構造を示す。また、図7は縦枠12に縦辺部80を装着した状態を示す図1のVII−VII線断面図である。なお、図7においては、後ドア1Bの縦枠22は図示を省略している。
図7に示すように、縦枠12は、上述した上枠14と同様の構造であり、車内側壁12Gと車外側壁12Aとが自動車の幅方向で略平行に配置されるように折り曲げられたスチールによって形成されており、枠に沿って該二つの側壁12A,12G間に溝12Sが形成されている。即ち、縦枠12内の溝12Sの周囲は、車外側壁12Aと車内側壁12Gと底壁12Jとによって構成されている。そして上枠14と同様、底壁12Jの面方向と窓板3Aの面方向とは直交しておらず、底壁12Jの車外側が車内側よりも車両の後方に位置するように(即ち、窓板3Aの面方向と底壁12Jの車外側との交差角度が鈍角となるように)傾斜している。
また、車外側壁12Aの底壁12J寄りの部分は、溝内部空間(車外側壁12Aと車内側壁12Gとの間隔)が開口部付近よりも拡大されるように、車外側壁12Aの開口部寄りの内周壁12Dよりも凹んだ拡大壁12Bとして形成されており、該拡大壁12Bと内周壁12Dとの間には段差部12Cが形成されている。同様に、車内側壁12Gの底壁12J寄りの部分は車内側壁12Gの開口部寄りの内周壁12Eよりも凹んだ拡大壁12Hとして形成されており、該拡大壁12Hと内周壁12Eとの間には段差部12Fが形成されている。
【0040】
図6〜7に示すように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50の縦辺部80は、大まかにいって、窓板3Aの外周縁端面3AAと対向する位置に配置される底壁部86と、該底壁部86の幅方向の車内側端部から車内側連結部85を介して突出する車内側側壁部83と、該底壁部86の幅方向の車外側端部から車外側連結部87を介して突出する車外側側壁部89とを有している。図7に示すように、車内側連結部85と車外側連結部87は、ドア枠10に装着された際に屈曲し得るように、隣接する底壁部86や車内側及び車外側両側の側壁部83,89よりも肉薄に形成されている(図中の対向する矢印参照)。
図6に示すように、ドア枠10への装着前の状態では、縦辺部80を構成する押出成形体は、底壁部86と上記車内側及び車外側両側の側壁部83,89とで拡開した略U字形状の一定横断面形状を有する。さらに、図示されるように、車内側側壁部83及び車外側側壁部89それぞれの突出先端側から一体に底壁部86側に向け該側壁部83,89との間に空間を保って折り返し状に延びる車内側シールリップ81及び車外側シールリップ90を有している。
さらに、図示するように、車内側側壁部83の底壁部86寄りの端部には、車内側係止突条部84が外方に張り出すように形成されている。また、車内側側壁部83のシールリップ81寄りの端部には、車内側先端張出部82が外方に張り出すように形成されている。同様に、車外側側壁部89の底壁部86寄りの端部には、車外側係止突条部88が外方に張り出すように形成されている。また、車外側側壁部89のシールリップ90寄りの端部には、車外側先端張出部91が外方に張り出すように形成されている。
【0041】
また、縦辺部80の底壁部86における窓板3Aの外周縁端面3AAと対向する部分ならびに車内側シールリップ81及び車外側シールリップ90の外表面には、それぞれ、該底壁部86ならびに該車内側シールリップ81及び車外側シールリップ90よりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層92,93,94が長手方向に連続して形成されている。特に限定するものではないが、かかる低摩擦材層92,93,94を構成する材料(材質)としては、例えば、ポリプロピレンと超高分子量ポリエチレンとEPDMとシリコーンオイル等を混合した組成物等が挙げることができる。
【0042】
本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50の縦辺部80は、上述した各構成部分の相対的な位置関係即ち角度が図6にθで示すとおりに調整されて押出成形される。具体的には、車外側側壁部89と車外側シールリップ90との間の角度θ13が約40°となり、車内側側壁部83と車内側シールリップ81との間の角度θ14が約40°となり、車外側側壁部89と車外側係止突条部88との間の角度θ15が約45°となり、車内側側壁部83と車内側係止突条部84との間の角度θ16が約50°となるように押出成形後の横断面形状が調整されている。
さらに、図6と図7との比較により明らかなように、縦辺部80の横断面形状は押出成形後の拡開した略U字形状(図6参照)から前ドア枠10の縦枠12に沿って装着された(図7参照)後には、車内側側壁部83と車外側側壁部89のそれぞれが連結部85,87の屈曲状の弾性変位に伴い該装着前の拡開U字形の拡開度合いが縮小されたU字形状(ここでは縦枠12への装着後の底壁部86と車外側側壁部89との角度α’が約80°であり、底壁部86と車内側側壁部83との角度β’が約100°であるU字形状としている。)へと変位するところ、本実施形態においては、かかる弾性変位角度はドア枠10(縦枠12)装着後に車外側側壁部89及び車内側側壁部83が該縦枠とそれぞれ接触する部分で所定の弾性力(f2)が得られるように調整されている。ここでは車外側側壁部89の弾性変位角度θ11が約55°に設定され、且つ、車内側側壁部83の弾性変位角度θ12が約30°に設定されている。
【0043】
かかる弾性変位角度θ11,θ12の具体例から明らかなように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50では、上辺部60における車内側側壁部63及び車外側側壁部69の各弾性変位角度θ2,θ1が、縦辺部80における車内側側壁部83及び車外側側壁部89の弾性変位角度θ12,θ11よりも大きくなるように設定されている。即ち、θ1>θ11とθ2>θ12を実現するように、上辺部60と縦辺部80の横断面形状が調整されている。
そして、本実施形態に係る上辺部60及び縦辺部80は、かかる弾性変位角度θ1,θ2,θ11,θ12の関係に加え、縦辺部80における縦枠12との静止摩擦係数μ2に上記弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、上述した上辺部60における上枠14との静止摩擦係数μ1に弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも小となるように上辺部60と縦辺部80の横断面形状が調整されている。
【0044】
而して、上記構成の縦辺部80は、図7に示すように、車内側及び車外側それぞれの連結部85,87が屈曲状に曲がる弾性変位によって上述したように拡開U字形から縮小U字形状へと弾性変位しつつ縦枠12の下方向から溝12S内に装着される。このとき、図7に示すように、弾性変位した車内側側壁部83及び車外側側壁部89が、それぞれ、所定の弾性力(f2)で車内側壁12G及び車外側壁12Aに押し当てられる。ここで本実施形態に係る縦辺部80は、上辺部60を構成するゴムよりも比重が小さいTPO材料から形成されているため、ガラスランチャンネル組立体全体をゴムで成形したものよりも軽量化が図られる。即ち、縦枠12におけるガラスランチャンネル組立体50の位置ずれ防止に加えて更に軽量化によるメリット(搬送の効率化、車両重量の軽減、等)を享受することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る縦辺部80によると、装着時において、上記車内側係止突条部84及び車外側係止突条部88がそれぞれ弾性反発によって車内側拡大壁12H及び車外側拡大壁12Bに嵌り込み、段差部12C,12Fが支障になって縦辺部80の抜け落ちをさらに確実に防止することができる。また、本実施形態に係る縦辺部80によると、装着時において、上記車内側先端張出部82及び車外側先端張出部91により縦枠12の車内側壁12G及び車外側壁12Aと縦辺部80との間に隙間が生じるのを防止することができる。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50では、上辺部60と縦辺部80(及び仕切り辺部120)とが互いに異なる材質で形成され、且つ、上述するように、ドア枠10に沿って装着された際には、上辺部60と縦辺部80は共に車内側側壁部63,83と車外側側壁部69,89のそれぞれがドア枠への装着時に屈曲状に弾性変位する連結部65,67,85,87の当該弾性変位により該装着前の上記拡開U字形の拡開度合いが縮小された形状に変位して配置される。そしてドア枠10への装着後に縦辺部80の車内側側壁部83及び車外側側壁部89では縦枠12とそれぞれ接触する部分で所定の弾性力f2を発生させると共に上辺部60の車内側側壁部63及び車外側側壁部69では上枠14とそれぞれ接触する部分で所定の弾性力f1を発生させる様に調整される。そしてさらに、上辺部60における上枠14との静止摩擦係数μ1に弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、縦辺部80における縦枠12との静止摩擦係数μ2に上記弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも大となるように該上辺部と縦辺部のそれぞれの横断面形状が調整されている。この関係を図8に模式的に示す。図中の大文字Fを含む符号を付した矢印は、それぞれ、ドア枠装着時に生じる各部位における弾性力の大きさと方向を模式的にベクトルで示したものである。この図から上辺部60の上枠14と接触する部分(具体的には車外側側壁部69及び車内側側壁部63)の弾性力f1(図8中のF1とF2に相当)が、縦辺部80の縦枠12と接触する部分(具体的には車外側側壁部89及び車内側側壁部83)の弾性力f2(図8中のF11とF12に相当)よりも大きいことがベクトル(矢印)の大きさの対比で容易に理解される(即ちF1>F11、F2>F12)。なお、図中のF3及びF4は、それぞれ、上辺部60の車外側シールリップ70及び車内側シールリップ61において生じる弾性力を示し、図中のF13及びF14は、それぞれ、縦辺部80の車外側シールリップ90及び車内側シールリップ81において生じる弾性力を示している。
このように構成することにより、全体としてはゴム材料から成る押出成形材料を使用して押出成形されたガラスランチャンネルよりも軽量化されること、及び、ドア枠の所定位置に装着された後にはドア枠の長手方向に沿って位置ずれが生じないこと、を共に実現し得るガラスランチャンネル組立体50を提供することができる。
【0047】
また、上述のとおり、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50では、上辺部60における車内側側壁部63及び車外側側壁部69の弾性変位角度の少なくとも一方が、対応する縦辺部80における車内側側壁部83及び車外側側壁部89の弾性変位角度よりも大きくなるように設定されている(ここではθ1>θ11とθ2>θ12の両方)。このため、上辺部60と上記傾斜枠13を含む上枠14との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降する窓板3Aの作動に伴うガラスランチャンネル組立体50の不測の位置ずれ発生を防止することができる。
【0048】
また、上述のとおり、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50では、ドア枠10に装着する前の状態において、上辺部60の底壁部66と車外側側壁部69との交差角度と該上辺部60の底壁部66と車内側側壁部63との交差角度の少なくともいずれか一方の交差角度(本実施形態では両方)が鈍角になるように成形されている。このため、上辺部60と上記傾斜枠13を含む上枠14との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降する窓板3Aの作動に伴うガラスランチャンネル組立体50の不測の位置ずれ発生を防止することができる。
【0049】
また、上述のとおり、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50では、上辺部60の車外側連結部67の厚さが縦辺部80の車外側連結部87の厚さよりも厚く形成されている及び/又は上辺部60の車内側連結部65の厚さが縦辺部80の車内側連結部85の厚さよりも厚く形成されている(本実施形態ではいずれも厚く形成されている。)。このため、上辺部60において縦辺部80よりも大きな弾性力を発揮させることが可能であり、上辺部60と上記傾斜枠13を含む上枠14との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降する窓板3Aの作動に伴うガラスランチャンネル組立体50の不測の位置ずれ発生を防止することができる。
【0050】
なお、図示していないが本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50では、長手方向にわたって一体性を保つために、コーナー部100,140において一体的に接続されるとともに、ドア枠10に沿って装着される前の状態において、上コーナー部100において底壁部と車外側側壁部との交差角度ならびに底壁部と車内側側壁部との交差角度が、上辺部60側から縦辺部80側にいくに従い、該上辺部60と同一の交差角度から該縦辺部80の交差角度と同一の交差角度となるまで徐々に小さく変化していくように、上コーナー部100が形成されている。下コーナー部140についても同様に、上辺部60側から仕切り辺部120側にいくに従い、該上辺部60と同一の交差角度から該仕切り辺部120の交差角度と同一の交差角度となるまで徐々に小さく変化していくように形成されている。
また、図示していないが本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体50では、長手方向にわたって一体性を保つために、コーナー部100,140において一体的に接続されるとともに、ドア枠10に沿って装着する際の上コーナー部100における車内側側壁部及び車外側側壁部の弾性変位角度は、上辺部60側から縦辺部80側にいくに従って該上辺部60と同一の弾性変位角度から該縦辺部80の弾性変位角度と同一の弾性変位角度となるまで徐々に小さく変化していくように形成されている。下コーナー部140についても同様に、上辺部60側から仕切り辺部120側にいくに従って該上辺部60と同一の弾性変位角度から該仕切り辺部120の弾性変位角度と同一の弾性変位角度となるまで徐々に小さく変化していくように形成されている。
【0051】
このように、上コーナー部100及び下コーナー部140を形成することによって、長手方向におけるコーナー部100,140及びその近傍(即ち隣接する押出成形部分のコーナー部寄り端部)における一体性に優れ、ドア枠10への装着作業が容易なガラスランチャンネル組立体を提供することができる。また、装着作業中にコーナー部に不測の変形が生じない。従って、ドア枠10のコーナー部(即ちコーナー枠18と仕切り枠15)を含む枠全体に亘って安定してガラスランチャンネル組立体50を装着することができる。
【0052】
以下、図面を参照しつつ本発明のガラスランチャンネル組立体の好適な別の実施形態(第2実施形態)を詳細に説明する。なお、本実施形態(第2実施形態)においては、その特徴部分となる上辺部及び縦辺部の構造と作用効果についてのみ説明し、当該上辺部及び縦辺部の形状に対応させつつ上記実施形態(第1実施形態)と同様の技術思想によって構成(勿論、横断面の形状自体は上辺部及び縦辺部と同様に異なる。)され得るコーナー部や仕切り辺部についての説明は省略する。
【0053】
本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250は、プレス加工によってドアパネルと一体に成形されるパネルドア枠310に装着されるガラスランチャンネル組立体である。先ず、上辺部260の構成と該上辺部260が装着される上枠314の構造について図面を参照しつつ説明する。
図9は、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250の上辺部260の横断面形状を示す断面図である。図10は、当該上辺部260をドア枠310(ここでは前ドア枠を示すが後ドア枠も同様である。)の上枠314の溝314S内に装着された状態を示す断面図である。
【0054】
先ず、上枠314(図示しない後ドア枠の上枠についても同様である。)の構造について説明する。図10に示すように、上枠314は、車内側壁314Gと車外側壁314Aとが自動車の幅方向で略平行に配置されるように形成されており、枠に沿って該二つの側壁314A,314G間に溝314Sが形成されている。具体的には、上枠314内の溝314Sの周囲は、車外側壁314Aと車内側壁314Gと底壁314Jとによって構成されている。また、車外側壁314Aの先端部分は長手方向に沿って溝314S側に折り曲げられており、係止先端部314Cを形成している。
【0055】
図9〜10に示すように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250の上辺部260は、大まかにいって、窓板3Aの外周縁端面3AA(図5参照)と対向する位置に配置される底壁部266と、該底壁部266の幅方向の車内側端部から車内側連結部265を介して突出する車内側側壁部263と、該底壁部266の幅方向の車外側端部から車外側連結部267を介して突出する車外側側壁部269とを有している。図9に示すように、車内側連結部265と車外側連結部267は、ドア枠310に装着された際に屈曲し得るように、隣接する底壁部266や車内側及び車外側両側の側壁部263,269よりも肉薄に形成されている(図中の対向する矢印参照)。
上辺部260は、典型的には、ドア枠310(上枠314)との静止摩擦係数が所定値(μ1)となるように加硫済みの弾性ゴム(典型的にはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)を主体とする材料)から形成される。例えば、EPDM(ここでは100質量部)、カーボンブラック(ここでは120質量部)、プロセスオイル(ここでは80質量部)、各種の加硫剤(ここでは黄硫を1質量部)、各種の充填材(ここではタルクを30質量部)、各種の加硫促進剤(ここでは2質量部)、等を配合して成る押出成形用ゴム材料を使用して押出成形し、さらに加熱処理(例えば約200℃)を施して押出成形物を加硫することにより得られる。特に限定されるものではないが、この種の材料を使用すると、静止摩擦係数(μ1)が概ね1.1以上1.7未満(典型的には1.4±0.1)程度である成形体を形成することができる。
【0056】
図9に示すように、ドア枠310への装着前の状態では、上辺部260を構成する押出成形体は、底壁部266と上記車内側及び車外側両側の側壁部263,269とで拡開した略U字形状の一定横断面形状を有する。さらに、図示されるように、車内側側壁部263及び車外側側壁部269それぞれの突出先端側から一体に底壁部266側に向け該側壁部263,269との間に空間を保って折り返し状に延びる車内側シールリップ261及び車外側シールリップ270を有している。また、車外側側壁部269の底壁部266寄りの端部には、車外側係止突条部268が外方に張り出すように形成されている。一方、車内側側壁部263の突出先端寄りの外面には、車内側係止突条部264が外方に張り出すように形成されている。
さらに、図示するように、上辺部260の車外側側壁部269及び車内側側壁部263のそれぞれの突出先端側には、上記シールリップ261,270と反対側に当該側壁部との間に空間を保って折り返し状に延び、ドア枠310(上枠314)に装着された際には該ドア枠310(上枠314)の内周縁(即ち上記側壁314A,314G)を外側から覆うと共に該ドア枠310に装着された際には弾性変位して側壁部263,269と合わせて該内周縁(側壁314A,314G)を把持可能な遮蔽リップ(車内側遮蔽リップ262、車外側遮蔽リップ271)がそれぞれ一体的に形成されている。
【0057】
第1実施形態と同様、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250についても、上辺部260は上述した各構成部分の相対的な位置関係即ち角度が図9にθで示すとおりに調整されて押出成形される。具体的には、車外側側壁部269と車外側シールリップ270との間の角度θ103が約35°となり、車内側側壁部263と車内側シールリップ261との間の角度θ104が約35°となるように押出成形後の横断面形状が調整されている。
さらに、上辺部260の横断面形状は押出成形後の拡開した略U字形状(図9)から前ドア枠310の上枠314に沿って装着された(図10)後には、車内側側壁部263と車外側側壁部269のそれぞれが連結部265,267の屈曲状の弾性変位に伴い該装着前の拡開U字形の拡開度合いが縮小されたU字形状(ここでは上枠314への装着後の底壁部266と車外側側壁部269との角度αが約90°であり、底壁部266と車内側側壁部263との角度βが約90°であるU字形状としている。)へと変位するところ、本実施形態においては、かかる弾性変位角度はドア枠310(上枠314)装着後に車内側側壁部263及び車外側側壁部269が該上枠とそれぞれ接触する部分で所定の弾性力(f1)が得られるように調整されている。ここでは車外側側壁部269の弾性変位角度θ101が約50°に設定され、且つ、車内側側壁部263の弾性変位角度θ102が約50°に設定されている。即ち、上記α及びβで示す角度及び上記θ101及びθ102で示す角度から明らかなように、本実施形態においては、ドア枠310への装着前の状態(図9)で上辺部260の底壁部266と車外側側壁部269との交差角度(α+θ101=140°)ならびに該上辺部260の底壁部266と車内側側壁部263との交差角度(β+θ102=140°)のいずれも鈍角になるように成形されている。
【0058】
また、本実施形態においても第1実施形態と同様、上述した上辺部260の車外側連結部267の厚さが後述する縦辺部280の車外側連結部287の厚さよりも厚く形成され、且つ、上辺部260の車内側連結部265の厚さも縦辺部280の車内側連結部285の厚さよりも厚く形成されている。
【0059】
上記のように種々の条件を調整・設定することにより、本実施形態に係る上辺部260は、上枠314との静止摩擦係数μ1に上記弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、相対的に、後述する縦辺部280(図示しない仕切り辺部についても同じ。)における縦枠312との静止摩擦係数μ2に弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも大となるように横断面形状が調整されている。
【0060】
而して、上記構成の上辺部260は、図10に示すように、車内側及び車外側それぞれの連結部265,267が屈曲状に曲がる弾性変位によって上述したように拡開U字形から縮小U字形状へと弾性変位しつつ上枠314の下から上方向に溝314S内に装着される。このとき、図10に示すように、弾性変位した車内側側壁部263及び車外側側壁部269が、それぞれ、所定の弾性力(f1)で車内側壁314G及び車外側壁314Aに押し当てられる。ここで本実施形態に係る上辺部260は、上述のとおり加硫済みの弾性ゴム(典型的にはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)を主体とする材料)から形成されているため、かかる装着部位では従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネル組立体よりも静止摩擦係数が低い弾性ゴム製であるためドア枠310への装着作業が容易となり且つ装着作業者に与える負荷(疲労)を小さくすることができる。具体的には、上枠314の下から上方向にガラスランチャンネルを装着することは、上から下方向或いは横方向に装着する場合よりも作業者に負担を強いる作業であるが、上辺部260は静止摩擦係数が低い弾性ゴム製であるため、当該上枠314の下から上方向への装着作業が容易となる。
【0061】
また、かかる装着部位において、従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネルとは異なり、よりクリープ変形の小さい上記弾性ゴム製の上辺部260であるため、装着後の所定時間経過後に当該上辺部260と上枠314(図示しない傾斜枠部分(図1参照)を含む)との間に生じる摩擦力を従来の全体がTPOで成形されたガラスランチャンネルよりも大きく維持できる。従って、かかる装着部位において、昇降する窓板3Aの作動に伴うガラスランチャンネル組立体250の不測の位置ずれ発生を長期にわたって防止することができる。
なお、上辺部260の底壁部266における窓板3Aの外周縁端面3AAと対向する部分には、底壁部266よりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層が長手方向に連続して形成されていることが好ましく、さらに窓板3Aと接触し得る車内側及び車外側シールリップ261,270の外表面にも当該静止摩擦係数が低い低摩擦材層が長手方向に連続して形成されていることが好ましいことは第1実施形態の場合と同様である。
【0062】
また、本実施形態に係る上辺部260によると、装着時において、上記車内側係止突条部264が弾性反発によって車内側壁314Gの内面に接触する。且つ、車外側係止突条部268が車外側壁314Aに接触するとともに係止先端部314Cに係止する。このことによって、上辺部260の上枠314からの抜け落ちを更に確実に防止することができる。
さらにまた、本実施形態に係る上辺部260によると、装着時において、上記遮蔽リップ271,262の弾性変位により発生する弾性力で車外側側壁部269及び車内側側壁部263をドア枠310(上枠314)の車外側内周縁(即ち車外側壁314A)及び車内側内周縁(即ち車内側壁314G)にそれぞれ引き寄せることが実現される。このことによって、車外側側壁部269及び車内側側壁部263の弾性力に加えてさらに大きな弾性力(換言すれば押圧力)を生じさせることができる(後述する図13参照)。従って、上辺部260とドア枠310の上枠314との間にさらに高い摩擦力を生じさせることができ、昇降する窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体250の不測の位置ずれ発生をさらに確実に防止することができる。また、これら遮蔽リップ271,262により、上枠314の車内側壁314G及び車外側壁314Aと上辺部260との間に隙間が生じるのを防止することもできる。
【0063】
次に、縦辺部280の構成と該縦辺部280が装着される縦枠312の構造について図面を参照しつつ説明する。なお、図示しない仕切り辺部の構成と仕切り枠の構造は、縦辺部280の構成と該縦辺部280が装着される縦枠312の構造とほぼ同じであるため、重複した説明は省略する。図11に、押出成形後(即ちドア枠310に装着する前)の縦辺部280の横断面構造を示す。また、図12は縦枠312に縦辺部280を装着した状態を示す断面図である。
図12に示すように、縦枠312は、車内側壁312Gと車外側壁312Aとが自動車の幅方向で略平行に配置されるように形成されており、枠に沿って該二つの側壁312A,312G間に溝312Sが形成されている。
【0064】
図10〜11に示すように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250の縦辺部280は、大まかにいって、窓板3Aの外周縁端面3AAと対向する位置に配置される底壁部286と、該底壁部286の幅方向の車内側端部から車内側連結部285を介して突出する車内側側壁部283と、該底壁部286の幅方向の車外側端部から車外側連結部287を介して突出する車外側側壁部289とを有している。図10に示すように、車内側連結部285と車外側連結部287は、ドア枠310(縦枠312)に装着された際に屈曲し得るように、隣接する底壁部286や車内側及び車外側両側の側壁部283,289よりも肉薄に形成されている(図中の対向する矢印参照)。
典型的には、縦辺部280は、前ドア枠10との静止摩擦係数が上辺部260における上記静止摩擦係数μ1よりも大きい値(μ2)となるようにオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)から形成される。例えば、市販される種々のTPO製品(一例を挙げればエー・イー・エス・ジャパン(株)が販売するTPO材料(例えば商品名:サントプレーン(登録商標)121−67W))を使用して好適に得られる。特に限定されるものではないが、この種の材料を使用すると、静止摩擦係数(μ2)が概ね1.7以上2.0未満(典型的には1.8±0.1)程度である成形体を形成することができる。
【0065】
図11に示すように、ドア枠310への装着前の状態では、縦辺部280を構成する押出成形体は、底壁部286と上記車内側及び車外側両側の側壁部283,289とで拡開した略U字形状の一定横断面形状を有する。さらに、図示されるように、車内側側壁部283及び車外側側壁部289それぞれの突出先端側から一体に底壁部286側に向け該側壁部283,289との間に空間を保って折り返し状に延びる車内側シールリップ281及び車外側シールリップ290を有している。また、車外側側壁部289の底壁部286寄りの端部には、車外側係止突条部288が外方に張り出すように形成されている。また、車内側側壁部283の突出先端寄りの部分は、底壁部286に近い部分よりも肉厚に形成されている(以下、かかる部分を「車内側肉厚部284」という。)。
さらに、図示するように、縦辺部280の車外側側壁部289及び車内側側壁部283(車内側肉厚部284)のそれぞれの突出先端側には、上記シールリップ281,290と反対側に当該側壁部との間に空間を保って折り返し状に延び、ドア枠310(縦枠312)に装着された際には該ドア枠310(縦枠312)の内周縁(即ち上記側壁312A,312G)を外側から覆うと共に該ドア枠310に装着された際には弾性変位して側壁部283,289と合わせて該内周縁(側壁312A,312G)を把持可能な遮蔽リップ(車内側遮蔽リップ282、車外側遮蔽リップ291)がそれぞれ一体的に形成されている。
【0066】
また、縦辺部280の底壁部286における窓板3Aの外周縁端面3AA(図7参照)と対向する部分ならびに車内側シールリップ281及び車外側シールリップ290の外表面には、それぞれ、該底壁部286ならびに該車内側シールリップ281及び車外側シールリップ290よりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層292,293,294が長手方向に連続して形成されている。特に限定するものではないが、かかる低摩擦材層292,293,294を構成する材料(材質)としては、例えば、ポリプロピレンと超高分子量ポリエチレンとEPDMとシリコーンオイルを混合した組成物等が挙げることができる。
【0067】
本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250の縦辺部280は、上述した各構成部分の相対的な位置関係即ち角度が図11にθで示すとおりに調整されて押出成形される。具体的には、車外側側壁部289と車外側シールリップ290との間の角度θ113が約35°となり、車内側側壁部283と車内側シールリップ281との間の角度θ114が約35°となるように押出成形後の横断面形状が調整されている。
さらに、縦辺部280の横断面形状は押出成形後の拡開した略U字形状(図11)から前ドア枠310の縦枠312に沿って装着された(図12)後には、車内側側壁部283と車外側側壁部289のそれぞれが連結部285,287の屈曲状の弾性変位に伴い該装着前の拡開U字形の拡開度合いが縮小されたU字形状(ここでは縦枠312への装着後の底壁部286と車外側側壁部289との角度α’が約90°であり、底壁部286と車内側側壁部283との角度β’が約90°であるU字形状としている。)へと変位するところ、本実施形態においては、かかる弾性変位角度はドア枠310(縦枠312)装着後に車内側側壁部283及び車外側側壁部289が該縦枠とそれぞれ接触する部分で所定の弾性力(f2)が得られるように調整されている。ここでは車外側側壁部289の弾性変位角度θ111が約45°に設定され、且つ、車内側側壁部283の弾性変位角度θ112が約45°に設定されている。
【0068】
かかる弾性変位角度θ111,θ112の具体例から明らかなように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250では、上辺部260における車内側側壁部263及び車外側側壁部269の各弾性変位角度θ102,θ101が、縦辺部280における車内側側壁部283及び車外側側壁部289の弾性変位角度θ112,θ111よりも大きくなるように設定されている。即ち、θ101>θ111とθ102>θ112を実現するように、上辺部260と縦辺部280の横断面形状が調整されている。
そして、本実施形態に係る縦辺部280は、かかる弾性変位角度θ101,θ102,θ111,θ112の関係に加え、縦辺部280における縦枠312との静止摩擦係数μ2に上記弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、上述した上辺部260における上枠314との静止摩擦係数μ1に弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも小となるように上辺部260と縦辺部280の横断面形状が調整されている。
【0069】
而して、上記構成の縦辺部280は、図12に示すように、車内側及び車外側それぞれの連結部285,287が屈曲状に曲がる弾性変位によって上述したように拡開U字形から縮小U字形状へと弾性変位しつつ縦枠312の下方向から溝312S内に装着される。このとき、図12に示すように、弾性変位した車内側側壁部283及び車外側側壁部289が、それぞれ、所定の弾性力(f2)で車内側壁312G及び車外側壁312Aに押し当てられる。ここで本実施形態に係る縦辺部280は、上辺部260を構成するゴムよりも比重が小さいTPO材料から形成されているため、ガラスランチャンネル組立体全体をゴムで成形したものよりも軽量化が図られる。即ち、縦枠312におけるガラスランチャンネル組立体250の位置ずれ防止に加えて更に軽量化によるメリット(搬送の効率化、車両重量の軽減、等)を享受することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る縦辺部280によると、装着時において、上記車内側肉厚部284が弾性反発を伴いつつ車内側壁312Gの内面に接触する。且つ、車外側係止突条部288が車外側壁312Aに弾性反発を伴いつつ接触する。このことによって、縦辺部280の溝312S内からの抜け落ちを更に確実に防止することができる。
さらにまた、本実施形態に係る縦辺部280によると、装着時において、上記遮蔽リップ291,282の弾性変位により発生する弾性力で車外側側壁部289及び車内側側壁部283をドア枠310(縦枠312)の車外側内周縁(即ち車外側壁312A)及び車内側内周縁(即ち車内側壁312G)にそれぞれ引き寄せることが実現される。このことによって、車外側側壁部289及び車内側側壁部283の弾性力に加えてさらに大きな弾性力(換言すれば押圧力)を生じさせることができる(後述する図13参照)。従って、縦辺部280とドア枠310の縦枠312との間にさらに高い摩擦力を生じさせることができ、昇降する窓板の作動に伴うガラスランチャンネル組立体250の不測の位置ずれ発生をさらに確実に防止することができる。また、これら遮蔽リップ291,282により、縦枠312の車内側壁312G及び車外側壁312Aと縦辺部280との間に隙間が生じるのを防止することもできる。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250では、上辺部260と縦辺部280(及び図示しない仕切り辺部)とが互いに異なる材質で形成され、且つ、上述するように、ドア枠310に沿って装着された際には、上辺部260と縦辺部280は共に車内側側壁部263,283と車外側側壁部269,289のそれぞれがドア枠への装着時に屈曲状に弾性変位する連結部265,267,285,287の当該弾性変位により該装着前の上記拡開U字形の拡開度合いが縮小された形状に変位して配置される。そしてドア枠310への装着後に縦辺部280では車内側側壁部283及び車外側側壁部289が縦枠312とそれぞれ接触する部分で所定の弾性力f2を発生させると共に上辺部260では車内側側壁部263及び車外側側壁部269が上枠314とそれぞれ接触する部分で所定の弾性力f1を発生させる様に調整されている。そしてさらに、上辺部260における上枠314との静止摩擦係数μ1に弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、縦辺部280における縦枠312との静止摩擦係数μ2に上記弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも大となるように該上辺部と縦辺部のそれぞれの横断面形状が調整されている。この関係を図13に模式的に示す。図中の大文字Fを含む符号を付した矢印は、それぞれ、ドア枠装着時に生じる各部位における弾性力の大きさと方向を模式的にベクトルで示したものである。この図から上辺部260の上枠314と接触する部分(具体的には車外側側壁部269及び車内側側壁部263)の弾性力f1(図13中のF101とF102に相当)が、縦辺部280の縦枠312と接触する部分(具体的には車外側側壁部289及び車内側側壁部283)の弾性力f2(図13中のF111とF112に相当)よりも大きいことがベクトル(矢印)の大きさの対比で容易に理解される(即ちF101>F111、F102>F112)。
また、かかる上辺部260の車外側側壁部269及び車内側側壁263において生じる弾性力(F101,F102)は、それぞれ、車外側遮蔽リップ271及び車内側遮蔽リップ262において生じる弾性力(F105,F106)が加わることにより増大する。同様に、縦辺部280の車外側側壁部289及び車内側側壁283において生じる弾性力(F111,F112)は、それぞれ、車外側遮蔽リップ291及び車内側遮蔽リップ282において生じる弾性力(F115,F116)が加わることにより増大する。
なお、図中のF103及びF104は、それぞれ、上辺部260の車外側シールリップ270及び車内側シールリップ261において生じる弾性力を示し、図中のF113及びF114は、それぞれ、縦辺部280の車外側シールリップ290及び車内側シールリップ281において生じる弾性力を示している。
このように構成することにより、全体としてはゴム材料から成る押出成形材料を使用して押出成形されたガラスランチャンネルよりも軽量化されること、及び、ドア枠の所定位置に装着された後にはドア枠の長手方向に沿って位置ずれが生じないこと、を共に実現し得るガラスランチャンネル組立体250を提供することができる。
【0072】
また、上述のとおり、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250では、上辺部260における車内側側壁部263及び車外側側壁部269の弾性変位角度の少なくとも一方が、対応する縦辺部280における車内側側壁部283及び車外側側壁部289の弾性変位角度よりも大きくなるように設定されている(ここではθ101>θ111とθ102>θ112の両方)。このため、上辺部260と上枠314との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降する窓板3Aの作動に伴うガラスランチャンネル組立体250の不測の位置ずれ発生を防止することができる。
【0073】
また、上述のとおり、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250では、ドア枠310に装着する前の状態において、上辺部260の底壁部266と車外側側壁部269との交差角度と該上辺部260の底壁部266と車内側側壁部263との交差角度の少なくともいずれか一方の交差角度(本実施形態では両方)が鈍角になるように成形されている。このため、上辺部260と上枠314との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降する窓板3Aの作動に伴うガラスランチャンネル組立体250の不測の位置ずれ発生を防止することができる。
【0074】
また、上述のとおり、本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250では、上辺部260の車外側連結部267の厚さが縦辺部280の車外側連結部287の厚さよりも厚く形成されている及び/又は上辺部260の車内側連結部265の厚さが縦辺部280の車内側連結部285の厚さよりも厚く形成されている(本実施形態ではいずれも厚く形成されている。)。このため、上辺部260において縦辺部280よりも大きな弾性力を発揮させることが可能であり、上辺部260と上枠314との間に高い摩擦力を生じさせることができ、昇降する窓板3Aの作動に伴うガラスランチャンネル組立体250の不測の位置ずれ発生を防止することができる。
【0075】
なお、図示していないが本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250では、長手方向にわたって一体性を保つために、コーナー部において一体的に接続されるとともに、ドア枠310に沿って装着される前の状態において、コーナー部において底壁部と車外側側壁部との交差角度ならびに底壁部と車内側側壁部との交差角度が、上辺部260側から縦辺部280側にいくに従い、該上辺部260と同一の交差角度から該縦辺部280の交差角度と同一の交差角度となるまで徐々に小さく変化していくように、コーナー部が形成されている。
また、図示していないが本実施形態に係るガラスランチャンネル組立体250では、長手方向にわたって一体性を保つために、コーナー部において一体的に接続されるとともに、ドア枠310に沿って装着する際のコーナー部における車内側側壁部及び車外側側壁部の弾性変位角度は、上辺部260側から縦辺部280側にいくに従って該上辺部260と同一の弾性変位角度から該縦辺部280の弾性変位角度と同一の弾性変位角度となるまで徐々に小さく変化していくように形成されている。
このように、コーナー部を形成することによって、長手方向におけるコーナー部及びその近傍(即ち隣接する押出成形部分のコーナー部寄り端部)における一体性に優れ、ドア枠310への装着作業が容易なガラスランチャンネル組立体250を提供することができる。また、装着作業中にコーナー部に不測の変形が生じない。従って、ドア枠310のコーナー部(即ちコーナー枠と仕切り枠)を含む枠全体に亘って安定してガラスランチャンネル組立体250を装着することができる。
【0076】
以上、本発明の具体例を図面を参照しつつ詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体が取り付けられた自動車の前ドアと後ドアを模式的に示す車外側側面図である。
【図2】一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の全体構造を模式的に示す側面図である。
【図3】一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の押出成形後の上辺部の横断面構造を示す断面図である。
【図4】一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の押出成形後の上辺部の横断面構造と上枠への装着方向を示す断面図である。
【図5】図1中のV−V線断面図である。
【図6】一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の押出成形後の縦辺部の横断面構造を示す断面図である。
【図7】図1中のVII−VII線断面図である。
【図8】ドア枠に装着した後の一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の各部位に生じる弾性力を模式的に示す説明図である。
【図9】一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の押出成形後の上辺部の横断面構造を示す断面図である。
【図10】上枠に装着した状態の一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の上辺部の横断面構造を示す断面図である。
【図11】一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の押出成形後の縦辺部の横断面構造を示す断面図である。
【図12】縦枠に装着した状態の一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の縦辺部の横断面構造を示す断面図である。
【図13】ドア枠に装着した後の一実施形態に係るガラスランチャンネル組立体の各部位に生じる弾性力を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1 自動車
3A 窓板
10 前ドア枠
12 縦枠
12A 車外側壁
12G 車内側壁
12J 底壁
12S 溝
13 傾斜枠
14 上枠
14A 車外側壁
14G 車内側壁
14J 底壁
14S 溝
15 仕切り枠
18 コーナー枠
50 ガラスランチャンネル組立体
60 上辺部
61 車内側シールリップ
62 車内側先端張出部
63 車内側側壁部
64 車内側係止突条部
65 車内側連結部
66 底壁部
67 車外側連結部
68 車外側係止突条部
69 車外側側壁部
70 車外側シールリップ
71 車外側先端張出部
80 縦辺部
81 車内側シールリップ
82 車内側先端張出部
83 車内側側壁部
84 車内側係止突条部
85 車内側連結部
86 底壁部
87 車外側連結部
88 車外側係止突条部
89 車外側側壁部
90 車外側シールリップ
91 車外側先端張出部
100 上コーナー部
120 仕切り辺部
140 下コーナー部
250 ガラスランチャンネル組立体
260 上辺部
261 車内側シールリップ
262 車内側遮蔽リップ
263 車内側側壁部
264 車内側係止突条部
265 車内側連結部
266 底壁部
267 車外側連結部
268 車外側係止突条部
269 車外側側壁部
270 車外側シールリップ
271 車外側遮蔽リップ
280 縦辺部
281 車内側シールリップ
282 車内側遮蔽リップ
283 車内側側壁部
284 車内側肉厚部
285 車内側連結部
286 底壁部
287 車外側連結部
288 車外側係止突条部
289 車外側側壁部
290 車外側シールリップ
291 車外側遮蔽リップ
310 前ドア枠
312 縦枠
312A 車外側壁
312G 車内側壁
312S 溝
314 上枠
314A 車外側壁
314G 車内側壁
314J 底壁
314S 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内側壁と車外側壁とが自動車の幅方向で略平行に配置されて該二つの側壁間に溝が形成され、自動車のセンターピラーに沿って上下方向に配置される縦枠と、前記縦枠の上端と一体に形成され、前記上端からフロントピラー又はリアピラーに沿って斜め下方向に延びる傾斜枠を含む上枠と、前記縦枠の上端と前記上枠のセンターピラー側端末とを所定の交差角度で交差させて一体的に接続するコーナー枠とを有するドア枠の前記溝内に沿って連続して装着可能であり、前記溝内に装着された際には前記ドア内を昇降動する窓板をガイドするように形成された弾性ポリマー材料製の長尺なガラスランチャンネル組立体であって、
該ガラスランチャンネル組立体は、前記ドア枠との静止摩擦係数が所定値μ1である加硫済みの弾性ゴムから成り前記ドア枠の上枠に沿って装着される長尺な上辺部と、前記ドア枠との静止摩擦係数μ2が前記μ1よりも大きいオレフィン系熱可塑性エラストマーから成り前記ドア枠の縦枠に沿って装着される長尺な縦辺部と、熱可塑性エラストマーから成り前記ドア枠のコーナー枠に沿って装着されるコーナー部とを含み、
前記上辺部と前記縦辺部とは、共に、前記窓板の外周縁端面と対向する位置に配置される底壁と、該底壁の幅方向車内側端部から屈曲状の車内側連結部を介して突出する車内側側壁部と、該底壁の幅方向車外側端部から屈曲状の車外側連結部を介して突出する車外側側壁部とを有しており、前記ドア枠への装着前の状態で前記底壁と前記両側の側壁部とで拡開した略U字形状の一定横断面形状に押出成形されており、
前記車内側側壁部と前記車外側側壁部とは、さらにそれぞれの突出先端側から一体に前記底壁側に向け前記側壁部との間に空間を保って折り返し状に延びる車内側シールリップと車外側シールリップとをそれぞれ有しており、
前記ドア枠に沿って装着された際には、前記上辺部と縦辺部は共に前記車内側側壁部と車外側側壁部のそれぞれが前記屈曲状の連結部の弾性変位により該装着前の前記拡開U字形の拡開度合いが縮小された形状に変位して配置され、且つ、装着後に前記縦辺部では前記ドア枠の縦枠と接触する部分で所定の弾性力f2を発生させると共に前記上辺部では前記ドア枠の上枠と接触する部分で所定の弾性力f1を発生させ、
ここで前記上辺部における上枠との静止摩擦係数μ1に前記弾性力f1を乗じた単位長さ当りの摩擦力が、前記縦辺部における縦枠との静止摩擦係数μ2に前記弾性力f2を乗じた単位長さ当りの摩擦力よりも大となるように該上辺部と縦辺部のそれぞれの横断面形状が調整されている、
ことを特徴とするガラスランチャンネル組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のガラスランチャンネル組立体において、
前記横断面形状の調整は、ガラスランチャンネル組立体を前記ドア枠に装着する際の弾性変位角度に関し、前記上辺部における車内側側壁部及び車外側側壁部のうち少なくともいずれか一方の弾性変位角度が、前記縦辺部における車内側側壁部及び車外側側壁部のいずれの弾性変位角度よりも大きくなるように設定されていることにより実現されることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項3】
請求項2に記載のガラスランチャンネル組立体において、
前記上辺部における車内側側壁部及び車外側側壁部のいずれの弾性変位角度も前記縦辺部における車内側側壁部及び車外側側壁部のいずれの弾性変位角度よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のガラスランチャンネル組立体において、
該ガラスランチャンネル組立体は前記コーナー部において一体的に接続され、
前記ドア枠に沿って装着する際の該コーナー部における前記弾性変位角度は、前記上辺部側から前記縦辺部側にいくに従って該上辺部と同一の弾性変位角度から該縦辺部の弾性変位角度と同一の弾性変位角度となるまで徐々に小さく変化していることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のガラスランチャンネル組立体において、
前記横断面形状の調整は、ガラスランチャンネル組立体を前記ドア枠に装着する前の状態において、前記上辺部の底壁と車外側側壁部との交差角度と該上辺部の底壁と車内側側壁部との交差角度の少なくともいずれか一方の交差角度が鈍角になるように成形されていることにより実現されることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項6】
請求項5に記載のガラスランチャンネル組立体において、
前記上辺部の底壁と車外側側壁部との交差角度と該上辺部の底壁と車内側側壁部との交差角度のいずれの交差角度も鈍角になるように成形されていることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のガラスランチャンネル組立体において、
該ガラスランチャンネル組立体は前記コーナー部において一体的に接続され、
前記ドア枠に沿って装着される前の状態において、該コーナー部における前記交差角度は、前記上辺部側から前記縦辺部側にいくに従い、該上辺部と同一の交差角度から該縦辺部の交差角度と同一の交差角度となるまで徐々に小さく変化していることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のガラスランチャンネル組立体において、
前記横断面形状の調整は、前記上辺部の車外側連結部の厚さが前記縦辺部の車外側連結部の厚さよりも厚く形成されている、及び/又は、前記上辺部の車内側連結部の厚さが前記縦辺部の車内側連結部の厚さよりも厚く形成されている、ことにより実現されることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項9】
請求項8に記載のガラスランチャンネル組立体において、
前記上辺部の車外側連結部の厚さが前記縦辺部の車外側連結部の厚さよりも厚く形成されており、且つ、前記上辺部の車内側連結部の厚さが前記縦辺部の車内側連結部の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のガラスランチャンネル組立体において、
前記上辺部及び縦辺部の車外側側壁部及び車内側側壁部のそれぞれの突出先端側には、前記シールリップと反対側に前記側壁部との間に空間を保って折り返し状に延び、前記ドア枠の内周縁を外側から覆うと共に該ドア枠に装着された際には弾性変位して前記側壁部と合わせて前記内周縁を把持可能な遮蔽リップがそれぞれ一体的に形成され、
前記ドア枠に装着された際には、前記遮蔽リップの弾性変位により発生する弾性力で前記車外側側壁部及び車内側側壁部を前記ドア枠の車外側内周縁及び車内側内周縁にそれぞれ引き寄せることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のガラスランチャンネル組立体において、
前記上辺部の底壁における前記窓板の外周縁端面と対向する部分には、該底壁よりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層が長手方向に連続して形成されており、
前記縦辺部の底壁における前記窓板の外周縁端面と対向する部分ならびに前記縦辺部の前記車内側シールリップ及び車外側シールリップの表面には、それぞれ、該底壁ならびに該車内側シールリップ及び車外側シールリップよりも静止摩擦係数が低い低摩擦材層が長手方向に連続して形成されていることを特徴とする、ガラスランチャンネル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−269567(P2009−269567A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124062(P2008−124062)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】