説明

ガラスロールの製造方法

【課題】ダウンドロー法により連続的に成形されるガラスフィルムをガラスロールの状態で収容する際に、そのガラスロールに含まれるガラスフィルムに巻きズレや浮き上がりが生じるのを可及的に低減する。
【解決手段】ダウンドロー法によってガラスフィルムを連続成形しながら搬送する成形工程S1と、成形工程S1の搬送経路の下流端でガラスフィルムに保護フィルムを重ねてロール状に巻き取り、元ガラスロールを製造する仮巻き取り工程S3と、元ガラスロールからガラスフィルムを巻き出しながら下流側に搬送するとともに、その搬送経路の下流端で、ガラスフィルムに保護フィルムを重ねてロール状に巻き直し、ガラスロールを製造する本巻き取り工程S4とを含む。そして、仮巻き取り工程S3よりも本巻き取り工程S4でガラスフィルムに作用する巻き取り方向の張力を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウンドロー法により成形されたガラスフィルムをロール状に巻き取ったガラスロールの製造技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年における映像表示装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどに代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)が主流となっている。これらのFPDの基板には、気密性・平坦性・耐熱性・透光性・絶縁性などの各種要求特性を確保するためにガラス基板が使用される。当該FPDに使用されるガラス基板は、軽量化の観点から薄板化の一途を辿っているのが実情である。特に有機ELディスプレイなどのFPDにおいては、表示画面を曲げて使用する用途も考えられることから、可撓性を付与すべくガラス基板の薄板化が要求されている。
【0003】
また、有機ELは、ディスプレイのように微細な三原色をTFTにより明滅させずに、単色(例えば白色)のみで発光させて屋内照明の光源などの平面光源として利用されつつある。有機ELの照明装置は、ガラス基板が可撓性を有すれば、自由に発光面を変形させることが可能となり、使用用途が大幅に広がるという利点がある。そのため、この種の照明装置に使用されるガラス基板においても、十分な可撓性を確保する観点から薄板化が推進されている。
【0004】
さらに、タッチパネルは、人の指などで表面を擦って操作することから、その表面の堅牢性を確保するためにガラス基板が用いられることが多い。この種のタッチパネルを搭載したモバイル端末の普及に伴って、タッチパネル用のガラス基板にも軽量化のために薄板化が求められている。
【0005】
そして、このような薄板化の要求を受けて、フィルム状(例えば、厚みが300μm以下)まで薄板化が図られたガラスフィルムが開発されるに至っている。このガラスフィルムは、適度な可撓性を有するため、保護フィルムと重ねて一緒に巻芯の周りにロール状に巻き取られ、いわゆるガラスロールの状態で収容される場合がある(例えば、特許文献1参照)。このようにすれば、ガラスフィルムの収容スペースが大幅に小さくなることから、輸送効率の向上を図ることができる。また、ロール・トゥー・ロール(Roll to Roll)装置で、上流側のガラスロールから巻き出したガラスフィルムに対して、切断や成膜などの各種処理を連続的に施すことができ、生産効率の大幅な向上を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−132350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ガラスフィルムは、ダウンドロー法によって成形されることが多い。そのため、ガラスロールの状態で収容しようとした場合、ダウンドロー法を実行する成形体から連続的に成形されてくるガラスフィルムを巻芯の周りに直接巻き取る必要が生じる。
【0008】
しかしながら、この場合には、巻き取り時にガラスフィルムに張力をかけすぎると(例えば、幅1mのガラスフィルムに対して100N程度)、成形体付近の軟化状態のガラスフィルムに対して過度な張力が作用し、ガラスフィルムの厚みが安定しなくなったり、反りやうねりが生じたり、場合によっては成形体の下方部で断裂するという致命的な問題が生じる。
【0009】
したがって、ガラスフィルムに十分な張力をかけて巻き取ることが実用上難しく、例えば巻き取られたガラスフィルムが事後的に幅方向に移動するなどして巻きズレが生じ易くなる。また、ガラスフィルムに適度な張力をかけて巻き取らなければ、ガラスロールの状態で、ガラスフィルムが巻芯から浮き上がり、ガラスフィルムの相互間に不当な隙間が形成され得る。そして、このようにガラスフィルムに巻きズレや浮き上がり(径方向隙間)が生じていると、ガラスフィルムが破損し易くなって取り扱いが非常に面倒になる。更に、この場合には、ガラスフィルムが不規則に巻き取られた状態となることから、ガラスロールの外観も非常に悪くなって製品価値を低下させる要因ともなり得る。
【0010】
以上の実情に鑑み、本発明は、ダウンドロー法により連続的に成形されるガラスフィルムをガラスロールの状態で収容する際に、そのガラスロールに含まれるガラスフィルムに巻きズレや浮き上がりが生じるのを可及的に低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために創案された第1の発明は、ダウンドロー法を実行する成形装置によってガラスフィルムを連続的に成形しながら下流側に搬送する成形工程と、前記成形工程の搬送経路の下流端で前記ガラスフィルムに第1保護フィルムを重ねてロール状に巻き取り、元ガラスロールを製造する第1巻き取り工程と、前記元ガラスロールから前記ガラスフィルムを巻き出しながら下流側に搬送するとともに、その搬送経路の下流端で、前記ガラスフィルムに第2保護フィルムを重ねてロール状に巻き直し、ガラスロールを製造する第2巻き取り工程とを含み、前記第2巻き取り工程で前記ガラスフィルムに作用する巻き取り方向の張力を、前記第1巻き取り工程で前記ガラスフィルムに作用する張力よりも大きくしたことに特徴づけられる。
【0012】
このような方法によれば、第1巻き取り工程で巻き取られたガラスフィルムが、第2巻き取り工程で、第1巻き取り工程よりも巻き取り方向(ガラスフィルムの搬送方向)に大きな張力を作用させた状態で巻き直される。そのため、成形装置で成形されたガラスフィルムを直接的に巻き取る第1巻き取り工程において、ガラスフィルムに過度に張力をかけて巻き取る必要がない。付言すれば、第1巻き取り工程では、成形装置で成形されるガラスフィルムの厚みが不当に変動するなどの悪影響を与えない範囲でガラスフィルムに張力を作用させればよく、この結果、仮にガラスフィルムに巻きズレや浮き上がりが生じたとしても、第2巻き取り工程において修正することができる。すなわち、第2巻き取り工程では、大きな張力をガラスフィルムに作用させても、ガラスフィルムの成形には悪影響を与えることがないので、ガラスフィルムに巻きズレや浮き上がりが生じない程度の十分な張力を与えながら、ガラスフィルムを巻き直してガラスロールを製造することができる。
【0013】
上記の方法で、前記第1巻き取り工程において、前記第1保護フィルムに作用する巻き取り方向の張力を、前記ガラスフィルムに作用する巻き取り方向の張力よりも大きくすることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、ガラスフィルムに直接的に大きな張力を作用させなくても、第1保護フィルムによってガラスフィルムの移動を押え付けることができる。すなわち、ガラスフィルムに直接的に張力を作用させた場合と同等の効果を得ることができる。そのため、第1巻き取り工程で生じるガラスフィルムの巻きズレや浮き上がりを最小限の範囲に抑えることができる。また、元ガラスロールの状態で、ガラスフィルムが第1保護フィルムによって確実に押え付けられているので、第2巻き取り工程で元ガラスロールからガラスフィルを巻き出す際に、元ガラスロール中のガラスフィルムが不当に巻き締まるという事態が生じ難い。なお、ガラスフィルムが巻き締まると、ガラスフィルムと保護フィルムとの間で擦れ合いが生じるため、ガラスフィルムの表面に微小傷が形成されるおそれがある。
【0015】
上記の方法において、前記第2巻き取り工程で、前記ガラスフィルムに作用する巻き取り方向の張力を、前記第2保護フィルムに作用する巻き取り方向の張力より大きくしてもよい。
【0016】
このようにすれば、第2巻き取り工程で製造されるガラスロール、すなわち、製品となるガラスロールにおいて、ガラスフィルム自体に作用する張力によって、ガラスフィルムに事後的に巻きズレや浮き上がりが生じるという事態を確実に防止することができる。付言すれば、第2保護フィルムによって強制的に押え付けられてガラスフィルムが矯正されることがないので、ガラスフィルムに不当な応力が作用し難くなり、安定した梱包状態を維持し得る。
【0017】
上記の方法で、前記第2巻き取り工程において、前記ガラスフィルムの一方側の表面のみを接触支持しながら搬送することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、ガラスフィルムの他方側の表面が非接触面となる。そのため、この非接触面となるガラスフィルムの表面には、搬送に起因する微小傷が形成され難くなる。したがって、このガラスフィルムから有機ELディスプレイなどのFPD用のガラス基板を製作する場合には、ガラスフィルムの非接触面となる側に素子や配線を形成すれば、微小傷による素子や配線の形成不良が生じ難く、信頼性の高いFPDを提供することが可能となる。
【0019】
上記の方法で、前記第2巻き取り工程において、前記ガラスフィルムの前記接触支持面が、前記ガラスロールの内周面側に位置するように巻き取られることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、仮に、ガラスフィルムの接触支持面に微小傷が生じたとしも、この接触支持面がガラスロールの内周面側に位置するように巻き取られるため、接触支持面には圧縮応力のみが作用する。したがって、接触支持面に微小傷が生じていても、その微小傷が進展するような力が作用し難い。換言すれば、微小傷が進展するような力が作用するガラスフィルムの外周面側の面には、微小傷が実質的にない非接触面が位置することになるので、ガラスフィルムの破損を確実に低減することが可能となる。
【0021】
上記の方法において、前記第1巻き取り工程と前記第2巻き取り工程の少なくとも一方で、前記ガラスフィルムをレーザー切断により所定の幅に切断してから巻き取ってもよい。ここで、レーザー切断には、レーザー割断及びレーザー溶断が含まれる。レーザー割断は、レーザーの加熱作用による膨張と、冷媒の冷却作用による収縮とによって生じる熱応力を利用して、初期クラックを進展させてガラスフィルムを切断する方法である。一方、レーザー溶断は、レーザーエネルギーによる加熱でガラスを軟化・溶融した部分に高圧ガスを噴射して切断する方法である。
【0022】
このようにすれば、例えばオーバーフローダウンドロー法で成形した場合などに、ガラスフィルムの幅方向両端部に形成される相対的に厚肉となる非有効部(耳部)を切断除去してから、巻き取ることができる。また、ガラスフィルムを所望の幅に変更してから巻き取ることも可能となる。そして、これらのガラスフィルムをレーザー切断により切断することから、ガラスフィルムの切断端面に破損原因となるマイクロクラックが形成され難いという利点を享受できる。
【0023】
上記の方法において、前記ダウンドロー法が、オーバーフローダウンドロー法であることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、成形後にガラスフィルムの表面に対して別途加工を施さなくても、ガラスフィルムの表面に表面粗さの小さい優れた平滑性を付与することができる。
【0025】
上記の方法において、前記ガラスフィルムの厚みが、1μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、ガラスフィルムに十分な可撓性を付与することができるため、ガラスフィルムを巻き取った際に、ガラスフィルムに不当な応力が作用するという事態を軽減することができ、ガラスフィルムの破損防止にも繋がる。
【0027】
上記の課題を解決するために創案された第2の発明は、ダウンドロー法によってガラスフィルムを成形すると共に、その成形したガラスフィルムを保護フィルムに重ねてロール状に巻き取るガラスロールの製造方法であって、前記保護フィルムに、前記ガラスフィルムよりも大きな巻き取り方向の張力を付与しながら、前記ガラスフィルムと前記保護フィルムとを巻き取ることに特徴づけられる。
【0028】
このような方法によれば、ガラスフィルムに大きな巻き取り方向の張力を付与しなくても、保護フィルムに付与された相対的に大きな巻き取り方向の張力によってガラスフィルムを締め付けることができるため、巻き取りに緩みのないガラスロールを製造することができる。また、ガラスフィルム巻き取り時にガラスフィルムには巻き取り方向の張力が付与されていないか或いはその張力が小さいことから、湾曲領域でガラスフィルムを略水平方向に沿うように湾曲させてから巻き取る場合であっても、湾曲領域の曲率が変化することを防止することができ、ガラスフィルムの成形が安定し、反りやうねり、板厚の変化のないガラスフィルムを巻き取ることができる。
【0029】
上記の方法において、ロール状にガラスフィルムを巻き取るまでの段階で、前記ガラスフィルムの幅方向両端部に形成される非有効部(耳部)をレーザー切断するようにしてもよい。ここで、レーザー切断には、レーザー割断及びレーザー溶断が含まれる。レーザー割断は、レーザーの加熱作用による膨張と、冷媒の冷却作用による収縮とによって生じる熱応力を利用して、初期クラックを進展させてガラスフィルムを切断する方法である。一方、レーザー溶断は、レーザーエネルギーによる加熱でガラスを軟化・溶融した部分に高圧ガスを噴射して切断する方法である。
【0030】
このようにすれば、研磨等の後加工を施すことなく、ガラスフィルムの幅方向の両端面を構成する切断面に適度な平滑性を容易に付与することができる。また、保護フィルムには相対的に大きな巻き取り方向の張力が付与されているため、ガラスフィルムの端面と保護フィルムが接触し易いが、接触した場合でも、ガラスフィルムの端面の平滑化によって当該端面が保護フィルムに噛み込むことがなく、ガラスフィルムと保護フィルムとの分離性を良好に維持できる。更に、ガラスフィルムをロール状に巻き取る際に、ガラスフィルムの両端面に微細な傷が生じ難くなる。これにより、ガラスフィルムの端面の微細な傷に起因する欠けにより発生するガラス粉を低減できることから、ガラスフィルムの表裏面の清浄性を確保する上でも非常に有利となる。
【0031】
上記の方法において、前記保護フィルムが最外層にある状態に維持されるように、前記ガラスフィルムの外周面側に前記保護フィルムを重ねながら、前記ガラスフィルムと前記保護フィルムとを巻き取ることが好ましい。
【0032】
このようにすれば、保護フィルムによってガラスフィルムを容易に締め付けることができ、緩みのないガラスロールを確実に製造することができる。
【0033】
上記の方法において、前記ダウンドロー法が、オーバーフローダウンドロー法であることが好ましい。
【0034】
このようにすれば、成形後に別途加工を施すことなく表面の平滑性に優れたガラスフィルムを成形することができることから、表面精度の優れたガラスロールを容易に製造することが可能となる。
【0035】
上記の課題を解決するために創案された第3の発明は、ダウンドロー法によって成形されたガラスフィルムを、保護フィルムに重ねてロール状に巻き取ったガラスロールであって、前記保護フィルムは、前記ガラスフィルムよりも大きな巻き取り方向の張力が付与されていることに特徴づけられる。
【0036】
このような構成によれば、反りやうねり、板厚の変化のないガラスフィルムを緩みなく巻き取ったガラスロールとすることができる。
【0037】
上記の構成において、前記ガラスフィルムの厚みが、1μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0038】
このようにすれば、ガラスフィルムに適切な可撓性を付与することができる。そのため、ガラスフィルムを巻き取った際にガラスフィルムに作用する不当な応力を軽減することができ、破損を防止することができる。
【0039】
上記の構成において、前記ガラスフィルムの幅方向の両端面の算術平均粗さRaが、0.1μm以下であるこが好ましい。
【0040】
このようにすれば、ガラスフィルムの幅方向の両端面に適切な平滑性を付与することができる。保護フィルムには相対的に大きな巻き取り方向の張力が付与されているため、ガラスフィルムの端面と保護フィルムが接触し易いが、接触した場合でも、ガラスフィルムの端面の平滑化によって当該端面が保護フィルムに噛み込むことがなく、ガラスフィルムと保護フィルムとの分離性を良好に維持できる。
【0041】
上記の構成において、前記保護フィルムが、前記ガラスフィルムの幅方向両側から食み出していることが好ましい。
【0042】
このようにすれば、ガラスフィルムの幅方向両端面を保護フィルムで保護することが可能となる。また、ガラスフィルムの幅方向両端が保護フィルムによって覆われるので、外部からの異物の侵入を防止することもできる。
【発明の効果】
【0043】
以上のような第1の発明によれば、ダウンドロー法により連続的に成形されるガラスフィルムを第1巻き取り工程で巻き取った後、第2巻き取り工程において、そのガラスフィルムが第1巻き取り工程よりも巻き取り方向に大きな張力を作用させた状態で巻き直される。そのため、ダウンドロー法によりガラスフィルムを連続的に成形する場合であっても、これら第1巻き取り工程と第2巻き取り工程を経ることでガラスフィルムに適度な張力が付与され、巻きズレや浮き上がりの生じ難いガラスロールを製造することが可能となる。
【0044】
また、以上のような第2及び第3の発明によれば、ガラスフィルムに大きな巻き取り方向の張力を付与しなくても、保護フィルムに付与された相対的に大きな巻き取り方向の張力によって、ガラスフィルムを締め付けることができるので、巻きズレや浮き上がりの生じ難いガラスロールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法のフローチャートである。
【図2】本実施形態に係るガラスロールの製造方法に含まれる成形工程、切断工程、及び仮巻き取り工程の実施状況を説明するための図である。
【図3】本実施形態に係るガラスロールの製造方法に含まれる本巻き取り工程の実施状況を説明するための図である。
【図4】本実施形態に係るガラスロールの製造方法に含まれる本巻き取り工程の別の実施状況を説明するための図である。
【図5】本実施形態に係るガラスロールの製造方法に含まれる本巻き取り工程の別の実施状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0047】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガラスロールの製造方法のフローチャートである。このガラスロールの製造方法は、成形工程S1と、切断工程S2と、仮巻き取り工程(第1巻き取り工程)S3と、本巻き取り工程(第2巻き取り工程)S4とを含む。
【0048】
成形工程S1は、この実施形態では、図2に示すように、オーバーフローダウンドロー法を実行する成形装置1により行われる。この成形装置1は、上方から順に、成形ゾーン2、徐冷(アニール)ゾーン3、及び冷却ゾーン4を有している。なお、成形装置1は、スロットダウンドロー法や、リドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0049】
成形ゾーン2では、楔状の断面形状を有する成形体5に溶融ガラスGmを供給するとともに、この成形体5の頂部から両側方に溢れ出た溶融ガラスGmをその下端部で融合させて流下させることで、溶融ガラスGmから板状のガラスフィルムGを成形する。このガラスフィルムGは、下方に移動するに伴って次第に粘度が高くなり、形状を維持できる十分な粘度に達した後、徐冷ゾーン3で除歪され、更に冷却ゾーン4で室温付近まで冷却される。
【0050】
徐冷ゾーン3と冷却ゾーン4には、ガラスフィルムGの搬送経路の上流側から下流側に至る複数個所に、一対のローラを有するローラ群6が配置されており、ガラスフィルムGの幅方向両端部を下方側に案内するようになっている。なお、この実施形態では、成形装置1内の成形ゾーン2の最上部に配設されたローラが、ガラスフィルムGの幅方向両端部を冷却する冷却ローラとして機能すると共に、ガラスフィルムGを下方に引き出すための駆動ローラとしても機能している。一方、成形装置1内の残りのローラは、空転ローラおよび引張りローラ等としてガラスフィルムGを下方に案内する機能を果たしている。
【0051】
この成形工程S1で成形されるガラスフィルムGは、厚み1〜600μm(好ましくは1〜300μm、更に好ましくは10〜200μm)の長尺体であって、例えば、液晶ディスプレイ・プラズマディスプレイ・有機ELディスプレイ等のFPD、太陽電池、リチウムイオン電池、デジタルサイネージ、タッチパネル、電子ペーパー等のデバイスのガラス基板や、有機EL照明等のカバーガラス、医療品のガラス容器、窓板ガラス、積層軽量窓ガラスなどに利用される。
【0052】
また、ガラスフィルムGの幅は、100mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることが更に好ましい。なお、ガラスフィルムGは、小型の携帯電話用等の小画面ディスプレイから大型のテレビ受像機等の大画面ディスプレイに至るまで、多岐に亘るデバイスに使用される。そのため、ガラスフィルムGの幅は、最終的には、使用されるデバイスの基板の大きさに応じて適宜選択することが好ましい。
【0053】
さらに、ガラスフィルムGのガラス組成としては、シリカガラスやホウケイ酸ガラスなどのケイ酸塩ガラスなどの種々のガラス組成を使用することができるが、無アルカリガラスであることが好ましい。これは、ガラスフィルムGにアルカリ成分が含有されていると、所謂ソーダ吹きと称される現象が生じて構造的に粗となり、ガラスフィルムGを湾曲させた場合に、経年劣化により構造的に粗となった部分から破損が生じるおそれがあるためである。なお、ここでいう無アルカリガラスとは、アルカリ成分を実質的に含有していないガラスのことであって、具体的には、アルカリ金属酸化物が1000ppm以下(好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下)であることをいう。この条件を満足するガラスとしては、例えば、日本電気硝子株式会社製のOA−10Gが挙げられる。
【0054】
そして、以上のような成形工程S1で成形されたガラスフィルムGは、成形装置1の下方位置でガラスフィルムGを下方から支持する複数のローラを有する姿勢変換ローラ群7によって略水平方向に湾曲された後、その姿勢を維持したまま切断工程S2へと送られる。なお、この姿勢変換ローラ群7は、適宜省略してもよい。
【0055】
切断工程S2では、成形工程S1でガラスフィルムGの幅方向両端部に形成された非有効部(耳部)Gxを切断装置8によって切断除去する。この非有効部Gxは、ガラスフィルムGの幅方向中央部の有効部Gaに比して相対的に厚肉となる。
【0056】
詳細には、切断装置8は、レーザー割断を実行するものであって、成形装置1で連続的に成形されるガラスフィルムGを略水平姿勢のまま下流側に搬送する搬送手段9と、この搬送手段9上に載置されたガラスフィルムGに表面側からレーザービームLを照射して局部加熱を施す局部加熱手段10と、この局部加熱手段10により加熱された加熱領域に表面側から冷却水Wを噴射する冷却手段11とを備えている。このようにレーザー割断によってガラスフィルムGを切断すれば、研磨等の後加工を施すことなく、ガラスフィルムGの幅方向の両端面を構成する切断面に適度な平滑性を容易に付与することができる。そのため、ガラスフィルムGの端面が保護フィルムF1に噛み込むことがなく、ガラスフィルムGと保護フィルムF1との分離性を良好に維持できるという利点がある。また、ガラスフィルムGをロール状に巻き取る際に、ガラスフィルムGの両端面に微細な傷に起因する欠けが生じ難くなるという利点もある。ここで、以上のような利点をより確実に享受する観点からは、ガラスフィルムGの幅方向両端面の算術平均粗さRaは、0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。
【0057】
この実施形態では、局部加熱手段10として、炭酸ガスレーザーが使用されているが、電熱線や熱風噴射などの他の局部加熱を行い得る手段であってもよい。また、冷却手段11は、エアー圧等により冷却水Wを冷媒として噴射するものであるが、この冷媒は、冷却水以外の冷却液、またはエアーや不活性ガス等の気体、若しくは気体と液体を混合したもの、更にはドライアイスや氷等の固体と前記気体及び/又は前記液体とを混合したもの等であってもよい。なお、切断装置8は、ダイヤモンドカッターを利用してスクライブ線に沿って折り割りを実行するものや、レーザー溶断を実行するものであってもよい。
【0058】
搬送手段9でガラスフィルムGを下流側に送ることにより、局部加熱手段10の加熱領域が冷却手段11の冷却領域に先立ってガラスフィルムGの長手方向に沿って延びる割断予定線(有効部Gaと、非有効部Gxとの境界部)上を一端部側から走査していく。これにより、加熱作用による膨張と、冷媒の冷却作用による収縮とによって熱応力が生じ、割断予定線の先端部に予め形成された初期クラック(不図示)が割断予定線に沿って進展し、ガラスフィルムGが連続的にフルボディ割断される。
【0059】
そして、切断されたガラスフィルムGの非有効部Gxは、下方に折り曲げられて有効部Gaと分離された後、廃棄処分される。一方、ガラスフィルムGの有効部Gaは、仮巻き取り工程S3へと送られる。
【0060】
仮巻き取り工程S3では、保護フィルムF1が最外層にある状態に維持されるように、ガラスフィルムG(詳しくは、有効部Ga)の外周面側に、保護ロール12から巻き出した保護フィルムF1を重ねながら巻芯13の周りに所定長さ巻き取った後、図示しない切断装置によりガラスフィルムGと保護フィルムF1を幅方向に切断し、元ガラスロール14を製造する。この際、ガラスフィルムGに張力をかけすぎると、成形体5付近の軟化状態のガラスフィルムGに対して過度な張力が作用し、ガラスフィルムGの厚みが安定しなくなったり、場合によっては成形体5の下方部で断裂するという致命的な問題が生じ得る。そこで、仮巻き取り工程S3では、ガラスフィルムGの成形に悪影響を与えない範囲で、ガラスフィルムGに巻き取り方向に沿って張力(例えば、ガラスフィルムGに幅方向0〜20(未満)N/m)を作用させながら巻芯13の周りに巻き取る。ここで、仮巻き取り工程S3では、ガラスフィルムGに積極的に張力を作用させる必要はなく、ガラスフィルムGを巻き取る際に自然に作用する最小限の張力を作用させるだけであってもよい。
【0061】
また、この実施形態では、仮巻き取り工程S3において、ガラスフィルムGよりも保護フィルムF1に大きな巻き取り方向の張力を作用させている。具体的には、例えば、保護フィルムF1に幅方向0.8〜400N/mの張力を作用させる。この保護フィルムF1の張力は、例えば、元ガラスロール14と保護ロール12との間に回転速度差を設けたり、元ガラスロール14と保護ロール12の間に図示のようなテンションローラ15を介在させることで付与される。このようにすれば、ガラスフィルムGに直接的に大きな張力を作用させなくても、保護フィルムF1によってガラスフィルムGの移動を押え付けることができる。すなわち、ガラスフィルムGに直接的に張力を作用させた場合と同等の効果を得ることができる。そのため、仮巻き取り工程S3で生じるガラスフィルムGの巻きズレや浮き上がりを最小限の範囲に抑えることができる。また、元ガラスロール14の状態で、ガラスフィルムGが保護フィルムF1によって確実に押え付けられているので、後述する本巻き取り工程S4で元ガラスロール14からガラスフィルムGを巻き出す際に、元ガラスロール14中のガラスフィルムGが不当に巻き締まるという事態が生じ難い。
【0062】
元ガラスロール14用の保護フィルムF1の厚みは、20〜1000μm(より好ましくは25〜500μm)であることが好ましい。また、保護フィルムF1の幅は、ガラスフィルムGの幅方向両端面を種々の接触から保護するためにガラスフィルムGの有効部Gaの幅よりも大きいことが好ましい。すなわち、ガラスフィルムGの有効部Gaの幅方向両側に、保護フィルムF1が食み出すようにすることが好ましい。
【0063】
また、仮巻き取り工程S3を実行する段階で、ガラスフィルムGの温度が50℃以上である場合もあるため、保護フィルムF1は100℃前後で軟化等変質しないことが好ましい。
【0064】
保護フィルムF1は、弾性フィルムを使用することが好ましい。これにより、保護フィルムF1に適切な巻き取り方向の張力を付与させつつ、緩みのない元ガラスロール14を作製することができる。ここで、保護フィルムF1の引張弾性率は、1〜5GPaであることが好ましい。
【0065】
保護フィルムF1には、導電性が付与されていることが好ましい。このようにすれば、元ガラスロール14からガラスフィルムGを取り出す際に、ガラスフィルムGと保護フィルムF1との間に剥離帯電が生じ難くなるため、ガラスフィルムGから保護フィルムF1を容易に剥離できるという利点を享受し得る。保護フィルムF1に導電性を付与する方法としては、例えば、保護フィルムF1が樹脂製の場合には、保護フィルムF1中にポリエチレングリコール等の導電性を付与する成分を添加することが挙げられる。また、保護フィルムF1が合紙の場合には、合紙中に導電性繊維を抄き込むことが挙げられる。更に、保護フィルムF1の表面にITO等の導電膜を成膜することによっても、保護フィルムF1に導電性を付与することが可能である。
【0066】
具体的には、保護フィルムF1としては、例えば、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、セロファンなどの有機樹脂フィルム(合成樹脂フィルム)などの樹脂フィルムを使用することができる。また、緩衝性能を確保する観点からは、保護フィルムF1として、ポリエチレン発泡樹脂製フィルムなどの発泡樹脂フィルムや、上記の樹脂フィルムに発泡樹脂フィルムを積層した複合材などを使用することができる。更に、上記の樹脂フィルムに、ガラスフィルムGとの間の滑りを良好にするシリカなどの滑剤を分散させてもよい。このようにすれば、ガラスフィルムGと保護フィルムF1の僅かな巻き取り径の差によって生じる両者の巻き取り長さのズレを、保護フィルムF1の滑り性によって吸収できる。なお、後述するガラスロール16用の保護フィルムF2についても同様とする。
【0067】
なお、上記の保護フィルムF1に関する事項は、後述するガラスロール16用の保護フィルムF2についても同様とする。
【0068】
そして、以上のような仮巻き取り工程S3で製造された元ガラスロール14は、本巻き取り工程S4へと送られて巻き直される。
【0069】
本巻き取り工程S4では、図3に示すように、ロール・トゥー・ロール(Roll to Roll)装置によって、元ガラスロール14から巻き出したガラスフィルムG(詳しくは有効部Ga)を再び巻き取って、製品となるガラスロール16を製造する。
【0070】
詳細には、この実施形態では、巻き出し位置P1で元ガラスロール14から巻き出されたガラスフィルムGを、複数のローラからなるローラ群17によって遠回りさせながら略円周状に案内した後、巻き取り位置P2で再び巻芯18の周りに巻き取り、ガラスロール16を製造する。このようにガラスフィルムGを案内すれば、ローラ群17の各ローラ間においても、ガラスフィルムGに適度な張力を作用させやすくなる。
【0071】
この際、巻き出し位置P1では、ガラスフィルムGから保護フィルムF1が引き剥がされるとともに、その保護フィルムF1が保護ロール19として巻き取られる。一方、巻き取り位置P2では、保護フィルムF2が最外層にある状態を維持されるように、ガラスフィルムGの外周面側に、新たに別の保護ロール20から巻き出した保護フィルムF2を重ねながら巻芯18の周りに巻き取られる。そして、ガラスフィルムGに保護フィルムF1を重ねて巻芯18の周りに所定長さ巻き取った後、図示しない切断装置により保護フィルムF2(又はガラスフィルムGと保護フィルムF2)を幅方向に切断し、ガラスロール16を製造する。この実施形態では、保護フィルムF2は、仮巻き取り工程S3で使用した保護フィルムF1と同種とする。
【0072】
そして、この本巻き取り工程S4では、図1に示すように、ガラスフィルムGに作用する巻き取り方向の張力bを、仮巻き取り工程S3でガラスフィルムGに作用する張力aよりも大きくしている。具体的には、例えば、ガラスフィルムGに幅方向10〜500N/mの張力を作用させる。このガラスフィルムGの張力は、例えば、元ガラスロール14とガラスロール16との間に回転速度差を設けることによって付与される。このようにすれば、仮に、仮巻き取り工程S3で製造された元ガラスロール14に含まれるガラスフィルムGに巻きズレや浮き上がりが生じたとしても、本巻き取り工程S4でガラスフィルムGに十分な張力を作用させ、これらの巻きズレ等を修正して巻き直すことができる。
【0073】
なお、この本巻き取り工程S4において、保護フィルムF2よりもガラスフィルムGに大きな巻き取り方向の張力を作用させてもよい。具体的には、例えば、保護フィルムF2に幅方向0.8〜400N/mの張力を作用させることが好ましい。この保護フィルムF2の張力は、例えば、ガラスロール16と保護ロール20との間に回転速度差を設けたり、ガラスロール16と保護ロール20の間に図示のようなテンションローラ21を介在させることで付与される。この場合、本巻き取り工程S4で保護フィルムF2に作用する巻き取り方向の張力と、仮巻き取り工程S3で保護フィルムF1に作用する巻き取り方向の張力との大小関係は、特に限定されるものではなく、種々の要件を加味して適宜設定(F1の張力<F2の張力、F1の張力=F2の張力,F1の張力>F2の張力)することができる。
【0074】
また、本巻き取り工程S4では、図3に示すように、ガラスフィルムGの一方側の表面のみを接触支持しながら搬送するとともに、その接触支持面がガラスロール16の内周面側に位置するように、ガラスフィルムGを巻き取っている。このようにすれば、ガラスフィルムGの接触支持面に微小傷が生じたとしも、この接触支持面がガラスロール16の内周面側に位置するように巻き取られる。ガラスロール16中では、ガラスフィルムGの内周面側の面には圧縮応力のみが作用するため、接触支持面に微細傷が生じていても、その微小傷が進展するような力が作用し難い。換言すれば、微小傷が進展するような力が作用するガラスフィルムGの外周面側の面には、微小傷が実質的にない非接触面が位置することになるので、ガラスフィルムGの破損を確実に低減することが可能となる。なお、この実施形態では、仮巻き取り工程S3においても、ガラスフィルムGの一方側の表面のみを接触支持しており、その接触支持面が本巻き取り工程S4の接触支持面と同じ側に設定されている。
【0075】
なお、本発明は、上記の第1実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、図4に示すように、本巻き取り工程S4においても、切断工程を実行するようにしてもよい。詳細には、元ガラスロール14から巻き出されたガラスフィルムG(詳しくは有効部Ga)を幅方向に切断し、所望の幅を有する複数(図示例は2つ)のガラスフィルムGに分割し、それぞれのガラスフィルムGに保護フィルムF2を重ねて巻芯18の周りに巻き取り、複数のガラスロール16を同時に製造するようにしてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、元ガラスロール14の状態で内周面側に位置する面を、搬送時のガラスフィルムGの接触支持面とする場合を説明したが、図4に示すように、元ガラスロール14の状態で外周面側に位置する面を、搬送時のガラスフィルムGの接触支持面としてもよい。また、上記の実施形態では、この接触支持面が、ガラスロール16の内周面側に位置するように巻き取られる場合を説明したが、ガラスロール16の外周面側に位置するように巻き取られるようにしてもよい。
【0077】
更に、上記の実施形態では、本巻き取り工程S4において、元ガラスロール14から巻き出したガラスフィルムGを略円周状に遠回りさせながら誘導した後に、巻き取る場合を説明したが、図5に示すように、元ガラスロール14から巻き出したガラスフィルムGを直線状に誘導した後に、巻き取るようにしてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、仮巻き取り工程S3の後に、本巻き取り工程S4を1回だけ行う場合を説明したが、本巻き取り工程S4の後に、更にガラスフィルムGの巻き直しを行う工程が1乃至複数回含まれていてもよい。
【0079】
次に、本発明の第2実施形態に係るガラスロールの製造方法について説明する。なお、この第2実施形態は、図1に示した同様の態様で実施でき、仮巻き取り工程S3を最終製品となるガラスロールを製造する本巻き取り工程として実行する点が相違する。
【0080】
詳細には、この第2実施形態では、図1に示したように、ダウンドロー法によってガラスフィルムGを成形すると共に、その成形したガラスフィルムGの外周側に保護フィルムF1を重ねて、ガラスフィルムGよりも保護フィルムF1に大きな巻き取り方向の張力を付与しながらロール状に巻き取ることによって、最終製品となるガラスロールを製造する。そして、このように製造されたガラスロールは、巻き取られた状態で、保護フィルムF1に、ガラスフィルムGよりも大きな巻き取り方向の張力が付与される。
【0081】
ここで、保護フィルムF1に付与される張力、及びガラスフィルムGに付与される張力は、上記の第1実施形態で説明した仮巻き取り工程S3で説明した張力(例えば、ガラスフィルムGに幅方向0〜20(未満)N/m、保護フィルムF1に幅方向0.8〜400N/m)と同様とする。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや太陽電池等のデバイスに使用されるガラス基板、及び有機EL照明等のカバーガラスに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 成形装置
2 成形ゾーン
3 徐冷ゾーン
4 冷却ゾーン
5 成形体
7 姿勢変換ローラ群
8 切断装置
9 搬送手段
10 局部加熱手段
11 冷却手段
14 元ガラスロール
16 ガラスロール
F1,F2 保護フィルム
G ガラスフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンドロー法を実行する成形装置によってガラスフィルムを連続的に成形しながら下流側に搬送する成形工程と、
前記成形工程の搬送経路の下流端で前記ガラスフィルムに第1保護フィルムを重ねてロール状に巻き取り、元ガラスロールを製造する第1巻き取り工程と、
前記元ガラスロールから前記ガラスフィルムを巻き出しながら下流側に搬送するとともに、その搬送経路の下流端で、前記ガラスフィルムに第2保護フィルムを重ねてロール状に巻き直し、ガラスロールを製造する第2巻き取り工程とを含み、
前記第2巻き取り工程で前記ガラスフィルムに作用する巻き取り方向の張力を、前記第1巻き取り工程で前記ガラスフィルムに作用する張力よりも大きくしたことを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項2】
前記第1巻き取り工程において、前記第1保護フィルムに作用する巻き取り方向の張力を、前記ガラスフィルムに作用する巻き取り方向の張力よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項3】
前記第2巻き取り工程において、前記ガラスフィルムに作用する巻き取り方向の張力を、前記第2保護フィルムに作用する巻き取り方向の張力よりも大きくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項4】
前記第2巻き取り工程において、前記ガラスフィルムの一方側の表面のみを接触支持しながら搬送することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項5】
前記第2巻き取り工程において、前記ガラスフィルムの前記接触支持面が、前記ガラスロールの内周面側に位置するように巻き取られることを特徴とする請求項4に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項6】
前記第1巻き取り工程と前記第2巻き取り工程の少なくとも一方で、前記ガラスフィルムをレーザー切断により所定の幅に切断してから巻き取ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項7】
前記ダウンドロー法が、オーバーフローダウンドロー法であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項8】
前記ガラスフィルムの厚みが、1μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項9】
ダウンドロー法によってガラスフィルムを成形すると共に、その成形したガラスフィルムを保護フィルムに重ねてロール状に巻き取るガラスロールの製造方法であって、
前記保護フィルムに、前記ガラスフィルムよりも大きな巻き取り方向の張力を付与しながら、前記ガラスフィルムと前記保護フィルムとを巻き取ることを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項10】
ロール状にガラスフィルムを巻き取るまでの段階で、前記ガラスフィルムの幅方向両端部に形成される非有効部をレーザー切断することを特徴とする請求項9に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項11】
前記保護フィルムが最外層にある状態に維持されるように、前記ガラスフィルムの外周面側に前記保護フィルムを重ねながら、前記ガラスフィルムと前記保護フィルムとを巻き取ることを特徴とする請求項9又は10に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項12】
前記ダウンドロー法が、オーバーフローダウンドロー法である請求項9〜11のいずれか1項に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項13】
ダウンドロー法によって成形されたガラスフィルムを、保護フィルムに重ねてロール状に巻き取ったガラスロールであって、
前記保護フィルムに、前記ガラスフィルムよりも大きな巻き取り方向の張力が付与されていることを特徴とするガラスロール。
【請求項14】
前記ガラスフィルムの厚みが、1μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項13に記載のガラスロール。
【請求項15】
前記ガラスフィルムの幅方向の両端面の算術平均粗さRaが、0.1μm以下であることを特徴とする請求項13又は14に記載のガラスロール。
【請求項16】
前記保護フィルムが、前記ガラスフィルムの幅方向両側から食み出していることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のガラスロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−14441(P2013−14441A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146123(P2011−146123)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】