説明

ガラスロール及びその製造方法

【課題】輸送時における破損を防止することができる薄板ガラスシートのガラスロール、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】幅方向両側端部近傍にスクライブラインが形成され、前記幅方向両端部の不要部分が切断除去された薄板ガラスシート2が、前記スクライブラインの形成面が内側となるように巻き取られていることを特徴とするガラスロール1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板や太陽電池のガラス基板等のデバイスのガラス基板、及び有機EL照明のカバーガラス等に使用される薄板ガラスシートのガラスロール、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省スペース化の観点から、従来普及していたCRT型ディスプレイに替わり、近年は液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが普及している。これらのフラットパネルディスプレイにおいては、さらなる薄型化が要請される。特に有機ELディスプレイには、折りたたみや巻き取ることによって持ち運びを容易にすると共に、平面だけでなく曲面にも使用可能とすることが求められている。また、平面だけでなく曲面にも使用可能とすることが求められているのはディスプレイには限られず、例えば、自動車の車体表面や建築物の屋根、柱や外壁等、曲面を有する物体の表面に太陽電池を形成したり、有機EL照明を形成したりすることができれば、その用途が広がることとなる。従って、これらデバイスに使用される基板やカバーガラスには、更なる薄板化と高い可撓性が要求される。
【0003】
有機ELディスプレイに使用される発光体は、酸素や水等の気体が接触することにより劣化する。従って有機ELディスプレイに使用される基板には高いガスバリア性が求められるため、ガラス基板を使用することが期待されている。しかしながら、基板に使用されるガラスは、樹脂フィルムと異なり引っ張り応力に弱いため可撓性が低く、ガラス基板を曲げることによりガラス基板表面に引っ張り応力がかけられると破損に至る。一般にガラス基板を曲げる際に、ガラス基板表面に生じる引っ張り応力はガラス基板が薄いほど小さくなるので、ガラス基板に可撓性を付与するためには超薄板化を行う必要があり、下記特許文献1に記載されているような厚み200μm以下の薄板ガラスシートが提案されている。
【0004】
ガラスメーカーで製造されたガラス基板は、ディスプレイパネルメーカーへと輸送され、ディスプレイパネルとして組み立てられる。従って、上述した薄板ガラスシートは、ディスプレイパネルメーカーへ輸送される際に破損しないようにする必要がある。
【0005】
ガラス基板を梱包する方法として、下記特許文献2や下記特許文献3が提案されている。下記特許文献2には、背面部を有するパレット上に所定の角度を設けてガラス基板と梱包緩衝材とを交互に立てかけ、所定の枚数積層した後固定する梱包方法が記載されている。また、下記特許文献3には、パレット上に水平にガラス基板と梱包緩衝材とを交互に積み重ね、クッション材で固定する梱包方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、薄板ガラスシートには前述のようにある程度の可撓性が存在するため、下記特許文献2に記載されているように立てかけることが容易ではなく、当該薄板ガラスシートの梱包に下記特許文献2に記載されている梱包方法を使用することは困難である。さらに、薄板ガラスシートは僅かな風圧でばたつく可能性があり、ガラスシートを立てかける際に風圧等により折れ曲がりが発生すると、容易に破損してしまうという問題を有する。
【0007】
さらに、薄板ガラスシートはその薄さから変形し易いために非常に脆く、薄板ガラスシートを下記特許文献3に記載されているように水平に積み重ねると、下方に存在する薄板ガラスシートに荷重がかかり、容易に破損するという問題が生じる。
【0008】
ガラス基板を水平方向に梱包する際に、下方に荷重がかかるのを防止する梱包方法として、下記特許文献4に記載されている方法が提案されている。下記特許文献4は、複数枚の板ガラスを1枚ずつ支持部材で支持して水平方向に並列配置して収納している。よって、板ガラスの荷重支持は、支持部材で行っているため、下方に配置されているガラス基板には荷重がかかることはない。
【0009】
しかしながら、薄板ガラスシートは可撓性を有するため、下記特許文献4に記載されているように支持部材間を掛け渡すように収納することはできない。
【0010】
従って、薄板ガラスシートを搬送するためには、従来使用されていたガラス基板の梱包方法とは根本的に異なる方法によって梱包されたガラスシートが提案されることが望まれている。
【特許文献1】特開2008−133174号公報
【特許文献2】特開2005−231657号公報
【特許文献3】特開2006−264786号公報
【特許文献4】特開2005− 75433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、輸送時における破損を防止することができる薄板ガラスシートのガラスロール、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、幅方向両側端部近傍にスクライブラインが形成され、前記幅方向両端部の不要部分が切断除去された薄板ガラスシートが、前記スクライブラインの形成面が内側となるように巻き取られていることを特徴とするガラスロールに関する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記薄板ガラスシートの厚みは、10μm〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載のガラスロールに関する。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記薄板ガラスシートが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスロールに関する。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記薄板ガラスシートが、梱包緩衝シートに重ねて巻き取られていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラスロールに関する。
【0016】
請求項5に係る発明は、巻芯によって巻き取られていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラスロールに関する。
【0017】
請求項6に係る発明は、前記巻芯が取り除かれていることを特徴とする請求項5に記載のガラスロールに関する。
【0018】
請求項7に係る発明は、薄板ガラスシートの幅方向両側端部近傍にスクライブラインを形成し、前記幅方向両端部の不要部分を切断除去した後、前記スクライブラインの形成面が内側となるように巻き取ることを特徴とするガラスロールの製造方法に関する。
【0019】
請求項8に係る発明は、前記薄板ガラスシートが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることを特徴とする請求項7に記載のガラスロールの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、幅方向両側端部近傍にスクライブラインが形成され、幅方向両端部の不要部分が切断除去された薄板ガラスシートが、スクライブラインの形成面が内側となるように巻き取られていることから、薄板ガラスシート両側端部からクラックが生じることによる薄板ガラスシートの破損を防止することができる。また、薄板ガラスシートは、巻き取った状態で長時間保持されたとしても、反りが発生することはなく容易に次工程へと送り込むことができる。さらに、巻き取ることによって長尺物の薄板ガラスシートとすることができることから、その後自由な長さで切断することができ、様々な大きさの基板に対応することが可能となり、薄板ガラスシートの無駄を防止することができる。一方、形成されたスクライブラインの溝には微細な傷が生じているため、スクライブラインの形成面が外側となるように薄板ガラスシートを巻き取ると、その引っ張り応力によってスクライブラインの溝に生じている微細な傷をオリジンとして薄板ガラスシートが破損する可能性がある。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、薄板ガラスシートの厚みは、10μm〜500μmであることから、薄板ガラスシートに適切に可撓性を付与することができ、薄板ガラスシートを巻き取った際に薄板ガラスシートにかかる不当な応力を軽減することができ、薄板ガラスシートが破損することを防止することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、薄板ガラスシートは、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることから、表面に傷の発生がなく、高い表面品位を有する薄板ガラスシートを得ることができる。これにより、薄板ガラスシートのロール巻き取り時に、表面の傷をオリジンとして薄板ガラスシートが破損することをより確実に防止することができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、薄板ガラスシートが、梱包緩衝シートに重ねて巻き取られていることから、梱包緩衝シートがクッション性を有するので、多少の衝撃が加わったとしても衝撃を吸収することができ、薄板ガラスシートが破損することを防止することができる。さらにガラスロールは、薄板ガラスシートと梱包緩衝シートとが共に巻き取られて作製されているため、薄板ガラスシート表面に傷が発生するのを防止することができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、巻芯によって巻き取られていることから、薄板ガラスシートを巻き取る際に巻芯に固定することができるため、より強固に巻き取られたガラスロールとすることができる。また、巻き取られた薄板ガラスシートのガラスロールに外側から圧力が加わったとしても、巻芯の存在によって薄板ガラスシートは内側に曲がることは無いため、薄板ガラスシートに不当な引っ張り応力がかかるのを防止することができ、薄板ガラスシートが破損するのをより確実に防止することができる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、巻芯が取り除かれていることから、巻芯を使用してより強固に巻き取られたガラスロールとした後、巻芯を取り除くことによりガラスロールの軽量化を図ることができ、より輸送に適したガラスロールとすることができる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、薄板ガラスシートの幅方向両側端部近傍にスクライブラインを形成し、幅方向両端部の不要部分を切断除去した後、スクライブラインの形成面が内側となるように巻き取ることから、薄板ガラスシートの破損を防止しつつ、効率よくガラスロールを製造することができる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることから、成形された薄板ガラスシートは高い表面品位を有し、より容易にロール状に巻き取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係るガラスロール、及びその製造方法の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、本発明に係るガラスロールの斜視図である。図2は、薄板ガラスシートの製造装置の説明図である。図3は、本発明に係るガラスロールの製造装置の説明図である。図4は、巻芯に保持部を設けた形態の図であって、(a)は薄板ガラスシートのみを保持する形態の図、(b)は薄板ガラスシートと梱包緩衝シートとを保持する形態の図である。図5は、巻芯の外円筒が伸縮する形態の図である。図6は、本発明に係る薄板ガラスシートの好ましい切断方法を示した図であって、(a)はスクライブラインが切断前ローラを通過した状態の図、(b)は折り割りを行っている図、(c)は切断後端部が切断後ローラを通過した状態の図である。
【0030】
本発明に係るガラスロール(1)は、図3に示すガラスロールの製造装置などで成形後、図1に示す通り、ローラ接触部等の不要部分を除去するために形成するスクライブラインが、内側となるように巻き取られることによって作製されている。
【0031】
薄板ガラスシート(2)は、ケイ酸塩ガラスが用いられ、好ましくはシリカガラス、ホウ珪酸ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。薄板ガラスシート(2)にアルカリが含有されていると、表面において陽イオンの置換が発生し、いわゆるソーダ吹きの現象が生じ、構造的に粗となる。この場合、薄板ガラスシート(2)を湾曲させて使用していると、経年劣化により粗となった部分から破損し易くなる可能性がある。尚、ここで無アルカリガラスとは、アルカリが実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリが1000ppm以下のガラスのことである。本発明でのアルカリの含有量は、好ましくはアルカリが500ppm以下であり、より好ましくはアルカリが300ppm以下である。
【0032】
薄板ガラスシート(2)は巻き取ることが可能であるため、特に長尺物に適している。すなわち薄板ガラスシート(2)の幅(短辺)に対する長さ(長辺)が好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、さらには10倍以上の長さを有することがより好ましい。このように長尺物であったとしても、コンパクトに梱包することが可能となり、輸送に適している。薄板ガラスシート(2)の幅は、携帯電話用小型ディスプレイから大画面ディスプレイ等、使用されるデバイスの基板の大きさによって適宜選択される。
【0033】
薄板ガラスシート(2)の厚みは、10μm〜500μmであることが好ましく、10μm〜200μmであることがより好ましく、10μm〜100μmであることが最も好ましい。このようにすると薄板ガラスシート(2)に適切に可撓性を付与することができ、薄板ガラスシート(2)を巻き取った際に薄板ガラスシート(2)にかかる不当な応力を軽減することができ、薄板ガラスシート(2)が破損することを防止することができるからである。尚、薄板ガラスシート(2)の厚みが10μm未満であると、薄板ガラスシート(2)の強度が足りず、一方500μmを超えると、薄板ガラスシート(2)を巻き取ると引っ張り応力により破損する可能性が高くなるため、いずれの場合も好ましくない。
【0034】
薄板ガラスシート(2)は、その薄さから成形時に幅方向に張力をかける必要があるため、幅方向の両側端部には、冷却ローラ(5)による引っ張り痕(ローラ接触部)が残存する。ローラ接触部は、薄板ガラスシート(2)の他の部分と比較して肉厚であり、当該部分が残存するとロール状に巻き取り難くなるため、不要部分となる。よって、薄板ガラスシート(2)を巻き取りガラスロール(1)とする前に、薄板ガラスシート(2)の不要部分(ローラ接触部)を切断除去する必要がある。薄板ガラスシート(2)の不要部分(ローラ接触部)を除去する際には、ダイヤモンドカッター等を使用して薄板ガラスシート(2)の表面にスクライブラインを薄板ガラスシート(2)の流れ方向に形成し、折り割りを行う。その後、薄板ガラスシート(2)をスクライブラインの形成面が内側となるように巻き取る。形成されたスクライブラインの溝には微細な傷が生じているため、スクライブラインの形成面が外側となるように薄板ガラスシート(2)を巻き取ると、その引っ張り応力によってスクライブラインの溝に生じている微細な傷をオリジンとして薄板ガラスシート(2)が破損する可能性があるからである。また、スクライブラインの形成後に折り割りを行った後、ファイアポリッシュ、ケミカルポリッシュを行うことによって薄板ガラスシート(2)の端面を処理することもできる。
【0035】
薄板ガラスシート(2)を巻き取る際に、薄板ガラスシート(2)の端面に応力が集中し、破損する可能性がある。従って、薄板ガラスシート(2)の端面部分を樹脂製フィルム等によって保護することが好ましい。この場合、薄板ガラスシート(2)の両端面から1〜2cmの領域に樹脂製フィルムを重ねて巻き取ることによってガラスロール(1)を作成する。さらに、粘着性の樹脂製フィルムを使用すると、薄板ガラスシート(2)端面にクラックが発生したとしても、クラックが進展するのを防止することができる。また、薄板ガラスシート(2)の端面を樹脂製フィルムで保護するのに換えて、両端面から1〜2cmの領域に保護膜をコーティングしてもよい。保護膜としては例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニル、ポリエチレンポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース基材重合体、エポキシ樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などを利用することができる。これらの保護膜は噴霧塗布やローラなどによる塗布または前述の樹脂フィルムの貼着などで付与することができる。保護膜は、薄板ガラスシート(2)の端面から1〜2cm程度の領域には限定されず、薄板ガラスシート(2)の表面全体に亘って形成しても同様の効果を享受することができる。
【0036】
ガラスロール(1)から薄板ガラスシート(2)を引き出し、工程に組み込む際に、薄板ガラスシート(2)を直接把持して組み込むと薄板ガラスシート(2)の始端部が破損する可能性があり、工程へ組み込み難くなる場合がある。従って、薄板ガラスシート(2)の巻き取り開始時(始端)と巻き取り終了時(終端)に、樹脂製のフィルムを取着するのが好ましい。樹脂製のフィルムは、薄板ガラスシート(2)と比較して靭性に富み破損し難いため、工程に組み込む際に樹脂製のフィルムを把持して行うことができ、工程への組み込みを容易にすることが可能となる。樹脂製のフィルムは、薄板ガラスシート(2)の始端部と終端部にそれぞれ1〜2cm程度重ねて取着した後巻きつけを行い、ガラスロール(1)とする。樹脂製のフィルムの長さは、特に限定されず、例えば、ガラスロール(1)外周1周分の長さに設定することが挙げられる。また、樹脂製のフィルムは、粘着性を持つことが好ましく、弾性率が薄板ガラスシート(2)よりも小さいことが好ましい。
【0037】
薄板ガラスシート(2)は図2に示す製造装置を使用して製造される。断面が楔型の成形体(4)の下端部(41)から流下した直後のガラスリボン(G)は、冷却ローラ(5)によって幅方向の収縮が規制されながら下方へ引き伸ばされて所定の厚みまで薄くなる。次に、前記所定厚みに達したガラスリボン(G)を徐冷炉(アニーラ)で徐々に冷却し、ガラスリボン(G)の熱歪を除いて、薄板ガラスシート(2)が成形される。
【0038】
本発明に係るガラスロール(1)は、図3に示す製造装置を使用して製造される。図2に示す装置を使用し、〔0037〕に記載されている方法で成形された薄板ガラスシート(2)(例えば日本電気硝子株式会社製OA−10G:厚み50μm)は、冷却ローラ(5)に接触したローラ接触部を除去するために、ガラスリボン(G)の板幅方向両端部から所定の幅でローラ接触部切断カッター(7)にて連続してスクライブラインが形成され、ローラ接触部が除去される。その後、スクライブラインの形成面が内側となるように薄板ガラスシート(2)をロール状に巻き取る。このようにして、所定径の大きさまで薄板ガラスシート(2)を巻き取った後、幅方向切断カッター(図示省略)を使用することによって薄板ガラスシート(2)の幅方向にスクライブラインを形成した後薄板ガラスシート(2)を切断し、巻き取ることにより本発明に係るガラスロール(1)の製造が完了する。
【0039】
尚、図3では、成形から巻き取りまで連続して行う長尺物の巻き取りの形態について説明を行ったが、短尺物の巻き取りを行う場合は、先に所定長毎に薄板ガラスシート(2)の幅方向にスクライブラインを形成した後切断を行うことにより、バッチ処理での巻き取り形態としてもよい。また、複数の短尺物をひとつのガラスロールに巻き取る形態としてもよい。
【0040】
本発明において、薄板ガラスシート(2)は、図2、図3に示す通り、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、成形時にガラス板の両面が、成形部材と接触しない成形法であり、得られたガラス基板の両面(透光面)には傷が生じ難く、研磨しなくても高い表面品位を得ることができるからである。
【0041】
本発明に係るガラスロール(1)は、薄板ガラスシート(2)が、梱包緩衝シート(3)に重ねて巻き取られていることが好ましい。梱包緩衝シート(3)は、薄板ガラスシート(2)を巻き取る際に、薄板ガラスシート(2)同士が接触することによる傷の発生を防止すると共に、ガラスロール(1)に外圧が加わった際、それを吸収することができるからである。
【0042】
梱包緩衝シート(3)の厚みは、10μm〜2000μmであることが好ましい。10μm未満であると、梱包緩衝シートとして十分な緩衝性を有することができず、2000μmを超えると、薄板ガラスシート(2)を巻き取った後に形成されたガラスロールの厚みが不当に厚くなるため、いずれの場合も好ましくない。
【0043】
本発明に係るガラスロール(1)を作成する際に、薄板ガラスシート(2)は、50℃を超えている可能性があるため、梱包緩衝シート(3)は、100℃前後で軟化等変質しないことが好ましい。
【0044】
梱包緩衝シート(3)は、幅方向において薄板ガラスシート(2)よりも一回り大きいことが好ましい。薄板ガラスシート(2)の側縁部に打突等による欠けが生じるのを防止するためである。
【0045】
梱包緩衝シート(3)としては、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロンフィルム、セロファン等の樹脂製緩衝材、合紙、不織布等を使用することができる。中でも、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムは、ガラスに対する滑りが良いために、薄板ガラスシート(2)と梱包緩衝シート(3)を重ねて巻き取ることにより生じる僅かな径の差に起因する巻き取り長さのズレを、その滑りにより吸収できるため好ましい。さらに、梱包緩衝シート(3)としてポリエチレン発泡樹脂製シートを使用すると、衝撃吸収が可能であり、巻き取り時の薄板ガラスシート(2)のズレを当該樹脂性シートの伸縮で吸収することができるので好ましい。
【0046】
また、梱包緩衝シート(3)が外側となるように薄板ガラスシート(2)を巻き取っても、梱包緩衝シート(3)が内側となるように薄板ガラスシート(2)を巻き取ってガラスロール(1)を形成してもよい。梱包緩衝シート(3)が内側となるように薄板ガラスシート(2)を巻き取る場合は、薄板ガラスシート(2)を梱包緩衝シート(3)にテープ等で固着させた後か、図4のように巻芯(6)に設けた保持溝(68)に薄板ガラスシート(2)と梱包緩衝シート(3)を重ねて保持、もしくは薄板ガラスシート(2)のみを保持した後に巻き取りを開始する。
【0047】
梱包緩衝シート(3)には、導電性が付与されていることが好ましい。このようにするとガラスロール(1)から薄板ガラスシート(2)を取り出す際に、薄板ガラスシート(2)と梱包緩衝シート(3)との間に剥離帯電が生じ難くなるため、薄板ガラスシート(2)と梱包緩衝シート(3)とを剥離させやすくすることができるからである。梱包緩衝シート(3)が樹脂製の場合は梱包緩衝シート(3)中にポリエチレングリコール等の導電性を付与する成分を添加することで、合紙の場合は導電性繊維を抄き込むことで、梱包緩衝シート(3)に導電性を付与することができる。また、導電性を付与するために、梱包緩衝シート(3)の表面にITO等の導電膜を成膜することもできる。
【0048】
本発明に係るガラスロール(1)は、巻芯(6)によって巻き取られることが好ましい。このようにすると薄板ガラスシート(2)を巻き取る際に巻芯(6)に固定することができるため、より強固に巻き取られたガラスロール(1)とすることができるからである。巻き取られた薄板ガラスシート(2)のガラスロール(1)に外側から圧力が加わったとしても、巻芯(6)の存在によって薄板ガラスシート(2)は内側に曲がることは無いため、薄板ガラスシート(2)に不当な引っ張り応力が生じるのを防止することができ、薄板ガラスシート(2)が破損するのをより確実に防止することができる。
【0049】
巻芯(6)は、幅方向において薄板ガラスシート(2)よりも大きいことが好ましい。このようにすると、ガラスロール(1)の側縁部よりも巻芯(6)を突出させることができ、打突等による薄板ガラスシート(2)の側縁部の欠けを防止することができるからである。
【0050】
巻芯(6)の材質としては、アルミニウム合金、ステンレス鋼、マンガン鋼、炭素鋼等の金属、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ジリアルテレフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、もしくはこれらの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂にガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維を混合した強化プラスチック、紙管等を使用することができる。中でも、アルミニウム合金や強化プラスチックは強度の面において優れているため、また、紙は軽量化を図ることができるため、好ましく使用することができる。
【0051】
薄板ガラスシート(2)の表面に傷が生じるのを防止するために、巻芯(6)には予め1周以上梱包緩衝シート(3)を巻きつけておくことが好ましい。
【0052】
薄板ガラスシート(2)を巻芯(6)に巻き始める際、巻き始めの薄板ガラスシート(2)端部を巻芯(6)に沿わせ難く、無理に沿わせると薄板ガラスシート(2)端部の巻き始め部分に不当な応力がかかり、破損する場合がある。従って、巻芯(6)には、図4に示す通り、薄板ガラスシート(2)の端部を保持する保持溝(68)が設けられていることが好ましい。この場合、図4(a)に示す通り、保持溝(68)を緩衝材(69)で形成し、薄板ガラスシート(2)の端部を差し込んで巻き取りを開始する。一方、薄板ガラスシート(2)を梱包緩衝シート(3)に重ねて巻き取る形態の場合は、図4(b)に示す通り、薄板ガラスシート(2)の端部を、梱包緩衝シート(3)を折り返して覆った状態で保持溝(68)に同時に差し込んだ後、薄板ガラスシート(2)の巻き取りを開始してもよい。
【0053】
本発明に係るガラスロール(1)は、巻芯(6)によって巻き取られた後に、巻芯(6)が取り除かれていることがより好ましい。すなわち、薄板ガラスシート(2)を巻き取る際に一旦巻芯(6)に固定してより強固に巻き取られたガラスロール(1)とした後、巻芯(6)を取り除くことによりガラスロール(1)の軽量化を図ることができ、より輸送に適したガラスロール(1)とすることができるからである。
【0054】
巻芯(6)を取り除く場合、図5に示す通り、巻芯(6)が内円筒(65)と外円筒(66)の同心二重円状のスリーブからなり、内円筒(65)と外円筒(66)の間に弾性部材(67)が介在しているものを使用することが好ましい。外円筒(66)を中心方向へと押圧することで弾性部材(67)が収縮することにより、外円筒(66)が縮径するため、ガラスロール(1)から巻芯(6)を容易に取り外すことが可能となるからである。図5では、外円筒(66)を伸縮させる部材として弾性部材(67)を使用しているが、内円筒(65)と外円筒(66)との間の空間を密閉し、内部空間の流体圧力を変化させることによって、外円筒(66)を伸縮させる構成を採用することも可能である。
【0055】
薄板ガラスシート(2)を巻き取り、ガラスロール(1)とした時の薄板ガラスシート(2)の表面に生じる引っ張り応力は、下記数1で示される式で決定される。
【0056】
【数1】

【0057】
尚、数1中、σは薄板ガラスシート(2)外表面引っ張り応力値を示し、Rはガラスロール(1)内径の半径(巻芯の外径の半径)を示し、Tは薄板ガラスシート(2)の厚みを示し、Eは薄板ガラスシート(2)のヤング率を示す。
【0058】
従って、ガラスロール(1)内径の半径R(巻芯6の半径)は、下記数2で示される式で決定される。
【0059】
【数2】

【0060】
尚、数2中、σは薄板ガラスシート(2)外表面引っ張り応力値を示し、Rはガラスロール(1)内径の半径(巻芯の外径の半径)を示し、Tは薄板ガラスシート(2)の厚みを示し、Eは薄板ガラスシート(2)のヤング率を示す。
【0061】
上述した数2で決定される半径の値以上にガラスロール(1)内径の半径Rを設定することによって、薄板ガラスシート(2)を巻き取る際の巻き取り半径をより適切に選択することができ、巻き取り半径が低すぎることによって薄板ガラスシート(2)に不当な引っ張り応力がかかるのを防止することができるため、薄板ガラスシート(2)が破損するのをより確実に防止することができる。なお、巻芯(6)を使用する場合は、巻芯(6)の外径の半径を上述した数2で求められた値以上に設定すればよい。例えば、厚み300μmの薄板ガラスシート(2)を巻き取った際、薄板ガラスシート(2)表面に生じる引っ張り応力を約21MPaとすると、直径1mの巻芯に巻き取ることができる。
【0062】
スクライブライン形成の際にダイヤモンドカッターを使用した場合、上述した数2におけるσの値が30〜60MPaを基準としてガラスロール(1)の内径(S)(巻芯の直径)の値を求めるが、溶融ガラスから薄板ガラスシート(2)に成形される際には、その端面には形状による引っ張り応力に冷却時の歪みによる引っ張り応力が加算されていることを考慮すると、上述したσの値は、30MPaまでとすることが安全である。
【0063】
薄板ガラスシート(2)の比ヤング率は29以上、40以下であることが好ましく、さらには29以上、35以下であるとより好ましい。比ヤング率とは、ヤング率を比重で除したものであり、自重での撓み量の尺度となる。薄板ガラスシート(2)はロール・ツー・ロール方式の連続処理を施されて、最終段階で所定の寸法に切断され使用される。このとき切断された板ガラスは薄いために可撓性が高いので、比ヤング率が29未満であると切断後の工程において必要以上に撓んでしまい、工程でのトラブルを誘引する可能性があり、所定の比ヤング率を有することが求められる。一方、薄板ガラスシート(2)の比ヤング率が40を超えると、薄板ガラスシート(2)が撓み難くなるためにガラスロール(1)の形成が困難となる。
【0064】
尚、薄板ガラスシート(2)は、その薄さから可撓性に富むため、通常の方法では幅方向に折り割りをすることが難しく、図6に示す方法にて、幅方向の折り割りを行うことが好ましい。薄板ガラスシート(2)は、幅方向切断カッター(74)により幅方向へスクライブライン(75)が形成された後、そのまま搬送され、図6(a)に示す通り、切断前ローラ(71)をスクライブライン(75)が通過する。その後、図6(b)の通り、切断後ローラ(73)の回転速度とガラスロール(1)の巻取り速度を切断前ローラ(71)の回転速度よりも落とし、且つ、切断ローラ(72)を搬送ラインから図示しない駆動手段によって上昇させることによって、薄板ガラスシート(2)をへの字状に撓ませ、スクライブライン(75)が切断ローラ(72)真上のへの字上の頂点に来たときに、その応力集中によって折り割りを行う。その後、切断ローラ(72)を下降させ、図6(c)に示す通り、切断後端部が切断後ローラ(73)を通過した後に、ガラスロール(1)の巻き取り速度を上げ、巻き取りを完了させると同時にガラスロール(1)と巻芯(6)の交換を行い、その後連続して処理を行う。
【0065】
図7は、本発明に係るガラスロールに外装体を設けた斜視図である。図8は、本発明に係るガラスロールの巻芯に軸を設けた斜視図である。図9は、本発明に係るガラスロールの巻芯にフランジを設けた斜視図である。図10は、本発明に係るガラスロールを縦方向に載置する方法を示す説明図である。
【0066】
液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等のディスプレイ用ガラス基板は、その用途から塵や埃等の付着のない清浄なガラスが求められる。従って、図7に示す通り、円筒型の外装体(8)を設け、内部のガスを清浄なものと置換することによって、清浄な状態を維持することができる。また、クリーンルーム内にて筒体に平板上の蓋体をかしめ締結し、缶詰状に封止することもできる。さらには、ガラスロール(1)をクリーンルーム内にてシュリンクフィルムで包装することで、清浄な状態を維持することもできる。
【0067】
本発明に係るガラスロール(1)を横方向に載置すると、特に薄板ガラスシート(2)が長尺物の場合は重量が大きいため、その自重で載置面側から破損する。従って、ガラスロール(1)に巻き取られた薄板ガラスシート(2)が直接載置面と接触しないようにするため、図8のように巻芯(6)に軸(61)を設け、軸受(62)を有する台座(63)に配置することが好ましい。さらにガラスロール(1)を台座(63)に配置した後、全体を図示しない梱包箱で覆うことが好ましい。梱包箱内部をクリーンエアで置換することによって、清浄な状態を維持することができるからである。ガラスロール(1)単体毎に梱包箱を有する形態でも良いし、複数のガラスロール(1)を1つの梱包箱に同時に梱包する形態でもよい。加えて、梱包箱内に台座(63)を固定し、ガラスロール(1)の軸(61)をクレーン等で吊り下げることによって、梱包箱からガラスロール(1)の出し入れを行う形態にすることにより、輸送の際に台座(63)が梱包箱内に強固に固定されることから、安全性に優れる。
【0068】
図9のように巻芯(6)の両端部にフランジ(64)を設け、薄板ガラスシート(2)が直接載置面と接触しないようにすることが好ましい。ガラスロール(1)に巻き取られた薄板ガラスシート(2)が直接載置面と接触しないようにするためである。図9のフランジの形状は円形であるが、多角形状とすると床面に載置した場合に、ガラスロール(1)が転がるのを防止することができる。フランジ(64)は巻芯(6)に着脱可能としてもよい。この場合、巻き取り、巻き戻しの際には巻芯(6)のみとし、輸送や保管の際には薄板ガラスシート(2)を保護するためフランジ(64)を取り付ける。
【0069】
輸送等の際に薄板ガラスシート(2)が巻芯(6)上をずれた場合に、薄板ガラスシート(2)の端面とフランジが接触して割れる可能性がある。従って、このフランジ(64)を有する形態の場合、薄板ガラスシート(2)を梱包緩衝シート(3)に重ねて巻き取ることによってガラスロール(1)を作製し、梱包緩衝シート(3)の幅が薄板ガラスシート(2)の幅よりも広いことが好ましい。梱包緩衝シート(3)の幅が広いと、薄板ガラスシート(2)が巻芯(6)上をずれたとしても、端面がフランジ(64)に直接接触することがなく、薄板ガラスシート(2)が破損するのを防止することが可能となるからである。尚、フランジ(64)内面についても、緩衝作用のある部材で保護されていることが好ましい。
【0070】
上述の通り、本発明に係るガラスロール(1)を横方向に載置すると、その自重で破損する。従って、ガラスロール(1)に巻き取られた薄板ガラスシート(2)が直接載置面と接触しないようにするため、図10に示す梱包装置(9)を利用して、ガラスロール(1)を縦方向に載置するのが好ましい。梱包装置(9)は土台部(91)と土台部(91)に立設する柱状部(92)とからなっている。図10に示す通り、柱状部(92)がガラスロール(1)の巻芯(6)内へ挿入するように、ガラスロール(1)を土台部(91)上に縦方向に載置する。これにより、輸送の際にガラスロール(1)が揺れたとしても、ガラスロール(1)は柱状部(92)によって固定されるため、ガラスロール同士が衝突することに起因する薄板ガラスシート(2)の破損を防止することができる。
【0071】
柱状部(92)は土台部(91)から着脱可能であることが好ましい。着脱可能とすることにより、ガラスロール(1)の積み込みや積み下ろしを容易にすることが可能となる。柱状部(92)は、ガラスロール(1)を載置した場合に、ガラスロール(1)同士が衝突しない程度の間隔で立設される。輸送中に振動するのを防止するために、ガラスロール(1)間に緩衝材を充填してもよい。土台部(92)には、フォークリフト用の孔が設けられることが好ましい。また、図示しない箱体を設けることにより、より厳重に梱包することが可能となる。
【0072】
図11は、本発明に係るガラスロールの処理方法を示した図である。図12は、本発明に係るガラスロールの他の処理方法について示した図である。図13は、表面にエンボス加工を施した梱包緩衝シートの図である。
【0073】
ガラス基板の洗浄や乾燥等の処理を行う場合に、従来の矩形状のガラス基板では、1枚1枚個別に搬送することしかできなかったが、本発明に係るガラスロール(1)は、ロール・ツー・ロール方式での連続処理を行うことができる。例えば、図11に示す方法により洗浄工程(110)、乾燥工程(111)、除電工程(112)をロール・ツー・ロール方式により連続して処理を行うことができる。薄板ガラスシート(2)は可撓性を有するため、洗浄工程(110)において、洗浄槽に浸漬させることも可能である。本発明に係るガラスロール(1)をロール・ツー・ロール方式の連続処理を行う場合、図12に示す通り、ガラスロール(1)を立てた状態で行うことが好ましい。薄板ガラスシート(2)は樹脂フィルムと比較して、剛性が高いため、シートを立てた状態でロール・ツー・ロール方式を行うことができる。立てた状態で行うと、洗浄工程終了後に水切れがよく、また、搬送ローラ(113)と薄板ガラスシート(2)の表面とが接触しないため、傷の発生をより確実に防止することができる。尚、図12の処理方法において、薄板ガラスシート(2)がばたつく場合は、薄板ガラスシート(2)の上方を適宜図示しない搬送ローラを設けて支持するようにしてもよい。
【0074】
このとき洗浄後の乾燥が不十分なガラスロール(1)を、水分を極端に嫌う工程で使用する場合、ガラス表面に吸着した水分を使用前に除去する必要があるため、当該工程にガラスロール(1)を投入する前にロール状態で十分に乾燥する必要がある。この場合、薄板ガラスシート(2)を梱包緩衝シート(3)に重ねて巻き取ることによってガラスロール(1)を作製し、その梱包緩衝シート(3)として図13に示す通り、エンボス加工を施す等により表面に凹凸が形成された梱包緩衝シート(3)を使用することが好ましい。梱包緩衝シート(3)の全面が薄板ガラスシート(2)と接触しないため通気性に優れ、より乾燥させ易くすることができるからである。また、巻芯(6)についても、孔やスリット、メッシュを設けることによって、通気性に優れる構造とすることが好ましい。加えて、巻芯(6)に中空部を設け、そこにヒータを配置し、巻芯(6)内部から加熱することによって乾燥させることが好ましい。乾燥後は、ガラスロール(1)を例えば図7に示す外装体内に密閉し、内部に乾燥剤等を投入することにより、乾燥状態を維持することができる。また、ガラスロール(1)の端面に、シート状乾燥剤(例えばシリカゲル含有シート等)を設け、防湿性フィルム(金属膜蒸着フィルム等)で覆うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや太陽電池等のデバイスに使用されるガラス基板、及び有機EL照明のカバーガラスに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るガラスロールの斜視図である。
【図2】薄板ガラスシートの製造装置の説明図である。
【図3】本発明に係るガラスロールの製造装置の説明図である。
【図4】巻芯に保持部を設けた形態の図であって、(a)は薄板ガラスシートのみを保持する形態の図、(b)は薄板ガラスシートと梱包緩衝シートとを保持する形態の図である。
【図5】巻芯の外円筒が伸縮する形態の図である。
【図6】本発明に係る薄板ガラスシートの好ましい切断方法を示した図であって、(a)はスクライブラインが切断前ローラを通過した状態の図、(b)は折り割りを行っている図、(c)は切断後端部が切断後ローラを通過した状態の図である。
【図7】本発明に係るガラスロールに外装体を設けた斜視図である。
【図8】本発明に係るガラスロールの巻芯に軸を設けた斜視図である。
【図9】本発明に係るガラスロールの巻芯にフランジを設けた斜視図である
【図10】本発明に係るガラスロールを縦方向に載置する方法を示す説明図である。
【図11】本発明に係るガラスロールの処理方法を示した図である。
【図12】本発明に係るガラスロールの他の処理方法について示した図である。
【図13】表面にエンボス加工を施した梱包緩衝シートの図である。
【符号の説明】
【0077】
1 ガラスロール
2 薄板ガラスシート
3 梱包緩衝シート
4 成形体
5 冷却ローラ
6 巻芯
70 ローラ接触部切断カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向両側端部近傍にスクライブラインが形成され、前記幅方向両端部の不要部分が切断除去された薄板ガラスシートが、前記スクライブラインの形成面が内側となるように巻き取られていることを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記薄板ガラスシートの厚みは、10μm〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記薄板ガラスシートが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスロール。
【請求項4】
前記薄板ガラスシートが、梱包緩衝シートに重ねて巻き取られていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラスロール。
【請求項5】
巻芯によって巻き取られていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラスロール。
【請求項6】
前記巻芯が取り除かれていることを特徴とする請求項5に記載のガラスロール。
【請求項7】
薄板ガラスシートの幅方向両側端部近傍にスクライブラインを形成し、前記幅方向両端部の不要部分を切断除去した後、前記スクライブラインの形成面が内側となるように巻き取ることを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項8】
前記薄板ガラスシートが、オーバーフローダウンドロー法によって成形されていることを特徴とする請求項7に記載のガラスロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−105900(P2010−105900A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308505(P2008−308505)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】