説明

ガラス基板および近接スキャン露光装置並びに近接スキャン露光方法

【課題】複数のパネルのブラックマトリクス層が形成された大型ガラス基板を連続搬送しながら、該パネルのブラックマトリクス層とマスクのパターンとの位置が一致したときマスクパターンを露光転写し、高精度のパネルを効率的に形成することができるガラス基板および近接スキャン露光装置並びに近接スキャン露光方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板W上に所定の方向に隣接配置された各パネル60のブラックマトリクス層BMの各画素61間の距離nLは、当該方向で隣接する画素ピッチLの整数倍となっている。このガラス基板Wの露光は、基板搬送機構10によってガラス基板Wを連続搬送しながら、ガラス基板Wのブラックマトリクス層BMと、マスクMのマスクパターン51との一致に同期させて、照射部13をパルス発光させて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板および近接スキャン露光装置並びに近接スキャン露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネル用カラーフィルタの製造においては、ブラックマトリックス層を形成した基板上に赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層を形成する一連の工程がそれぞれ行われる。これらの着色層を形成するにあたり、特許文献1に記載のスキャン露光装置では、基板に予め形成されたピクセル(画素)を撮像手段で撮像し、撮像されたピクセルが撮像位置から露光開始位置に移動した時、マスクを基板の搬送に同期させて移動させると共に露光光を照射して露光し、ピクセルが露光停止位置に移動した時、露光光の照射を停止させると共にマスクを露光開始位置に戻す動作を繰り返し行って、小さなマスクを使用して露光領域の広い基板を効率的に露光する。
【0003】
また、マスクを利用しないパターン形成方法としては、コンピュータからのデジタル制御によって各画素の駆動(on/off)を行えるようにした2次元表示素子を用いて、ワークを相対的に一方向にスキャンしながら、デジタルデータに基づいてワーク上にパターンを形成する直接描画技術の改良が考案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2006−292955号公報
【特許文献2】特開2004−258294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1枚のガラス基板から複数のカラーフィルタ用パネルを形成する多面取りを行うような場合には、パネル間には、ブラックマトリクス層が形成されていない領域が設けられる。このため、このパネル間の領域より大きなマスクを用いて、基板を連続搬送しながら露光が行われると、隣接するパネルを露光する際にマスクのパターンとブラックマトリクス層のパターンが位置ずれするという問題がある。
【0005】
特許文献1に記載のスキャン露光方法およびスキャン露光装置では、露光開始位置から露光停止位置まで、マスクを基板の搬送と同期させて移動しながら所定領域の露光を行った後、マスクを露光停止位置から露光開始位置に戻す動作を行って露光する。従って、上記多面取りを行うような場合にも、マスクを露光停止位置から露光開始位置に戻す時間が必要となり、タクトタイムを短縮することができない。また、特許文献2に開示されているパターン形成方法では、装置が高価になるとともに、このような多面取りの課題については何ら考慮されていなかった。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、露光転写する際のタクトタイムを短縮して、高精度な複数のパネルを形成することができるガラス基板および近接スキャン露光装置並びに近接スキャン露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 複数のカラーフィルタ用パネルを形成するためのガラス基板であって、
所定の方向に隣接する前記各パネルのブラックマトリクス層の各画素間の距離は、当該方向で隣接する画素ピッチの整数倍であることを特徴とするガラス基板。
(2) 上記(1)に記載のガラス基板に着色層を露光転写するための近接スキャン露光装置であって、
マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、
前記照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、
前記ガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、
搬送される前記ガラス基板のブラックマトリクス層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に前記露光用光が照射されるように、前記ガラス基板の搬送速度と前記光源の発光タイミングとを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする近接スキャン露光装置。
(3) マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、
前記照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、
上記(1)に記載のガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、
を備える近接スキャン露光装置を用いて、前記ガラス基板に着色層を露光転写するための近接スキャン露光方法であって、
前記基板搬送機構によって前記ガラス基板を前記所定の方向に連続的に搬送する搬送ステップと、
前記連続的に搬送される前記ガラス基板のブラックマトリクス層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致したことを検出する検出ステップと、
前記ガラス基板のブラックマトリクス層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に前記照射部から露光用光を照射して露光する露光ステップと、
を備えることを特徴とする近接スキャン露光方法。
(4) 複数のパネルを形成するためのガラス基板であって、
所定の方向に隣接する前記各パネルの下地パターン層の各画素間の距離は、当該方向で隣接する画素ピッチの整数倍であることを特徴とするガラス基板。
(5) (4)に記載のガラス基板に他のパターン層を露光転写するための近接スキャン露光装置であって、
マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、
前記照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、
前記ガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、
連続的に搬送される前記ガラス基板の下地パターン層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に前記露光用光が照射されるように、前記ガラス基板の搬送速度と前記光源の発光タイミングとを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする近接スキャン露光装置。
(6) マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、
前記照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、
(4)に記載のガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、
を備える近接スキャン露光装置を用いて、前記ガラス基板に着色層を露光転写するための近接スキャン露光方法であって、
前記基板搬送機構によって前記ガラス基板を前記所定の方向に連続的に搬送する搬送ステップと、
前記連続的に搬送される前記ガラス基板の下地パターン層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致したことを検出する検出ステップと、
前記ガラス基板の下地パターン層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に前記照射部から露光用光を照射して露光する露光ステップと、
を備えることを特徴とする近接スキャン露光方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガラス基板によれば、所定の方向に隣接するカラーフィルタ用パネルのブラックマトリクス層の各画素間の距離が、当該方向で隣接する画素ピッチの整数倍であるので、1枚のマスクによって、隣接する2枚のパネルの後部および前部に配置された露光領域に同時に、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層のいずれかのパターンをブラックマトリックス層に精度良く位置合わせして露光転写することができる。これによって、ガラス基板を停止させることなく連続搬送したままブラックマトリクス層に合わせて着色層を露光転写することができ、タクトタイムを短縮して、効率的にカラーフィルタ用パネルを形成することができる。
【0009】
また、本発明の近接スキャン露光装置によれば、マスクを保持するマスク保持部と、マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、ガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、搬送されるガラス基板のブラックマトリクス層と、マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に露光用光が照射されるように、ガラス基板の搬送速度と光源の発光タイミングとを制御する制御部と、を備えて、ガラス基板のブラックマトリクス層に着色層を露光転写するようにしたので、上記ガラス基板を用いて、隣接するパネル間の非露光領域を遮光部材で遮光して非露光領域の露光を防止しつつ、これらパネルをガラス基板を連続搬送したまま露光転写することができ、露光転写する際のタクトタイムを向上することができる。
【0010】
また、本発明の近接スキャン露光方法によれば、基板搬送機構によってガラス基板を所定の方向に連続的に搬送する搬送ステップと、連続的に搬送されるガラス基板のブラックマトリクス層と、マスクのマスクパターンの位置とが一致したことを検出する検出ステップと、ガラス基板のブラックマトリクス層と、マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に照射部から露光用光を照射して露光する露光ステップと、を備えるので、小さなマスクによって大きな露光領域を精度よく、且つ効率的に露光することができ、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る近接スキャン露光装置及び露光方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の説明では、下地パターン層であるブラックマトリクス層が形成された露光領域と、下地パターン層が形成されていない非露光領域を有した、複数のカラーフィルタ用パネルを形成するためのガラス基板に、赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層のいずれかを形成する近接スキャン露光装置及び露光方法について説明する。
【0012】
先ず、本実施形態の近接スキャン露光装置1の構成について概略説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態のスキャン露光装置1は、基板(カラーフィルタ基板)Wを浮上させて支持すると共に、所定方向(図1のX方向)に搬送する基板搬送機構10と、複数のマスクMをそれぞれ保持し、所定方向と交差する方向(図1のY方向)に沿って千鳥状に二列配置された複数(図1に示す実施形態において、左右それぞれ6個)のマスク保持部11と、マスク保持部11を駆動するマスク駆動部12と、複数のマスク保持部11の上部にそれぞれ配置されて露光用光を照射する複数の照射部13と、各照射部13と各マスク保持部11との間にそれぞれ配置され、照射部13から出射された露光用光を遮光する複数の遮光部材14(図5参照。)と、スキャン露光装置1の各作動部分の動きを制御する制御部15と、を主に備える。
【0013】
基板搬送機構10は、浮上ユニット16と、基板WのY方向一側(図1において上辺)を保持してX方向に搬送する基板駆動ユニット17とを備える。浮上ユニット16は、複数のフレーム19上にそれぞれ設けられた複数の排気エアパッド20及び吸排気エアパッド21を備え、ポンプ(図示せず)やソレノイドバルブ(図示せず)を介して排気エアパッド20や吸排気エアパッド21からエアを排気或いは、吸排気する。基板駆動ユニット17は、図1に示すように、浮上ユニット16によって浮上、支持された基板Wの一端を保持する吸着パッド22を備え、モータ23、ボールねじ24、及びナット(図示せず)からなるボールねじ機構25によって、ガイドレール26に沿って基板WをX方向に搬送する。なお、図2に示すように、複数のフレーム19は、地面にレベルブロック18を介して設置された装置ベース27上に他のレベルブロック28を介して配置されている。また、基板Wは、ボールねじ機構25の代わりに、リニアサーボアクチュエータによって搬送されてもよい。
【0014】
マスク駆動部12は、フレーム(図示せず)に取り付けられ、マスク保持部11をX方向に沿って駆動するX方向駆動部31と、X方向駆動部31の先端に取り付けられ、マスク保持部11をY方向に沿って駆動するY方向駆動部32と、Y方向駆動部32の先端に取り付けられ、マスク保持部11をθ方向(X,Y方向からなる水平面の法線回り)に回転駆動するθ方向駆動部33と、θ方向駆動部33の先端に取り付けられ、マスク保持部11をZ方向(X,Y方向からなる水平面の鉛直方向)に駆動するZ方向駆動部34と、を有する。これにより、Z方向駆動部34の先端に取り付けられたマスク保持部11は、マスク駆動部12によってX,Y,Z,θ方向に駆動可能である。なお、X,Y,θ,Z方向駆動部31,32,33,34の配置の順序は、適宜変更可能である。
【0015】
また、図1に示すように、千鳥状に二列配置された搬入側及び搬出側マスク保持部11a,11b間には、各マスク保持部11a,11bのマスクMを同時に交換可能なマスクチェンジャ2が配設されている。マスクチェンジャ2により搬送される使用済み或いは未使用のマスクMは、マスクストッカ3,4との間でローダー5により受け渡しが行われる。なお、マスクストッカ3,4とマスクチェンジャ2とで受け渡しが行われる間にマスクプリアライメント機構(図示せず)によってマスクMのプリアライメントが行われる。
【0016】
図2に示すように、マスク保持部11の上部に配置される照射部13は、YAGレーザーや、エキシマレーザーなどのパルス発光可能な光源41と、この光源41から照射された光を集光する凹面鏡42と、この凹面鏡42の焦点近傍に切替え自在に配置された二種類のオプチカルインテグレータ43と、光路の向きを変えるための平面ミラー45及び球面ミラー46と、この平面ミラー45とオプチカルインテグレータ43との間に配置されて照射光路を開閉制御する露光制御用シャッター44と、を備える。
【0017】
このような近接スキャン露光装置1は、浮上ユニット16の排気エアパッド20及び吸排気エアパッド21の空気流によって基板Wを浮上させて保持し、基板Wの一端を基板駆動ユニット17で吸着してX方向に搬送する。そして、マスク保持部11の下方に位置する基板Wに対して、照射部13からの露光用光ELがマスクMを介して照射され、マスクMのパターンを基板Wに塗布されたフォトレジストに転写する。このとき、基板WとマスクMとの位置誤差は、撮像手段35が検出する基板W及びマスクMの位置データに基づいて制御部15から出力される指令信号によって、θ方向駆動部33、及びY方向駆動部32が作動してマスクMの位置を微調整することで補正(位置合わせ)される。
【0018】
図3に示すように、マスクMは、露光用光の照射によりマスクパターン51をガラス基板W上のフォトレジストに露光転写させるものであり、透明基材50の下面50aにマトリクス状のマスクパターン51が形成されている。透明基材50は、レーザー光を高効率で透過する透明なガラス基材であり、例えば石英ガラスからなる。また、マスクパターン51は、露光用光ELを遮光する不透明な、例えばクロミウム(Cr)の薄膜で形成されたパターンであり、パターンの各開口部52は、後述する基板Wに形成されているブラックマトリクス層BMの各画素と同一のサイズに形成されている。従って、マスクパターン51の各開口部52は、搬送方向(X方向)において、ブラックマトリクス層BMの画素ピッチLと同一ピッチPで形成されており、また、搬送方向に直交するY方向においては、ブラックマトリクス層BMの各色の画素の間隔に対応して配置されている。また、マスクMは、その開口露光エリアEAの搬送方向長さが、後述する、隣接するパネル60の各画素61間の搬送方向における最小距離よりも大きいものが使用されている。
【0019】
次に、このように構成された近接スキャン露光装置1の動作について説明する。ここで、使用される基板Wでは、図4に示すように、透明なガラス基板の一面に、多数の画素61を構成するブラックマトリクス層(下地パターン層)からなるパネル(露光領域)60(60A,60B,・・)が非露光領域62を挟んで少なくとも基板Wの搬送方向に沿って並んで形成されている。この非露光領域62は、多面取りされたパネルを分離するための切断部分としても使用される。
【0020】
基板Wの各画素61は、搬送方向に長い略矩形状とされ、隣接する画素61の搬送方向のピッチLは一定である。また、基板Wの搬送方向に隣接するパネル60(60A、60B)のブラックマトリクス層BMの各画素61間の距離は、隣接する画素ピッチLの整数倍(nL)となっている。なお、各画素61の形状は、矩形状に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0021】
このようにブラックマトリクス層BMが形成された基板Wには、さらに上面に所定の色のフォトレジストが塗布されて、基板搬送機構10に載置され、基板駆動ユニット17によって一定の速度で連続搬送される。一方、マスクMは、図3に示すようにマスクパターン51を形成した面を下にしてマスク保持部11に保持され、搬送される基板Wの上面に近接して対向するようにされる。
【0022】
また、制御部15は、搬送されるガラス基板Wのブラックマトリクス層BMと、マスクMのマスクパターンPの位置とが一致する時に露光用光ELが照射されるように、ガラス基板Wの搬送速度と光源40の発光タイミングとを制御している。そして、マスクMと基板Wとの相対位置を撮像手段35を用いて、連続的に搬送されるガラス基板のブラックマトリクス層と、マスクのマスクパターンの位置とが一致したことが検出されると、マスクMの露光開口エリアEAに対向して位置した基板Wの一部が、露光開口エリアEAを透過して照射される照射部13からのパルス発光によって露光される。
【0023】
なお、以下の説明においては、理解を容易にするため、具体的数値を例示して説明する。基板Wの隣接する画素61の搬送方向のピッチはL=500μm、基板Wに塗布されフォトレジストを硬化させるに必要な照射部13からのエネルギ量は、20mJ/cmとする。また、照射部13のパルス発光の発光周波数は50Hz(発光間隔20ms)であり、1回のパルス発光で照射されるエネルギ量は、1mJ/cmである。これは、基板Wのフォトレジストを硬化させるためには、照射部13が20回のパルス発光を要することを意味している。
【0024】
また、マスクMの開口部52の搬送方向のピッチはP=500μm(=L)であり、基板Wの搬送方向に120個の開口部52が形成されている。これにより、マスクMの露光開口エリアEAの搬送方向長さは、60mm(120ピクセル*500μm)に形成される。また、搬送される基板Wが、搬送方向長さ60mmの露光開口エリアEAを通過する間に、20回のパルス発光によって露光されるためには、基板Wが3mm(500μm*6画素)搬送されるごとに1回のパルス露光が行われることが必要となる。更に、照射部13のパルス発光の周波数を50Hz(発光間隔20ms)とすると、発光間隔20msの間に基板Wを3mm搬送するための基板搬送速度は、150mm/secとなる。
【0025】
なお、マスクMの露光開口エリアEAの搬送方向長さ(60mm)は、基板Wの隣接するパネル60,60間に設けられた非露光領域62の長さより大きく設定されている。これは、基板Wを有効利用するためには、非露光領域62ができるだけ小さい方がよく、また、露光作業を効率的に行うためには、1回で露光できる露光開口エリアEAが大きい方が有利であることによる。
【0026】
従って、基板Wを搬送速度150mm/secで連続搬送しながら、照射部13を周波数50Hz(発光間隔20ms)で、即ち基板Wが3mm(6列分の画素)搬送されるごとに、エネルギ量1mJ/cmでパルス発光させる。このパルス発光を20回行うことによって、フォトレジストに20mJ/cmのエネルギ量が照射されて、マスクMのマスクパターン51が基板Wに露光転写される。
【0027】
具体的に、図5(a)に示すように、基板Wの搬送方向前端部がマスクMの露光開口エリアEAの下方に対向し始めると、マスクMの露光開口エリアEAの上方に配置された遮光部材14は、一端部を搬送方向前端部の非露光領域62とオーバーラップさせた状態で、基板Wの搬送速度150mm/secで基板Wの搬送方向前端部の露光領域を開口する。
【0028】
そして、搬送される基板Wの1つ目のパネル60Aの最初の画素61aが、マスクMの露光開口エリアEAの搬送方向後端53と一致してから6列分の画素(3mm)搬送されたとき、撮像手段35が基板Wの画素61とマスクMの開口部52とが一致したことを検出すると、照射部13がエネルギ量1mJ/cmでパルス発光して、マスクMの開口部52を介して基板Wのフォトレジスト(搬送方向における6列分の画素)を露光する。即ち、基板Wの画素61とマスクMの開口部52とが一致したタイミングに同期して照射部13がパルス発光して露光する。
【0029】
次いで、図5(b)に示すように、その後更に基板Wが6列分の画素(3mm)だけX方向に搬送されたとき、遮光部材14も6列の画素分開口し、撮像手段35が基板Wの画素61とマスクMの開口部52との一致を検出すると、照射部13がエネルギ量1mJ/cmで2回目のパルス発光を行う。これにより、パネル60Aの前方から6列分の画素には2mJ/cmのエネルギが照射され、続く搬送方向における6画素には1mJ/cmのエネルギが照射されたことになる。
【0030】
同様に、図5(c),(d)に示すように、基板Wを6列分の画素(3mm)だけX方向に搬送するごとに、撮像手段35が基板Wの画素61とマスクMの開口部52との一致を検出して照射部13がパルス発光して露光する。これにより、図6に示すように、4回のパルス発光が行われたとき、基板Wのパネル60Aには、上流側から4mJ/cm、3mJ/cm、2mJ/cm、1mJ/cmと、搬送方向における6列分の画素ごとに1mJ/cmずつエネルギが照射されたこととなる。
【0031】
このようにして基板Wを6列分の画素(3mm)ずつ搬送しながら、照射部13が20回のパルス発光を行ったとき、パネル60Aの搬送方向の最初の画素61aが、露光開口エリアEAの前端54(図3参照)に達する。そして、続く基板Wの搬送によって、パネル60Aの先端に形成された6列分の画素61は、露光開口エリアEAの下方から外れ、次回のパルス発光によってエネルギが照射されることはない。
【0032】
6列分の画素(3mm)ごとにエネルギが照射されながら基板Wが搬送されると、やがて、図7に示すように、マスクMの露光開口エリアEAが隣接するパネル60A,60Bの両方にかかり、両パネル60A,60Bの画素61を同時に露光するタイミングが発生する。このとき、基板Wの搬送方向に隣接するパネル60A,60Bのブラックマトリクス層BMの各画素61間の距離は、隣接する画素ピッチLの整数倍(nL)となっているので、パネル60A,60Bのいずれか一方の画素61が、マスクMの開口部52と一致していれば、両パネル60A,60Bの他方の各画素61もマスクMの開口部52と一致する。
【0033】
従って、図7に示すように、マスクMの露光開口エリアEAが隣接するパネル60A,60Bにまたがって基板Wと対向する場合も、両パネル60A,60B間の非露光領域62の上方に遮光部材14を配置して、通常のエネルギ照射と同様に照射部13から照射して、両パネル60A,60Bの各画素61を同時に、且つマスクMの開口部52とのずれのない状態で露光させることができる。
【0034】
なお、遮光部材14は、隣接するパネル60A,60B間距離に合わせて設けられた1枚の遮光部材14を用いてもよいが、複数の遮光部材14によって幅調整を行っても良く、例えば、互いに幅の異なる複数の遮光部材14を選択的に使用して、基板Wのパネル60A,60B間距離に合わせて調整するようにしてもよい。
【0035】
上記説明したように、本実施形態に用いられるガラス基板Wは、所定の方向(X方向)に隣接するカラーフィルタ用パネル60のブラックマトリクス層BMの各画素61間の距離が、当該方向で隣接する画素ピッチLの整数倍(nL)であるので、1枚のマスクMによって、隣接するパネル60Aの後部およびパネル60Bの前部に配置された各露光領域に同時に、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層のいずれかのパターンをブラックマトリックス層BMに精度良く位置合わせして露光転写することができる。これによって、パネル間の非露光領域の幅によってマスクMのサイズを変えずに、また、ガラス基板Wを停止させることなく連続搬送したままブラックマトリクス層BMに合わせて着色層を露光転写することができ、タクトタイムを短縮して、効率的にカラーフィルタ用パネルを形成することができる。
【0036】
また、本実施形態の近接スキャン露光装置1によれば、マスクMを保持するマスク保持部11と、マスク保持部11の上方に配置され、パルス発光可能な光源41を備えて、露光用光ELを照射する照射部13と、照射部13から出射された露光用光ELを遮光する遮光部材14と、ガラス基板Wを保持して所定の方向(X方向)に搬送する基板搬送機構10と、搬送されるガラス基板Wのブラックマトリクス層BMと、マスクMのマスクパターンPの位置とが一致する時に露光用光ELが照射されるように、ガラス基板Wの搬送速度と光源41の発光タイミングとを制御する制御部15と、を備えて、ガラス基板Wのブラックマトリクス層BMに着色層を露光転写するようにしたので、ガラス基板Wを用いて、隣接するパネル60間の非露光領域を遮光部材14で遮光して非露光領域の露光を防止しつつ、これらパネル60をガラス基板Wを連続搬送したまま露光転写することができ、露光転写する際のタクトタイムを向上することができる。
【0037】
また、本実施形態の近接スキャン露光方法によれば、基板搬送機構10によってガラス基板を所定の方向に連続的に搬送する搬送ステップと、連続的に搬送されるガラス基板Wのブラックマトリクス層BMと、マスクMのマスクパターン51の位置とが一致したことを検出する検出ステップと、ガラス基板Wのブラックマトリクス層BMと、マスクMのマスクパターン51の位置とが一致する時に照射部13から露光用光を照射して露光する露光ステップと、を備えるので、小さなマスクMによって大きな露光領域を精度よく、且つ効率的に露光することができ、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【0038】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記実施形態においては、基板搬送機構10は、浮上ユニット16と基板駆動ユニット17によって基板Wを浮上して保持しながら搬送する場合について述べたが、これに限らず、基板Wを上面に載置しながら保持及び搬送するものであってもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、ガラス基板Wに着色層を形成する場合について述べたが、これに限定されるものでなく、PS(フォトスペーサ)、VA(バーティカル アライメント)、即ち、液晶分子の配向突起を露光転写する場合にも適用できる。また、アレイ基板の各種工程を露光転写する場合にも適用することができ、具体的には、下地パターン層となるソース電極の上にパターン層となるコンタクトホールを形成したり、下地パターン層となるパッシベーション層の上にパターン層となる透明画素電極を形成したりする際に、上記と同様の近接スキャン露光装置及び近接スキャン露光方法によって形成される。従って、複数のアレイ基板を形成するためのガラス基板の場合には、所定の方向に隣接する各パネルの下地パターン層、即ち、ソース電極やパッシベーション層の各画素間の距離は、当該方向で隣接する画素ピッチの整数倍となるように形成される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態である近接スキャン露光装置の平面図である。
【図2】図1における近接スキャン露光装置の正面図である。
【図3】マスクのマスクパターンとガラス基板の画素との位置関係を示す断面図である。
【図4】(a)はガラス基板の平面図、(b)は図4(a)における円VIで囲まれた部分の拡大平面図、(c)は縦断面図である。
【図5】(a)〜(d)はガラス基板のパネルが6画素ずつ、順次露光される状態を順を追って示す断面図である。
【図6】図5(d)に対応するガラス基板の平面図である。
【図7】(a)は2つのパネルが1枚のマスクによって同時に露光される状態を示す平面図であり、(b)は同断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 近接スキャン露光装置
10 基板搬送機構
11 マスク保持部
13 照射部
14 遮光部材
51 マスクパターン
60(60A,60B) パネル(カラーフィルタ用パネル)
61 画素
BM ブラックマトリクス層
EL 露光用光
L 画素ピッチ
M マスク
nL 隣接するパネルの画素間の距離
W ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカラーフィルタ用パネルを形成するためのガラス基板であって、
所定の方向に隣接する前記各パネルのブラックマトリクス層の各画素間の距離は、当該方向で隣接する画素ピッチの整数倍であることを特徴とするガラス基板。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス基板に着色層を露光転写するための近接スキャン露光装置であって、
マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、
前記照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、
前記ガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、
連続的に搬送される前記ガラス基板のブラックマトリクス層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に前記露光用光が照射されるように、前記ガラス基板の搬送速度と前記光源の発光タイミングとを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする近接スキャン露光装置。
【請求項3】
マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、
前記照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、
請求項1に記載のガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、
を備える近接スキャン露光装置を用いて、前記ガラス基板に着色層を露光転写するための近接スキャン露光方法であって、
前記基板搬送機構によって前記ガラス基板を前記所定の方向に連続的に搬送する搬送ステップと、
前記連続的に搬送される前記ガラス基板のブラックマトリクス層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致したことを検出する検出ステップと、
前記ガラス基板のブラックマトリクス層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に前記照射部から露光用光を照射して露光する露光ステップと、
を備えることを特徴とする近接スキャン露光方法。
【請求項4】
複数のパネルを形成するためのガラス基板であって、
所定の方向に隣接する前記各パネルの下地パターン層の各画素間の距離は、当該方向で隣接する画素ピッチの整数倍であることを特徴とするガラス基板。
【請求項5】
請求項4に記載のガラス基板に他のパターン層を露光転写するための近接スキャン露光装置であって、
マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、
前記照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、
前記ガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、
連続的に搬送される前記ガラス基板の下地パターン層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に前記露光用光が照射されるように、前記ガラス基板の搬送速度と前記光源の発光タイミングとを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする近接スキャン露光装置。
【請求項6】
マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスク保持部の上方に配置され、パルス発光可能な光源を備えて、露光用光を照射する照射部と、
前記照射部から出射された露光用光を遮光する遮光部材と、
請求項4に記載のガラス基板を保持して前記所定の方向に搬送する基板搬送機構と、
を備える近接スキャン露光装置を用いて、前記ガラス基板に着色層を露光転写するための近接スキャン露光方法であって、
前記基板搬送機構によって前記ガラス基板を前記所定の方向に連続的に搬送する搬送ステップと、
前記連続的に搬送される前記ガラス基板の下地パターン層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致したことを検出する検出ステップと、
前記ガラス基板の下地パターン層と、前記マスクのマスクパターンの位置とが一致する時に前記照射部から露光用光を照射して露光する露光ステップと、
を備えることを特徴とする近接スキャン露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−210598(P2009−210598A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50344(P2008−50344)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】