説明

ガラス樹脂接合材料及びその製造方法

【課題】耐候性等のガラス特有の性質を有し、ガラス材料に比べて軽量化が可能で、接合部の強度に優れたガラス樹脂接合材料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂基材2とその表面に形成されたガラス層3とを有するガラス樹脂接合材料及びその製造方法である。樹脂基材2とガラス層3とは溶着している。ガラス樹脂接合材料の製造にあたっては、樹脂−ガラス接合工程と硬化工程とを行う。樹脂−ガラス接合工程においては、ガラス層3を構成するガラス材料のガラス転移温度以上、かつ樹脂基材2を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度でガラス材料と樹脂材料とを接合させる。硬化工程においては、ガラス材料と樹脂材料とを硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基材とガラス層とを接合してなるガラス樹脂接合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス材料は、透明性、耐候性、耐薬品性、撥水性等に優れるため、例えば、自動車のフロント、サイドガラス、リアガラス等の他、各種ドア、窓ガラス、食器、実験器具、医療器具等の様々な用途に適用されており、その用途はますます増大している。例えば、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス等の自動車用窓ガラスにおいては、ガラスを接着剤で貼り合わせてなる合わせガラスが用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、接着剤で貼り合わせたガラスは接合部が劣化し易く、ガラスが剥がれてしまうおそれがある。
また、ガラス材料には、上述の優れた特性を有する反面、例えば樹脂材料等に比べると重量が大きくなるという問題点がある。特に、軽量化が要求される自動車用窓ガラスや、近年需要が増大している携帯電話やノートパソコン等の携帯用電子機器の液晶表示部等においては、ガラスに代わる軽量な材料が求められている。そこで、近年、ガラス材料を透明の樹脂材料で置換しようとする試みがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−239944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂材料には、ガラス材料に比べて耐候性等の特性が低いという問題がある。特に、自動車用窓ガラス等の用途においては、高い耐候性が要求される。したがって、特定の用途においては、未だガラス材料を樹脂材料に置き換えることは困難になっているのが現状である。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、耐候性等のガラス特有の性質を有し、ガラス材料に比べて軽量化が可能で、接合部の強度に優れたガラス樹脂接合材料及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、樹脂基材と、樹脂基材の表面に形成されたガラス層とを有するガラス樹脂接合材料であって、
樹脂基材とガラス層とは界面で互いに溶着していることを特徴とするガラス樹脂接合材料にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、樹脂基材と、樹脂基材の表面に形成されたガラス層とを有するガラス樹脂接合材料の製造方法であって、
ガラス層を構成するガラス材料のガラス転移温度以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度でガラス材料と樹脂材料とを接合させる樹脂−ガラス接合工程と、
樹脂−ガラス接合工程後に、降温によりガラス材料と樹脂材料とを硬化させてガラス樹脂接合材料を得る硬化工程とを有することを特徴とするガラス樹脂接合材料の製造方法にある(請求項5)。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明のガラス樹脂接合材料は、樹脂基材と、樹脂基材の表面に形成されたガラス層とを有する。そのため、ガラス樹脂接合材料は、例えば同体積のガラスのみからなるガラス製品に比べて軽量化を図ることが可能になる。また、ガラス樹脂接合材料においては、ガラス層の厚みを調整することができる。ガラス層の厚みを小さくし、樹脂基材の厚みを大きくすることにより、比重の大きなガラス層を相対的に小さくすることができるため、より大幅に軽量化を図ることができる。
また、ガラス樹脂接合材料において、ガラス層は、ガラス特有の耐候性、耐薬品性、撥水性等の性質を示すことができる。
【0010】
また、ガラス樹脂接合材料において、ガラス層と樹脂基材とは溶着している。即ち、例えば接着剤を用いた単なる接着ではなく、ガラス層のガラス成分と樹脂基材の樹脂成分とが接合部において溶融し硬化してなる。そのため、ガラス層と樹脂基材とは高い強度で接合している。そのため、経年劣化等により接合部でガラス層と樹脂基材とが剥がれたりすることを抑制することができる。
【0011】
次に、第2の発明の製造方法においては、樹脂−ガラス接合工程と硬化工程とを行うことにより、樹脂基材と、樹脂基材の表面に形成されたガラス層とを有するガラス樹脂接合材料を製造する。
樹脂−ガラス接合工程においては、ガラス層を構成するガラス材料のガラス転移温度以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度でガラス材料と樹脂材料とを接合させる。そのため、ガラス材料と樹脂材料との界面においては、溶融状態にあるガラス材料と樹脂材料とが入り交じった状態にさせることができる。
【0012】
そして、硬化工程においては、降温によりガラス材料と樹脂材料とを硬化させる。硬化時には、ガラス材料と樹脂材料との接合部において、ガラス材料と樹脂材料とが入り交じった状態で硬化させることができる。そのため、樹脂材料が硬化してなる樹脂基材とガラス材料が硬化してなるガラス層とが接合部で溶着してなるガラス樹脂接合材料を得ることができる。
このようにして得られたガラス樹脂接合材料は、上述の第1の発明と同様の作用効果を発揮することができる。
【0013】
このように、本発明によれば、耐候性等のガラス特有の性質を有し、ガラス材料に比べて軽量化が可能で、接合部の強度に優れたガラス樹脂接合材料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1にかかる、ガラス樹脂接合材料の断面構造を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、ガラス樹脂接合材料におけるガラス層(低融点ガラス層)と樹脂基材との接合部の拡大断面を示す説明図。
【図3】実施例1にかかる、ガラス樹脂接合材料における高融点ガラス層と低融点ガラス層との接合部の拡大断面を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、成形型内に溶融状態の高融点ガラス材料を配置した様子を示す説明図(a)、成形型内において溶融状態の高融点ガラス材料上に溶融状態の低融点ガラス材料を配置した様子を示す説明図(b)、成形型内において降温により硬化した高融点ガラス層上に溶融状態の低融点ガラス材料が配置された様子を示す説明図(c)、成形型内において、硬化した高融点ガラス上に配置された溶融状態の低融点ガラス材料上に、さらに溶融状態の樹脂材料を配置した様子を示す説明図(d)、成形型内において、硬化した高融点ガラス上に配置された溶融状態の低融点ガラス材料及びその上に配置された溶融状態の樹脂材料を硬化させた様子を示す説明図(e)。
【図5】実施例2にかかる、成形型内に溶融状態の高融点ガラス材料を配置した様子を示す説明図(a)、成形型内において溶融状態の高融点ガラス材料上に溶融状態の低融点ガラス材料を配置した様子を示す説明図(b)、成形型内において降温により硬化した高融点ガラス層上に溶融状態の低融点ガラス材料が配置された様子を示す説明図(c)、成形型内において、硬化した高融点ガラス上に配置された溶融状態の低融点ガラス材料上に、さらに粒子状の複数の樹脂材料を埋設させた様子を示す説明図(d)、成形型内において、粒子状の複数の樹脂材料を埋設させた溶融状態の低融点ガラス材料上にさらに溶融状態の樹脂材料を配置した様子を示す説明図(e)、成形型内において、硬化した高融点ガラス上に配置された溶融状態の低融点ガラス材料及びその上に配置された溶融状態の樹脂材料を硬化させた様子を示す説明図(f)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、ガラス樹脂接合材料は、樹脂基材とガラス層とを有する。
樹脂基材とガラス層との間には、樹脂基材の樹脂成分とガラス層のガラス成分とが混ざり合った樹脂−ガラス混在領域が形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、樹脂−ガラス混在領域により、樹脂基材とガラス層との接合をより強固にすることができる。
【0016】
ガラス層は、例えば樹脂基材の厚みに対して1/10以下の厚みで形成することができる。ガラス層の厚みが大きくなりすぎると、軽量化を十分に図ることが困難になるおそれがある。より好ましくは1/20以下が好ましい。
【0017】
ガラス層は、融点が異なる低融点ガラス層と高融点ガラス層とが溶着してなり、ガラス層は、低融点ガラス層側で樹脂基材と溶着していることが好ましい(請求項3)。
この場合には、低融点ガラス層と樹脂基材とを溶着させることができると共に、高融点ガラス層のガラス材料を適宜選択することにより、耐候性などの特定の性能が特に優れた高融点ガラス層を形成することが可能になる。即ち、低融点ガラス層を樹脂基材との溶着用として形成させることができる。低融点ガラス層のガラス成分としては、そのガラス転移温度が樹脂基材を構成する樹脂材料の5%重量減少温度以下のものを採用することができる。この場合には、低融点ガラス層と樹脂基材とを溶着させ易くなり、樹脂−ガラス混在領域を形成し易くなる。
【0018】
低融点ガラス層と高融点ガラス層は、融点が200℃以上異なることが好ましい。
この場合には、ガラス樹脂接合材料の作製時に低融点ガラス層と高融点ガラス層とを両者の融点の違いに基づいて降温により順次硬化させて形成することができる。したがって、ガラス樹脂接合材料の製造が容易になる。
【0019】
また、ガラス樹脂接合材料において、樹脂基材及びガラス層は透明であることが好ましい。この場合には、ガラス樹脂接合材料の全体を透明にすることができる。そのため、例えば各種窓ガラス、電子機器の表示パネル等のように可視光を透過して透明性が要求される用途にガラス樹脂接合材料を適用することができる。
【0020】
ガラス樹脂接合材料においては、板状の樹脂基材の表面に、シート状のガラス層が形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、樹脂基材の表面にガラス層を積層形成することにより、ガラス樹脂接合材料を簡単に形成することができる。また、ガラス樹脂接合材料が板状になるため、ガラス樹脂接合材料を板状のガラス製品の用途に適用することができる。具体的には、例えば自動車のフロント、サイドガラス、リアガラス等の自動車用窓ガラスの他、各種ドア、窓ガラス、携帯電話及びノートパソコン等の電子機器の液晶表示部等に適用することができる。
【0021】
次に、ガラス樹脂接合材料は、樹脂−ガラス接合工程と硬化工程とを行うことにより製造することができる。
樹脂−ガラス接合工程においては、ガラス層を構成するガラス材料のガラス転移温度以上かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度でガラス材料と樹脂材料とを接合させる。
【0022】
具体的には、例えば成形型内において、ガラス層を構成するガラス材料のガラス転移温度以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度にガラス材料を加熱した状態で、ガラス材料上に樹脂材料を配置させることができる。また、成形型内において、十分に高温で加熱して溶融状態にあるガラス材料を、ガラス材料のガラス転移温度以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度にまで降温させた後、ガラス材料上に樹脂材料を配置させることもできる。
【0023】
ガラス材料と樹脂材料との接合温度がガラス材料のガラス転移温度未満の場合又は樹脂材料の軟化点未満の場合には、樹脂基材とガラス層とを溶着させることができなくなるおそれがある。その結果、ガラス樹脂接合材料における樹脂基材とガラス層との接合部分の強度が低下するおそれがある。一方、ガラス材料と樹脂材料との接合温度が樹脂材料の5%重量減少温度を超える場合には、ガラス材料と樹脂材料との接合時に樹脂材料が熱分解し、樹脂材料に非可逆的な変質が起こってしまうおそれがある。
【0024】
樹脂−ガラス接合工程においては、ガラス材料のガラス転移温度以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度に加熱したガラス材料の表面に樹脂材料の少なくとも一部を食い込ませることが好ましい(請求項6)。
この場合には、樹脂材料とガラス材料との界面で、樹脂材料とガラス材料とが混ざり合い易くなる。そのため、樹脂基材とガラス層とが十分に溶着し、接合強度をより向上させることができる。また、この場合には、樹脂−ガラス混在領域を形成させやすくなる。
【0025】
具体的には、例えばショットブラスト等により、ガラス材料の表面に粒子又はペレット状等の樹脂材料を打ち込むことにより、ガラス材料の表面に樹脂材料を食い込ませることができる。また、樹脂−ガラス接合工程においては、樹脂基材を形成するために用いる樹脂材料の一部をガラス材料の表面に食い込ませ、残部を樹脂材料が食い込んだガラス材料の表面に配置させることができる。これにより、ガラス表面に食い込んだ樹脂材料とガラス材料の表面にさらに配置した樹脂材料とが溶融した状態で混合され、硬化後に樹脂基材を形成することができる。
【0026】
次に、硬化工程においては、降温によりガラス材料と樹脂材料とを硬化させてガラス樹脂接合材料を得る。ガラス材料を硬化させることによりガラス層を形成させ、樹脂材料を硬化させることにより樹脂基材を形成させることができる。硬化工程においては、例えば成形型内でガラス材料と樹脂材料とを室温まで降温させ、所望の形状のガラス樹脂接合材料を得ることができる。
【0027】
また、樹脂−ガラス接合工程より先に、互いに融点が異なる低融点ガラス材料と高融点ガラス材料とを接合させるガラス接合工程を行うことができる(請求項7)。
この場合には、ガラス層として、低融点ガラス層と高融点ガラス層を形成することができる。また、高融点ガラス材料として、例えばUV吸収剤等が添加された耐候性に優れたガラス材料を採用することにより、耐候性等の特定の特性に特に優れたガラス層を形成することができる。低融点ガラス及び高融点ガラスとしては、互いの融点が例えば200℃以上異なるガラス材料を用いることができる。
【0028】
ガラス接合工程を行う場合には、ガラス接合工程、樹脂−ガラス接合工程、及び硬化工程を例えば次のようにして行うことができる。
具体的には、例えば成形型内で、高融点ガラス材料を高融点ガラス材料のガラス転移温度以上に加熱して溶融状態にし、溶融状態の高融点ガラス材料上に低融点ガラス材料を配置させる(ガラス接合工程)。高融点ガラス材料及び低融点ガラス材料は、例えば射出成形機などにより成形型内に供給することができる。ガラス接合工程において、高融点ガラス材料のガラス転移温度以上においては低融点ガラス材料も溶融するため、高融点ガラス材料と低融点ガラス材料との界面においては互いのガラス成分が入り交じった状態になる。
【0029】
次いで、成形型内の高融点ガラス材料と低融点ガラス材料とを、低融点ガラス材料のガラス転移温度以上かつ樹脂材料の軟化点以上かつ樹脂材料の5%重量減少温度以下まで降温させ、低融点ガラス材料上に樹脂材料を配置する(樹脂−ガラス接合工程)。このとき、樹脂材料は、例えば樹脂材料の軟化点以上かつ5%重量減少温度以下に加熱した状態で低融点ガラス上に射出することができる。また、上述のごとくショットブラストにより、例えば粒子状又はペレット状の樹脂材料を低融点ガラス材料の表面に食い込ませ、さらに溶融状態の樹脂材料を射出することもできる。樹脂−ガラス接合工程においては、低融点ガラス材料と樹脂材料との界面においては低融点ガラス成分と樹脂成分とが入り交じった状態になる。
【0030】
次に、降温によりガラス材料と樹脂材料とを硬化させる(硬化工程)。これにより、高融点ガラス層と、低融点ガラス層と、樹脂基材とかなるガラス樹脂接合材料を形成することができる。降温により、高融点ガラス層と低融点ガラス層とが溶着し、両者の界面には、高融点ガラス成分と低融点ガラス成分が入り交じったガラス混在領域を形成させることができる。また、低融点ガラス層と樹脂基材とが溶着し、両者の界面には低融点ガラス成分と樹脂成分とが入り交じった樹脂―ガラス混在領域を形成させることができる。
【0031】
また、樹脂材料としては、透明の樹脂を用いることができる。
この場合には、ガラス樹脂接合材料を従来の各種ガラス製品に適用することが可能になる。具体的には、例えば自動車のフロント、サイドガラス、リアガラス等の自動車用窓ガラスの他、各種ドア、窓ガラス、食器、実験器具、医療器具、携帯電話及びノートパソコン等の電子機器の液晶表示部等に適用することができる。
具体的には、樹脂材料としては、例えばポリカーボネート樹脂又アクリル樹脂等を用いることができる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂がよい。
【0032】
低融点ガラス材料は、高融点ガラス材料よりも比重の小さいものを用いることが好ましい(請求項8)。
低融点ガラス材料の比重が高融点ガラス材料よりも大きくなると、上述のごとく例えば成形型内で溶融状態の高融点ガラス材料上に低融点ガラス材料を配置して接合させる際に、自重により低融点ガラス材料が高融点ガラス材料内に沈み込んでしまうおそれがある。そのため、例えば耐候性等の特定の特性を付与するために形成する高融点ガラス材料の特性が損なわれてしまうおそれがあると共に、低融点ガラス材料と樹脂材料とを溶着させることが困難になるおそれがある。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
次に、本発明の実施例にかかるガラス樹脂接合材料及びその製造方法について説明する。
図1〜図3に示すごとく、本例のガラス樹脂接合材料1は、樹脂基材2と、その表面に形成されたガラス層3とを有する。ガラス樹脂接合材料1において、樹脂基材2とガラス層3とは互いに溶着している。
以下、本例のガラス樹脂接合材料について、詳説する。
【0034】
図1〜図3に示すごとく、本例のガラス樹脂接合材料1において、ガラス層3は、互いに融点が異なる低融点ガラス層31と高融点ガラス層32とが溶着してなる。図3に示すごとく、低融点ガラス層31と高融点ガラス層32との界面には、高融点ガラス成分と低融点ガラス成分が入り交じったガラス混在領域100が形成されていると考えられる。
【0035】
また、図1及び図2に示すごとく、ガラス層3は、低融点ガラス層31側で樹脂基材2と溶着している。図2に示すごとく、樹脂基材2と低融点ガラス層31との間には、樹脂基材2の樹脂成分(ポリカーボネート樹脂)と低融点ガラス層31のガラス成分とが混ざり合った樹脂−ガラス混在領域10が形成されていると考えられる。
【0036】
ガラス樹脂接合材料1においては、板状の厚み10mmの樹脂基材2上に、厚み10μmの低融点ガラス層31及び厚み50μmの高融点ガラス層32が順次積層形成されている(図1参照)。高融点ガラス層32は、UV吸収剤が配合されており、耐候性に優れたガラス材料からなる。
【0037】
本例のガラス樹脂接合材料は、樹脂−ガラス接合工程と硬化工程とを行うことにより製造する。
樹脂−ガラス接合工程においては、ガラス層を構成するガラス材料のガラス転移温度以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度でガラス材料と樹脂材料とを接合させる。また、硬化工程においては、降温によりガラス材料と樹脂材料とを硬化させてガラス樹脂接合材料を得る。
以下、本例の製造方法について詳説する。
【0038】
まず、ガラス材料として、高融点ガラス材料と低融点ガラス材料の2種類のガラス材料を準備した。高融点ガラス材料としては、UV吸収剤が添加された無鉛ガラスを採用した。かかる高融点ガラス材料及び低融点ガラス材料としては、市販のものを採用した。
【0039】
次に、図4(a)に示すごとく、溶融状態にある高融点ガラス材料320を成形型4内に射出成形機を用いて射出し、高融点ガラス材料320のガラス転移温度以上の温度で保持した。次いで、図4(b)に示すごとく、成形型4内の高融点ガラス材料320上に、溶融状態にある低融点ガラス材料310を射出した(ガラス接合工程)。これにより、高融点ガラス材料320と低融点ガラス材料310との界面を互いのガラス成分が入り交じった状態にすることができる。
【0040】
次に、樹脂材料として、透明のポリカーボネート樹脂を準備した。かかる樹脂材料としては、市販のものを採用した。
そして、成形型4内の高融点ガラス材料320と低融点ガラス材料310とを、低融点ガラスのガラス転移温度以上かつ樹脂材料の軟化点以上かつ樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度まで降温させた。この降温により、高融点ガラス材料320は、図4(c)に示すごとく硬化し、高融点ガラス層32を形成する。一方、低融点ガラス材料310は、依然としてガラス転移温度以上にあるため溶融状態にある。次いで、図4(d)に示すごとく、低融点ガラス材料310上に、射出成形機により樹脂材料20を射出した。これにより、低融点ガラス材料310と樹脂材料20との界面を、低融点ガラス成分と樹脂成分とが入り交じった状態にすることができる。
【0041】
次に、成形型4内を室温まで降温させ、低融点ガラス材料310及び樹脂材料20を硬化させ、図4(e)に示すごとく、低融点ガラス層31及び樹脂基材2を形成した。
このようにして、図4(e)及び図1に示すごとく、樹脂基材2とその表面に形成されたガラス層3(低融点ガラス層31及び高融点ガラス層32)とを有するガラス樹脂接合材料1を得た。
【0042】
図1に示すごとく、本例のガラス樹脂接合材料1は、樹脂基材2と、その表面に形成されたガラス層3とを有する。そのため、ガラス樹脂接合材料1は、例えば同体積のガラスのみからなるガラス製品に比べて軽量化を図ることが可能になる。また、ガラス樹脂接合材料1においては、ガラス層3の厚みを調整することができる。ガラス層3の厚みを小さくし、樹脂基材2の厚みを大きくすることにより、比重の大きなガラス層3を相対的に小さくすることができるため、より大幅に軽量化を図ることができる。また、ガラス樹脂接合材料1において、ガラス層3は、ガラス特有の耐候性、耐薬品性、撥水性等の性質を示すことができる。
【0043】
また、ガラス樹脂接合材料1において、ガラス層3と樹脂基材2とは溶着している。即ち、例えば接着剤を用いた単なる接着ではなく、ガラス層3のガラス成分と樹脂基材2の樹脂成分とが接合部において溶融し硬化してなる。そのため、ガラス層3と樹脂基材2とは高い強度で接合している。そのため、経年劣化等により接合部でガラス層3と樹脂基材2とが剥がれてしまうことを抑制することができる。
【0044】
また、本例において、ガラス層3は、樹脂基材2の厚みに対して1/20以下の厚みで形成されている。そのため、軽量化を十分に図ることができる。
【0045】
また、ガラス層3は、互いの融点が異なる低融点ガラス層31と高融点ガラス層32とが溶着してなり、ガラス層3は、低融点ガラス層31側で樹脂基材2と溶着している。
樹脂基材2を低融点ガラス層31と溶着させることができるため、ガラス層3を樹脂基材2に溶着させやすくなる。また、高融点ガラス層32のガラス材料を適宜選択することにより、耐候性などの特定の性能が特に優れた高融点ガラス層32を形成することが可能になる。
また、低融点ガラス層31のガラス成分は、そのガラス転移温度が樹脂基材2を構成する樹脂材料の5%重量減少温度以下になっている。そのため、低融点ガラス層31と樹脂基材2とを溶着させ易くなる(図2参照)。
【0046】
また、本例においては、低融点ガラス層31と高融点ガラス層32は、互いの融点が200℃以上異なる。そのため、ガラス樹脂接合材料1の作製時に樹脂基材2と低融点ガラス層31と高融点ガラス層32とを融点の違いに基づいて順次硬化させて形成することができ、ガラス樹脂接合材料1の製造が容易になる。
【0047】
また、図1に示すごとく、本例のガラス樹脂接合材料1において、樹脂基材2及びガラス層3は透明である。そのため、ガラス樹脂接合材料1の全体を透明にすることができる。それ故、ガラス樹脂接合材料1は、例えば各種窓ガラス、電子機器の表示パネル等のように可視光を透過して透明性が要求される用途に好適である。
また、ガラス樹脂接合材料1においては、板状の樹脂基材2の表面に、シート状のガラス層3が形成されている。そのため、樹脂基材2の表面にガラス層3を積層形成することにより、ガラス樹脂接合材料1を簡単に形成することができる。また、全体として板状になるため、ガラス樹脂接合材料1は、各種窓ガラス、電子機器の表示パネル等に好適になる。
【0048】
次に、本例のガラス樹脂接合材料は、樹脂−ガラス接合工程と硬化工程とを少なくとも行うことにより製造している。
樹脂−ガラス接合工程においては、ガラス層を構成するガラス材料(低融点ガラス材料310)のガラス転移温度以上、かつ樹脂基材を構成する樹脂材料20の軟化点以上、かつ樹脂材料20の5%重量減少温度以下の温度でガラス材料(低融点ガラス材料310)と樹脂材料20とを接合させている(図4(d)参照)。そのため、ガラス材料と樹脂材料との界面、具体的には低融点ガラス材料310と樹脂材料20との界面を、溶融状態にあるガラス材料(低融点ガラス材料310)と樹脂材料20とが入り交じった状態にすることができる。
【0049】
そして、硬化工程においては、図4(d)及び(e)に示すごとく、降温によりガラス材料(低融点ガラス材料310)と樹脂材料20とを硬化させる。硬化時には、ガラス材料(低融点ガラス材料310)と樹脂材料20との接合部において、ガラス材料(低融点ガラス材料310)と樹脂材料20とが入り交じった状態で硬化させることができる。そのため、樹脂材料20が硬化してなる樹脂基材2とガラス材料(低融点ガラス材料310)が硬化してなる低融点ガラス層31とが接合部で溶着してなるガラス樹脂接合材料1を得ることができる。
【0050】
また、本例においては、樹脂−ガラス接合工程より先に、図4(a)〜(c)に示すごとく、融点が異なる2種類の低融点ガラス材料310と高融点ガラス材料320とを接合させるガラス接合工程を行っている。そのため、ガラス層3として、低融点ガラス層31と高融点ガラス層32を形成することができる(図1参照)。また、本例においては、高融点ガラス材料320として、UV吸収剤等が添加された耐候性に優れたガラス材料を採用しているため、耐候性等の特定の特性に特に優れたガラス層3を形成することができる。
【0051】
本例においては、ガラス接合工程において、図4(a)〜(c)に示すごとく、成形型4内で、高融点ガラス材料320をそのガラス転移温度以上に加熱して溶融状態にし、溶融状態の高融点ガラス材料320上に低融点ガラス材料310を配置させる。高融点ガラス材料320のガラス転移温度以上においては、低融点ガラス材料310も溶融するため、高融点ガラス材料320と低融点ガラス材料310との界面においては互いのガラス成分が入り交じった状態になる。そのため、硬化後のガラス樹脂接合材料1においては、低融点ガラス層31と高融点ガラス層32との接合が強固になる。
【0052】
また、樹脂−ガラス接合工程においては、図4(b)〜(e)に示すごとく、成形型4内の高融点ガラス材料320と低融点ガラス材料310とを、低融点ガラスのガラス転移温度以上かつ樹脂材料20の軟化点以上かつ樹脂材料20の5%重量減少温度以下まで降温させ、低融点ガラス材料310上に樹脂材料20を配置する。そのため、低融点ガラス材料310と樹脂材料20との界面においては低融点ガラス成分と樹脂成分とが入り交じった状態になる。それ故、硬化後のガラス樹脂接合材料1においては、低融点ガラス層31と樹脂基材2との接合が強固になる。
【0053】
また、本例においては、低融点ガラス材料310は、高融点ガラス材料320よりも比重の小さいものを用いている。そのため、溶融状態の高融点ガラス材料320上に低融点ガラス材料310を配置して接合させる際に、自重により低融点ガラス材料310が高融点ガラス材料320内に沈み込んでしまうことを抑制することができる(図4(b)参照)。そのため、例えば耐候性等の特定の特性を付与するために形成する高融点ガラス材料の特性が損なわれてしまうことを抑制することができると共に、低融点ガラス材料と樹脂材料との溶着を確実に行うことが可能になる。
【0054】
このように、本例によれば、耐候性等のガラス特有の性質を有し、ガラス材料に比べて軽量化が可能で、接合部の強度に優れたガラス樹脂接合材料及びその製造方法を提供することができる。
【0055】
(実施例2)
本例においては、樹脂−ガラス接合工程において、ガラス材料の表面に樹脂材料の少なくとも一部を食い込ませて、ガラス樹脂接合材料を製造する例である。
具体的には、まず、図5(a)〜(c)に示すごとく、実施例1と同様にして、成形型4内の溶融状態にある高融点ガラス材料320上に、溶融状態にある低融点ガラス材料310を射出した。
【0056】
次に、樹脂材料として、透明で粒子状のポリカーボネート樹脂を準備した。かかる樹脂材料は、形態が異なる点を除いては実施例1と同様のポリカーボネート樹脂である。
そして、実施例1と同様に、成形型4内の高融点ガラス材料320と低融点ガラス材料310とを降温させた。この降温により、高融点ガラス材料320は、図5(c)に示すごとく硬化し、高融点ガラス層32を形成する。一方、低融点ガラス材料310は、依然としてガラス転移温度の温度以上にあるため溶融状態にある。
【0057】
次いで、図5(d)に示すごとく、低融点ガラス材料310の表面上に、ショットブラストにより、複数の粒子状の樹脂材料200を打ち込んだ。これにより、低融点ガラス材料310の表面に粒子状の樹脂材料200を食い込ませた。低融点ガラス材料310は、樹脂材料200の軟化点以上に加熱されているため、低融点ガラス材料310の表面に食い込んだ樹脂材料200は、軟化して低融点ガラス材料310と混ざり合う。
【0058】
次いで、粒子状の樹脂材料200を食い込ませた低融点ガラス材料310上に、実施例1と同様に射出成形機により樹脂材料20を射出した。これにより、樹脂材料同士は混ざり合って、低融点ガラス材料310上に樹脂材料20が配置される(図5(e)参照)。粒子状の樹脂材料と射出成形機により射出する樹脂材料は、同じ組成のポリカーボネート樹脂を採用した。
【0059】
次に、実施例1と同様に、成形型4内を室温まで降温させた。これにより、低融点ガラス材料310及び樹脂材料20を硬化させ、図5(f)に示すごとく、低融点ガラス層31及び樹脂基材2を形成した。このようにして、図5(f)及び図1に示すごとく、樹脂基材2とその表面に形成されたガラス層3(低融点ガラス層31及び高融点ガラス層32)とを有するガラス樹脂接合材料1を得た。
【0060】
本例においては、樹脂−ガラス接合工程において、ガラス材料(低融点ガラス材料)310のガラス転移温度以上かつ、かつ樹脂材料の軟化点以上、かつ樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度に加熱したガラス材料の表面に樹脂材料の少なくとも一部を食い込ませている(図5(d)参照)。そのため、樹脂基材2とガラス層3(低融点ガラス層31)との間に、樹脂材料とガラス材料とが混ざり合った樹脂−ガラス混在領域10を形成させやすくなる(図1及び図2参照)。したがって、樹脂基材2とガラス層3との接合強度の高いガラス樹脂接合材料を得ることができる。
本例のガラス樹脂接合材料及びその製造方法におけるその他の作用効果は、実施例1と同様である。
【符号の説明】
【0061】
1 ガラス樹脂接合材料
2 樹脂基材
3 ガラス層
31 低融点ガラス層
32 高融点ガラス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、該樹脂基材の表面に形成されたガラス層とを有するガラス樹脂接合材料であって、
上記樹脂基材と上記ガラス層とは界面で互いに溶着していることを特徴とするガラス樹脂接合材料。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス樹脂接合材料において、上記樹脂基材と上記ガラス層との間には、上記樹脂基材の樹脂成分と上記ガラス層のガラス成分とが混ざり合った樹脂−ガラス混在領域が形成されていることを特徴とするガラス樹脂接合材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガラス樹脂接合材料において、上記ガラス層は、融点が異なる低融点ガラス層と高融点ガラス層とが溶着してなり、上記ガラス層は、上記低融点ガラス層側で上記樹脂基材と溶着していることを特徴とするガラス樹脂接合材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス樹脂接合材料において、板状の上記樹脂基材の表面に、シート状の上記ガラス層が形成されていることを特徴とするガラス樹脂接合材料。
【請求項5】
樹脂基材と、該樹脂基材の表面に形成されたガラス層とを有するガラス樹脂接合材料の製造方法であって、
上記ガラス層を構成するガラス材料のガラス転移温度以上、かつ上記樹脂基材を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ上記樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度で上記ガラス材料と上記樹脂材料とを接合させる樹脂−ガラス接合工程と、
該樹脂−ガラス接合工程後に、降温により上記ガラス材料と上記樹脂材料とを硬化させて上記ガラス樹脂接合材料を得る硬化工程とを有することを特徴とするガラス樹脂接合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法において、上記樹脂−ガラス接合工程においては、上記ガラス材料のガラス転移温度以上、かつ上記樹脂基材を構成する樹脂材料の軟化点以上、かつ上記樹脂材料の5%重量減少温度以下の温度に加熱した上記ガラス材料の表面に上記樹脂材料の少なくとも一部を食い込ませることを特徴とするガラス樹脂接合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の製造方法において、上記樹脂−ガラス接合工程より先に、互いに融点が異なる低融点ガラス材料と高融点ガラス材料とを接合させるガラス接合工程を行うことを特徴とするガラス樹脂接合材料の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法において、上記低融点ガラス材料は、上記高融点ガラス材料よりも比重の小さいものを用いることを特徴とするガラス樹脂接合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−111656(P2012−111656A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261092(P2010−261092)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】