説明

ガラス被覆蓄光性発光体粒子及びその製造方法

【課題】
耐水性に優れ、かつ粒子の大きさ及び蓄光体の分布が均一である蓄光性発光体粒子を製造する。
【解決手段】
仮保持部材上に、
(1)穴を周期的に配置したマスクを載せ、ガラス微粒子及び樹脂接着剤の混合物をスクリーン印刷することにより混合物層(A)を複数形成させ、
(2)前記樹脂接着剤が固化する前に、前記混合物層(A)上に、蓄光体粒子及びガラス粒子の混合物を散布して前記混合物層(A)上に蓄光体層(B)を形成させ、
(3)前記蓄光体層(B)上に、(1)工程で用いたマスクを位置を合わせて載せ、ガラス微粒子及び樹脂接着剤の混合物をスクリーン印刷して混合物層(A)を形成し、
(4)必要に応じて(2)工程及び(3)工程を繰り返すことにより、3層又は5層以上に混合物層(A)と蓄光体層(B)を交互に積層させた粒状積層体を形成し、
(5)前記粒状積層体を焼成することによりガラス被覆蓄光性発光体粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば避難誘導用の標識や誘導ライン、道路の白線等あるいは装飾模様等に用いられる蓄光性発光体粒子及びその製造方法に関し、特に、耐水性に優れ、輝度ムラの少ない蓄光性発光体粒子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線等によって励起し、かなりの長時間残光が観測される蓄光性発光体、例えば、MAl24(Mはカルシウム、ストロンチウム又はバリウム)を母結晶とし、ユウロピウム等のランタノイドで賦活する蓄光性発光体(特許文献1)が開発されている。
【0003】
このような蓄光性発光体は、避難誘導用の標識や誘導ライン等に利用されているが、蓄光性発光体単独では容易に加水分解されるので、雨水等に触れる屋外での使用が耐久性の観点で欠点があった。そのため、蓄光性発光体とセラミック母材とを混合焼成した後粉砕する方法(特許文献2,3)、仮保持部材上に蓄光性発光体粒子とガラス粒子とを混合した混合部材層を形成させ、仮保持部材を剥離後、焼成−粉砕−再焼成する方法(特許文献4)などの方法で、蓄光性発光体を被覆して、耐水性を改善した蓄光性発光体粒子として使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2543825号公報
【特許文献2】特許第3580652号公報
【特許文献3】特許第3580653号公報
【特許文献4】特開2007−112685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記蓄光性発光体粒子の製造方法では、蓄光体とセラミック母材又はガラス材を混合し焼成した後、粉砕することにより蓄光性発光体粒子としているため、蓄光性発光体がガラス材等で十分に被覆できず、耐水性の問題点が十分に解決されていなかった。また、ここの発光体粒子の中に、発光体が均一量に配合されず、個々の粒子ごとに発光輝度にムラが生じるという課題があった。また、粉砕により粒子化しているため、粒子の大きさが不揃い、すなわち粒度分布が大きく、同じく、輝度ムラが生じるという課題もあり、所望の粒径の発光体を得るために篩い分けが必要であったため、歩留まりが低く、生産コストに問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラスで蓄光性発光体粒子が実質的にほぼ全て被覆され、耐水性が格別に向上した蓄光性発光体粒子、並びに、発光体粒子の大きさが均一であり、かつ各粒子にほぼ均一に蓄光体を同一量含有するガラス被覆蓄光性発光体粒子を得ること、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、同一径の穴が多数形成されたマスクを用いたスクリーン印刷を用いて、仮保持部材上に、ガラス微粒子及び樹脂接着材の混合物層を多数点形成し、その点上に、蓄光体粒子とガラス粒子を含有する蓄光体粒子層を形成し、更にその上に、前記マスクを使用して、ガラス微粒子及び樹脂接着材の混合物層を形成し、必要に応じて蓄光体粒子層と混合物層の形成を繰り返してさらに積層させ、その後、粒子状積層体を焼成することにより、粒径が均一で、かつ各粒子に蓄光体が均一量に配合され、かつ、実質的にガラスで蓄光性発光対粒子が被覆された蓄光性発光体粒子を製造することにより、前記課題を解決した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の要旨は、
(1)同一径を有する穴を多数形成したマスクを載せ、仮保持部材上に、ガラス微粒子及び樹脂接着剤の混合物をスクリーン印刷することにより混合物層(A)を多数点形成させ、
(2)前記混合物層(A)が固化する前に、前記混合物層(A)上に、蓄光体粒子及びガラス粒子の混合粒子を配置して前記混合物層(A)上に蓄光体層(B)を形成させ、
(3)(1)工程で用いたマスク板と仮保持部材の位置を合わせて載せ、前記蓄光体層(B)の上に、ガラス微粒子及び樹脂接着剤の混合物をスクリーン印刷して混合物層(A)を形成し、
(4)必要に応じて(2)工程及び(3)工程を繰り返すことにより、3層又は5層以上に混合物層(A)と蓄光体層(B)を交互に積層させた粒状積層体を仮保持部材上に多数点形成し、
(5)前記粒状積層体を仮保持部材を剥離し又は仮保持部材を剥離せずに前記粒状積層体を焼成することを特徴とする、ガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法、に存する。
【0009】
前記混合物層(A)に用いるガラス微粒子は、樹脂接着剤と混合してスクリーン印刷が可能な大きさのガラス粒子でいずれでもよいが、蓄光体をガラス被覆しやすくするため、軟化温度の低いものが好ましく、粒径5〜30μmのガラスフリットが特に好ましい。前記混合物層(A)に用いる樹脂接着剤は、スクリーン印刷が可能であればいずれでもよい。
【0010】
前記蓄光体層(B)に用いるガラス粒子と蓄光体粒子は、お互いの粒子の大きさが同程度であることが好ましく、通常、ガラス粒子の大きさが蓄光体粒子の大きさの0.5〜2倍の範囲となるようにガラス粒子と蓄光体粒子が選択される。蓄光体層(B)は、混合物層(A)が固化する前に、その上に配置して、混合物層(A)中の接着剤に接着することにより層形成されることから、ガラス粒子または蓄光体粒子の粒径が蓄光体層(B)の厚さとなる。このため、蓄光体粒子及びガラス粒子の大きさは、所望の蓄光体層(B)の厚さに合わせて適宜選択される。
【0011】
蓄光体層(B)中のガラス粒子と蓄光体粒子の重量比は、7:3〜9:1の範囲が好ましい。ガラス粒子の量が少ないと、焼成後の蓄光性発光体粒子において、蓄光体粒子が完全にガラスで被覆されず、好ましくない。他方、蓄光体粒子の相対量が少なすぎると、蓄光性発光体粒子の輝度が小さくなるので好ましくない。
【0012】
混合物層(A)と蓄光体層(B)の積層を3層とするか5層以上とするかは、マスクの穴径に応じて決められる。得られる蓄光性発光体粒子をより球形に近づけるためには、焼成により混合物層中の樹脂接着剤が除去され、粒子状積層体の厚さ方向に縮むため、焼成前の粒子状積層体の合計厚さが、マスクの穴の直径の1.5〜3倍、好ましくは2倍前後とする。混合物層(A)の厚さは、スクリーン印刷に用いるマスクの板厚と概ね同じとなり、蓄光体層(B)の厚さは蓄光体粒子またはガラス粒子の粒径と概ね同じとなるから、使用するマスクの穴径と板厚並びに蓄光性発光体粒子の粒径が決まれば、必要な積層回数が決まることになる。
【0013】
前記粒状積層体の載置された仮保持部材の焼成は、焼成炉で300〜500℃で1時間以上加熱して、粒状積層体中の樹脂接着剤を炭化しないように焼いて除去し、次いで600〜800℃に焼成して各ガラス粒子を融着させて、ガラスで実質的にすべて被覆された蓄光性発光体粒子を形成させる。
【0014】
前記の焼成の際に、粒状積層体の間隔をあけて樹脂薄層上に形成させ、粒状積層体が樹脂薄層に付着したまま焼成すると、粒状積層体同士がくっつくことを防止できる。そこで、スクリーン印刷のマスクでは、形成された穴と穴の間隔を、穴の直径以上とするのが好ましいが、間隔を開けすぎると、一度のスクリーン印刷で形成される混合物層(A)の点数が少なくなるので、生産効率が落ちることになる。また、穴の配置は周期的にすることが、生産効率上、好ましい。
【0015】
基材に水溶性表面を形成し、さらにその上に水不溶性樹脂薄層を形成した仮保持部材にスクリーン印刷し、仮保持部材を水に短時間浸漬することにより、粒状積層体が樹脂薄層に付着したものが容易に作製できる。
【0016】
また、本発明の第2の要旨は、蓄光性発光体粒子を水中に室温で48時間浸漬させた後の初期輝度が、水中に浸漬させる前の初期輝度の85%以上であることを特徴とするガラス被覆蓄光性発光体粒子にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粒径が均一で、各粒子に蓄光体が均一に分布する、耐水性に優れたガラス被覆蓄光性発光体粒子が簡単に製造できる。また、マスクの穴の径を変更することによって、所望の粒径の蓄光性発光体粒子を得ることができる。また、本発明の蓄光性発光体粒子は粒径が揃っているため、篩い分けが不要となり、歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の製造方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法の実施形態の説明図である。
図1のように、仮保持部材の基材1(例えば厚紙)の表面に、水可溶性表面2(例えばデキストリン)を形成させ、さらにその上に樹脂薄層3(例えばアクリル樹脂接着剤を塗布し硬化させた薄層)を形成させたものを用意し(図1のI)、その樹脂薄層3上に、所望の大きさの穴(例えば直径1000μm)が周期的に空いているマスク4を置き、ガラス微粒子及び樹脂接着剤からなる混合物をスクリーン印刷することにより混合物層(A)を形成させる(図1のII)。
【0020】
マスクの穴と穴相互の間隔は、マスク穴の直径より大きいことが望ましい。例えばマスク穴の直径が500μmの場合、穴と穴の間隔は500μm以上が好ましく、より好ましくは1〜1.5mmである。マスクの板厚は、特に限定されないが、マスクの穴の直径の半分程度が好ましい。例えば穴の直径が500μmの場合、マスクの板厚は200〜300μm程度が好ましい。混合物層(A)の層厚は、概ねマスクの板厚と同じになる。
マスク穴の形状は、円形に限定されず、楕円形や四角形や六角形などの多角形でもよいが、穴の形状が極端にいびつにすると、得られる蓄光性発光体ガラス粒子がいびつな形になるので好ましくない。マスク穴の形状が円形以外の場合、本明細書の「穴の直径」は、穴に内接される円の直径である。
【0021】
ガラス微粒子の材質は、蓄光体の励起光および発光に対して透明な素材であればいずれでもよいが、焼成後に蓄光体を完全にガラス被覆するためには軟化温度が低いものが好ましい。ガラス微粒子の粒径は、樹脂接着剤と混合してスクリーン印刷が可能な粒径であればいずれでもよい。好ましいガラス微粒子として、粒径5〜30μmのガラスフリットが例示できる。
【0022】
樹脂接着剤は、スクリーン印刷が可能な粘度に調節できるものであれば特に限定されず、例えばアクリル系樹脂と溶剤からなる接着剤が挙げられる。
ガラス微粒子と樹脂接着剤の混合比は、特に限定されないが、重量比で3:1〜1:3の範囲が好ましい。
【0023】
次いで、混合物層(A)が固化する前に、混合物層(A)上に蓄光体粒子とガラス粒子の混合粒子を配置して蓄光体層(B)を形成する(図1のIII)。蓄光体層(B)は、砂絵を描く要領で形成される。すなわち、混合物層(A)上に載った蓄光材またはガラスの粒子は前記混合物層(A)中の樹脂接着剤によって混合物層(A)上に接着され、蓄光体層(B)を形成する。混合物層(A)相互の隙間に落ちた蓄光体粒子又はガラス粒子は、接着されていないので、仮保持部材を揺するなどの方法で除去できる。
【0024】
蓄光体は、アルミン酸ストロンチウムにユーロピウム等のランタノイドで賦活した蓄光体のような酸化物系蓄光体、硫化カルシウムにバリウムをドープした蓄光体のような硫化物系蓄光体等の既知の蓄光体のいずれでもよい。
【0025】
蓄光体粒子の粒径は、マスク穴の直径より小さいものであればよく、好ましくは平均粒径がマスク穴の直径の半分程度である。例えば、マスク穴の直径が500μmの場合、最大粒径が500μm以下で平均粒径が250μm前後の蓄光体粒子が好ましい。
【0026】
蓄光体粒子と共に蓄光体層を形成させるガラス粒子の粒径は、蓄光体粒子の粒径と同程度のものが好ましい。ガラス粒子の材質は、蓄光体の励起光および発光に対して透明な素材であればいずれでもよく、例えば硼珪酸ガラスなどが挙げられる。
【0027】
蓄光体粒子とガラス粒子の混合比は、ガラス:蓄光体の重量比で9:1〜7:3の範囲が好ましい。ガラス粒子の量が少ないと、焼成後のガラス被覆蓄光性発光体粒子において、蓄光体粒子が完全にガラスで覆われないので好ましくない。蓄光体粒子の量が少なすぎると、ガラス被覆蓄光性発光体粒子の輝度が小さくなるので好ましくない。
【0028】
蓄光体層(B)上に、さらにスクリーン印刷により混合物層(A)を形成させる。この際に、先の工程で用いたマスク板と仮保持部材の位置を合わせて置くことにより、蓄光体層(B)上に混合物層(A)を形成させることができる(図1のIV)。
【0029】
図1では粒状積層体が3層の例を示しているが、必要に応じて、さらに蓄光体層と混合物層を交互に積層させて5層以上にしてもよい。粒状積層体の層数は、粒状積層体の焼成前の合計厚さがマスク穴の直径の1〜3倍になるように設定するのが好ましい。混合物層(A)の厚さがマスク板厚とほぼ同じであり、蓄光体層(B)の厚さが蓄光体粒子の平均粒径と同程度であることから、粒状積層体のおおよその合計厚さを簡単に見積もることができ、好ましい層数を見積もることができる。例えば、マスクの板厚が200μm、蓄光材粒子の平均粒径が250μmの場合、3層では積層体厚さが合計約650μm、5層では約1100μm、7層では約1550μmになる。マスク穴の直径が500μmの場合には、焼成前の積層体厚さの合計が500〜1500μm程度が好ましいから、混合物層(A)と蓄光体層(B)は3層又は5層構造とするのが最適である。大きな蓄光性発光体ガラス粒子を製造するために、マスク穴を大きくした場合には、積層回数が多く成りすぎないようにするため、マスクの板厚を厚くするか、蓄光体粒子の粒径を大きくするのが好ましい。
【0030】
粒状積層体の樹脂接着剤が固化した後、数秒間水に浸漬して水溶性表面2を溶解させ、仮保持部材の基材1から粒状積層体が載った樹脂薄層3を剥離させ、樹脂薄層3上に載せたまま粒状積層体を焼成する。焼成は、300〜500℃で1時間以上保持し、樹脂が炭化しないようにして樹脂薄層および混合物層(A)中の樹脂接着材を焼却して除去する。この工程では、300〜500℃のいずれかの温度で維持してもよいし、ゆっくり昇温させて、1時間以上300〜500℃の範囲内にあるようにしてもよい。
次いで600〜800℃で5〜30分間維持して、ガラス粒子を相互に融着させる。
【0031】
上記の製造方法により製造されたガラス被覆蓄光体粒子は、粒径が均一で、各粒子中の蓄光体含有量も均一となるから、輝度ムラが少なくなる。また、蓄光体がほぼ完全にガラス被覆されるため、耐水性に優れ、蓄光性発光体粒子を水中に浸漬しても輝度の低下が少なく、48時間水中に浸漬しても、浸漬前の80%以上の初期輝度を維持することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
厚紙(仮保持部材基材)の表面にデキストリン層(水可溶性層)を形成させ、さらに樹脂接着剤(フェロ・ジャパン製スクリーン・プリンティング・オイル)をベタ版でスクリーン印刷して仮保持部材とした。
この仮保持部材上に、直径1000μmの穴が、約1000μm間隔で周期的に空いている板厚約200μmのメタルマスクを載せ、粒径5〜10μmのガラスフリット(日本フリット社製)10重量部と前記樹脂接着剤8重量部とを混合した混合物をスクリーン印刷することにより、厚さ約200μmの混合物層(A)を形成させた。
【0033】
次いで、前記アクリル樹脂接着剤が固化する前に、平均粒径250μmの蓄光体粒子(根本特殊化学社製商品名G300L-−250N)2重量部と平均粒径250μmの硼珪酸ガラス粒子(ポッターズバロティーン社製)8重量部の混合した混合粒子を混合物層(A)上に配置して、蓄光材層(B)を形成させた。
その後、先の工程で用いたマスク板と仮保持部材の位置を合わせて載せ、スクリーン印刷により混合物層(A)を蓄光材層(B)上に形成させ、さらにこれらの工程を繰り返して、5層構造の粒状積層体を形成させた。
接着剤が乾燥固化した後、仮保持部材を数秒水に浸漬し、デキストリン層を溶解させ、樹脂フィルム上に粒状積層体が周期的に配置されているものを得た。
【0034】
得られた粒状積層体は、樹脂フィルムごと焼成炉に入れて焼成した。焼成は、ゆっくり昇温させ、300〜500℃で1時間以上かけた後、約700℃で約15分維持し、その後ゆっくり室温まで冷却してガラス被覆蓄光性発光体粒子を得た。
得られたガラス被覆蓄光性発光体粒子は、おおよそ球形となっていた。JIS Z 8801標準ふるいを用いて、篩い分けをしたところ、表1のとおり、重量比で97%以上が、粒径1000μm〜1400μmの範囲内であり粒径が揃っていた。
【0035】
【表1】

【0036】
得られたガラス被覆蓄光性発光体粒子を、室温で水中に48時間浸漬し、水中に浸漬する前後の初期輝度を測定したところ、水中に浸漬する前の初期輝度は66mcd/m、48時間水中に浸漬した後の初期輝度は60mcd/mであり、水中に浸漬する前の約91%の初期輝度が維持されていた。なお初期輝度は、蓄光体粒子に200LuxのD65蛍光ランプで20分間照射後、暗所に移動した際の蓄光性発光体粒子の輝度である。
【0037】
[比較例1]
蓄光体層(B)を形成させる蓄光体粒子と硼珪酸ガラス粒子の混合比率を変化させた他は実施例1と同様にし、得られたガラス被覆蓄光性発光体粒子の外観を観察した。結果を表1に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
この結果から、蓄光体層中のガラスと蓄光体の混合比は、重量比で9:1〜7:3が好ましいことがわかる。
【0040】
[比較例2]
特開2007−112685号公報に記載されているのと同様な方法でガラス被覆蓄光性発光体粒子を製造した。すなわち、厚紙の表面にデキストリン層を形成させた仮保持部材上に、平均粒径約25μmの蓄光体粒子(60重量部)と粒径6〜8μmのガラスフリット(100重量部)とスキージオイル(80重量部)の混合物をベタ版を使ってスクリーン印刷して、厚さ150μmのガラス・蓄光体混合層を形成し、仮保持部材を剥離後、約800℃で焼成し、破砕、再焼成してガラス被覆蓄光性発光体粒子を得た。
得られた蓄光性発光体粒子の粒度分布は表3のとおりであり、粒径が不揃いであった。また、蓄光体を含まないガラス粒子が散見された。
【0041】
【表3】

【0042】
また、得られた蓄光性発光体粒子を48時間水中に浸漬して、浸漬前後の輝度を測定したところ、水中に浸漬する前の初期輝度は61mcd/mであり、浸漬後の初期輝度は50mcd/mで、水中に浸漬する前の輝度の約82%しかなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、耐水性に優れ、粒径および蓄光体の分布が均一に揃った蓄光性発光体粒子を得ることができ、屋内のみならず屋外での標識や誘導ライン、道路の白線等に蓄光体を用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1:仮保持部材の基材
2:水溶性表面
3:水不溶性樹脂薄層
4:マスク
A:混合物層
B:蓄光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)同一径を有する穴を多数形成したマスクを載せ、仮保持部材上に、ガラス微粒子及び樹脂接着剤の混合物をスクリーン印刷することにより混合物層(A)を多数点形成させ、
(2)前記混合物層(A)が固化する前に、前記混合物層(A)上に、蓄光体粒子及びガラス粒子の混合物を配置して前記混合物層(A)上に蓄光体層(B)を形成させ、
(3)(1)工程で用いたマスク板と仮保持部材の位置を合わせて載せ、前記蓄光体層(B)の上に、ガラス微粒子及び樹脂接着剤の混合物をスクリーン印刷して混合物層(A)を形成し、
(4)必要に応じて(2)工程及び(3)工程を繰り返すことにより、3層又は5層以上に混合物層(A)と蓄光体層(B)を交互に積層させた粒状積層体を仮保持部材上に多数点形成し、
(5)前記粒状積層体を仮保持部材を剥離し又は仮保持部材を剥離せずに前記粒状積層体を焼成することを特徴とする、ガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法
【請求項2】
前記粒状積層体の焼成が、300〜500℃で1時間以上加熱した後、600〜800℃で5〜30分焼成することを特徴とする請求項1に記載のガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法。
【請求項3】
前記蓄光体層(B)に用いられるガラス粒子の平均粒径が、蓄光体粒子の平均粒径の0.5〜2倍であることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法。
【請求項4】
前記蓄光体層(B)に用いられるガラス粒子と蓄光体粒子の比率が、重量比で7:3〜9:1であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記粒状積層体の焼成前の厚さ(混合物層(A)の厚さと蓄光体層(B)の厚さの総計)が、マスクの穴の径の1.5〜3倍であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法。
【請求項6】
仮保持部材が、基材上に水溶性表面を形成し、前記水溶性表面上に水不溶性樹脂薄層を形成させたものであり、水不溶性樹脂薄層上にスクリーン印刷することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法。
【請求項7】
粒状積層体を焼成する前に、仮保持部材を水に浸漬して水溶性表面を溶解させ、粒状積層体が水不溶性樹脂薄層上に配置された状態で焼成することを特徴とする請求項6に記載のガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法。ていいいう性に優れた
【請求項8】
混合物層(A)をスクリーン印刷するためのマスクの穴が、前記穴の直径以上の間隔で周期的に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7に記載のガラス被覆蓄光性発光体粒子の製造方法。
【請求項9】
蓄光性発光体粒子を水中に室温で48時間浸漬させた後の初期輝度が、水中に浸漬させる前の初期輝度の85%以上であることを特徴とするガラス被覆蓄光性発光体粒子。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180380(P2010−180380A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27694(P2009−27694)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(509354640)アライズ・コーポレート株式会社 (1)
【Fターム(参考)】