説明

キナーゼ阻害剤としての置換複素環式化合物とその用法

本発明は、新規なキノリン類化合物やキナゾリン類化合物、これらの誘導体、薬学的に許容されるその塩、溶媒和物及び水和物に関し、プロテインキナーゼにより媒介される疾患や症状の治療に有用である。本発明の化合物は、化学式Iで表される。
【化1】


(式中、R〜R11とXは、本明細書中に定義される。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国仮出願61/269,525の優先権を主張し、本明細書にはその全体が取り込まれている。
この発明は、新規なキノリン及びキナゾリンキナーゼ阻害剤、及びこれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ及び代謝物、それらの製法、並びに癌のようなキナーゼに媒介される疾患や症状を治療するためのこれらの使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、標的タンパク質基質のリン酸化を触媒する酵素の大きなファミリーを表す。このリン酸化反応は、通常ATPのリン酸基をタンパク質基質に移転する反応である。リン酸基がタンパク質基質に付加する位置は、一般的にチロシン、セリン又はスレオニン残基である。プロテインキナーゼファミリーに含まれるキナーゼの例として、abll (v-abl エーベルソン・マウス白血病ウイルス腫瘍遺伝子ホモログ1)、Akt、AIk、bcr-abll、c-kit、c-Met、c-src、c-fms、CDKl-10、cRafl、CSFlR、CSK、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、Erk、Fak、fes、FGFRl、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFR5、Fgr、flt-1、Fps、Fyn、Hck、IGF-IR、Jak、KDR、Lck、Lyn、MEK、PDGFR、PIK、PKC、PYK2、ros、tie、tie2、TRK、Yes及びZap70が挙げられる。これらは多くの細胞プロセスにおいて活性を持つため、キナーゼは重要な治療上の標的になっている。
【0003】
上皮成長因子(EGF)は、広く分布している成長因子であり、癌において、癌細胞の増殖、アポトーシスの阻止、浸潤と移転の活性化を促進し、血管新生を促進することができる(非特許文献1、2)。EGF受容体(EGFR又はErbB)は、4つの関連する受容体のファミリーに属する膜貫通チロシンキナーゼ受容体である。ヒト上皮癌の大部分は、成長因子とこのファミリーに属する受容体の機能的活性化によって特徴付けられ(非特許文献3)、そのためEGFとEGFRは癌治療のための自然な標的である。
ErbB2(neu又はHER-2ともいう。)はEGFRファミリーの一員である。ErbB2遺伝子は、しばしば乳癌又は卵巣癌及び神経膠芽細胞腫で増幅しているのが観察される。細胞及び動物モデルを使ったトランスフェクションの研究において、ErbB2の過剰発現が、腫瘍形成の増加、腫瘍の浸潤、転移可能性の増加、ホルモンと化学療法剤に対する感受性の変動をもたらすことが示されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Citri, et al, Nat. Rev. MoI. Cell. Biol. 7:505, 2006
【非特許文献2】Hynes, et al, Nat. Rev. Cancer 5:341, 2005
【非特許文献3】Ciardiello, et al., New Eng. J. Med. 358: 1160, 2008
【非特許文献4】Pegram, et al., Oncogene, 15, 537-547, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なキノリン及びキナゾリンキナーゼ阻害剤、並びにこれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ及び代謝物、それらの製法、並びに癌のようなキナーゼに媒介される疾患や症状を治療するためのこれらの使用法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記化学式Iで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝物である。
【化1】

(式中、R及びRは、独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアミノカルボニル基から選択され、
Xは、N又はC−CNを表し、
〜Rは、独立して、水素原子(H)又は重水素原子(D)を表し、
〜R10は、独立して、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が2〜6のアルキニル基、及び置換基を有していてもよい炭素数が2〜6の重水素化アルキニル基から選択され、
11は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノカルボニル基、又はウレア基を表し、
但し、R〜R11は、少なくとも一つの重水素原子を含む。)
【0007】
また本発明は、下記化学式IIで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝物である。
【化2】

(式中、Xは、N又はC−CNを表し、
10は、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、エチニル基、及びエチニル-d基から選択され、
11は、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、3-フルオロベンジルオキシ基、及びピリジン-2-イルメトキシ基から選択され、
12は、メトキシ基、メトキシ-d3基、エトキシ基、エトキシ-d3基、2-メトキシエトキシ基、及びメトキシ-d3-エトキシ基から選択され、
13及びR14は、独立して、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、及びCHDから選択され、
但し、R10〜R14は、少なくとも一つの重水素原子を含む。)
【0008】
また本発明は、下記化学式IIIで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝物である。
【化3】

(式中、Xは、N又はC−CNを表し、
15は、炭素数が1〜6のアルキル基、及び炭素数が1〜6の重水素化アルキル基から選択され、
16は、水素原子又は重水素原子を表す。)
【0009】
また本発明は、化学式I〜IIIで表される化合物及び薬学的に許容される担体から成る医薬組成物である。
また本発明は、哺乳類の患者に、治療に有効な量の本発明の化合物を投与することから成る、チロシンキナーゼのシグナル伝達を調節する方法である。
ここでは、更に、EGFR及び/又はErbB2が媒介する疾患を治療又は予防する方法、腫瘍形成を治療する方法、及び高増殖性疾患及び/又は脈管形成性疾患を治療又は予防する方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
当該分野では種々のキナーゼ阻害剤が知られている。HKI272は、このような化合物の一つである。これらの化合物の炭素−水素結合は、自然発生的分布の水素同位体、即ち、H又はプロチウム(約99.9844%)、H又は重水素(約0.0156%)、及びH又はトリチウム(1018プロチウム原子あたり約0.5〜67のトリチウム原子の範囲)を含む。重水素を増加させると、自然発生的な重水素を含む化合物に比べて、速度論的同位体効果(KIE)が検出可能になり、このような抗腫瘍剤の薬物動態的、薬学的及び/又は毒性パラメータに影響を及ぼすことができる。本発明のいくつかの側面は、これらの抗腫瘍剤及び/又はその抗腫瘍剤を合成するために用いられる前駆体の炭素-水素結合を化学修飾及び誘導することによって、これらの抗腫瘍剤の新規な類似体を設計し合成するための新規なアプローチを提供する。幾つかの態様において、特定の炭素-水素結合を炭素-重水素結合に改変することにより、非同位体濃縮抗腫瘍剤に比べて優れた薬理学的、薬物動態的及び/又は毒性学的特性を有する新規抗腫瘍剤が生成する。いくつかの実施形態において、本発明の化合物の重水素結合のレベルは、天然に存在するレベルよりもかなり高い。
【0011】
a)不要な代謝物を減少又は排除するため、b)親薬物の半減期を調節するため、及び/又はc)特定の組織に有害な代謝物の生産を減少させ、より効果的で、多剤投与を意図するかしないかに係わらず、多剤投与のためのより安全な薬剤を作製するために、様々な重水素化パターンが用いられる。重水素化のアプローチは、様々な酸化的機序を介して代謝を遅くする強力な可能性を持っている。
幾つかの態様において、本発明の重水素化類似体は、独特にも、同位体を増やしていない薬剤の有益な側面を維持しながら、最大許容投与量を増やし、毒性を下げ、半減期(T1/2)を長くし、最小有効投与量(MED)の最大血漿濃度(Cmax)を下げ、有効投与量を下げるので、メカニズムに関連しない毒性を減少させる、及び/又は薬物−薬物の相互作用の確率を下げる。また、特定の態様において、本発明のいくつかの化合物は、前述の治療投与量を下げる可能性と組み合わせて、重水素化試薬の安価な原料の可用性のために、製品のコスト(COG)を減らす強力な可能性を持つ。
【0012】
重水素(D又はH)は、非放射性の安定同位体であり、重水素の天然存在度は0.015%である。重水素の量が、天然存在度である0.015%より大きい場合には、その化合物は自然ではない。本発明のいくつかの化合物において、特定の位置が重水素であると特定された場合には、重水素の存在量が、重水素の天然存在度である0.015%よりも実質的に大きいといえる。重水素であると特定された化合物中の位置は、その化合物で重水素であると特定された各原子において少なくとも3000の最低同位体増加率を持つ。自然に存在する安定な水素原子の濃度は、本発明の安定同位体置換化合物のものに比べて小さく、重要ではない。
【0013】
幾つかの態様において、本発明は、下記化学式Iで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝物である。
【化1】

(式中、R及びRは、独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアミノカルボニル基から選択され、
Xは、N又はC−CNを表し、
〜Rは、独立して、水素原子(H)又は重水素原子(D)を表し、
〜R10は、独立して、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が2〜6のアルキニル基、及び置換基を有していてもよい炭素数が2〜6の重水素化アルキニル基から選択され、
11は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノカルボニル基、又はウレア基を表し、
但し、R〜R11は、少なくとも一つの重水素原子を含む。)
【0014】
幾つかの態様において、本発明は、R及びRが、独立して、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアミノカルボニル基から選択される化学式Iで表される化合物である。幾つかの態様において、Rは、置換基を有していてもよい炭素数が1〜8のアルコキシ基である。幾つかの態様において、Rは、メトキシ基、エトキシ基、又は2-メトキシエトキシ基である。幾つかの態様において、Rは、CDO−、CDCHO−又はCDOCHCHO−である。幾つかの態様において、Rは、置換基を有していてもよいアミノカルボニル基である。幾つかの態様において、Rは、アミノカルボニル基であり、Rは、アルコキシ基又は重水素化アルコキシ基である。幾つかの態様において、Rは、CDO−、CDCHO−又はCDOCHCHO−である。他の実施形態において、Rは、4-(ジメチル-d6-アミノ)-2-ブテンアミドである。幾つかの態様において、R〜Rは、水素原子(H)又は重水素原子(D)である。特定の実施態様において、R及びRは、独立して、フッ素原子又は塩素原子である。
【0015】
幾つかの態様において、本発明は、R及びR10が、独立して、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が2〜6のアルキニル基、及び置換基を有していてもよい炭素数が2〜6の重水素化アルキニル基から選択される化学式Iで表される化合物である。特定の実施態様において、R又はR10は、塩素原子である。
幾つかの態様において、本発明は、R11が、置換基を有するベンジルオキシ基又はピリジニルメトキシ基である化学式Iで表される化合物である。特定の実施態様において、R11は、フェニル環が1〜4の水素原子で置換されたベンジルオキシ基である。他の態様において、R11は、ピリジニルメトキシ基である。
【0016】
幾つかの態様において、本発明は、下記化学式IIで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝物である。
【化2】

(式中、Xは、N又はC−CNを表し、
10は、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、エチニル基、及びエチニル-d基から選択され、
11は、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、3-フルオロベンジルオキシ基、及びピリジン-2-イルメトキシ基から選択され、
12は、メトキシ基、メトキシ-d3基、エトキシ基、エトキシ-d3基、2-メトキシエトキシ基、及びメトキシ-d3-エトキシ基から選択され、
13及びR14は、独立して、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、及びCHDから選択され、
但し、R10〜R14は、少なくとも一つの重水素原子を含む。)
【0017】
幾つかの態様において、本発明は、R10が、塩素原子、エチニル基、及びエチニル-d基から選択される化学式IIで表される化合物である。幾つかの態様において、R10は、フッ素原子、塩素原子、又はCFである。幾つかの態様において、R10は、エチニル基である。幾つかの態様において、R10は、エチニル-d基である。幾つかの態様において、R11は、3-フルオロベンジルオキシ基、又はピリジン-2-イルメトキシ基である。幾つかの態様において、R11は、3-フルオロベンジルオキシ基である。幾つかの態様において、R11は、ピリジン-2-イルメトキシ基である。
幾つかの態様において、本発明は、R12が、置換基を有していてもよいアルキル基(例えば、炭素数が1〜8のアルキル基のような)、又は置換基を有していてもよい重水素化アルキル基である化学式IIで表される化合物である。幾つかの態様において、R12は、メトキシ基、メトキシ-d3基、エトキシ基、エトキシ-d3基、2-メトキシエトキシ基、及びメトキシ-d3-エトキシ基から選択される。幾つかの態様において、R12は、メチル基、エチル基、又は2-メトキシエチル基である。他の態様において、R12は、−CD、−CHCD又は−CHCHCDである。
幾つかの態様において、本発明は、R13及びR14が、独立して、CH、及びCDから選択される化学式IIで表される化合物である。幾つかの態様において、R13は、−CHである。幾つかの態様において、R13は、−CDである。幾つかの態様において、R14は、−CHである。幾つかの態様において、R14は、−CDである。
【0018】
幾つかの態様において、本発明は、下記化学式IIIで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝物である。
【化3】

(式中、Xは、N又はC−CNを表し、
15は、炭素数が1〜6のアルキル基、及び炭素数が1〜6の重水素化アルキル基から選択され、
16は、水素原子又は重水素原子を表す。)
幾つかの態様において、本発明は、R15が、CD、CHCD又はCHCHOCDである化学式IIIで表される化合物である。他の態様において、R15は、CH、CHCH又はCHCHOCHである。ある態様において、R15は、CH又はCDである。幾つかの態様において、R16は、水素原子である。幾つかの態様において、R16は、重水素原子である。
【0019】
幾つかの態様において、本発明は、下記から選択される化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝物である。
例えば、(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(メチル-d3-メチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(メチル-d3-(メチル)アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(メチル-d3-(メチル)アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(メチル-d3-(メチル)アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-7-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-6-イル)-4-(メチル-d3-メチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)-4-(メチル-d3-メチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニル-d-フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニル-d-フェニルアミノ)-キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニル-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニル-d-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-フルオロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-メチル-d3-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-メトキシ-d3-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(2-クロロ-4-(3-シアノ-6-(4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド)-7-エトキシキノリン-4-イルアミノ)フェニル)ピコリンアミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-ピリジン-2-イルウレイド)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニル-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニル-d-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(メチル-d3-(メチル)アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-フルオロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-メチル-d3-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-メトキシ-d3-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(2-クロロ-4-(6-(4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド)-7-エトキシキナゾリン-4-イルアミノ)フェニル)ピコリンアミド、
(E)-N-(7-アセトアミド-4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-ピリジン-2-イルウレイド)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-d5-4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、など。
【0020】
幾つかの態様において、本発明は、薬学的に許容される塩の形である化学式I〜IIIで表される化合物である。ある態様において、この化学式I〜IIIで表される化合物は、塩酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、又はメタンスルホン酸塩である。幾つかの態様において、本発明は、溶媒和物の形である化学式I〜IIIで表される化合物である。他の態様において、この化合物は、代謝物の形である。他の態様において、本発明の化合物は、プロドラッグの形である。幾つかの態様において、この選択された選択された重水素化化合物の重水素増加度は少なくとも約1%である。
幾つかの態様において、本発明は、化学式I〜IIIで表される化合物及び薬学的に許容される担体から成る医薬組成物を提供する。
幾つかの態様において、この組成物は、タンパク質キナーゼによって制御される疾患の治療のためのものである。
幾つかの態様において、この組成物は、高増殖性疾患及び/又は脈管形成性疾患の治療用のものである。
幾つかの態様において、この医薬組成物は、更に、抗腫瘍薬、免疫抑制剤、免疫刺激薬、又はこれらの組み合わせを含む。他の態様において、この医薬組成物は、経口投与、非経口投与、又は静脈内投与に適する。
【0021】
幾つかの態様において、本発明は、哺乳類の患者に、治療に有効な量の化学式I〜IIIで表される化合物を投与することから成る、チロシンキナーゼのシグナル伝達を調節する方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、哺乳類の患者に、治療に有効な量の化学式I〜IIIで表される化合物を投与することから成る、EGFR及び/又はErbB2が媒介する疾患を治療又は予防する方法を提供する。
幾つかの態様において、本発明は、治療を必要とする哺乳類の患者に、治療に有効な量の化学式I〜IIIで表される化合物を投与することから成る、腫瘍形成を治療する方法を提供する。ある態様において、この腫瘍形成は、非小細胞癌、乳癌、白血病、大腸癌、腎細胞腫、消化器官間葉性癌、充実性腫瘍、脳腫瘍、神経膠芽細胞腫、多発性骨髄腫、膵癌、非ホジキンリンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、膀胱癌、結腸癌、前立腺癌等から選択される。ある態様において、この腫瘍形成は、非小細胞癌又は乳癌である。幾つかの態様において、この方法は、更に、1以上の抗癌剤を投与することを含む。
幾つかの態様において、本発明は、哺乳類の患者に、治療に有効な量の化学式I〜IIIで表される化合物を投与することから成る、高増殖性疾患及び/又は脈管形成性疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0022】
幾つかの態様において、化学式I〜IIIで表される特定の化合物は、望ましくない細胞増殖に関連する癌及び他の疾患の治療に有用であるチロシンキナーゼ上皮成長因子(EGF)受容体ファミリー(例えば、erbBl、erbB2、erbB3及びerbB4)を、不可逆に、阻害する。
幾つかの態様において、化学式I〜IIIで表される化合物は、チロシンキナーゼ上皮成長因子受容体(例えば、erbBl、erbB2、erbB3及びerbB4)の変異体の数を抑制し、それは現在市販されている薬物よりも有効である。
幾つかの態様において、化学式I〜IIIで表される化合物は、位置が特定された各重水素原子について、重水素原子の天然存在度である0.015%よりも大きい存在度を有する。幾つかの態様において、化学式I〜IIで表される化合物及び特定の化学式IIIで表される化合物における重水素原子の存在度は1%より大きい。
幾つかの態様において、本発明の化合物は、重水素であると特定された各原子において少なくとも3000、又は少なくとも4500、又は少なくとも5000、又は少なくとも5500、又は少なくとも6000、又は少なくとも6333.3、又は少なくとも6466.7、又は少なくとも6633.3の同位体増加率を持つ。
【0023】
本明細書において用語"同位体増加率"は、特定の同位体について、その同位体の存在度と天然存在度との比率を意味する。
用語"から成る(comprising)"は、オープンエンドであり、指定された成分を含むが、それ以外の成分を排除しないことを意味する。
用語"アルキル"は、直鎖及び分枝の脂肪族炭化水素基を意味し、一般的には特定の炭素数を持つ(例えば、C1−C8アルキルとは、炭素数が1〜8(両端を含む)のアルキル基を指す。)。アルキル基の例として、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられるが、これらに制限されない。
用語"アルケニル"は、単独又は組み合わせて使用される場合、2〜10個の炭素原子を有する部分に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分枝のラジカル(基)を含む。アルケニル基の例として、エテニル、プロペニル、アリル、プロペニル、ブテニル及びN、N-ジメチルプロペニルが挙げられるが、これらに制限されない。用語"アルケニル"及び"低級アルケニル"は、"シス"及び"トランス"の配向のラジカル(基)を含み、又はその代わりに当該技術分野における当業者により理解されるように、"E"及び"Z"の配向を含む。
【0024】
用語"アルキニル"は、単独又は組み合わせて使用される場合、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有し、2〜10個の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分岐状のラジカル(基)を意味する。このような基の例として、エチニル、プロピニル(プロパルギル)、ブチニル等が挙げられるが、これらに制限されない。
用語"アルコキシ"又は"アルコキシル"は、単独又は組み合わせて使用される場合、それぞれが1以上の炭素原子を有するアルキル部分を持つ、直鎖状又は分枝状の酸素含有基を含む。このような基の例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及びtert−ブトキシ、2−メトキシエトキシ、置換基を有していてもよいベンジルオキシ基、又は置換基を有していてもよいピリジニルメトキシ基などが挙げられる。
用語"置換基を有していてもよいアルコキシ"は、アルコキシ基のアルキル部分の炭素原子が任意にH、D、F、Cl、CF、又は炭素数が1〜6のアルコキシ、炭素数が1〜6のアルキルアミノで置換されていることを意味する。このアルキル部分は、通常、1〜8の炭素原子を有する。
用語"ハロ"又は"ハロゲン"は、単独又は組み合わせて使用される場合、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子などのハロゲン原子を意味する。
用語"アミノカルボニル"は、単独又は組み合わせて使用される場合、炭素数が1〜8のアルキル基又は炭素数が2〜6のアルケニル基で置換されたカルボニル基に結合した窒素含有基を表す。炭素数が1〜8のアルキル基又は炭素数が2〜6のアルケニル基内部のアルキル部分の各炭素原子は、任意にH、D、F、Cl、CF、又は炭素数が1〜6のアルコキシ、炭素数が1〜6のアルキルアミノで置換されていてもよい。
【0025】
用語"アミノアルキル"、"アルキルアミノ"は、それぞれ、HN−アルキル、アルキル−NH、アルキル−NH−アルキル、(アルキル)N−アルキルを意味し、このアルキルは上記で定義される。
用語"薬学的に許容される"は、化学式I〜IIIで表される化合物に関連して使用される場合、患者に投与しても安全である化合物の形態に関していることを意図している。例えば、経口摂取又は他の投与経路を介して哺乳類に使用することが、米国食品医薬品局(FDA)などの統治機関や規制機関により承認されている、化学式I〜IIIで表される化合物の遊離塩基や塩の形態、溶媒和物、水和物、プロドラッグ又は誘導体の形態は、薬学的に許容される。
薬学的に許容される塩の形態の遊離塩基化合物は、化学式I〜IIIで表される化合物に含まれる。用語"薬学的に許容される塩"は、一般的にアルカリ金属塩を形成し、規制当局によって承認されている遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するために使用される塩を含む。塩は、イオン結合、電荷−電荷相互作用、共有結合、錯体化、配位などにより形成される。塩の性質は、それが薬学的に許容される限り、重要ではない
【0026】
幾つかの態様において、本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として形成され、及び/又は使用される。薬学的に許容される塩の種類としては、以下が挙げられるが、これに制限されない。
(1)遊離塩基形化合物と薬学的に許容される以下のような酸との酸付加塩:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸、又は酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸等の有機酸
(2)親化合物に存在する酸性プロトンが以下のような金属イオンに置換されて形成される塩:アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウム、又はカルシウム)、又はアルミニウムイオン
いくつかのケースでは、本発明の化合物は、塩基性窒素含有基の有機塩基に配位する。
このような塩基性窒素含有基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンが挙げられるが、これに制限されない。他のケースでは、本発明の化合物は、アミノ酸と塩を形成する。このようなアミノ酸として、アルギニン、リジンなどが挙げられるが、これに制限されない。酸性プロトンを含む化合物と塩を形成するために使用される"許容される無機塩基"としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
このような塩の更なる例は、Berge et al, J. Pharm. Sci, 66, 1 (1977)に挙げられている。幾つかの態様において、このような塩を形成するために従来の方法が用いられる。例えば、本発明の化合物のリン酸塩は、所望の温度で、典型的には加熱下で(用いる溶媒の沸点によるが)、所望の溶媒又は混合溶媒中の所望の化合物の遊離塩基を、所望の化学量論量のリン酸と結合させることにより得られる。幾つかの態様において、塩は、冷却(低速又は高速)と結晶化(即ち、自然の状態が結晶である場合)により沈殿させる。さらに、本発明の化合物のヘミ-、モノ-、ジ-、トリ-及びポリ-塩の形態もまたここで考慮される。同様に、本発明の化合物、その塩や誘導体のヘミ-、モノ-、ジ-、トリ-及びポリ-水和形態もまたここで考慮される。
【0028】
幾つかの態様において、化学式I〜IIIで表される化合物は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、又はメタリン塩等である。他の態様では、化学式I〜IIIで表される化合物は、酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンタン酸塩、グリコール酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、ケイ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、1,2-エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクト-2-エン-Lカルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、4,4'-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-L-カルボン酸)塩、3-フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、t-ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、ムコン酸塩、酪酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、バルプロ酸塩等の形態である。ある態様において、化学式I〜IIIで表される化合物は、塩酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、又はメタンスルホン酸塩である。
【0029】
用語"誘導体"は、ここでは広く解釈され、本発明の化合物の如何なる塩、本発明の化合物の如何なるエステル、又は患者へ投与したときに(直接的又は間接的に)本発明の化合物を提供することができるその他の化合物、又はキナーゼ酵素を調節する能力を特徴とする本発明の化合物の代謝物若しくはその残基を包含する。
用語"プロドラッグ"は、患者へ投与したときに、(直接的又は間接的に)本発明の化合物を提供することのできる化合物をいう。用語"薬学的に許容されるプロドラッグ"は、薬学的に許容されるプロドラッグを表す。
幾つかの態様において、化学式I〜IIIで表される化合物は、医薬組成物としてこの化合物を投与することにより、患者を治療するために使用される。この目的のために、ある態様において、この化合物は、本明細書に詳細に記載されている適切な組成物を形成するために、1以上の薬学的に許容される、担体などの賦形剤、希釈剤又はアジュバントと組み合わされる。
【0030】
用語"賦形剤"は、典型的な調剤及び/又は投与目的のために含まれている医薬品有効成分(API)以外の、薬学的に許容される添加剤、担体、アジュバント、又は他の適当な成分をいう。"希釈剤"と"アジュバント"は後に定義される。
用語"治療"、"治療する"、"治療法(therapy, treatment)"は、治癒的治療及び予防的治療(prophylactic therapy, preventive therapy)を含む治療に関するが、これに限定されない。予防的治療は、一般的に、全体的な疾患の発症を予防すること、又は個人の疾患の臨床前の明らかな発症段階を遅らせること、のいずれかを構成する。
用語"有効量"は、一般的に関連付けられている有害な副作用を回避しながら、疾患の重症度を改善し、各薬剤を治療に用いることによりその薬剤自体による発病の頻度を改善するという目標を達成する各剤の量を定量化することを目的とする。幾つかの態様において、この有効量は、一回の投与形態又は複数回の投与形態により投与される。
【0031】
MS法
特に断らない限り、出発物質、中間体及び/又は例示化合物の全ての質量スペクトルデータは、(M+H+)分子イオンを有する質量/電荷(m/z)として報告される。この分子イオンは、エレクトロスプレー検出方法によって得られる。臭素などの同位体原子を有する化合物は、当業者に理解されているように、検出された同位体パターンに従って報告される。
プロトンNMRスペクトル
特に断らない限り、全ての1H NMRスペクトルは、Brukerシリーズ500MHzの装置で測定された。このように測定が行われ、全ての観測されたプロトンは、適切な溶媒中でテトラメチルシラン(TMS)又は他の内部リファレンスから低磁場へのppmとして報告される。
【0032】
本明細書中の全ての合成は、公知の反応条件下で行うことが可能であるが、溶剤又は希釈剤の存在下又は不存在下のいずれかで、本明細書に記載した方法で行うのが有利である。その反応の進行や速度を可能にし及び/又はこれらに影響を与える溶媒の能力は、一般に、溶剤の種類や特性、温度、圧力、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気のような雰囲気の状態を含む反応条件、及び反応物などの濃度に依存する。
本発明は、さらに、最終的に所望の化合物を得る前に、それが単離されたか否かを問わず、ここに記載された合成手順から合成される構造を含む"中間体"を包含する。過渡的な出発物質から合成手順を実施した結果得られる構造、如何なる段階であっても記述した方法から逸脱した結果得られる構造、及び反応条件下で出発物質を形成する構造は、全て本発明の"中間体"である。さらに、反応性誘導体又は塩の形態の出発物質を使用して得られる構造体、若しくは本発明に従った方法の結果得られる構造体、及びin situで本発明の化合物を処理した結果得られる構造体も、本発明の範囲内である。
本発明の出発物質は、公知である、市販されている、又は当該技術分野で公知の方法に従って又はそれに類似の方法で合成することができる、のいずれかである。多くの出発物質は、公知の方法に従って調製してもよいが、実施例に記載する方法に従って調製することができる。出発物質を合成する際には、必要ならば、いくつかのケースでは、官能基が適当な保護基で保護される。保護基、その導入及び除去は、上述されている。
【0033】
所望の手順に従って化学式I〜IIIで表される化合物を合成するに際し、幾つかの態様において、ここに記載した手順のとおり、又はここに記載した手順の順序を変更して、当該化合物を合成するに適した順序で行われ、また、幾つかの態様において、必要に応じて、保護基の導入/除去の工程を追加して行われる。ある態様において、合成プロセスは、更に、不活性溶媒、塩基(例えば、LDA、IDEA、ピリジン、K2CO3など)や触媒などの追加試薬、及び上記の塩形態などの適切な反応条件を利用してもよい。幾つかの態様において、中間体は、精製されたり又は精製されずに、単離されたり又はin situで実施される。この精製の方法は当該分野で公知であり、例えば、結晶化、クロマトグラフィー(液相、気相など)、抽出、蒸留、粉砕、逆相HPLCなどが挙げられる。温度、時間、圧力、及び雰囲気(不活性ガス、通常雰囲気)などの反応条件は当該技術分野でよく知られており、反応に適するように適宜調整してもよい。ここに記載した阻害剤を合成するに有用な、合成化学、変換方法及び保護方法(保護及び脱保護)は、当該分野でよく知られており、例えば、以下のような文献の記載が含まれる:R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); A. Katritzky and A. Pozharski, Handbook of Heterocyclic Chemistry, 2nd edition (2001); M. Bodanszky, A. Bodanszky, The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Berlin Heidelberg (1984); J. Seyden-Penne, Reductions by the Alumino-and Borohydrides in Organic Synthesis, 2nd edition, Wiley-VCH, (1997); and L. Paquette, editor, Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995).
【0034】
幾つかの態様において、本発明の化合物はまた、複数の互変異性体の形態で表される。本発明は、明示的に本明細書に記載される化合物の全ての互変異性体を包含する。
ある態様において、本発明の化合物は、二重結合のシス-若しくはトランス−又はE−若しくはZ−異性体の形においても生じる。このような化合物のすべての異性体の形態は、明示的に本発明に含まれる。
また、本発明の化合物は、任意に、選択的な生物学的特性を向上させるための適切な機能を追加するように変更される。このような変更は当該技術分野でよく知られており、特定の生物学的区画(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的侵入を増加させたり、経口投与の利用可能性を増加させたり、注射による投与を可能にするために溶解性を高めたり、代謝を変化させたり、排出速度を変えたりするような改変が含まれる。このような例として、例えば、細胞壁のような疎水性膜を通して化合物の通過を促進するために、本発明の化合物に疎水基又は"脂っこい"部分を組み込むように変更する。
これらの詳細な説明は、本発明を例証することのみを目的として提示され、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
本発明の化合物(化学式I〜III)の薬理学的特性は、一般的に構造の変化により変わるが、ある態様において、化学式I〜IIIで表される化合物が有する活性は、in vitroとin vivoの両方において実証される。特に、いくつかの実施態様における本発明の化合物の薬理学的特性は、多くのin vitroの薬理学評価によって確認されている。以下に例証する薬理学的評価は、本発明に従った化合物を用いて実施される。
【0035】
適応症
本発明は、EGFR及び/又はErbB2から成る、但しこれらに限定されない、1以上のシグナル伝達経路を調節することができる化合物を提供する。EGFR及び/又はErbB2は、細胞の成長、細胞の生存及び浸潤をはじめとしたいくつかの鍵となる細胞プロセスの制御に関与する重要なシグナル分子である。
本発明の化合物は、以下のプロセスのうちの1以上もまた調節することができる。そのプロセスとしては、例えば、細胞の成長(例えば、分化、細胞の生存及び/又は増殖が挙げられる)、腫瘍細胞の成長(例えば、分化、細胞の生存及び/又は増殖が挙げられる)、腫瘍退縮、内皮細胞の成長(例えば、分化、細胞の生存及び/又は増殖が挙げられる)などが挙げられるが、これらに限定されない。
用語「調節する」とは、上記経路(又はその構成要素)の機能活性が、本化合物の非存在下における通常の活性と比較して変化することを意味する。この作用には、増加、アゴニスト作用、増大、増強、促進、刺激、減少、阻止、阻害、低減、漸減、拮抗などをはじめとした任意の質又は程度の調節が含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、EGFR及び/又はErbB2を含む1以上の細胞シグナル伝達経路が関与するいかなる疾患又は病状を治療するため及び/又は予防するために使用することができる。
【0036】
EGFR及び/又はErbB2並びにそれらが一部であるシグナル伝達経路の上流又は下流のいかなるメンバーに1以上の変異を有する癌を含む、但しこれらに限定されない、いかなる腫瘍又は癌は治療可能である。前で述べたように、癌は、その癌が関わる機序に関係なく本発明の化合物で治療可能である。
本発明はまた、哺乳動物における疾患及び病状を治療、予防、調節等するためなどの方法も提供し、その方法は、EGFR及び/又はErbB2を含む、但しこれらに限定されない、シグナル伝達経路の別の調節因子とともに本発明の化合物を投与することを含む。これらは、同じ組成物又は別個の製剤若しくは投薬単位中に存在してもよい。これらを同じ経路又は異なる経路で投与してもよく、同時に又は連続的などで投与してもよい。これらの方法は、通常、有効量の本発明の化合物を投与することを含む。この有効量とは、所望の結果を達成するために有用な本化合物の量をいう。この化合物を、以下に詳細に述べるように、いかなる有効な経路によりいかなる有効な形態で投与してもよい。
【0037】
本発明の方法は、腫瘍細胞の増殖を調節することを含み、この腫瘍細胞の増殖を調節することは、細胞の増殖を阻害することを含む。この細胞の増殖を阻害することは、腫瘍細胞の成長及び/又は分化が低減されること、減少すること、漸減されること、遅延されることなどを表している。この「増殖」は、細胞の成長及び分裂に関するいかなるプロセスも含み、そのプロセスは分化及びアポトーシスを含む。いかなる量の阻害であっても、治療に役立つと考えられる。
EGFR及び/又はErbB2並びにそれらが一部であるシグナル伝達経路の上流又は下流のいかなるメンバーに1以上の変異を有する癌を含む、但しこれらに限定されない、いかなる腫瘍又は癌は治療可能である。前で述べたように、癌は、その癌が関わる機序に関係なく本発明の化合物で治療可能である。結腸癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、骨癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、精巣癌、皮膚癌、膵臓癌、胃癌、直腸結腸癌、腎細胞癌、肝細胞癌、メラノーマなどの癌等の、但しこれらに限定されない、いかなる器官の癌も治療可能である。
【0038】
乳癌の例としては、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌及び非浸潤性小葉癌が挙げられるが、これらに限定されない。
気道の癌の例としては、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、並びに気管支腺腫及び胸膜肺芽腫が挙げられるが、これらに限定されない。
脳腫瘍の例としては、脳幹神経膠腫及び視床下部、神経膠腫、小脳星細胞腫及び大脳星細胞腫、髄芽腫、上衣腫、並びに神経外胚葉性腫瘍及び松果体腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
男性生殖器の腫瘍としては、前立腺癌及び精巣癌が挙げられるが、これらに限定されない。女性生殖器の腫瘍としては、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、膣癌及び外陰癌、並びに子宮の肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
消化管の腫瘍としては、肛門癌、結腸癌、直腸結腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、膵癌、直腸癌、小腸癌及び唾液腺癌が挙げられるが、これらに限定されない。
尿路の腫瘍としては;膀胱癌、陰茎癌、腎臓癌、腎盂癌、尿管癌及び尿道癌が挙げられるが、これらに限定されない。
眼癌としては、眼球内黒色腫及び網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
肝臓癌の例としては、肝細胞癌(線維層板の変異を伴うか又は伴わない肝細胞癌)、胆管癌(肝内胆管癌)及び肝細胞癌 ・ 胆管細胞癌の混合型(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma)が挙げられるが、これらに限定されない。
皮膚癌としては、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌及び非メラノーマ皮膚癌が挙げられるが、これらに限定されない。
頭頚部癌としては、喉頭癌、下咽頭癌、鼻咽頭癌及び/又は中咽頭癌並びに口唇口腔癌が挙げられるが、これらに限定されない。
リンパ腫としては、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキン病及び中枢神経系のリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
肉腫としては、軟部組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫及び横紋筋肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
白血病としては、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病及びヘアリーセル白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の化合物は、腫瘍細胞の増殖を阻害することに加えて、腫瘍退縮、例えば、腫瘍のサイズの減少又は身体内の癌の程度の減少を引き起こすことができる。
本発明は、上に記載された化合物(化学式I、II又はIIIの化合物)(その塩及びエステル並びにそれらの組成物を含む)を使用することにより、哺乳動物の過剰増殖性障害及び/又は血管新生障害(例えば、癌)を治療するための方法に関する。この方法は、ヒトをはじめとしたそのような治療を必要とする哺乳動物に、上記障害を治療するために有効な量の本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩若しくはエステルを投与することを含む。過剰増殖性障害としては、乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頚部、甲状腺、副甲状腺の癌、及びそれらの遠位の転移が挙げられるが、これらに限定されない。それらの障害には、リンパ腫、肉腫及び白血病も含まれる。
【0041】
投与化合物の量、並びに本発明の化合物及び/又は組成物を用いて癌を治療するための投薬管理は、被験体の年齢、体重、性別及び病状、疾患のタイプ、疾患の重症度、投与の経路及び頻度、並びに使用される特定の化合物をはじめとした種々の因子に左右される。よって、投薬管理は、大きく変動することがあるが、標準的な方法を用いて通例の通り決定することができる。いくつかの実施形態において、約0.01〜500mg/kg、好都合には、約0.01〜約50mg/kg、より好都合には、約0.01及び約30mg/kg、なおもより好都合には、約0.1〜約10mg/kg、なおもより好都合には、約0.25〜約1mg/kg体重という1日量が適切であり、その1日量は、本明細書中に開示される使用方法のすべてで使用できる。この1日量は、1日あたり1〜4回で投与してもよい。
【0042】
投与経路
適当な投与経路としては、経口投与、静脈内投与、直腸投与、エアロゾル投与、非経口投与、眼投与、肺投与、経粘膜投与、経皮投与、膣投与、耳投与、経鼻投与及び局所的投与が挙げられるが、これらに限定されない。この投与経路には、さらに、非経口送達として、例えば、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、髄内注射、並びに、髄腔内注射、直接脳室内注射、腹腔内注射、リンパ管内注射及び鼻腔内注射が含まれる。
【0043】
医薬組成物/製剤
1つの実施形態は、化学式I〜IIIの化合物又はその立体異性体、互変異性体、水和物、溶媒和化合物若しくは薬学的に許容可能な塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、処方されて医薬組成物になる。医薬組成物は、薬学的に使用することができる調剤中に活性化合物を処理することを促進するような、1以上の薬学的に許容可能な不活性成分を用いて、従来の方法で処方される。適切な処方は、選択される投与経路に依存する。本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、次のような文献中に要約されている。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995);Hoover,John E.,Remington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins1999) これらの文献は本明細書中に引例として取り込まれれる。
【0044】
化学式I〜IIIの化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容可能な不活性成分を含む医薬組成物が本明細書中に提供される。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、併用療法におけるように化学式I〜IIIの化合物が他の活性成分と混合された医薬組成物として投与される。他の実施形態において、その医薬組成物は、他の医学的薬剤又は医薬品、担体、アジュバント、保存剤、安定化剤、加湿剤又は乳化剤、溶解促進物質、浸透圧を制御するための塩及び/若しくは緩衝剤を含む。さらに他の実施形態において、その医薬組成物は、他の治療上価値ある物質を含む。
本明細書中で使用される医薬組成物とは、化学式I〜IIIの化合物と、他の化学的構成要素(即ち、薬学的に許容可能な不活性成分)、例えば、担体、賦形剤、結合剤、充填剤、懸濁剤、香味剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性物質、潤滑剤、着色料、希釈剤、可溶化剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、浸透促進剤、加湿剤、消泡剤、酸化防止剤、保存料又はそれらの1以上の組み合わせとの混合物のことを指す。その医薬組成物は、生物への本化合物の投与を促進する。本明細書中に提供される治療又は使用の方法を実施する際、治療有効量の本明細書中に記載される化合物は、治療されるべき疾患、障害又は病状を有する哺乳動物に医薬組成物として投与される。いくつかの実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。治療有効量は、疾患の重症度、被験体の年齢及び相対的な健康状態、使用される化合物の作用強度、並びに他の因子に応じて、大きく変動することがある。本化合物は、単独で、又は混合物の構成要素として1以上の治療薬と併用して、使用することができる。
【0045】
本明細書中に記載される医薬製剤は、適切な投与経路によって被験体に投与され、その投与経路としては、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)、鼻腔内、頬側、局所的、直腸又は経皮的の投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載される医薬製剤としては、水性液体の分散系、自己乳化する分散系、固体の溶液、リポソーム分散系、エアロゾル、固体剤形、粉末、即時放出製剤、放出制御製剤、速溶性製剤、錠剤、カプセル、丸剤、遅延放出製剤、徐放製剤、パルス放出製剤、多粒子剤、及び即時放出と放出制御の混合型の製剤が挙げられるが、これらに限定されない。
化学式I〜IIIの化合物を含む本明細書中に記載される医薬組成物は、任意の適当な剤形に製剤化され、その剤形としては、経口用の水性の分散系、液体、ゲル、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー、懸濁液、経口用の固体剤形、エアロゾル、放出制御製剤、速溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、散剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、遅延放出製剤、徐放製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤及び即時放出と放出制御の混合型の製剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
経口使用するための医薬調製物は、1以上の固体賦形剤を本明細書中に記載される化合物の1以上と混合し、必要に応じて、得られた混合物を粉砕し、所望であれば適当な補助剤を加えた後、その顆粒の混合物を処理することによって得られ、それにより、錠剤又は糖衣錠のコアが得られる。適当な賦形剤としては、例えば、充填物質(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖);セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム);又はその他のもの、例えば:ポリビニルピロリドン(PVP又はポビドン)若しくはリン酸カルシウムが挙げられる。所望であれば、崩壊剤(例えば、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸若しくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウム)が加えられる。いくつかの実施形態において、識別のために、又は活性な化合物の様々な用量の組み合わせを特徴づけるために、染料又は色素が錠剤又は糖衣錠のコーティング剤に加えられる。
経口投与用のすべての製剤が、そのような投与に適する投薬量で存在する。そのような投薬量の単位の例は、錠剤又はカプセルである。いくつかの実施形態において、これらは、約1〜2000mg、好都合には、約1〜500mg、典型的には、約5〜150mgの量の活性成分を含む。ヒト又は他の哺乳動物にとって適当な1日量は、患者の病状及び他の因子に応じて大きく変動するが、前述と同様に、通例の方法及び慣例を用いて決定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される固体の剤形は、錠剤(懸濁錠剤、速溶性錠剤、咬合崩壊錠剤(bite-disintegration tablet)、急速崩壊錠剤、発泡性錠剤又はカプレットを含む)、丸剤、散剤、カプセル、固体の分散系、固体の溶液、生体内分解性(bioerodible)剤形、放出制御製剤、パルス放出剤形、多粒子剤形、ビーズ、ペレット剤、顆粒剤の形態である。他の実施形態において、医薬製剤は、散剤の形態である。なおも他の実施形態において、医薬製剤は、錠剤の形態である。他の実施形態において、化学式I〜IIIの化合物の医薬製剤は、カプセルの形態である。
いくつかの実施形態において、経口用の医薬固体剤形は、化学式I〜IIIの化合物の放出制御をもたらすように製剤化される。放出制御とは、化学式I〜IIIの化合物が組み込まれている剤形からの所望のプロファイルに従った長期間にわたる化学式I〜IIIの化合物の放出のことを指す。そのようなより長い反応の期間は、対応する短時間作用性の即時放出調製物では達成されない多くの固有の利益を提供する。
【0048】
1つの態様において、経口投与用の液体製剤の剤形は、薬学的に許容可能な水性の経口用の分散系、エマルジョン、溶液、エリキシル剤、ゲル及びシロップ剤を含むがこれらに限定されない群から選択される水性懸濁液の形態である。例えば、Singh et al..,Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,2nd Ed.,pp.754-757(2002)を参照されたい。。上記液体の剤形は、化学式I〜IIの化合物の粒子に加えて、添加物、例えば:(a)崩壊剤;(b)分散剤;(c)加湿剤;(d)少なくとも1つの保存料、(e)増粘剤、(f)少なくとも1つの甘味剤、及び(g)少なくとも1つの香味剤を含む。いくつかの実施形態において、上記水性の分散系は、結晶性の阻害薬をさらに含み得る。
1つの実施形態において、本明細書中に記載される水性の懸濁液及び分散系は、The USP Pharmacists' Pharmacopeia(2005 edition, chapter 905)に定義されているように均質の状態を少なくとも4時間保つ。1つの実施形態において、水性懸濁液は、1分未満継続する物理的撹拌によって均質の懸濁液に再懸濁される。なおも別の実施形態において、均一な水性の分散系を維持するために撹拌は必要ない。
【0049】
1つの態様において、化学式I〜IIIの化合物は、筋肉内注射、皮下注射又は静脈内注射に適した医薬組成物に製剤化される。1つの態様において、筋肉内注射、皮下注射又は静脈内注射に適した製剤としては、生理的に許容可能な滅菌された水溶液若しくは非水溶液、分散系、懸濁液又はエマルジョン、及び滅菌された注射可能な溶液又は分散系に再構成するための滅菌された粉末が挙げられる。
非経口注射には、ボーラス注射又は持続注入が含まれることがある。注射用の製剤は、単位剤形で、例えば、アンプル又は複数回用量の入った容器(保存料が加えられたもの)で提供されることがある。本明細書中に記載される医薬組成物は、油性又は水性ビヒクルにおける滅菌された懸濁液、溶液又はエマルジョンとしての非経口注射に適した形態であり得、製剤化剤(例えば、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤)を含み得る。1つの態様において、活性成分は、使用前に、適当なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で構成するための粉末の形態である。
いくつかの実施形態において、1日の非経口投薬管理は、約0.1〜約30mg/kg総体重、好ましくは、約0.1〜約10mg/kg、より好ましくは、約0.25mg〜1mg/kgであってもよい。
【0050】
肺投与の場合、医薬組成物は、1つの実施形態において、エアロゾルの形態で、又は乾燥粉末エアロゾルを含む吸入器を用いて、投与される。薬物を直腸投与するための坐剤は、その薬物を適当な非刺激性の賦形剤(例えば、常温では固体であるが直腸温では液体であるがゆえに直腸内で融解して薬物を放出する、カカオバター及びポリエチレングリコール)と混合することによって調製され得る。
本発明のいくつかの実施形態において、医薬を製造する方法が提供され、その方法は、ある量の化学式I、II又はIIIに記載の化合物を薬学的に許容可能な担体と混和することにより、その医薬を製造することを含む。
いくつかの実施形態において、癌を治療するための医薬を製造する方法が提供され、その方法は、ある量の化学式I、II又はIIIに記載の化合物を薬学的に許容可能な担体と混和することにより、その医薬を製造することを含む。
【0051】
併用
本発明の化合物を、単独の活性な医薬品として投薬又は投与することができるが、それらを、1以上の本発明の化合物と組み合わせて使用したり、又は他の薬剤とともに使用することもできる。
1つの実施形態において、本明細書中に記載される化合物のうちの1つの治療有効性は、アジュバントの投与によって増強される(即ち、アジュバントは、それ自体では最小の治療上の効果しかないかもしれないが、別の治療薬と併用すると、患者に対する全体的な治療上の効果が増強される)。又は、いくつかの実施形態において、患者が経験する上記利益は、本明細書中に記載される化合物のうちの1つを、治療上の効果を有する別の治療薬とともに投与すること(治療管理も含む)によって増加する。
1つの特定の実施形態において、化学式I〜IIIの化合物は、第2の治療薬と同時に投与される。ここで、化学式I〜IIIの化合物及び第2の治療薬の併用は、治療される疾患、障害又は病状の様相を異なるように調節し、そのためいずれかの治療薬だけの投与よりも全体的に大きな利益が提供される。いくつかの実施形態において、この第2の治療薬は抗癌剤である。
【0052】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される化合物が1以上の追加の薬剤(例えば、追加の治療的に有効な薬物、アジュバントなど)と併用して投与される場合には、医薬組成物を製剤する際、及び/又は治療管理の際に、本明細書中に開示の化合物の異なる治療的に有効な投薬量が用いられるであろう。併用治療管理において使用するための薬物及び他の薬剤の治療的に有効な投薬量は、活性物質自体について本明細書の上に示された手段と類似の手段によって決定することができる。さらに、本明細書中に記載される予防/治療の方法は、規則正しい投薬の使用、即ち、毒性の副作用を最小にするために、より少ない用量をより高い頻度で提供することを含む。いくつかの実施形態において、併用治療管理には、本明細書に記載されている第2の薬剤を使う治療の前、治療中又は治療の後に、化学式I〜IIIの化合物の投与が開始される治療管理が含まれ、第2の薬剤を使う治療中の任意の時点又は治療が終了した後の任意の時点まで継続される。また、この併用治療管理には、化学式I〜IIIの化合物及び併用して使用される第2の薬剤が、同時に若しくは異なる時点で、及び/又は治療期間中において間隔を狭めて若しくは延ばして投与される、治療も含まれる。併用治療は、さらに、患者の臨床管理を支援するために様々な時点において開始及び終止される定期的な治療を含む。
【0053】
併用療法において、複数の治療薬(そのうちの1つは、本明細書中に記載される化合物のうちの1つである)が、任意の順序で又は同時に投与される。投与が同時である場合、複数の治療薬は、単なる例としてであるが、単一の形態、統合された形態又は複数の形態で(例えば、単一の丸剤又は2つの別個の丸剤として)提供される。1つの実施形態において、治療薬のうちの1つのみが複数回に分けて投与され、あるいは、治療薬全て(2つ又は存在する場合それ以上)が複数回に分けて投与される。非同時投与のいくつかの実施形態において、それらの複数回の投薬のタイミングは、0週間超から4週間未満で変動する。さらに、併用の方法、組成物及び製剤は、2つの薬剤だけの使用に限定されるべきでない;複数の治療薬の併用の使用も考えられる。
【0054】
1つの態様において、化学式I〜IIIの化合物は、1以上の抗癌剤と併用して投与されるか、又は製剤化される。いくつかの実施形態において、抗癌剤の1以上はアポトーシス促進剤である。抗癌剤の例としては、以下のうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない:ゴシポール、ゲナセンス、ポリフェノールE、クロロフシン、オールトランスレチノイン酸(ATRA)、ブリオスタチン、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、5−アザ−2'−デオキシシチジン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、ゲムシタビン、イマチニブ、ゲルダナマイシン、17−N−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)、フラボピリドール、LY294002、ボルテゾミブ、トラスツズマブ、BAY11−7082、PKC412又はPD184352、パクリタキセル及びパクリタキセルのアナログ。共通の構造特徴として基本的なタキサン骨格を有する化合物もまた、微小管の安定化に起因してG2−M期で細胞を停止させる能力を有すると示されており、本明細書中に記載される化合物と併用して癌を治療するために有用でありうる。
【0055】
化学式I〜IIIの化合物と組み合わせて使用するための他の抗癌剤としては、下記の1以上が挙げられる。即ち、アビラテロン、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ズアゾマイシン;エダトレキセート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イイモホシン;インターロイキンII(組換えインターロイキンII、即ち、rIL2を含む)、インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンアルファ−2b;インターフェロンアルファ−n1;インターフェロンアルファ−n3;インターフェロンベータ−1a;インターフェロンガンマ−1b;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;ビノレルビン酒石酸塩;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩。
【0056】
化学式I〜IIIの化合物と併用して使用するためのさらに他の抗癌剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗物質、天然物又はホルモン、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシルなど)、アルキルスルホネート類(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素類(例えば、カルムスチン、ロムスチンなど)又はトリアゼン類(ダカーバジンなど)が挙げられる。代謝拮抗物質の例としては、葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート)又はピリミジンアナログ(例えば、シタラビン)、プリンアナログ(例えば、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
化学式I〜IIIの化合物と併用して使用するための天然物の例としては、ビンカアルカロイド類(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン類(例えば、エトポシド)、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン)、酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ)又は生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロンアルファ)が挙げられるが、これらに限定されない。
化学式I〜IIIの化合物と併用して使用するためのアルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファランなど)、エチレンイミン及びメチルメラミン類(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホネート類(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素類(例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンなど)又はトリアゼン類(デカルバジンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
これらの詳細な説明は、単に例示目的で示されたものであり、本発明の範囲に対する限定を意図していない。
【実施例】
【0059】
実施例1 N-(2-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル)アセトアミドの合成
【化4】

無水酢酸(79.6g、0.76モル、1.46当量)を60℃で1.5時間かけて2-アミノ-5-ニトロフェノール(8Og、0.52モル、当量1.00)と酢酸(320ml、5.2モル、10当量)の混合物に添加した。1時間後、これに無水酢酸(7.4g、0.071モル、0.137当量)を加えた。更に1時間後、この混合物を冷却し、水200mlで希釈した。固体が形成したので、濾過して回収し、水とヘプタンで洗浄した。この固体を真空オーブンで乾燥して、表題の化合物94gを得た。MS(ESI)m/z:197(M+ L)
【0060】
実施例2 N-((2-メトキシエトキシ)-4-ニトロフェニル)アセトアミドの合成
【化5】

N-(2-ヒドロキシ-4-ニトロフェニル)アセトアミド(93g、0.47モル、1.00当量)、炭酸カリウム(184g、1.33モル、2.81当量)及びジメチルホルムアミド(465 ml)の混合物を、15分間かけて2-ブロモエチルメチルエーテル(90g、0.647モル、1.36当量)を添加しながら、60℃で攪拌した。1時間後、これに2-ブロモエチルメチルエーテル(4g、0.028モル、0.059当量)を添加し、この混合物を60℃で更に1時間撹拌した。この混合物を室温まで冷却し、これを1Lの水に注ぎ入れた。30分後、生成物が形成したので、濾過して回収し、水とヘプタンで洗浄した。生成物を60℃の真空オーブン中で乾燥させ、表記化合物97gを得た。MS(ESI)m/z:255(M+1)
【0061】
実施例3 (E)-エチル3-(4-アセトアミド-3-(2-メトキシエトキシ)フェニルアミノ)-2-シアノアクリレートの合成
【化6】

圧力容器中でN-(2-(2-メトキシエトキシ)-4-ニトロフェニル)アセトアミド(75g、0.295モル、1.00当量)に、メタノール(600 ml)、10%Pd/C(6g)及び氷酢酸(60ml)を添加し、圧力容器を閉じた。反応容器の空気を5気圧の水素に置換し、5時間反応させた。反応混合物を濾過し、濃縮した。これにトルエン(440ml)、THF(220 ml)を、及び(E)-エチル2-シアノ-3-エトキシアクリレート(76g、0.497モル、1.68当量)を添加し、16時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、濾過、洗浄し、テトラヒドロフランを用いて乾燥させて、オフホワイトの固体である生成物77gを得た。MS(ESI)m/z:IM(M+1)
【0062】
実施例4 N-(3-シアノ-4-ヒドロキシ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-yl)アセトアミドの合成
【化7】

(E)-エチル3-(4-アセトアミド-3-(2-メトキシエトキシ)フェニルアミノ)-2-シアノアクリレート(30g、0.0864モル、1.00当量)のダウサーム(1.8 L)溶液を、250℃で15時間、窒素雰囲気下で撹拌した。この混合物を室温まで冷却すると、沈殿物が形成したので、ろ過して回収した。回収した固形物を、トルエンで洗浄し、テトラヒドロフラン(120 ml)と混合した。この混合物を30分間還流し、室温まで冷却すると、沈殿物が生成した。この沈澱物を回収し、テトラヒドロフランで洗浄した。乾燥後、表記化合物9.0gを得た。MS(ESI)m/z:301(M+1)
【0063】
実施例5 N-(4-クロロ-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)アセトアミドの合成
【化8】

オキシ塩化リン(70mL、0.765モル、26.4当量)とN-(3-シアノ-4-ヒドロキシ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)アセトアミド(8.8g、0.029モル、1.00当量)との混合物を撹拌し、80〜85℃で4時間加熱した。この反応混合物を冷却し、濾過した。この濾液に、470mlの水に炭酸カリウム(270g、1.95モル)を溶解して冷却(0〜10℃)した溶液を加えた。得られた黄色の混合物を少なくとも12時間撹拌した。この混合物を濾過し、温水で洗浄した。固形物を回収し、乾燥して、表記化合物6.5gを得た。MS(ESI)m/z:319(M+1)
【0064】
実施例6 6-アミノ-4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-3-カルボニトリルの合成
【化9】

N-(4-クロロ-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)アセトアミド(6.3g、0.0197モル、1.00当量)、3-クロロ-4-(2-ピリジルメトキシ)アニリン(4.7g、0.0201モル、1.00当量)、メタンスルホン酸(0.7ml、0.0108モル)及びエタノール(150ml)の混合物を6時間還流下で攪拌し、次いで0.6N塩化水素(300ml、0.18モル)を加えた。この混合物を80℃で19時間加熱し、次いで0℃に冷却したところ、沈殿物が形成した。この沈殿物を濾過し、これを、メタノール(150ml)に炭酸カリウム(100ml、O.lモル)を溶解した溶液に加え、この混合物を3時間撹拌した。得られた混合物を濾過し、メタノール/水の1:1混合液(300ml)で洗浄し、乾燥して、表記化合物6.4gを得た。MS(ESI)m/z:475(M+1)
【0065】
実施例7 (E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)-4(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミドの合成
【化10】

(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エン酸塩酸塩(1.28g、7.46ミリモル、1.96当量)のTHF(18 ml)溶液と触媒量のDMFの混合物を5℃に冷却し、これに塩化オキサリル(0.67ml、0.007モル、1.84当量)をゆっくりと添加した。次いで、この混合物を室温まで加温し、3時間撹拌した。これに6-アミノ-4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-3-カルボニトリル(1.8g、0.0038モル、1当量)のN-メチル-2-ピロリジノン(20ml)溶液を10分かけて滴下した。次いで、この混合物を一晩攪拌した。反応物を水で冷却し、次いで、pHが11になるまで、水酸化ナトリウム水溶液を加えた。得られた混合物を1時間攪拌した。反応混合物の沈殿物を濾過し、水で洗浄した。この沈澱物をアセトニトリルとTHF中で再結晶させた。その結果、最終的に、表記化合物1.64gを得た。MS(ESI)m/z:592(M+1)
【0066】
実施例8 2-((2-クロロ-4-ニトロフェノキシ)メチル)ピリジンの合成
【化11】

アセトニトリル(750 ml)中の水酸化カリウム (20.6g、0.15モル、0.52当量)と2-ピリジルカルビノール(31.08g、0.285モル、1.00当量)の混合物を、35℃で30分間撹拌した。これに3-クロロ-4-フルオロニトロベンゼン(50g、0.29モル、1.00当量)のアセトニトリル(250ml)溶液を添加し、この混合物を40℃で14時間撹拌し、次いで室温に冷却した。これに水(1000 ml)を加え、析出した固形物を濾過し、水で洗浄し、乾燥して、表記化合物52.5gを得た。MS(ESI)m/z:265(M+1)
【0067】
実施例9 3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリンの合成
【化12】

エタノール(600ml)中の、2-((2-クロロ-4-ニトロフェノキシ)メチル)ピリジン(26.5g、0.10モル、1.00当量)、鉄粉(25.2g、0.43モル、4.28当量)及び塩化アンモニウム(72.24g、1.35モル、13.5当量)の混合物を、還流下で2時間機械的に攪拌した。反応液を冷却し、反応の生成混合物を濾過し、濾液を真空中で乾燥した。得られた固形物を塩化メチレン(500ml)に溶解し、ろ過した。真空中で濾液から溶媒を除去して、表記化合物15.3gを得た。MS(ESI)m/z:235(M+1)
【0068】
実施例10 6-アミノ-4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキノリン-3-カルボニトリルの合成
【化13】

エタノール(30ml)中の、N-(4-クロロ-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)アセトアミド(11.64g、0.04モル、1.00当量)、3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)アニリン(9.53g、0.04モル、1.00当量)及びメタンスルホン酸(1.3ml、0.02モル、0.5当量)の混合物を還流下で6時間攪拌し、0.6N塩化水素(600ml、0.36モル)を加えた。この混合物を更に80℃で19時間加熱し、その後0℃に冷却すると、固形物が形成し析出したので、ろ過した。この生成物を炭酸カリウム(200ml、0.2モル)のメタノール(300 ml)溶液に加え、得られた混合物を3時間撹拌した。析出した固形物を濾過し、メタノール/水の1:1混合液(500ml)で洗浄し、乾燥して、表記化合物12.8gを得た。MS(ESI)はm/z:AA [ベータ版](M+1)
【0069】
実施例11 (E)-メチル4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エノエート塩酸塩の合成
【化14】

トリエチルアミン(75ml、0.54モル、2.8当量)をTHF(200ml)に溶解し、これにジメチル-d6-アミン塩酸塩(20g、0.23モル、1.2当量)を加えた。この溶液に、室温で、メチル-4-ブロモクロトン酸エチル(4Og、純度85%、0.19モル、1.00当量)のTHF(200ml)溶液を攪拌しながら滴下し、この混合物を室温で一晩反応させた。得られた固形物を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させ、黄色油状物を得た。この油状物をイソプロパノール(100ml)に溶解し、pHが2.0に達するまで、この溶液に塩化水素を添加した。形成した固体生成物をろ過し、乾燥して、表記化合物14.6gを得た。MS(ESI)m/z:149(M+1)
【0070】
実施例12 (E)-4 -(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エン酸塩酸塩の合成
【化15】

水酸化ナトリウム(12.4g、0.31モル、4.1当量)を水(80ml)に溶解した溶液を、(E)-メチル-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エノエート塩酸塩(14g、0.0755モル、1.00当量)のメタノール(300ml)撹拌溶液に加えた。この反応混合物を4時間攪拌し、次いで、pHが2に達するまで、この溶液に6N塩酸を加えた。この反応混合物を減圧濃縮した後、エタノール(100ml)を加えた。生成した固形物を濾過により除去した。ろ液を減圧下で濃縮し、濃厚な油を得た。この油をイソプロパノール及びアセトン中で結晶化させ、表記化合物7.2gを得た。MS(ESI)m/z:135(M+1)
【0071】
実施例13 (E)-N-(4-[3-クロロ-4-(2-ピリジニルメトキシ)アニリン)-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチル-d6-アミノ)-2-ブテナミド(化合物A)の合成
【化16】

4-N,N-ジメチル-d6-アミノクロトン酸塩酸塩(1.28g、0.008モル、1.96当量)のTHF(18 ml)溶液と触媒量のDMFを5℃に冷却し、これに塩化オキサリル(0.67ml、0.007モル、1.84当量)をゆっくりと添加した。次いで、この混合物を室温まで加温し、3時間撹拌した。4-[3-クロロ-4-(2-ピリジルメトキシ)アニリン]-3-シアノ-7-エトキシ-6-アミノキノリン(1.7g、0.004モル、1.00当量)のN-メチル-2-ピロリジノン(20 ml)溶液を10分かけて滴下した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。この反応物を水で冷却し、次いで、pHが11に達するまで、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えた。この混合物をさらに1時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄した。得られた固形物をアセトニトリル及びTHF中で再結晶し、乾燥して、表記化合物1.56gを得た。MS(ESI)m/z:563(M+1)
【0072】
実施例14 6-アミノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-3-カルボニトリルの合成
【化17】

エタノール(60.0ml)中のN-(4-クロロ-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)アセトアミド(23.2g、0.08モル、1.00当量)、3-エチニルアニリン(10.1g、0.094モル、1.18当量)及びメタンスルホン酸(2.3ml、0.0355モル)の混合物を、還流下で6時間撹拌し、その後0.6N塩化水素(1000ml、0.6モル)を添加した。この反応混合物を80℃に加熱し、19時間保持し、0℃に冷却したところ、沈殿物を形成した。この沈殿物を濾過し、1N炭酸カリウム(400ml)のメタノール(600 ml)溶液に加え、この混合物を3時間撹拌した。この反応混合物をメタノール/水の1:1混合液(500ml)で洗浄し、乾燥して、表記化合物21.3gを得た。 MS(ESI)m/z:563(M+1)
【0073】
実施例15 (E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド(化合物B)の合成
【化18】

(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エン酸塩酸塩(1.38g、0.0076モル、2.1当量)のTHF(18 ml)溶液及び触媒量のDMFを5℃に冷却し、これに塩化オキサリル(0.67ml、0.007モル、1.9当量)をゆっくりと添加した。次いで、この混合物を室温まで加温し、3時間撹拌した。6-アミノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-3-カルボニトリル(1.2g、0.0037モル、1.00当量)のN-メチル-2-ピロリジノン(15ml)溶液を10分かけて滴下した。反応混合物を一晩撹拌し、この反応物を水(200ml)で冷却した。次いで、pHが11に達するまで、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えた。この混合物を1時間攪拌したところ、沈殿物が形成した。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、固形物を乾燥し、表記化合物1.48gを得た。MS(ESI)m/z:563(M+1)
【0074】
実施例16 (E)-メチル4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エノエートの合成
【化19】

トリエチルアミン(37.5ml、0.27モル、2.8当量)をTHF(100ml)に溶解し、ジメチルアミン塩酸塩(9.3g、0.114モル、1.2当量)を添加した。この溶液に、メチル-4-ブロモクロトン酸エチル(2Og、85%純度、当量0.095モル、1.00当量)のTHF(100ml)溶液を滴下し、この混合物を室温で撹拌した。この反応混合物を室温で一晩反応させた。この反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させ、黄色油状物を得た。この油状物をイソプロパノール(50ml)に溶解し、pHが2.0に達するまで、この溶液に塩化水素を添加した。白色固形物が形成したので、これを濾過し、乾燥して、表記化合物7.1gを得た。MS(ESI)m/z:563(M+1)
【0075】
実施例17 (E)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エン酸塩酸塩の合成
【化20】

水酸化ナトリウム(6.2g、0.155モル、4当量)を水(40ml)に溶解した溶液を、(E)-メチル-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エノエート塩酸塩(7g、0.039モル、1.00当量)
のメタノール(150ml)撹拌溶液に加えた。この反応混合物を4時間攪拌し、次いで、pHが2に達するまで、この溶液に6N塩酸を加えた。この反応混合物を減圧濃縮した後、エタノール(50ml)を加えた。生成した固形物を濾過により除去した。ろ液を減圧下で濃縮し、濃厚な油を得た。この油をイソプロパノール及びアセトン中で結晶化させ、表記化合物3.6gを得た。MS(ESI)m/z:563(M+1)
【0076】
実施例18 (E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド(化合物C)の合成
【化21】

(E)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エン酸塩酸塩(1.28g、7.73ミリモル、2.1当量)のTHF(18ml)溶液及び触媒量のDMFを5℃に冷却し、これに塩化オキサリル(0.67ml、0.007モル、1.9当量)をゆっくりと添加した。次いで、この混合物を室温まで加温し、3時間撹拌した。6-アミノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-3-カルボニトリル(1.2g、0.0037モル、1.00当量)のN-メチル-2-ピロリジノン(15ml)溶液を10分かけて滴下した。反応混合物を一晩撹拌し、この反応物を水(200ml)で冷却した。次いで、pHが11に達するまで、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えた。この混合物を1時間攪拌したところ、沈殿物が形成した。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、固形物を乾燥し、表記化合物1.43gを得た。MS(ESI)m/z:563(M+1)
【0077】
実施例19 4-クロロ-7-メトキシキナゾリン-6-イルアセテートの合成
【化22】

7-メトキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イルアセテート(8.7g、0.037モル)、塩化チオニル(120ml、1.65モル)及びDMF(1 ml)の混合物を攪拌し、55℃で6時間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、塩化チオニルを蒸発除去した。得られた固形物をクロロホルムに溶解し、この溶液を炭酸水素ナトリウム及び食塩水で洗浄し、クロロホルムを減圧下で蒸発除去し、表記化合物7.9gを得た。MS(ESI)m/z:253(M+1)
【0078】
実施例20 4-(3-エチニルフェニルアミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イルアセテート塩酸塩の合成
【化23】

4-クロロ-7-メトキシキナゾリン-6-イルアセテート(7.75g、0.0307モル)、3-エチニルアニリン(4g、0.0342モル、1.1当量)及びクロロホルム(120ml)の混合物を一晩還流した。反応混合物を室温まで冷却し、この溶液をろ過し、表記化合物10.2gを得た。MS(ESI)m/z:334(M+1)
【0079】
実施例21 4-(3-エチニルフェニルアミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-オールの合成
【化24】

4-(3-エチニルフェニルアミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イルアセテート塩酸塩(10g、0.027モル)、メタノール(250 ml)及び25%アンモニア水(8ml、0.106モル、当量3.93 )の混合物を室温で17時間撹拌し、1.5時間加熱還流した。この混合物を冷却したところ、沈殿が生成したので、これを単離し、乾燥して、表記化合物5.66gを得た。MS(ESI)m/z:307(M+1)
【0080】
実施例22 N-(3-エチニルフェニル)-7-メトキシ-6-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミンの合成
【化25】

4-(3-エチニルフェニルアミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-オール(2.9g、0.01モル)、2-メトキシエチルメタンスルホネート(4.6g、0.03モル、3当量)及び炭酸セシウム(9.9g、0.03モル、3当量)のDMF(100ml)溶液を60℃で12時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、冷水に注ぎ込み、得られた固形物を濾過し、乾燥して、表記化合物1.5gを得た。MS(ESI)m/z:350(M+1)
【0081】
実施例23 N-(3-エチニル-d-フェニル)-7-メトキシ-6-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミンの合成
【化26】

N-(3-エチニルフェニル)-7-メトキシ-6-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(0.35g、0.00lモル)のTHF(30mL)溶液に、0℃でイソプロピルマグネシウムクロリド(THF中2N、5ml、0.01モル、10当量)を添加した。この反応混合物を0℃で3時間攪拌し、CD3OD(5ml、0.12モル)を添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌し、D2Oで冷却し、酢酸エチルで抽出した。この有機抽出物を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、蒸発させて、表記化合物0.21gを得た。MS(ESI)m/z:351(M+1)
【0082】
実施例24 2-メトキシ-d3-エタノールの合成
【化27】

メタノール-d4(20ml、0.493モル、4当量)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.316g)及びエチレンオキシド(5.5g、0.125モル、1当量)の混合物を、窒素雰囲気下で3時間攪拌し、その後、pHが8-9に達するまで、水酸化カリウムのメタノール-d4溶液を加えた。メタノール-d4を大気圧下で蒸留し、残渣を140℃で蒸留し、2-d3-メトキシエタノール4.2gを得た。MS(ESI)m/z:80(M+1)
【0083】
実施例25 2-メトキシエチルメタンスルホン酸の合成
【化28】

2-d3-メトキシエタノール(1.40g、18.4ミリモル)とトリエチルアミン(2.40 mL)の塩化メチレン(25mL)溶液に、0℃で、メタンスルホニルクロライド(2.05g、18.5ミリモル)を加えて、0℃で2時間攪拌した。この反応混合物を水性NaHCO3及び食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮して、表記化合物1.01gを得た。MS(ESI)m/z:158(M+1)
【0084】
実施例26 N-(3-エチニルフェニル)-7-メトキシ-6-(2-メトキシ-d3-エトキシ)キナゾリン-4-アミンの合成
【化29】

4-(3-エチニルフェニルアミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-オール(0.5g、1.7ミリモル)、2-メトキシエチルメタンスルホネート(0.75g、5.1ミリモル)及び炭酸セシウム(1.50g、4.6ミリモル)のDMF(125ml)溶液を60℃で12時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、冷水に注ぎ込み、得られた固形物を濾過し、乾燥して、表記化合物180mgを得た。MS(ESI)m/z:353(M+1)
【0085】
実施例27 放射計によるキナーゼアッセイ
試薬及び手順
基本反応バッファー:20 mM Hepes緩衝液(pH7.5)、10mM MgCl2、1mM EGTA、0.02% Brij35、0.02 mg/ml BSA、0.1mM Na3VO4、2mM DTT、1% DMSO。必要な補助因子が、それぞれのキナーゼ反応に個別に追加される。
作りたての基本反応バッファー中に指定された基質を加える。
この基質溶液に必要な補助因子を加える。
この基質溶液に指定されたキナーゼを加えて、穏やかに混合する。
このキナーゼ反応液に化合物のDMSO溶液を加える。
反応を開始するために、この反応混合物に33P-ATP(比活性0.01μCi/μl最終)を加える。最終反応容量は5μlである。
このキナーゼ反応液を室温で120分間インキュベートする。
反応液をP81イオン交換紙(Whatman #3698-915)上にスポットする。
フィルターを0.1%リン酸でよく洗う。
プログラムPrism (GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA)のシグモイド用量反応(可変勾配)アルゴリズムを用いてIC50生成のデータを分析する
【0086】
キナーゼ情報
EGFR: Genebankアクセション番号NP 005219.2。組換え触媒ドメイン、アミノ酸668-1210、GSTタグ付、昆虫細胞から精製された。自己リン酸化によりin vitroで活性化されている。アッセイにおける最終濃度= 4 nM。基質:PEY。ペプチド配列:ポリのGlu-Tyr 4:1の比率。アッセイにおける最終濃度= 0.2mg.mL. 反応混合物に補助因子として2mMのMnC12を加える。
ErbB2/HER2: GeneBankアクセション番号X03363。組換え触媒ドメイン、アミノ酸679-1255、GSTタグ付け、昆虫細胞から精製された。アッセイにおける最終濃度= 50 nM。基質:PEY。ペプチド配列:ポリGlu-Tyr 4:1の比率。アッセイにおける最終濃度= 0.2mg.mL. 反応混合物に補助因子として2mMのMnC12を加える。
【0087】
生物学的評価
上記実施例の化合物を、ハイスループット放射分析法及びナノリットル量の技術を利用したキナーゼアッセイ(Reaction Biology Corporation, Malvern PA)により評価した。
化合物A(実施例13)を、10μMから3倍の段階希釈での10点IC50モードで試験した。その結果、化合物Aは、EGFRとErbB2(HER2)の両方の強力な阻害薬であることが示された。同様に、他の本発明の化合物(例えば、実施例7、15(化合物B)及び18(化合物C)の化合物)のすべてが、EGFR及びHER2アッセイにより、IC50が<1μMであることが見出された。
【表1】

【0088】
本発明の化合物を、ヒト腫瘍細胞株の成長アッセイにより評価した。例えば、実施例18で調製された化合物Cは、10μMから3倍の段階希釈での10点IC50モードの条件下において、いくつかの固形腫瘍細胞株、例えば、A431(報告によれば、EGFRを過剰発現する);NCI−H1975(報告によれば、EGFR変異体L858R/T790Mを発現する);NCI−H1650(報告によれば、EGFR変異体E746−A750を発現する);BT−474(報告によれば、ErbB2を過剰発現する);並びにSKBR3及びA549(報告によれば、両方共EGFR及びErbB2を過剰発現する)の成長を阻害することが見出された。
【表2】

【0089】
化合物B(化合物Cが重水素化された化合物)は、化合物Cと比べて、より良好な薬物動態学的プロファイルを示すことが見出された。例えば、化合物Bは、化合物Cよりも遅い消失(clearance)を示し、かつ長い平均排出半減期(T1/2)を示した。Sprague-Dawleyラットへの経口(IV)投与の後、化合物B及びCのT1/2は、それぞれ8.76時間及び5.37時間であると計算された。化合物Bの平均消失量は、2824mL/h/kgであるのに対し、化合物Cの対応する値は、3580mL/h/kgである。
同様に、化合物Aは、HKI272と比べて、より良好な薬物動態学的プロファイルを示すことも見出された。例えば、Sprague-Dawleyラットへの経口(IV)投与の後、化合物A及びHKI272のT1/2は、それぞれ6.59時間及び5.28時間であると計算された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【化1】

(式中、R及びRは、独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアミノカルボニル基から選択され、
Xは、N又はC−CNを表し、
〜Rは、独立して、水素原子(H)又は重水素原子(D)を表し、
〜R10は、独立して、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が2〜6のアルキニル基、及び置換基を有していてもよい炭素数が2〜6の重水素化アルキニル基から選択され、
11は、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノカルボニル基、又はウレア基を表し、
但し、R〜R11は、少なくとも一つの重水素原子を含む。)
【請求項2】
及びRが、独立して、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい重水素化アルコキシ基、及び置換基を有していてもよいアミノカルボニル基から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びR10が、独立して、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が2〜6のアルキニル基、及び置換基を有していてもよい炭素数が2〜6の重水素化アルキニル基から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
11が、置換基を有するベンジルオキシ基又はピリジニルメトキシ基である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
下記化学式IIで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【化2】

(式中、Xは、N又はC−CNを表し、
10は、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、エチニル基、及びエチニル-d基から選択され、
11は、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、CHD、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、3-フルオロベンジルオキシ基、及びピリジン-2-イルメトキシ基から選択され、
12は、メトキシ基、メトキシ-d3基、エトキシ基、エトキシ-d3基、2-メトキシエトキシ基、及びメトキシ-d3-エトキシ基から選択され、
13及びR14は、独立して、水素原子、重水素原子、CH、CD、CHD、及びCHDから選択され、
但し、R10〜R14は、少なくとも一つの重水素原子を含む。)
【請求項6】
10が、塩素原子、エチニル基、及びエチニル-d基から選択される請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
11が、3-フルオロベンジルオキシ基、及びピリジン-2-イルメトキシ基から選択される請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
13及びR14が、独立して、CH、及びCDから選択される請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
下記化学式IIIで表される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【化3】

(式中、Xは、N又はC−CNを表し、
15は、炭素数が1〜6のアルキル基、及び炭素数が1〜6の重水素化アルキル基から選択され、
16は、水素原子又は重水素原子を表す。)
【請求項10】
下記から選択される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(メチル-d3-メチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(メチル-d3-(メチル)アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(メチル-d3-(メチル)アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(メチル-d3-(メチル)アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-7-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-7-(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-6-イル)-4-(メチル-d3-メチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-(2-メトキシエトキシ)キノリン-6-イル)-4-(メチル-d3-メチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニルフェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニル-d-フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、及び
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニル-d-フェニルアミノ)-キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド。
【請求項11】
下記から選択される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニル-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-エチニル-d-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-フルオロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-メチル-d3-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(3-シアノ-7-エトキシ-4-(3-メトキシ-d3-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キノリン-6-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(2-クロロ-4-(3-シアノ-6-(4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド)-7-エトキシキノリン-4-イルアミノ)フェニル)ピコリンアミド、及び
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-ピリジン-2-イルウレイド)フェニルアミノ)-3-シアノ-7-エトキシキノリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド。
【請求項12】
下記から選択される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニル-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-エチニル-d-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(メチル-d3-(メチル)アミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-フルオロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-メチル-d3-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-4-(ジメチルアミノ)-N-(7-エトキシ-4-(3-メトキシ-d3-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(2-クロロ-4-(6-(4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド)-7-エトキシキナゾリン-4-イルアミノ)フェニル)ピコリンアミド、
(E)-N-(7-アセトアミド-4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、
(E)-N-(4-(3-クロロ-4-(3-ピリジン-2-イルウレイド)フェニルアミノ)-7-エトキシキナゾリン-6-イル)-4-(ジメチル-d6-アミノ)ブト-2-エナミド、及び
(E)-4-(ジメチル-d6-アミノ)-N-(7-エトキシ-d5-4-(3-クロロ-4-(ピリジン-2-イルメトキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)ブト-2-エナミド。
【請求項13】
前記化合物が、ヒドロクロリド、ベンゼンスルホナート又はメタンスルホン酸塩である請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容される担体から成る医薬組成物。
【請求項15】
プロテインキナーゼにより調節される疾患の治療用の請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
高増殖性疾患及び/又は脈管形成性疾患の治療用の請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
更に、抗腫瘍薬、免疫抑制剤、免疫刺激薬、又はこれらの組み合わせを含む請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
経口投与、非経口投与、又は静脈内投与に適した請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
哺乳類の患者に、治療に有効な量の請求項1、5又は9に記載の化合物を投与することから成る、チロシンキナーゼのシグナル伝達を調節する方法。
【請求項20】
哺乳類の患者に、治療に有効な量の請求項1、5又は9に記載の化合物を投与することから成る、EGFR及び/又はErbB2が媒介する疾患を治療又は予防する方法。
【請求項21】
治療を必要とする哺乳類の患者に、治療に有効な量の請求項1、5又は9に記載の化合物を投与することから成る、腫瘍形成を治療する方法。
【請求項22】
前記腫瘍形成が、非小細胞癌、乳癌、白血病、大腸癌、腎細胞腫、消化器官間葉性癌、充実性腫瘍、脳腫瘍、神経膠芽細胞腫、多発性骨髄腫、膵癌、非ホジキンリンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、膀胱癌、結腸癌、及び前立腺癌から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍形成が、非小細胞癌又は乳癌である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
更に、1以上の抗癌剤を投与することを含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
哺乳類の患者に、治療に有効な量の請求項1、5又は9に記載の化合物を投与することから成る、高増殖性疾患及び/又は脈管形成性疾患を治療又は予防する方法。

【公表番号】特表2012−531433(P2012−531433A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517747(P2012−517747)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039877
【国際公開番号】WO2010/151710
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511311901)メドリューション リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】MEDOLUTION LIMITED
【住所又は居所原語表記】Room 1105,Lippo Center,Tower 1,89 Queensway,Admiralty,Hong Kong (CN)
【Fターム(参考)】