説明

キャリア、現像剤、現像装置および画像形成装置

【課題】トナーを安定して帯電でき、安定で、かぶりなどの画像欠陥の少ない高精細な高画質画像を形成できる、キャリア、現像剤、現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】キャリア芯材の表面に、下記式(1)で示されるアゾビスニトリル及びジメチルポリシロキサン残基を有するマクロモノマーを含有する架橋性のシリコーン変性アクリル樹脂を含む被覆用樹脂組成物が硬化してなる被覆層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア、現像剤、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のOA(オフィスオートメーション)機器の目覚しい発展に伴って、電子写真方式を利用して画像形成処理を行う複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置が広く普及している。このような電子写真方式を利用する画像形成装置では、画像を形成するために、一般に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程および定着工程が行われる。具体的には、帯電工程では、像担持体である感光体の表面を暗所で均一に帯電する。露光工程では、帯電された感光体に原稿像の信号光を投射することで、露光部分の帯電を除去し、感光体の表面に静電荷像(静電潜像)を形成する。現像工程では、感光体表面の静電荷像に静電荷像現像用トナー(以後特に断らない限り単に「トナー」と称す)を供給してトナー像(可視像)を形成する。転写工程では、感光体表面のトナー像に紙、シートなどの記録媒体を接触させ、トナー像に接触する記録媒体の面とは反対側からコロナ放電を行い、トナーとは逆極性の電荷を記録媒体に与えることにより、トナー像を記録媒体に転写する。定着工程では、加熱、加圧などの手段により記録媒体上のトナー像を定着させる。クリーニング工程では、記録媒体に転写されずに感光体表面に残ったトナーを回収する。電子写真方式を利用する画像形成装置は、以上の工程を経て記録媒体上に所望の画像を形成する。
【0003】
電子写真方式を利用する画像形成装置では、トナー像を現像するための現像剤として、トナーのみを含む1成分現像剤あるいは、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤が用いられる。2成分現像剤は、キャリアによりトナー粒子の撹拌、搬送および帯電という機能が付与される。よって、2成分現像剤は、トナーがキャリアの機能を併せ持つ必要がないため、トナー粒子を単独で含む1成分現像剤に比べると、機能が分離されて制御性が向上し、高画質画像を得やすいという特徴を有する。このため、キャリアとの併用に適するトナーについての開発や研究が盛んに行われている。
【0004】
キャリアは、トナーを所望とする帯電量に安定して帯電させる機能と、トナーを感光体に搬送する機能といった2つの基本機能を有する。また、キャリアは現像槽内で攪拌され、マグネットローラ上へ搬送され、磁気穂を形成し規制ブレードを通過して再び現像槽内に戻り、繰り返し使用される。キャリアは、このように継続して使用される中で、安定した基本機能を発現させること、特に安定的にトナーを帯電させることが求められる。このようなキャリアの機能を維持するために、キャリア表面に樹脂を被覆する方法が提案されている。
【0005】
たとえば、キャリア表面に、表面張力が高いスチレン−アクリル共重合体樹脂やポリウレタン樹脂を被覆するもの、逆に表面張力の低いシリコーン樹脂やフッ素樹脂を被覆するものが挙げられる。しかし、表面張力の高い樹脂ではキャリア芯材との密着性がよいが、トナーがスペントしやすいといった欠点を有する。他方、表面張力の低いフッ素樹脂では、トナースペントに対しては有効であるが、キャリア芯材との密着性が劣るため、現像槽内で撹拌されると、キャリア芯材から被覆樹脂が剥れてしまい帯電の安定化が図れないといった欠点を有する。
【0006】
これらの欠点を改良する目的で、アクリル樹脂とシリコーン樹脂とをハイブリッド化した樹脂を被覆するキャリアが提案されている。
【0007】
たとえば、特許文献1および2には、特定のシリコーンマクロモノマーとアクリル樹脂の共重合体とをキャリア芯材の表面に被覆したキャリアが開示されている。
【0008】
また、たとえば、特許文献3には、アクリル変性シリコーン樹脂からなる被覆層を有するキャリアが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平8−234501号公報
【特許文献2】特開2006−178508号公報
【特許文献3】特開2000−235283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、近年では、電子写真のフルカラー化が進み、それに伴いトナーの改良も盛んに行われている。トナーの外添剤の改良もその一環である。トナーの外添剤は、トナーに流動性を付与すると共に帯電量のコントロール助剤としての機能を有する。
【0011】
電子写真のフルカラー化においてはトナーの転写効率を高める目的で、大粒径の外添剤を添加する傾向にある。反面、トナー表層に存在する大粒径の外添剤の割合が増えるほど、トナーとキャリアとの接触機会が阻害されるため、トナーを安定的に帯電させることが困難となる。さらに、カラートナーはモノクロトナーに比べ、その材料に起因して絶縁性が高く帯電を安定化させることは困難である。
【0012】
このような帯電性の問題に対し、特許文献1および2に開示されたキャリアは、用いている樹脂が水溶性であるため、たとえば、温度もしくは湿度の変動などの環境変動に対してる帯電量の変動が大きくなることが懸念される。さらに、アクリル樹脂自体は架橋されていないため、実使用上起こりえると考えられる、耐擦性は弱く、印刷枚数に対する帯電の安定性という観点ではそれほど期待できるものではない。
【0013】
また、特許文献3に開示されたキャリアでは、アクリル変性シリコーン樹脂とアミノシランカップリング剤とを用いて、帯電量のコントロールを行うと同時に、シリコーンの欠点である帯電性が低い点をアクリル樹脂で補おうとするものである。
【0014】
しかしながら、アクリル変性シリコーン樹脂の持つ帯電能力以上にはコントロールすることが困難であり、さらに帯電量をあげようとした場合、アミノシランカップリング剤を添加することで制御する必要がある。ただし、アミノシランカップリング剤で帯電量をあげた場合、使用の初期状態では帯電量が高くできるものの印刷枚数が増えるとともに低下する傾向を有する。すなわち、被覆樹脂自体の帯電特性が、トナーへの帯電性能に大きく影響しており、被覆樹脂自体の帯電量を高くすることが求められている。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、結着樹脂および着色剤を含むトナーを安定して帯電でき、安定で、かぶりなどの画像欠陥の少ない高精細な高画質画像を形成できる、キャリア、現像剤、現像装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、キャリア芯材の表面に、下記一般式(1)に示されるマクロモノマーを含有する架橋性のシリコーン変性アクリル樹脂を含む被覆用樹脂組成物が硬化してなる被覆層を設けたことを特徴とするキャリアである。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、xは1〜200の整数を示し、nは1〜100の整数を示す。)
また本発明は、キャリア芯材は、フェライト芯材から成ることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、キャリア芯材は、体積平均粒子径が25〜100μmであることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、被覆層は、導電性粒子を含むことを特徴とする。
また本発明は、導電性粒子は、被覆層に含まれるシリコーン変性アクリル樹脂100重量部に対して30重量部以下の割合で含まれることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、上記のキャリアと、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナーとで構成されることを特徴とする現像剤である。
【0022】
また本発明は、トナーには、少なくとも粒子径の異なる2種類以上の外添剤が外添されていることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、外添剤のうち、少なくとも1種類の粒子の1次粒子径は、0.1以上0.2μm以下であることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、上記の現像剤を用いて現像を行うことを特徴とする現像装置である。
また本発明は、上記の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0025】
また本発明は、色の異なる複数のトナー像が形成される中間転写体を備えた転写手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、キャリア芯材の表面に、一般式(1)に示されるマクロモノマーを含有する架橋性のシリコーン変性アクリル樹脂を含む被覆用樹脂組成物が硬化してなる被覆層が設けられる。
【0027】
このようなシリコーン変性アクリル樹脂は、ニトリル基を含むことにより帯電量を上げる効果があり、シロキサン結合を含むことにより、表面エネルギーを低下させることができ、トナースペントを低減できる。さらに、アクリル架橋することにより樹脂の硬さをコントロールできキャリア寿命を長くすることができる。
【0028】
また本発明によれば、キャリア芯材は、フェライト芯材から成る。
フェライト芯材は、帯電性能および耐久性に優れるとともに、好適な飽和磁化を有し、一般式(1)に示す架橋性シリコーン変性アクリル樹脂による被覆を容易に行なうことができる。
【0029】
また本発明によれば、キャリア芯材は、体積平均粒子径を25〜100μmとすることで、粒子径が異なるトナーに対しても好適なキャリア粒子径を選択することができる。
【0030】
また本発明によれば、被覆層は、導電性粒子を含むことで、キャリアの抵抗値を制御することができ、現像性の向上とキャリア付着の防止のいずれも可能とすることができる。
【0031】
また本発明によれば、導電性粒子は、被覆層に含まれるシリコーン変性アクリル樹脂100重量部に対して30重量部以下の割合で含むことにより、被覆層の機械的強度、キャリア芯材に対する密着性などを向上させ、十分な被覆層を形成することができる。
【0032】
また本発明によれば、現像剤として、上記のキャリアと、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナーとで構成されることにより、印刷枚数が増加しても帯電性能が安定である現像剤を得ることができる。このような現像剤を用いることで、形成画像を高精細に再現し、色再現性が良好でかつ画像濃度が高く、かぶりなどの画像欠陥の少ない高画質の画像を安定的に形成できる。
【0033】
また本発明によれば、トナーに、少なくとも粒子径の異なる2種類以上の外添剤が外添されるので、効果的にトナーの流動性を向上させることができる。
【0034】
また本発明によれば、外添剤のうち、少なくとも1種類の粒子の1次粒子径を、0.1以上0.2μm以下とすることにより、外添剤のキャリア表面への付着を防止し、帯電低下を引き起こすことなく、転写性を向上させることができる。
【0035】
このように、トナーとキャリアとを組み合わせることにより、キャリアからトナーへの電荷付与性が一層安定するため、トナーの帯電性自体が安定化し、トナー消費量を最低限に留めながら、高精細で高濃度の高画質画像を安定的に形成できる。
【0036】
また本発明によれば、上記の現像剤を用いて現像を行うことで、トナーの帯電量を安定化させて現像を行うことができる現像装置を提供することができる。
【0037】
また本発明によれば、上記の現像装置を備えることで、画像を高精細に再現し、色再現性が良好でかつ画像濃度が高く、かぶりなどの画像欠陥の少ない高画質画像を安定的に形成できる画像形成装置を提供することができる。
【0038】
また本発明によれば、色の異なる複数のトナー像が形成される中間転写体を備えた転写手段を用いることで、トナー帯電性の長期安定化を図り、高画質画像の安定的形成効果をより有効に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施形態について図1および図2に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の一形態である現像剤1を示す模式図である。現像剤1は、キャリア2と、トナー3とを含む2成分現像剤である。トナー3、キャリア2、現像剤1の順に説明する。以下では、「粒子」と記載しない限り、トナー全体を指すもの、キャリア全体を指すものとする。
【0040】
(トナー)
トナー3には、トナー母体粒子3aに、たとえば粒子径の異なる2種類以上の外添剤3bが添加されて構成される。トナー母体粒子3aの原料としては、結着樹脂および着色剤を主要成分とし、それ以外に、電荷制御剤、離型剤などが含まれる。
【0041】
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナー用またはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂を得るための芳香系のアルコール成分としては、たとえばビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0043】
また上記ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸類、トリメリット酸、トリメチン酸、ピロメリット酸等の三塩基以上の酸類及びこれらの無水物、低級アルキルエステル類が挙げられ、耐熱凝集性の点からテレフタル酸、もしくはその低級アルキルエステルが好ましい。
【0044】
ここで、トナー3を構成する上記ポリエステル樹脂の酸価は、5〜30mgKOH/gが好ましい。酸価が5mgKOH/g未満になると樹脂の帯電特性が低下し、帯電制御剤がポリエステル樹脂中に分散しにくくなる。これにより、帯電量の立ち上がりや連続使用による繰り返し現像の帯電量安定性に悪影響を及ぼす。よって、酸価としては、上記の範囲とすることが好ましい。
【0045】
着色剤としては、所望の色に応じて種々の着色剤を用いることができ、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
【0046】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0047】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、C.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0048】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー 25、C.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0049】
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これら各種カーボンブラックの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
【0050】
着色剤としては、これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用してもよい。着色剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
【0051】
着色剤はマスターバッチの形態で使用されてもよい。着色剤のマスターバッチは、一般的なマスターバッチと同様にして製造できる。たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練して着色剤を合成樹脂中に均一に分散させた後、得られる溶融混練物を造粒することによって製造できる。合成樹脂には、トナーの結着樹脂と同種のものか、またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有するものが使用される。このとき、合成樹脂と着色剤との使用割合は、特に制限されないが、好ましくは合成樹脂100重量部に対して、30〜100重量部である。また、マスターバッチは、粒径2〜3mm程度に造粒される。
【0052】
また、着色剤の使用量は、特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5〜20重量部である。これはマスターバッチ量ではなく、マスターバッチに含まれる着色剤そのものの量である。着色剤をこの範囲で用いることによって、トナーの各種物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0053】
電荷制御剤は、トナー3の摩擦帯電性を制御することを目的として添加される。電荷制御剤としては、この分野で常用される正電荷制御用あるいは負電荷制御用のものを使用できる。正電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の電荷制御剤としては、たとえば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。この中でもホウ素化合物は重金属を含まないものとして特に好ましい。正電荷制御用電荷制御剤と負電荷制御用電荷制御剤とは、それぞれの用途に応じて使い分ければよい。電荷制御剤は、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。電荷制御剤の使用量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。
【0054】
離型剤としては、この分野で常用されるものが使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。離型剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部である。
【0055】
トナー3の外添剤3bとしては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。
【0056】
本実施形態では、外添剤3bは粒子径の異なる2種類以上を併用し、少なくとも1種類の1次粒子径が0.1μm以上0.2μm以下である。外添剤3bとして、少なくとも1種類の1次粒子径が0.1μm以上であるものを用いることで、特にカラートナーにおいて、転写性が向上するとともに、外添剤のキャリア表面への付着による帯電性の低下を引き起こすことなく、長期的かつ安定的にトナー3を帯電させことができる。外添剤3bの使用量は、特に制限されないが、好ましくは100重量部のトナー母体粒子3aに対して0.1〜3.0重量部である。
【0057】
これらトナー3の原料は、外添剤を除いて、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル、Q型ミキサなどの混合機により混合され、得られる原料混合物は2軸混練機、1軸混練機、連続式2本ロール型混練機などの混練機によって70〜180℃程度の温度にて溶融混練された後、冷却固化される。冷却固化後のトナー3の原料の溶融混練物は、カッターミル、フェザーミルなどによって粗粉砕される。得られる粗粉砕物は、微粉砕される。微粉砕には、ジェットミル、流動層型ジェット粉砕機などが用いられる。これらの粉砕機は、複数の方向からトナー粒子を含む気流を衝突させることによってトナー粒子同士を衝突させてトナー粒子の粉砕を行うものである。これによって、特定の粒度分布を有する非磁性のトナー母体粒子3aを製造できる。トナー母体粒子3aの粒子径は、特に限定されるものではないが、平均粒径が3〜10μmの範囲が好ましい。さらに必要に応じて分級などの粒度調整を行ってもよい。このように製造されたトナー母体粒子3aに対して上記外添剤3bを公知の方法で添加する。なお、トナー3の製造方法は上記に限定されるものではない。
【0058】
(キャリア)
本実施形態のキャリア2は、トナー3に十分な電荷を付与することなどを考慮し、図1に示すように、キャリア芯材2aの表面に、下記一般式(1)に示されるマクロモノマーと、アクリルモノマーとを含有する架橋性のシリコーン変性アクリル樹脂と導電性粒子とを含む被覆用樹脂組成物が硬化して成る被覆層2bが形成されている。
【0059】
【化3】

【0060】
このマクロモノマーは、2,2−アゾビスニトリル基を有し、シロキサン結合を含むモノマーであり、式中、xは1〜200の整数を示し、nは1〜100の整数を示す。
【0061】
このようなシリコーン変性アクリル樹脂は、ニトリル基を含むことにより帯電量を上げる効果があり、シロキサン結合を含むことにより、表面エネルギーを低下させることができ、トナースペントを低減できる。さらに、アクリル架橋することにより樹脂の硬さをコントロールできキャリア寿命を長くすることができる。
【0062】
キャリア芯材2aとしては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどの磁性金属、フェライト、マグネタイトなどの磁性金属酸化物などが挙げられる。キャリア芯材2aが上記のような磁性体であると、磁気ブラシ現像法に用いる現像剤に好適なキャリアが得られる。キャリア芯材2aは、体積平均粒子径が25〜100μmのものが好ましく、体積平均粒子径が25〜90μmのものが特に好ましい。キャリア芯材2aの体積平均粒子径が25μm未満であると、キャリア2が現像剤搬送担持体から離脱しやすくなるので、像担持体にキャリア2が付着する現象であるキャリア付着が起こりやすくなる。キャリア芯材2aの体積平均粒子径が100μmを超えると、後述するマグネットローラにキャリアが磁気的に吸着されて形成される磁気ブラシの穂である磁気穂が荒くなりすぎるため、トナー3を小粒径化しても、トナー3による画質の向上の効果が見られない。本実施形態では、体積平均粒子径は、粒度測定器(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)を用いて測定される値である。
【0063】
キャリア芯材2a表面の被覆層2bを成す被覆用樹脂組成物は、一般式(1)に示されるマクロモノマーを含有する架橋性アクリル樹脂と導電性微粒子とを含有するものである。
【0064】
導電性粒子としては、たとえば、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタンおよび酸化スズなどの酸化物が用いられる。少ない添加量で導電性を発現させるには、カーボンブラック等が好適であるが、カラートナーに対してはキャリア2の被覆層2bからのカーボン脱離が懸念される場合がある。このときはアンチモンをドープさせた導電性酸化チタンなどが好適に用いられる。
【0065】
被覆用樹脂組成物は、一般式(1)に示されるシリコーンマクロモノマーを含み、複数のポリシロキサン鎖を含んでおり、架橋可能なシリコーンアクリルブロック共重合体である。
【0066】
被覆用樹脂組成物は、シリコーン樹脂(特に架橋型シリコーン樹脂)により形成される樹脂被覆層の耐湿性、離型性などをさらに向上させるために、二官能性シリコーンオイルを含んでもよい。
【0067】
被覆用樹脂組成物は、水酸基、エポキシ基、エポキシ基、カルボキシル基、活性化メチレン基、アルコキシシリル基により架橋される。
【0068】
被覆用樹脂組成物のキャリア芯材2a表面への塗布方法としては、たとえば、キャリア芯材2aを被覆用樹脂組成物に含浸させる浸漬法、キャリア芯材2aに被覆用樹脂組成物を噴霧するスプレー法、流動気流により浮遊状態にあるキャリア芯材2aに被覆用樹脂組成物を噴霧する流動層法などが挙げられる。これらの中でも、膜形成を容易にできることから、浸漬法が好ましい。
【0069】
被覆用樹脂組成物が塗布された塗布層の硬化は、シリコーン樹脂の種類に応じて加熱温度を選択しながら行う。例えば、150〜280℃程度に加熱して行うのが好ましい。もちろん、常温硬化型樹脂である場合は、加熱は必要ないが、形成される樹脂被覆層の機械的強度を向上させること、硬化時間を短縮することなどを目的として、100〜200℃程度に加熱してもよい。
【0070】
なお、被覆用樹脂組成物の全固形分濃度は特に制限されず、キャリア芯材2aへの塗布作業性などを考慮しつつ、硬化後の被覆層2bの膜厚が通常5μm以下、好ましくは0.1〜3μm程度になるように調整すればよい。
【0071】
このようにして得られるキャリア2は、ある程度の電気抵抗でかつ球形であることが好ましいが、導電性または非球形であっても本発明の効果が失われるものではない。
【0072】
(現像剤)
現像剤1は、上記外添剤3bが外添されたトナー3と上記キャリア2とを混合することにより製造される。トナー3とキャリア2との混合割合は、特に制限はないが、高速画像形成装置(A4サイズの画像で40枚/分以上)に用いることを考慮すると、キャリアの体積平均粒子径/トナーの体積平均粒子径が5以上の状態で、キャリアの総表面積(全キャリア粒子の表面積の総和)に対するトナー3の総投影面積(全トナー粒子の投影面積の総和)の割合(トナーの総投影面積/キャリアの総表面積×100)が30〜70%になればよい。これによって、トナーの帯電性が十分良好な状態で安定的に維持され、高速画像形成装置においても高画質画像を安定的に、かつ長期的に形成できる好適な現像剤として使用できる。たとえば、トナーの体積平均粒子径が6.5μm、キャリアの体積平均粒子径が90μm、キャリアの総表面積に対するトナーの総投影面積の割合を30〜70%にすると、現像剤1においてキャリア100重量部に対してトナー2.2〜5.3重量部程度を含むようになる。このような現像剤1で高速現像すると、トナー消費量とトナーの消費に応じて現像装置の現像槽に供給されるトナー供給量とがそれぞれ最大になり、それでも需給バランスが損なわれることがない。そして、現像剤1におけるキャリア2の量が2.2〜5.3重量部程度よりも多くなると、帯電量がより低くなる傾向があり所望の現像特性が得られないばかりか、トナー供給量よりもトナー消費量の方が多くなり、トナー3に十分な電荷を付与できなくなり、画質の劣化を招く。反対に、キャリア2の量が少ない場合は帯電量が高くなる傾向があり、キャリア2からトナー3が電界によって分離しにくくなり、結果として画質の劣化を招く。
【0073】
なお、トナーの総投影面積は、本実施形態では、以下のように算出する。トナーの比重を1.0とし、コールターカウンタ(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)で得られた体積平均粒子径を基に算出する。すなわち、混合するトナー重量に対するトナー個数を算出し、トナー個数×トナー面積(円と仮定して算出)をトナー総投影面積とする。同様に、キャリアの表面積はマイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)より得られた粒子径を元に混合するキャリア重量から総表面積を算出する。このときのキャリア比重は4.7とする。上記で得られた、トナー総投影総面積/キャリア総表面積×100で混合比を算出する。
【0074】
(現像装置および画像形成装置)
本発明の実施の一形態である現像装置20は、本実施形態の現像剤1を用いて現像を行う。図2は、現像装置20の構成を示す概略図である。
【0075】
現像装置20は、図2に示すように、現像剤1を格納する現像ユニット10、現像剤1を像担持体(像形成体、感光体)15に搬送する現像剤担持体(現像剤搬送担持体)13を備えている。
【0076】
現像ユニット10の内部に予め投入された本実施形態のキャリア2とトナー3とから成る本実施形態の現像剤(二成分現像剤)1が、攪拌スクリュー12により攪拌・帯電される。そして、現像剤1は、内部に磁界発生手段であるマグネットローラを配設した現像剤担持体13に搬送されることで、現像剤担持体13表面に保持される。現像剤担持体13表面に保持された現像剤1は、現像剤規制部材14により一定層厚に規制され、現像剤担持体13と像担持体15との近接領域に形成される現像領域に搬送され、現像剤担持体13に交流バイアス電圧を印加して形成される振動電界下に、像担持体15上の静電荷像を反転現像法で顕像化する。
【0077】
また、可視像形成によるトナー消費は、トナー濃度センサ(図示せず)により、現像剤重量に対するトナー重量比であるトナー濃度の変化として検知され、消費された分は、予め定められた規定トナー濃度に達したことをトナー濃度センサ(図示せず)が検知するまでトナーホッパー16から補給され、現像ユニット10内部の現像剤1におけるトナー濃度は略一定に保たれる。また、本実施形態において、現像剤担持体13と現像剤規制部材14とのギャップ、および現像領域における現像剤担持体13と像担持体15とのギャップは、たとえば、0.4mmに設定されていてもよい。もちろん、これは単なる例示でありこの数値に限定されることはない。
【0078】
また、本発明の実施の一形態である画像形成装置は、上記現像装置20を備えている。現像装置20以外の他の構成は、公知の電子写真方式の画像形成装置の構成を用いることができ、たとえば、表面に静電荷像を形成し得る感光層を有する像担持体と、像担持体表面を所定電位に帯電させる帯電手段と、表面が帯電状態にある像担持体に画像情報に応じた信号光を照射して像担持体の表面に静電荷像(静電潜像)を形成する露光手段と、現像装置20からトナー3が供給されて現像された像担持体表面のトナー像を、中間転写体に転写した後記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体表面のトナー像を記録媒体に定着させる定着手段と、トナー像の記録媒体への転写後に像担持体表面に残留するトナー、紙粉などを除去するクリーニング手段と、上記中間転写体に付着した余分なトナーなどを除去するクリーニング手段と、を含んでいる。また、本実施形態の画像形成方法は、本実施形態の現像装置20を有する本実施形態の画像形成装置を用いて行われる。
【0079】
静電荷像を現像する際には、像担持体15上の静電荷像を反転現像法で顕像化する現像工程がトナーの色毎に実行され、中間転写体上に色の異なる複数のトナー像を重ね合わせて多色トナー像が形成される。本実施形態では、中間転写体を用いた中間転写方式を採用しているが、像担持体から直接記録媒体にトナー像を転写する構成が用いられてもよい。
【0080】
本実施形態の画像形成装置によれば、画像を高精細に再現し、色再現性が良好でかつ画像濃度が高く、かぶりなどの画像欠陥の少ない高画質画像を安定的に形成できる。
【0081】
〔実施例〕
以下に本発明に係る実施例および比較例を説明する。本発明はその要旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0082】
以下の実施例および比較例では、外添剤が外添されたトナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いて測定を行った。まず初めに、実施例および比較例で用いた現像剤に含まれるキャリアおよびトナーの作製方法について説明する。以下において、「部」は「重量部」を示す。また、特に断らない限り「%」は「重量%」を示す。
【0083】
(キャリアの作製)
6種類のキャリア(キャリア(1)〜(6))を次のように生成した。下記表1に示す使用量(部)のシリコーン樹脂、導電性粒子およびトルエンをスリーワンモータにて5分間攪拌し、被覆用樹脂組成物を調製した。但し、導電性微粒子はあらかじめ分散剤を用いて、トルエン溶媒中に分散したものを用いた。この被覆用樹脂組成物を、下記表1に示す体積平均粒子径(μm)および使用量(部)のフェライト芯材と混合してさらに攪拌機に投入して混合した。得られた混合物から減圧および加熱下に溶媒を除去し、フェライト芯材表面に塗布層を形成した。これを、100℃で30分加熱して塗布層を硬化させて被覆層を形成し、100メッシュのふるいにかけてキャリア(1)〜(6)を作製した。
【0084】
表1においてシリコーン樹脂および導電性粒子は具体的には次のものを用いた。
・シリコーン変性アクリル樹脂:イ
一般式(1)の構造を含むシリコーン変性アクリル樹脂であるリペルコート210A(商品名、日本ペイント(株)製)と、硬化剤リペルコートB(商品名、日本ペイント(株)製)とを4:1の割合で混合しシリコーン変性アクリル樹脂とした。
・シリコーン変性アクリル樹脂:ロ
KR9706(商品名、信越化学工業(株)製)とD−15(商品名、信越化学工業(株)製)を97:3の割合で混合しシリコーン変性アクリル樹脂とした。
・導電性微粒子:ハ
商品名:VULCANXC72、キャボット(株)製
(導電性カーボンブラックトルエン分散液、固形濃度15%液)
・導電性微粒子:ニ
商品名:FS−10P、石原産業(株)製
(導電性酸化チタントルエン分散液、固形分濃度30%液)
【0085】
【表1】

【0086】
(トナーの作製)
4種類のトナー(トナー(1)〜(4))を以下のように生成した。
【0087】
トナー(1)
・ポリエステル樹脂(酸価:21mgKOH/g、芳香族系アルコール成分:PO−BPAとEP−BPA、酸成分:フマル酸と無水メリット酸)…87.5重量%
・C.I.Pigment Blue 15:1…5重量%
・無極性パラフィンワックス(DSCピーク78℃, Mw8.32×10)…6重量% (Mwは重量平均分子量を示す)
・電荷制御剤(ボントロン E−84、オリエント化学社製)…1.5重量%
【0088】
以上の各構成材料をヘンシェルミキサにて前混合後、二軸押出混練機にて溶融混練した。この混練物をカッティングミルで粗粉砕した後、ジェットミルにて微粉砕した後、風力分級機で分級し、平均粒径6.5μmのトナー母体粒子を作製した。
【0089】
次に、分級したトナー母体粒子97.8重量%に、体積平均粒子径0.1μmのi―ブチルトリメトキシシランで疎水化処理したシリカ1.2重量%と体積平均粒子径12nmのHMDSで疎水化処理したシリカ微粒子1.0重量%とを加え、ヘンシェルミキサにて混合し、外添処理を行い、トナー(1)を作製した。
【0090】
トナー(2)
着色剤を、C.I.Pigment Blue 15:1からカーボンブラックに変更した以外はトナー(1)と同様の材料、同様の方法にて作製した。
【0091】
トナー(3)
電荷制御剤を、ボントロン E−81からLR−147(日本カーリット社製)に変更した以外はトナー(1)と同様の材料、同様の方法にて作製した。
【0092】
トナー(4)
外添剤として、体積平均粒子径0.1μmのi―ブチルトリメトキシシランで疎水化処理したシリカを除き、体積平均粒子径12nmのHMDSで疎水化処理したシリカ微粒子を2.2重量%用いた以外はトナー(1)と同様の材料、同様の方法にて作製した。
【0093】
なお、実施例および比較例で用いた、キャリアの体積平均粒子径、トナーの体積平均粒径、キャリアの表面積、トナーの投影面積は、以下のようにして測定した。
【0094】
[キャリアの体積平均粒径]
エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテルHLB13.6)5% 10mLに測定試料約10〜15mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散した。このうち約1mLをマイクロトラックMT3000(日機装株式会社)の所定箇所に加えた後、1分間攪拌し散乱光強度が安定したのを確認して、測定を行った。
【0095】
[トナーの体積平均粒径]
100mLビーカーに、塩化ナトリウム(1級)の1%水溶液(電解液)を20mL入れ、これにアルキルベンゼンスルホン酸塩(分散剤)0.5mLおよびトナー試料3mgを順次添加し、5分間超音波分散した。これに全量が100mLになるように塩化ナトリウム(1級)の1%水溶液を添加し、再度5分間超音波分散したものを測定用試料とした。この測定用試料について、コールターカウンタ TA−III(商品名、コールター社製)を用い、アパーチャー径100μm、測定対象粒径が個数基準で2〜40μmの条件下で測定を行い、体積平均粒径を算出した。
【0096】
[キャリアの総表面積]
キャリア比重は4.7とし、マイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装(株)製)より得られた体積平均粒子径をもとに、混合するキャリア重量から総面積を算出した。
【0097】
[トナーの総投影面積]
トナーの比重を1.0とし、コールターカウンタ(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)で得られた体積平均粒子径をもとに、混合するトナー重量に対するトナー個数を算出し、トナー個数×トナー面積(円と仮定して算出)でトナー総投影面積とした。
【0098】
(評価)
次に、上記で作成したキャリアおよびトナーからなる現像剤を用いて行った評価について、評価方法および評価基準を説明する。
【0099】
[i.初期の帯電量]
上記のトナーおよびキャリアを様々に組み合わせた現像剤を二成分現像装置を有する複写機(シャープ(株)MX−6200Nの改造機)にセットし、常温常湿下において3分間空転した後、現像剤を採取し、吸引式帯電量測定装置(TREK社:210H−2A Q/M Meter)で帯電量を測定した。帯電量が−20μC/g未満であれば使用不可、帯電量が−20μC/g以上であれば利用可、−2μC/g以上かつ−45μC/g以下であれば良好と判断した。
【0100】
[ii.帯電の立ち上がり特性]
上記で作成したキャリア0.95gとトナー0.05gとを併せた現像剤が入った5mlのガラス瓶を32rpmの回転培養機で1分間撹拌した後、現像剤を採取し、吸引式帯電量測定装置で帯電量を測定した。また3分間撹拌した後、同様に帯電量を測定した。1分後と3分後の帯電量の差が絶対値で7μC/gより大きければ利用不可、7μC/g以下であれば利用可、5μC/g以下であれば良好と判断した。
【0101】
[iii.帯電の減衰特性]
上記で作成したキャリア76gとトナー4gとを併せた現像剤が入った100mlのポリエチレン容器を150rpmのボールミルで60分間撹拌した後、現像剤の帯電量を測定し、高温高湿下に曝露した。1日後、3日後、10日後の現像剤の帯電量を測定し、初日の帯電量との差が絶対値で7μC/gより大きければ利用不可、7μC/g以下であれば利用可、5μC/g以下であれば良好と判断した。
【0102】
[iv.帯電のライフ特性]
上記で作成したトナーおよびキャリアを併せた現像剤を二成分現像装置を有する複写機(シャープ(株)MX−6000N)にセットし、常温常湿下においてベタ画像を50000枚実写した。
【0103】
現像剤の帯電量は吸引式帯電量測定装置にて測定し、初期の帯電量との差が絶対値で7μC/gより大きければ利用不可、7μC/g以下であれば利用可、5μC/g以下であれば良好と判断した。
【0104】
[vi.総合評価]
総合評価として、上記測定i〜v全てについて良好のものを「◎」、1つ以上利用可のものがあり、利用不可のないものを「○」、1つ以上利用不可のあるものを「×」と、評価した。
次に、上記測定i〜viの結果を表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
表2から、実施例1〜12によれば、カラートナー(トナー(1)、トナー(3)、ブラックトナー(トナー(2))いずれも、キャリアの被覆層に一般式(1)のマクロモノマーが含まれ、帯電立ち上がり、減衰、ライフ特性を安定化できることがわかる。
【0107】
比較例1〜4によれば、キャリアの被覆層に一般式(1)のマクロモノマーが含まれない(キャリア(5)、(6)を用いた比較例1〜4)と、ライフ特性が著しく低下することがわかる。
【0108】
本発明は上述した実施形態、各実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態、実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施の一形態である現像剤1を示す模式図である。
【図2】現像装置20の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0110】
1 現像剤
2 キャリア
2a キャリア芯材
2b 被覆層
3 トナー
3a トナー母体粒子
3b 外添剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア芯材の表面に、下記一般式(1)に示されるマクロモノマーを含有する架橋性のシリコーン変性アクリル樹脂を含む被覆用樹脂組成物が硬化してなる被覆層を設けたことを特徴とするキャリア。
【化1】

(式中、xは1〜200の整数を示し、nは1〜100の整数を示す。)
【請求項2】
キャリア芯材は、フェライト芯材から成ることを特徴とする請求項1記載のキャリア。
【請求項3】
キャリア芯材は、体積平均粒子径が25〜100μmであることを特徴とする請求項1または2記載のキャリア。
【請求項4】
被覆層は、導電性粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のキャリア。
【請求項5】
導電性粒子は、被覆層に含まれるシリコーン変性アクリル樹脂100重量部に対して30重量部以下の割合で含まれることを特徴とする請求項4記載のキャリア。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のキャリアと、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナーとで構成されることを特徴とする現像剤。
【請求項7】
トナーには、少なくとも粒子径の異なる2種類以上の外添剤が外添されていることを特徴とする請求項6記載の現像剤。
【請求項8】
外添剤のうち、少なくとも1種類の粒子の1次粒子径は、0.1以上0.2μm以下であることを特徴とする請求項7記載の現像剤。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1つに記載の現像剤を用いて現像を行うことを特徴とする現像装置。
【請求項10】
請求項9に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
色の異なる複数のトナー像が形成される中間転写体を備えた転写手段を有することを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−216838(P2009−216838A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58735(P2008−58735)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】