説明

キャリア付銅箔の製造方法及びその製造方法を用いて得られるキャリア付銅箔

【課題】銅箔層の厚さが1μm程度であっても、ピンホールがほとんど存在しない銅箔層を備えるキャリア付銅箔を提供する。
【解決手段】キャリア付銅箔の製造方法として、乾式成膜法を用いて乾式銅薄膜を形成した後に、電解法を用いて銅バルク層を形成し、キャリアの表面に乾式銅薄膜を備え、その乾式銅薄膜の表面に銅バルク層を備える層構造のキャリア付銅箔とする製造工程を採用する。更に、電解法を用いて銅バルク層を形成する前に、乾式銅薄膜と銅電解液とを一定時間接触させて、電解を開始すれば、銅箔層に存在するピンホールの少ないキャリア付銅箔が容易に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、主にキャリア付銅箔の製造方法、その製造方法を用いて得られるキャリア付銅箔に関する。更に、そのキャリア付銅箔を用いて得られる、樹脂層を備えるキャリア付銅箔、及び本件発明に係るキャリア付銅箔を用いて得られる銅張積層板等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の内、特に移動しながら使用する移動体通信機器に代表されるポータブル機器には、軽薄短小化のダウンサイジング、低消費電力化の要求が年々強くなっている。その結果、これらに組み込まれるプリント配線板では、配線回路の導体厚さを薄くした設計が要求されている。具体的には、厚さを2μm〜10μmとし、幅が10μm程度というファインピッチの配線回路を備えるプリント配線板も実用化されている。また、テレビ受像装置、パーソナルコンピュータ等の液晶ディスプレイで使用するフレキシブルプリント配線板での、ファインピッチ回路形成の要求も顕著に増加している。
【0003】
このようなファインピッチの配線回路を備えるプリント配線板を製造するには、プリント配線板製造材料の中から、製造するプリント配線板のスペックを考慮して、最適な材料を選択使用する必要がある。例えば、特許文献1に開示されているような、キャリア付銅箔を用いることが考えられる。このキャリア付銅箔は、キャリアと銅箔層とが剥離層を介して張り合わせられた如き層構成を備えている。このキャリア付銅箔を用いる場合には、キャリア付銅箔の銅箔側表面に、プリプレグのような絶縁樹脂層を張り合わせて銅張積層板とし、その後キャリアを除去して薄い銅層を残した後、セミアディティブ法を用いて、微細配線回路を形成したプリント配線板を得る方法等が採用できる。このような、キャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法は、従来から用いてきたプリント配線板の製造プロセス、製造設備の使用が可能であり、安定した品質のプリント配線板を得ることを容易にしてきた。
【0004】
以上に述べたキャリア付銅箔は、微細配線回路を備えるプリント配線板の製造を行うための極薄銅箔の取り扱いを容易にするために開発されたものであり、物理的にキャリアを剥離して除去するピーラブルタイプのキャリア付銅箔、化学的にキャリアを溶解して除去するエッチャブルタイプのキャリア付銅箔が存在する。しかし、いずれのキャリア付銅箔であっても、キャリアを剥離した以降の銅張積層板を使用する目的の多くは共通しており、多層プリント配線板の製造工程におけるセミアディティブ法を用いたプリント配線板の製造方法の採用を容易にして、微細配線回路の形成を容易化すること等であった。
【0005】
例えば、特許文献1に開示の発明は、ピーラブルタイプのキャリア箔付銅箔を得ることを目的として、アルミニウムキャリア上に二酸化ケイ素で構成される剥離層を設け、この剥離層の上にスパッタリングなどの乾式成膜法と電気銅めっき法とを併用して銅箔層を形成している。
【0006】
また、特許文献2に開示の発明は、アルミニウムキャリア上に亜鉛層を設け、亜鉛層の上に電解法を用いて銅箔層を形成することで、常態におけるアルミニウムキャリアと銅箔層との分離を防止したキャリア箔付銅箔が開示されている。即ち、この特許文献2に開示のキャリア箔付銅箔は、アルミニウムキャリア上に形成する亜鉛層を構成する亜鉛量によって、ピーラブルタイプとエッチャブルタイプとのいずれかのキャリア箔付銅箔としての作り分けが可能な技術である。
【0007】
更に、従来のキャリア付銅箔は、前述のように、キャリアを除去した後の銅張積層板の銅箔表面に、更に銅めっきを施すことを前提とした品質設計がなされている。例えば、特許文献3に開示の技術でも、銅箔層を薄くすると、その銅箔層には多くのピンホールが存在するため、事後的な無電解銅めっきでピンホールを埋設するという手法が採用されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−72851号公報
【特許文献2】特開昭48−35357号公報
【特許文献3】特許第3615033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1では、セミアディティブ法による配線回路の形成を想定し、「実質的にピンホールを含まない」ものと言う概念を用いている。ところが、特許文献1では、銅箔層に存在するピンホールの大きさや形状についての言及も無く、ピンホールを含まない銅箔層を得るための製造方法も開示されていない。特許文献1に開示されているようなピーラブルタイプのキャリア付銅箔の場合には、キャリアと銅箔との間に設ける剥離層には、電気の良導体ではない金属酸化物等の無機化合物又は有機物を用いることが多い。更に、高温が負荷された後にも、当該キャリアを物理的に剥離可能とするため、剥離層を厚く形成する傾向がある。その結果、従来のキャリア付銅箔の製造方法では、剥離層の厚さとそのバラツキ等の影響を受け、平均厚さ1μm程度の銅箔層を剥離層の上に形成すると、銅箔層に無数のピンホールが存在する場合があった。
【0010】
また、特許文献2においては、17μmよりも薄い銅箔にはピンホールが存在することを前提としているように、この製造方法を用いても、銅箔層に存在するピンホールの数は、ピーラブルタイプのキャリア付銅箔に比べて少ないが、ピンホールを皆無とすることは困難で、ピンホールの無い銅箔層が得られる可能性は低い。しかも、エッチャブルタイプのキャリア付銅箔の場合には、キャリアの表面に電解法を用いて銅箔層を形成することが多く、銅箔層が薄くなるほど、局所的に厚い銅の析出部位が形成され、結果として銅箔層の厚さバラツキが大きくなり、ファインピッチ回路の形成には不適である。実際に特許文献2の方法で製造したアルミニウムキャリア付の厚さ9μm銅箔に存在するピンホールを評価してみると、ピンホールの存在は少ないとは言っても皆無ではなく、最大長さが5μmを超えるピンホールが発見される場合もある。
【0011】
このときの電解法では、ピンホールの発生を防止するため、プリント配線板にビアフィリングを施す場合と同様の、平滑剤等種々の添加剤を含む銅電解液を用いることもできる。ところが、このような電解液を用いた電解法で銅箔層を形成し、ピンホールの無い状態で平滑化効果を得ようとしても、一定の厚さ(例えば、厚さ5μm)以上になるように電解を行う必要がある。従って、平均厚さ1μm程度の銅箔層を備えるエッチャブルタイプのキャリア付銅箔を電解法を用いて得ようとすれば、キャリアの表面において、無数のアイランド状の銅層がネットワーク状態に繋がった析出状態となり、結果として無数の大きなピンホールが形成されることになる。
【0012】
更に、特許文献3においては、キャリアとして機能する絶縁樹脂層上にパラジウム等の触媒成分が残留するため、表層マイグレーションが起こりやすくなる。また、銅層の表面処理を行った後に、事後的な無電解銅めっきでピンホールを埋設し、修復するとしても、その部位には適切な接着表面処理層が存在しないことになり、下地にクロム等のシード金属成分があると、銅層の剥離現象が起こりやすくなり、良好な密着性が得られなくなるため、エッチングプロセスでブリスタが生じる等の問題が起こりやすくなり、好ましくない。
【0013】
以上のことから理解できるように、従来技術により製造された、従来よりも薄い銅箔層を備えるキャリア付銅箔を用いて銅張積層板を製造し、キャリアを除去した後、銅めっきを施すこと無く、セミアディティブ法で微細配線回路を形成すると、銅箔層のピンホール部分において、エッチングレジストの剥離現象が発生しショートした状態の配線回路状態が得られたり、配線回路自体の欠けが生じたり、配線回路の内部にピンホールが位置する等の不具合が生じることになる。
【0014】
また、微細配線回路を形成するためのサブトラクティブ法を用いたプリント配線板の製造においても、配線回路の欠け、ピンホール、回路断線等の発生が無い極薄銅層を備える銅張積層板が要求されてきた。即ち、サブトラクティブ法におけるフラッシュエッチングで除去する銅層が薄いほど、ファインピッチ回路の形成が容易となる。そのため、厚さ1μm以下の極薄銅層を備え、且つ、ピンホールの無い極薄銅層を備える銅張積層板が要求されるため、厚さ1μm以下の均一な厚さの極薄銅層を備え、且つ、ピンホールの無い極薄銅層を備えるキャリア付銅箔に対する市場要求があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、鋭意研究の結果本件発明者等は、以下に示す、乾式銅薄膜を形成してから電解法を用いて銅バルク層を形成する、実用上の障害になるピンホールが無い極薄銅層を備えるキャリア付銅箔の製造方法に想到したのである。
【0016】
<本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法>
本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は、以下の工程を備えることを特徴としている。
【0017】
乾式金属薄膜形成工程: キャリアの表面に、乾式成膜法を用いて乾式銅薄膜を形成するにあたり、少なくとも表面を銅よりも析出電位が卑な金属成分で構成したキャリアを選択使用して、その表面に乾式成膜法を用いて乾式銅薄膜を形成する。
電解銅析出工程: 前記乾式銅薄膜上に、電解法を用いて銅バルク層を形成することでキャリア付銅箔を得る。
【0018】
<本件発明に係るキャリア付銅箔>
本件発明に係るキャリア付銅箔は、上述のキャリア付銅箔の製造方法を用いて得られるキャリア層/乾式銅薄膜層/バルク銅層の層構成を備える製品としての提供が可能である。
【0019】
<本件発明に係る銅張積層板>
本件発明に係る銅張積層板は、前記キャリア付銅箔又は前記樹脂層付キャリア付銅箔を用いて得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
この本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法を用いれば、銅箔層の厚さを薄くしても、ピンホールが少ない銅箔層を備えるキャリア付銅箔の製造が可能になる。従って、このキャリア付銅箔を絶縁樹脂基材と張り合わせ、キャリアを除去して銅張積層板を作成し、配線回路幅が10μm程度の配線回路を形成しても、銅箔層のピンホールが規格の許容範囲内となり、配線回路の欠けが起こりにくく、信頼性の高いプリント配線板を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本件発明に係るキャリア付銅箔の製造形態: 本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法は、乾式金属薄膜形成工程と電解銅析出工程とを備える。即ち、この製造方法を用いることで、キャリアの表面に乾式銅薄膜を備え、その乾式銅薄膜の表面に銅を電解析出して銅バルク層を形成して、キャリアと銅層とが積層したシート状態のキャリア付銅箔を得ることができる。以下、本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法について、工程毎に説明する。
【0022】
乾式金属薄膜形成工程: 最初に、本件発明に係るキャリア付銅箔の製造で用いるキャリアに関して述べる。なお、以下の説明において、キャリアは、単に「キャリア」と称する場合と、説明の都合上「キャリア箔」と称する場合がある。
【0023】
本件発明に係るキャリア付銅箔の製造においては、キャリアの表面に、乾式成膜法を用いて乾式銅薄膜を形成する。このときのキャリアに関して述べる。このキャリアは、少なくともキャリア表面を、銅よりも析出電位が卑な金属成分で構成した表面を備えるものを選択使用する必要がある。ここで言う、銅よりも析出電位が卑な金属成分で表面を構成したキャリアとは、以下のキャリアa〜キャリアfとして記載したいずれかを用いることが好ましい。キャリア表面の構成成分(アルミニウム又は亜鉛)と銅との置換析出を促進することで、銅箔へのピンホール発生の抑制が可能になるためである。図1に、本件発明に係るキャリア付銅箔の製造に用いるキャリア箔を層構成として捉えた場合のバリエーションをイメージ図として例示している。以下、各キャリアに関して説明する。
【0024】
キャリアa(アルミニウムキャリア)は、純アルミニウム、アルミニウム合金で構成したものを想定している。市場には、種々のグレードの純アルミニウム箔とアルミニウム合金箔とが流通しているが、いずれの使用も可能である。従って、市場での調達が可能な純アルミニウム箔、アルミニウム合金箔の中から、材料コスト、キャリア付銅箔の生産性及び製造歩留まり等を勘案し、最適なグレードを選択使用すればよい。なお、以下に述べる他のキャリアも、単に「アルミニウム」と称する場合には、アルミニウムとその合金の全体を含む概念を包含させており、且つ、金属元素として示す場合には、単に「Al」と表記することを断っておく。
【0025】
以上に述べてきたアルミニウム箔は、圧延法で製造されるのが通常である。従って、原料としてのアルミニウム箔の表面には、圧延時に使用した圧延油、アルミニウム粉が付着している。従って、アルミニウムキャリアとして用いるアルミニウム箔は、その表面に付着している圧延油などの汚染成分を除去するように脱脂洗浄工程を設けることが望ましい。この脱脂工程では、有機溶媒を用いての洗浄、アルカリ溶液を用いての脱脂洗浄等が採用可能である。中でも、アルミニウム粉の確実な除去を行うためには、アルミニウム粉の溶解が可能な、アルカリ溶液を用いて脱脂洗浄することが好ましい。
【0026】
キャリアbは、アルミニウム層/剥離層/アルミニウム層の層構成を備える複合アルミニウムキャリアである。即ち、この複合アルミニウムキャリアは、引き剥がしに耐え得る厚めのアルミニウム箔の表面に、剥離層、薄いアルミニウム薄膜とを順次積層した状態のものである。そして、この複合アルミニウムキャリアの表面に銅箔層を形成するとアルミニウム層/剥離層/アルミニウム薄膜/銅箔層の層構成のキャリア付銅箔となる。この層構成のキャリアは、当該剥離層が存在することで、キャリアの一部を構成している外層の厚めのアルミニウム層を引き剥がして除去できる。よって、銅箔表面に残留するアルミニウム成分が極端に少ないため、アルミニウムエッチングの負荷が極端に軽減できる。なお、アルミニウム薄膜は、スパッタリング蒸着方等の乾式薄膜製造法で1μm以下の厚さで形成することが好ましい。なお、本件明細書において、「銅箔層」と称する場合には、乾式銅薄膜とバルク銅層とを合わせたもの概念として使用している。
【0027】
ここで言う「剥離層」は、キャリア箔を引き剥がして除去するタイプの製品には必須のものであり、シリコーン系剥離剤を用いて形成した有機被膜であることが好ましい。この剥離層は、アルミニウム箔の表面に剥離剤を塗布することにより形成可能である。そして、乾式アルミニウム層は、キャリアの表面にアルミニウム成分を存在させるためのものであり、上述したと同様の論理で、その表面に形成する銅箔へのピンホール発生の抑制を可能とするものである。このときの乾式アルミニウム層は、スパッタリング蒸着等の物理蒸着法を用いて形成した被膜であり、平均厚さが10nm〜3000nmである。乾式アルミニウム層の厚さが10nm未満の場合には、キャリアの表面にアルミニウム成分を存在させる効果が得られず、その表面に形成する銅箔へのピンホール発生の抑制が困難になる。一方、乾式アルミニウム層の厚さが3000nmを超えても、キャリアの表面に形成する銅箔へのピンホール発生の抑制効果が飽和するため、資源の無駄遣いに過ぎなくなる。なお、以下において、アルミニウムキャリアと称する場合には、アルミニウム箔を使用したもの、複合アルミニウム箔を使用したものの双方の概念を含んでいることを明記しておく。
【0028】
キャリアcは、アルミニウム層/樹脂層の層構成を備える複合アルミニウムキャリアである。この複合アルミニウムキャリアは、アルミニウム箔と樹脂フィルム層とを積層する等により得られるものである。このときの樹脂層は、物理的に引き剥がすか、溶剤で膨潤除去可能なものであることが好ましい。一方、当該アルミニウム層は、化学的に溶解除去するものである。そして、キャリアcのアルミニウム層側の表面に、銅層を形成してキャリア付銅箔を得ることができる。ここで言うアルミニウム層は、キャリアaのアルミニウムキャリアの構成成分と同様の概念を適用でき、同様の機能を果たすものである。また、ここで言う樹脂層とは、樹脂フィルム層の如きものであり、特段の限定は無い。但し、好ましくは、銅張積層板のプレス時に採用する170℃以上の加熱温度に対する耐久性を備えるポリイミド樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルム等の使用が好ましい。更に、樹脂層にエッチングレジスト等のレジスト成分を適用することが、より好ましい。レジスト成分は、アルカリ溶液で容易に膨潤除去可能であり、且つ、アルミニウム層の同時除去も可能となるからである。
【0029】
キャリアdは、アルミニウム層/銅層の層構成を備える複合アルミニウムキャリアである。この複合アルミニウムキャリアは、アルミニウム箔と銅箔とのクラッド化等により、製造可能なものであり、アルミニウム層及び銅層共に化学的に溶解除去するものである。そして、キャリアdのアルミニウム層側の表面に、銅層を形成してキャリア付銅箔を得ることができる。ここで言うアルミニウム層は、キャリアaのアルミニウムキャリアの構成成分と同様の概念を適用でき、同様の機能を果たすものである。ここで言う銅層は、単に、薄いアルミニウム箔の支持材としての機能を果たすことになる。
【0030】
キャリアeは、アルミニウム層/亜鉛層の層構成を備える複合アルミニウムキャリアである。この複合アルミニウムキャリアは、アルミニウム箔の表面に亜鉛めっきを行う等の方法でクラッド化して製造可能なものである。そして、キャリアeの場合には、銅イオンと置換可能な亜鉛層側の表面に、銅層を形成してキャリア付銅箔を得ることができる。このときのアルミニウム層は、化学的に溶解除去するものである。しかし、亜鉛層は、例え銅箔層の表面に残留しても、プリント配線板製造工程に悪影響を与えず、むしろ銅層表面に残留すれば、防錆機能を果たすため、積極的な除去は不要である。ここで言うアルミニウム層は、キャリアaのアルミニウムキャリアの構成成分と同様の概念を適用でき、同様の機能を果たすものである。
【0031】
キャリアfは、銅層/亜鉛層の層構成を備える複合銅キャリアである。この複合銅キャリアは、銅箔の表面に亜鉛めっきを行う等の方法でクラッド化して製造可能なものである。そして、キャリアfの場合には、銅イオンと置換可能な亜鉛層側の表面に、銅層を形成してキャリア付銅箔を得ることができる。このときの銅層は、基本的に化学的に溶解除去することを意図しているが、亜鉛層を厚くすると、銅層を物理的に引き剥がすことが可能となる。なお、亜鉛層に関しては、キャリアeと同様に、積極的な除去は不要である。
【0032】
以上に述べたようにキャリアとしては、図1にキャリアa〜キャリアfとして記載したいずれをも用いることができるが、以下の説明においては、キャリアの構成成分として、主に純アルミニウムを用いた場合を代表例として説明する。
【0033】
この乾式金属薄膜形成工程で、前記キャリアの表面に、乾式成膜法を用いて乾式銅薄膜を形成にあたり、キャリアとの密着性が良好な乾式銅薄膜を形成できる乾式薄膜形成法であれば、いずれの方法も用いることができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング蒸着法、化学気相成長法等の採用が可能である。しかしながら、生産性などを考慮すると、スパッタリング蒸着法を用いるのが最適である。ここで言う乾式銅薄膜は、バルク銅層と同じ成分であり、銅電解液と接触したときに、乾式銅薄膜のピンホール部分に銅が析出しやすいからである。ここで言う乾式銅薄膜は、バルク銅層と同じ成分であり、銅電解液と接触したときに、乾式銅薄膜のピンホール部分に銅が析出しやすいからである。
【0034】
スパッタリング蒸着法では、一般的にアルゴンイオン又は窒素イオンをスパッタ種として用い、スパッタ種を銅ターゲット材に衝突させて銅原子をたたき出し、この銅原子をキャリアの表面に着地させることによって乾式銅薄膜を形成する。スパッタ種としてアルゴンイオンを用いるか、窒素イオンを用いるかは、製造ラインの性質、求められる生産性を考慮して、適宜選択すればよい。そして、スパッタリング蒸着法にマグネトロンスパッタリング法を採用すると、成膜速度が速く、連続生産法を採用することも可能であり、工業的な観点からは好ましい。
【0035】
このとき、150mm×300mmサイズの銅ターゲット材を用いるとすれば、銅ターゲット材には1KW〜50KWの電力(以下、単に「スパッタリング電力」と称する。)が負荷されるようにすることが好ましい。このスパッタリング電力が50KWを超えると、これらのターゲット材からたたき出された銅原子をキャリア表面に誘導することが困難となり、スパッタリングチャンバーの側壁等に付着するロス成分量が増大する。一方、スパッタリング電力が1KW未満の場合には、工業的に求められる生産性を満足しないばかりか、形成される乾式銅薄膜の厚さのバラツキも大きくなる。
【0036】
従って、本件発明にとって好適な乾式銅薄膜を形成するには、スパッタリングチャンバー内に上記ターゲット材をセットして、基板ホルダーにキャリアを配置し、予備真空状態からアルゴンガスを導入して真空度10−3torrオーダーのアルゴンガス雰囲気に調整する。その後、上記銅ターゲット材を用いてスパッタリング電力を10KW〜20KW程度で負荷し、8分間〜15分間程度のスパッタリング操作を実施する。この条件であれば、キャリアの表面に、平均厚さ5nm〜500nm程度の密着性の良い乾式銅薄膜を形成することができる。なお、本件発明で形成する「乾式銅薄膜」及び後述する「銅バルク層」の「平均厚さ」とは、形成された乾式銅薄膜や銅バルク層の断面を直接観察して得られるものであり、5点の厚さを測定し、その平均値として求めた厚さである。
【0037】
本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法において、乾式金属薄膜形成工程では、平均厚さ5nm〜500nmの乾式銅薄膜を形成することが好ましい。この段階の乾式銅薄膜は極めて薄いため、多数のピンホールが存在している。この乾式金属薄膜形成工程で形成した乾式銅薄膜とキャリアとの密着性の良否が、最終的に得られるキャリア付銅箔のキャリアと銅箔との接合界面における密着性を左右することになる。
【0038】
ここで当該乾式銅薄膜の平均厚さが5nm未満となると、キャリアの表面には、乾式銅薄膜が形成されず、ピンホールとなった部分の専有面積が過剰になり、乾式銅薄膜とキャリアとの密着性が顕著に低下する。その結果、キャリアと銅層との密着不良部分が存在するキャリア付銅箔となり、絶縁樹脂基材とを張り合わせる工程で加熱を受けるとキャリア付銅箔の密着不良部分に膨れが生じ易くなる。このふくれ現象は、キャリアを除去した後の銅箔表面を凹ませてディンプルを生じ、エッチングレジストの密着不良、レジストの解像度不良等が発生し、エッチングして形成する回路形状に悪影響を与えるため好ましくない。一方、乾式銅薄膜の平均厚さが5nmを超えると、厚さの増加に伴い、形成された乾式銅薄膜に存在するピンホールが少なくなってくる。その結果、乾式銅薄膜とキャリアとの密着不良部分も消失していく。しかし、乾式銅薄膜の平均厚さが500nmを超えるようにしても、それ以上のピンホール減少効果はなく、乾式銅薄膜の形成コストが増加するだけであり好ましくない。
【0039】
以上に述べてきた乾式金属薄膜形成工程では、前記脱脂洗浄工程でキャリアに付着した圧延油等の汚染成分を除去しても、乾式金属薄膜形成工程に投入する時点のキャリアの表面の酸化が顕著な場合がある。係る場合でも、乾式成膜法を用いて形成する乾式銅薄膜とキャリアとの間の安定した密着性を得るためには、乾式銅薄膜を形成する直前にキャリアの表面の酸化膜を除去する酸化膜除去工程を設けることが好ましい。この酸化膜除去工程では、乾式銅薄膜の形成を行うチャンバー内で、アルゴンガススパッタリング、逆スパッタ法、コロナ放電法等を用いて行うことが好ましい。
【0040】
電解銅析出工程: この電解銅析出工程は、キャリアの表面に形成した前記乾式銅薄膜上に、電解法を用いて銅を電解析出させ、銅バルク層を形成することでキャリア付銅箔を得る工程である。この電解銅析出工程では、銅電解液中で乾式銅薄膜側をカソードに分極して電解し、乾式銅薄膜に存在するピンホールを埋設しつつ、所定厚さの銅バルク層を形成して銅箔層を形成する。この電解法は、平滑めっきが可能な組成とした銅電解液を用い、アノードには可溶性アノードや不溶性アノードを配置し電解するという方法の中で、工程に合わせた方法及び条件を選択使用すればよい。
【0041】
本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法において、電解銅析出工程で用いる銅電解液としては、酸性の銅電解液又はアルカリ性の銅電解液のいずれも使用することが可能である。以下、本件発明に係るキャリア付銅箔の製造において好適な電解液及び電解条件に関して、一定の内容を例示しておく。薄くて平滑な銅バルク層を形成するため、めっきの付き廻り性が良好なピロリン酸系銅電解液を用いることが好ましい。ピロリン酸系銅電解液は、ピロリン酸銅濃度を30g/L〜80g/L、ピロリン酸カリウム濃度を100g/L〜350g/Lとし、ピロリン酸カリウム、水酸化カリウムなどを用いてpHを8.2〜8.8に調整したものを用いる。そして、この銅電解液を用い、液温45℃〜55℃、電流密度0.1A/dm〜3.0/dmで所定時間電解して、平滑な表面を備える銅バルク層を形成することが好ましい。
【0042】
この電解銅析出工程で行う銅電解により、キャリアの表面に、平均厚さ0.1μm〜3.0μmの銅バルク層を形成する。この工程では、乾式銅薄膜に存在するピンホールを埋設することを1つの目的としている。しかし、当該銅バルク層の平均厚さが0.1μm未満となると、乾式銅薄膜にあるピンホールの埋設が不十分であり、後述する孔径が2.0μmを超えるピンホールの存在が容易に確認できる傾向が現れるため好ましくない。一方、本件発明に係るキャリア付銅箔は、キャリア/乾式銅薄膜/電解銅層の3層構造を備えており、3.0μmを超える不必要な厚さとすると資源の無駄遣い、製造コストの上昇を招くに過ぎない。
【0043】
そして、本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法においては、前記電解銅析出工程で、銅を電解析出させる前に、前記乾式銅薄膜と「Alを溶解する成分を含んだ銅電解液」とを1分間以上接触させ、その後電解して銅バルク層を形成することが望ましい。乾式銅薄膜と当該銅電解液とを所定時間接触させることで、乾式銅薄膜に存在するピンホールの内部に銅電解液が侵入し、当該銅電解液がAlを溶解し、銅電解液の銅イオンとキャリアを構成するアルミニウム又は亜鉛との置換反応が起こり、ピンホール内に金属銅が析出し、ピンホール埋設が行われるからである。このように銅イオン−アルミニウム間での置換反応を引き起こす銅電解液は、主にアルカリ性の銅電解液であるが、当該効果が得られる濃度でハロゲンイオンを含む酸性の銅電解液の使用も可能である。
【0044】
乾式銅薄膜と当該銅電解液との接触時間が1分未満の場合には、乾式銅薄膜に存在するピンホールの内部に置換析出する金属銅量が不十分になる傾向がある。従って、より確実にピンホール内に金属銅を置換析出させるためには、乾式銅薄膜と銅電解液との接触時間を2分間以上とすることがより好ましい。また、乾式銅薄膜と銅電解液との接触中に、超音波攪拌、揺動等の溶液攪拌手段を併用することも好ましい。ここで乾式銅薄膜と銅電解液と接触時間の上限に関しては、特段の限定は行っていない。何故なら、銅イオンとピンホール内に露出したキャリアを構成するアルミニウム成分又は亜鉛成分との置換反応を活用するという観点から言えば、特段の上限を設ける必要がないからである。しかし、本件発明者等の研究によれば、上述の乾式銅薄膜の厚さを考慮すると、5分間を超えて銅電解液と接触させても、置換析出した金属銅の存在により、それ以上の置換析出は起こらなくなる。なお、乾式銅薄膜と銅電解液との接触を行う直前に、キャリア表面を、塩酸又は硫酸等の成分で酸洗浄することで活性化することが好ましい。
【0045】
以上のようにして、乾式銅薄膜に存在するピンホールの内部に金属銅が置換析出した後に銅電解を開始すると、当該ピンホール部分を金属銅が埋設するため、平滑な銅バルク層の形成を可能とし、キャリアと銅箔層との密着性が向上し、銅箔層の銅箔としての導電性も改善される。
【0046】
以上、本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法に関して述べ、本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法を明らかにしてきた。しかし、このキャリア付銅箔を市場に流通させる段階では、キャリア付銅箔の銅箔面の表面には、少なくとも銅層の酸化腐食を防止するための防錆処理を必要とし、要求に応じて粗化処理を施す等の表面処理を必要とする場合がある。係る場合、この電解銅析出工程の後に、キャリア付銅箔の銅箔面に表面処理層を形成する表面処理工程を設ける必要がある。ここで言う表面処理をより具体的に述べると、例えば、本件発明に係るキャリア付銅箔がプリント配線板の製造目的に使用される場合には、絶縁樹脂基材との密着性を向上させるためのアンカー効果を得るための粗化処理、長期保存性、耐熱性、化学的接着力を向上させるための防錆処理、化学的な接着力安定化のためのシランカップリング剤処理等である。ここで言う防錆処理には、亜鉛防錆、亜鉛−ニッケル合金防錆、クロメート処理等がある。以上に述べた表面処理は、表面処理前の銅箔層の表面形状に影響を与えるレベルのものではない。従って、表面処理前の銅箔層に存在するピンホールを埋設する等の影響は発生しないのが通常であり、銅箔層に当該存在したピンホールはそのまま維持される。
【0047】
本件発明に係るキャリア付銅箔の形態: 本件発明に係るキャリア付銅箔は、前記キャリア付銅箔の製造方法を用いて得られるものである。より正確に言えば、本件発明に係るキャリア付銅箔は、キャリア層/乾式銅薄膜層/バルク銅層の3層構成の製品を提供することになる。即ち、当該キャリア付銅箔は、キャリアの表面に乾式銅薄膜を備え、その乾式銅薄膜の表面に電解析出した銅バルク層を備えており、更に、必要に応じて銅バルク層上に施した表面処理層を備えるものである。このような層構成を備える限り、キャリアと銅箔層との界面には、プリント配線板用銅箔として忌避する金属成分が存在しない。このため、比較的高温が負荷される銅張積層板の製造工程、プリント配線板の製造工程で用いても、製造工程での支障となることがない。以上に述べた層構成を備えるキャリア箔付銅箔は、銅張積層板に加工した後に、キャリアを除去することで、プリント配線板製造に適した清浄な銅表面を備える銅張積層板を得ることができる。
【0048】
そして、本件発明に言う層構成のキャリア付銅箔は、そのキャリアを、化学的にエッチング除去することが基本である。ところが、アルミニウム層/剥離層/アルミニウム層の層構成を備える複合アルミニウムキャリアを用いた場合のキャリア付銅箔の外層側の厚いアルミニウム層を物理的に引き剥がした後、表面に残留した薄い膜厚のアルミニウム層を化学的に選択的にエッチング除去することが好ましい。この結果、エッチング除去を必要とするアルミニウム層が薄くなるので、エッチング負荷を著しく低下させることが可能となる。
【0049】
そして、本件発明に係るキャリア付銅箔の銅箔層は、前述の電解銅析出工程で、乾式薄銅膜に存在するピンホールを埋設することが出来るため、銅箔層が平均厚さ3μm以下の極薄銅箔であっても、当該極薄銅箔に存在するピンホールは極めて少なくなる。即ち、本件発明に係るキャリア付銅箔のキャリアを除去して得られる銅箔は、その好ましい態様によれば、光透過法で検出した「孔径が2.0μmを超えるピンホール」が、1.5cm×1.5cmの基準面積内で1個以下である。そして、前述のバルク銅層の平均厚さが1.0μmを超えると、ピンホールの存在個数が急激に少なくなる。また、後に示す実施例の評価から判断すると、バルク銅層の平均厚さが1.0μmの銅箔に存在しているピンホールの最大径が2.0μmを超えることは無いと考えられる。
【0050】
本件発明に係るキャリア付銅箔が、プリント配線板の製造原料として用いる場合に、銅箔に存在するピンホールの許容限度は、ピンホールの存在が形成する配線の特性に悪影響を与えるかどうかを判定基準とすべきであり、最も有効なピンホール検出方法を採用し、適宜、判断方法及び判断基準を選択する必要がある。そして、薄い銅箔に存在する小さなピンホールは、ほぼ円形の外周形状を備えているとみなすことが可能である。そこで、本件発明で言うピンホールの孔径とは、光透過法でピンホールを検出するにあたり、当該ピンホールが真円であると仮定した場合の径であり、長径と短径とが確認できる場合には長径を孔径とした。
【0051】
そして、本件発明に係るキャリア付銅箔は、上述のように、当該銅箔層の表面に、用途に応じた防錆処理、粗化処理、密着性向上処理等の各種表面処理を適宜組み合わせて施すことも可能である。例えば、本件発明に係るキャリア付銅箔をプリント配線板用のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂や、フッ素樹脂基材、液晶ポリマー基材等の熱可塑性樹脂に張り合わせる場合には、アンカー効果を得るために粗化処理を施しても構わない。銅箔表面に粗化処理を施さない場合に比べて、高い接着強度、耐熱性等の要求特性が向上するからである。
【0052】
しかし、本件発明に係るキャリア付銅箔の銅箔表面に、このような粗化処理を施さずに、上述の熱可塑性樹脂との良好な接着性を発揮できる場合もある。即ち、本件発明に係るキャリア付銅箔を用いて、当該キャリア付銅箔の銅箔側の最表面に樹脂層を設けることで、「樹脂層を備えるキャリア付銅箔」として用いる場合である。樹脂層を備えるキャリア付銅箔の樹脂層は、「樹脂層を備えるキャリア付銅箔」を用いて製造した銅張積層板から所定の性能を備えるプリント配線板を製造できるものであれば、任意の樹脂組成物を用いて形成することが可能である。このときの樹脂層の形成方法は、キャスティング法、樹脂シートラミネート法、プレス成形法等の採用が可能である。また、当該樹脂層の厚さは、キャリア付銅箔の表面形状、例えば粗化処理の有無などを考慮し、銅箔表面を完全に被覆できる厚さを下限に設定する。一方、上限に関しては、樹脂層を備えるキャリア付銅箔を用いて製造したプリント配線板の厚さ、電気特性(例えば、層間絶縁性、誘電率等)を考慮して、使用目的毎に適宜設定すればよい。
【0053】
本件発明に係る銅張積層板の形態: 本件発明に係る銅張積層板は、前記キャリア付銅箔又は樹脂層を備えるキャリア付銅箔を用いて得られるものである。この銅張積層板の製造方法には特段の指定は必要無く、一般的なプリント配線板用銅箔を用いて銅張積層板を製造する工程を採用することが可能であり、ホットプレス方式、連続プレス方式、ロールラミネート方式やキャスティング方式などを用いて、キャリア付銅箔又は樹脂層を備えるキャリア付銅箔と、絶縁樹脂基材又は内層コア材等と張り合わせた状態とし、その後キャリアを化学的に溶解除去すれば(キャリアの化学的溶解除去の前に、キャリア箔の一部を物理的に除去する場合もある。)、所定の銅張積層板を得ることができる。このとき、キャリアが除去されるまでは、キャリアが銅箔層の表面を、傷、汚染物質の付着から保護していることになる。
【0054】
ここで、キャリア箔を構成するアルミニウム成分を化学的に溶解する場合には、水酸化ナトリウム濃度を10wt%程度とした液温60℃程度のアルカリ溶液に浸漬し、ガス発生が無くなるまで放置し、その後、必要に応じて酸洗い等を実施すればよい。また、ポリイミド樹脂のように強アルカリに対する耐性の弱い絶縁樹脂基材を用いた銅張積層板を製造する場合には、前記アルカリ溶液に代えて10wt%程度の希塩酸を用いれば、ポリイミド樹脂にダメージを与えることなくアルミニウム成分を化学的に溶解除去できる。そして、キャリア箔を構成する銅及び亜鉛を化学的に溶解除去する場合には、銅エッチングに用いる酸性銅エッチング液、アルカリ銅エッチング液の全ての使用が可能となる。
【0055】
本件発明に係るキャリア付銅箔は、キャリアと銅箔との界面でアルミニウムと銅とが直接接触しているか、キャリアと銅箔との界面付近での層構成が「アルミニウム/亜鉛/銅」又は「銅/亜鉛/銅」となる。そのため、フッ素樹脂基材又は液晶ポリマー基材と張り合わせたり、キャスティング法でポリイミド樹脂膜を表面に形成したりする際の高温熱履歴を受けても、その界面にはプリント配線板製造の阻害要因となる忌避成分が含まれていない。従って、キャリアを除去して得られる銅張積層板の銅箔層は、ピンホールがほとんど無く、プリント配線板製造に適した清浄な金属銅が露出した状態の極薄の銅層が得られる。よって、本件発明に係る銅張積層板は、銅層の清浄化処理等の前処理を施すことなくエッチングレジスト層の形成が可能で、エッチングレジストの密着性が良好で、一般的な銅エッチング液を用いてエッチングすることで、微細な配線回路を容易に形成できるようになる。そして、この微細配線回路の形成が容易となると言う利点を生かして、セミアディティブ法でのプリント配線板製造が容易となる。
【0056】
また、樹脂層を備えるキャリア付銅箔を用いると、ロールラミネート方式により、2本の巻き取ったロール状態の樹脂層を備えるキャリア付銅箔の樹脂層同士を張り合わせて銅張積層板とし、その後キャリアを化学的に溶解除去し(キャリアの化学的溶解除去の前に、キャリア箔の一部を物理的に除去する場合もある。)、極薄銅箔層を備える両面銅張りフレキシブル銅張積層板を容易に得ることも可能である。
【0057】
以上に述べた本件発明に係る銅張積層板は、その銅箔層のピンホールが少ないから、ピンホールの存在に起因した回路断線、配線回路の欠け等の無い、高品質のプリント配線板の製造が可能となる。
【実施例1】
【0058】
[キャリア付銅箔の製造]
実施例では、アルミニウムキャリアとして、日本製箔(株)製の厚さ30μm、サイズ250mm×460mmの1N30材のアルミニウム箔を用いた。このアルミニウム箔を、40℃の水酸化ナトリウム30g/Lの水溶液に30秒間浸漬した後、イオン交換水で水洗して風乾し、脱脂洗浄処理を施したアルミニウムキャリア10枚を作成した。その後、以下に示す酸化膜除去工程、乾式金属薄膜形成工程、電解銅析出工程及び表面処理工程を実施して、キャリア付銅箔を作成した。
【0059】
酸化膜除去工程: この工程では、逆スパッタ法を採用し、マグネトロンスパッタリング装置を用い、ダミーターゲット材としてアルミニウムキャリアを配置後、スパッタリングチャンバー内の真空度を、0.4×10−4torrとした。その後、スパッタリングチャンバー内にアルゴンガスを導入して真空度を3.7×10−2torrに調整し、アルミニウムキャリアにスパッタリング電力4KWを負荷して10分間スパッタリングし、アルミニウムキャリアの表面を清浄化した。
【0060】
乾式金属薄膜形成工程: この工程では、酸化膜除去工程と同じマグネトロンスパッタリング装置を用い、スパッタリングチャンバー内に銅ターゲット材と、基板ホルダ上にアルミニウムキャリアを配置した後、スパッタリングチャンバー内にアルゴンガスを導入して真空度を3.4×10−3torrに調整し、銅ターゲット材を用いて、スパッタリング電力15KWを負荷して12分30秒間のスパッタリングを行い、アルミニウムキャリアの表面に平均厚さ500nmの乾式銅薄膜を形成した。
【0061】
電解銅析出工程: この工程では、アノードとして不溶性陽極(DSE)を配置した循環式電解槽に、ピロリン酸銅濃度56g/L、ピロリン酸カリウム濃度290g/L、pH8.5(水酸化カリウムで調整)、液温50℃に調整した銅電解液を用いた。このときの電解槽に、カソードとして用いる乾式銅薄膜を形成したアルミニウムキャリアを、予め濃度100g/lの希硫酸で酸洗して、アノード電極(電極面積:100mm×120mm)と平行に配置して、当該電解槽内で乾式銅薄膜を形成したアルミニウムキャリアと銅電解液との接触時間(乾式銅薄膜を形成したアルミニウムキャリアを、銅電解液に浸漬してから電解を開始するまでの時間のことである。以下、同様である。)を5分間とし、その後電流密度1A/dmで1.0μmの厚さとなるように電解し、その後電解槽から取り出して流水で洗浄した。
【0062】
表面処理工程: この工程では、電解銅析出工程で得られたキャリア付銅箔の銅箔面に、表面処理を施した。ここでの表面処理は、粗化処理を施すことなく、亜鉛−ニッケル合金防錆層を形成し、電解クロメート処理、アミノ系シランカップリング剤処理とを施した。
【0063】
[キャリア付銅箔の評価]
ピンホールの評価用試料の作成: ピンホールの評価には、2層ポリイミド銅張積層板を作成し、銅箔に存在するピンホールのサイズを基準試片と対比して評価する光透過法を採用した。この2層ポリイミド銅張積層板の作成は、上述の10枚のキャリア付銅箔の銅箔面に、ポリイミド樹脂前駆体を塗布し、350℃で加熱することにより、厚さ25μmのポリイミド樹脂層を形成した。その後、60℃の水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度:10wt%)を用いてアルミニウムキャリアを化学的に溶解して除去し、2層フレキシブル銅張積層板試料10枚を得た。
【0064】
ピンホールの評価基準: ピンホールの評価にあたり、暗室で各2層フレキシブル銅張積層板試料のポリイミド樹脂層側から光を当てて銅箔面を観察し、透過する光が観察されなかった部分から、1.5cm×1cmの試料を切り出した。この試料に、収束イオン照射加工装置(FIB)を用いてガリウムイオンを用いて、孔径2μmの孔と孔径5μmの孔とをそれぞれ複数個形成し、ピンホールの大きさを測る際の基準試料とした。そして、当該基準試料に存在するピンホールの透過光の写真を撮影し、これを判断基準として用いた。
【0065】
ピンホールの評価: 各2層フレキシブル銅張積層板試料に存在するピンホールは、基準試料と同様にして透過光を写真撮影し、最も透過光が多く観察された1.5cm×1.5cmの基準面積における透過光の数と大きさとを観察し、当該基準試料に存在するピンホールの透過光と対比した。その結果、作成した2層フレキシブル銅張積層板試料10枚の中で最もピンホールが多かった2層フレキシブル銅張積層板試料でも、孔径が2μmを超えるピンホールは1.5cm×1.5cmの基準面積に1個だけであった。図2に、この2層フレキシブル銅張積層板試料に存在するピンホールの透過光の撮影写真と基準写真との対比を示す。また、上記製造条件、キャリア付銅箔の層構成とピンホールの評価結果とを、比較例における製造条件、キャリア付銅箔の層構成、ピンホールの評価結果と合わせて、実施例2及び比較例の評価結果と共に表1に掲載する。
【0066】
銅箔層の析出状態評価: 図4に、この実施例1で製造したキャリア箔付銅箔の銅箔層表面の走査型電子顕微鏡観察像を示している。そして、図5には、実施例1で製造したキャリア箔付銅箔の銅箔層断面の走査型電子顕微鏡観察像を示している。この図4及び図5から、異常析出のない銅箔層が形成されており、その銅箔層の厚さも均一であることが理解できる。
【実施例2】
【0067】
この実施例2では、電解槽内で乾式銅薄膜を形成したアルミニウムキャリアと銅電解液とを接触時間を5秒間とした点のみが実施例1と異なり、その他の条件は実施例1と同様である。このキャリア付銅箔の評価に関しては、実施例1及び比較例の評価結果と共に表1に示す。
【比較例】
【0068】
[比較例1]
比較例1では、特許文献1に開示の実施例1の条件を参考として平均厚さ1.0μmの銅箔を備えるキャリア付銅箔を製造した。しかし、特許文献1の条件を、そのまま適用し、厚さ比例で実施例と同様の厚さを備える銅箔を製造すると、無数のピンホールが存在する銅箔が得られることが明らかであった。そこで、電気銅めっき工程で用いる銅めっき液には、硫酸酸性銅めっき液に代えて、本件発明の実施例で用いたと同様のピロリン酸系銅電解液を用いた。
【0069】
具体的には、乾式銅膜形成工程では、実施例と同様にして清浄化工程までを施したアルミニウムキャリア上に、実施例と同様に、マグネトロンスパッタリング装置を用い、ダミーターゲット材としてアルミニウムキャリアを配置してアルミニウムキャリアの表面を清浄化した。その後、酸化ケイ素ターゲット材にスパッタリング電力15KWを負荷して12分間スパッタリングし、アルミニウムキャリアの表面に厚さ100nmの二酸化ケイ素薄膜を形成した。そして、二酸化ケイ素剥離層上には、実施例と同様の条件で厚さ500nmの乾式銅薄膜を形成した。その後、電気銅めっき工程として、実施例の電解銅析出工程と同じ装置を用い、接触時間を0秒間として、電流密度1A/dmで1.0μm厚さの銅を析出させ、キャリア付銅箔を10枚作成した。
【0070】
上記にて作成したキャリア付銅箔には、実施例と同一条件で表面処理を施し、実施例と同様にして、ピンホール評価用の2層フレキシブル銅張積層板を作成した。更に、この2層フレキシブル銅張積層板に存在するピンホールを、実施例と同様にして評価した結果、作成した2層フレキシブル銅張積層板試料10枚の中で最もピンホールが少なかった2層フレキシブル銅張積層板試料でも、孔径が2μmを超えるピンホールが1.5cm×1.5cmの基準面積内に60個存在していた。図3に、この2層フレキシブル銅張積層板試料に存在するピンホールの透過光の撮影写真と基準写真との対比を示す。また、上記製造条件、キャリア付銅箔の層構成とピンホールの評価結果とを、比較例における製造条件、キャリア付銅箔の層構成、ピンホールの評価結果と合わせて、実施例1及び実施例2の評価結果と共に表1に示す。
【0071】
[比較例2]
比較例2では、アルミニウムキャリア箔として、実施例1と同様のアルミニウム箔を用いて、その表面にジンケート処理層を形成し、そのジンケート処理層の上に、厚さが1μmとなるようにバルク銅めっきを行いキャリア付銅箔を作成した。以下、工程毎に述べる。
【0072】
脱脂工程: NaOHを50g/L、ロッシェル塩を5g/Lの濃度で含む水溶液を、液温35℃として、ここにアルミニウムキャリア箔を10秒間浸漬して処理し、水洗した。
【0073】
ジンケート処理工程: 上記脱脂工程の終了したアルミニウムキャリア箔の表面に、ZnOを6g/L、NaOHを60g/L、 FeCl・6HOを2g/L、グルコン酸ナトリウムを3g/Lの濃度で含むジンケート処理液を調製し、これを液温35℃として、アルミニウムキャリア箔の表面に30秒間接触させて処理することで、アルミニウムキャリアの表面に亜鉛層を形成した。
【0074】
アルカリ銅めっき工程: 亜鉛層を形成したアルミニウムキャリアの表面に、ピロリン酸銅を50g/L、ピロリン酸カリウムを200g/L、pH8.2のアルカリ銅メッキ液を調製し、液温40℃、電流密度2A/dm(アノード:SUS316)の条件で20秒間の電解をおこなった。
【0075】
バルク銅めっき工程: CuSO・5HO(銅として)が200g/L、HSOが200g/Lの濃度の酸性銅メッキ液を調製し、液温45℃、電流密度40A/dm(アノード:DSE)の条件で電解し、厚さ1μm(アルカリ銅めっき層厚さを含む)の銅箔層を形成した。
【0076】
以上のようにして作成したキャリア箔付銅箔は、実施例と同一条件で表面処理を施し、実施例と同様にして、ピンホール評価用の2層フレキシブル銅張積層板を作成した。しかし、図6に示すように銅箔表面の形状が、実施例及び比較例1で得られたキャリア付銅箔と異なり、隆起状の析出部Aがあることが分かった。そこで、この隆起状の析出部Aの断面形状を見たのが図7である。この図7から分かるように、隆起状の析出部Aは、析出厚さが厚くなっているのが理解できる。このような厚さバラツキがあると、ファインピッチ回路の形成には不適で、基本的な要求品質を満足していないことになる。よって、この比較例2の銅箔層のピンホール観察は行わなかった。従って、以下の実施例と比較例との対比でも、ピンホール数の対比では取り上げず、表1への掲載も省略する。
【0077】
【表1】

【0078】
<実施例と比較例との対比>
表1を見ると、実施例と比較例とのピンホール数が顕著に異なる。実施例1は、1.5cm×1.5cmの基準面積の10枚の試料をみても、孔径が2μmを超えるピンホールは最大で1個である。そして、実施例2の場合でも、孔径が2μmを超えるピンホールは最大で53個である。これに対し、比較例1は、1.5cm×1.5cmの基準面積の10枚の試料をみても孔径が2μmを超えるピンホールが最小でも60個である。この差異に関しては、以下のような理由が考えられる。
【0079】
実施例と比較例の製造条件を比較すると、以下の点で異なる。実施例の乾式金属薄膜形成工程においては、アルミニウムキャリア表面に厚さ500nmの乾式銅薄膜のみを形成しているが、比較例では、ピーラブルタイプのキャリア付銅箔であるため、アルミニウムキャリア表面に、一旦剥離層として厚さ100nmの二酸化ケイ素薄膜を形成し、その上に厚さ500nmの乾式銅薄膜を形成している点である。
【0080】
この相違点から考えられるのは、実施例ではカソードへの通電にアルミニウムキャリア自体を活用できるため、電解銅析出工程における乾式銅薄膜表面への通電量の面内バラツキが小さく、均一な条件での銅の電析が可能になっていると考えられる。これに対し、比較例のキャリア付銅箔は、アルミニウムキャリア表面に形成された二酸化ケイ素薄膜が導電性を備えていない。そのため、電気銅めっき工程における乾式銅薄膜表面への通電量は、カソードへの通電部分の配置と、二酸化ケイ素薄膜上に形成された乾式銅薄膜の厚さの面内バラツキの影響を受けることになる。その結果、乾式銅薄膜表面内のカソード電流密度が大きくばらついている。即ち、比較例のキャリア付銅箔を対象とした電気銅めっき工程では、銅の析出状態が乾式銅薄膜表面の位置によって異なってしまいピンホールの埋設が可能な均一且つ平滑な電解銅めっきが達成できなかったと考えられる。
【0081】
また、実施例1の電解銅析出工程では、接触時間を5分間取ってピンホール内に金属銅を置換析出させているのに対し、実施例2の電解銅析出工程では、接触時間を設けることなく、電解槽に漬けて直ぐに金属銅を析出させている。なお、このときの比較例の電気銅めっき工程では、実質的な接触時間を0秒間としている。
【0082】
この接触時間の有無の影響は、実施例1と実施例2とを対比することで理解できる。実施例1の電解銅析出工程では、接触時間を5分間としているため、銅イオンとアルミニウムとの置換反応によって析出した金属銅がピンホール内に存在することになり、金属銅の被覆率が大きくなった乾式銅薄膜上に、銅バルク層を電解形成している。即ち、ピンホールが存在している状態に比べ、乾式銅薄膜表面への通電量のバラツキは更に小さくなっている。これに対し、実施例2の電解銅析出工程での接触時間は、僅かに5秒間であるため、銅イオンとアルミニウムとの置換反応によって析出した金属銅がピンホール内に殆ど存在しない。即ち、ピンホールが存在している乾式銅薄膜上に、銅バルク層を析出させているため、乾式銅薄膜表面への通電量のバラツキが大きくなり、最終的な銅バルク層に存在するピンホール数が増加している。
【0083】
しかしながら、比較例1の電気銅めっき工程では、酸化ケイ素被膜の表面に形成した乾式銅薄膜のピンホール内に、全く置換銅が形成されていない状態で電解を開始している。この結果、乾式銅薄膜表面における導電性の面内バラツキが改善されていないままで銅めっき層が析出し、銅バルク層に多くのピンホールが確認されるようになっている。この比較例のピンホール数を、実質的な接触時間を設けていない実施例2と対比しても、比較例1の試料には極めて多くのピンホールが存在すると言える。これは、乾式銅薄膜の下地の相違によると考えられる。比較例1の場合には、乾式銅薄膜の下地として酸化ケイ素被膜が存在し、実施例2の場合には乾式銅薄膜の下地としてアルミニウムが存在するという相違点に起因するものである。従って、実施例と比較例1との間におけるピンホール数の違いは、上記の製造方法の違いが相乗した影響を受けた結果であると考えられる。
【0084】
最後に、比較例2に関する所見を述べる。比較例2は、本件出願の出願人が、従来から市場に提供されてきたUTC銅箔であり、アルミニウムキャリア箔/ジンケート処理層/極薄銅箔層の3層構成のキャリア箔付銅箔のことである。このUTC銅箔の極薄銅層には、ピンホールは少ないと言われてきた。しかし、図6及び図7から理解できるように、極薄銅層が薄くなるほど、電解法で形成するバルク銅層の厚さバラツキが起こりやすく、極薄銅層の厚さを薄くするのに限界があった。これに対し、本件出願に係る実施例1及び実施例2のキャリア付銅箔の極薄銅層の場合には、図4及び図5から理解できるように、極薄銅層の厚さが1μm程度に薄くなっても、膜厚均一性を劣化させるような銅の析出バラツキが見られない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本件発明に係るキャリア付銅箔の製造方法によれば、ピンホールの少ない銅箔層を備えるキャリア付銅箔の製造が可能になる。このようにして製造したキャリア付銅箔を絶縁樹脂基材と張り合わせ、その後アルミニウムキャリアを除去した銅張積層板を用いれば、今後更に配線回路が微細化すると考えられるフラットパネルディスプレイのドライバーICを搭載する配線板等の超微細回路の安定形成が可能になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本件発明に係るキャリア付銅箔の製造に用いるキャリア箔の層構成を表すイメージ図である。
【図2】実施例の試料に存在するピンホール(PH)を検出した際の透過光の撮影写真(点線枠内)と基準写真との対比図である。
【図3】比較例1の試料に存在するピンホール(PH)を検出した際の透過光の撮影写真(点線枠内)と基準写真との対比図である。
【図4】実施例1で製造したキャリア箔付銅箔の銅箔層表面の走査型電子顕微鏡観察像である。
【図5】実施例1で製造したキャリア箔付銅箔の銅箔層断面の走査型電子顕微鏡観察像である。
【図6】比較例2で製造したキャリア箔付銅箔の銅箔層に見られる隆起状の析出部を表面から見た走査型電子顕微鏡観察像である。
【図7】比較例2で製造したキャリア箔付銅箔の銅箔層に見られる隆起状の析出部の断面の走査型電子顕微鏡観察像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア付銅箔の製造方法であって、以下の工程を備えることを特徴とするキャリア付銅箔の製造方法。
乾式金属薄膜形成工程: キャリアの表面に、乾式成膜法を用いて乾式銅薄膜を形成するにあたり、少なくとも表面を銅よりも析出電位が卑な金属成分で構成したキャリアを選択使用して、その表面に乾式成膜法を用いて乾式銅薄膜を形成する。
電解銅析出工程: 前記乾式銅薄膜上に、電解法を用いて銅バルク層を形成することでキャリア付銅箔を得る。
【請求項2】
前記キャリアは、以下のキャリアa.〜キャリアf.として記載したいずれかである請求項1に記載のキャリア付銅箔の製造方法。
キャリアa: アルミニウムキャリア
キャリアb: アルミニウム層/剥離層/アルミニウム層の層構成を備える複合アルミニウムキャリア。
キャリアc: アルミニウム層/樹脂層の層構成を備える複合アルミニウムキャリア。
キャリアd: アルミニウム層/銅層の層構成を備える複合アルミニウムキャリア。
キャリアe: アルミニウム層/亜鉛層の層構成を備える複合アルミニウムキャリア。
キャリアf: 銅層/亜鉛層の層構成を備える複合銅キャリア。
【請求項3】
前記乾式金属薄膜形成工程は、平均厚さ5nm〜500nmの乾式銅薄膜を形成するものである請求項1又は請求項2のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
【請求項4】
前記電解銅析出工程は、酸性の銅電解液又はアルカリ性の銅電解液を銅電解液として用い、平均厚さ0.1μm〜3.0μmの銅バルク層を形成するものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
【請求項5】
前記電解銅析出工程は、前記乾式銅薄膜と前記銅電解液とを1分間以上接触させ、その後電解することで銅バルク層を形成するものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
【請求項6】
前記電解銅析出工程の後に、キャリア付銅箔の銅箔側表面に表面処理層を形成する表面処理工程を備える請求項1〜請求項5のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法を用いて得られるキャリア層/乾式銅薄膜層/バルク銅層の層構成を備えることを特徴とするキャリア付銅箔。
【請求項8】
前記バルク銅層は、その表面に表面処理層を備える請求項7に記載のキャリア付銅箔。
【請求項9】
キャリア付銅箔からキャリアを除去して得られる銅箔は、光透過法で検出した、孔径が2.0μmを超えるピンホールが、1.5cm×1.5cmの基準面積内で1個以下である請求項7又は請求項8に記載のキャリア付銅箔。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれかに記載のキャリア付銅箔の銅箔側の最表面に樹脂層を備えることを特徴とする樹脂層を備えるキャリア付銅箔。
【請求項11】
請求項7〜請求項10のいずれかに記載のキャリア付銅箔を用いて得られることを特徴とする銅張積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−132959(P2010−132959A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309142(P2008−309142)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】