説明

キーボードスイッチ及び携帯電子機器

【課題】 入力感触が良いキーボードスイッチでありながら、安価に製造することができ、さらに操作視認性が向上したキーボードスイッチを提供する。
【解決手段】 基板11上に設けられた固定接点と可動接点とを備えるスイッチ機構20と、スイッチ機構20を覆うように設けられたカバー体30と、スイッチ機構20の周囲の基板11上に設けられたELシート12とを具備し、カバー体30が基板11に平行に且つスイッチ機構20を覆う押圧板部31と、押圧板部31の周縁から基板11に向かって延び且つELシート12と対向する側壁端部35を有する周縁側壁部33とを具備して構成され、押圧板部31及び周縁側壁部33が、透過性樹脂で一体に形成され、押圧板部31の下側面には、スイッチ機構20の範囲に亘る遮蔽部37が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボードスイッチ及び携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今においては、例えば携帯電子辞書に代表されるような携帯電子機器が提供されている。この種の携帯電子機器は、筐体内に、CPU、ROM、RAM等からなる制御部、この制御部によって処理された結果を表示する表示部、さらに、この制御部に入力信号を送信する入力部とを備えて構成される。また、入力部は、適宜の入力信号が割り振られたスイッチ(以下、キーボードスイッチ)が、キーボード状に複数配列されて構成される。このキーボードスイッチには、固定された固定接点と、弾性変形可能なドーム状に形成された可撓性のシートに設けられた可動接点とを具備した、所謂メンブレムスイッチが提供されている(特許文献1参照)。また、可動接点の上に露出された箇所に、弾性変形しない硬いカバー体を設け、このカバー体の下には、このカバー体の押し下げを案内する案内機構が設けられたものも提供されている(特許文献2参照)。
【0003】
一方、上述した携帯電子機器の入力部を構成するキーボードスイッチにあっては、操作視認性の向上を目的として、このキーボードスイッチ自体が発光するように構成されたものが提供されつつある。例えば、上述のメンブレムスイッチで構成されるキーボードスイッチにあっては、LED(light emitting diode)を内蔵して構成したり、可撓性のシートにEL(electro luminescence)シートを貼着して構成したりして、発光させていた。
【特許文献1】特開2001−273831号公報
【特許文献2】特開2002−251937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LEDを内蔵して構成されるメンブレムスイッチにあっては、内蔵するLEDを、キーボードスイッチの数量に合わせて用意することが必要とされ、製造コストが嵩んでしまう不具合が指摘されていた。また、ELシートを可撓性のシートに貼着して構成されるメンブレムスイッチにあっては、安価に製造することはできるが、メンブレムスイッチ特有のぐにゃぐにゃとした入力感触となっており、例えば、携帯電子辞書のようなキーボード状に配列された入力部を有する携帯電子機器には相応しくないと指摘されていた。
【0005】
つまり、キーボードスイッチは、上述したような、弾性変形しない硬いカバー体が設けられて構成されるものが好ましいものとされるが、このカバー体が設けられて構成されたキーボードスイッチでは、発光された光を、このカバー体自体で遮ってしまう。これによって、キーボードスイッチ自体を光らせるような、所望の効果が得られない。このような問題を解決するにあたって、透明なカバー体によって構成することも提案されているが、透明なカバー体を用いて構成した場合には、そのカバー体の下に設けられた各種の接点や案内機構等が見えてしまい、見栄えが悪いといった不具合が指摘されていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、入力感触が良いキーボードスイッチでありながら、安価に製造することができ、さらに操作視認性が向上したキーボードスイッチ及び携帯電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段のキーボードスイッチ及び携帯電子機器を提供する。
本発明に係るキーボードスイッチは、基板上に設けられた固定接点と前記固定接点の上方に設けられ且つ前記固定接点に対して接近したり離れたりすることができるように支持された可動接点とを備えるスイッチ機構と、前記スイッチ機構を覆うように且つ前記可動接点と連動可能に設けられたカバー体と、前記スイッチ機構の周囲の前記基板上に設けられた発光部とを具備して構成されるキーボードスイッチであって、前記カバー体が、前記基板に平行に且つ前記スイッチ機構を覆う押圧板部と、前記押圧板部の周縁から前記基板に向かって延び且つ前記発光部と対向する側壁端部を有する周縁側壁部とを具備して構成され、前記押圧板部及び前記周縁側壁部が、透過性樹脂で一体に形成され、前記押圧板部の下側面には、前記スイッチ機構の範囲に亘る遮蔽部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るキーボードスイッチにあっては、スイッチ機構の周囲の基板上に設けられた発光部から発せられた光が、この発光部と対向する側壁端部から、周縁側壁部に入る。そして、その周縁側壁部に入った光は、透過性を有する樹脂で形成された周縁側壁部内を透過していく。次いで、この周縁側壁部内を透過した光は、透過性を有する樹脂で形成された押圧板部内を透過する。すなわち、カバー体を構成する押圧板部及び周縁側壁部は、透過性樹脂で一体に形成されているので、この透過性樹脂と外部の空気との密度差がある。光は、この透過性樹脂と外部の空気との密度差から、この透過性樹脂内で反射され易いものとなって、この透過性樹脂内を好ましく進行していく。これによって、側壁端部から入った光は、周縁側壁部を透過し、押圧板部まで好ましく透過して拡がる。
従って、スイッチ機構を覆うように、外部に露出して設けられたカバー体は、周縁側壁部をはじめとして、押圧板部も好ましく光る。これによって、カバー体自体が光照らされることとなって、カバー体の視認性が高められる。
【0009】
また、この押圧板部の下側面には、この押圧板部の下方に設けられているスイッチ機構の範囲に亘る遮蔽部が設けられているので、この下方に設けられたスイッチ機構は、この遮蔽部によって遮蔽されて外部から見えない。従って、スイッチ機構が外部から見えることによる見栄えの悪さを解消し、このカバー体(押圧板部)に印字された識別表示部の視認性も向上させる。また、基板上に設けられた発光部は、側壁端部と対向する箇所にのみ設ければよいものとなるので、設けられる発光部の容量を削減することができ、製造コストの削減に繋がる。
【0010】
本発明に係るキーボードスイッチは、前記周縁側壁部が延びる前記押圧板部の前記周縁の上面箇所が、前記押圧板部の外縁に向かうにしたがって下方に傾斜された傾斜面で形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るキーボードスイッチにあっては、周縁側壁部が延びる押圧板部の周縁の上面箇所が、押圧板部の外縁に向かうにしたがって下方に傾斜された傾斜面で形成されているので、側壁端部から入った光は、周縁側壁部を透過して押圧板部に入る際に、この傾斜面によって全反射され易いものとなって、押圧板部が延びる方向に進行し易い。従って、側壁端部から入った光は、周縁側壁部を透過し、さらに押圧板部まで好ましく透過して拡がる。
【0012】
なお、周縁側壁部が、押圧板部の周縁から、この押圧板部と直交する方向に延びて形成される場合には、この傾斜面の傾斜角度を周縁側壁部に対して45度に設定するのが特に好ましい。すなわち、この傾斜面の傾斜角度を周縁側壁部に対して45度に設定した場合には、側壁端部から入った光が、この傾斜面に対して45度の角度で入射し、そして、この傾斜面に対して45度の角度で反射する。また、側壁端部から入った光は、45度で設定された傾斜面によって、さらに全反射され易いものとなる。ここで、この傾斜面に対して45度の角度で反射した光は、押圧板部が延びる方向と全く同じ方向となるので、側壁端部から入った光は、周縁側壁部を透過し、特に好ましく押圧板部まで透過して拡がる。
【0013】
本発明に係るキーボードスイッチは、前記周縁側壁部が延びる前記押圧板部の前記周縁の上面箇所が、前記押圧板部の中心側上面より前記基板に向かって一段下げられた段部で形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るキーボードスイッチにあっては、周縁側壁部が延びる押圧板部の周縁の上面箇所が、押圧板部の中心側上面より基板に向かって一段下げられた段部で形成されているので、側壁端部から入った光は、この一段下げられた段部の上面を、より強く照らし出す。すなわち、この一段下げられた段部の上面は、より発光部に接近した距離に位置するので、側壁端部から入った光は、強度の減衰が少ない状態で段部の上面に当たる。これによって、この上面は強く照らし出される。従って、キーボードスイッチの周縁を、適宜に強調して光らせたい場合に、好ましく用いることができる。例えば、ユーザが識別し易いように、特定のキーボードスイッチを強調して光らせたい場合に、有利となる。
【0015】
本発明に係るキーボードスイッチは、前記押圧板部の中心側上面には、切り欠かれた凹部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るキーボードスイッチにあっては、上述したように、発光部から発せられた光が、側壁端部から入って周縁側壁部を透過し、押圧板部まで透過して拡がる。この押圧板部まで透過して拡がった光は、押圧板部の中心側上面に設けられた切り欠かれた凹部によって形成された内面に衝突する。これによって、この切り欠かれた凹部によって形成された内面は、より強く照らし出される。従って、カバー体の押圧板部の中心側を、より強調して照らし出すことができて、カバー体の視認性が高められる。
【0017】
本発明に係るキーボードスイッチは、前記遮蔽部が、蓄光性を有する材料によって形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るキーボードスイッチにあっては、押圧板部の下側面に設けられた遮蔽部が、蓄光性を有する材料によって形成されているので、この遮蔽部が、押圧板部に透過して拡がった光を蓄光する。これによって、押圧板部は、この遮蔽部に蓄えられた光と共により強く光ることとなって、カバー体の視認性がより高められる。
【0019】
本発明に係る携帯電子機器は、入力信号を送信する入力部と、前記入力部から送信された入力信号を処理する制御部と、前記制御部によって処理された結果を表示する表示部とを備えた携帯電子機器であって、前記入力部が前記キーボードスイッチを複数配列したことによって構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る携帯電子機器にあっては、入力部が、上述したようなカバー体の視認性が高められたキーボードスイッチを複数配列したことによって構成されているので、視認性が高められた入力部となる。従って、ユーザにとって入力操作のし易い携帯電子機器となる。
【0021】
本発明に係る携帯電子機器は、入力信号を送信する入力部と、前記入力部から送信された入力信号を処理する制御部と、前記制御部によって処理された結果を表示する表示部とを具備し、前記入力部が前記キーボードスイッチを複数配列したことによって構成された携帯電子機器において、複数配列された前記キーボードスイッチが所定の群で区分けされ、前記段部が、その所定の群で区分けされた境界に沿って形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る携帯電子機器にあっては、複数配列されたキーボードスイッチが所定の群で区分けされ、段部が、その所定の群で区分けされた境界に沿って形成されているので、ユーザにとって、その所定の群で区分けされた境界が、上述した強調して光らせる段部によって識別され易いものとなる。従って、ユーザに所定の群を視認させることができて、入力操作のし易い携帯電子機器となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るキーボードスイッチによれば、入力感触が良いキーボードスイッチでありながら、安価に製造することができ、操作視認性が向上したキーボードスイッチとすることができる。また、本発明に係る携帯電子機器によれば、操作視認性が向上し、ユーザにとって入力操作のし易い携帯電子機器とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るキーボードスイッチ及び携帯電子機器の最良の実施形態について、図1から図7を参照しながら説明する。なお、図1は本発明に係る携帯電子機器の一例とされる携帯電子辞書の斜視図、図2はキーボード部の拡大斜視図、図3はキーボードスイッチ(第1の実施例)の鉛直断面図、図4,図5,図7は図3のキーボードスイッチの他の例、図6は区分けされた境界に沿って段部が設けられたキーボード部を示す斜視図である。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1(a)において付される符号1は、本発明に係る携帯電子機器の一例とされる携帯電子辞書である。この携帯電子辞書1は、二つの筐体がヒンジ結合されて、二つ折り可能に構成されている。一方の筐体(表示側筐体)Aには、本発明における表示部に相当する液晶画面2が設けられている。また、図1(b)にも示すように、他方の筐体(操作側筐体)Bには、本発明における制御部に相当するCPU,ROM,RAM等をはじめとした制御装置3が内蔵されている。また、操作側筐体Bの、表示側筐体Aと合わされる面においては、外部に露出されるキーボード装置4が設けられている。このキーボード装置4は、本発明における入力部に相当する。つまり、この携帯電子辞書1にあっては、ユーザは、キーボード装置4から入力できるようになっており、その入力された入力信号は制御装置3に送信される。そして、その制御装置3に送信された入力信号は、所定の処理がされ、制御装置3は処理結果を液晶画面2に表示させる。
【0026】
また、このキーボード装置4は、電源スイッチ部4aと、キーボード部4bとを具備して大略構成されている。このキーボード部4bは、キーボードスイッチ10が複数配列されることによって構成されている。
キーボードスイッチ10は、図2に示すように、基板11上に適宜間隔に複数並べられて設けられている。この基板11は、上述した、制御装置3が設けられるものであって、各種の電気配線がなされている。このキーボードスイッチ10は、図3に示すように、スイッチ機構20と、このスイッチ機構20を覆うように設けられたカバー体30とを具備して大略構成される。図2における符号101(10)は、カバー体30が取り外されたキーボードスイッチであり、スイッチ機構20が剥き出しとなっている。また、図2における符号102(10)は、通常のカバー体30を備えるキーボードスイッチであり、カバー体30の下のスイッチ機構20は見えないものとなっている。
【0027】
図2における符号12は、基板11の上面に貼着されたELシートである。このELシート12は、本発明に係る発光部に相当し、具体的には、光を発する有機ELシートによって構成されている。このELシート12は、図2に示すように、スイッチ機構20が突き出る箇所については正方形で形成された穴が設けられて形成され、基板11に貼着している。ただし、図3等の断面図に示すように、スイッチ機構20に隣接し、カバー体30の側壁端部35が対向する箇所については、貼着されたELシート12が存している。
【0028】
まず、キーボードスイッチ10を構成するスイッチ機構20について説明する。このスイッチ機構20は、図3の断面図に示すように、基板11上に固定して設けられた固定側接点(固定接点)21と、ドーム状に形成され且つ弾性変形可能なゴム樹脂からなる弾性部材22と、この弾性部材22の天井部22aから下方に延びた釣鐘部22bの先端に設けられた可動側接点(可動接点)23とを具備して大略構成されている。この弾性部材22は、この天井部22aを下方に押し下げられた場合に、このドームが潰れるように弾性変形するようになっている。そして、釣鐘部22bの先端に設けられた可動側接点23は、この弾性部材22の弾性変形によって、固定側接点21に対して接近したりまたは離れたり(離反したり)する、可動に支持されている。なお、可動側接点23と固定側接点21とが接触した場合には、この互いの接点21,23同士は電気的に接続して、このキーボードスイッチ10に割り当てられた信号を制御装置3に送信する。
【0029】
次に、このように構成されたスイッチ機構20を覆うように設けられるカバー体30について説明する。このカバー体30は、図2の斜視図、及び図3の断面図に示すように、基板11に対して平行に延びてなる押圧板部31と、この押圧板部31の周縁から基板11と直交する方向に延びる周縁側壁部33とから大略構成されている。つまり、この押圧板部31と周縁側壁部33とは、断面視略コ字状に一体となった、透明の透過性樹脂によって形成されている。また、このカバー体30の周縁側壁部33の下部には、この基板11と平行な面状に形成される側壁端部35が設けられている。この側壁端部35は、上述したELシート12と対向するように配置されており、ELシート12から発光した光は、この側壁端部35を照射する。
【0030】
このカバー体30の押圧板部の上側面(以下、上面)31aには、このキーボードスイッチ10に割り振られた、制御装置3に送信する信号を意味する識別表示部32がプリントされて設けられている。なお、図示例の識別表示部32は、適宜のひらがながプリントされて形成されている。また、この押圧板部31の下側面(以下、下面)31bには、光を遮蔽する遮蔽部37が設けられている。この遮蔽部37は、上述したスイッチ機構20の範囲に亘って設けられるものであって、具体的には、押圧板部31の下面31bの全てに、光を遮蔽する適宜の塗料が塗られて形成されている。カバー体30の下部に配置されるスイッチ機構20は、この遮蔽部37が設けられることによって、外部から見えないようになっている。
【0031】
なお、上述した識別表示部32は、外部から視認可能に設けられるものであればよい。つまり、この押圧板部31は透過性樹脂によって形成されているので、押圧板部31の下面31bに識別表示部32が設けられたとしても、外部から視認することができる。その場合には、遮蔽部37が、この押圧板部31の下面31bに形成される前に、この押圧板部31にプリントされて設けられることが必要とされる。このように、押圧板部31の下面31bに識別表示部32が設けられた場合には、遮蔽部37と連続させて形成できるので、製造コストや製造時間の削減に関して利益がある。
【0032】
また、上述した遮蔽部37は、蓄光性を有する材料によって形成されるものであってもよい。このように、遮蔽部37が蓄光性を有する材料によって形成された場合には、この遮蔽部37は押圧板部31に透過して拡がった光を蓄光する。これによって、押圧板部31は、この遮蔽部37に蓄えられた光と共により強く光照らされることとなって、カバー体30の視認性がより高められる。
【0033】
また、上述した遮蔽部37が形成された押圧板部31の下面31bには、上述した可動側接点23が設けられた弾性部材22の天井部22aの上面が接している。これによって、このカバー体30は、弾性部材22の弾性力によって支持されている。このカバー体30は、弾性部材22の弾性力に抗して押し下げられることによって、この弾性部材22が潰されるように天井部22aが下方に押し下げられ、釣鐘部22bの先端に設けられた可動側接点23は、固定側接点に21に対して接近する。そして、互いの接点21,23同士が接した場合には、互いの接点21,23は電気的に接続される。このように、カバー体30は、可動側接点23と連動できるように構成されている。
【0034】
さらに、この押圧板部31の下方には、このカバー体30の押し下げを案内する押下案内機構40が設けられている。この押下案内機構40は、図2の斜視図、及び図3の断面図に示すように、2組からなる第1アーム機構41と第2アーム機構45とによって構成されている。これらのアーム機構41,45のそれぞれは、アーム部42,46と、このアーム部42,46を軸支する軸支部43,44,47,48とによって大略構成される。
【0035】
具体的には、第1アーム機構41にあっては、略コ字状に形成された第1アーム部42が、基板11に対して傾斜して配置される。この第1アーム部42は、基板11に対する傾斜角度が適宜に変化できるように、その下側部がスイッチ機構20の奥側D1に隣接する基板11上に設けられた基板側第1軸支部43に軸支される(図3においては不図示)。また、この第1アーム部42の上側部は、スイッチ機構20の手前側D2に隣接する押圧板部31の下面31bに設けられた上側第1軸支部44に軸支される。
【0036】
また、第2アーム機構45にあっても、略板状に形成された第2アーム部46が、基板11に対して傾斜して配置される。この第2アーム部46は、基板11に対する傾斜角度が適宜に変化できるように、その下側部がスイッチ機構20の奥側D1に隣接する基板11上に設けられた基板側第2軸支部47に軸支される。また、この第2アーム部46の上側部は、スイッチ機構20の奥側D1に隣接する押圧板部31の下面31bに設けられた上側第2軸支部48に軸支される。
【0037】
このように構成されることによって、上述したカバー体30の奥側D1箇所と手前側D2箇所とは、第1アーム部42と第2アーム部46とによって支持される。これによって、このカバー体30が下方に押し下げられた場合には、このカバー体30は、奥側D1及び手前側D2また幅方向に傾くこと無く好ましく押し下げられる。
【0038】
以上のように構成されたキーボードスイッチ10は、次のような作用を奏する。
すなわち、図3に示すように、スイッチ機構40に隣接する基板11上に設けられたELシート12から発せられた光Lが、このELシート12と対向する側壁端部35から、周縁側壁部33に入る。そして、その周縁側壁部33に入った光は、透過性を有する樹脂で形成された周縁側壁部33内を透過していく。次いで、この周縁側壁部33内を透過した光は、透過性を有する樹脂で形成された押圧板部31内を透過する。すなわち、カバー体30を構成する押圧板部31及び周縁側壁部33は、透過性樹脂で一体に形成されているので、この透過性樹脂と外部の空気との密度差があり、この密度差から、この透過性樹脂内で反射され易いものとなって、この透過性樹脂内を好ましく進行していく(矢印E1)。これによって、側壁端部35から入った光は、周縁側壁部33を透過し、押圧板部31まで好ましく透過して拡がる。従って、スイッチ機構20を覆うように、外部に露出して設けられたカバー体30は、周縁側壁部33をはじめとして、押圧板部31も好ましく光る。これによって、カバー体30自体が光照らされることとなって、カバー体30の視認性が高められる。
【0039】
また、この押圧板部31の下面31bには、この押圧板部31bの下方に設けられているスイッチ機構20の範囲に亘る遮蔽部37が設けられているので、この下方に設けられたスイッチ機構20は、この遮蔽部37によって遮蔽されて外部から見えない。従って、スイッチ機構20が外部から見えることによる見栄えの悪さを解消し、この押圧板部31に印字された識別表示部32の視認性も向上させる。また、基板11上に設けられたELシート12は、側壁端部35と対向する箇所にのみ設ければよいものとなるので、設けられるELシート12の容量を削減することができ、製造コストの削減に繋がる。また、このキーボードスイッチ10は、カバー体30が設けられることによって、メンブレムスイッチ異なり、入力感触が良いキーボードスイッチとなっている。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、上述した第1の実施の形態におけるキーボードスイッチ10の変形例とされる第2の実施の形態について説明する。なお、上述した第1の実施の形態のキーボードスイッチ10と同様に構成される箇所については説明を省略する。
すなわち、図4に示すキーボードスイッチ10aにあっては、周縁側壁部33が延びるように設けられた押圧板部31の周縁31cの上面箇所31a1が、押圧板部31の外縁31dに向かうにしたがって下方に傾斜された傾斜面39aで形成されている。図示例の傾斜面39aは、その傾斜角度が、押圧板部31と直交する方向に延びる周縁側壁部33に対して45度に設定されている。
【0041】
このキーボードスイッチ10aにあっては、側壁端部35から入った光は、周縁側壁部33を透過して押圧板部31に入る際に、この傾斜面39aに対して45度の角度で入射し、そして、この傾斜面39aに対して45度の角度で反射する(矢印E2)。ここで、この傾斜面39aに対して45度の角度で反射した光は、押圧板部31が延びる方向と全く同じ方向となるので、側壁端部35から入った光は、周縁側壁部33を透過し、特に好ましく押圧板部31まで透過して拡がる。また、側壁端部35から入った光は、45度で設定された傾斜面39aによって、さらに全反射され易いものとなっている。従って、側壁端部35から入った光は、周縁側壁部33を透過し、さらに押圧板部31まで好ましく透過して拡がる。
【0042】
なお、上述した傾斜面39aにおいては、単に、この押圧板部31の周縁31cの上面箇所31a1を切り欠いて形成されるものであった。しかしながら、傾斜面39aは、このようなものに限定されず、カバー体30の内部側が鏡面状に仕上げられるように、この傾斜面39aには、適宜の塗料が塗布されてなるものであってもよい。このように、傾斜面39aが鏡面として形成された場合、側壁端部35から入り周縁端部33を透過した光は、押圧板部31に向かって傾斜面39aで反射する場合に、その反射される光の強度が強いものとなって、押圧板部31はより好ましく光る。
【0043】
[第3の実施の形態]
次に、上述した第1の実施の形態におけるキーボードスイッチ10の変形例とされる第3の実施の形態について説明する。なお、上述した第1の実施の形態のキーボードスイッチ10と同様に構成される箇所については説明を省略する。
すなわち、図5に示すキーボードスイッチ10bにあっては、周縁側壁部33が延びるように設けられた押圧板部31の周縁31cの上面箇所31a1が、押圧板部31の中心側上面31a2より基板11に向かって一段下げられた段部39bで形成されている。図示例の段部39bは、この上面箇所31a1が適宜量切り欠かれたようにして形成されている。
【0044】
このキーボードスイッチ10bにあっては、この一段下げられた段部39bの上面39cが、よりELシート12に接近した距離に位置するので、側壁端部35から入った光は、強度の減衰が少ない状態で段部39bの上面39cに当たる。これによって、この上面39cは、上述の第1の実施の形態よりもより強く照らし出される。従って、カバー体30の周縁31cを、適宜に強調して光らせたい場合に、好ましく用いることができる。例えば、キーボード部4bを構成するにあたって、特定のキーボードスイッチに、このキーボードスイッチ10bを用いた場合、そのキーボードスイッチ10bを強調して光らせることができて、他のキーボードスイッチと識別し易いものとなって、ユーザにとって入力操作のし易い携帯電子機器となる。なお、上述の段部39bは、周縁31cの全周に亘って形成されることに限定されず、周縁31cの一部のみに形成されるものであってもよい。
【0045】
また、上述の段部39bは、次のように構成されるものであってもよい。すなわち、キーボード部4bを構成する複数配列されたキーボードスイッチが所定の群で区分けされている場合には、図6に示すように、段部39bが、所定の群で区分けされた境界に沿って形成されるものであってもよい。例えば、このキーボード部4bが文字キーと数字キーとによって構成されているような場合には、図6に示すように、段部39bがキーボードスイッチ10bのそれぞれに設けられる。すなわち、数字キー群を構成するキーボードスイッチ10bのそれぞれには、その数字キー群を区分けする境界に沿って、段部39bが形成されている。このようにキーボード部4bが構成された場合には、この数字キー群が、この境界によって視認され易いものとなって、ユーザにとって入力操作のし易い携帯電子機器となる。なお、このような群としては、文字キー、数字キー、一連の処理が割り当てられたファンクションキー等が挙げられる。
【0046】
[第4の実施の形態]
次に、上述した第1の実施の形態におけるキーボードスイッチ10の変形例とされる第4の実施の形態について説明する。なお、上述した第1の実施の形態のキーボードスイッチ10と同様に構成される箇所については説明を省略する。
すなわち、図7に示すキーボードスイッチ10cにあっては、押圧板部31の中心側上面31a2の中央に、切り欠かれるように形成された凹部49が設けられている。
【0047】
このキーボードスイッチ10cにあっては、ELシート12から発せられた光が、側壁端部35から入って周縁側壁部33を透過し、押圧板部31まで透過して拡がった場合、この光は、押圧板部31の中心側上面31a2に設けられた切り欠かれた凹部49によって形成された内面49aに衝突する。このようにして、この切り欠かれた凹部49によって形成された内面49aは、より強く照らし出される。従って、カバー体30の押圧板部31の中心側が、より強調して照らし出される。つまり、カバー体30の視認性が高められる。
【0048】
なお、この凹部49は、この押圧板部31に設けられる識別表示部32にあわせて切り欠かれて形成されるものであってもよい。具体的には、この押圧板部31の上面31aにプリントされた文字に合わせて上面31aが切り欠かれて形成されるものであってもよい。このようにして切り欠き凹部49が設けられた場合には、この切り欠かれた凹部49によって形成された内面49aが強く照らし出されて、凹部49(文字)が浮かび上がるように強く照らし出される。従って、キーボード部4bを構成するキーボードスイッチ1つ1つは識別され易いものとなり、ユーザにとって入力操作のし易いキーボードスイッチ及び携帯電子機器にすることができる。
【0049】
また、この切り欠かれた凹部49にあっては、その内面49a等に、適宜の蓄光性を有する材料が塗布されたり埋め込まれたりするように形成されたものであってもよい。このように、その内面49aに適宜の蓄光性を有する材料が塗布されたり埋め込まれたりするように形成された場合には、この塗布されたり埋め込まれたりした蓄光性を有する材料が、押圧板部31に透過して拡がった光を蓄光する。そして、カバー体30は、この材料によって、より強く光って視認し易くなる。
【0050】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲内において適宜に変更することができる。
例えば、上述の実施の形態における、カバー体の押下げを案内する押下案内機構にあっては、2組のアーム機構によって構成されるものであったが、このような形態に限定されず、その構成が適宜に変更されるものであってもよい。また、スイッチ機構の可動接点にあっても、適宜に可動に設けられるものであれば、何ら問題なく、上述の実施の形態に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る携帯電子機器の一例とされる携帯電子辞書の斜視図である。
【図2】キーボード部の拡大斜視図である。
【図3】キーボードスイッチ(第1の実施例)の鉛直断面図である。
【図4】図3のキーボードスイッチの他の例である。
【図5】図3のキーボードスイッチの他の例である。
【図6】区分けされた境界に沿って段部が設けられたキーボード部を示す斜視図である。
【図7】図3のキーボードスイッチの他の例である。
【符号の説明】
【0052】
1 携帯電子機器
10 キーボードスイッチ
11 基板
12 ELシート(発光部)
20 スイッチ機構
30 カバー体
31 押圧板部
33 周縁側壁部
35 側壁端部
37 遮蔽部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた固定接点と前記固定接点の上方に設けられ且つ前記固定接点に対して接近したり離れたりすることができるように支持された可動接点とを備えるスイッチ機構と、前記スイッチ機構を覆うように且つ前記可動接点と連動可能に設けられたカバー体と、前記スイッチ機構の周囲の前記基板上に設けられた発光部とを具備して構成されるキーボードスイッチであって、
前記カバー体が、前記基板に平行に且つ前記スイッチ機構を覆う押圧板部と、前記押圧板部の周縁から前記基板に向かって延び且つ前記発光部と対向する側壁端部を有する周縁側壁部とを具備して構成され、
前記押圧板部及び前記周縁側壁部が、透過性樹脂で一体に形成され、
前記押圧板部の下側面には、前記スイッチ機構の範囲に亘る遮蔽部が設けられていることを特徴とするキーボードスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のキーボードスイッチにおいて、
前記周縁側壁部が延びる前記押圧板部の前記周縁の上面箇所が、前記押圧板部の外縁に向かうにしたがって下方に傾斜された傾斜面で形成されていることを特徴とするキーボードスイッチ。
【請求項3】
請求項1に記載のキーボードスイッチにおいて、
前記周縁側壁部が延びる前記押圧板部の前記周縁の上面箇所が、前記押圧板部の中心側上面より前記基板に向かって一段下げられた段部で形成されていることを特徴とするキーボードスイッチ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のキーボードスイッチにおいて、
前記押圧板部の中心側上面には、切り欠かれた凹部が設けられていることを特徴とするキーボードスイッチ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載のキーボードスイッチにおいて、
前記遮蔽部が、蓄光性を有する材料によって形成されていることを特徴とするキーボードスイッチ。
【請求項6】
入力信号を送信する入力部と、前記入力部から送信された入力信号を処理する制御部と、前記制御部によって処理された結果を表示する表示部とを備えた携帯電子機器であって、
前記入力部が、請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の前記キーボードスイッチを複数配列したことによって構成されていることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項7】
入力信号を送信する入力部と、前記入力部から送信された入力信号を処理する制御部と、前記制御部によって処理された結果を表示する表示部とを具備し、前記入力部が請求項3に記載の前記キーボードスイッチを複数配列したことによって構成された携帯電子機器において、
複数配列された前記キーボードスイッチが所定の群で区分けされ、
前記段部が、その所定の群で区分けされた境界に沿って形成されていることを特徴とする携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−80550(P2007−80550A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263356(P2005−263356)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】