説明

キーボード装置

【課題】キートップにおける照明の輝度が低下することを防止できるキーボード装置を提供する。
【解決手段】接点511,521を有する回路基板50と、接点511,521に対向する位置でキートップ10を回路基板50に対して接近離隔可能に保持する保持板20と、光透過性を有し、光源54からキートップ10に光を導く導光板40と、光透過性を有すると共に、キートップ10を回路基板50から離隔方向に付勢するラバードーム35と、を備えており、導光板40は、保持板20と回路基板50との間であって回路基板50よりもキートップ10側に配置され、回路基板50は、導光板40と対向する主面の少なくとも一部が粗面化された粗面化領域Qを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコンやデスクトップ型パソコンに用いられる照明機能付きのキーボード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
暗闇でもキーを視認することができるキーボードとして、導光板を介してキートップに光を照射するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−260478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のキーボード装置では、導光板から拡散した光は、キートップを保持する基板やメンブレン基板を介してキートップへと導かれるため、キートップにおいて照明の輝度が低下するという問題がある。また、導光板をタック性(粘着性)のある材料で構成すると、使用時にキーが押下され、導光板が上部シートに押しつけられることにより導光板と接触する部材が導光板に付着し(貼り付き)、付着部分で光が拡散するため、意図しない箇所が光ってしまうという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、キートップにおける照明の輝度の低下を防止しつつ、使用時にキーが押下され、導光板が上部シートに押しつけられた場合であっても意図しない箇所が光らないようにすることができるキーボード装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、接点を有する回路基板と、前記接点に対向する位置でキートップを前記回路基板に対して接近離隔可能に保持する保持板と、光透過性を有し、光源から前記キートップに光を導く導光板と、光透過性を有すると共に、前記キートップを前記回路基板から離隔方向に付勢する付勢手段と、を備えたキーボード装置であって、前記導光板は、前記保持板と前記回路基板との間であって前記回路基板よりも前記キートップ側に配置され、前記回路基板は、前記導光板と対向する主面の少なくとも一部が粗面化された粗面化領域を有することにより上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記回路基板は、第1の接点が形成されていると共に、前記導光板が直接積層される第1のシートと、所定間隔を介して前記第1の接点に対向する第2の接点が形成された第2のシートと、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に積層されたスペーサと、を有しており、前記第1のシートは、白色のポリエチレンテレフタレート又は白色のポリエチレンナフタレートから構成され、前記導光板と対向する主面の少なくとも一部が粗面化された粗面化領域を有するようにすることができる。
【0008】
上記発明において、前記粗面化領域は、前記付勢手段に対向する領域の少なくとも一部に形成することができる。
【0009】
上記発明において、前記粗面化領域は、透明又は白色インキを用いて印刷されたドットパターンにより粗面化することができる。
【0010】
上記発明において、前記粗面化領域を、白色インキを用いて印刷されたマットパターンにより粗面化することができる。
【0011】
上記発明において、前記付勢部材を、前記導光板に直接接合することができる。
【0012】
上記発明において、前記付勢部材の屈折率は、前記導光板の屈折率よりも相対的に高くすることができる。
【0013】
上記発明において、前記保持板は、リンク機構を介して前記キートップを保持することができる。
【0014】
他の観点による本発明は、第1のシートに、第1の接点を含む回路パターンを形成する工程と、前記一部が粗面化された前記第1のシートの主面の一部を粗面化する工程と、前記第1のシートの他の主面に、スペーサを介して前記第1の接点に接触可能な第2の接点が形成された第2のシートを積層する工程と、前記第1のシートの一の主面に、光透過性を有するとともに、光源から光を導く導光板を直接積層し、前記第1及び第2接点に対向する位置でキートップを前記第1のシートに対して接近離隔が可能なように保持する保持板と前記第1のシートとの間であって、前記第1のシートよりも前記キートップ側に前記導光板が配置されるように、前記導光板、前記第1のシート、前記スペーサ及び前記第2のシートを前記保持板に挟持させる工程と、を有する、キーボード装置の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、導光板を、保持板と回路基板との間であって回路基板よりもキートップ側に配置するとともに、導光板と対向する回路基板の主面の少なくとも一部が粗面化された粗面化領域を回路基板に設けたので、キートップにおける照明の輝度を向上させつつ、使用時においてキーが押下され、導光板が上部シートに押しつけられた場合であっても、導光板が回路基板に付着することを防止して意図しない箇所が光らないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態におけるキーボード装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるキートップを示す平面図である。
【図3】図2に示すキートップを暗闇で照明した様子を示す平面図である。
【図4】図1のIV部を示す第1の拡大断面図である。
【図5】図1のIV部を示す第2の拡大断面図である。
【図6】図1のIV部を示す第3の拡大断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<<第1実施形態>>
図1は本実施形態におけるキーボード装置の全体構成を示す断面図、図2及び図3は本実施形態におけるキートップを示す平面図、図4〜図6は図1のIV部の各例を示す拡大断面図である。
【0019】
本実施形態におけるキーボード装置1は、ノート型パソコン等に用いられるキーボードであり、図1に示すように、キートップ10と、保持板20と、ラバードームシート30と、導光板40と、メンブレン基板50と、筐体60と、を備えている。
【0020】
キートップ10は、図2に示すように、英語や日本語等の文字12が付されたキー面11を有しており、このキー面11を入力者が指で押圧することで、その文字がノート型パソコンに入力される。なお、文字12に代えて、数字、記号或いは図形等をキー面11に付してもよい。
【0021】
本実施形態では、キー面11において、文字12の部分が透明になっているのに対して、その他の部分が不透明となっている。このため、キートップ10に下方から光を当てると文字12の部分のみから光が透過するので、図3に示すように、暗闇においてキーを視認することが可能となっている。なお、文字12の部分を不透明にし、キー面11におけるその他の部分を透明にしてもよい。
【0022】
キーボード装置1の上面にはこうしたキートップ10が多数配列されている。それぞれのキートップ10は、図4に示すように、リンク機構15を介して昇降可能に保持板20に保持されている。
【0023】
リンク機構15は、2つのアーム部材16,17から構成されるパンタグラフリンク機構である。この第1のアーム部材16と第2のアーム部材17とは、側面視においてX字状に交差している。
【0024】
第1のアーム部材16の上端は、キートップ10の下面にスライド可能に連結されており、第1のアーム部材16の下端は、保持板20に回動可能に連結されている。一方、第2のアーム部材17の上端は、キートップ10の下面に回動可能に連結されており、第2のアーム部材17の下端は、保持板20にスライド可能に連結されている。
【0025】
キートップ10が押し下げられると、第1のアーム部材16が、その下端を中心として回動して、その上端がキートップ10の下面をスライドする。これと同時に、第2のアーム部材17が、その上端を中心として回動して、その下端が保持板20上をスライドする。
【0026】
このようなリンク機構15がキートップ10と保持板20との間に介在していることで、キートップ15が同じ位置(メンブレン基板50の接点511,521に対向する位置)を維持しながら昇降可能となっていると共に、キーボード装置1からのキートップ10の脱落が防止されている。
【0027】
なお、本発明におけるリンク機構には、上述のパンタグラフ式のリンク機構15に限定されない。例えば、2つのアーム部材の端部にそれぞれ形成されたギアを相互に咬合させて当該アーム部材を逆V字状に組み合わせたギアリンク機構も含まれる。
【0028】
保持板20には、一つのキートップ10に対して一対の突起21,22が設けられている。第1の突起21は、リンク機構15の第1のアーム部材16の下端を回転可能に保持している。一方、第2の突起22には、第1の突起21に向かって開口し、保持板20の平面方向に沿った深さを有する溝221が形成されており、この溝221内に第2のアーム部材17の下端がスライド可能に挿入されている。
【0029】
また、保持板20において、第1の突起21と第2の突起22との間には、開口23が形成されている。この開口23からは、ラバードームシート30のラバードーム35がキートップ10に向かって突出している。
【0030】
この保持板20はラバードームシート30の上に積層されている。ラバードームシート30は、シート本体31とラバードーム35とを有している。シート本体31は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)から構成されている。一方、ラバードーム35は、例えば、透明なシリコーン系樹脂から構成されている。このラバードーム35は、透明な接着剤を介して脚部37でシート本体31に接合されている。
【0031】
また、ラバードーム35は、下方に向かって突出する凸部36を有している。一方、シート本体31においてラバードーム35の凸部36に対向する位置に開口32が形成されており、キートップ10の押圧時における接点511,521のオン荷重(接点511,521が接触して電気的にオンとなる荷重)に影響を与えないようにされている。
【0032】
キートップ10が押し下げされると、ラバードーム35が押圧されて脚部37が座屈変形することで、ラバードーム35の凸部36が、導光板40を介して、メンブレン基板50の接点511,521を押圧する。一方、キートップ10の押圧が解除されると、脚部37が弾性力によって初期形状を復元し、接点511,521が離隔すると共にキートップ10が押し上げられる。ラバードームシート30は、導光板40の上に積層されている。
【0033】
導光板40は、発光ダイオード54から入射される光をキートップ10へ導光する透明なフィルムである。この導光板40を構成する具体的な材料としては、例えば、シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂、熱可塑性ポリウレタンや架橋ポリウレタン等のウレタン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、エチレンビニルアセテート(EVA:Ethylene-vinyl acetate)、或いは、ポリエチレンテレフタレート(PET: Polyethylene terephthalate)を例示することができる。
【0034】
また、導光板40は、柔軟な材料から構成されていることが好ましい。具体的には1〜1000[MPa]のヤング率を有する材料が好ましく、特に1〜300[MPa]のヤング率を有する柔軟な材料がより好ましい。このようなヤング率を有する材料の具体例としては、例えばウレタン系樹脂(ヤング率:5〜300[MPa]程度)やシリコーン系樹脂(ヤング率:1〜5[MPa]程度)等を例示することができる。
【0035】
本実施形態のキーボード装置1では、ラバードーム35とメンブレン基板50との間に導光板40が介在しているため、導光板をポリカーボネート(ヤング率:2000〜3000[MPa]程度)やアクリル系樹脂(ヤング率:3000〜3500[MPa]程度)のような硬い材料で構成すると、接点511,521をオンさせることができない場合がある。これに対し、導光板40を上記の範囲のヤング率を有する柔軟な材料で構成することで、適切な荷重で接点511,521をオンさせることが可能となっている。なお、メンブレン基板50のスペーサ53に形成する開口531の内径やメンブレン基材厚の調整によって、接点511,521のオン荷重の適正化を図ってもよい。
【0036】
本実施形態の導光板40は、メンブレン基板50の上に積層されている。メンブレン基板50は、上部シート51と、下部シート52と、スペーサ53と、を有している。
【0037】
上部シート51は、例えば、白色のポリエチレンテレフタレートや白色のポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)などの可撓性を有する白色の樹脂製フィルムから構成されている。白色PETや白色PENは、PETやPENに白色顔料を混合したり、PETやPEN自体を発泡させることで得ることができる。
【0038】
導光板40が直接積層される上部シート51を白色とすることで、上部シート51に反射板の機能を付与することができる。これにより、導光板40とメンブレン基板50との間に専用の反射板を積層する場合と比較して、キーボード装置1全体の薄型化を図ることができる。なお、上部シート51や筐体60の内側面に白色のインクを塗布することで、上部シート51や筐体60に反射板の機能を付与してもよい。
【0039】
また、この上部シート51の下面には第1の接点511が形成されている。この第1の接点511は、例えば銀ペーストを上部シート51にスクリーン印刷することで形成されている。
【0040】
ところで、図4に示すように、メンブレン基板50を構成する上部シート51の一の主面の上には、導光板40が直接積層されている。上述したように、本実施形態のキーボード装置1においては、導光板40をウレタン系樹脂やシリコーン系樹脂などの材料から構成するため、導光板40のタック性により導光板40とこれに積層される上部シート51とが付着する傾向がある。導光板40が上部シート51に付着すると、その部分で光が散乱するため、意図しない箇所で光の拡散が生じて導光板40が発光してしまうという問題がある。このように、導光板40が上部シート51に付着し、その付着部分で光が散乱すると、光が減衰して光源から伝播される光の強度が弱まるため、キートップ10における照明の輝度は光源から遠くなる程低下し、キートップ10全体を見た時に照明の輝度に偏り(むら)が生じるという不都合が生じる。
【0041】
このため、本実施形態では、メンブレン基板50の上部シート51の導光板40と対向する主面の一部に粗面化領域Qを形成する。粗面化領域とは、上部シート51の主面の一部が粗面化された領域である。また、粗面化とは表面粗度を大きくする加工を施すことである。本実施形態の粗面化領域は、中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rmax),十点平均高さ(Rz)などの表面粗度が所定の値域となるように粗面化されている。これらの表面粗度が大きくなる(粗くなる)と、導光板40の表面に接する面積が小さくなるので、導光板40のタック性を抑制することができる。
【0042】
本実施形態における粗面化領域Qは、図4に示すように、ラバードーム35に対向する領域の少なくとも一部に形成されている。粗面化領域Qの形成領域は、ラバードーム35に対向する領域の少なくとも一部に限定されず、スペーサ53の開口531に対向する領域の少なくとも一部としてもよいし、キートップ10の外縁に対向する領域の少なくとも一部としてもよい。ラバードーム35に対向する領域は、キーボード装置1を操作時のスイッチング動作により導光板40が上部シート51に押しつけられる領域であり、付着が起こりやすい。しかし、本実施形態では、導光板40が上部シート51に付着しやすい位置に粗面化領域Qを形成するので、導光板40が上部シート51に付着することを効果的に防止することができる。
【0043】
粗面化領域Qの形成手法、すなわち上部シート51の主面を粗面化する手法は特に限定されず、レーザー加工やサンドブラスト加工により上部シート51の主面に微小な凹凸を形成する手法、透明又は白色インキを用いてドットパターンQ1を印刷する手法などを用いることができる。ドットパターンQ1とは、所定面積の単位形状が所定の密度で配列された印刷用のパターンである。白色インキとして、酸化チタン等の白色顔料を含有した樹脂インクを用いてドットパターンQ1を印刷すると、図4に示すように粗面化領域Qの上部シート51の主面は粗面化されるので、上部シート51と導光板40とが付着することを防止することができる。
【0044】
これにより、上部シート51と導光板40とが付着し、意図しない箇所が光ることを防止することができる。加えて、樹脂インクを印刷することにより形成された粗面化領域Qは、導光板40のタック性を抑制するとともに、光を散乱させることができるので、導光板40により導かれた光を粗面化領域Qにて散乱させ、導光板40の所定の位置(粗面化領域Qの形成位置)で発光させることができる。すなわち、本実施形態の粗面化領域Qは、導光板40の付着を防止する機能を備えるとともに、光拡散機能を備える。その結果、別途光拡散部を形成する必要がなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0045】
ドットパターンQ1の態様は特に限定されないが、光の散乱度合いを調節する観点から、光源からの距離に応じて密度(粗面化領域の面積に対するインク塗布面積の割合)を決定することができる。光源からの距離が遠いほど、キートップ10における照明の輝度が低下する傾向があるため、例えば、粗面化領域QのドットパターンQ1の密度を、光源から近い部分で低くするとともに、光源から遠い部分で高くすることができる。このように光の散乱度合いをドットパターンQ1の密度によって調節することにより、キートップ10における照明の輝度を均等に分布させることができる。
【0046】
また、図5に示すように、他の粗面化領域Qの形成手法として、白色インキを用いてマットパターンQ2を印刷する手法を用いることができる。マットパターンQ2とは、一様なインク層が形成された印刷用のパターンである。
【0047】
さらに、図6に示すように、導光板40に、この導光板40内の光を外部に拡散するための拡散部41を形成するとともに、上部シート51に粗面化領域Qを設けることもできる。この拡散部41は、白色のインクを導光板40の裏面にドットパターンQ1をスクリーン印刷することで形成されている。この拡散部41で光を拡散させ、導光板40を発光させることができる。なお、導光板40の表面をレーザー加工やサンドブラスト加工することによって拡散部41を形成してもよい。また、拡散部41は導光板40の上面に形成してもよい。
【0048】
図6では、拡散部41に対向する位置に粗面化領域Qを設けた例を示すが、導光板40に拡散部41が形成されている場合は、この拡散部41が粗面としての機能を有する場合があるので、粗面化領域Qを拡散部41に対向する領域を除いた領域に形成してもよい。
【0049】
回路基板50の説明に戻り、回路基板50の下部シート52は、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等から構成されている。この下部シート52の上面において第1の接点511に対向する位置には、第2の接点521が形成されている。この第2の接点521は、第1の接点511と同様に、例えば銀ペーストを下部シート52にスクリーン印刷することで形成されている。
【0050】
なお、この下部シート52は白色である必要はなく透明であってもよい。また、上部シート51に反射板の機能を付与する代わりに、上部シート51を透明にして、スペーサ53に反射板の機能を付与してもよいし、上部シート51とスペーサ53を透明にして、下部シート52に反射板の機能を付与してもよい。
【0051】
スペーサ53は、下部シート52と同様の材料から構成されている。このスペーサ53には、第1及び第2の接点511,521に対応する開口531が形成されている。なお、このスペーサ53も、下部シート52と同様に、白色である必要はなく透明であってもよい。
【0052】
図4〜6に示すように、本実施形態のキーボード装置1は、上部シート51と下部シート52とがスペーサ53を介して積層されており、第1の接点511と第2の接点521とが開口531を介して接近/離隔可能に対向している。
【0053】
キートップ10が押し下げされると、ラバードーム35の凸部36が導光板40を介してメンブレン基板50の上部シート51を押圧する。これにより、上部シート51が変形するので、第1の接点511が第2の接点521と接触して接点511,521がオン状態となる。一方、キートップ10の押圧が解除されると、上部シート51は弾性力によって初期形状に復元し、接点511,521がオフ状態となる。
【0054】
このメンブレン基板50には、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)54が実装されている(図1参照)。この発光ダイオード54は、側方照射型のLEDであり、図1に示すように、その照射面541が導光板40の入射面41に対向するようにメンブレン基板50に実装されている。
【0055】
この発光ダイオード54が発光すると、発光ダイオード54の照射面541から照射された光は、入射面41を介して導光板40内に進入し、当該導光板40内を反射しながら伝播される。
【0056】
そして、導光板40内の光が拡散部41で拡散して上方を照射する。導光板40から上方に向けて照射された光は、ラバードーム35を通過してキートップ10の下面に到達する。この光は、図2に示すキートップ10に形成された文字12の部分のみを透過し、その他の部分は透過しないため、キーボード装置1を上方から見ると、文字12の部分のみが光っている状態となる。このため、暗闇であってもキーを視認することができる。
【0057】
本実施形態では、図1に示すように、下側から、メンブレン基板50、導光板40、ラバードームシート30、及び、保持板20の順序で積層されている。そして、筐体60の折り返し部62に保持板20の周縁が係合することで、ラバードームシート30、導光板40、及びメンブレン基板50が、保持板20と筐体60との間に挟み込まれている。
【0058】
このように、本実施形態では、導光板40をメンブレン基板50よりキートップ10側に配置することで、導光板40から拡散した光を、メンブレン基板50、保持板20を介さずにキートップ10へと導くことができるので、キートップ10における照明の輝度を向上させることができる。
【0059】
ちなみに、従来のキーボード装置では、保持板がメンブレン基板の下に配置されるので、メンブレン基板には保持板に設けられた突起を貫通させるための貫通孔を設ける必要がある。さらに、導光板に貫通孔を形成すると貫通孔の端面で光が漏洩するため、導光板は保持板よりも下に積層されている。これに対し、本実施形態では、導光板40を保持板20とメンブレン基板50との間に配置するとともに、保持板20を導光板40よりも上に配置しているので、導光板40に保持板20の突起21,22を貫通させるための孔を形成する必要がなく、孔の端面で光が拡散して減衰することを防止するため、キートップ10における照明の輝度の低下を防止することができる。
【0060】
また、導光板40に直接積層されている上部シート51の主面に粗面化領域Qを形成したため、キーが押下され、導光板40が上部シート51に押しつけられても導光板40が上部シート51に付着することを防止できる。従って、意図しない箇所で光が拡散することを防止することができ、光源からの光の減衰を抑制できるため、上面からキーボード装置1を見たときに、各キートップ10のキー面11が均等な輝度で光るようにすることができる。
【0061】
本実施形態のキーボード装置1を製造するには、上部シート51に、第1の接点511を含む回路パターンを形成する工程と、上部シート51の一の主面の一部を粗面化し、粗面化領域Qを形成する工程と、上部シート51の他の主面に、スペーサ53を介して第1の接点511に接触可能な第2の接点521が形成された下部シート52を積層する工程と、粗面化領域Qが形成された上部シート51の一の主面に、光透過性を有するとともに、光源から光を導く導光板40を直接積層する工程と、第1の接点511及び第2の接点521に対向する位置でキートップ10を上部シート51に対して接近離隔が可能なように保持する保持板20と上部シート51との間であって、上部シート51よりもキートップ10側に導光板40が配置されるように、導光板40、上部シート51、スペーサ53及び下部シート52を保持板20に挟持させる工程と、を行う。なお、上部シート51に回路パターンを形成する工程と、上部シート51に粗面化領域Qを形成する工程と、スペーサ53を介して下部シート52を積層する工程とは前後して行うことができる。
【0062】
本実施形態の製造方法によれば、先に上部シート51の一の主面の一部を粗面化してから、導光板40が直接積層される。導光板40に用いられるウレタン系材料やシリコーン系材料などの導光性材料はタック性を有するため、ハンドリング性が悪い。このため、導光板の取り扱い条件を吟味しなければならない。通常は導光性材料に拡散部を形成するところを、本実施形態では上部シート51に拡散部を形成するため、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0063】
また、ウレタン系材料やシリコーン系材料などの導光板は、タック性を有するため、ドットパターンQ1を印刷することが困難であり、印刷条件を吟味しなければならない。また、ウレタン系材料やシリコーン系材料は熱、UVに弱く、インクの乾燥により劣化してしまうもの等があるため、使用できるインクが限定される。本実施形態の上部シート51に用いられるPETやPENはタック性を持たないので、ウレタン系材料やシリコーン系材料からなる導光板40に比べて印刷性が良好である。
【0064】
<<第2実施形態>>
図7は本発明の第2実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【0065】
本実施形態では、第1実施形態におけるラバードームシート30のシート本体31を備えておらず、ラバードーム35が導光板40に直接接合されている点で第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。以下に、第2実施形態におけるキーボード装置1Bについて第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
本実施形態では、図7に示すように、ラバードーム35は、透明な接着剤を介して脚部37で導光板40に直接接合されている。この接着剤は、導光板40の屈折率以上であり且つラバードーム35の屈折率以下の屈折率を有しており、具体的には、例えばシリコーン系樹脂やウレタン系樹脂から構成される接着剤を例示することができる。
【0067】
ここで、導光板40を構成するウレタン系樹脂は、1.4〜1.5程度の屈折率を有している。一方、ラバードーム35を構成するシリコーン系樹脂は、4.0〜4.5程度の屈折率を有しており、導光板40の屈折率よりもラバードーム35の屈折率の方が高くなっている。
【0068】
一般的に、屈折率の異なる部材が付着している場合には、光は屈折率が低い部材から屈折率の高い部材へと進む。また、屈折率の高い部材内の光は、屈折率の低い部材との付着面において全反射、屈折するため、当該高屈折率の部材内へと進んだ光が低屈折率の部材内に戻ることはない。そのため、本実施形態では、導光板40内を伝播してきた光は、ラバードーム35の脚部37が接合されている箇所を介して、ラバードーム35内へと積極的に進む。
【0069】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、導光板40をメンブレン基板50よりもキートップ10側に配置することで、導光板40から拡散した光を、メンブレン基板50、保持板20を介さずにキートップ10へと導くことができるので、キートップ10における照明の輝度を向上させることができる。また、第1実施形態と同様に、導光板40に直接積層されている上部シート51の主面に粗面化領域Qを形成したため、タック性の高い材料からなる導光板40が上部シート51に付着することを防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、導光板40を保持板20とメンブレン基板50との間に配置しているので、保持板20の突起21,22を貫通させるための孔を導光板40に形成する必要がなく、キートップ10における照明の輝度が低下することを防止できる。
【0071】
さらに、上述したように、本実施形態では、拡散部41による発光に加えて、屈折率の差を利用して導光板40からラバードーム35内に直接導光するので、キートップ10における照明の輝度を向上させることができる。また、本実施形態では、第1実施形態で説明したラバードームシート30のシート本体31が不要となるので、キーボード装置1B全体の薄型化を図ることができる。
【0072】
また、本実施形態ではラバードーム35を導光板40に接着剤によって直接接合し、この接着剤は、導光板40の屈折率以上であり且つラバードーム35の屈折率以下の屈折率を有しているので、導光板40からラバードーム35へ進む光の進行を妨害することもない。
【0073】
<<第3実施形態>>
図8は本発明の第3実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【0074】
本実施形態では、キートップ及び保持板の構造が異なる点で、第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下に、第3実施形態におけるキーボード装置1Cについて第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
本実施形態におけるキーボード装置1Cは、デスクトップ型パソコンに用いられるキーボードである。
【0076】
このキーボード装置1Cのキートップ10Cの下面からは、当接リブ13と係合リブ14が下方に向かって突出している。当接リブ13は、ラバードーム35に当接している。一方、係合リブ14は、保持板20Cの台座64に係合している。
【0077】
なお、特に図示しないが、第1実施形態と同様に、本実施形態のキートップ10Cのキー面11にも文字12が付されており、キー面11における文字12の部分が透明となっているのに対し、その他の部分が不透明となっている。
【0078】
保持板20Cには、第1及び第2の突起21,22に代えて、台座64が形成されている。この台座64の上部開口の周縁には、内側に向かって突出する突起641が形成されており、この突起641に係合リブ14の係合爪141が係合している。
【0079】
キートップ10が押し下げられると、ラバードーム35が変形し、凸部36が導光板40を介してメンブレン基板50の接点511,521を押圧する。一方、キートップ10Cの押圧が解除されると、ラバードーム35が初期形状に復元してキートップ10Cを押し上げる。この際、台座64と係合リブ14とが係合することで、キーボード装置1Cからのキートップ10の脱落が防止されている。
【0080】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、導光板40をメンブレン基板50よりもキートップ10C側に配置することで、導光板40から拡散した光を、メンブレン基板50、保持板20を介さずにキートップ10Cへと導くことができるので、キートップ10Cにおける照明の輝度を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、導光板40を保持板20Cとメンブレン基板50との間に配置しているので、導光板40に保持板20Cの突起64を貫通させるための貫通孔を形成する必要がなく、キートップ10における照明の輝度の低下を防止できる。また、第1実施形態と同様に、導光板40と対向する上部シート51の主面の少なくとも一部が粗面化された粗面化領域を、上部シート51(メンブレン基板50)に設けたので、タック性の高い材料からなる導光板40と上部シート51とが付着することを防止できる。
【0082】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0083】
例えば、第3実施形態におけるキーボード装置1Cにおいて、第2実施形態で説明したように、透明なシリコーン系樹脂からなる接着剤を用いて、ラバードームを導光板に直接接合してもよい。
【0084】
なお、本実施形態におけるメンブレン基板50が本発明における回路基板の一例に相当し、本実施形態における上部シート51が本発明における第1のシートの一例に相当し、本実施形態における下部シート52が本発明における第2のシートの一例に相当し、本実施形態におけるラバードーム35が本発明における付勢部材の一例に相当する。
【0085】
以下に、本発明をさらに具体化した試料により本発明の効果を確認した。
【0086】
<<実施例1>>
以下の試料1及び試料2は、上述した実施形態のキーボード装置における照明の輝度が維持される効果を確認するためのものである。
【0087】
<試料1>
第1実施形態のキーボード装置に対応するサンプルとして、試料1を作製した。
【0088】
この試料1のサンプルでは、サンドブラスト法を用いて最大高さRmaxが10μmとなるように、一の主面の全面を粗面化した、厚さ100μmの白色のPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)を用いた。このPETシートはメンブレン基板50の上部シート51に対応する。
【0089】
また、導光板として、厚さ200μmのウレタンシート(日本マタイ株式会社製M−FILM−NY02−A)を用いた。さらに、このウレタンシートの下面に、白色インク(十条ケミカル株式会社製4700M白)をスクリーン印刷することで拡散部を形成した。拡散部は、ウレタンシートの一辺から14.5mm離して形成した。この拡散部が形成されていないウレタンシートの一辺から14.5mmまでの領域を、押圧力の印加領域とする。
【0090】
導光板の側面に、光源となる、長さ2.8mm、幅1.0mm、高さ0.6mmの側面発光型LED(シチズン電子株式会社社製CL−432F)を配置した。
【0091】
上記PETシートの上にウレタンシートを積層し、試料1を作製した。
【0092】
<試料2>
比較サンプルとして、試料2を作製した。
【0093】
この試料2のサンプルでは、粗面化が全くされていない厚さ100μmの白色のPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)を用いた。
【0094】
また、導光板として、試料1と同じものを用いた。
【0095】
導光板の側面に、試料1と同じ側面発光型LEDを光源として配置した。
【0096】
上記PETシートの上にウレタンシートを積層し、試料2を作製した。
【0097】
この試料1のサンプルのLEDに、低圧電流発生電源(株式会社アドバンテスト製R6142)を用いて電流100mAを通電し、LEDを点灯させた状態でのウレタンシートの拡散部の輝度を測定した。測定条件は、露光:1/64 ND100% normal,スミア補正:なし,暗所の許容値:5.00,画素数:490×490とした。また、積分時間を16秒とし、その平均値を算出した。その算出結果を「印加処理前の輝度」として下掲の表1に示す。
【0098】
次に、試料1及び試料2の導光板の印加領域に押し子(球の半径=15mm)を用い、20Nの押圧力を10秒間印加した場合の輝度を上記条件の下で測定した。その算出結果を「印加処理後の輝度」として下掲の表1に示す。
【0099】
【表1】

<考察>
試料1は、試料2と比較して押圧力を印加する前と後で輝度に変化がなかったが、試料2は押圧力を印加する前に比べて、押圧力を印加した後では輝度が約40%低下した。
【0100】
このことから、導光板と接触する上部シートの主面を粗面化することにより、導光板と上部シートが付着することを防止できるので、輝度の低下を抑制できる。
【0101】
一般に、キーボード装置1は使用に伴い押圧力が繰り返し与えられるが、そのような使用環境下にあっても、本実施形態のキーボード装置1は、上部シートが粗面化されているので、導光板が上部シートに付着せず、キートップにおける照明の輝度の低下を防止し、輝度が維持されていることを理解することができる。
【符号の説明】
【0102】
1,1B,1C…キーボード装置
10,10C…キートップ
11…キー面
12…文字
15…リンク機構
20,20C…保持板
30ラバードームシート
31…シート本体
35…ラバードーム(付勢部材)
36…凸部
40…導光板
50…メンブレン基板(回路基板)
51…上部シート(第1のシート)
511…第1の接点
52…下部シート(第2のシート)
521…第2の接点
53…スペーサ
54…LED
60…筐体
Q…粗面化領域
Q1…ドットパターン
Q2…マットパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点を有する回路基板と、
前記接点に対向する位置でキートップを前記回路基板に対して接近離隔可能に保持する保持板と、
光透過性を有し、光源から前記キートップに光を導く導光板と、
光透過性を有すると共に、前記キートップを前記回路基板から離隔方向に付勢する付勢手段と、を備えたキーボード装置であって、
前記導光板は、前記保持板と前記回路基板との間であって前記回路基板よりも前記キートップ側に配置され、
前記回路基板は、前記導光板と対向する主面の少なくとも一部が粗面化された粗面化領域を有することを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキーボード装置であって、
前記粗面化領域は、前記付勢手段に対向する領域の少なくとも一部に形成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキーボード装置であって、
前記粗面化領域は、透明又は白色インキを用いて印刷されたドットパターンにより粗面化されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のキーボード装置であって、
前記粗面化領域は、白色インキを用いて印刷されたマットパターンにより粗面化されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のキーボード装置であって、
前記付勢部材は、前記導光板に直接接合されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項6】
請求項5に記載のキーボード装置であって、
前記付勢部材の屈折率は、前記導光板の屈折率よりも相対的に大きいことを特徴とするキーボード装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のキーボード装置であって、
前記保持板は、リンク機構を介して前記キートップを保持することを特徴とするキーボード装置。
【請求項8】
第1のシートに、第1の接点を含む回路パターンを形成する工程と、
前記第1のシートの一の主面の一部を粗面化する工程と、
前記第1のシートの他の主面に、スペーサを介して前記第1の接点に接触可能な第2の接点が形成された第2のシートを積層する工程と、
前記一部が粗面化された前記第1のシートの一の主面に、光透過性を有するとともに、光源から光を導く導光板を直接積層する工程と、
前記第1の接点及び第2の接点に対向する位置でキートップを前記第1のシートに対して接近離隔が可能なように保持する保持板と前記第1のシートとの間であって、前記第1のシートよりも前記キートップ側に前記導光板が配置されるように、前記導光板、前記第1のシート、前記スペーサ及び前記第2のシートを前記保持板に挟持させる工程と、を有するキーボード装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−60112(P2011−60112A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210680(P2009−210680)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】