説明

キー無線認証システム

【課題】既存の電子キーシステムの1拡張機能であり、電子キーシステムとの間の通信スループットを向上することができるキー無線認証システムを提供する。
【解決手段】車両1に、電子キーシステム3の1拡張機能として、携帯電話17を車両キーとして使用可能なキー無線認証システム18を搭載する。そして、電子キーシステム3の車両受信機12の間欠駆動を、システム制御ECU21の車両受信機モニタ部27でモニタし、キー無線認証システム18が照合ECU5にワイヤレス信号Swlを送信するときの送信タイミングを、車両受信機12の起動タイミングに設定する。このため、キー無線認証システム18が車外近距離無線認証成立下で照合ECU5とワイヤレス通信を行うとき、ワイヤレス信号Swlの送信タイミングが、車両受信機12の起動タイミングに一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の電子キーシステムのキー以外の端末を、同システムの1キーとして使用可能とするキー無線認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車両からの通信を契機として狭域無線通信(通信距離:数m)により電子キーとID照合を行うキー操作フリーシステムが搭載されている(特許文献1等参照)。キー操作フリーシステムでは、車両からリクエスト信号を電子キーに送信し、このリクエスト信号により起動して電子キーが返信してきたID信号でID照合を行う。そして、車外に位置する電子キーとID照合が成立すれば、ドアロック施解錠が許可/実行され、車内に位置する電子キーとID照合が成立すれば、車内のエンジンスイッチの単なる押し操作のみでのエンジン始動が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262915号公報
【特許文献2】特開2007−132085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は、常に所持する携帯電話を車両の電子キーとして使用したいニーズがある(特許文献2等参照)。この場合、例えば携帯電話をキーとして扱う独立したシステムを車両に別途搭載してしまうと、車両に多数のキーシステムを搭載する必要が生じるので、これは現実的でない。また、仮に既存の電子キーシステムに機能を拡張して、携帯電話をキーとして取り扱えるようにしても、既存の電子キーシステムと拡張機能とが無駄のない動作を実行しなければ、携帯電話を操作しても直ぐに車両が動作しない状況が生じてしまう。こうなると、ユーザに違和感やストレスを与えてしまう懸念があった。
【0005】
本発明の目的は、既存の電子キーシステムの1拡張機能であり、電子キーシステムとの間の通信スループットを向上することができるキー無線認証システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、キー機能を有する端末と無線によるID認証が可能であり、当該ID認証が成立する状況下のとき、車両に設けられた既存の電子キーシステムに準ずる識別信号を無線送信して、当該電子キーシステムにおけるID照合を実行可能なキー無線認証システムであって、前記電子キーシステムの車両受信機の動作を監視する監視手段と、前記監視手段の監視結果を基に、前記識別信号の送信タイミングを設定する設定手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
本発明の構成によれば、車両受信機の動作を監視手段によって監視し、キー無線認証システムが電子キーシステムと通信する際に送信する識別信号の送信タイミングを、監視手段の監視結果、つまり車両受信機の起動タイミングに合わせたタイミングとなる。よって、車両受信機の起動タイミングと識別信号との送信タイミングとが一致するので、車両受信機はワイヤレス信号を信号先頭から受信することが可能となる。従って、キー無線認証システムが既存の電子キーシステムと通信するときの通信スループットを向上することが可能となる。
【0008】
本発明では、前記電子キーシステムは、前記電子キーからの通信を契機に狭域無線によるID照合を行うワイヤレスキーシステムであり、前記設定手段は、前記ワイヤレスキーシステムに準ずる前記識別信号としてのワイヤレス信号の送信タイミングを設定することを要旨とする。この構成によれば、車両受信機が間欠駆動する場合、ワイヤレス信号をいずれかのフレームで車両受信機に受け取らせるために、ワイヤレス信号を複数フレームにて送信する。この場合、車両受信機がワイヤレス信号をフレーム途中で受信すると、受信で有効となるフレームは次フレームとなるため、次フレームを受信するまでに待つ時間が通信のロスとなる。しかし、本構成の場合は、車両受信機の起動に合わせてワイヤレス信号が送信されるので、ワイヤレス信号は車両受信機に先頭フレームから届くことになる。よって、ワイヤレス信号の受信待ちがなくなるので、その分だけ通信スループットを向上することが可能となる。
【0009】
本発明では、前記監視手段は、前記車両受信機の動作を逐次監視し、前記設定手段は、その時々の前記車両受信機の起動に合わせたタイミングで前記送信タイミングを設定することを要旨とする。この構成によれば、車両受信機の動作を逐次監視して、その監視結果に合わせたタイミングに識別信号の送信タイミングを設定する。よって、送信タイミングの設定精度の確保に効果が高くなる。
【0010】
本発明では、前記監視手段は、前記車両受信機の起動電圧を確認することにより、当該車両受信機の動作を監視することを要旨とする。この構成によれば、車両受信機の起動電圧を確認するという簡素な処理によって、車両受信機の動作をモニタすることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記端末とのID認証を、近距離無線によって実行することを要旨とする。この構成によれば、キー無線認証システムと近距離無線通信可能な端末を、車両キーとして使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、既存の電子キーシステムの1拡張機能であるキー無線認証システムにおいて、電子キーシステムとの間の通信スループットを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態におけるキー無線認証システムの構成図。
【図2】(a),(b)は通信に時間ロスが発生する状態を示すタイムチャート。
【図3】通信シーケンスの具体例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化したキー無線認証システムの一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キー2と無線によりID照合を行う電子キーシステム3が搭載されている。電子キーシステム3には、車両1側からの通信を契機に狭域通信(通信距離:数m)によりID照合(スマート照合)を行うキー操作フリーシステム4がある。
【0015】
この場合、車両1には、電子キー2とのID照合を行う照合ECU5と、車載電装品の動作を管理するボディECU6と、エンジン8を制御するエンジンECU7とが設けられ、これらが車内バス9を通じて接続されている。照合ECU5のメモリ(図示略)には、電子キーシステム3で使用する電子キー2のIDコード(以降、キーIDと記す)が登録されている。電子キー2にはマスターキーやサブキーが存在するため、照合ECU5には複数のキーIDが登録可能である。照合ECU5には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車外送信機10と、車内にLF電波を送信可能な車内送信機11と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両受信機12とが接続されている。
【0016】
ボディECU6には、ドアロック施解錠の駆動源としてドアロックモータ13が接続されている。ボディECU6には、エンジン8を始動するときに操作するプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ14が接続されている。
【0017】
電子キー2が車外にあるとき、車外送信機10は、車外に数mの範囲でリクエスト信号Srqの車外通信エリアを断続的に形成して、車外スマート通信を実行する。電子キー2は、車外のリクエスト信号Srqを受信すると、このリクエスト信号Srqにより起動して、車外スマート照合を行うべく、スマート照合用のID信号(スマート信号Sst)を送信する。スマート照合には、例えばチャレンジレスポンス認証やキーID認証が含まれる。スマート信号Sstには、例えばチャレンジレスポンス認証に用いるレスポンスコードや、電子キー2に登録されたキーIDが含まれている。照合ECU5は、スマート信号Sstを車両受信機12で受信すると、自身に登録されたキーIDで車外スマート照合を行う。そして、車外スマート照合が成立すると、ボディECU6によるドアロック施解錠が許可/実行される。
【0018】
また、運転者が乗車したことが例えばカーテシスイッチ(図示略)により検出されると、車外送信機10に代えて今度は車内送信機11が車内にリクエスト信号Srqの車内通信エリアを形成し、車内スマート通信を開始する。このとき、電子キー2が車内のリクエスト信号Srqを受信すると、車内スマート照合が開始される。そして、車内スマート照合が成立すると、エンジンスイッチ14による電源遷移操作/エンジン始動操作が許可される。
【0019】
また、車両1には、電子キー2側からの通信を契機に狭域通信によりID照合(ワイヤレス照合)を行うワイヤレスキーシステム15が設けられている。この場合、電子キー2には、例えば車両ドアの施解錠を遠隔操作するときに操作する操作ボタン16が設けられている。
【0020】
操作ボタン16が操作されたとき、電子キー2は、ワイヤレス照合用のID信号(ワイヤレス信号Swl)を送信する。ワイヤレス信号Swlには、電子キー2に登録されたキーIDと、操作ボタン16に応じた機能コードとが含まれた信号であって、複数フレームにて送信される。照合ECU5は、ワイヤレス信号Swlを車両受信機12で受信すると、自身に登録されたキーIDでワイヤレス照合を行う。そして、ワイヤレス照合が成立すると、車両ドアの施解錠を実行させる。なお、ワイヤレス信号Swlが識別信号に相当する。
【0021】
車両1には、例えば電子キーシステム3の拡張機能の1つとして、電子キー2以外の端末(例えば携帯電話17など)を車両キーとして使用可能とするキー無線認証システム18が設けられている。キー無線認証システム18は、車両1に追加可能(後付け可能)な1キーシステムであって、例えば近距離無線(通信距離:10cm程度)によって携帯電話17とID認証(近距離無線認証)を実行する。近距離無線通信としては、例えばNFC(Near Field Communication)が使用され、周波数には、例えばLF帯やHF(High Frequency)帯が使用されている。なお、携帯電話17が端末に相当する。
【0022】
また、キー無線認証システム18は、携帯電話17との近距離無線認証が成立したとき、電子キーシステム3の通信網を用いて照合ECU5とID照合(スマート照合やワイヤレス照合)を実行する。つまり、キー無線認証システム18は、携帯電話17と照合ECU5とを、間接的にID認証させるシステムでもある。そして、携帯電話17で近距離無線認証が成立した状況下で、かつ照合ECU5とキー無線認証システム18とでもID照合が成立すれば、ドアロック施解錠やエンジン始動等が許可/実行される。
【0023】
この場合、携帯電話17のメモリには、キー無線認証システム18で使用するIDコード(以降、近距離無線認証IDと記す)が登録されている。近距離無線認証IDは、例えば携帯電話17をインターネット経由でサーバ(図示略)に接続して、サーバから取得してもよいし、又は携帯電話17に予め登録されていてもよい。いずれにせよ、携帯電話17を車両キーとして使用するときは、携帯電話17に予め近距離無線認証IDを登録しておく。
【0024】
キー無線認証システム18には、車外の携帯電話17と近距離無線認証(車外近距離無線認証)を行う車外リーダライタ19と、車内の携帯電話17と近距離無線認証(車内近距離無線認証)を行う車内リーダライタ20とが設けられている。車外リーダライタ19は、例えば車外ドアミラーやドアトリムに配置されている。車内リーダライタ20は、例えば車内のセンターコンソール等に配置されている。リーダライタ19,20は、近距離無線通信に準じた電波を送受する。
【0025】
キー無線認証システム18には、キー無線認証システム18を制御するシステム制御ECU21が設けられている。システム制御ECU21には、近距離無線認証の動作を管理する近距離無線認証回路22が設けられている。近距離無線認証回路22のメモリ(図示略)には、携帯電話17と同じ近距離無線認証IDが登録されている。この近距離無線認証IDは、予め近距離無線認証回路22に登録されていてもよいし、携帯電話17に登録されたIDを携帯電話17から取得して登録してもよい。
【0026】
また、システム制御ECU21には、キー無線認証システム18においてスマート照合やワイヤレス照合を実行するキーID照合通信回路23が設けられている。キーID照合通信回路23には、キーID照合通信回路23を制御する回路制御部24と、LF電波を受信可能な受信部25と、UHF電波を送信可能な送信部26とが設けられている。本例のキーID照合通信回路23は、少なくとも車内送信機11からの電波を受信可能な位置(例えば車内等)に配置されている。
【0027】
回路制御部24のメモリ(図示略)には、照合ECU5に登録されたものと同様のキーIDが登録されている。このキーIDは、照合ECU5とキー無線認証システム18とがスマート照合やワイヤレス照合を行う際に使用するIDであって、予めキーID照合通信回路23(回路制御部24)に登録されていてもよいし、改めて登録可能としてもよい。また、キーID照合通信回路23のキーIDは、電子キー2のキーIDとは別のIDでもよいし、同一でもよい。
【0028】
近距離無線認証回路22は、車外リーダライタ19において車外の携帯電話17と近距離無線認証(車外近距離無線認証)が成立することを確認すると、車外近距離無線認証成立通知SaをキーID照合通信回路23に出力する。キーID照合通信回路23は、近距離無線認証回路22から車外近距離無線認証成立通知Saを入力すると、照合ECU5とワイヤレス照合を開始する。照合ECU5は、このワイヤレス照合が成立することを確認すると、ドアロックの施解錠を実行させる。
【0029】
また、近距離無線認証回路22は、車内リーダライタ20において車内の携帯電話17と近距離無線認証(車内近距離無線認証)が成立することを確認すると、車内近距離無線認証成立通知SbをキーID照合通信回路23に出力する。キーID照合通信回路23は、近距離無線認証回路22から車内近距離無線認証成立通知Sbを入力すると、照合ECU5とスマート照合(車内スマート照合)を開始する。照合ECU5は、このスマート照合が成立することを確認すると、エンジンスイッチ14による電源遷移/エンジン始動の操作を許可する。
【0030】
本例のキー無線認証システム18には、キーID照合通信回路23がワイヤレス信号Swlを送信するときの送信タイミングを設定するワイヤレス信号送信タイミング設定機能が設けられている。ところで、図2(a)に示すように、車両受信機12は、車両1の電源を省電力化するために、間欠駆動で電子キー2からのワイヤレス信号Swlを待つ動作をとる。よって、ワイヤレス信号Swlは複数フレームにて送信され、いずれかのフレームの先頭で車両受信機12に受信される。
【0031】
しかし、図2(b)に示すように、車両受信機12がフレームの途中で受信を開始したときは、次フレームからが有効となるため、同図に示す時間Tsだけ、受信時間にロスが生じてしまう。つまり、時間Tsだけ受信タイミングが遅れる。このため、通信のスループットが悪化してしまうので、本例のワイヤレス信号送信タイミング設定機能は、この通信遅れを解消する技術となっている。
【0032】
この場合、システム制御ECU21には、車両受信機12の間欠駆動をモニタする車両受信機モニタ部27が設けられている。車両受信機モニタ部27は、例えばジカ線によって車両受信機12に接続されている。車両受信機12は、駆動時に車両受信機12に供給される起動電圧Vcを監視することによって車両受信機12の間欠駆動を監視し、車両受信機12の起動電圧Vcを確認すると電圧検出信号Sccを出力する。なお、車両受信機モニタ部27が監視手段に相当する。
【0033】
システム制御ECU21には、車両受信機モニタ部27の監視結果を基に、ワイヤレス信号Swlの送信タイミングを設定する送信タイミング設定部28が設けられている。送信タイミング設定部28は、車両受信機モニタ部27から電圧検出信号Sccを入力すると、そのタイミングをワイヤレス信号Swlの送信タイミングとして設定する。よって、送信タイミング設定部28は、車両受信機モニタ部27から電圧検出信号Sccを入力したとき、近距離無線認証回路22から車内近距離無線認証成立通知を入力していれば、電圧検出信号Sccの入力タイミングにて、キーID照合通信回路23からワイヤレス信号Swlを送信させる。なお、送信タイミング設定部28が設定手段に相当する。
【0034】
次に、本例のキー無線認証システム18の動作を、図3を用いて説明する。
車両受信機モニタ部27は、車両1が停車及び駐車にかかわらず、車両受信機12の起動電圧Vcを常時監視する。このとき、車両受信機モニタ部27は、起動電圧Vcを検出すると、その検出タイミングで電圧検出信号Sccを送信タイミング設定部28に逐次出力する。送信タイミング設定部28は、電圧検出信号Sccを入力すると、この信号入力タイミングを、ワイヤレス信号Swlの送信タイミングとして把握する。
【0035】
駐車中の車両1の車両ドアを解錠するには、携帯電話17を車外から車外リーダライタ19にかざす操作をとる。車外リーダライタ19からは、携帯電話17を起動させる駆動電波Svcが間欠送信されているため、携帯電話17は、この駆動電波Svcを受信すると、それまでの待機状態から起動状態に切り換わる。そして、起動した携帯電話17は、近距離無線認証用のID信号(近距離無線認証ID信号Skk)を送信する。近距離無線認証ID信号Skkには、携帯電話17に登録された近距離無線認証IDが含まれている。
【0036】
車外リーダライタ19は、携帯電話17から近距離無線認証ID信号Skkを受信すると、近距離無線認証ID信号Skkに含まれる近距離無線認証IDを近距離無線認証回路22に出力する。近距離無線認証回路22は、車外リーダライタ19から近距離無線認証IDを入力すると、このIDによって車外近距離無線認証を実行し、認証成立を確認すると、車外近距離無線認証成立通知SaをキーID照合通信回路23に出力する。
【0037】
キーID照合通信回路23は、近距離無線認証回路22から車外近距離無線認証成立通知Saを入力するとワイヤレス信号Swlの送信に移行するが、このとき送信タイミング設定部28にて設定されたタイミングでワイヤレス信号Swlを送信する。つまり、キーID照合通信回路23は、送信タイミング設定部28から電圧検出信号Sccを入力したタイミングでワイヤレス信号Swlの送信を開始する。照合ECU5は、キーID照合通信回路23からワイヤレス信号Swlを受信すると、ワイヤレス信号Swlの確認に入り、ワイヤレス信号Swlに応じた処理を実行する。
【0038】
このため、ワイヤレス信号Swlは、車両受信機12が間欠駆動するタイミングで送信されるので、車両受信機12によって先頭フレームから受信される。よって、ワイヤレス信号Swlは時間をロスすることなく車両受信機12に到達するので、キー無線認証システム18が照合ECU5とワイヤレス照合するときの通信時間が短く済む。従って、車両ドアを解錠するとき、車外近距離無線認証が成立すれば、直ぐに車両ドアが解錠される。
【0039】
乗車後、携帯電話17でエンジンを始動するには、携帯電話17を車内リーダライタ20にかざす操作をとる。そして、携帯電話17と車内リーダライタ20とで近距離無線通信が確立すると、近距離無線認証回路22は、このとき携帯電話17から受信した近距離無線認証IDによって車内近距離無線認証を実行し、認証成立を確認すると、車内近距離無線認証成立通知SbをキーID照合通信回路23に出力する。
【0040】
キーID照合通信回路23は、近距離無線認証回路22から車内近距離無線認証成立通知Sbを入力すると、スマート照合(車内スマート照合)に移行するが、このとき照合ECU5(車内送信機11)から送信されるリクエスト信号Srqの受信に待機する。そして、キーID照合通信回路23は、車内近距離無線認証成立下で、照合ECU5からリクエスト信号Srqを受信すると、スマート信号Sstを照合ECU5に送信する。
【0041】
照合ECU5は、キーID照合通信回路23からスマート信号Sstを受信すると、スマート信号Sstに含まれるスマート照合用のキーIDにてスマート照合を実行する。そして、照合ECU5は、両者のキーIDが成立することを確認してスマート照合が成立することを確認すると、エンジンスイッチ14による電源遷移操作/エンジン始動操作を許可する。よって、エンジンスイッチ14を操作すれば、エンジン8が始動させることが可能となる。
【0042】
以上により、本例の場合は、電子キーシステム3の拡張機能として設置可能なキー無線認証システム18において、車両受信機12の間欠駆動を車両受信機モニタ部27にてモニタする。そして、キー無線認証システム18で携帯電話17との車外近距離無線認証が成立したとき、車両受信機12の起動タイミングと、ワイヤレス信号Swlの送信タイミングとが合うように、車両受信機12の間欠動作に合わせてワイヤレス信号Swlをキー無線認証システム18から照合ECU5に送信する。
【0043】
このため、ワイヤレス信号Swlは、先頭フレームから車両受信機12に到達するので、車両受信機12は、ワイヤレス信号Swlを先頭のフレームから取得することが可能となる。よって、車両受信機12は、ワイヤレス信号Swlをフレーム途中で受信することがなくなるので、通信時間のロスを削減することが可能となる。従って、キー無線認証システム18が照合ECU5とワイヤレス通信するときの通信スループットを向上することが可能となる。
【0044】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車両受信機12の間欠駆動をモニタし、キー無線認証システム18が車外近距離無線認証成立下で照合ECU5とワイヤレス通信を行うとき、ワイヤレス信号Swlの送信タイミングを、車両受信機12の起動タイミングに合わせ、ワイヤレス信号Swlを送信させる。よって、車両受信機12の起動タイミングとワイヤレス信号Swlの送信タイミングとが一致するので、車両受信機12はワイヤレス信号Swlを先頭フレームから受信することができる。従って、キー無線認証システム18が既存の電子キーシステム3とワイヤレス通信するときの通信スループットを向上することができる。
【0045】
(2)車両受信機12は間欠駆動する動きをとるので、ワイヤレス信号Swlをいずれかのフレームで先頭から車両受信機12に捕獲させるべく、ワイヤレス信号Swlは複数フレームにて送信される前提がある。この状況下の場合、車両受信機12がワイヤレス信号Swlをフレーム途中で受信してしまったときは、有効となる次のフレームを受信できるまで、どうしても受信に時間ロスが発生するが、本例の技術を使用すれば、この問題を解消することができる。また、キーID照合通信回路23からワイヤレス信号Swlを複数フレームで送信するようにしたので、電子キー2のワイヤレス信号Swlの送信プログラム(送信制御処理)を、キーID照合通信回路23においてもそのまま流用することができる。
【0046】
(3)車両受信機12の間欠駆動を逐次監視して、ワイヤレス信号Swlの送信タイミングを、その時々の車両受信機12の起動タイミングに合ったタイミングに設定する。よって、ワイヤレス信号Swlの送信タイミングの設定精度の確保に効果が高くなる。
【0047】
(4)車両受信機12をシステム制御ECU21にジカ線で接続し、車両受信機12に供給される起動電圧Vcを監視することにより、車両受信機12の起動タイミングをモニタする。よって、車両受信機12の起動電圧Vcを確認するという簡素な処理によって、車両受信機12の間欠動作をモニタすることができる。
【0048】
(5)キー無線認証システム18は携帯電話17と近距離無線通信可能なシステムであるので、携帯電話17を無線の車両キーとして使用することができる。
(6)キー無線認証システム18は拡張機能の1つであるので、元々はキー無線認証システム18が搭載されていない車両1に、キー無線認証システム18を後付けすることができる。よって、キー無線認証システム18の搭載を要望するユーザに対応することができる。
【0049】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ワイヤレス信号Swlは、複数フレームから構成されることに限らず、1フレームのみで構築されてもよい。この場合、キーID照合通信回路23から送信されるワイヤレス信号Swlが1フレームのみで済むので、省電力化や通信処理簡素化等の効果を得ることができる。
【0050】
・キー無線認証システム18は、ワイヤレス通信機能とスマート通信機能との両方を有することに限定されず、例えばワイヤレス通信機能のみ有するものでもよい。この場合、車内近距離無線認証下でもキー無線認証システム18は照合ECU5とワイヤレス通信により照合を行う。
【0051】
・キー無線認証システム18は、車外近距離無線認証及び車内近距離無線認証の両方を実行できることに限らず、少なくとも一方を実行できればよい。
・キー無線認証システム18は、ドアロック施解錠及びエンジン始動を操作できるシステムに限定されず、他の車載機器を操作するシステムに応用してもよい。
【0052】
・車両受信機12の間欠駆動のモニタ方式は、システム制御ECU21をジカ線にて車両受信機12に繋ぎ、車両受信機12に供給される起動電圧Vcを監視する方式に限定されない。例えば、照合ECU5から直に通知を取得して把握する方式でもよい。
【0053】
・車両受信機12の起動の時間間隔を計測し、その計測時間から車両受信機12の起動タイミングを認識してもよい。要は、車両受信機12の起動タイミングが分かれば、その監視方式は特に限定されない。
【0054】
・ワイヤレスキーシステム15は、ドアロック施解錠を遠隔操作するシステムに限定されない。例えば、スライドドアやバックドア等の開閉を遠隔操作するものでもよいし、パニック機能用のシステムとしてもよい。
【0055】
・キー操作フリーシステム4は、乗降車機能及びエンジン始動機能を持つシステムに限定されず、他の機能に応用してもよい。
・電子キーシステム3やキー無線認証システム18で使用する電波の周波数は、適宜変更可能である。また、キー操作フリーシステム4は、双方向通信の往路と復路とで周波数が異なることに限定されず、周波数を同じとしてもよい。
【0056】
・キー無線認証システム18と携帯電話17との間の通信は、近距離無線通信に限らず、例えばブルートゥース通信としてもよい。
・端末は、携帯電話17に限定されず、例えばICカード等を使用してもよい。
【0057】
・識別信号は、ワイヤレス信号Swlに限定されず、使用するシステムに応じて、適宜変更可能である。また、識別信号は、IDを含む信号に限定されず、単なるトリガ信号でもよい。
【0058】
・電子キーシステム3は、キー操作フリーシステム4やワイヤレスキーシステム15に限定されず、他のシステムを適宜使用可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0059】
(イ)請求項1〜5のいずれかにおいて、前記電子キーシステムは、前記電子キーからの通信を契機に狭域無線によるID照合を行うワイヤレスキーシステム、又は車両からの通信を契機に狭域無線によりID照合を行うキー操作フリーシステムのいずれかである。この構成によれば、ワイヤレスキーシステムやキー操作フリーシステムを用いて車両を操作することが可能となる。
【0060】
(ロ)請求項1〜5、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、車外に位置する前記端末とID照合が成立したとき、ワイヤレス通信に準じた通信動作をとり、車内に位置する前記端末とID照合が成立したとき、スマート通信に準じた通信動作をとる。この構成によれば、端末の位置に応じた適切な通信を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1…車両、2…電子キー、3…電子キーシステム、4…キー操作フリーシステム、12…車両受信機、15…ワイヤレスキーシステム、17…端末としての携帯電話、18…キー無線認証システム、27…監視手段としての車両受信機モニタ部、28…設定手段としての送信タイミング設定部、Swl…識別信号としてのワイヤレス信号、Vc…起動電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー機能を有する端末と無線によるID認証が可能であり、当該ID認証が成立する状況下のとき、車両に設けられた既存の電子キーシステムに準ずる識別信号を無線送信して、当該電子キーシステムにおけるID照合を実行可能なキー無線認証システムであって、
前記電子キーシステムの車両受信機の動作を監視する監視手段と、
前記監視手段の監視結果を基に、前記識別信号の送信タイミングを設定する設定手段と
を備えたことを特徴とするキー無線認証システム。
【請求項2】
前記電子キーシステムは、前記電子キーからの通信を契機に狭域無線によるID照合を行うワイヤレスキーシステムであり、前記設定手段は、前記ワイヤレスキーシステムに準ずる前記識別信号としてのワイヤレス信号の送信タイミングを設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のキー無線認証システム。
【請求項3】
前記監視手段は、前記車両受信機の動作を逐次監視し、前記設定手段は、その時々の前記車両受信機の起動に合わせたタイミングで前記送信タイミングを設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のキー無線認証システム。
【請求項4】
前記監視手段は、前記車両受信機の起動電圧を確認することにより、当該車両受信機の動作を監視する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のキー無線認証システム。
【請求項5】
前記端末とのID認証を、近距離無線によって実行する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載のキー無線認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−229560(P2012−229560A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98559(P2011−98559)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】