説明

ギャバ含有食品素材およびその製造方法

【課題】人が容易にかつ効果的にギャバを摂食可能な食品素材が望まれていた。
【解決手段】発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類の乾燥粉末を含有しており、顆粒状または粒状(錠剤化)に加工されている食品素材とした。
【効果】ギャバを含む発芽玄米または野菜由来の、容易に摂食可能な食品素材とすることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ギャバ(γ−アミノ酪酸)を含む食品素材や料理素材およびそれら素材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、国民の健康志向の高まりと高齢化社会を迎え、脳細胞の活性化、記憶の改善効果、アルツハイマーや痴呆症状の予防と改善等に期待が寄せられているギャバが注目を集めている。
ギャバ(GABA)とは、「γ−アミノ酪酸」というアミノ酸の一種で、人間の脳の中に含まれている。人の脳内では、グルタミン酸が主に神経を興奮させ、一方で、アミノ酸であるギャバが興奮を抑え、神経を安定させる働きをすることで、バランスが取られている。
【0003】
現在考えられているギャバの功用としては、脳細胞の活性化と記憶の改善効果、アルツハイマーや痴呆症状の予防と改善、血圧調整や血圧を下げる効果、精神安定と抗ストレス対策、中性脂肪の抑制と糖尿の予防、内臓(腎臓、肝臓など)の機能改善、生活習慣病(高血圧や糖尿病)の改善、更年期障害や鬱の改善、睡眠障害の改善、肥満の防止、自律神経障害の改善、アルコール代謝促進、動脈硬化の抑制、消臭・口臭予防効果、癌予防、などを挙げることができ、今後の研究に期待が寄せられている。
【0004】
そして、ギャバを含む飲食品の製造方法(特許文献1参照)、ギャバきな粉の製造(特許文献2参照)などが提案されている。
ところで、ギャバは、身近な食材である発芽玄米に含まれていることから、発芽玄米を白米に混ぜて炊飯すると、多くのギャバが摂取できると考えられ、発芽玄米の人気が高まっている。ところが、発芽玄米を一定の割合(たとえば数%)で白米やもち米に混ぜて炊飯すると、炊飯した米には確かにギャバが多く含まれているものの、発芽玄米の性質から、炊飯米の粘りが保てず、食味の低下が避けられないという欠点がある。また、白い炊飯米の中に、茶色、灰色、黒色をした発芽玄米が混ざり、目視的、色合い的にも難があった。
【0005】
さらに、発芽玄米を混ぜた炊飯米を摂取する際、現代人の多くは、白米と同等の咀嚼により飲み込んでしまうため、発芽玄米に含まれている繊維質という難消化物の代謝が難しく、発芽玄米に含まれているギャバも効果的に摂取されていないということが判明してきた。
【特許文献1】特開2007−110953号公報
【特許文献2】特開2007−089581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の背景のもとになされたもので、食品や料理にギャバを含ませ、人が容易にかつ効果的にギャバを摂食可能にすることを課題とする。
この発明の主たる目的は、食品素材として簡便で容易に利用でき、かつ保存性のよいギャバ含有食品素材およびその製造方法を提供することを主たる目的とする。
この発明は、また、ギャバを含む発芽玄米由来の容易に摂食可能な食品素材およびその製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類の乾燥粉末を含有し、顆粒状または粒状に加工されていることを特徴とする食品素材である。
請求項2記載の発明は、前記食品素材は、発芽玄米粉末、パーム油、パーム硬化油および大豆タンパク質を含有することを特徴とする、請求項1記載の食品素材である。
請求項3記載の発明は、発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類の乾燥粉末、パーム油、パーム硬化油および大豆タンパク質を含む原料を加熱して混練する工程と、前記加熱混練した原料を押し出し成形して所定の大きさにカッティングする工程と、前記カッティングした原料を流動乾燥して顆粒化する工程と、を含むことを特徴とするギャバ含有食品素材の製造方法である。
【0008】
請求項4記載の発明は、発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類の乾燥粉末、パーム油、パーム硬化油および大豆タンパク質を含む原料を加熱して混練する工程と、加熱混練した原料を造粒成形する工程と、前記造粒成形された原料を乾燥する工程と、を含むことを特徴とするギャバ含有食品素材の製造方法である。
請求項5記載の発明は、前記原料を加熱して混練する工程の後、原料が熱いまま前記押し出し成形することを特徴とする、請求項3記載のギャバ含有食品素材の製造方法である。
【0009】
請求項6記載の発明は、前記造粒成形する工程は、加熱混練した原料が熱いままで行うことを特徴とする、請求項4記載のギャバ含有食品素材の製造方法である。
請求項7記載の発明は、前記乾燥粉末は、発芽玄米粉末を含むことを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載のギャバ含有食品素材の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
穀類であるイネ科イネ属(うるち米およびもち米等)、イネ科コムギ属(小麦)、イネ科トウモロコシ属、イネ科オオムギ属、イネ科カラスムギ属、イネ科ライムギ属、豆類全種、その他穀類全種(アワ、ヒエ、ソバ、ハトムギ、アマランサス等)、アブラナ科に属する野菜類等は、発芽時にギャバ(γ−アミノ酪酸)を産生する。そこで、発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類を丸ごと乾燥し、形状を粉体化(微粉末〜粉状)にしたものにさらに原料を加えて顆粒状または粒状(錠剤化)にすることにより、食品素材、料理素材として簡便で容易に利用できるギャバ含有食品素材を発明したものである。
【0011】
この発明に係る食品素材は、保存性が良く、料理に容易に活用できる。よって、定期的にかつ効率的にギャバを摂食することができるようになる。
この発明に係る食品素材は、幅広く料理素材として容易に利用できる。その際、たとえば白米やもち米に混ぜ込んで炊飯しても、炊飯米と色調的に同化もしくは近しい色合いとなり、違和感を与えず、目視的、色合い的に食味を損なうことはない。
【0012】
また、この発明の食品素材は、炊飯用、混ぜご飯、寿司米、お餅類、ふりかけ、加工食品全般、健康食品等に幅広く利用することができ、それによって人が定期的かつ効率的にギャバを摂食可能となる。
この発明は、発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類を丸ごと乾燥して粉末にした乾燥粉末を用いることにより、穀類や野菜類に含まれている難消化物である繊維質が粉砕されているから、ギャバ成分を含む原料も消化され易い性状になっている。また、この発明の食品素材は、顆粒状または粒状(錠剤化)に加工されており、いわゆる健康食品としてそのまま飲食でき、また、炊飯時には米と一緒に炊飯器に投入して炊飯することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下には、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
<顆粒状ギャバ含有食品素材の製造工程>
この発明の一実施形態に係る顆粒状の食品素材の製造工程は、以下の(1)〜(10)の工程を含んでいる。
(1)原料混合工程
食品素材の原料を混合する工程であり、約10分間の混合処理が行われる。
【0014】
食品素材の原料としては、発芽玄米粉末、パーム油、パーム硬化油、大豆タンパク質、ブドウ糖、コーンスターチ、食塩、酵母エキスを列挙することができる。
上記の粉末は、次のようにして作られる。発芽玄米を、たとえば遠赤外線乾燥機およびバッチ式の乾燥機を用いて2段乾燥を行う。この2段乾燥により、発芽玄米は丸ごと乾燥される。乾燥された発芽玄米を高速炉粉砕機を用いて粉砕し、120メッシュのふるいを通過するまで粉砕を行う。粉砕時には、乾燥した発芽玄米の芯温度が低温の範囲で粉砕されるよう、たとえば3600rpmの回転速度で粉砕を行う。
【0015】
発芽玄米粉末に代えて、他の穀類を発芽させ、それを丸ごと乾燥して、粉末状に粉砕したものを用いてもよい。また、アブラナ科に属する野菜類を丸ごと乾燥し、粉末状にしたものを用いてもよい。
原料のうち、パーム油は、後述する加熱混練時に原料が加熱釜に付着して焦げつかないようにするために加えられる。
【0016】
パーム硬化油は、加熱・混練した原料が高温下でその形状を維持できるように加えられる。
大豆タンパク質は、(加熱・混練された原料が)形状を形成するために必要なものである。
食塩および酵母エキスは、共に、製造された食品素材の味覚向上のために加えられる。(2)加熱・混練工程
混合した原料を釜の中に入れて、加熱・混練する工程である。この工程では、原料は約120℃に加熱され、15分間程度混練される。
【0017】
なお、混練時に、原料にパーム油が含まれているため、原料が釜に付着するのを防止できる。
(3)押し出し成形工程
加熱・混練された原料を、細長い棒状に押し出す工程であり、原料は、いわばところてん状に押し出される。
【0018】
押し出される細い棒状の原料にはパーム硬化油が含まれているため、原料は細い棒状形態を維持でき、次のカッティング工程においてカッティングすることができる。
(4)カッティング工程
細い棒状の原料を短い長さに切断する工程である。カッティング工程では、16メッシュの網状のカッティング材が用いられ、細長い棒状の材料が切断される。
(5)流動乾燥工程
短くカッティングされた原料に熱風を供給して、原料を流動させながら(揺らしながら)乾燥させる工程である。
【0019】
熱風の温度は約110℃であり、熱風供給時間は20〜30分程度である。
この流動乾燥工程を経ることにより、原料は顆粒状となる。
(6)ふるい分け工程
顆粒化された食品素材をふるいにかけて粒度を揃える工程である。
ふるい分け工程では、6〜20メッシュ程度のふるいが使用され、食品素材の用途に応じてメッシュの大きさが選択される。
(7)除鉄工程
原料中に誤って金属粉が含まれることのないようにするための工程である。
【0020】
この除鉄工程および次に行われる金属探知工程は、食品衛生法で定められている食品製造工程において守らなければならない異物混入防止(金属等の健康に危害を与えるおそれのある異物混入の禁止)のために行われる工程である。
この工程では、たとえば300ガウスの磁石を7本用いて、顆粒化された素材から金属粉を除去する。
(8)金属探知工程
金属除去が確実に行われたことを確認するための工程である。この工程では、たとえば鉄(Fe)は0.6mmφ以上の大きさのもの、ステンレス鋼(SUS)は1.2mmφ以上のものが確実に探知される。
(9)目視選別工程
この工程では、製造された顆粒化食品素材が製造者の目で選別され、異常があれば(たとえば色が適切でないものが含まれているような場合など)には、人の手で除去される。(10)包装工程
製造された食品素材が、所定の包装容器で包装される。
【0021】
以上により、この発明の一実施形態にかかる顆粒状食品素材を得ることができる。
次に、ギャバ含有食品素材を錠剤化して提供する場合の製造工程について説明をする。<錠剤状ギャバ含有食品素材の製造工程>
(1)原料混合工程
(2)加熱・混練工程
上記(1)(2)の工程は、顆粒状食品素材の製造方法と共通であり、詳しい説明は略省する。
(3)造粒成形工程(打錠工程)
加熱・混練された原料を、たとえばターンテーブルに設けられた臼(1粒の錠剤の容積を有する小空間)に充填し、下杵と上杵とによってたとえば1トン/cm2 程度の力で打錠する工程である。原料にパーム硬化油が含まれていると、加熱・混練された原料の温度が下がるのを待つことなく、原料が熱いままで打錠成形することができる。
(4)流動乾燥工程
(5)ふるい分け工程
上記(4)(5)の工程は、顆粒状食品素材の製造方法とほぼ同じである。
(6)コーティング工程
打錠成形され、乾燥された錠剤化食品素材の形状を保護するために、その表面にコーティングを施す工程である。コーティングの目的は、流通過程で錠剤が崩れたり、破損したりするのを防ぐためである。
【0022】
コーティングに使用する原料としては、たとえば、食品添加物であるシェラック等の光沢剤を用いることができる。
(7)除鉄工程
(8)金属探知工程
(9)目視選別工程
(10)包装工程
これら(7)〜(10)の工程は、顆粒状食品素材の製造工程と同様の内容である。
【0023】
以上により、この発明の一実施形態にかかる粒状食品素材を得ることができる。
【実施例】
【0024】
発芽玄米を用いて食品素材を試作した。
試作品として、
実施例1:発芽玄米20%配合
実施例2:発芽玄米40%配合
実施例3:発芽玄米60%配合
実施例4:発芽玄米80%配合
を作った。
【0025】
発芽玄米としては、「あゆのひかり」(種苗名)の発芽玄米を用いた。
製造された食品素材に含まれる原材料名と配合割合は、下記の表の通りである。

【0026】
試作した実施例1〜実施例4の写真を、図1、図2、図3および図4に示す。
試食したところ、実施例1(発芽玄米20%配合)は、やや硬い食感であり、実施例2〜4は、軟らかい食感であった。
この食感の違いは、ブドウ糖およびコーンスターチの含有量を、実施例1においてのみ多くしたことに起因している。
【0027】
製造において、原料混練時の加水量および油脂(パーム油)含有量を調整することにより、製造された食品素材(乾燥品)のガリガリとした食感を抑えることができ、ソフトな食感に調整することができる。
なお、加水量は、原料に対して50〜60%程度を加えるのがよく、原料や機械の条件により調整される。
【0028】
この実施例では、原料に含める油脂として、パーム油を使用した。その理由は、パーム油は酸化による劣化スピードの遅い食用油脂であり、使用に適していると判断したからである。なお、菜種油、大豆油は、劣化臭が強く出るため、保存性を考えると、この食品素材の製造には適さないと判断した。
試作した顆粒状食品素材は、炊飯用、混ぜご飯用、寿司米用、お餅類用、ふりかけ用、加工食品全般の添加食品用、健康食品等に利用することができる。
【0029】
図5および図6に、錠剤化した試作品の写真を示す。
図5に示す錠剤(色が濃い方)は、発芽玄米を80%配合したものであり、図6に示す錠剤(色が薄い方)は、発芽玄米を45%配合したもののである。
このように、錠剤化した食品素材も製造できることを、試作により確認した。なお、錠剤化する場合、色の濃い方の錠剤は、発芽玄米の配合率を90%まで上げることができ、色の薄い方の錠剤は、発芽玄米の配合率を60%まで上げることができる。
【0030】
この発明は、以上説明した実施形態や実施例に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】発芽玄米20%配合した発芽玄米顆粒の写真である。
【図2】発芽玄米40%配合した発芽玄米顆粒(食品素材)の写真である。
【図3】発芽玄米60%配合した発芽玄米顆粒(食品素材)の写真である。
【図4】発芽玄米80%配合した発芽玄米顆粒(食品素材)の写真である。
【図5】発芽玄米80%配合した錠剤(食品素材)の写真である。
【図6】発芽玄米45%配合した錠剤(食品素材)の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類の乾燥粉末を含有し、顆粒状または粒状に加工されていることを特徴とする食品素材。
【請求項2】
前記食品素材は、発芽玄米粉末、パーム油、パーム硬化油および大豆タンパク質を含有することを特徴とする、請求項1記載の食品素材。
【請求項3】
発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類の乾燥粉末、パーム油、パーム硬化油および大豆タンパク質を含む原料を加熱して混練する工程と、
前記加熱混練した原料を押し出し成形して所定の大きさにカッティングする工程と、
前記カッティングした原料を流動乾燥して顆粒化する工程と、
を含むことを特徴とするギャバ含有食品素材の製造方法。
【請求項4】
発芽した穀類またはアブラナ科に属する野菜類の乾燥粉末、パーム油、パーム硬化油および大豆タンパク質を含む原料を加熱して混練する工程と、
加熱混練した原料を造粒成形する工程と、
前記造粒成形された原料を乾燥する工程と、
を含むことを特徴とするギャバ含有食品素材の製造方法。
【請求項5】
前記原料を加熱して混練する工程の後、原料が熱いまま前記押し出し成形することを特徴とする、請求項3記載のギャバ含有食品素材の製造方法。
【請求項6】
前記造粒成形する工程は、加熱混練した原料が熱いままで行うことを特徴とする、請求項4記載のギャバ含有食品素材の製造方法。
【請求項7】
前記乾燥粉末は、発芽玄米粉末を含むことを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載のギャバ含有食品素材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−295380(P2008−295380A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145731(P2007−145731)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(596007197)株式会社いかりスーパーマーケット (1)
【出願人】(506300165)有限会社応用栄養学食品研究所 (1)
【Fターム(参考)】