説明

クマリン型酸二無水物、その製造法及びポリイミド

【課題】有機溶媒に対する溶解性に優れ、又液晶配向膜として光配向処理法での液晶配向性の発現が期待されるポリイミド、そのモノマーである酸二無水物化合物及びその製造法を提供すること。
【解決手段】下記式[1]で表される酸二無水物化合物、その製造方法及びそれを使って得られるポリアミック酸及びポリイミド。
【化1】


(式中、R1及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素
数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基及び炭素数2〜20のシアノアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クマリン型酸二無水物、その製造法およびポリイミドに関し、さらに詳述すると、例えば、電子材料用として好適なポリイミドおよびその原料モノマーであるクマリン型酸二無水物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド樹脂はその特長である高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性のために、液晶表示素子や半導体における保護材料、絶縁材料、カラーフィルターなどの電子材料として広く用いられている。また、最近では光導波路用材料等の光通信用材料としての用途も期待されている。
【0003】
近年、この分野の発展は目覚ましく、それに対応して、用いられる材料に対しても益々高度な特性が要求される様になっている。即ち、単に耐熱性、耐溶剤性に優れるだけでなく、用途に応じた性能を多数合わせ有することが期待されている。
しかしながら、ポリイミド、特に全芳香族ポリイミド樹脂の代表例として多用されているピロメリット酸無水物(PMDA)と4,4’−ジオキシアニリン(ODA)から製造されるポリイミド(カプトン:商品名)においては、溶解性が乏しく溶液として用いることは出来ないため、ポリアミック酸と呼ばれる前駆体を経て、加熱し脱水反応を行うことで得ている。
また溶媒溶解性を有するポリイミド(以下可溶性ポリイミド)においては、従来多用されて来た溶解度の高いN−メチル−2−ピロリドン(NMP)やγ―ブチロラクトン等のアミド系やラクトン系有機溶媒は高沸点のため、溶媒を除去するためには高温焼成が避けられなかった。
液晶表示素子分野では、近年プラスチック基板を用いたフレキシブル液晶表示素子の研究開発が行われており、高温焼成になると素子構成成分の変質が問題になってくるため、近年低温焼成が望まれるようになった。
一方で、高い溶媒溶解性を示すポリアミック酸では十分な液晶表示特性が得られず、イミド化に起因した体積変化も起こりやすいという問題点もあり沸点の低い有機溶媒類に対して可溶であるポリイミドが望まれるようになってきた。又、近年、液晶表示素子分野に於いて、配向処理法として従来のラビング法での傷の発生や塵の付着などの欠点を生じない光配向処理法が注目されている。
その中でクマリン系高分子膜による液晶プレチルト角制御が報告されている。(例えば非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】機能材料,Vol.17,No.11,13〜22(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、有機溶媒類に対する溶解性に優れ、又液晶配向膜分野においては、液晶に光配向性能を付与するクマリン型酸二無水物、その製造法およびポリイミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、分子内に高い有機溶媒溶解性発現のための極性基としてのラクトン基を有し、かつ光配向制御能を有するクマ
リン化合物とトリメリット酸無水物ハライド化合物から得られるエステル型酸二無水化合物の製造方法を確立し、そのポリイミドへの誘導を図り本発明を完成させた。得られた酸二無水物及びそのポリイミドは新規化合物であり、有機溶媒に対する溶解性に優れ、又液晶配向膜として光配向処理法での液晶配向性の発現が期待される。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.下記式[1]で表される化合物、
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素
数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基及び炭素数2〜20のシアノアルキル基を表す。)
2.R1及びRが、水素原子である1記載の化合物、
3.下記式[2]
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R1及びRは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるジヒドロクマリン化合物と下記式[3]
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)
で表される無水トリメリット酸ハライドとを、塩基の存在下で反応させることを特徴とする下記式[1]
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R1及びRは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造法、
4.ジヒドロクマリン化合物が、6,7−ジヒドロ−4−メチルクマリンであり、無水ト
リメリット酸ハライドが無水トリメリット酸クロライドである3記載の製造法、
5.式[4]で表される繰り返し単位を含有するポリアミック酸、
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、R1及びRは、前記と同じ意味を表し、Aはジアミン由来の2価の有機基を表
し、nは、2以上の整数を表す。)
6.前記R1及びRが、水素原子である5記載のポリアミック酸、
7.式[5]で表される繰り返し単位を含有するポリイミド、
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、R1、R、A及びnは、前記と同じ意味を表す。)
8.前記R1及びRが、水素原子である7記載のポリイミドを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の新規な酸二無水物によれば、有機溶媒に対する溶解性に優れた新規なポリアミック酸及びポリイミドが得られる。実用場面としては、半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、更に光導波路等の光通信用材料として好適に用いることが期待される。また、本発明の新規な酸二無水物中には、光反応性を有するクマリン基が含有されているため、これを用いて得られる新規なポリアミック酸及びポリイミドを液晶配向剤に用いると、光配向処理法において液晶配向性の発現が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0022】
上記式[1]で表される無水トリメリット酸エステル化合物(以下、BTCCと略記する)の製造法は、下記の反応スキームで表される。
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、R、R及びXは、上記と同じ意味を表す。)
即ちクマリン化合物(DHCC)と2モル倍の無水トリメリット酸ハライド(TAH)を、塩基の存在下で縮合させることにより、目的のBTCCが製造される。
原料の一つであるDHCCは、各置換位置のジヒドロ化合物が可能であり、その代表化合物としては、6,7−ジヒドロ化合物や5,8−ジヒドロ化合物等が挙げられる。
ここで、R1及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素
数1〜10のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基及び炭素数2〜20のシアノアルキル基を表す。
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、c−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、c−ブチル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、c−ペンチル、2−メチル−c−ブチル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、c−ヘキシル、1−メチル−c−ペンチル、1−エチル−c−ブチル、1,2−ジメチル−c−ブチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル及びn−エイコシル基等が一例として挙げられる。
なお、nはノルマルを、iはイソを、sはセカンダリーを、tはターシャリーを、cはシクロをそれぞれ表す。
炭素数1〜20のハロアルキル基としては、CF3−、CF3CH2−、CF3CF2−、CF3(CH2)2−、CF3(CF2)2−、CF3CF2CH2−、CF3(CF2)3−、CF3CF2(CH2)2−、CF3(CF2)4−、CF3(CF2)2(CH2)2−、CF3(CF2)5−、CF3(CF2)3(CH2)2−、CF3(CF2)6−、CF3(CF2)4(CH2)2−、CF3(CF2)7−、CF3(CF2)5(CH2)2−、CF3(CF2)8−、CF3(CF2)6(CH2)2−、CF3(CF2)9−、CF3(CF2)7(CH2)2−、CF3(CF2)10−、CF3(CF2)8(CH2)2−、CF3(CF2)11−、CF3(CF2)12−、CF3(CF2)13−、CF3(CF2)14−、CF3(CF2)15−、CF3(CF2)16−、CF3(CF2)17−、CF3(CF2)18−及びCF3(CF2)19−基等が一例として挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、1−メチル−n−ブチルオキシ、2−メチル−n−ブチルオキシ、3−メチル−n−ブトキシ、1,1−ジメチル−n−プロポキシ、n−ヘキシルオキシ、1−メチル−n−ペンチルオキシ、2−メチル−n−ペンチルオキシ、1,1−ジメチル−n−ブトキシ、1−エチル−n−ブトキシ、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−ウンデシルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−トリデシルオキシ、n−テトラデシルオキシ、n−ペンタデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ、n−ヘプタデシルオキシ、n−オクタデシルオキシ、n−ノナデシルオキシ及びn−エイコシルオキシ基等が一例として挙げられる。
炭素数1〜20のハロアルコキシ基としては、CF3O−、CF3CH2O−、CF3CF2O−、CF3(CH2)2−、CF3(CF2)2O−、CF3CF2CH2O−、CF3(CF2)3O−、CF3CF2(CH2)2O−、CF3(CF2)4O−、CF3(CF2)2(CH2)2O−、CF3(CF2)5O−、CF3(CF2)3(CH2)2O−、CF3(CF2)6O−、CF3(CF2)4(CH2)2O−、CF3(CF2)7O−、CF3(CF2)5(CH2)2O−、CF3(CF2)8O−、CF3(CF2)6(CH2)2O−、CF3(CF2)9O−、CF3(CF2)7(CH2)2O−、CF3(CF2)10O−、CF3(CF2)8(CH2)2O−、CF3(CF2)11O−、CF3(CF2)12O−、CF3(CF2)13O−、CF3(CF2)14O−、CF3(CF2)15O−、CF3(CF2)16O−、CF3(CF2)17O−、CF3(CF2)18O−及びCF3(CF2)19O−基等が一例として挙げられる。
炭素数2〜20のシアノアルキル基としては、シアノメチル、シアノエチル、シアノプロピル、シアノブチル、シアノペンチル、シアノヘキシル、シアノヘプチル、シアノオクチル、シアノノニル、シアノデシル、シアノウンデシル、シアノドデシル、シアノトリデシル、シアノテトラデシル、シアノペンタデシル、シアノヘキサデシル、シアノヘプタデシル、シアノオクタデシル、シアノノナデシル及びシアノエイコシル等が一例として挙げられる。
これらの中で、代表例は、RとRが共に水素原子、及びRが水素原子でRが4−メチル基であるDHCCを挙げることができる。
【0025】
もう一方の原料は、無水トリメリット酸ハライド(TAH)であり、Xは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の各原子を表す。これらの中で市販の無水トリメリット酸クロライドがそのまま使用できる。
その使用量は、DHCCに対し、2.0〜3.0モル倍が好ましく、2.0〜2.5モル倍がより好ましい。
塩基としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びピリジン等の有機塩基または炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等を用いることができるが、特には、トリエチルアミンが好ましい。その使用量は、DHCCに対し、2.0〜3.0モル倍が好ましく、2.0〜2.5が好ましく、2.0〜2.3モル倍がより好ましい。
【0026】
反応溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)及び1,4−ジオキサン等が好ましい。それらの使用量は、DHCCに対し3〜50質量倍が好ましく、5〜30質量倍がより好ましい。
【0027】
反応温度は、−30〜150℃程度であるが、0〜120℃が好ましい。
【0028】
反応時間は、1〜50時間が好ましく、特には、2〜30時間が好ましい。
反応後は、ろ過後アセトニトリルで洗浄してから減圧乾燥して得られた固体を、水と酢酸エチルで加温洗浄し更に減圧乾燥することにより目的物が得られる。更に、これをDMFでの再結晶化によって精製することもできる。
本反応は、常圧または加圧下で行うことができ、また回分式でも連続式でもよい。
【0029】
以上説明した本発明のテトラカルボン酸二無水物であるBTCCは、ジアミンとの重縮合反応によりポリアミック酸とした後、熱または触媒を用いた脱水閉環反応により対応するポリイミドに導くことができる。
【0030】
本発明のテトラカルボン酸二無水物であるBTCCは、ジアミンの種類により有機溶媒溶解性が異なるポリイミドを与え、低沸点有機溶媒に対しても優れた溶解性を有するポリイミドを与える。
【0031】
ジアミンとしては、特に限定されるものではなく、従来ポリイミド合成に用いられている各種ジアミンを用いることができる。その具体例としては、p−フェニレンジアミン(以下、p−PDAと略記する)、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−メチレンジアニリン(以下、MDAと略記する)、4,4’−オキシジアニリン(以下、ODAと略記する)、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン(以下、PODAと略記する)、3,5−ジアミノ−1,6−ジメトキシベンゼン、3,5−ジアミノ−1,6−ジメトキシトルエン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等の芳香族ジアミン;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(以下、MBCAと略記する)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ビス(4−アミノシクロヘキシル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)エ
ーテル、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルフィド、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)スルフィド、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)プロパン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)ジメチルシラン等の脂環式ジアミン;テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及び3,3’−(ジメチルシランジイル)ビス(オキシ)ジプロパン−1−アミン(MSPA)等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらのジアミンは、単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0032】
なお、上記式[4]および[5]におけるAは、使用したジアミンに由来する2価の有機基である。
【0033】
本発明においては、使用されるテトラカルボン酸二無水物の全モル数のうち、少なくとも10mol%は式[1]のBTCCであることが好ましい。さらに、本発明の目的である高い液晶光配向性及び有機溶媒溶解性を達成するためには、テトラカルボン酸二無水物のうち、50mol%以上がBTCCであることが好ましく、70mol%以上がBTCCであることがより好ましく、90mol%以上がBTCCであることが最適である。
【0034】
なお、通常のポリイミドの合成に使用されるテトラカルボン酸化合物およびその誘導体を同時に用いることもできる。
【0035】
その具体例としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸等の脂環式テトラカルボン酸およびこれらの酸二無水物、並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0036】
また、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン等の芳香族テトラカルボン酸およびこれらの酸二無水物、並びにこれらのジカルボン酸ジ酸ハロゲン化物等も挙げられる。なお、これらのテトラカルボン酸化合物は、それぞれ単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい
本発明のポリアミック酸を得る方法は特に限定されるものではなく、テトラカルボン酸二無水物およびその誘導体とジアミンとを公知の手法によって反応、重合させればよい。
【0037】
ポリアミック酸を合成する際の全テトラカルボン酸二無水物化合物のモル数と全ジアミン化合物のモル数との比は、カルボン酸化合物/ジアミン化合物=0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1に近いほど生成する重合体の重合度は大きくなる。重合度が小さすぎるとポリイミドを製膜した際の強度が不十分となり、また重合度が大きすぎるとポリイミド塗膜を形成する際の作業性が悪くなる場合が
ある。
【0038】
したがって、本反応における生成物の重合度は、ポリアミック酸溶液の還元粘度換算で、0.05〜5.0dl/g(30℃のN−メチル−2−ピロリドン中、濃度0.5g/dl)が好ましい。
【0039】
ポリアミック酸合成に用いられる溶媒としては、例えば、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記する)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略記する)、N−メチルカプトラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、均一な溶液が得られる範囲内で上記溶媒に加えて使用してもよい。
【0040】
重縮合反応の温度は、−20〜150℃、好ましくは−5〜100℃の任意の温度を選択することができる。
【0041】
本発明のポリイミドは、以上のようにして合成したポリアミック酸を、加熱により脱水閉環(熱イミド化)して得ることができる。なお、この際、ポリアミック酸を溶媒中でイミドに転化させ、溶剤可溶性のポリイミドとして用いることも可能である。
【0042】
また、公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環する方法も採用することができる。
【0043】
加熱による方法は、100〜350℃、好ましくは120〜300℃の任意の温度で行うことができる。
【0044】
化学的に閉環する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミン等と、無水酢酸等との存在下で行うことができ、この際の温度は、−20〜200℃の任意の温度を選択することができる。
【0045】
このようにして得られたポリイミド溶液は、そのまま使用することもでき、また、メタノール、エタノール及び水等の貧溶媒を加えてポリイミドを沈殿させ、これを単離してポリイミド粉末として、あるいはそのポリイミド粉末を適当な溶媒に再溶解させて使用することができる。
【0046】
再溶解用溶媒は、得られたポリイミドを溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、m−クレゾール、2−ピロリドン、NMP、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、DMAc、DMF、γ−ブチロラクトン、1,4−ジオキサン及びTHF等が挙げられる。
【0047】
また、単独ではポリイミドを溶解しない溶媒であっても、溶解性を損なわない範囲であれば上記溶媒に加えて使用することができる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。
【0048】
本発明において、ポリイミド(ポリアミック酸)の数平均分子量は、フィルムにした場合の柔軟性などを考慮すると、少なくとも3000が好ましく、5000〜100000がより好ましい。
【0049】
以上のようにして調製したポリアミック酸(ポリイミド前駆体)溶液を基板に塗布し、加熱により溶媒を蒸発させながら脱水閉環させることで、あるいは、ポリイミド溶液を基板に塗布して加熱により溶媒を蒸発させることで、ポリイミド膜を製造することができる。
【0050】
この際、加熱温度は、通常100〜300℃程度である。
【0051】
なお、ポリイミド膜と基板との密着性を更に向上させる目的で、ポリアミック酸溶液やポリイミド溶液に、カップリング剤等の添加剤を加えてもよい。
【実施例】
【0052】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例における各物性の測定装置は以下のとおりである。
【0053】
[1] [質量分析(MASS)]
機種:AQ−Tod(JEOL) イオン化法:DART+ 測定範囲:m/z = 1
00〜1000
[2] [1H NMR]
機種:Varian社製NMR System 400NB(400MHz)
測定溶媒:CDCl3、DMSO−d6
標準物質:tetramethylsilane(TMS)
[3][IR]
機種:Nicolet 6700 FT-IR(Thermo)
測定法:ATR法(ダイヤモンド結晶) 分解能:4.0cm-1 (測定範囲:400~4000cm-1)
サンプルスキャン:50回 バックグラウンドスキャン:50回
[4] [融点(m.p.)][軟化点(PMT)]
機種:微量融点測定装置(MP−S3)(ヤナコ機器開発研究所社製))
[5]数平均分子量および重量平均分子量の測定:GPC(Gel Permeation Chromatography)法
ポリマーの重量平均分子量(以下Mwと略す)と分子量分布は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803LおよびKF805L)を用い、溶出溶媒としてDMFを流量1mL/分、カラム温度50℃の条件で測定した。なお、Mwはポリスチレン換算値とした。
実施例1 BTMCの合成
【0054】
【化8】

【0055】
100mLの四つ口反応フラスコに6,7−ジヒドロ−4−メチルクマリン(DHMC)
9.61g(50mmol)及びDMF96g(10質量倍)を仕込み、水浴上20℃に
冷却下にマグネティクスタラーで攪拌しながら無水トリメリット酸クロライド(TAC)22.1g(105mmol)を添加・溶解させた。 続いてトリエチルアミン12.2g(120mmol)を20分かけて滴下した。直ぐに沈殿が生成し始め、50℃で17時間攪拌し反応を停止させた。
続いて、ろ過後アセトニトリルで3回洗浄してから減圧乾燥すると白色固体30.2gが得られた。この粗物に酢酸エチル70gと水40gを加えて70℃で40分攪拌してから、氷冷・ろ過し、酢酸エチルと水で洗浄してから減圧乾燥すると白色固体15.4gが得られた。更に、この固体に酢酸エチル20mlと水100mlを加えて70℃で1時間攪拌してから、氷冷、ろ過し、酢酸エチルと水で洗浄してから80℃で2時間減圧乾燥すると淡黄色固体14.6gが得られた。更に120℃油浴で1時間30分減圧乾燥すると淡黄色固体14.4g(収率53.2%)(m.p.:270〜273℃)が得られた。
この結晶は、MASS及びH NMRから目的の4−メチル−2−オキソ−2H−クロメン−6
,7−ジイルビス(1,3−ジオキシ−1,3−ジハイドロイソベンゾフラン−5−カルボキシレ−ト(MCDC)であることを確認した。
MASS ( ESI+, m/z(%) ) : 541.07([M+H]+, 75), 175(100)
1H NMR ( DMSO-d6, δppm ) : 2.468-2.506 ( m, 3H ), 6.540 ( d, J=1.2 Hz, 1H ), 7.838 ( s, 1H ) , 8.140 ( s, 1H ), 8.207 ( t, J=7.2 Hz, 2H ), 8.478 ( s, 1H ), 8.528 ( t, J=8.0 Hz, 3H )
IR(cm-1):1775.7(酸無水物C=O)
[実施例2]MCDC−PODAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0056】
【化9】

【0057】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、4,4’−(1,3−フェニレンジオキシ)ジアニリン(PODA)0.838g(3.0mmol)およびNMP12gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、実施例1で得られたMCDC1.71g(3.0mmol)を溶解させながら分割添加した。更に、22℃で42時間攪拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この重合液の粘度は、460mPa・sであった。
【0058】
この溶液に、NMP29gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は12,073で、重量平均分子量(Mw)は36,148であり、Mw/Mnは2.99であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸3.1g(30mmol)およびピリジン1.4g(18mmol)を加えて100℃で5時間攪拌した。室温に戻してから、メタノール145ml中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して黄色固形物を析出させた。これを濾過後、メタノール50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、MCDC−PODAポリイミドの黄色粉末1.78g(収率78%)を得た。
PMT:190〜195℃
又、MCDC−PODAポリイミドの黄色粉末をDMFに溶解した溶液をろ紙に滴下し乾燥後、365nmの紫外線を照射したところ、青色に発光した。
[実施例3]MCDC−ODAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0059】
【化10】

【0060】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、4,4’−オキシジアニリン(ODA)0.600g(3.0mmol)およびNMP8.88gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、実施例1で得られたMCDC1.62g(3.0mmol)を溶解させながら分割添加した。更に、22℃で23時間攪拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この重合液の粘度は、173mPa・sであった。
【0061】
この溶液に、NMP26gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は7,432で、重量平均分子量(Mw)は18,278であり、Mw/Mnは2.46であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸3.1g(30mmol)およびピリジン1.4g(18mmol)を加えて100℃で5時間攪拌した。室温に戻してから、メタノール145ml攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して灰黄色固形物を析出させた。これを濾過後、メタノール50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、MCDC−ODAポリイミドの灰黄色粉末1.63g(収率77%)を得た。
PMT:150〜160℃
[実施例4]MCDC−MDAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0062】
【化11】

【0063】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)0.595g(3.0mmol)およびNMP6.63gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、実施例1で得られたMCDC1.62g(3.0mmol)を溶解させながら分割添加した。更に、22℃で24時間攪拌して重合反応を行い、固形分25質量%のポリアミック酸溶液を得た。この重合液の粘度は、584mPa・sであった。
【0064】
この溶液に、NMP30gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は6,605で、重量平均分子量(Mw)は16,139であり、Mw/Mnは2.44であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸3.1g(30mmol)およびピリジン1.4g(18mmol)を加えて100℃で4時間攪拌した。室温に戻
してから、水147ml攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して灰色固形物を析出させた。これを濾過後、水50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、MCDC−MDAポリイミドの灰色粉末1.92g(収率91%)を得た。
PMT:160〜170℃
[実施例5]MCDC−p−PDAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0065】
【化12】

【0066】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、p−フェニレンジアミン(p−PDA)0.324g(3.0mmol)およびNMP7.78gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、実施例1で得られたMCDC1.62g(3.0mmol)を溶解させながら分割添加した。更に、22℃で22時間攪拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この重合液の粘度は、98mPa・sであった。
【0067】
この溶液に、NMP23gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は4,743で、重量平均分子量(Mw)は10,307であり、Mw/Mnは2.17であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸3.1g(30mmol)およびピリジン1.4g(18mmol)を加えて100℃で4時間攪拌した。室温に戻してから、メタノール130ml攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して黄色固形物を析出させた。これを濾過後、メタノール50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で3時間減圧乾燥し、MCDC−p−PDAポリイミドの黄色粉末1.43g(収率78%)を得た。
PMT:>290℃
[実施例6]MCDC−p−PDAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0068】
【化13】

【0069】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、p−フェニレンジアミン(p−PDA)0.324g(3.0mmol)およびNMP7.78gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、実施例1で得られたMCDC1.62g(3.0mmol)を溶解させながら分割添加した。更に、22℃で23時間攪拌して重合反応を行い、固形分20質量%のポリアミック酸溶液を得た。この重合液の粘度は、88mPa・sであった。
【0070】
この溶液に、NMP23gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は3,941で、重量平均分子量(Mw)は6,935であり、Mw/Mnは1.76であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸3.1g(30mmol)およびピリジン1.4g(18mmol)を加えて100℃で4時間攪拌した。室温に戻してから、メタノール135ml攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して橙色固形物を析出させた。これを濾過後、メタノール50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で3時間減圧乾燥し、MCDC−p−PDAポリイミドの橙色粉末1.59g(収率87%)を得た。
PMT:>290℃
[実施例7]MCDC−MBCAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0071】
【化14】

【0072】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(MBCA)0.631g(3.0mmol)およびNMP6.75gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、実施例1で得られたMCDC1.62g(3.0mmol)を溶解させながら分割添加した。更に、22℃で23時間攪拌して重合反応を行い、固形分25質量%のポリアミック酸溶液を得た。この重合液の粘度は、247mPa・sであった。
【0073】
この溶液に、NMP29gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は3,224で、重量平均分子量(Mw)は5,088であり、Mw/Mnは1.58であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸3.1g(30mmol)およびピリジン1.4g(18mmol)を加えて100℃で4時間攪拌した。室温に戻してから、メタノール116ml攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して肌色固形物を析出させた。これを濾過後、メタノール50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、MCDC−MBCAポリイミドの肌色粉末0.95g(収率44%)を得た。
PMT:185〜190℃
[実施例8]MCDC−MSPDポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0074】
【化15】

【0075】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、3,3’−(ジメチ
ルシランジイル)ビス(オキシ)ジプロパン−1−アミン(MSPA)0.619g(3.0mmol)およびNMP6.7gを仕込み、溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中に、実施例1で得られたMCDC1.62g(3.0mmol)を溶解させながら分割添加した。更に、22℃で18時間攪拌して重合反応を行い、固形分25質量%のポリアミック酸溶液を得た。この重合液の粘度は、40mPa・sであった。
この溶液に、NMP34gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は1,557で、重量平均分子量(Mw)は2,130であり、Mw/Mnは1.37であった。
[比較例1]PMDA−ODAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0076】
【化16】

【0077】
25℃の室温に設置した攪拌機付き50ml四つ口反応フラスコに、ODA1.00g(5.0mmol)およびNMP18.8gを仕込み溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中、ピロメリット酸二無水物(PMDA)1.09g(5.0mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、20℃で42時間攪拌して重合反応を行い、固形分10質量%のポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液をGPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は57,881で、重量平均分子量(Mw)は147,339であり、Mw/Mnは2.55であった。
【0078】
続いてこのポリアミック酸溶液を3.5容量倍のメタノール70ml攪拌中に滴下し、さらに1時間攪拌したところ、ゲル状物が析出した。デカンテーションにより上澄み液を分離し、残余のゲル状物をメタノール100mlに添加して攪拌したところ、ガム状物が析出した。さらに、ろ過・乾燥・粉砕することによりPMDA−DDEポリアミック酸の黄色粉末2.0g(収率96%)を得た。
【0079】
続いて、この黄色粉末に、NMP31.3gを加えて6質量%溶液を調製し、この溶液に、無水酢酸9.75g(96mmol)およびピリジン4.50g(57mmol)を加えて45℃で30分攪拌したところ寒天状になり、さらに100℃で2時間攪拌したところゲル状になった。室温に戻してから、メタノール160ml攪拌中に反応液を滴下し、さらに1時間攪拌したところ黄色粉末が析出した。この黄色粉末を濾過後、メタノールで洗浄を繰り返してから、80℃で3時間減圧乾燥し、PMDA−ODAポリイミドの黄色粉末1.59g(収率83%)を得た。
PMT: >290℃
[比較例2]PMDA−ODAポリアミック酸およびポリイミドの合成
【0080】
【化17】

【0081】
22℃の室温に設置した攪拌機付き50mL四つ口反応フラスコに、ODA1.00g(5.0mmol)およびNMP18.2gを仕込み溶解させた。続いて、この溶液を攪拌中、ピロメリット酸二無水物(PMDA)1.03g(4.75mmol)を溶解させながら分割添加した。さらに、20℃で23時間攪拌して重合反応を行い、固形分10質量%のポリアミック酸溶液を得た。この溶液に、NMP14gを加えて固形分6質量%のポリアミック酸溶液に希釈して、GPC測定した結果、数平均分子量(Mn)は2,173で、重量平均分子量(Mw)は4,310であり、Mw/Mnは1.98であった。
続いて、この固形分6質量%のポリアミック酸溶液に無水酢酸5.1g(50mmol)およびピリジン2.37g(30mmol)を加えて100℃で4時間攪拌した。室温に戻してから、メタノール147ml攪拌中に反応溶液を滴下し、さらに1時間攪拌して橙色固形物を析出させた。これを濾過後、メタノール50mlで3回洗浄を繰り返してから、80℃で2時間減圧乾燥し、PMDA−ODAポリイミドの橙色粉末1.55g(収率86%)を得た。
PMT: >300℃
上記実施例2〜7で得られたBTMC−各ジアミンポリイミド、および比較例1及び2で得られたPMDA−ODAポリイミドの有機溶媒溶解性を下記手法によって評価した。結果を表1に示す。
(測定法)
各ポリイミド5mgを、有機溶媒100mgに添加し、所定温度で撹拌し、その溶解性を確認した。
(溶解性結果)
【0082】
【表1】

【0083】
BTMC−各ジアミンポリイミドは、既知のPMDA−ODAポリイミドに比較し高い溶解性を示した。中でもBTMC−MBCAポリイミドは、ジオキサンやTHF等の低沸点溶媒にも溶解した。













【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表される化合物。
【化1】


(式中、R1及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素
数1〜20のハロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基及び炭素数2〜20のシアノアルキル基を表す。)
【請求項2】
1及びRが、水素原子である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
下記式[2]
【化2】


(式中、R1及びRは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル
基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のハロアルコキシ基及びシアノアルキル基を表す。)
で表されるジヒドロクマリン化合物と下記式[3]
【化3】


(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)
で表される無水トリメリット酸ハライドとを、塩基の存在下で反応させることを特徴とする下記式[1]
【化4】


(式中、R1及びRは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるテトラカルボン酸二無水物化合物の製造法。
【請求項4】
ジヒドロクマリン化合物が、6,7−ジヒドロ−4−メチルクマリンであり、無水トリメリット酸ハライドが無水トリメリット酸クロライドである請求項3記載の製造法。
【請求項5】
式[4]で表される繰り返し単位を含有するポリアミック酸。
【化5】


(式中、R1、Rは前記と同じ意味を表し、Aはジアミン由来の2価の有機基を表し、
nは2以上の整数を表す。)
【請求項6】
前記R1及びRが、水素原子である請求項5記載のポリアミック酸。
【請求項7】
式[5]で表される繰り返し単位を含有するポリイミド。
【化6】


(式中、R1、R、A及びnは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項8】
前記R1及びRが、水素原子である請求項7記載のポリイミド。

【公開番号】特開2012−224579(P2012−224579A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93423(P2011−93423)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】