説明

クラッチ機構及びこれを備えた時計

【課題】比較的小さな押圧力で確実に動力を伝達し得且つ飛びを小さく抑えることが可能になるクラッチ機構及び該クラッチ機構を備えた時計の提供。
【解決手段】時計のクラッチ機構は、駆動側平面状表面部52を備えた駆動側クラッチ部材50であって該駆動側平面状表面部42に間隔をおいて形成された多数の駆動側係合突起部53を具備するもの50と、従動側平面状表面部42を備えた従動側クラッチ部材40であって該従動側平面状表面部42に間隔をおいて形成された多数の従動側係合突起部43を具備するもの40とを有し、駆動側係合突起部53及び従動側係合突起部43の夫々は、先端側ほど断面積が小さくなるように先細になっており、駆動側クラッチ部材50及び従動側クラッチ部材40は駆動側係合突起部53の少なくとも一部が従動側係合突起部43の少なくとも一部に対して係脱され得るように近接離間されるべく構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ機構及びこれを備えた時計に係る。
【背景技術】
【0002】
時計において、回転を伝達するクラッチ機構として、二平面間の摩擦力により回転を伝達するフラット(平面)タイプないし摩擦式のクラッチ機構と、概ね相補的形状の凹凸部の係合により回転を伝達する凹凸タイプないし相補的形状嵌合式のクラッチ機構とが知られている。
【0003】
フラット(平面)タイプないし摩擦式のクラッチ機構としては、例えば、クロノグラフ時計において、秒歯車ないし四番歯車の回転を秒クロノグラフ真に伝達すべく該真の延在方向に平行に二平面が近接され摩擦係合されて回転が伝達されるように構成されたいわゆる垂直クラッチが知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
この種の摩擦式の垂直クラッチでは、二つのクラッチ部品が近接せしめられて相互に押付けられるだけで回転が伝達されるという長所はあるけれども、凹凸タイプないし相補的形状嵌合式のクラッチ機構と比較した場合、種々の短所もある。
【0005】
すなわち、摩擦式の垂直クラッチでは、摩擦により動力を伝達するので、クラッチリングの如きクラッチ部品の径を多少なりとも大きくし接触面積を多少なりとも大きくすることが求められ、サイズが大きくなり占有面積が大きくなるのを避け難い。また、摩擦式の垂直クラッチでは、伝達される動力が摩擦力に依存するので二つのクラッチ部品を大きな力で押付けることが不可欠であり、多少なりとも力が小さいとスベリが生じて損失が大きくなるのを避け難い。更に、二つの面の間の摩擦に依存するので、該面の間に油が入ると適切な動作が行われなくなるから、油の侵入を避けるような構造ないし配置を要する。加えて、二つの面間の摩擦に依存することから、該二つの面が実際上平行になっていることが実際上不可欠で、構造上高い寸法精度が要求される。
【0006】
一方、凹凸タイプないし相補的形状嵌合式のクラッチ機構としては、例えば、手巻機構においてつづみ車の回転をきち車に伝達するもの(特許文献3)が知られている。
【0007】
この種の相補的形状嵌合式のクラッチ機構では、二つのクラッチ部品の相補的形状部分が丁度嵌合された場合には比較的小さくても大きな回転動力が確実に伝達され得るという長所はあるけれども、摩擦式のクラッチ機構と比較した場合、種々の短所もある。
【0008】
すなわち、凹凸タイプないし相補的形状嵌合式のクラッチ機構において、二つのクラッチ部品の凹凸形状部分が相互に嵌合されないで夫々の凸部が接触する状態になると、二つのクラッチ部品が突っ張りあって相互に嵌合され得ず、また、相互嵌合に適する比較的複雑な形状の先端部(凸部)に大きな応力がかかって「歯折れ」の如き損傷を受ける虞れがある。また、相互に丁度嵌合するように形状が複雑化され易いので一つの嵌合部分の形状が大きくなり易く一方の凸部が他方の所定の凹部と嵌合する所定位置を越えると次の所定の凹部と嵌合するために比較的大きな間隔があき、回転の場合、比較的大きい針飛びが生じる虞れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−258367号公報
【特許文献2】特開2008−304469号公報
【特許文献3】特開2004−101289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、比較的小さな押圧力で確実に動力を伝達し得且つ飛びを小さく抑えることが可能になるクラッチ機構及び該クラッチ機構を備えた時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のクラッチ機構は、前記目的を達成すべく、駆動側平面状表面部を備えた駆動側クラッチ部材であって該駆動側平面状表面部に間隔をおいて形成された多数の駆動側係合突起部を具備するものと、従動側平面状表面部を備えた従動側クラッチ部材であって該従動側平面状表面部に間隔をおいて形成された多数の従動側係合突起部を具備するものとを有し、駆動側係合突起部及び従動側係合突起部の夫々は、先端側ほど断面積が小さくなるように先細になっており、駆動側クラッチ部材及び従動側クラッチ部材は駆動側係合突起部の少なくとも一部が従動側係合突起部の少なくとも一部に対して係脱され得るように近接離間されるべく構成されている。
【0012】
本発明のクラッチ機構では、以上の如く構成されているので、駆動側及び従動側クラッチ部材が相互に対して押圧されるように比較的小さな力で近接せしめられるだけで、駆動側クラッチ部材が駆動側平面状表面部の延在方向に概ね沿う方向に変位される際に、駆動側クラッチ部材の駆動側係合突起部から従動側クラッチ部材の従動側係合突起部に動力が確実に伝達され得る。
【0013】
すなわち、本発明のクラッチ機構では、駆動側及び従動側係合突起部の係合により動力が伝達されるので、従来の摩擦式のクラッチ機構の場合と異なり、押付力が小さかったり径が比較的小さかったり油が流入したりしても回転が確実に伝達され得る。
【0014】
また、本発明のクラッチ機構では、駆動側及び従動側係合突起部の係合により動力が伝達され且つ駆動側係合突起部及び従動側係合突起部の夫々は先端側ほど断面積が小さくなるように先細になっているので、駆動側及び従動側に相補的形状の係合部を備えた従来の相補的形状嵌合式のクラッチ機構の場合と異なり、駆動側及び従動側突起部の夫々を小さくして駆動側突起部間の間隔及び従動側突起部間の間隔を小さくすることにより、飛びを最低限に抑えることが可能になる。更に、本発明のクラッチ機構では、駆動側係合突起部及び従動側係合突起部の夫々は先端側ほど断面積が小さくなるように先細になっているので、駆動側及び従動側クラッチ部材が近接離間される際に相互に引っかかったりつっ張ったりする虞れが少ない。
【0015】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、駆動側及び従動側クラッチ部材が近接せしめられた上で駆動側クラッチ部材が駆動方向に変位せしめられる際、駆動側クラッチ部材の駆動側係合突起部が従動側クラッチ部材の従動側平面状表面部に対面せしめられ得且つ従動側クラッチ部材の従動側係合突起部が駆動側クラッチ部材の駆動側平面状表面部に対面せしめられ得るように、駆動側平面状表面部上における駆動側係合突起部の面積分布密度及び従動側平面状表面部上における従動側係合突起部の面積分布密度が十分に小さい。
【0016】
その場合、駆動側及び従動側係合突起部のうちの少なくともいずれか一方の係合突起部が従動側又は駆動側平面状表面部に対して当接し得る程度に深く係合され得るので、比較的小さな押圧力で確実に動力を伝達し得且つ飛びを小さく抑え得る。
【0017】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、駆動側及び従動側クラッチ部材のうちの少なくとも一方のクラッチ部材が他方のクラッチ部材に対して近接される向きの偏倚力を受けている。
【0018】
その場合、係合力が確実に得られる。なお、この偏倚力は典型的にはばねの如き弾性部材によって与えられる。
【0019】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、駆動側クラッチ部材及び従動側クラッチ部材が同心に配置されて駆動側クラッチ部材から従動側クラッチ部材に回転が伝達されるように構成され、駆動側及び従動側クラッチ部材が回転中心軸線に平行な向きに近接離間されるように構成される。
【0020】
その場合、比較的小さな押圧力で飛びを小さく抑えた状態で回転が確実に伝達され得る。但し、所望ならば、駆動側及び従動側クラッチ部材が同心状に回転する代わりに、並進されてもよい。
【0021】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、駆動側及び従動側クラッチ部材の少なくとも一方のクラッチ部材が回転中心軸線のまわりで少なくとも一つの概ね同心円状に配置された多数の駆動側又は従動側係合突起部を備える。
【0022】
その場合、回転が伝達され易い。但し、所望ならば、係合突起部が同心円からずれていてもよい。
【0023】
本発明のクラッチ機構では、駆動側及び従動側クラッチ部材の少なくとも一方のクラッチ部材が回転中心軸線のまわりで少なくとも二つの概ね同心円状に配置された多数の駆動側又は従動側係合突起部を備えていてもよい。
【0024】
その場合、一つの突起部にかかる力を小さく抑えたり(二つ以上の同心円上の二つ以上の突起部が同時に別の突起部に係合する場合)、二つ以上の同心円上の突起部が異なるタイミング(位相)で別の突起部に係合するようにする場合、周方向の分布密度を1/2以下にすることも可能になる。
【0025】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、同心円状に配置された駆動側係合突起部の同心円の径と同心円状に配置された従動側係合突起部の同心円の径とが異なる。
【0026】
駆動側係合突起部及び従動側係合突起部の夫々は先端側ほど断面積が小さくなるように先細になっていることから、この場合、駆動側及び従動側係合突起部の斜めの側面で相互に係合され得るので、駆動側及び従動側係合突起部を比較的大きく形成し得る故、回転を確実が伝達され易い。
【0027】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、駆動側及び従動側係合突起部のうちの少なくとも一つの概ね同心円状に配置された多数の駆動側又は従動側係合突起部が、概ね同一の大きさ及び形状を有する。
【0028】
その場合、回転が伝達され易い。
【0029】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、駆動側及び従動側係合突起部が二つ以上の概ね同心円状に配置された多数の駆動側又は従動側係合突起部を備え、該二つ以上の同心状の係合突起部のうち一つの概ね同心状の係合突起部が、別の一つの概ね同心状の係合突起部と異なる大きさ又は形状を有する。
【0030】
その場合も回転が伝達され易い。
【0031】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、概ね同心状に配置された係合突起部の数が、60個以上である。
【0032】
その場合、飛びが、一回転の1/60以下に抑え得、時計用クラッチ機構で秒に係る場合、針飛びが1秒以下に押えられ得る。時計部品の軸方向端面の径は高々2〜3cm程度以下であって典型的には数mm程度又はそれ以下であることから、周方向に60個程度以上(同心円を二組設ける場合には30個程度以上)の突起部が形成されるとすると、突起部の径は、数10μm程度又はそれ以下になる。このような突起部は、例えば、表面上に液滴を塗布する等の液体の表面張力を利用した成形や、半導体ウエーハの成形プロセスから転用したマスクやエッチング技術等やMEMS技術を利用して形成してもよい。
【0033】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、係合突起部の横断面が概ね円形、楕円形、長円形若しくは卵形、又は角の丸まった四角形以上の多角形若しくは三角形である。
【0034】
その場合、凸部の先端同士のつっぱりによって係合され得ない状態になる虞れを最低限に抑え得る。
【0035】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、クラッチ機構が、クロノグラフ真への回転を伝達するように同心に配置されている。
【0036】
その場合、クロノグラフ真への動力の伝達が確実に行われ易い。
【0037】
本発明のクラッチ機構では、典型的には、つづみ車から該つづみ車に対して巻真の延在方向に平行な向きに同心状に対面したきち車に回転を伝達するように構成されている。
【0038】
その場合、つづみ車からきち車に回転力が確実に伝達され得る。
【0039】
本発明の時計は、前記記目的を達成すべく上述のようなクラッチ機構を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の好ましい一実施例のクラッチ機構を備えた本発明の好ましい一実施例の時計の一部を示す断面説明図。
【図2】図1のクラッチ機構を示したもので、(a)は従動側クラッチ部材を該従動側クラッチ部材のうち駆動側クラッチ部材に対面する側からみた平面説明図、(b)は駆動側クラッチ部材を該駆動側クラッチ部材のうち従動側クラッチ部材に対面する側からみた平面説明図。
【図3】図2のクラッチ機構を示したもので、(a)は一部の斜視説明図、(b)は一部の平面説明図、(c)は(d)の一部の拡大側面説明図、(d)は一部の側面説明図。
【図4】図3の(b)を更に拡大して係合動作を説明するための動作説明図。
【図5】本発明の別の好ましい一実施例のクラッチ機構についての図2と同様な説明図であって、(a)は従動側クラッチ部材を該従動側クラッチ部材のうち駆動側クラッチ部材に対面する側からみた平面説明図、(b)は駆動側クラッチ部材を該駆動側クラッチ部材のうち従動側クラッチ部材に対面する側からみた平面説明図。
【図6】図5のクラッチ機構についての、図3と同様な説明図であって、(a)は一部の斜視説明図、(b)は一部の平面説明図、(c)は(d)の一部の拡大側面説明図、(d)は一部の側面説明図。
【図7】図6のクラッチ機構の一変形例を示したものであって、(a)は一部の斜視説明図、(b)は一部の平面説明図、(c)は(d)の一部の拡大側面説明図、(d)は一部の側面説明図。
【図8】図6のクラッチ機構の別の一変形例を示したものであって、(a)は一部の斜視説明図、(b)は一部の平面説明図、(c)は(d)の一部の拡大側面説明図、(d)は一部の側面説明図。
【図9】本発明の好ましい一実施例のクラッチ機構を備えた本発明の別の好ましい一実施例の時計の一部を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の好ましい実施の形態のいくつかを添付図面に示した好ましい実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0042】
図1は、本発明の好ましい一実施例のクラッチ機構1を備えた本発明の好ましい一実施例の時計としてのクロノグラフ時計2の一部のクロノグラフ輪列3を示す断面説明図である。なお、クロノグラフ時計2のその他の部分は、当業者に良く知られているのでここでは説明および図示を省略する。香箱車11の香箱歯車12は、二番車13のかな14と噛み合う。二番車13は、地板15と二番受16との間に軸支され、その中心にはクロノグラフ秒針軸ないし秒クロノグラフ真17が隙間を持って貫通している。クロノグラフ秒針軸17は、そのつば18と二番受16とにより軸方向に支持されている。また、クロノグラフ秒針軸17の端部はボールベアリング軸19により軸支してある。二番車13の歯車21は、三番車22のかな23と噛み合う。三番車22は、三番車受24と地板15との間に軸支されている。三番車22の歯車25は、四番車26のかな27と噛み合う。四番車26のかな27は、クロノグラフ秒針軸17のつば18により軸方向に支持されると共に、クロノグラフ秒針軸17を軸に回転摺動する。秒クロノグラフ車5は、秒クロノグラフ真17に加えて秒クロノグラフ歯車28や秒ハートカム29等を含む。20はクロノグラフ受である。
【0043】
秒クロノグラフ車5には、ばね部材31及び一方のクラッチ部材としてのクラッチリング40が取付けられている。図1において、ばね部材31及びクラッチリング40の下方には、他方のクラッチ部材として働く四番車26の四番歯車50が配置されている。この例では、クラッチ機構1は、一方のクラッチ部材としてのクラッチリング40と他方のクラッチ部材としての四番歯車50とクラッチリング40を四番歯車50の方へA1方向に偏倚させる偏倚力Bを及ぼすばね部材31とを有する。
【0044】
秒クロノグラフ車5は、ばね部材31のA1方向偏倚力Bによって得られる係合力により、クラッチリング40を介して四番車50と係合ないし結合する。クラッチリング40は、クロノグラフ停止時には発停レバー32a,32bが夫々E1,E2方向に変位して該発停レバー32a,32bにより両側から挟み込まれることでA2方向に持ち上げられてクラッチ機構1を構成する四番歯車50とクラッチリング40との係合が解除され、四番車26から秒クロノグラフ車5への回転の伝達が断たれる。
【0045】
クロノグラフ計測ないし運転の際には、発停レバー32a,32bが夫々E2,E1方向に変位してクラッチリング40から離れるので、クラッチリング40と四番歯車50とが係合されて四番車26の回転が秒クロノグラフ車5に伝達される。
【0046】
クラッチ機構1の一方のクラッチ部材を構成するクラッチリング40及び他方のクラッチ部材を構成する四番歯車50の対向面41,51は、例えば、図2の(a)及び(b)並びに図3の(a)〜(d)に示したように、平面部42,52と該平面部42,52から突出した多数の係合突起部43,53とを有する。なお、図4の(b)の仮想円50iは、四番歯車50のうちクラッチリング40と係合可能な部分の外周を示す。
【0047】
従動側係合突起部としての係合突起部43は、図2の(a)並びに図3の(a)、(c)及び(d)に示したように、従動側平面状表面部としての平面部42から突出した半球状部44からなり、各係合突起部43は、中心軸線Cを中心とする半径R1の仮想円H1に沿って例えば周方向に等間隔に配置されている。従動側平面状表面部42上における従動側係合突起部43の面積分布密度(面41の面積のうちで突起部43が占める断面積の割合)が十分に小さくて隙間が十分に大きければ、間隔は等間隔でなくてもよい。なお、見易さのために、図2の(a)においては、円H1に沿って10個の突起部43が示されているけれども、典型的には、一周360度で60秒を表示する場合、1秒以上の針飛びが生じないように、円H1に沿って60個以上の突起部43が形成される。隣接突起部43,43間の間隔が等間隔でない場合、最大間隔が6度以下になるように、60個よりも多くの突起部43が配置される。
【0048】
一方、駆動側係合突起部としての係合突起部53は、図2の(b)並びに図3の(a)、(c)及び(d)に示したように、駆動側平面状表面部としての平面部52から突出した半状部54からなり、各係合突起部53は、中心軸線Cを中心とする半径R2の仮想円H2に沿って例えば周方向に等間隔に配置されている。この例では図2の(a)及び(b)に加えて図3の(b)からわかるように、R2<R1である。但し、R2≠R1である限り、R2>R1でもよい。この場合も、駆動側平面状表面部52上における駆動側係合突起部53の面積分布密度(面51の面積のうちで突起部53が占める断面積の割合)が十分に小さくて隙間が十分に大きければ、間隔は等間隔でなくてもよい。また、この場合も、見易さのために、図2の(b)においては、円H2に沿って10個の突起部53が示されているけれども、典型的には、一周360度で60秒を表示する場合、1秒以上の針飛びが生じないように、円H1に沿って60個以上の突起部53が形成され、隣接突起部53,53間の間隔が等間隔でない場合、最大間隔が6度以下になるように、60個よりも多くの突起部53が配置されることも、突起部43の場合と同様である。
【0049】
この例では、各突起部43は夫々同一の大きさおよび形状を有し、且つ各突起部53も夫々同一の大きさおよび形状を有する。但し、多数の突起部43の少なくとも一部が異なる大きさや形状を有していても、多数の突起部53の少なくとも一部が異なる大きさや形状を有していてもよい。図2の(a)及び(b)では、突起部43と突起部53とは概ね同程度の大きさであるかの如く示されているけれども、例えば、図3の(a)〜(d)に示したように、各突起部43の方が各突起部53よりも大きくても、その逆に、各突起部43の方が各突起部53よりも小さくてもよい。
【0050】
なお、各突起部43,53は、半球状以外の形状を有する場合であっても、相対回転の際に相互に引っかかる虞れを避けるべく、好ましくは外になめらかに凸状に湾曲した横断面形状を有し、且つ軸線方向に近接離間される際に相互に引っかかる虞れを避けるべく、各突起の突出方向に平行な断面(各突起部についての縦断面)で見た場合、好ましくは外になめらかに凸状に湾曲した形状を有する。
【0051】
駆動側クラッチ部材である四番歯車50と従動側クラッチ部材ないしクラッチリング40とを備えたクラッチ機構1の動作について、図1、図2の(a)及び(b)、並びに図3の(a)〜(d)に加えて、図3の(b)の全体を拡大して示した図4に基づいて、説明する。
【0052】
発停レバー32a,32bが相互に近接されてクラッチリング40が四番歯車50からA2方向に離間された停止状態において、発停ボタン(図示せず)の押圧によりクロノグラフ計測の開始が指示されると、発停レバー32a,32bが夫々夫々E2,E1方向に変位され、クラッチリング40がクラッチばね31の作用下でA1方向に変位される。クラッチリング40のA1方向変位は、大まかには、対向突起部43,53のうち最大突出長が大きい方の突起部43の先端43aが対向面51の平面部52に当接するか(例えば、図3の(c))、突起部43の一側43f(図3の(a))と対向面51の突起部53の一側53a(図3の(a))とが当接するところで停止する。
【0053】
各突起部43が実際上一定の大きさで且つ周方向に等間隔に配置され、各突起部53が実際上一定の大きさで且つ周方向に等間隔に配置されている場合を例にとって、図1〜図3に加えて図4に基づいて、より詳しく説明する。
【0054】
図3の(c)及び(d)に示したように、突起部43の先端43aが対向面51の平面部52に当接する(直前の)状態で、突起部53が反時計回りC1に回った際に突起部53が突起部43に当接する位置をP3、突起部53が時計回りC2に回った際に突起部53が突起部43に当接する位置をP2とし、突起部43,53が径方向に整列する位置をP1,P4とする。P1とP4とは同等ないし等価な位置である。
【0055】
クラッチリング40がクラッチばね31の作用下でA1方向に変位された際に、突起部43に対して突起部53が位置P2と位置P3との間の領域S1に位置する場合には、クラッチリング40の突起部43の先端部43aが四番歯車50の平面52に当接し、四番歯車50のC1方向回転に伴い突起部53が位置P3に達してC1方向下流側に位置する隣接突起部53に当接するところで、四番歯車50の係合突起部53とクラッチリング40の係合突起部43との係合が確立され、クラッチ機構1が係合状態になり、その後は、駆動側クラッチ部材たる四番歯車50のC1方向回転に伴い、従動側クラッチ部材であるクラッチリング40が回転して、四番車26から秒クロノグラフ車5への回転の伝達が開始される(クロノグラフ計測動作が開始される)。
【0056】
なお、クラッチリング40のA1方向に変位されて四番歯車50に近接せしめられる際に、突起部43の先端部43aが四番歯車50の対向面51の平面部52に当接せしめられる前に、間隙を残した状態で、クラッチリング40のA1方向変位が停止せしめられ、先端部43a,と平面部52との間の摩擦を避けるように構成されていてもよい(突起部53の高さが突起部43の高さ以上である場合には、四番歯車50の突起部53とクラッチリング40の対向面41の平面部42とについても同様である)。
【0057】
一方、クラッチリング40がクラッチばね31の作用下でA1方向に変位された際に突起部43に対して突起部53が位置P1と位置P2との間の領域S2に位置する場合には、突起部43の先端43aが対向表面51の平面部52に当たる前に突起部43の下流側の一側部43bが突起部53の上流側の一側部53bに当たる。この場合、駆動側クラッチ部材である四番歯車50のC1方向回転に伴い係合突起部53の下流側側部53bが係合突起部43の上流側側部43bから離れるので、四番歯車50のC1方向回転に伴い突起部43の先端43aが対向面52の平面部51に当接するまでクラッチリング40がA1方向に変位され、最終的には、突起部53が位置P3に達して、クラッチ機構1の回転伝達動作が開始されることは、領域S1の場合と同様である。
【0058】
また、クラッチリング40がクラッチばね31の作用下でA1方向に変位された際に、突起部43に対して突起部53が位置P3と位置P4との間の領域S3に位置する場合には、突起部43の先端43aが対向面41の平面部52に当たる前に突起部43の上流側の一側部43cが突起部53の下流側の一側部53cに当たる。この場合、典型的には、当該当接位置において、駆動側クラッチ部材である四番歯車50のC1方向回転がクラッチ機構1を介して従動側クラッチ部材であるクラッチリング40に伝達されて、秒クロノグラフ車5がC1方向に回転される。
【0059】
ここで、クラッチ部材40,50間の係合は突起部53の側面と突起部43の側面との凹凸形状による係合であるので、概ね平らな表面間の摩擦係合の場合と異なり、クラッチばね31のばね力が比較的小さくても、駆動側クラッチ部材(四番歯車)50から従動側クラッチ部材(クラッチリング)40に回転が確実に伝達され得る。
【0060】
このクラッチ機構1では、中心軸線Cを中心として同心に回転されるクラッチ部材40,50の突起部43,53が半径R1,R2の異なる(R2<R1)同心円H1,H2上に配置されているので、小径側の突起部53が径方向外側の側縁部で大径側の突起部43の径方向内側の側縁部に当接して回転を伝達する。従って、円H1の周方向に関する突起部43の分布密度が比較的高かったり突起部43の大きさ(例えば半球の径)が比較的大きくて突起部43,43間の周方向の間隔が比較的狭かったり円H2の周方向に関する突起部53の分布密度が比較的高かったり突起部53の大きさ(例えば半球の径)が比較的大きくて突起部53,53間の周方向の間隔が比較的狭くても突起部43,53が所望位置に位置して回転が確実に伝達され得る。なお、駆動側の突起部53の位置する同心円H2の径R2の方が従動側の駆動側の突起部43の位置する同心円H1の径R1よりも大きくてもよい。
【0061】
以上においては、クラッチ部材40,50が夫々一つの同心円H1,H2上に突起部43,53を備える例について説明したけれども、クラッチ部材40,50のうちの一方が二つの同心円上に突起部を備えていてもよい。
【0062】
図5の(a)及び(b)には、クラッチ機構1Aを構成する一方のクラッチ部材としてのクラッチリング40Aが図2の(a)等に示したクラッチ機構1の場合と同様に半径R1Aの一つの同心円H1A上に多数(図示されているのは10個であるけれども典型的には60個以上)の突起部43Aを備え、クラッチ機構1Aを構成するもう一方のクラッチ部材としての四番歯車50Aが図2の(b)等に示したクラッチ機構1の場合とは異なり半径R2Aa及びR2Abの二つの同心円R2Aa及び同心円R2Abの夫々の上に多数(図示されているのは10個であるけれども典型的には60個以上)の突起部53Aa及び突起部53Abを有する例が示されている。
【0063】
図5の(a)及び(b)等の例のクラッチ機構1Aにおいて、図2の(a)及び(b)等に示したクラッチ機構1の要素と同一の要素には同一の符号が付され、概ね同様であるけれども何らかの点で異なるところのある要素には同一の符号の後に添字Aが付されている。
【0064】
この例では、R2Aa<R1A<R2Abであり、クラッチリング40Aの突起部43Aは、径方向内側に位置する突起部53Aaと径方向外側に位置する突起部53Abとによって多少なりとも挟まれていて、この例では、同心円H1Aの半径R1Aは同心円H1の半径R1よりも小さい。
【0065】
ここで、例えば、図6の(a)〜(d)に示したように、クラッチリング40Aの概ね半球状の突起部43Aは、四番歯車50Aの概ね半球状の突起部53Aa,53Abよりも径が大きく、且つ四番歯車50Aの概ね半球状の突起部53Aa,53Abの径は概ね同程度であり得る。但し、半球状突起部43A,53Aa,53Abの相対的な大きさはここで説明するのとは異なっていてもよい。
【0066】
図6の(a)〜(d)に示したような場合、例えば、図6の(b)に示したように、半径R2Aaの同心円H2Aa上に位置する突起部53Aaと半径R2Abの同心円H2Ab上に位置する突起部53Abとが、半径R1A(但し、R2Aa<R1A<R2Ab)の同心円H1A上に位置する突起部43Aに実際上同時に係合する。但し、突起部53Aa,53Abの夫々の同心円H2Aa,H2Ab上での周方向の厳密な位置や突起部54Aa,54Abの厳密な大きさを規定しない場合には、突起部53Aa,53Abの周方向の位置や突起部43Aの径方向の位置に応じていずれかの突起部53Aa,53Abが(先に)又は両方の突起部53Aa,53Abが(同時に)共に突起部43Aに係合してもよい。周方向についても、複数の突起部53Aa又は53Abが最近接位置にある突起部43に概ね同時にないし共に当接しても、周方向の同じ又は異なる領域にある一組の突起部53Aa又は53Abが最近接位置にある対応する突起部43に当接するようになっていてもよい。
【0067】
以上の如く構成されたクラッチ機構1Aが、クラッチ機構1と同様に動作し得ることは明らかである。
【0068】
半径R1Aの同心円H1A上に位置する半球状突起部43Aの径が、半径R2Aa,R2Abの同心円H2Aa,H2Ab上に位置する半球状突起部53Aa,53Abの径よりも大きい代わりに、図7の(a)〜(d)に示したように、半球状突起部53Aa,53Abの径よりも小さくてもよく、また、同心円H2Aa,H2Ab上に位置する半球状突起部53Aa,53Abの径が同じである代わりに、図7の(a)〜(d)に示したように、同心円H2Aa,H2Ab上に位置する半球状突起部53Aa,53Abの径が相互に異なっていてもよい。その場合にも、そのような突起部43Aを備えたクラッチ部材40B及び突起部53Aa,53Abを備えたクラッチ部材50Bを有するクラッチ機構1Bが、クラッチ機構1やクラッチ機構1Aと同様に動作し得ることは明らかである。
【0069】
以上においては、各同心円H1,H2,H1A,H1Ai,H2Aa,H2Ab上に形成される突起部の周方向の数が同じである例について説明したけれども、図8の(a)〜(d)に示したクラッチ機構1Dのように、例えば、クラッチ部材50Dのうち半径H2Abの同心円R2Ab上に位置する突起部53Abの数が半径H2Aaの同心円R2Aa上に位置する突起部53Aaの数やクラッチ部材40Dの突起部43Aの数よりも多くても(例えば、二倍の数であっても)よい。この場合、周方向の長さの長い同心円H2Ab上において突起部53Ab間の間隔が大きくなるのを避け得、その結果、針飛びの角度をより低く抑え得る。数の多い突起部は、突起部52Abの代わりに他の突起部52Aa又は43Aであってもよい。
【0070】
この場合にも、クラッチ機構1Dが、クラッチ機構1やクラッチ機構1Aやクラッチ機構1Bと同様に動作し得ることは明らかである。
【0071】
なお、図5の(a)において、想像線H1Aiで示したような同心円H1Ai(但し、その半径はR2Abより大とする)に沿って、突起部43Aと同様な別の突起部が配置されている等の如く、クラッチ部材50だけでなくクラッチ部材40にも複数の同心円に沿って係合突起部が形成されていてもよい。
【0072】
また、一つの突起部43Aにかかる力を小さく抑えたり(二つ以上の同心円上の二つ以上の突起部53Aa,53Abが同時に別の突起部43Aに係合する場合)、二つ以上の同心円上の突起部53Aa,53Abが異なるタイミング(位相)で別の突起部43A等に係合するようにする場合、周方向の分布密度を1/2以下にすることも可能になる。
【0073】
クラッチ機構1,1A,1B,1Dは、従来の垂直式の摩擦クラッチのところにその代替として設けられる代わりに、図9に示したようなクラッチ機構1Eであってよい。図9のクラッチ機構1Eでは、駆動側クラッチ部材がつづみ車60の端面のクラッチ部材G1からなり、従動側クラッチ部材がきち車70のこれに対向するクラッチ部材G2からなる。ここで、例えば、つづみ車60の端面のクラッチ部材G1が図2の(a)及び(b)並びに図3の(a)〜(d)及び図4の駆動側のクラッチ部材50と同様に構成され、きち車70のクラッチ部材G2が図2の(a)及び(b)並びに図3の(a)〜(d)及び図4の従動側のクラッチ部材40と同様に構成される。クラッチ部材G1,G2は、夫々、図5の(a)及び(b)や図6の(a)〜(d)の駆動側及び従動側のクラッチ部材50A,40A、図7の(a)〜(d)の駆動側及び従動のクラッチ部材50B,40Bや、図8の(a)〜(d)の駆動側及び従動側のクラッチ部材50D,40Dと同様に構成されてもよい。
【0074】
このクラッチ機構1Eを備えた時計2Eでは、巻真81をJ1方向に引き出すと、巻真81の角柱部84に嵌合されたつづみ車60がおしどり82やかんぬき83などの作用下で相対的にJ1方向に変位されてつづみ車60のJ1側の端面に位置する駆動側クラッチ部材G1がこれに対面する状態にあるきち車70の反対J2側の端面に位置する従動側クラッチ部材G2に係合可能になり、該引出位置において巻真81を中心軸線KのまわりでM1方向に回転させると、つづみ車60の駆動側クラッチ部材G1の突起部43(図2〜図4参照、図9では図示せず)がきち車70の従動側クラッチ部材G2の突起部53に係合して、きち車70を回転させ、きち車70の外周歯車部71がこれに噛合した巻上輪列90の車91や中間車92a,92b,93等を介して角穴車94をN1方向に回転させ、香箱車95を香箱真96のまわりでK1方向に回転させてぜんまい97を巻き上げる。図9において87は地板、88は受である。
【0075】
この場合、クラッチ機構1Eを形成するクラッチ部材G1,G2は、クラッチ部材40,50と異なり、周方向の突起部43,53の数が比較的少なくてもよい。この場合、従来のつづみ車の端面の歯車及びこれに対向し且つ噛合するきち車の端面の歯車からなる噛合構造と異なり、突起部43,53及びその間の隙間の部分が相互に相補的形状でなくてよいから、噛合いないし係合が実現され易い。
【符号の説明】
【0076】
1,1A,1B,1D,1E クラッチ機構
2,2E 時計
3 クロノグラフ輪列
5 秒クロノグラフ車
11 香箱車
12 香箱歯車
13 二番車
14 (二番)かな
15 地板
16 二番受
17 クロノグラフ秒針軸(秒クロノグラフ真)
18 つば
19 ボールベアリング軸
20 クロノグラフ受
21 (二番)歯車
22 三番車
23 (三番)かな
24 三番受
25 (三番)歯車
26 四番車
27 (四番)かな
28 秒クロノグラフ歯車
29 秒ハートカム
31 ばね部材
32a,32b 発停レバー
40,40A,40B,40D クラッチリング(一方のクラッチ部材)
41,51 (対向)面
42,52 平面部
43,53,43A,53Aa,53Ab 係合突起部
43a 先端
43b (下流側)側部
43c (上流側)側部
43f 一側
44,54 半球状部
50,50A,50B,50D 四番歯車(他方のクラッチ部材)
50i 仮想円
53a 一側
53b (上流側)側部
53c (下流側)側部
60 つづみ車
70 きち車
71 外周歯車部
81 巻真
82 おしどり
83 かんぬき
84 角柱部
87 地板
88 受
90 巻上輪列
91 車
92a,92b,93 中間車
94 角穴車
95 香箱車
96 香箱真
97 ぜんまい
A1,A2,C1,C2,E1,E2,J1,J2,M1,N1 方向
B 偏倚力
C,K 中心軸線
G1 駆動側クラッチ部材
G2 従動側クラッチ部材
H1,H2,H1A,H1Ai,H2Aa,H2Ab 仮想円
P1,P2,P3,P4 位置
R1,R2,R1A,R2Aa,R2Ab 半径
S1,S2,S3 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側平面状表面部を備えた駆動側クラッチ部材であって該駆動側平面状表面部に間隔をおいて形成された多数の駆動側係合突起部を具備するものと、
従動側平面状表面部を備えた従動側クラッチ部材であって該従動側平面状表面部に間隔をおいて形成された多数の従動側係合突起部を具備するものとを有し、
駆動側係合突起部及び従動側係合突起部の夫々は、先端側ほど断面積が小さくなるように先細になっており、
駆動側クラッチ部材及び従動側クラッチ部材は駆動側係合突起部の少なくとも一部が従動側係合突起部の少なくとも一部に対して係脱され得るように近接離間されるべく構成されているクラッチ機構。
【請求項2】
駆動側及び従動側クラッチ部材が近接せしめられた上で駆動側クラッチ部材が駆動方向に変位せしめられる際、駆動側クラッチ部材の駆動側係合突起部が従動側クラッチ部材の従動側平面状表面部に対面せしめられ得且つ従動側クラッチ部材の従動側係合突起部が駆動側クラッチ部材の駆動側平面状表面部に対面せしめられ得るように、駆動側平面状表面部上における駆動側係合突起部の面積分布密度及び従動側平面状表面部上における従動側係合突起部の面積分布密度が十分に小さい請求項1に記載のクラッチ機構。
【請求項3】
駆動側及び従動側クラッチ部材のうちの少なくとも一方のクラッチ部材が他方のクラッチ部材に対して近接される向きの偏倚力を受けている請求項1又は2に記載のクラッチ機構。
【請求項4】
駆動側クラッチ部材及び従動側クラッチ部材が同心に配置されて駆動側クラッチ部材から従動側クラッチ部材に回転が伝達されるように構成され、駆動側及び従動側クラッチ部材が回転中心軸線に平行な向きに近接離間されるように構成された請求項1から3までのいずれか一つの項に記載のクラッチ機構。
【請求項5】
駆動側及び従動側クラッチ部材の少なくとも一方のクラッチ部材が回転中心軸線のまわりで少なくとも一つの概ね同心円状に配置された多数の駆動側又は従動側係合突起部を備える請求項4に記載のクラッチ機構。
【請求項6】
駆動側及び従動側クラッチ部材の少なくとも一方のクラッチ部材が回転中心軸線のまわりで少なくとも二つの概ね同心円状に配置された多数の駆動側又は従動側係合突起部を備える請求項5に記載のクラッチ機構。
【請求項7】
同心円状に配置された駆動側係合突起部の同心円の径と同心円状に配置された従動側係合突起部の同心円の径とが異なる請求項5又は6に記載のクラッチ機構。
【請求項8】
駆動側及び従動側係合突起部のうちの少なくとも一つの概ね同心円状に配置された多数の駆動側又は従動側係合突起部が、概ね同一の大きさ及び形状を有する請求項4から7までのいずれか一つの項に記載のクラッチ機構。
【請求項9】
駆動側及び従動側係合突起部が二つ以上の概ね同心円状に配置された多数の駆動側又は従動側係合突起部を備え、該二つ以上の同心状の係合突起部のうち一つの概ね同心状の係合突起部が、別の一つの概ね同心状の係合突起部と異なる大きさ又は形状を有する請求項4に記載のクラッチ機構。
【請求項10】
概ね同心状に配置された係合突起部の数が、60個以上である請求項1から9までのいずれか一つの項に記載のクラッチ機構。
【請求項11】
係合突起部の横断面が概ね円形、楕円形、長円形若しくは卵形、又は角の丸まった四角形以上の多角形若しくは三角形である請求項1から9までのいずれか一つの項に記載のクラッチ機構。
【請求項12】
クラッチ機構が、クロノグラフ真への回転を伝達するように同心に配置されている請求項1から11までのいずれか一つの項に記載のクラッチ機構。
【請求項13】
クラッチ機構がつづみ車から該つづみ車に対して巻真の延在方向に平行な向きに同心状に対面したきち車に回転を伝達するように構成されている請求項1から12までのいずれか一つの項に記載のクラッチ機構。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一つの項に記載のクラッチ機構を備えた時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87887(P2013−87887A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229915(P2011−229915)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】