説明

クリップ及びクリップを用いた取付構造

【課題】取付部材と被取付部材との間の取付隙間を低減する。
【解決手段】クリップ30は、ベース支持部材10の取付孔11内に嵌合可能に形成されたクリップ本体部31と、クリップ本体部31に設けられかつミラーベース20の取付ボス部21に外嵌可能な係合凹部35と、クリップ本体部31の両側部に設けられ、ベース支持部材10の取付孔11に係合する係止脚部38とを備える。クリップ本体部31の両側壁部32,33を取付孔11の前後内側面に近接又は当接可能に形成するとともに、両側壁部32,33の対向方向への撓み変形を係合凹部35内に係合された取付ボス部21により規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ及びクリップを用いた取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両のフロントドアにドアミラーを設置するに際して、フロントドアの窓枠に設けられたアルミダイキャスト製のキャストモールと呼ばれるベース支持部材に対して、ドアミラーの略三角形状のパッチと呼ばれるミラーベースが、クリップを用いて取付けられている。このベース支持部材にミラーベースをクリップを用いて取付ける取付構造の従来例を説明する。図11は従来例にかかるクリップを用いた取付構造を示す断面図である。
【0003】
図11に示すように、ベース支持部材110には取付孔111が形成されている。また、ミラーベース120の裏面側にはチャンネル状のクリップ取付部123が形成されている。クリップ140は、ミラーベース120のクリップ取付部123の開口溝部123a内をスライドする取付軸部141と、そのクリップ取付部123内に係合されてクリップ140を抜止めするフランジ部142と、ベース支持部材110の取付孔111に弾性的に係合する横断面がS字状をなす係止部143と、ベース支持部材110に弾性的に当接するスカート状の押圧部144とを有している。クリップ140は、取付軸部141をミラーベース120のクリップ取付部123の開口溝部123a内にスライドさせてフランジ部142をクリップ取付部123内に係合させることにより、ミラーベース120に抜止状態に取付けられる。そして、クリップ140の係止部143をベース支持部材110の取付孔111内に弾性的に係合するとともに、押圧部144がベース支持部材110に弾性的に当接することにより、ベース支持部材110にミラーベース120が抜止状態に取付けられる。なお、このようなクリップ140を用いた取付構造は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】実開平6−51519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車種によっては、ベース支持部材110とミラーベース120との間の隙間(この隙間を「取付隙間」という。)S1を小さく設定したい場合がある。しかし、前記クリップ140を用いた取付構造(図11参照。)では、ミラーベース120にクリップ取付部123を設ける必要があることから、取付隙間S1を低減することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、取付部材と被取付部材との間の取付隙間を低減することのできるクリップ及びクリップを用いた取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とするクリップ及びクリップを用いた取付構造により解決することができる。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1にかかるクリップは、取付孔を有する取付部材に対して、前記取付孔に対応する取付凸部を有する被取付部材を取付けるクリップである。前記取付部材の取付孔内に嵌合可能に形成されたクリップ本体部と、前記クリップ本体部に設けられかつ前記被取付部材の取付凸部に外嵌可能な係合凹部と、前記クリップ本体部の両側部のうちの少なくとも一側部に設けられ、前記取付部材の取付孔に係合する抜止部とを備える。前記クリップ本体部における前記両側部に延びる方向に交差する方向でかつ前記係合凹部を間に対向する両側壁部の外側面を前記取付孔の内側面に近接又は当接可能に形成するとともに、その両側壁部の対向方向への撓み変形を前記係合凹部内に係合された前記取付凸部により規制する構成としたものである。このように構成すると、クリップ本体部の係合凹部内に被取付部材の取付凸部を係合した状態で、クリップ本体部を取付部材の取付孔内に嵌合する。これにより、クリップ本体部の両側壁部の対向方向への相対的な撓み変形が被取付部材の取付凸部により規制される。また、この状態で、抜止部が取付部材の取付孔内に係合されることにより、クリップ本体部が抜止めされる。これにより、クリップ本体部の両側壁部の外側面が取付孔の内側面に近接又は当接する。このようにして、取付部材に被取付部材がクリップを用いて取付けられる。したがって、本クリップによると、取付部材に従来必要とされたクリップ取付部を形成する必要がなくなることから、取付部材と被取付部材との間の取付隙間を低減することができる。また、取付部材に対する被取付部材の取付状態において、クリップ本体部の両側壁部の外側面が取付部材の取付孔の内側面に近接又は当接するとともに、その両側壁部の対向方向への相対的な撓み変形が被取付部材の取付凸部により規制されるため、取付部材の取付孔に対するクリップ本体部の両側部に延びる方向に交差する方向へのクリップのがたつきを防止あるいは低減することができる。
【0008】
また、特許請求の範囲の請求項2にかかるクリップを用いた取付構造は、取付孔を有する取付部材に対して、前記取付孔に対応する取付凸部を有する被取付部材を、請求項1に記載のクリップにより取付けたものである。このように構成すると、取付部材と被取付部材との間の取付隙間を低減することのできるクリップを用いた取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態について実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0010】
本発明の一実施例を説明する。本実施例では、自動車等の車両のフロントドアにドアミラーを設置するに際して、フロントドアの窓枠に設けられたベース支持部材に対してドアミラーのミラーベースをクリップを用いて取付けるクリップを用いた取付構造について例示する。なお、図1はクリップを用いた取付構造を示す正断面図、図2は図1のII−II線矢視断面図、図3はクリップを用いた取付構造にかかる構成部品を示す分解斜視図である。以下、ベース支持部材10、ミラーベース20、クリップ30の順に説明する。
【0011】
まず、ベース支持部材10を説明する。図3に示すように、ベース支持部材10は、例えばアルミダイキャスト製のキャストモールであって、図示しない自動車等の車両のフロントドアの窓枠に設けられるものである。ベース支持部材10の板状部10aには、長方形状の取付孔11が形成されている。なお、説明の都合上、ベース支持部材10の取付孔11の長手方向(図1において左右方向)を左右方向、その短手方向(図2において左右方向)を前後方向として説明する。なお、ベース支持部材は、本明細書でいう「取付部材」に相当する。
【0012】
次に、ミラーベース20を説明する。図3に示すように、ミラーベース20は、例えば樹脂製で、前記ベース支持部材10に対して重合状をなす板状部20aを有している。ミラーベース20の板状部20aの裏面側(ベース支持部材10に面する側)には、直方体状をなす取付ボス部21が垂直状に突出されている。取付ボス部21は、前記ベース支持部材10の取付孔11の中央部に対応しており、その断面の長手方向を左右方向、短手方向を前後方向として形成されている。取付ボス部21の下端部すなわち先端部の前側面には、左右方向に延びる係止爪22が形成されている。係止爪22は、ミラーベース20と平行する係止面22aと、その係止面22aの前端縁から下方に向かって取付ボス部21の前側面に対する突出量を次第に小さくする傾斜面22bとを有している。なお、取付ボス部21は、本明細書でいう「取付凸部」に相当する。また、ミラーベース20は、本明細書でいう「被取付部材」に相当する。
【0013】
次に、クリップ30を説明する。クリップ30は、図3に示すように、例えば樹脂製の一体成形品からなる。なお、図4はクリップを示す正面図、図5は同じく側面図、図6は図4のVI−VI線矢視断面図、図7はクリップを示す下面図、図8は同じく斜視図である。
クリップ30の主体をなすクリップ本体部31は、長四角板状の前側壁部32と、その前側壁部32と平行状をなす長四角板状の後側壁部33と、前側壁部32と後側壁部33との下端部を連結する長四角形板状の下側壁部34とを有している。クリップ本体部31は、前記ベース支持部材10の取付孔11内に嵌合可能に形成されている(図1及び図2参照。)。しかして、クリップ本体部31の前後方向の幅(図5において左右方向の幅)は、ベース支持部材10の取付孔11の前後方向の孔幅(図2において左右方向の幅)と同等又は僅かに小さい寸法に設定されている。このため、取付孔11内にクリップ本体部31を嵌合した際には、両側壁部32,33が前記取付孔11の前後の内側面に近接又は当接する(図2参照。)。また、前側壁部32は、後側壁部33の壁厚に比べて薄い壁厚で形成されており、前方へ撓み変形可能に形成されている(図6中、二点鎖線32参照。)。また、前側壁部32と後側壁部33との間の有底状の凹部が係合凹部35となっている(図6参照。)。係合凹部35の前後方向の幅(図6において左右方向の幅)は、前記ミラーベース20の取付ボス部21の前後方向の厚さ(図2において左右方向の厚さ)にほぼ等しい寸法に設定されている。このため、係合凹部35内に取付ボス部21が前側壁部32の撓み変形(図6中、二点鎖線32参照。)を利用して嵌入可能にかつ両側壁部32,33の対向方向への相対的な撓み変形を取付ボス部21が規制可能に形成されている(図2参照。)。しかして、前側壁部32の下端部には、四角形状の係止孔36が開口されている(図3、図6、図8参照。)。係止孔36は、取付ボス部21の係止爪22を係合可能に形成されている(図1及び図2参照。)。
【0014】
図4に示すように、前記クリップ本体部31の下側壁部34の左右両端部には、それぞれ外側上方へ突出する左右一対の係止脚部38が突出されている。両係止脚部38は、クリップ本体部31の前後方向の幅(図6において左右方向の幅)と等しい前後方向の幅(図5において左右方向の幅)をもって形成されている。両係止脚部38は、それぞれクリップ本体部31側へ撓み変形可能に形成されている(図4中、二点鎖線38参照。)。両係止脚部38の先端部(上端部)の外側には、前後方向に延びる段付状の係止段縁38aが形成されている(図4参照。)。係止段縁38aは、前記ベース支持部材10の取付孔11の左右内側縁に両係止脚部38の撓み変形(図4中、二点鎖線38参照。)を利用して係合可能に形成されている(図1参照。)。なお、係止脚部38は、本明細書でいう「抜止部」に相当する。
【0015】
次に、ベース支持部材10に対するミラーベース20の取付手順について説明する。なお、図9はクリップをミラーベースに取付けた状態を示す正断面図、図10は図9のX−X線矢視断面図である。
まず、図9及び図10に示すように、ミラーベース20の取付ボス部21にクリップ30を取付ける。すなわち、クリップ本体部31の係合凹部35(図6参照。)内にミラーベース20の取付ボス部21を相対的に嵌入する。このとき、取付ボス部21の係止爪22の傾斜面22bがクリップ本体部31の前側壁部32に当接しかつ摺動しながら係入していくことにより、その前側壁部32が撓み変形されていく(図6中、二点鎖線32参照。)。そして、取付ボス部21の先端部(下端部)が下側壁部34に当接又は近接するとほとんど同時に、係止爪22と係止孔36が対応すると、クリップ本体部31の前側壁部32が弾性復元し、取付ボス部21の係止爪22が前側壁部32の係止孔36に係合する。これにより、係止爪22の係止面22aと係止孔36の上側の内側面とが対面することにより、取付ボス部21にクリップ本体部31に抜止めされる。また、係止爪22の左右両側面と係止孔36の左右両内側面とが対面することにより、取付ボス部21に対してクリップ本体部31が左右方向(図9において左右方向)に関して位置決めされる。また、取付ボス部21の先端面(下端面)と下側壁部34の上面とが対面することにより、取付ボス部21に対するクリップ本体部31の嵌合量が規定される(図10参照。)。これにより、クリップ本体部31の両側壁部32,33の対向方向への相対的な撓み変形がベース支持部材10の取付ボス部21により規制される。
【0016】
続いて、ミラーベース20に取付けたクリップ30(図9及び図10参照。)を、ベース支持部材10の取付孔11内に押付ける。このとき、クリップ30の両係止脚部38が、取付孔11の左右両内縁に当接しかつ摺動していくことにより、クリップ本体部31側へ撓み変形されていく(図4中、二点鎖線38参照。)。そして、両係止脚部38の係止段縁38aが取付孔11を通過すると、両係止脚部38が弾性復元することにより、両係止脚部38の係止段縁38aが取付孔11の左右両内縁に係合する(図1参照。)。これにより、ベース支持部材10にクリップ30が抜止めされる。また、クリップ本体部31の両側壁部32,33の外側面が取付孔11の前後両内側面に近接又は当接する(図10参照。)。上記したようにして、ベース支持部材10にミラーベース20がクリップ30を用いて取付けられる。なお、ベース支持部材10とミラーベース20との間には、図示しないガスケット、スポンジ材等の弾性部材が介在されるようになっている。
【0017】
上記したクリップ30によると、ミラーベース20に従来必要とされたクリップ取付部を形成する必要がなくなることから、ベース支持部材10とミラーベース20との間の取付隙間S(図1及び図2参照。)を低減することができる。また、ベース支持部材10に対するミラーベース20の取付状態において、クリップ本体部31の前後両側壁部32,33の外側面がベース支持部材10の取付孔11の前後両内側面に近接又は当接するとともに、その両側壁部32,33の対向方向への相対的な撓み変形がミラーベース20の取付ボス部21により規制される(図2参照。)。このため、ベース支持部材10の取付孔11に対するクリップ本体部31の両側部の延びる方向すなわち左右方向に交差する方向である前後方向(図2において左右方向)へのクリップ30のがたつきを防止あるいは低減することができる。
【0018】
また、前記クリップ30を用いた取付構造によると、ベース支持部材10とミラーベース20との間の取付隙間Sを低減することのできるクリップ30を用いた取付構造を提供することができる(図1及び図2参照。)。
【0019】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明のクリップ30及びクリップ30を用いた取付構造は、ミラーベース20の他、ガーニッシュ、トリム、モール等の内装部品、装飾部品等の取付けに適用することができる。また、本発明のクリップ30及びクリップ30を用いた取付構造は、自動車等の車両用に限らず、その他の各種部品の取付けにも適用することができる。また、クリップ30は、長孔状の取付孔11に限らず、丸孔状の取付孔11に適用可能に構成することができる。また、係止脚部38は、少なくとも一方に設けられておればよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例にかかるクリップを用いた取付構造を示す正断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】クリップを用いた取付構造にかかる構成部品を示す分解斜視図である。
【図4】クリップを示す正面図である。
【図5】クリップを示す側面図である。
【図6】図4のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】クリップを示す下面図である。
【図8】クリップを示す斜視図である。
【図9】クリップをミラーベースに取付けた状態を示す正断面図である。
【図10】図9のX−X線矢視断面図である。
【図11】従来例にかかるクリップを用いた取付構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ベース支持部材(取付部材)
11 取付孔
20 ミラーベース(被取付部材)
21 取付ボス部(取付凸部)
30 クリップ
31 クリップ本体部
32 前側壁部
33 後側壁部
35 係合凹部
38 係止脚部(抜止部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を有する取付部材に対して、前記取付孔に対応する取付凸部を有する被取付部材を取付けるクリップであって、
前記取付部材の取付孔内に嵌合可能に形成されたクリップ本体部と、
前記クリップ本体部に設けられかつ前記被取付部材の取付凸部に外嵌可能な係合凹部と、
前記クリップ本体部の両側部のうちの少なくとも一側部に設けられ、前記取付部材の取付孔に係合する抜止部と
を備え、
前記クリップ本体部における前記両側部に延びる方向に交差する方向でかつ前記係合凹部を間に対向する両側壁部の外側面を前記取付孔の内側面に近接又は当接可能に形成するとともに、その両側壁部の対向方向への撓み変形を前記係合凹部内に係合された前記取付凸部により規制する構成とした
ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
取付孔を有する取付部材に対して、前記取付孔に対応する取付凸部を有する被取付部材を、請求項1に記載のクリップにより取付けたことを特徴とするクリップを用いた取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−32040(P2008−32040A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203152(P2006−203152)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000151597)株式会社東郷製作所 (78)
【Fターム(参考)】