説明

クリーム状洗浄剤組成物

【課題】
水となじみ易く、起泡性に優れ、幅広い温度域での形態安定性を有し、保存安定性に優れた、N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩を主成分とするクリーム状洗浄剤組成物を提供することである。
【解決手段】
N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩と、N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/またはその塩と、多価アルコールと、水とを特定の配合比とpHで含有させることにより、目的とするクリーム状洗浄剤組成物が得られることを見出した。
(N−長鎖アシルグルタミン酸ジブチルアミド系ゲル化剤とN−[3−アルキル(12−18)オキシ−2−ヒドロキシプロピル] −L−アルギニン塩酸塩と高級アルコールと水とを含有する参考処方例あり)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩、N−アシル中性アミノ酸及び/又はその塩、多価アルコール、水を特定の配合比とpHで含有するクリーム状洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
N−長鎖アシル酸性アミノ酸塩は一般的に使用されているアルキル硫酸塩やアルキルスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤に比較して、頭皮や皮膚に対する刺激が少ない、毛髪及び皮膚洗浄剤として有用な素材であることが、古くから知られていた。
【0003】
一方、洗顔市場では、溶け崩れの生じ易い固形石鹸や、液だれを生じ易い液体洗浄剤に代わって、チューブから適時必要量を取り出し可能で、水に溶解し易く、清潔さを有するクリーム状洗浄剤への期待が高まっていた。
【0004】
そして、N−長鎖アシル酸性アミノ酸塩を主成分とするクリーム状洗浄剤を調製する試みが、種々なされてきた。
【0005】
N−長鎖アシルグルタミン酸塩、多価アルコール、水を必須成分として洗顔フォーム等のクリーム状洗浄剤組成物を得られることが知られている(特許文献1)。しかし、このようなクリーム状洗浄剤組成物は泡量が少なく、ぬるつき感があるうえ、低温で硬くなり、高温で分離しやすいなどの問題を有しており、必ずしも使用感、形態安定性に優れたクリーム状洗浄剤組成物とは言えなかった。
【0006】
N−長鎖アシルグルタミン酸塩の中でも、カリウム塩を用いると、トリエタノールアミン塩、ナトリウム塩を用いた場合に比較して、室温及び低温において柔らかく、泡立ち、水との馴染みに優れ、さっぱりとした使用感のクリーム状洗浄剤組成物が得られることが知られている(非特許文献1)。しかし、このようなクリーム状洗浄剤組成物は、組成物表面に液体が滲み出したような状態(離水)が生じる、高温で軟らかくなりすぎてだれ落ちる、さらに、一度高温条件に晒され、その後温度が下がると、結晶粒が発生するという問題を有しており、必ずしも保存安定性、形態安定性に優れたクリーム状洗浄剤組成物は得られてはいなかった。
【0007】
N−長鎖アシル酸性アミノ酸塩配合クリーム状洗浄剤組成物の、温度による粘度変化を抑えて形態安定性を改善する取り組みとして、N−長鎖アシル酸性アミノ酸と高重合ポリ酸化エチレンを併用する例が報告されている(特許文献2)。しかし、離水の問題、結晶粒発生の問題は解決されてはおらず、満足できる形態安定クリーム状洗浄剤組成物は得られていなかった
【0008】
水となじみ易く、起泡性に優れ、幅広い温度域での形態安定性を有し、保存安定性に優れた、N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩を主成分とするクリーム状洗浄剤組成物が切に望まれていた。
【特許文献1】特開昭62−124200号公報
【特許文献2】特許公報 平4−73479号
【非特許文献1】金子大介、川崎由明、アミノ酸系界面活性剤の特性と応用、FRAGRANCE JOURNAL 2 43−48(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水となじみ易く、起泡性に優れ、幅広い温度域での形態安定性を有し、保存安定性に優れた、N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩を主成分とするクリーム状洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩と、N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/またはその塩と、多価アルコールと、水とを特定の配合比とpHで含有させることにより、目的とするクリーム状洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は以下の態様を含む。
〔1〕 (成分A)N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩、(成分B)N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/又はその塩、(成分C)多価アルコール、(成分D)水を含有し、(成分A)と(成分B)の重量比が66:34〜84:16であり、[(成分A)+(成分B)]と(成分C)の重量比が25:75〜58:42であり、[(成分A)+(成分B)+(成分C)]と(成分D)の重量比が48:52〜66:34であり、40℃でのpHが5.6〜5.9の範囲であることを特徴とするクリーム状洗浄剤組成物。
〔2〕 該(成分A)の長鎖アシル基がミリスチン酸より誘導されるアシル基であることを特徴とする[1]に記載のクリーム状洗浄剤組成物。
〔3〕 該(成分B)の中性アミノ酸がアラニン、又はスレオニンであることを特徴とする[1]〜[2]の何れかに記載のクリーム状洗浄剤組成物。
〔4〕 該(成分B)の塩がナトリウム塩、又はトリエタノールアミン塩であることを特長とする[1]〜[3]の何れかに記載のクリーム状洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩と、N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/またはその塩と、多価アルコールと、水とを特定の配合比とpHで含有させることにより、水となじみ易く、起泡性に優れ、幅広い温度域での形態安定性を有し、保存安定性に優れた、N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩を主成分とするクリーム状洗浄剤組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における“クリーム状”とは、「白みが強く、柔らかく滑らかでつやのある、ハンドクリーム状の外観を有し、チューブやジャーに充填して指先で容易に掬い上げることができ、だれ落ちや著しい糸引きを生じない形状」のことである。本発明における“離水”とは、「組成物表面に液体が滲み出して見える状態」のことである。本発明における“形態安定”とは25℃条件下では「組成物に離水が無く柔らかなクリーム状を保っている状態」のことであり、40℃条件下では「組成物に離水が無く、充填したチューブからのダレ落ちがなく、柔らかなクリーム状を保っている状態」のことである。
【0014】
本発明に用いられる(成分A)N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩の長鎖アシル基は、炭素数8〜22の直鎖または分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基を使用できる。炭素原子数が8未満のアシル基では、洗浄剤としての泡立ち、汚れ落ちが不十分になる場合があり、炭素原子数が22を超える場合には洗浄剤組成物への溶解性が低く、組成物の滑らかさを損なう場合がある。ここでいう脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、等が挙げられる。これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。特に泡立ち、泡質が良好な形態安定クリーム状洗浄剤組成物を得るという観点から、ミリスチン酸が特に好ましい。
【0015】
本発明に用いられる(成分A)N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩は、公知の方法、例えば、水酸化カリウムを使用したアルカリ条件下、グルタミン酸と脂肪酸から定法により変換された脂肪酸ハライドとのショッテンバウマン反応により得ることができる。
【0016】
本発明に用いられる(成分B)N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/またはその塩の中性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、セリン、プロリン等が使用できる。グリシン以外の光学活性中心を有するアミノ酸の場合はL体、D体、又はDL体の何れを使用しても構わない。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記郡から選ばれる2種類以上を混合して使用しても構わない。安定性及びアシル化後の素材の使用感が良く、組成物の見た目が滑らかであるという観点でアラニン及びスレオニンが好ましく、アラニンがより好ましく、L−アラニンが特に好ましい。
【0017】
本発明に用いられる(成分B)N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/またはその塩の長鎖アシル基は、炭素数8〜22の直鎖または分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基を使用できる、炭素原子数が8未満のアシル基では、洗浄剤としての泡立ち、汚れ落ちが不十分になる場合があり、炭素原子数が22を超える場合には洗浄剤組成物への溶解性が低く、組成物の滑らかさを損なう場合がある。ここでいう脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、等が挙げられる。これらは1種類又は2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。泡立ちの速さ、泡質が良好であるという観点からヤシ油脂肪酸が特に好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(成分B)N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/又はその塩に使用される塩としては、特に制限は無いが、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩が挙げられる。これらのうち1種類以上を使用しても良いし、上記郡中から2種類以上を混合して使用しても構わない。入手のし易さ、取り扱いの容易さ、幅広い温度域で安定した形態安定性と保存安定性を有する組成物が得られるという観点から、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩が好ましく、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0019】
本発明に用いられる(成分B)N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/またはその塩は、公知の方法、例えば、アルカリ条件下、中性アミノ酸と脂肪酸から定法により変換された脂肪酸ハライドとのショッテンバウマン反応により得ることができる。
【0020】
(成分C)多価アルコールとしては、特に制限は無いが、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記群中から2種類以上を混合して使用しても構わない。調製される組成物が柔らかで好ましく、さらに使用時における水のなじみに優れるという観点から、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましく、ブチレングリコールが特に好ましい。
【0021】
本発明で使用される(成分D)水は、一般的に洗浄剤や、化粧料に使用される程度の純度であれば、特に制限はされない。具体的には、イオン交換水、井戸水、天然水、地下水、市水、硬水、軟水等が使用できる。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記郡中から2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。共雑物による形態安定性や保存安定性に与える影響が少ないという観点から、イオン交換水が特に好ましい。
【0022】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物のpHは40℃にした際に、5.6〜5.9の範囲が選ばれる。pH5.6未満の場合では未中和のアシルグルタミン酸及びアシルアラニンが増加するため、状態が硬くなるなど25〜40℃の温度域での形態安定性が著しく低下する場合があり、pH5.9を超えると、アシルグルタミン酸塩、アシルアラニン塩の水への溶解性が高くなり、状態が柔らかくなり過ぎるため、25℃における形態安定性以外は低下してしまう場合がある。組成物の水へのなじみを低下させず、クリーム状の剤型を安定して維持しうるという観点で、好ましくはpH5.8である。pHを調整するための酸としては、特に制限は無いが、具体的には、クエン酸、乳酸、酢酸、りんご酸、酒石酸、グリコール酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸等の酸性アミノ酸、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸等が挙げられる。pH緩衝機能があり、他成分によりpH変動し難い、入手が容易という観点で、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸、燐酸が好ましく、クエン酸が特に好ましい。
【0023】
本発明の(成分A)と(成分B)の重量比は66:34〜84:16の範囲から選ばれる。(A成分)が66より少ない場合は、離水するなど、25〜40℃の温度域での形態安定性が低下してしまう傾向になる(A成分)が84%より多い場合は、結晶粒が発生するなど保存安定性が低下し、使用時に水となじみ難くなり、起泡性が低下してしまう傾向になる。水へのなじみ易さを有し、柔らかなクリーム状組成物を提供できるという観点から、(成分A)と(成分B)の重量比は72:28〜80:20が好ましく、74:26〜80:20が更に好ましく、75:25〜80:20が特に好ましい。
【0024】
本発明の[(成分A)+(成分B)]と(成分C)の重量比は25:75〜58:42の範囲から選ばれる。 [(成分A)+(成分B)]が25より少ない場合は、組成物が液状となるなど25〜40℃の温度域での形態安定性が著しく低下する傾向になる。[(成分A)+(成分B)]が58より多い場合では、柔らかなクリーム状を呈さないなど、25〜40℃の温度域での形態安定性が低下する傾向になる。優れたクリーム状の形態が得られるという観点から、[(成分A)+(成分B)]と(成分C)の重量比は31:69〜48:52が好ましく32:68〜40:60が特に好ましい。
【0025】
本発明の[(成分A)+(成分B)+(成分C)]と(成分D)の重量比は48:52〜66:34の範囲から選ばれる。[(成分A)+(成分B)+(成分C)]が48より少ない場合は、離水が発生し易く、クリーム状を呈さないなど、40℃では形態安定性が著しく低下する傾向になる。[(成分A)+(成分B)+(成分C)]が66を超える場合は、組成物が柔らかなクリーム状を呈さないなど、25〜40℃における形態安定性が低下する傾向になる。優れたクリーム状の形態が得られるという観点から、[(成分A)+(成分B)+(成分C)]と(成分D)の重量比は52:48〜65:35が好ましく、58:42〜63:37が特に好ましい。
【0026】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物の製造方法は、目的とするクリーム状洗浄剤組成物が得られさえすれば特に制限はないが、例えば次のような方法により製造することができる。成分A,B,C,Dを80℃程度の溶解温度で攪拌溶解させた後、40℃まで攪拌徐冷して、同温度で酸を用いて所定のpHに合わせ、25℃まで攪拌冷却を行うことにより得られる。
【0027】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物には、上記の成分に加え、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常化粧品、医薬部外品に使用される各種添加剤を当業者が選択し添加することができる。その種類は特に限定されないが、例えば、化粧料用油性原料、シリコーン化合物、有機塩、加水分解タンパク、アルコール類、抽出物、アミノ酸、ビタミン、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、制汗剤、顔料、色素、参加染料、パール化剤、湿潤剤、保湿剤、界面活性剤、無機粉体、有機粉体、水溶性高分子、等が挙げられる。
【0028】
本発明における“クリーム状洗浄剤組成物”は、狭義の意味においては、成分(A)〜(D)のみからなる組成物のことであり、一方、広義の意味においては、成分(A)〜(D)の必須成分の他、本発明の効果を阻害しない程度に含有する成分をも含む組成物のことである。後者の場合には、化粧料に相当するものであり、具体的には、クリーム状メイク落とし、クリーム状身体洗浄料、洗顔フォーム等の皮膚洗浄料;クリーム状ヘアシャンプー等の毛髪洗浄料に相当する。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例により本発明は限定されるものではない。
【0030】
〔評価方法〕
以下、順次評価方法について説明する。
(形態安定性試験(25℃))
本発明の組成物を25℃において、目視及び触診により、以下の判定基準により判定した。
◎ 全体的に柔らかで、離水、分離のない表面のきれいなクリーム状
○ 離水、分離のないクリーム状
△ 僅かな離水が認められるクリーム状
× 液状または分離している、或いは組成物が硬すぎ、柔らかなクリーム状と呼べない
【0031】
(形態安定性試験(40℃))
本発明の組成物を口径5mmのチューブ容器及び内径2.5mm高さ4cmのガラスバイアル瓶に充填して40℃恒温槽に一週間保存し、取り出した直後の組成物について、以下の判定基準に基づき、目視及び触診により判別した。
◎ 全体的に柔らかで、離水、分離のない表面のきれいなクリーム状、チューブからだれ落ちず、掌に取り出しても流動性無し。
○ 離水、分離のないクリーム状、チューブからだれ落ちないが、掌に取り出すとわずかな流動性がある。
△ 僅かな離水が認められるクリーム状、或いはチューブからのだれ落ちがある。
× 離水している、或いは液状である
【0032】
(保存安定性試験)
本発明の組成物を、吐出口径5mmのチューブに充填して40℃の恒温槽内に24時間保存する。取り出した直後から30℃の恒温槽内に1週間保存し、室温に戻した後、チューブから押し出した組成物を目視及び触診によって、以下の判定基準で判別した。
◎ 目視に結晶析出が見られず、触診によりざらざら感のない状態。
× 目視に結晶析出が見られるか、触診によりざらざら感が発生している状態
【0033】
(水とのなじみ試験)
本発明の組成物について、パネラー10名が30℃の水道水で手洗いを行い、組成物の水とのなじみの良さについて官能評価を行った。なお、評価は以下に示す基準による平均点を計算し、平均点が2.5以上の場合を非常に良好(◎)、2.4〜2.0の場合を良好(○)、1.9〜1.5の場合を普通(△)、1.4以下の場合を不良(×)として評価した。
3:速い
2:普通
1:遅い
【0034】
(起泡性試験)
本発明の組成物について、パネラー10名が30℃の水道水で手洗いを行い、泡量について官能評価を行った。なお、評価は以下に示す基準による平均点を計算し、平均点が2.5以上の場合を非常に良好(◎)、2.4〜2.0の場合を普通(○)、1.9〜1.5の場合を(△)、1.4以下の場合を不良(×)として評価した。
3:多い
2:普通
1:少ない
【0035】
(pH測定)
pHメータはカスタニーLAB(堀場製作所製)を用い、電極はF−22複合電極6366−10D(堀場製作所製)を用いた。あらかじめ25℃にて、JISに定められたフタル酸塩標準液と中性リン酸塩標準液を用いて、pH4.01と6.86の2点で感度調整を行い、電極感度は96%以上とした。得られた組成物を一度80℃程度まで昇温させ攪拌溶解させた後に、40℃まで攪拌冷却しつつ同温度で測定した。
【0036】
〔実施例1〜12、比較例1〜12〕
下記の表1に示す組成物(実施例1〜12)及び表2に示す組成の組成物(比較例1〜12)をそれぞれ調製し、上記評価方法で試験を行った。なお、表記載の各配合成分の量(表中の数値は)組成物全体を100とした時の重量分率(重量%)である。また、組成物のpHを調整するためにクエン酸一水和物を必要量それぞれ用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1の結果から明らかなように、(成分A)N−アシルグルタミン酸カリウム塩、(成分B)N−アシル中性アミノ酸又は/その塩、(成分C)多価アルコール、(成分D)水を含有することにより、40℃でpH5.6〜5.9の弱酸性を呈し、優れた起泡性と水とのなじみ易さを有する、25〜40℃の温度域での形態安定性を有し、40℃1週間レベルの保存安定性を有する、クリーム状洗浄剤組成物を得ることができた。(実施例1〜12)
【0040】
表2の結果から明らかなように、(成分A)と(成分B)の重量比において(成分A)が54,65の場合は、離水が発生し、25〜40℃の温度域での形態安定性が低下してしまった(比較例1〜4)。(成分A)と(成分B)の重量比において(成分A)が85,88,100の場合は、結晶粒が発生し、保存安定性が低下し、使用時に水となじみ難くなり、起泡性が低下してしまった(比較例8〜11)。また、[(成分A)+(成分B)]と(成分C)の重量比において[(成分A)+(成分B)]が22の場合、組成物が液状となり、25〜40℃の温度域での形態安定性が著しく低下してしまった(比較例12)。[(成分A)+(成分B)]と(成分C)の重量比において[(成分A)+(成分B)]が59,62の場合では、柔らかなクリーム状を呈さず、25〜40℃の温度域での形態安定性が低下してしまった(比較例1〜2)。また、[(成分A)+(成分B)+(成分C)]と(成分D)の重量比において[(成分A)+(成分B)+(成分C)]が47の場合は、離水が発生し易く、40℃の温度域での形態安定性が著しく低下してしまった(比較例4、5、6、7、9)、[(成分A)+(成分B)+(成分C)]と(成分D)の重量比において[(成分A)+(成分B)+(成分C)]が67の場合は、柔らかなクリーム状を呈さず、25〜40℃の温度域での形態安定性が低下してしまった(比較例1)。
【0041】
また、組成物のpHがpH6.0の場合、25℃における形態安定性以外は悉く低下し(比較例5)、pH5.6の場合では状態が硬くなるなど25〜40℃の温度域での形態安定性が著しく低下してしまった(比較例7)。
【0042】
(処方例1)
下記表3に示す処方のクリーム状洗浄剤組成物を常法に従って作成したところ、良好な使用感と、形態安定性、保存安定性を得ることが出来た。
【表3】

【0043】
〔参考処方例〕
以下、参考処方例を示す。
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【0047】
【表8】

【0048】
【表9】

【0049】
【表10】

【0050】
【表11】

【0051】
【表12】

【0052】
【表13】

【0053】
【表14】

【0054】
【表15】

【産業上の利用可能性】
【0055】
水となじみ易く、起泡性に優れ、幅広い温度域での形態安定性を有し、保存安定性に優れた、N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩を主成分とするクリーム状メイク落とし、クリーム状身体洗浄料、洗顔フォーム等の皮膚洗浄料やクリーム状ヘアシャンプー等の毛髪洗浄料を提供できるようになったことは極めて意義深い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)N−長鎖アシルグルタミン酸カリウム塩、(成分B)N−長鎖アシル中性アミノ酸及び/又はその塩、(成分C)多価アルコール、(成分D)水を含有し、(成分A)と(成分B)の重量比が66:34〜84:16であり、[(成分A)+(成分B)]と(成分C)の重量比が25:75〜58:42であり、[(成分A)+(成分B)+(成分C)]と(成分D)の重量比が48:52〜66:34であり、40℃でのpHが5.6〜5.9の範囲であることを特徴とするクリーム状洗浄剤組成物。
【請求項2】
該(成分A)の長鎖アシル基がミリスチン酸より誘導されるアシル基であることを特徴とする請求項1に記載のクリーム状洗浄剤組成物。
【請求項3】
該(成分B)の中性アミノ酸がアラニン、又はスレオニンであることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載のクリーム状洗浄剤組成物。
【請求項4】
該(成分B)の塩がナトリウム塩、又はトリエタノールアミン塩であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のクリーム状洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−67947(P2009−67947A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239760(P2007−239760)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】