説明

クリーンローラ装置

【課題】ロールユニットの引き出しを容易に行うことが可能であると共に、ロールユニットの差し込みの際の衝撃を軽減可能なクリーンローラ装置を提供すること。
【解決手段】ワーク2の表面に付着した塵埃を除去するクリーンローラ装置1であり、ワーク2に付着している塵埃を吸着する粘着ロール4,5と、粘着ロール4,5に付着した塵埃を転写する粘着テープロール6,7を保持するテープ保持部と、粘着ロール4,5を回転駆動させる駆動モータ29と、駆動モータ29に連結される駆動側磁気部材37と、粘着ロール4,5に連結され駆動側磁気部材37と所定の間隔をあけて対向配置される従動側磁気部材38,39とを有し、駆動モータ29の回転駆動を粘着ロール4,5へ非接触状態で伝達する伝達機構30と、駆動側磁気部材37と従動側磁気部材38,39との間で作用する磁力に対して反対向きに押し込み力を与える衝撃吸収機構33と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに付着した塵埃を除去するためのクリーンローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品が実装されるプリント基板や液晶パネル等の各種の基板あるいは基板の原材料となるシート状部材等のワークの表面に付着した塵埃を除去する除塵装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の除塵装置は、ワークの上面に当接して該上面に付着した塵埃を吸着する粘着ロールと、ワークの下面に当接して該下面に付着した塵埃を吸着する粘着ロールと、2本の粘着ロールを回転駆動するモータとを備え、ワークを搬送しながら、塵埃の除去を行っている。この除塵装置では、粘着ロールの両端部は、フレームとなる側板にスライダを取り付けることで上下方向に移動可能に支持されている。
【0004】
【特許文献1】特開2008−086939号公報(発明の詳細な説明、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クリーンローラ装置の中には、磁気板の間で生じる磁力により、モータにて発生した駆動力を粘着ロール側に伝達するタイプのものがある。このタイプのクリーンローラ装置では、粘着ロールのセットであるロールユニットを引き出すとき、磁気板同士は近接していて大きな磁力が発生しているため、その引き出しに多大な力が必要となる。そのため、ロールユニットの引き出し時には、作業者に大きな負荷が掛かる状態となっている。
【0006】
また、ロールユニットをクリーンローラ装置の所定位置に差し込む場合、所定位置内部への差し込みが進行して、磁気板同士が近接するにつれて、当該磁気板同士の間には、大きな磁力が発生する。そのため、ロールユニットの差し込みの最終段階では、磁力によってロールユニットが引き込まれてしまい、クリーンローラ装置に衝撃を及ぼさせる状態となる。その場合、作業者がロールユニットを差し込むときの勢いも付加されるので、ロールユニットが引き込まれるときの衝撃は、非常に大きくなってしまう。このような大きな衝撃がクリーンローラ装置の内部で発生すると、当接部位に大きなダメージを及ぼしてしまう。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロールユニットの引き出しを容易に行うことが可能であると共に、ロールユニットの差し込みの際の衝撃を軽減可能なクリーンローラ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ワークを搬送しながら上記ワークの表面に付着した塵埃を除去するクリーンローラ装置において、ワークの表面に付着している塵埃を吸着する粘着ロールと、粘着ロールに付着した塵埃を転写する粘着テープロールを保持するテープ保持部と、粘着ロールを回転駆動させる駆動モータと、駆動モータに連結される駆動側磁気部材と、粘着ロールに連結され駆動側磁気部材と所定の間隔をあけて対向配置される従動側磁気部材とを有し、駆動モータの回転駆動を粘着ロールへ非接触状態で伝達する伝達機構と、駆動側磁気部材と従動側磁気部材との間で作用する磁力に対して反対向きに押し出し力を与える衝撃吸収機構と、を備えるものである。
【0009】
このように構成する場合、駆動側磁気部材と従動側磁気部材との間では、磁力が作用するが、衝撃吸収機構により、その磁力に抗する力を与えることができる。そのため、粘着ロールおよび従動側磁気部材の引き抜きの際に、引き抜きの力を軽減可能となる。また、粘着ロールおよび従動側磁気部材の差し込みの際に、磁力による吸着力によって生じる衝撃を吸収可能となる。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、粘着ロールおよび従動側磁気部材は、可動フレームに対して回転自在に取り付けられ、これら粘着ロール、従動側磁気部材、および可動フレームによってロールユニットを構成すると共に、衝撃吸収機構は、駆動モータおよび駆動側磁気部材が設けられる装置本体側に取り付けられて、可動フレームを受け止めることが好ましい。
【0011】
このように構成する場合、衝撃吸収機構は、装置本体側に取り付けられているので、ロールユニットに対して押し出し力を与える状態となる。また、ロールユニットの差し込みに際して、その差し込みによる力を減衰させることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、衝撃吸収機構は、筒状部を有するシリンダと、シリンダの筒状部に対して流体の圧力によって出没されると共に、可動フレームに当接する押出ロッドと、を具備することが好ましい。
【0013】
このように構成する場合、流体の圧力により、押出ロッドを押し出す圧力を決定可能となる。それにより、ロールユニットを差し込むときに受け止める反力、およびロールユニットを引き抜くときのアシスト力を適宜に調整可能となる。
【0014】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、衝撃吸収機構は、制御部によって制御駆動されると共に、この制御部は、運転スイッチの押下によって衝撃吸収機構の作動のオンオフを切り替えることが好ましい。
【0015】
このように構成する場合、衝撃吸収機構は、制御部によってその作動が制御可能となる。ここで、運転スイッチの押下により、衝撃吸収機構のオンオフが切り替えられるので、クリーンローラ装置の運転に連動して、衝撃吸収機構を自動的に作動させることが可能となり、その利便性を向上させることが可能となる。
【0016】
さらに、本発明の他の側面は、上述の発明において、制御部は、駆動モータの駆動状態から停止スイッチを押下したときに、ロールユニットを引き抜くものと判断し、駆動モータの停止状態において所定時間が経過したときには、ロールユニットを差し込む待機状態であると判断し、ロールユニットを差し込む待機状態のときの押出ロッドを押し出す圧力は、ロールユニットを引き抜くときの押出ロッドを押し出す圧力よりも小さいことが好ましい。
【0017】
このように構成する場合、適切なタイミングで衝撃吸収機構を作動させることができる。また、ロールユニットを差し込む待機状態のときの押出ロッドを押し出す圧力は、ロールユニットを引き抜くときの押出ロッドを押し出す圧力よりも小さいため、クリーンローラ装置に衝撃を与えない構成とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、ロールユニットの引き出しを容易に行うことが可能であると共に、ロールユニットの差し込みの際の衝撃を軽減可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係るクリーンローラ装置1について、図面を参照しながら説明する。なお、粘着ロールの案内機構についての説明はクリーンローラ装置1の説明と共に行う。
【0020】
<クリーンローラ装置の概略構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るクリーンローラ装置1の概略構成を透過的に示す側面図である。図2は、図1中の要部を正面から透過的に見た場合の概略構成を説明するための図である。なお、以下の説明では、図1の左を「後(後ろ)」、図1の右を「前」、図1の上を「上」、図1の下を「下」、図1の紙面手前を「左」、図1の紙面奥を「右」とそれぞれ規定する。
【0021】
本実施の形態に係るクリーンローラ装置1は、電子部品が実装されるプリント基板や液晶パネル等の各種の基板あるいは基板の原材料となるシート状部材等のワーク2の表面に付着した塵埃を除去するための装置である。具体的には、クリーンローラ装置1は、ワーク2を図1の前方から後方に向かって搬送しながら、ワーク2の表面に付着した塵埃を除去するための装置である。
【0022】
このクリーンローラ装置1は、図1、図2に示すように、ワーク2の上面に当接して塵埃を吸着する2本の第1粘着ロール4と、ワーク2の下面に当接して塵埃を吸着する2本の第2粘着ロール5と、粘着テープが巻回されるとともに2本の第1粘着ロール4に当接して第1粘着ロール4に付着した塵埃を取り除く第1粘着テープロール6と、粘着テープが巻回されるとともに2本の第2粘着ロール5に当接して第2粘着ロール5に付着した塵埃を取り除く第2粘着テープロール7と、ワーク2を搬送する2つの搬送ローラ8と、第1粘着ロール4および第2粘着ロール5等を回転駆動するための回転駆動伝達機構部9(図2参照)とを備えている。本実施の形態に係るクリーンローラ装置1では、ワーク2の上下両面の塵埃の除去が行われる。なお、以下では、第1粘着ロール4および第2粘着ロール5をまとめて表す場合には、粘着ロール4,5と表記する。
【0023】
また、図2等に示すように、クリーンローラ装置1は、第1粘着ロール4が外周面に固定された回転軸11と、回転軸11の端部側を回転可能に支持する軸受ブロック12と、第2粘着ロール5が外周面に固定された回転軸13と、回転軸13の端部側を回転可能に支持する軸受ブロック14と、第1粘着テープロール6が外周面に固定された回転軸15と、回転軸15の端部を回転可能に支持するテープ保持部となる軸受ブロック16と、第2粘着テープロール7が外周面に固定された回転軸17と、回転軸17の端部を回転可能に支持するテープ保持部となる軸受ブロック18と、搬送ローラ8が外周面に固定された回転軸19(図1参照)と、軸受ブロック16に固定されるスライド部材20Aを介して第1粘着テープロール6を上下方向へ移動させるスライド機構21と、軸受ブロック18に固定されるスライド部材20Bを介して第2粘着テープロール7を上下方向へ移動させるスライド機構22と、左右方向(紙面手前奥方向)の両面側に配置される本体フレーム23と、本体フレーム23に対して出し入れ可能な可動フレーム24(図1参照)とを備えている。
【0024】
粘着ロール4,5は、表面に粘着力を有するシリコンゴム等のゴム部材によって形成されている。第1粘着ロール4と第2粘着ロール5とは上下方向で対向するように配置されており、第1粘着ロール4と第2粘着ロール5との間をワーク2が通過するように構成されている。図1に示すように、本実施の形態では、2本の第1粘着ロール4が所定の間隔をあけた状態で前後方向に隣接するように配置されている。同様に、2本の第2粘着ロール5が前後方向に所定の間隔をあけた状態で隣接するように配置されている。
【0025】
第1粘着ロール4の回転軸11を支持する軸受ブロック12、および、第2粘着ロール5の回転軸13を支持する軸受ブロック14は、図2に示すように、側面側に配置されている。軸受ブロック14は、可動フレーム24に固定されている。軸受ブロック12は、図2に示すように、圧縮コイルバネ25を介して軸受ブロック14に連結されている。また、軸受ブロック12は、後述のリニアガイド36(図4等参照)に案内されて上下方向に移動可能となっている。軸受ブロック12の詳細な構成については後述する。
【0026】
第1粘着テープロール6および第2粘着テープロール7には、粘着テープの粘着面が表側を向くように粘着テープが巻回されている。第1粘着テープロール6、第2粘着テープロール7はそれぞれ、第1粘着ロール4、第2粘着ロール5に当接して、第1粘着ロール4、第2粘着ロール5に付着した塵埃を取り除くように構成されており、第1粘着テープロール6、第2粘着テープロール7の粘着力が低下すると、粘着テープが順次剥がされていく。
【0027】
第1粘着テープロール6は第1粘着ロール4よりも上側に配置され、第2粘着テープロール7は第2粘着ロール5よりも下側に配置されている。また、前後方向では、2本の第1粘着ロール4の軸中心間の略中心位置と第1粘着テープロール6の軸中心とが一致するように、第1粘着テープロール6が配置され、2本の第2粘着ロール5の軸中心間の略中心位置と第2粘着テープロール7の軸中心とが一致するように、第2粘着テープロール7が配置されている。
【0028】
軸受ブロック16,18は、左右方向の両面側に配置されている。また、スライド機構21,22も左右方向の両面側に配置されている。上述したように、軸受ブロック16には、スライド部材20Aの一端が固定され、軸受ブロック18には、スライド部材20Bの一端が固定されている。
【0029】
ワーク2の表面に付着した塵埃の除去を行う際には、スライド機構21を作動させて、スライド部材20Aを下降させる。やがて、図1に波線で示すように、第1粘着テープロール6が第1粘着ロール4に当接して、第1粘着ロール4は、第1粘着テープロール6とともに、第2粘着ロール5に当接するまで下降する。
【0030】
また、この際には、スライド機構22も作動し、スライド部材20Bが上方向へ移動する。すると、図1に波線で示すように、第2粘着テープロール7は、第2粘着ロール5に当接するまで、軸受ブロック18とともに上昇する。
【0031】
このように、第1粘着テープロール6が第1粘着ロール4に当接するとともに第1粘着ロール4が第2粘着ロール5に当接し、かつ、第2粘着テープロール7が第2粘着ロール5に当接した状態で、ワーク2の表面に付着した塵埃が除去される。具体的には、回転駆動伝達機構部9によって粘着ロール4,5が駆動されるとともに、図示を省略する駆動モータによって搬送ローラ8が駆動され、第1粘着ロール4と第2粘着ロール5との間をワーク2が通過することで、ワーク2の表面に付着した塵埃が除去される。このとき、第1粘着ロール4および第1粘着テープロール6は、ワーク2の厚さに応じて上方向に移動する。
【0032】
また、このときには、スライド機構21,22からの押圧力により、第1粘着テープロール6は所定の力をもって第1粘着ロール4に当接し、第2粘着テープロール7も所定の力をもって第2粘着ロール5に当接している。したがって、回転駆動伝達機構部9によって回転する第1粘着ロール4、第2粘着ロール5の回転に伴って、第1粘着テープロール6、第2粘着テープロール7も回転する。第1粘着テープロール6、第2粘着テープロール7が回転すると、第1粘着ロール4、第2粘着ロール5に付着した塵埃が第1粘着テープロール6、第2粘着テープロール7によって取り除かれる。
【0033】
一方、ワーク2の表面に付着した塵埃の除去が終了すると、スライド機構21の動作が切り替わり、スライド部材20Aが上昇する。スライド部材20Aが上昇すると、軸受ブロック16とともに第1粘着テープロール6が上昇する(図1の実線参照)。第1粘着テープロール6が上昇すると、第1粘着ロール4は、圧縮コイルバネ25の付勢力で上昇する。また、スライド機構22の動作が切り替わり、スライド部材20Bが下降する。スライド部材20Bが下降すると、軸受ブロック18とともに第2粘着テープロール7が下降する(図1の実線参照)。
【0034】
搬送ローラ8は、ワーク2の下面に当接するように、クリーンローラ装置1の前端側および後端側に配置されている。この搬送ローラ8は、上述したように、図示を省略する駆動モータに連結されており、この駆動モータによって回転駆動される。なお、搬送ローラ8の回転軸19は、本体フレーム23に固定される後述の固定フレーム32に取り付けられた軸受26によって回転可能に支持されている(図3参照)。
【0035】
回転駆動伝達機構部9は、クリーンローラ装置1の右端側に配置されている。この回転駆動伝達機構部9の構成および回転駆動伝達機構部9の周辺の構成の詳細を以下に説明する。
【0036】
<回転駆動伝達機構部およびその周辺の構成>
図3は、図2に示す回転駆動伝達機構部9の構成を上面から透過的に見た図である。図4は、図2のF−F方向から回転駆動伝達機構部9の一部の構成を透過的に見た図である。図5は、図4に示す駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39とを正面から見たときの配置関係を説明するための図である。図6は、図5のG−G方向から見たときの配置関係を示す図である。図7は、図4に示す軸受ブロック12およびリニアブッシュ42を抜き出して示す図である。なお、図4では、第2粘着ロール5等の図示が省略されている。
【0037】
回転駆動伝達機構部9は、図3、図4に示すように、粘着ロール4,5を回転駆動させる駆動モータ29と、駆動モータ29の動力を粘着ロール4,5へ伝達する伝達機構30と、本体フレーム23に固定される固定フレーム32と可動フレーム24との間に配置される2個の衝撃吸収機構33とを備えている。また、クリーンローラ装置1は、回転駆動伝達機構部9の周辺の構成として、回転軸11の軸方向に直交する上下方向へ第1粘着ロール4を案内するためのリニアガイド36を備えている。
【0038】
可動フレーム24には、図4に示すように、軸受ブロック12,14の一部が配置される略U形状の配置溝24aが形成されている。本実施の形態では、第1粘着ロール4、第2粘着ロール5の前後方向の配置間隔に応じて2つの配置溝24aが形成されている。また、配置溝24aが形成された部分の両側は、上方向へ突出する突出部24bとなっている。すなわち、突出部24bは合計3つ形成されていることになる。
【0039】
駆動モータ29は、図3に示すように、出力軸29aが粘着ロール4側に向かって突出するように、固定フレーム32に固定されている。
【0040】
伝達機構30は、駆動モータ29に連結される駆動側磁気部材としての駆動側磁気板37と、第1粘着ロール4に連結される第1従動側磁気部材としての第1従動側磁気板38と、第2粘着ロール5に連結される第2従動側磁気部材としての第2従動側磁気板39とから構成されている(図3〜図5参照)。この伝達機構30では、第1従動側磁気板38または第2従動側磁気板39と駆動側磁気板37との間に生じる磁力(磁気的な吸引力)によって、駆動側磁気板37側の動力が第1従動側磁気板38側および第2従動側磁気板39側へ伝達される。なお、以下では、第1従動側磁気板38と第2従動側磁気板39とをまとめて表す場合には、従動側磁気板38,39と表記する。
【0041】
本実施の形態では、駆動側磁気板37は、駆動モータ29の出力軸29aの左端部に固定されている。また、第1従動側磁気板38は、第1粘着ロール4の回転軸11の右端のそれぞれに固定され、第2従動側磁気板39は、第2粘着ロール5の回転軸13の右端のそれぞれに固定されている。すなわち、伝達機構30は、1枚の駆動側磁気板37と2枚の第1従動側磁気板38と2枚の第2従動側磁気板39とから構成されている。
【0042】
駆動側磁気板37は、出力軸29aに固定するための鍔部を有する略円板状に形成されている。この駆動側磁気板37は、磁極が形成された駆動側着磁部37aを備えている。
【0043】
駆動側着磁部37aは、図5に示すように、駆動側磁気板37の回転中心を中心とする円環状に形成されている。具体的には、駆動側着磁部37aは、駆動側磁気板37の径方向の端部側から中心に向かって所定の範囲に配置されるように形成されている。また、駆動側着磁部37aは、駆動側磁気板37の左端側(図5の紙面奥側)に配置されている。本実施の形態では、駆動側着磁部37aには、たとえば、インボリュート曲線状に形成されたS極とN極が円周方向に沿って交互に着磁されている。なお、駆動側着磁部37aは、磁性部材からなる駆動側磁気板37の表面に直接、着磁されることで形成されても良いし、着磁された板状部材を駆動側磁気板37の左端側の面に固定して、駆動側着磁部37aとしても良い。
【0044】
第1従動側磁気板38は、回転軸11に固定するための鍔部を有する略円板状に形成されている。また、第1従動側磁気板38は、駆動側磁気板37よりも径の小さな略円板状に形成されている。本実施の形態では、たとえば、第1従動側磁気板38の径は、駆動側磁気板37の径の約4割〜5割程度となっている。また、第1従動側磁気板38は、磁極が形成された第1従動側着磁部38aを備えている。
【0045】
第1従動側着磁部38aは、図5に示すように、第1従動側磁気板38の回転中心を中心とするとともに駆動側着磁部37aよりも径が小さな円環状に形成されている。具体的には、第1従動側着磁部38aは、第1従動側磁気板38の右端側の面の、回転軸11が固定される固定孔38bを除く部分のほぼ全域に配置されるように形成されている。なお、第1従動側着磁部38aは、磁性部材からなる第1従動側磁気板38の表面に直接、着磁されることで形成されても良いし、着磁された板状部材を第1従動側磁気板38の右面に固定して、第1従動側着磁部38aとしても良い。
【0046】
本実施の形態では、第1従動側着磁部38aには、後述のように、駆動側磁気板37の回転に伴って駆動側磁気板37の回転方向と逆方向へ回転する第1従動側磁気板38が円滑に回転するように着磁されている。具体的には、第1従動側着磁部38aには、たとえば、流線形状に形成されたS極とN極が円周方向に沿って交互に着磁されている。
【0047】
第2従動側磁気板39は、第1従動側磁気板38とほぼ同様に形成されている。すなわち、第2従動側磁気板39は、回転軸13に固定するための鍔部を有する略円板状に形成されるとともに、駆動側磁気板37よりも径の小さな略円板状に形成されている。本実施の形態では、たとえば、第2従動側磁気板39の径は、第1従動側磁気板38の径と同じになっている。また、第2従動側磁気板39は、磁極が形成された第2従動側着磁部39aを備えている。なお、以下では、第1従動側着磁部38aと第2従動側着磁部39aとをまとめて表す場合には、従動側着磁部38a,39aと表記する。
【0048】
第2従動側着磁部39aは、第1従動側着磁部38aと同様に、第2従動側磁気板39の回転中心を中心とするとともに駆動側着磁部37aよりも径が小さな円環状に形成されている。具体的には、第2従動側着磁部39aは、第2従動側磁気板39の右端側の面の、回転軸13が固定される固定孔39bを除く部分のほぼ全域に配置されるように形成されている。なお、第2従動側着磁部39aは、磁性部材からなる第2従動側磁気板39の表面に直接、着磁されることで形成されても良いし、着磁された板状部材を第2従動側磁気板39の右端側の面に固定して、第2従動側着磁部39aとしても良い。
【0049】
本実施の形態では、第2従動側着磁部39aには、後述のように、駆動側磁気板37の回転に伴って駆動側磁気板37の回転方向と同方向へ回転する第2従動側磁気板39が円滑に回転するように着磁されている。具体的には、第2従動側着磁部39aには、たとえば、インボリュート曲線状に形成されたS極とN極が円周方向に沿って交互に着磁されている。また、第1従動側磁気板38と第2従動側磁気板39とが同じ回転数で回転するように、第2従動側着磁部39aに磁極が形成されている。
【0050】
第1従動側磁気板38および第2従動側磁気板39と駆動側磁気板37とは、所定の隙間を介して(すなわち、所定の間隔をあけて)互いに対向するように配置されている(図6参照)。具体的には、第1従動側磁気板38と駆動側磁気板37とは、第1従動側磁気板38と駆動側磁気板37との対向方向(すなわち、左右方向)から見たとき、第1従動側着磁部38aの一部と駆動側着磁部37aの一部とが重なるように配置され、第2従動側磁気板39と駆動側磁気板37とは、左右方向から見たとき、第2従動側着磁部39aの一部と駆動側着磁部37aの一部とが重なるように配置されている。
【0051】
具体的には、左右方向から見たとき、第1従動側磁気板38の回転中心は駆動側着磁部37aの径方向外方に配置されており、第1従動側磁気板38は、第1従動側着磁部38aが駆動側着磁部37aの径方向外側から駆動側着磁部37aに重なるように配置されている。すなわち、第1従動側磁気板38は、第1従動側着磁部38aの外周が駆動側着磁部37aの内周に近づく方向で第1従動側着磁部38aと駆動側着磁部37aとが重なるように配置されている。そのため、第1従動側磁気板38は、駆動側磁気板37と逆方向へ回転する。また、本実施の形態では、第1粘着ロール4が第2粘着ロール5に当接した状態(図5の実線で示す状態)で、第1従動側着磁部38aの外周と駆動側着磁部37aの内周とがほぼ重なっている。
【0052】
また、左右方向から見たとき、第2従動側磁気板39の回転中心は駆動側着磁部37aの径方向内方に配置されており、第2従動側磁気板39は、第2従動側着磁部39aが駆動側着磁部37aの径方向内側から駆動側着磁部37aに重なるように配置されている。すなわち、第2従動側磁気板39は、第2従動側着磁部39aの外周が駆動側着磁部37aの外周に近づく方向で第2従動側着磁部39aと駆動側着磁部37aとが重なるように配置されている。そのため、第2従動側磁気板39は、駆動側磁気板37と同方向へ回転する。本実施の形態では、第1粘着ロール4が第2粘着ロール5に当接した状態で、第2従動側着磁部39aの外周と駆動側着磁部37aの外周とがほぼ重なっている。
【0053】
また、本実施の形態では、図4、図5に示すように、2枚の第1従動側磁気板38および2枚の第2従動側磁気板39と、1枚の駆動側磁気板37とが互いに対向するように配置されている。
【0054】
具体的には、2枚の第1従動側磁気板38は、左右方向から見たとき、駆動側磁気板37の斜め上側に配置された状態で、第1従動側磁気板38の一部分が1枚の駆動側磁気板37に対向するように配置されている。また、2枚の第2従動側磁気板39は、左右方向から見たとき、第2従動側磁気板39の上下方向の中心位置と駆動側磁気板37の上下方向の中心位置とがほぼ一致するように、かつ、第2従動側磁気板39の全部が1枚の駆動側磁気板37に対向するように配置されている。本実施の形態では、左右方向から見たとき、2枚の第2従動側磁気板39が1枚の駆動側磁気板37に内接するように配置されている。
【0055】
さらに、本実施の形態では、上述のように、ワーク2の表面の塵埃を除去する際に、ワーク2の厚さに応じて第1粘着ロール4が上方向に移動した状態、あるいは、一時的に第1粘着ロール4を図5における上方向へ退避させた状態(図5の二点鎖線で示す状態)でも、左右方向から見たとき、第1従動側着磁部38aの一部と駆動側着磁部37aの一部とが重なっているように、第1従動側磁気板38と駆動側磁気板37とが対向配置されている。具体的には、ワーク2の厚さに応じて第1粘着ロール4が図5における上方向に移動した状態あるいは一時的に第1粘着ロール4を図5における上方向へ退避させた状態で第1従動側着磁部38aと駆動側着磁部37aとの間に生じる磁力が、第1粘着ロール4が第2粘着ロール5に当接した状態で第1従動側着磁部38aと駆動側着磁部37aとの間に生じる磁力よりも大きく低下しないように第1従動側磁気板38と駆動側磁気板37とが対向配置されている。
【0056】
図4に示すように、リニアガイド36は、第1粘着ロール4の前後方向両側に配置されるリニアシャフト41と、リニアシャフト41が挿通されることで図4における上下方向へ第1粘着ロール4を案内するリニアブッシュ42とを備えている。
【0057】
リニアシャフト41は、たとえば、円柱状に形成された金属製のシャフトであり、可動フレーム24の突出部24bに図4における上下方向を長手方向として固定されている。本実施の形態では、3本のリニアシャフト41が可動フレーム24に固定されている。
【0058】
リニアブッシュ42は、たとえば、円筒状に形成された金属部材であり、内周側にボールを有するいわゆるリニアボールベアリングである。このリニアブッシュ42の内周側には、リニアシャフト41が挿通されている。なお、リニアブッシュ42は、潤滑性を有する金属部材によって円筒状に形成された摺動ベアリングであっても良い。
【0059】
ここで、軸受ブロック12には、図7に示すように、リニアブッシュ42を固定するための固定部12aが形成されている。この固定部12aは、図7における前後方向(図7における左右方向)の両面から前後方向外側へそれぞれ突出するように形成されている。また、一方の面に形成される固定部12aは上端側に形成され、他方の面に形成される固定部12aは下端側に形成されている。具体的には、図4に示すように、2本の第1粘着ロール4の間の1本のリニアシャフト41が2個のリニアブッシュ42に挿通した状態で配置されるように、固定部12aが形成されている。そのため、2本の第1粘着ロール4の間には、1本のリニアシャフト41が挿通された2個のリニアブッシュ42が上下方向に配置される。また、前端側あるいは後端側には、1本のリニアシャフト41が挿通された1個のリニアブッシュ42が配置される。
【0060】
上述のように、ワーク2の表面の塵埃を除去する際には、第1粘着ロール4は、ワーク2の厚さに応じて上下方向に移動する。また、第1粘着テープロール6の昇降に伴って、第1粘着ロール4は上下方向に移動する。第1粘着ロール4が上下動する際に、リニアガイド36は、第1粘着ロール4および軸受ブロック12を上下方向へ案内する。
【0061】
ここで、突出部24bの図4における上端部近傍および上下方向における略中央部には、右方に向かって略角柱状の形態で突出する当接部24c,24cが設けられている。上端部近傍に設けられる当接部24cは、上端側の固定部12aに配設されるリニアブッシュ42と当接して、該リニアブッシュ42がリニアシャフト41の上側から抜けるのを防止している。一方、上下方向略中央部に設けられる当接部24cは、下端側の固定部12aに配設されるリニアブッシュ42と当接して、該リニアブッシュ42がリニアシャフト41の下側から抜けるのを防止している。また、軸受ブロック12と軸受ブロック14との間には軸受ブロック12を上方に向かって付勢する圧縮コイルバネ25が配設されている。第1粘着テープロール6が上昇して、第1粘着ロール4が第1粘着テープロール6との当接から解放されると、この圧縮コイルバネ25の付勢力により、第1粘着ロール4はリニアガイド36に案内されて上昇する。
【0062】
一方、第1粘着テープロール6を下降させて、第1粘着ロール4と当接させると、第1粘着ロール4はリニアガイド36によって下方向へ案内される。すると、第1粘着ロール4はワーク2の表面に当接し、その当接状態が維持される。この状態で、第1従動側磁気板38または第2従動側磁気板39と駆動側磁気板37との間に磁気的な吸引力を発生させた場合であっても、第1粘着ロール4の移動抵抗を軽減して、第1粘着ロール4を円滑に上下動させることができる。このため、ワーク2の表面の塵埃を除去する際に、ワーク2の厚さに応じて第1粘着ロール4を上下方向へ円滑に移動させることができる。
【0063】
図3および図8に示すように、2個の衝撃吸収機構33は、シリンダ33aと、押出ロッド33bとを具備している。このうち、シリンダ33aは、図示省略の筒状部を有し、エア等の流体によって、押出ロッド33bに所定の押出力を及ぼす、いわゆるアクチュエータ(ショックアブソーバまたはダンパー)である。なお、図8においては、図8(a)に可動フレーム24が押し込まれた状態が示されていて、図8(b)に可動フレーム24が引き抜かれて押出ロッド33bが飛び出している状態が示されている。なお、シリンダ33aの内部では、エア以外の流体(例えばオイル等)を用いるようにしても良い。
【0064】
本実施の形態では、図3に示すように、シリンダ33aが固定フレーム32に固定され、押出ロッド33bの先端が可動フレーム24の他端部に当接可能となっている。また、図8(a)に示すように、シリンダ33aの外周縁部は、可動フレーム24の他端部に当接可能となっていて、位置決めとしての機能を有している。以下、かかる位置決めとしての機能を有するシリンダの外周縁部を、位置決め部33cと称呼する。
【0065】
軸受ブロック12,14等を介して可動フレーム24に取り付けられる粘着ロール4,5のメンテナンスを行うため、上述のように、可動フレーム24は、本体フレーム23に対して出し入れ可能となっている。すなわち、可動フレーム24は、本体フレーム23に固定された固定フレーム32に対して出し入れ可能となっている。具体的には、クリーンローラ装置1は、可動フレーム24を引き出すための引出レールやガイドローラ等を備えており、可動フレーム24は、左端側に向かって引き出すことができるように構成されている。
【0066】
なお、可動フレーム24に対して、第1粘着ロール4、第1粘着ロール4が外周面に固定された回転軸11、回転軸11を支持する軸受ブロック12、回転軸11の端部に固定される第1従動側磁気板38、第2粘着ロール5、第2粘着ロール5が外周面に固定された回転軸13、回転軸13を支持する軸受ブロック14、回転軸13の端部に固定される第2従動側磁気板39、軸受ブロック12と軸受ブロック14との間に存在する圧縮コイルバネ25、リニアガイド36が一体的に設けられている。そのため、可動フレーム24を引き出す場合、これらも一緒に引き出される。なお、以下の説明においては、必要に応じて、可動フレーム24と共に引き出されるものを、ロールユニットRYと称呼する。また、クリーンローラ装置1のうち、ロールユニットRY以外の部分は、装置本体に対応する。
【0067】
また、図9に示すように、クリーンローラ装置1は、制御部50を具備している。制御部50は、主制御部51と、モータ制御部52と、アクチュエータ制御部53と、ダンパ制御部54と、モータドライバ55と、アクチュエータドライバ56と、ダンパドライバ57とを具備している。主制御部51は、クリーンローラ装置1の全体の制御を司る部分であり、不図示の操作パネル等からの指令、またはクリーンローラ装置1に接続される不図示のコンピュータ等からの指令が入力される。そして、入力された指令に基づいて、モータ制御部52、アクチュエータ制御部53、および/またはダンパ制御部54に対して、所定の駆動指令に関する信号を出力する。
【0068】
モータ制御部52は、不図示の速度調整ツマミの操作に基づいて、駆動モータ29に印加する電力を制御する指令を、モータドライバ55側に与える。そして、モータドライバ55では、駆動モータ29に所定の電力を与えて、駆動モータ29を回転駆動させる。なお、このモータ制御部52には、不図示のロータリエンコーダが具備するロータリセンサ82からの検出信号が供給され、駆動モータ29の回転数が、速度調整ツマミによって与えられる回転数を保持するように、フィードバック制御を行うように構成しても良い。
【0069】
なお、フィードバック制御としては、比例制御(P制御)、PI制御、PID制御を行うようにしても良い。
【0070】
また、アクチュエータ制御部53も、スライド機構21,22に与える電力を制御する指令をアクチュエータドライバ56側に与え、当該スライド機構21,22を所定の加圧力で作動させる。また、アクチュエータ制御部53には、不図示の基板検出センサ、ロータリセンサ等からの検出信号が入力され、アクチュエータ制御部53では、これらの検出信号に基づいて、スライド機構21,22の作動をそれぞれ制御する。
【0071】
また、ダンパ制御部54も、衝撃吸収機構33に与える電力を制御する指令をダンパドライバ57側に与え、当該衝撃吸収機構33を所定の加圧力で作動させる。また、ダンパ制御部54には、不図示の差込検出センサ、および不図示の操作スイッチからの信号が入力される。その操作スイッチの押下に基づいて、当該衝撃吸収機構33の作動をそれぞれ制御する。なお、差込検出センサを設けず、省略する構成を採用しても良い。
【0072】
<クリーンローラ装置の動作>
以上のように構成されたクリーンローラ装置1では、不図示の電源スイッチをオン側に切り替え、速度調整ツマミを回転させて、ワーク2の搬送速度を所望の搬送速度に設定する。この後に、不図示の運転スイッチを押下すると、運転が開始され、制御部50は駆動モータ29に対して、設定された回転速度で駆動させる指令を与える。そして、駆動モータ29が回転して、駆動側磁気板37が回転すると、従動側磁気板38,39と駆動側磁気板37との間に生じる磁力によって、従動側磁気板38,39が回転して、駆動モータ29の動力が粘着ロール4,5へ伝達される。なお、駆動側磁気板37の回転に伴って、第1従動側磁気板38は駆動側磁気板37の回転方向(具体的には、図5の時計方向)と逆方向へ回転し、第2従動側磁気板39は駆動側磁気板37の回転方向と同方向へ回転する。
【0073】
また、ワーク2の塵埃の除去を行っている際に、粘着ロール4,5あるいは搬送ローラ8等に想定外の負荷がかかって粘着ロール4,5がロックされた状態になると、従動側磁気板38,39と駆動側磁気板37との間で滑りが生じて、粘着ロール4,5への駆動モータ29から動力の伝達が遮断される。
【0074】
ところで、クリーンローラ装置1を使用していくと、粘着ロール4,5の耐用時間を経過する、粘着ローラ4,5に損傷が生じる、または従動側磁気板38,39に異物が付着する等、種々の理由により、ロールユニットRYを引き出す必要が生じる。このとき、作業者は、不図示の停止スイッチを押下する。すると、制御部50によって、駆動モータ29の駆動が停止させられると共に、衝撃吸収機構33が作動させられる。
【0075】
ここで、制御部50(主制御部51)は、不図示の差込検出センサを介して、ロールユニットRYが差し込まれていると判断する。そして、主制御部51は、ダンパ制御部54に指令を与える。そして、かかる指令に基づいて、ダンパ制御部54は、ダンパドライバ57を介して、衝撃吸収機構33を作動させる。なお、このように構成せずに、停止スイッチの押下のみで、衝撃吸収機構33を作動させるようにしても良い。
【0076】
この衝撃吸収機構33の作動により、衝撃吸収機構33の押出ロッド33bは、可動フレーム24の他端部を押し出す。その押し出しにより、ロールユニットRYの引き出しを補助する力(アシスト力)が与えられる。すなわち、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39との間には、磁力による大きな吸着力が作用しており、ロールユニットRYを引き出す場合、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39とを引き離す必要があるので、大きな引き出し力が必要となる。これに対して、押出ロッド33bが可動フレーム24の他端側を押し込むと、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39とを引き離すのが補助されるので、作業者は、ロールユニットRYを引き出す際に、より少ない力で、当該ロールユニットRYを引き出すことが可能となる。
【0077】
また、ロールユニットRYを差し込む場合、制御部50(主制御部51)は、不図示の差込検出センサを介して、ロールユニットRYが差し込まれていないと判断する。そして、主制御部51は、ダンパ制御部54に指令を与える。そして、かかる指令に基づいて、ダンパ制御部54は、ダンパドライバ57を介して、衝撃吸収機構33を作動させる。なお、このように構成せずに、クリーンローラ装置1の電源オンの状態であって、駆動モータ29の停止状態において所定時間が経過したときには、制御部50は、ロールユニットRYを差し込む待機状態であると判断し、ダンパ制御部54を介して、衝撃吸収機構33を自動的に作動させるようにしても良い。
【0078】
この衝撃吸収機構33の作動により、衝撃吸収機構33の押出ロッド33bは、所定の押圧力を受けて、図8(b)に示すように飛び出している状態となる。この状態で、作業者がロールユニットRYを差し込むと、いずれ可動フレーム24の他端部に対して、押出ロッド33bの先端が衝突する。このとき、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39とは、十分に近接した状態となるので、両者の間には、磁力による吸着力が作用し始める。
【0079】
その状態でも、さらに作業者がロールユニットRYを差し込むと、可動フレーム24の他端部は、押出ロッド33bを押し込んでいく。すると、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39とは、徐々に近接していくので、両者の間の磁力による吸着力は、徐々に増大していく。一方、押出ロッド33bを押し込んでいくと、シリンダ33aの内部でエアが圧縮されていくが、押し込みに対する反力(圧縮力)は、一定圧力で維持される。そのため、エアの圧縮力によって、磁力による吸着力が軽減される状態となる。
【0080】
このような衝撃吸収機構33の作用により、ロールユニットRYを差し込む際に、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39との間の磁力により、ロールユニットRYが急激に引き込まれ、クリーンローラ装置1に衝撃を及ぼさせる状態となるのを防止できる。
【0081】
なお、衝撃吸収機構33において押出ロッド33bを押し出す圧力は、ロールユニットRYの差し込み時と、ロールユニットRYの引き抜き時とで、同じ値に設定することも可能である。同じ値の例としては、ロールユニットRYを完全に差し込んでいるときに、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39との間で作用する磁力の略1/2とするものがある。しかしながら、押出ロッド33bを押し出す圧力は磁力の略1/2に限られず、磁力の1/4〜3/4の範囲内、または磁力と同等であって磁力を超えない範囲で種々設定可能である。また、押出ロッド33bを押し出す圧力は、磁力を僅かに超えるようにしても良い。
【0082】
また、衝撃吸収機構33において押出ロッド33bを押し出す圧力は、ロールユニットRYの差し込み時と、ロールユニットRYの引き抜き時とで、違う値に設定することも可能である。その例としては、ロールユニットRYの差し込み時に押出ロッド33bを押し出す圧力の値を、ロールユニットRYの引き抜き時に押出ロッド33bを押し出す圧力の値よりも小さくするものがあり、例えば、ロールユニットRYの引き抜き時には、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39との間で作用する磁力の略3/4、ロールユニットRYの差し込み時には、駆動側磁気板37と従動側磁気板38,39との間で作用する磁力の略1/4とするものがある。なお、かかる範囲に限られず、押出ロッド33bを押し出す圧力は、種々設定可能である。また、これとは逆に、ロールユニットRYの差し込み時に押出ロッド33bを押し出す圧力の値を、ロールユニットRYの引き抜き時に押出ロッド33bを押し出す圧力の値よりも大きくしても良い。
【0083】
<本実施の形態の主な効果>
以上のように構成されたクリーンローラ装置1は、駆動側磁気部材37と従動側磁気部材38,39との間では、磁力が作用するが、衝撃吸収機構33により、その磁力に抗する力を与えることができる。そのため、ロールユニットRYの引き抜きの際に、引き抜きの力を軽減可能となる。また、ロールユニットRYの差し込みの際に、磁力による吸着力によって生じる衝撃を吸収可能となる。
【0084】
また、本実施の形態では、衝撃吸収機構33は、クリーンローラ装置1の装置本体側に取り付けられている。そのため、ロールユニットRYに対して押し込み力を与える状態となる。そのため、衝撃吸収機構33に対して動力(駆動力)を容易に与えることが可能となる。
【0085】
さらに、本実施の形態では、衝撃吸収機構33は、シリンダ33aと、押出ロッド33bとを有している。このため、エア等の流体の圧力により、押出ロッド33bを押し出す圧力を決定可能となり、ロールユニットRYを差し込むときに受け止める反力、およびロールユニットRYを引き抜くときのアシスト力を適宜に調整可能となる。
【0086】
また、本実施の形態では、衝撃吸収機構33は、制御部50によって制御駆動されると共に、この制御部50は、運転スイッチ(図示省略)の押下によって衝撃吸収機構33の作動のオンオフを切り替えている。このため、衝撃吸収機構33は、制御部50によってその作動が制御可能となる。ここで、運転スイッチの押下により、衝撃吸収機構33のオンオフが切り替えられるので、クリーンローラ装置1の運転に連動して、衝撃吸収機構33を自動的に作動させることが可能となり、その利便性を向上させることが可能となる。
【0087】
さらに、ロールユニットRYを差し込む待機状態のときの押出ロッド33bを押し出す圧力は、ロールユニットRYを引き抜くときの押出ロッド33bを押し出す圧力よりも大きくすることも可能であり、この場合には、クリーンローラ装置1に衝撃を与えない構成とすることが可能となる。それにより、クリーンローラ装置1の耐久性が向上し、長寿命化を図ることも可能となる。
【0088】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0089】
上述の実施の形態では、横方向に2つずつの粘着ロール4,5が配設されているが、粘着ロール4,5の数は当該数に限定されるものではなく、幾つ配置する構成を採用しても良い。また、粘着ロール4および粘着ロール5の両方を備える必要はなく、ワーク2の片面洗浄のみで足りる場合、粘着ロール4または粘着ロール5のいずれか一方のみを備える構成としても良い。その場合、第1粘着テープロール6または第2粘着テープロール7のいずれか一方のみを備える構成となる。
【0090】
また、上述の実施の形態では、衝撃吸収機構33は、エア等の流体によって、押出ロッド33bを押し出す構成を採用している。しかしながら、かかるエア等の圧力を利用する構成以外に、例えばバネ等の付勢力によって、押出ロッド33bを押し出す構成を採用しても良い。なお、バネを採用する場合、ロールユニットRYは、クリーンローラ装置1の動作時においても、飛び出し易い状態となるため、ロールユニットRYの飛び出しを阻止するロック機構を採用することが好ましい。
【0091】
さらに、上述の実施の形態では、衝撃吸収機構33は、固定フレーム32に取り付けられている構成について開示されている。しかしながら、衝撃吸収機構33は、固定フレーム32ではなく、ロールユニットRYの可動フレーム24に取り付けられる構成を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るクリーンローラ装置の概略構成を透過的に示す側面図である。
【図2】図1中の要部を正面から透過的に見た場合の概略構成を説明するための図である。
【図3】図2に示す回転駆動伝達機構部の構成を上面から透過的に見た図である。
【図4】図2のF−F方向から回転駆動伝達機構部の一部の構成を透過的に見た図である。
【図5】図4に示す駆動側磁気板と従動側磁気板とを正面から見たときの配置関係を説明するための図である。
【図6】図5のG−G方向から見たときの配置関係を示す図である。
【図7】図4に示す軸受ブロックおよびリニアブッシュを抜き出して示す図である。
【図8】衝撃吸収機構の作動状態を説明するための部分的な拡大図であり、(a)は押出ロッドがシリンダ内部に押し込まれている状態を示し、(b)は押出ロッドがシリンダ内部から飛び出している状態を示している。
【図9】クリーンローラ装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0093】
1,
50…クリーンローラ装置、2…ワーク、4…第1粘着ロール(粘着ロール)、5…第2粘着ロール(粘着ロール)、11,13…回転軸、12,14,16,18…軸受、 24…可動フレーム、29…駆動モータ、30…伝達機構、33…衝撃吸収機構、33a…シリンダ、33b…押出ロッド、33c…位置決め部、36…リニアガイド、37…駆動側磁気板(駆動側磁気部材)、38…第1従動側磁気板(第1従動側磁気部材、従動側磁気部材)、39…第2従動側磁気板(第2従動側磁気部材、従動側磁気部材)、41…リニアシャフト、42…リニアブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送しながら上記ワークの表面に付着した塵埃を除去するクリーンローラ装置において、
上記ワークの表面に付着している塵埃を吸着する粘着ロールと、
上記粘着ロールに付着した上記塵埃を転写する粘着テープロールを保持するテープ保持部と、
上記粘着ロールを回転駆動させる駆動モータと、
上記駆動モータに連結される駆動側磁気部材と、上記粘着ロールに連結され上記駆動側磁気部材と所定の間隔をあけて対向配置される従動側磁気部材とを有し、上記駆動モータの回転駆動を上記粘着ロールへ非接触状態で伝達する伝達機構と、
上記駆動側磁気部材と上記従動側磁気部材との間で作用する磁力に対して反対向きに押し出し力を与える衝撃吸収機構と、
を備えることを特徴とするクリーンローラ装置。
【請求項2】
請求項1記載のクリーンローラ装置において、
前記粘着ロールおよび前記従動側磁気部材は、可動フレームに対して回転自在に取り付けられ、これら前記粘着ロール、前記従動側磁気部材、および上記可動フレームによってロールユニットを構成すると共に、
前記衝撃吸収機構は、前記駆動モータおよび前記駆動側磁気部材が設けられる装置本体側に取り付けられて、上記可動フレームを受け止める、
ことを特徴とするクリーンローラ装置。
【請求項3】
請求項2記載のクリーンローラ装置において、
前記衝撃吸収機構は、
筒状部を有するシリンダと、
上記シリンダの上記筒状部に対して流体の圧力によって出没されると共に、上記可動フレームに当接する押出ロッドと、
を具備することを特徴とするクリーンローラ装置。
【請求項4】
請求項3のいずれか1項記載のクリーンローラ装置において、
前記衝撃吸収機構は、制御部によって制御駆動されると共に、
この制御部は、運転スイッチの押下によって前記衝撃吸収機構の作動のオンオフを切り替える、
ことを特徴とするクリーンローラ装置。
【請求項5】
請求項4記載のクリーンローラ装置において、
前記制御部は、前記駆動モータの駆動状態から前記停止スイッチを押下したときに、前記ロールユニットを引き抜くものと判断し、
前記駆動モータの停止状態において所定時間が経過したときには、前記ロールユニットを差し込む待機状態であると判断し、
前記ロールユニットを差し込む待機状態のときの前記押出ロッドを押し出す圧力は、前記ロールユニットを引き抜くときの前記押出ロッドを押し出す圧力よりも小さい、
ことを特徴とするクリーンローラ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−137171(P2010−137171A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316271(P2008−316271)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成20年6月11日〜13日 社団法人日本電子回路工業会主催の「JPCA Show 2008(第38回国際電子回路産業展)」に出品
【出願人】(392009342)株式会社レヨーン工業 (24)
【Fターム(参考)】